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下肢静脈瘤の治療

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下肢静脈瘤の治療
沖縄医報 Vol.41 No.1
プライマリ
・ケア
報 告
2005
コーナー
下肢静脈瘤の治療
豊見城中央病院 外科 城 間 寛
下肢静脈瘤は非常にポピュラーな疾患で、臨
床医にとってよく遭遇する疾患のひとつと思わ
れるので、下肢静脈瘤の診断、治療について概
説する。
1.分類
静脈瘤には、伏在静脈瘤、側枝静脈瘤、網目
状静脈瘤、クモの巣状静脈瘤など 4 つの type に
分けらます。今回は、網目状静脈瘤、クモの巣
状静脈瘤は除いて伏在静脈瘤について述べる事
とする。
2.症状
下肢に静脈の盛り上がりが認められることを
主訴とすることが一番多く、また長時間立った
時の下肢腫脹、およびだるさなどもよく見られ
る。また夜間痙攣(こむら返り)が静脈瘤の症
状のひとつである事に気づかれていないことが
意外に多く、問診によって初めて知ることが多
い。病状が進行すると、静脈瘤に血栓を形成し
急性炎症を起こしたり、その後に皮膚脂肪硬化
(皮膚硬結)や色素沈着起すことがある。また
立位になり静脈が緊満するとその部位の掻痒感
が強く現れ、下腿潰瘍を形成することもある。
3.診断、検査
問診で病脳期間、発症の経緯などを聞く。一
次性静脈瘤か深部静脈の閉塞によって起こる二
次性静脈瘤なのかを鑑別する必要があるので、
深部静脈血栓症の既往についてはよく聞いてお
く必要がある。次に外来で簡単に出来る検査と
して Trendelenburg Test、Perthes Test などの
古典的な検査がある。最近ではドップラー聴診
器で、伏在静脈の逆流による静脈瘤であること
を確認し、上記検査を省くことが多い。
a)ドップラー聴診器
外来で手軽に出来る検査としてドップラー
聴診器を多用している。これは大伏在静脈、
小伏在静脈にあてて、下腿腓腹部の圧迫を解
除した後の逆流音で静脈逆流を確認する事が
できる。
b)下肢静脈造影
手術を行う患者には必ず行っている。その
理由は、下腿の深部静脈の閉塞は、超音波検
査で確実に見る事が困難であり、また静脈走
行の異常などは、造影検査で容易にわかる
が、超音波検査では見逃すことを避けるため
である。通常は上行性造影のみを行い、深部
静脈の弁不全が疑われる場合に立位で逆行性
造影を行っている。
c)超音波検査
入院後手術までに行う。血管の走行、不全
穿通枝の位置確認、膝窩部で小伏在静脈の位
置確認を行い油性マジックでマーキングを行
う。手術を行う上で非常に大事なこと、術者
自身が行っている。
以上の検査を行い、治療すべき静脈瘤の病態を
整理、把握し手術に臨む事ができる。
4.治療
下肢静脈瘤は良性疾患なので、病態について
十分説明し、一次性静脈瘤に対して、保存的治
療を希望する場合には弾性ストッキングを用い
た圧迫療法を行い、手術としては以下の方法が
あり静脈瘤の形態に応じて組み合わせを考えて
行っている。
a)高位結紮術
大伏在静脈瘤で静脈瘤の程度が軽度の場合
行う。通常局所麻酔で行っており、鼠径部、
大腿不全穿通枝、膝窩部内側で小切開を加え
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沖縄医報 Vol.41 No.1
2005
プライマリ・ケアコーナー
結紮離断する。鼠径部の SFJ(sapheno-
部で超音波検査を用いて走行を同定してお
femoral junction )の位置だが、皮膚切開
が SFJ の位置からずれると苦労するので、以
前は超音波検査などで SFJ の位置を確認して
いたが、今では以下の方法でまず確実に SFJ
の部位を同定できている。まず大腿動脈の拍
動を触れ、その一横指内側の大腿部皮膚切れ
込みで皮膚割線に沿って切開を行う。ほぼ
SFJ の直上に位置するので、大伏在静脈とそ
の分枝を確実に処理することができる。
b)静脈瘤摘出術
静脈瘤の目立つ分枝型は術前に立位にしマ
ーキングを行う、また不全穿通枝がないかど
うかを超音波で確認しておき、不全穿通枝が
ある場合には、超音波でその部位をマーキン
グし直上で切開し確実に処理する。
c)静脈瘤硬化療法
伏在静脈瘤については術中に硬化療法を行
っている。これはできるだけ皮膚切開を少な
くし、治療効果を高めるために残存しそうな
末梢の静脈瘤に対して行っている。
d)静脈瘤抜去術(ストリッピング手術)
非常に基本的な手技で、鼠径部の処置は高
位結紮と同じ方法で行い、末梢側は下腿中央
く。ストリッパーを用いて静脈瘤を抜去す
る。ストリッピング時の止血の工夫として栄
養チューブをストリッパーヘッドに結紮し、
それと一緒にストリッピングを行う。抜去部
位を圧迫し、栄養チューブからボスミン生食
を皮下に注入しながら抜去すると余計な出血
を抑える事ができる。
e)内視鏡的筋膜下不全交通枝切離術
色素沈着や皮膚・皮下脂肪硬化や潰瘍など
の皮膚病変を有する場合などに行っている
(図 1 )。まず下肢静脈造影や超音波検査で不
全穿通枝を確認(図 2 )・マーキングを行っ
ておく。当科では通常の腹腔鏡気腹装置を用
い、2 点穿刺法で行っている。下腿内側筋膜
下に 5mm のポートを 2 本挿入し、炭酸ガスを
送気、鉗子などを用いて筋膜下にスペースを
広げると十分な視野を確保する事ができる。
不全穿通枝を確認し(図 3 )、超音波凝固切
開装置を用いて離断する。この方法を用いる
ようになってから皮膚切開も小さく美容的に
も良くなったと思っている。
f)弁形成術
深部静脈の弁不全に対しては、弁形成が治
療法として挙げられるが、私はその経験はな
い。
以上手術的治療を中心に当院で行っている事
を紹介したが、切開創の縫合は埋没縫合を行
い、ロイコストリップテープで固定し、弾性包
帯で巻いて圧迫し手術を終了する。
下肢静脈瘤の治療については、多様な治療法
があり病態に応じた方法を選択する必要がある。
図1 下腿内側に色素沈着、潰瘍を伴う静脈瘤が認められる。
図2 同部の静脈造影、色素沈着の部位と一致して静脈瘤
が認められその中に不全穿通枝も認められる。
図3 筋膜下のスペースに筋膜を貫く不全穿通枝が認めら
れる。
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