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いまこそ求められる「中堅・中小企業の営業力強化」
みずほ総研コンサルティングニュース 2012.5 Mizuho Research Institute Consulting News みずほ総合研究所株式会社 コンサルティング部 03-3591-7211 Copyright©みずほ総合研究所 2012 無断転載を禁ず いまこそ求められる「中堅・中小企業の営業力強化」 1.なぜ、いま営業力強化なのか 中堅・中小企業の経営者において、現在ほど営業力強 化を必要としている時はありません。国内市場の縮小に よる企業間競争の激化、グローバル化によるサプライチ ェーンの変化など、中堅・中小企業を取り巻く環境は厳 しさを増しています。こうした中、多くの企業は生き残 りを図るため、新商品開発や新規事業推進、海外進出な どを経営課題として取り組んでいます。 しかしながら、これらの取り組みは、目下の既存事業 において確固たる収益があってこそ可能なものです。収 益確保の方法として主流であったコスト削減だけでな く、既存事業において確実に収益を確保できるように、 売上高の維持・向上を目指して営業体制を見直し、営業 力を強化していく必要があります。 2.営業における当たり前のことができているか 業界内で一定の地位を確保している企業でも、営業に おける当たり前のことを実施できていないことが多々 見受けられます。当たり前のことができていないとは具 体的にどういうことか、以下で説明します。 ●営業データに基づかない、あいまいな営業方針 経営トップが示した営業方針があいまいなために、 営業部門で十分に実行されないケースです。主な要因 として、社内における営業データ(営業担当別、顧客 別、商品別の販売実績等)の整備・活用が不十分なた め、営業データの分析に基づいた客観的な営業方針を 明示できていないことが挙げられます。営業データの 分析が十分でなければ、注力する顧客層や商品の選定、 さらには最適な営業人員や予算などの資源配分につい ても判断できません。根拠があいまいな営業方針では、 営業マンを納得させることができず、成果も限定的と なってしまいます。 ●営業管理の仕組みが不十分で活動実態が見えない 営業部門の活動がブラックボックス化され、経営ト ップが実態をつかめないケースです。主な要因として、 会議体や管理帳票等の運用が適切でないなど、営業管 理の仕組みが十分でないことが挙げられます。例えば、 営業部門から月々の実績は報告されるものの、個別見 込案件の進捗や個々の営業マンの活動実態が分らない などといった状況が見受けられます。こうした場合、 経営トップは報告される実績を確認するだけとなって しまい、営業マンが成り行き的な営業活動を続けるこ とを許すことになります。 ●営業部門が新規顧客開拓や新商品販売に消極的 営業部門において、新規顧客開拓や新商品販売への取 り組みがおざなりとなっているケースです。営業方針や 営業管理上の問題もありますが、原因として、営業マン の意識が現状肯定・自己満足型になっており、新たな取 り組みに対する意味合いが十分に理解されていないこ とが挙げられます。とくに、ベテランの営業マンが多く、 既存顧客へのルートセールスが営業活動の中心となっ ている場合に顕著に見受けられます。 3.営業力強化において取り組むべきこと 上述のような状況に陥っている中堅・中小企業では、 当たり前のことを徹底することで営業力強化を実現でき ると考えます。即ち、方針を明確にして実行プロセスを 見える化する、さらに営業マンの意識を変えることです。 現状に適応しながら PDCA サイクルをしっかり回し、目標 達成へ向けた仕組みを整備・構築します。具体的に取り 組むべきことを次に説明します。 ①営業方針の明確化のための営業データ整備 営業データの整備には、システム投資が必要なことも ありますが、オフコンなど既存のシステムでも、使いづ らい面もあるものの事足りる場合が多いです。営業デー タの整備では、データの抽出や分析を業務として担当す る部署がないこと、それを行う人材が限られることなど がネックとなっている会社が多く見受けられるため、担 当部署の決定や、実際に業務を行う人材の育成・配置が 必要となります。 ②確実な実行を促す、営業活動の見える化 現在の会議体や管理帳票等の運用を見直し、個別見込 案件の進捗や個々の営業マンの活動実態などが見える ように再設計します。その際には、客観性と調整力のあ る人間をリーダーとし、各部門から選抜した現場社員か らなるプロジェクトチームを組成して検討させること で、実効性の高いものが出来上がるようにします。 ③主体的な実行を促す、営業マンの意識改革 営業マンの現状肯定型の意識を変えることが必要で す。上述の①と②の取り組みがスタートです。方針を受 けて目標を設定し、その実現に向けた施策をとりまとめ て実践する、主体的な取り組みを促します。経営トップ 自らが会議体で進捗状況を確認し、繰り返し営業方針を 発信していくことが重要となります。 4.最後に 上述の当たり前のことを実行することにより、特定の エース営業マンに頼る属人的な営業体制から、組織全体 の営業力を継続的に向上する体制への転換が可能となり ます。組織全体の営業力を向上させることは、既存事業 の収益確保だけではなく、新規事業推進などにおいても 有効に機能します。 ただし、営業力強化の取り組みは容易ではありません。 そのため幣社へのコンサルティング依頼も多いのが現状 です。しかしながら、実行において重要なのは、経営ト ップのコミットメントであることに変わりはありません。 多くの中堅・中小企業を取り巻く経営環境は一層厳しい ものとなることが予想されます。営業の当たり前のこと を確実に実行できる、強靭な組織体への転換が生き残り の条件となっています。