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2005年8月(39号)(PDF:883KB)
峡南教育事務所・峡南地域教育情報紙 2005年8月 第39号 か か け け は は し し 発 行; 峡南教育事務所地域教育推進担当 所在地; 南巨摩郡鰍沢町771−2 TEL; 0556―22―8154 FAX; 0556―22―8144 E-Mail; [email protected]・ [email protected] ・ [email protected] 子育てトピック 子育ては その人の人生は、幼児期の育てられ方で大きく左右されます。人の心 の育ち方を大 脳生理学の面からさ ぐり、健全な脳の 発達のためには、 どのような子 育てが必要なのかを 、7月に行われた 「青少年の非行問 題に取り組む 県民大会」での山角 病院の竹内潤一先 生の講演からまと てみました。 親の心育て ∼子どもの安心感を育んで∼ 竹内潤一さん (医学博士、山角病院) 「こころ」は、心臓でなく脳にあります 。「こ ころ」の問題を考える場合には、脳はどのよう に作られるか、そのとき周囲の大人がどのよう に係わるかが非常に大切です。私たちの脳は、 生まれた時に完成している生命活動を司る脳 幹、1歳半位までの乳幼児期に完成する本能や 感情を司る大脳旧皮質(辺縁系 )、20歳位まで 発達を続け知的・創造的な活動を司る大脳新皮 質の3つの部分から出来ています。 左)脳幹 右)大脳辺 縁系(旧皮 質)と新皮 質(特に前 頭葉 ) 辺 縁 系 ( 大 脳旧 皮 質) が 発達 する 1歳 半 まで の 間は、母親からの温かいまなざしやスキンシッ プ、言葉かけで「基本的信頼感」が育まれる時 期で 、「自信」の元になる「自己愛」の基礎が 作られます。子どもを抱いてあげる、子どもが 見ていたら笑ってあげるといった相互作用で子 どもの脳は発達し、同時に母親の母性も育って いきます。 1歳半から6歳までの幼児期には、大脳が発 達し始めますが、新皮質はまだ未熟で、旧皮質 のコントロールは、上手くできません 。「どう してこんな事ができないの」ではなく 、「見な がら待ってあげる」事が大切です。外からコン トロールを強制すると、大脳が過剰なコントロ ールを試みてチックなどの行動になりがちで す。 小学生時代には、新皮質が急激に発達し、い ろいろな経験の中で自分を試し、自信を育てて ゆ き ます 。 失敗 をお そ れ て いて は 何も 出来 な い と 分か っ てい ても 、 つ い 「ど う して こん な 事 を する の 」と 叱っ て し ま いが ち です が、 こ の 子 は「 何 をし よう と し て いる の か」 と観 察 してみる事が大切で す。 中学校時代( 思春期 ) には、視床下部が発達し、分泌されるホルモン の影響を受けて力を増した辺縁系とバランスを とるように大脳新皮質の前頭葉が発達してきま す。この時期、親や世間の価値観に対して反抗 しますが、これは、自分で自分をコントロール するために必須な過程で、健康な証拠です。 思春期の終わりから20歳くらいの間で、人間 性・創造性を司る前頭葉が発達して、自分のア イデンティティーが確立されてきます。出来上 がった脳( 大人 )で 、出来上がりつつある脳( 思 春期)を理解するのは、脳の回路が違うので困 難です。しかし、前頭葉が十分に発達して大人 になれば、話が通じるようになります。反抗さ れ悲しい思いをするかも知れませんが、必ず子 どもは帰ってきます。 子育ては誰もが初めて体験すること。兄姉で も一人一人違っているので、子育てについて経 験を持って語れる人は誰もいません。我々は子 育てをしながら、自分のこころを育て、自分も 育ってゆきます。だから 、「子育ては、親の心 育て」でもあるのです。 -1- 7月に行われた「青少年の非行問題に取り組む県民大会」で、昨年度の「少年を非 行から守る中学生防犯弁論大会」で最優秀を受賞した増穂中学校3年 (受賞時は2年) 井上瑛美さんの「本当に大人はわかってくれないのか?」と題した意見発表が行われ ました。大変情感のこもった弁論で、心を打たれました。 本当に大人は 本当に大人は わかってくれないのか? わかってくれないのか? 増穂中学校 「『 大人』なんて、何も分かってくれない 。」そう 嘆いて、大人との間に、高い高い塀をつくろうとす る 子供 たち 。「 どう した らい いの かわ からな い… 」 そう言って子供との距離を離して行く大人たち。こ んなにも悲しいすれ違いがなぜ繰り返されるのでし ょうか。 ほんの小学6年生が同級生を殺してしまうとい う、あまりにも悲しい事件が6月上旬に起こりまし た 。「 殺し ても 殺し たり ない 」… 小学 6年生 の女 の 子が作文に記したという重すぎる言葉。彼女は、作 文に胸苦しいほどの恨みと悲しみをぶつけて綴った はずです。意識の外で、誰かに気づいてほしいと思 いながら。作文だけでなく、彼女は周りの「大人」 にサインを出し続けていたでしょう。でも、彼女の サインに気づいてくれる大人はいませんでした。 私はこの事件を聞いた時、他人事のように思えま せんでした。加害者の彼女の、心の葛藤が、分かる ような気がしました。殺しを考えなければならない ほど私は追い詰められませんでしたが、私も、大人 にサインを出し続けていたときがあったのです。 そ の頃 、 私は 学校 とい う場 所で 、 初め て深 刻な 壁 に 突き 当た りま した 。友 達 関係で す 。「ここ には 私 の 居場 所は 無い んだ 」。突き 当た った 壁の前 で、 そ う思いました。それからの落下ぶりは凄まじいもの でした 。親との関係も上手く行かなくなり 、ひとり 、 殻の中に閉じこもるようになってしまったのです。 「『 大人』なんて、何も分かってくれない 。」と嘆き ながら。けれど腹の底では「分かって欲しい、私を 助けて!」と叫んでいました。時間が経つにつれ、 状況は悪化して行きました。家族で囲んでいた夕食 すら、その頃はもう億劫で、嫌悪さえするようにな っていました。母との衝突も絶えませんでした。そ 井上瑛美 れでもわたしはサインを送り続けました。誰かに救 って欲しい一心で。…わたしのサインは一人の大人 に届きました。その大人は、保健室の先生でした。 先生は、悲しみも、苦しみも、痛みも、全てを受け 止めて、分け合おうとしてくれました。一緒に泣い てくれました 。わたしのはなしをきいてくれました 。 「 わ たし の居 場所 はこ こな のか もし れない 。」そう 思えました。私はどん底から抜け出すことができた のです。そして、母が私を分かろうとしていたと知 ったときは、涙が溢れるほど嬉しかったのを覚えて います。母は変わっていく私に追いつけず、どう扱 って良いのかわからなかったといいました 。そして 、 「ごめんね」と一言呟きました。その一言で私は救 われたのです。私が確かに感じた痛みが、そして、 母も分け合おうとした苦しみが、母の一言で、消え てなくなったのです 。『「 親」と通じ合えない』とい うことが、私にとっては、それまで味わってきたど んな痛みより、ずっと痛くて、悲しくて、どうしよ う も 無か った ので す 。「親 」と 通じ 合うこ と、 それ が子供を救うのです。 私達、子供は脆いです。か細い足で必死にこの現 実に立っています。少し力を込めれば足はぽきんと 折れてしまうし 、乱暴に扱えば壊れてしまう 、脆い 、 「子供」なのです。私は、親との擦違いの中で大人 の 必 要性 、「 親」 が、 子供 にと って どんな に大 事な ものなのかを痛いほど感じました 。 