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肺炎や気管支喘息はわが国における主要な呼吸器疾患である。平成25
研究の概要 研究の成果 肺炎や気管支喘息はわが国における主要な呼吸器疾患である。平成25年度の人口動態統 計によると、肺炎は日本人の死亡原因の第3位となっている。一方、日本における気管支喘 息の罹患者は200万人にも上ると推定されている。喘息の急性増悪は日常生活に著しい影響 を及ぼすのみならず、生命に関わる重篤な発作を呈することもある。 このような肺炎や気管支喘息の急性増悪には、種々の細菌・ウイルスが関与することが 報告されている。これら病原体の検出割合や臨床症状との関連は、予防策や治療方針を立 てる上で重要な情報と考えられる。しかしながら、病院でのウイルス検査は一般的に困難 であるため、これらの疾患におけるウイルスの関与については未だ不明点が多い。さら に、呼吸器感染症の研究は小児が中心であり、成人を対象とした報告は少ない。 そこで本研究では、市中肺炎及び気管支喘息の成人患者を対象に、気道検体からRT-PCR 法を用いて種々のウイルスを検索し、病原体検出状況及び臨床症状との関連を調査した。 また、呼吸器感染症の全体像を把握するため、細菌検査も実施し、比較検討した。 2012年8月から2016年1月の間で、市中肺炎または気管支喘息の急性増悪を呈する同意の 得られた成人患者を対象に、ウイルス及び細菌検査を行った。 【市中肺炎】全162例中99例(61.1%)より病原体が検出された。このうち、最も多く検出さ れた病原体は肺炎球菌、次いで黄色ブドウ球菌であった。ウイルスの検出率は全体で20%程 度であった。しかし、ウイルスが検出された症例の92%で呼吸不全が認められており、市中 肺炎におけるウイルス感染の重要性が示された。 【気管支喘息】全99例中例50例(50.5%)より病原体が検出された。ライノウイルスが検出病 原体の半数近くを占めており、気管支喘息の急性増悪に強く関連していると考えられた。 また、病原体の気道感染が喘息発作の重症化に関与することが示唆された。中でもライノ ウイルスがより重症化しやすい可能性が疑われたが、これについては更なる検討が必要で ある。