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ベネズエラの最新動向(1 月 1 日~1 月 31 日)

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ベネズエラの最新動向(1 月 1 日~1 月 31 日)
国際協力銀行
ニューヨーク駐在員事務所
2014 年 2 月 14 日
ベネズエラの最新動向(1 月 1 日~1 月 31 日)
I.
1.
政治・経済
ラミレス経済副議長、為替政策の概要を発表


2.
閣僚評議会の経済副議長であるラミレス・エネルギー大臣が 1 月 22 日に為替政策の概要を発表。
大胆な通貨切り下げといった大幅な政策変更の発表はなく、政府による為替管理を継続していく方
針を示した。ラミレス大臣が発表した為替政策の概要は以下のとおり。
- 2014 年の外貨供給量は前年比 13%増の 427 億ドルとなる見通し。
- 427 億ドルのうち、少なくとも 114 億ドルが SICAD を通じて民間セクターに供給される。
- SICAD を通じた外貨供給は毎週実施され、毎回 2.2 億ドル 1が供給される見通し。
- SICAD 入札への参加規制を緩和し、外貨獲得の簡易化を進める(但し、規制緩和の詳細につい
ては明らかにしていない。)。
- 為替バンド(下限:CADIVI レートの 6.3 ボリバル/ドル、上限:SICAD レート(1月末時点 11.36 ボ
リバル/ドル))の導入について言及。
- CADIVI レートは優先品目(食料品や医療品等の必需品)の輸入のみに適用され、今後は
SICAD を通じた外貨供給が主流となる。
アナリストは、ベネズエラがインフレ昂進 2、物資不足 3、マクロ経済の構造的な歪み 4といった深刻
な経済問題を抱えているにもかかわらず、適切な経済政策を導入しておらず、国内経済の不透明
性が高まっていると指摘。1 月 15 日の一般教書演説では、マドゥーロ大統領が「社会主義的生産モ
デル」を構築していくとの方針を示しており、国家主導の経済政策は今後も継続していく見通し。
マドゥーロ大統領、新閣僚人事を発表
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マドゥーロ大統領は 1 月 9 日に新閣僚人事を発表し、大学教育大臣、スポーツ大臣、青年対策大
臣、産業大臣、教育大臣、労働大臣、大統領府大臣を交代する方針を示した。マドゥーロ大統領は、
「今後のベネズエラの経済発展や技術革新にとって、大学教育が最優先事項」と位置づけた上で、
新大学教育大臣に就任したリカルド・メネンデス氏(前産業大臣)の役割の重要性を強調。アナリス
トは、今回の閣僚人事について、今後の政策変更を示すものではなく、マドゥーロ大統領のリーダー
シップを示すことが目的であると指摘している。
マドゥーロ大統領は 1 月 15 日の一般教書演説では、財務省と公的銀行省を統一することを決定し、
新財務・公的銀行大臣としてロドルフォ・マルコ・トーレス氏(前公的銀行大臣)を指名。また、財務大
臣を解任されたメレンテス氏は中銀総裁に指名された。
1
2013 年下半期の外貨供給ペース(1 回の入札毎に 1 億ドル弱)を上回る水準。
ベネズエラ中銀は、過去 12 カ月の累積インフレ率が 2014 年 1 月時点で+56.3%に達したと発表している。
3
ベネズエラ中銀が発表した 2014 年 1 月の物資不足指数は、(2005 年に公表が開始されて以来)過去最高の 28%に
達している。
4
闇レートでは、80 ボリバル/ドル程度まで下落しているとされる。
2
1

