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グループ経営を考える
みずほ総研コンサルティングニュース 2011.8 Mizuho Research Institute Consulting News みずほ総合研究所株式会社 コンサルティング部 03-3591-7211 Copyright©みずほ総合研究所 2011 無断転載を禁ず グループ経営を考える —複数企業の経営効率を総合的に高める視点— 1.背景 90 年代『選択と集中』を進めてきた日本企業は、 連結会計制度導入後より一層、 「連結子会社全てを含 むグループ全体の企業価値を高めること」に関心を 持つようになっています。 他方、経営環境の不確実性・複雑性の高まりや、 商品・サービス等の短サイクル化が加速したことで、 単体の事業が存続し続けることは大変難しくなって います。 企業にとっては成長を目指す上でも、生き残りを 図る上でも「グループ経営」という視点がより一層 重要になっています。 ③サスティナビリティーの向上 グループを形成することで、個々の事業のライ フサイクルを超えて企業として存続する。 ④経営資源の共有化 主に無形資産の共有化を通じて、資源の活用を 極大化する。 ⑤経営資源の効率化 マネジメントの諸機能を集約化することによっ て、グループとして経営資源の効率化を促進する。 ⑥コストダウン 経営資源の共有化や効率化を合理的に組み合わ せて、グループ全体のコストを削減する。 2.グループ経営とは 「グループ経営」を耳にする場面が多くなる一 方ですが、 「グループ経営」の定義に関しては、必 ずしも統一した見解があるとはいえません。弊社 では、グループ経営とは『単一企業としてではな く、複数の企業がグループとして活動することに より、その競争力を高める経営』と定義します。 必ずしも組織の形態にとらわれることなく、複 数の事業運営組織が存在することによって、単体 の事業よりも、競争力、成長性、生産性、持続性 などが高まるような施策を実施していくことを想 定しています。いわば、1+1>2と成るような グループプレミアム(シナジーの発揮)を追求す る経営です。したがって、複数の企業や事業があ れば、グループ経営について考える意味があると いえます。 4.グループ特性と追求シナジー 各企業グループがどのようなシナジーを追求す べきかは、それぞれが形成する企業群の形態や保 有する経営資源の特性によって異なります。ここ では大きな方向性を、グループの形態と業績を軸 に整理しました。 3.グループプレミアム(シナジーの発揮) グループプレミアムの実現が「グループ経営」 の目的とすれば、グループプレミアム(シナジー の発揮)とは何かを具体化しなければなりません。 グループプレミアム(シナジーの発揮)に関し てはアップサイドとダウンサイドで認識し、以下 の6ポイントに整理しました。 ①収益の拡大 複数の事業を束ねることにより、売上・収益の 増大を図ったり、新規事業分野への進出を可能に したりする。 ②競争力の向上 複数企業の経営資源の組み合わせにより、企業 体のコアコンピタンスや、経営環境変化に対する 適応力を高める。 非関連多角化 (コングロマリット) 関連多角化 <水平拡大> 関連多角化 <垂直拡大> 業績好調 収益拡大の追及を目 的として、M&A等を 活用した規模拡大や 新規事業参入を模索 する。 収益拡大のため、地域 の拡大や集中化を図 りながらも、経営の基 盤を確実なものにす るため、経営資源の効 率化も進める。 経営資源を最大限に 活用して差別化戦略 を進めるべく、競争力 の向上を検討したり、 経営資源の共有化を 促進したりする。 業績停滞・下降 コングロマリットデ ィスカウントを回避 すべく、経営資源の効 率化や共有化を進め る。 機能の重複排除や活 動効率の向上に留意 し、経営資源の効率化 やコストダウンに取 り組む。 マネジメントの質を 高め、組織の生産性の 向上を目指すと共に、 更なる経営資源の効 率化やコストダウン を促進する。 5.追求シナジーと諸施策 グループとして追求するシナジーが明確になれ ば、それを実現するための施策を検討します。例 えば、 「経営資源の効率化」を追求するのであれば、 グループマネジメント体制を強化(内部統制機能 拡充、業績評価制度再構築、ナレジマネジメント 構築、グループ人事マネジメント導入 etc)や、 機能集約(シェアードサービス、最適生産体制見 直し、購買・物流・研究開発等の機能集約)など を検討し、最も効果的な施策を組み合わせて、グ ループプレミアム実現(シナジーの発揮)を目指 すことになります。