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微弱電流による薬物の皮膚からの投与に道を拓く)
最先端研究 探 訪 [取材] 将来、注射器がなくなる ①アスタキサンチン+ビタミンE 小暮先生の研究を3つの段階で 紹介します。なお文中、ナノメー トルは、1ミリメートルの百万分 の1という単位です。 アスタキサンチンは最近、化粧 品などのCMでも耳にする成分で、 エビやカニといった甲殻類の殻な どから抽出される赤い物質です。 ゆでると赤くなるのはこのためで す。 おなじみのビタミンEは血行を よくしたり、食品添加物の酸化防 止剤として広く利用される抗酸化 ビタミンとしても知られ、脂肪の 代謝、細胞膜の安定化、生殖や甲 状腺などの機能にかかわっていま す。 この二つの 取り合わせは、 化粧品ではシ ミ・しわを防 ぐ効果があり ます。先生は 両者を同じリ ポソーム内に 入れることに リポソームとは、一つの分子上 に親水性部分と疎水性部分とを持 の粗い部分があるので、このナノ わかっています。脂肪組織も血管 ( エ ン ハ ン ス ト 効 果 )が あ る こ と が の粗いところに貯まりやすい性質 が通説でした。当然先生の作るナ 物の皮膚浸透法)は無理だというの 従来、分子量が1万以上の物質 はイオンフォレシス (電流による薬 を発見しました」 ナノメートルくらい開くこと 大学で、電気で皮膚の細胞の隙間 うことで皮膚の中の特定の遺伝子 た。siRNAという高分子を使 込むことに可能性が開かれまし この発見により、リポソーム のまま細胞の中まで薬物を送り は生きたマウスを使ったのです」 まり死んだ皮膚だったのです。私 取られた皮膚を使ってました。つ そのときはその道を行くまでで だ何が出てくるかわかりませんが、 実用化を目指しています。まだま 「電気メカニズムの解明をすすめ、 先生は、 るようになるのでは、と先生は話 様々な物質を送り込むことができ れていません。この研究が進めば、 より、足し算 たせた分子から作られるゴムボー 粒子をとどめることが出来て、さ ノレベルのリポソームでも入らな の発現も抑制させることができま す」と、今後の抱負を語られまし 以 上 の 協 同 ( 相 乗 )効 果 が あ る こ ルのような複合体で、内部にDN らに脂肪細胞をやっつけることで いだろうと思われました。 す。しかしなぜ電流によって細胞 た。 先生は本学卒業以来、抗酸化剤 についての研究を続けてこられま 入れる方法が注射によることです。 ここでネックとなるのが、血液 中にリポソームなどのナノ粒子を 細胞などを殺す効果があることを 先生は、ビタミンEにコハク酸 が誘導体としてくっつくと、がん も紹介されました。 ないワクチン」としてマスコミで 発見は、注射器を使わない「痛く が Aやタンパク質などを含ませるこ 脂肪組織を小さくできることが期 「既成概念にとらわれずにやった に隙間ができるのか、という詳し とを発見しました。 とで、内部の分子を細胞内に導入 待されます。その後はビタミンE のがよかったのでしょう。それま した。一般に酸化防止剤と呼ばれ がんなどで炎症を起こした血管は ②ビタミンE+コハク酸 るものです、食品をはじめいろい もろくなっているため、他の方法 解明しました。 S (ドラッグデリバリーシステム)と されています。 することができます。 とコハク酸に分解されるので体内 これをリポソームに似たナノ粒 子にしてやると、がんなどの血管 !? いメカニズムはまだ全部が解明さ (こぐれ けんたろう) でイオンフォレシスの実験は切り 大学院医歯薬学研究部 (薬学系)衛生薬学分野 教授 への悪影響は残りません。 ろなところで使われています。空 が模索されています。 気中の酸素で酸化・変質するのを 防ぐ薬剤です。 ③微弱な電気が細胞の隙間を 特に化粧品には酸化されやすい 成分がたくさん使われているので、 広げる! 酸化すると悪臭を発したり、肌に 正式にはトコフェロールコハク 酸といい、貝類などのうま味物質 して、電気を使う寄附講座が出来 刺激を与えてしまいます。 です。医薬品ではpH調整に使わ ました。それまで行っていたナノ 微弱な電流が皮膚の細胞の隙間 を広げるという、先生の画期的な れます。その他、調味料やメッキ 粒子と電気を組み合わせるという 「北海道大学にいるときに、DD などの工業用、炭酸ガスを発泡す る入浴剤など多く使われています。 研究に初めて取り組み、京都薬科 9 10 微弱電流による薬物の皮膚からの 投与に道を拓く 小暮 健太朗 50