II.
1.
また、マドゥーロ大統領は、2003 年 2 月に設立されて以来、為替管理の実行機関として機能してき
た CADIVI を解散すると発表。CADIVI は今後、昨年 12 月に新設された国家貿易機関
(CENCOEX 5)に吸収されるとした。なお、CENCOEX 総裁としてアレハンドロ・フレミング氏(前商務
大臣)を、商務大臣の後任としてはホセ・カーン氏(前 CADIVI 総裁)を指名。新閣僚の一覧は以下
のとおり。
財務・公的銀行大臣
ロドルフォ・マルコ・トーレス(前公的銀行大臣)
商務大臣
ホセ・カーン(前 CADIVI 総裁) 6
大学教育大臣
リカルド・メネンデス(前産業大臣)
スポーツ大臣
アントニオ・アルバレス
青年対策大臣
ビクトル・クラーク
産業大臣
ウィルメル・バリエントス(前大統領府担当大臣)
教育大臣
エクトル・ロドリゲス
労働大臣
ヘスス・マルティネス
大統領府担当大臣
ウゴ・カベサス
中銀総裁
ネルソン・メレンテス(前財務大臣)
CENCOEX 総裁
アレハンドロ・フレミング(前商務大臣)
外交
マドゥーロ大統領、CELAC 首脳会議に出席
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マドゥーロ大統領は、キューバで開催されたラ米・カリブ諸国共同体(CELAC7)の首脳会議(1 月 28
日-29 日開催)に出席。当該会議では、キューバのカストロ国家評議会議長が首脳会議の議長を務
め、反米的な発言が目立った。カストロ議長は、「加盟国間にスタンスの違いがあるにもかかわらず、
ラ米・カリブ各国は結束力を高めてきた」と述べ、「(各国政府は)資源主権を守り、多国籍企業との
関係には慎重になるべきだ」と主張した。
マドゥーロ大統領は演説で、米国の植民地であるプエルトリコを CELAC の加盟国として受け入れる
ことを提案。「プエルトリコが加盟するまで、CELAC は完全ではない」と述べた上で、「ラ米・カリブ諸
国は、米国からの脱植民地化プロセスを継続し、地域統合を強化していくべきだ」と強調した。
また、マドゥーロ大統領は、アルゼンチン、コロンビア、キューバ、ウルグアイの首脳と二国間会談を
実施し、ベネズエラ国内の食糧供給を保障するための二国間協定に署名したと発表。なお、アルゼ
ンチンとウルグアイに対しては食糧輸入の支払いとして石油を供給することを提案している。
5
CENCOEX とは、「Centro Nacional de Comercio Exterior」の略。為替管理政策、輸出入政策、国内・対外投資の発展
と実行を目的として設立され、ラミレス経済副議長の管轄下にある。
6
ホセ・カーン商務大臣については 2 月 3 日付で解任され、後任としてダンテ・リバス氏(前環境大臣)が商務大臣
に就任している。
7
CELAC は、ラ米・カリブ諸国 33 カ国が加盟し、将来的な中南米統合を目的として 2011 年 12 月にカラカスで発足。
中南米地域の問題は中南米各国で解決するとの観点から、米国とカナダは加盟しておらず、米国主導の米州機構
(OAS)に対抗する組織という位置づけ。
2
III.
1.
石油その他の資源セクター
ベネズエラの米国向け石油輸出量が減少

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米エネルギー情報局(EIA)は 1 月 30 日、2013 年 11 月時点のベネズエラの米国向け石油輸出量
が 79.2 万バレル/日まで減少したと発表。前年同月時点の 96.0 万バレル/日から大幅に減少して
おり、米国向け石油輸出量の減少傾向が継続している。アナリストは、米国向け石油輸出量の減少
の要因として、原油生産量の伸び悩み、アジア(中国、インド等)向け輸出量の拡大、ベネズエラ国
内のガソリン消費の拡大等を挙げている。
ラミレス大臣は 1 月 24 日、「中国とインド向け石油輸出量が 100 万バレル/日を超え、そのうちの
31 万バレル/日が中国からの巨額融資の支払いに充てられている」とコメントし、アジア市場の重要
性を強調。中国からの融資は今後も拡大することが予想されており、これに伴い、中国向け輸出量
も引き続き拡大する見通し。
他方、中国からの投資額が拡大しているにもかかわらず、原油生産量が伸び悩んでいることが懸念
材料となっており、アジア債権国への輸出量の拡大が今後も継続するれば、ペトロカリベ諸国やキ
ューバへの支援 8が削減・停止されるとの見方もある。
以 上
8
ペトロカリベ諸国やキューバへの石油供給量は 10.3 万バレル/日程度とされている。
本レポートは発表時の最新情報に基づいて作成されておりますが、情報の正確性又は完全性を保証するものではあり
ません。また、レポートの内容は今後予告なしに変更されることがあります。予めご了承下さい。
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