「『 大人 』なんて 、 何 に も分 かっ てく れな い 」。 そう嘆 く前に 、分 かろ うとしている親の見えない努力を、目を凝らして見 つけてください。自分を寄りかからせてくれる大人 を見つけてください。すぐ傍に居る筈です。 より どこ ろに な る場 所、 それ が少 年犯 罪を 、 心が 壊れることを防ぐことの出来る一番のクスリです。 いっしょに「ハカ」も踊りましたよ! … 久那土小でインターナショナルデー開催 7月1日 (金) に久那土小 (今村文 子 校長 ) で県 内各 校の ALT 12名 を招 いて、 インターナショナルデー が開か れました。午前中はグループに分か れて、ゲームなどでの交流や子供た ちよる身延町の紹介、午後は体育館 でドッジボールで楽しみました。 午後はドッジボールで交流…体育館 -2- シリーズ 親子で読む本 「どうぶつのおやこ 」「くだもの」 まず最初は生後十ヶ月 …NPO法人・山梨子ども図書館事務局 よくあるご質問は「読み聞かせを始める時 期はいつか?」である。これは個人差を考慮し ても標準的に生後十ヶ月ぐらいである。赤ちゃ んが平面にプリントされた表象を視覚的・意識 的に認識できるようになるのが生後十ヶ月。そ れ以前は触覚認識が主体で、なかなかうまくい かないことが多い。というより、段階を追って 発達に対応したことをするなら 、十ヶ月以前は 、 物に触らせることをどんどんする必要があると 思う。そうでないといつまでも触覚認識が残っ ていて、本を与えても舐めたり、かじったり、 破いたりする現象が残る。するべきことはさせ ておくことである。 早くから本を与えても時期に合わなければ やること自体意味のないものとなってしまう。 さて、この時期、与えるのに適したものは前 述の「ひじょうに実物に近い絵で描かれた認識 絵本」である。すぐれた絵本(写真の「どうぶ つ の お や こ 」「 く だ も の 」) はす べ て 背 景 が な いもの。つまり1ページ(見開き)で1つのも のしか描かれていない。子どもが場面に集中し て 、1つの も の を見るの に 適 した構成 に な っている 。 こ れは散漫 な 感 覚しか持 た な い子ども か ら 集中力を 引 き 出すのに と てもいいしかけである。 実物に近ければ実物そっくりに写っている写 真絵本がいいかもしれないが、写真絵本は背景 に余計なものがあるし、絵のような温かみがな 長谷川敏夫 いという難点もある。やはり写実的な絵の絵本 の方がいいと思う。 これらの絵本は、動物や果物の名前や形を教 えるものなのだが、じつは言葉がほとんど書か れていない。だからと言って黙って本を開いて 子どもに見せているだけの親はいないわけだ が 、「どういう読み聞かせをすればいいか?」 という質問が来ることは多い。 これは、そうむずかしいことではない。絵本 の中の動物、果物を媒体にして、普通に話し掛 ければいいのである。 「ほら、おサルさんのお母さんが赤ちゃんを 抱 っ こ し て い る わ よ 。」「 お っ ぱ い が 飲 み た い の か な 。」「 ネ コ の お 母 さ ん は 何 を 見 て い る の か な 。」「 お い し そ う な イ チ ゴ ね 。 は い 、 お ひ とつどうぞ 。」…普通の話し掛けである。これ を毎日子どもと楽しめばいいわけだ。 この時期の子どもは時間を決めて読む必要は ない。手の空いたとき、あるいは寝るとき、い つでもかわまない。要求があれば、後回しにせ ず読んであげることである。 時には触覚的認識の名残があって、本を破る ようなこともあるだろう。そのときはしっかり たしなめることである。破ったら、手くらい叩 いてもいい。サルとネコ、モモとイチゴの区別 をしているときに紙と本の区別ができないよう では困るからだ。