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太陽光発電のLCA評価 [ PDF:993KB ]

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太陽光発電のLCA評価 [ PDF:993KB ]
太陽光発電の LCA 評価
ライフサイクルアセスメント
導入の進む太陽光発電
原料珪石(SiO2)
このように、太陽光発電システムは
を実現するために不可欠な再生可能エ
地球温暖化防止にきわめて有効なエネ
水ガラス化
ネルギー資源として、クリーンで無尽
ルギー源ですが、システムを構成する
析出/精製
蔵な太陽エネルギーへの期待が高まっ
太陽電池やインバータなどの構成機器
ています。中でも太陽光発電は、太陽
を製造するにも一定量のエネルギーが
光のエネルギーを直接電力エネルギー
必要であり、当然それに伴い二酸化炭
に変換するシステムで、タービンの様
素(CO2)も排出されます。この投入エ
方向性凝固
な動く部分がないため保守・管理が容
ネルギーの回収、および製造時排出分
SOG-Si
易であること、電卓から大規模発電所
の CO2 削減に必要な時間は、それぞれ
までさまざまな規模・形態での応用が
エネルギーペイバックタイム(EPT)
、
可能であることなどの特長がありま
CO2 ペイバックタイム(CO2PT)と呼ば
す。
れています。これらがシステムの寿命
第 1 次オイルショックを契機として
に比べて十分短くなければ、エネル
1974 年にスタートした長期国家プロ
ギー生産技術としての意味がありませ
ジェクトであるサンシャイン計画以
ん。これらを分析・評価するライフサ
来、産官学を挙げた研究開発と導入普
イクルアセスメント(LCA)は、エネル
及施策が功を奏してコスト低減が進
ギー技術の評価に不可欠な重要な視点
み、近年急速に生産量・導入量が増加
です。
ウェハ製造
SOG-Si 製造
地球温暖化を防ぎ、持続可能な社会
高純度 SiO2
SiO2 還元
脱炭素
インゴット鋳造
ウェハ加工
poly-Si ウェハ
高純度カーボン
テクスチャ形成
pn 接合形成
反射防止膜形成
裏面エッチング
裏面電極形成
受光面電極形成
“セル製造”
特性検査
poly-Si 太陽電池セル
図 2 多結晶シリコン太陽電池の製造工程
もるためには、これらの各工程で投
しています。図 1 に示すとおり、わが
図 2 に多結晶シリコン太陽電池の製
入される材料と加工のために必要なエ
国は世界最大の太陽電池生産国となっ
造工程の例を示します。製造時の投入
ネルギーとを積み上げる必要がありま
ています。
エネルギーと CO2 排出量を正確に見積
す。
太陽光発電システムのペイバックタ
イムは、このような太陽電池をはじめ
3000
とするシステム構成機器類全ての製造
エネルギーや製造時の CO2 排出量と、
生産量(MW)
2500
システムから毎年得られる発電量や
CO2 削減量の比率から計算されますが、
その他
2000
米国
1500
欧州
前者は新しい太陽電池の開発や製造技
日本
術の改良、製造規模の拡大などによっ
て次第に減少し、後者は太陽電池の変
換効率やシステムの利用効率の改善に
1000
よって増大するため、技術革新の途上
にある太陽光発電のペイバックタイム
500
は年々急激に短くなっています。しか
0
93
94
95
96
97
98
図1 世界の太陽電池生産量の推移
16
産 総 研 TODAY 2008-01
99
年
00
01
02
03
04
05
06
しながら、最新のペイバックタイムの
値の周知が不十分なこともあり、10 年
以上も前の古いデータ [1] を基に、今で
も時として太陽光発電のペイバックタ
100
現在、わが国において公表されて
いる最新の値(住宅用屋根設置の場合)
は、EPT については、多結晶シリコン
で1.5年、
アモルファスシリコンで1.1年、
化合物薄膜(CIS)で 0.9 年、CO2PT につ
いては、多結晶シリコンで 2.4 年、ア
モルファスシリコンで 1.5 年、化合物
薄膜(CIS)で 1.4 年です [2]。ただし、結
晶シリコンについて、本報告の計算で
は原料シリコンの製造方法として現在
開発中の新製法が想定されており、現
状に即した製造法から算出すると EPT
は約 2.0 年、CO2PT は約 2.7 年となりま
す(図 2)
。欧米でもほぼこれに近い値
が報告されています。太陽電池の寿命
投入エネルギー量(GJ/kW)
指摘がなされることがあります。
10
周辺機器
EPT
モジュール
CO2PT 80
8
60
6
40
4
20
2
0
多結晶 Si
(1991 年)
多結晶 Si
多結晶 Si
(現状)
(将来)
アモルファス Si
CIS
EPT, CO2PT(年)
イムは 10 年以上であるという間違った
0
図 3 太陽光発電システムの製造時投入エネルギーとペイバックタイム
算出条件:
多結晶 Si (1991 年 ) 地上設置 1 MW、生産規模=不明、運用エネルギー= 1% [1]
その他 住宅用 3 kW システム、生産規模= 100 MW/ 年、運用エネルギー=省略 [2]
※多結晶 Si ( 現状 ) の値は、文献 [2] を元に再計算を行ったもの。
は、少なくとも 20 ~ 30 年程度と考え
られていますので、最新のデータに基
づく EPT、CO2PT はともに寿命に比
されています。2004 年に作成された太
て国民の理解を得るためには、ここで
べて十分短く、太陽光発電は LCA 評価
陽光発電に関する研究開発長期ロード
紹介した LCA 評価による環境効果の
の観点からも優れた発電システムであ
マップ(PV2030)では、2030 年におけ
見積もりについても、研究開発の進展
るといえます。
る累積導入量として、総電力需要の 10
による新しい製造技術の導入や生産規
%程度を賄える 100 GW(1 億 kW)が
模の拡大などによる変化を随時取り入
想定されています。
れ、常に最新の情報を提供して行くこ
持続可能社会の実現を目指して
今後のわが国のエネルギー政策の基
これらの導入目標を達成するために
本方針として 2006 年 5 月に取りまとめ
は、太陽電池のさらなる効率向上とコ
られた「新・国家エネルギー戦略」の 4
ストダウン、および応用分野や設置場
本柱の 1 つの「新エネルギーイノベー
所の拡大を可能とする新しいシステム
ション計画」においても、太陽光発電
コンセプトの導入などを目指した研究
太陽光発電研究センター
のコストを 2030 年までに既存の火力
開発が不可欠です。それとともに、太
作田 宏一
発電並みにすることが目標として明記
陽光発電が新しいエネルギー技術とし
とが重要と思われます。
参考文献
[1] 内山、ほか、電力中央研究所研究報告 Y90015(1991.11)
[2] NEDO成果報告書「太陽光発電評価の調査研究」、太陽光発電技術研究組合、(2001.3)
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