やさしく言い聞かせてわかる ようならいいが、区別を教えるために「たしな める」ことは重要なことである。 認識のすべての始まりが、この時期である。 認識とはものごとのメリハリをつけること。こ の後のすべてに関わってくる大切なことなの で、親は心して読み聞かせを始めなくてはいけ ないと思う。 私たちの富士川はきれいかな …小・中学生が富士川の水質検査に挑戦 7月21日(木)に身延東小学校 (武井文雄校 長) の5年生は国土交通省甲府河川国道事務所 の協力で、身延町八木沢で、富士川の水質調査 に挑戦しました。調査は、川に棲んでいる水生 昆虫の種類によって水 の汚れを調べる方法 と、パックテストと使 って水に溶け込んでい る化学物質の量を調べ る2つの方法でおこな い るか な ぁ∼ … 石を 裏側 し いました。調査では、 て、水棲昆虫を探します きれいな水にしか棲ま ない「カワゲラ」 も確認でき、富士 川の水質はかなり 良好なことが確認 できました。この ような調査を通し て地域の子どもた ち に 富 士 川 を も っ どの色と似てるかなぁ∼ と 身 近 に 感 じ て 欲 …パッテストによる水質調査 しいと思いました 。なお 、今年は同様な調査を 、 市川南中1年、市川南小6年、原小5年、栄小 5年のみなさんも実施しました。 -3- 音楽を通して地域つくり さわやかなハーモニーに うっとり …市川高校音楽部が六郷中で出前コンサートを開催 7月4日(月)に六郷中学校 (佐藤紀征校長) で市川高校音楽部 (川崎宙映部長) がミニコンサ ートと中学生への合唱指導をおこないました。 コンサートでは、顧問の高柳勉先生の指揮、 音楽部OGの小林るり子さんのピアノ伴奏で、 スエーデン民謡 の「 輝く夏の日 」 やミュージカ ル、キャッツの 「メモリー」な ど、さまざまな ジャンルの曲が 10曲余り披露 されました。30回目を迎える定期演奏会を目 峡 峡南 南花 花紀 紀行 行 ササユリ 前にひかえ猛練習をしている音楽部員たちのハ ーモニーが体育館いっぱいに響き、中学生たち は、さわやかな歌声に引き込まれていました。 市川高校 音楽部は、 今年創部3 0周年目を 迎え、昨年 度も全日本 合唱コンク ール県大会 で14年連 続の金賞を受賞して県代表に選ばれるなど、県 下NO.1の実力を持つ合唱団として有名だけ でなく、音楽を核にして、地域社会を担う人材 をつくりたいとの考えから、毎年近隣の中学校 を訪れ、出前コンサートを開催しています。市 川高校音楽部の歌声魅了されて、同校に進学す る生徒も多いと聞きます。今年も多くの中学校 から訪問の要請を受けたそうですが、定期演奏 会の準備もあり、今回は六郷中と久那土中の2 校だけに絞ってしまったとのことです。中学生 たちは、コンサート終了後、各学年に分かれて 音楽部員の指導で合唱の練習を受けていまし た。 ふるさとに咲く花をさがして 笹百合(ユリ科) Lilium japonicum 淡桃色の花 を、茎の上部 に横向きにつ ける日本固有 のユリで、そ の姿は華麗で 気品があり、 移植も難しい ところから、野草の女王とも呼ばれています。 静岡以西に自生し、万葉の昔から親しまれてい ますが、山梨県内では、旧富沢町内にだけ自生 しています。 ササユリは野山の草原や林の縁など、ある程 度明るい場所に育ちます。主に種子で繁殖しま すが、種子から芽生えたササユリは葉だけで、 その3 南部町万沢 茎がありません。したがって、幼苗の時期には 地表面にある程度の光が当たっている場所が必 要です。開花できるまでに数年かかるので、薪 炭林として定期的に伐採が行われたり、柴木を 刈り取る作業などが行われなくなってきて、全 国的にササユリの自生地は激減してしまいまし た。 県内の自 生地でも事 情は同じで 、 この写真を 撮るために 、 旧富沢町内 を何ヶ所も 訪ね歩きました。 -4-