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売れる! 事業アイデア発見法
起業家応援マガジンVOL.74(2016年8月24日) 売れる! 事業アイデア発見法 第2回 いいアイデアとは、実現可能かつ模倣困難なアイデア 一般社団法人起業支援ネットワーク NICe 代表理事 株式会社タンク 代表取締役 増田紀彦 はじめに みなさん、こんにちは! 一般社団法人起業支援ネットワーク NICe 代表理事の 増田紀彦です。先月よりスタートした『売れる! 事業アイデア発見法』。前回の テーマは、「事業アイデアは、小さくても強いビジネスを創造するための生命線」 でした。小さなビジネスや新人起業家が、先輩起業家に伍して生き延び、成長す るためには、「他とは一味違う」魅力をビジネスに付加することが不可欠というこ とをお伝えしました。 さて、第2回のテーマは、「いいアイデアとは、実現可能かつ模倣困難なアイデ ア」です。どんな事柄にも良し悪しがありますが、事業アイデアにも、いいアイデ アと悪いアイデアが存在します。まずはこの線引きを明確にしていきましょう。 事業アイデア評価の前提は、実現可能性の高さ 事業アイデアに対する評価は、一般的に市場性、採算性、競合優位性、新規性 などの指標を用います。買いそうな人がほとんどいない、売れたところで儲から ない、同業者に勝てるとは思えない、ありふれた商売である……、などの評価を 受ければ、それは悪いアイデアということになります。すべてが反対の評価なら、 いいアイデアです。 起業家応援マガジンVOL.74(2016年8月24日) しかし、これらの指標よりはるかに重要な指標が実現可能性です。「本当に実行で きるのか?」と問われて、答えに窮するようでは話になりません。そのアイデアを 発案した人(企業)が確実に事業化できることが、いいアイデアの前提です。 太鼓判を押せるのは、模倣困難性の高いアイデア もうひとつ大事なことがあります。実現可能なアイデアだとしても、それを事業 化した途端、簡単に他者に真似されるようでは困ります。模倣され、価格競争が発 生すれば、利益低下→コストダウン→品質低下という悪循環に突入しかねません。 他者から「あの事業はすごいね。でも、どうやったらできるのだろう?」と思われ るような模倣困難性の高いアイデアこそが、本当の意味で素晴らしいアイデアなの です。 実現可能なアイデア発見のための、起業資源の棚卸し 2種類のシートを用意しました。1枚目は自分自身が持っているもの、あるいは自 分自身でできることを洗い出すためのシート。2枚目は、自分は持っていない、ある いは、できないが、「○○を持っている□□さん」や「△△ができる☆☆さん」がい る、というふうに人脈を洗い出すためのシートです。これらの回答(自分自身の起業 資源)が、どう事業アイデアに結びつくかは、あとでお伝えします。 とにかく、この合計20通りの質問項目に対する回答を、ひたすら書き進めていく ことが大事です。人生30年なら30年、60年なら60年、それだけ生きていれば、 持っているものもできることも人脈も、かなりの数に達しているはずです。 起業資源の棚卸し(1) 自分自身が持っているもの、できること ○専門(専攻)における知識や経験など ○現在の趣味や仕事以外の活動 ○中でもこれは人に負けないと思うもの ○今はやめたがかつてやっていた趣味や活動 ○勤務などで得た専門以外の知識や経験 ○なんとなく「たくさん持っている」もの ○取得している資格や免許など ○あなたが所有する形のある資産や大事なもの ○子供の頃、得意だったり夢中になったり ○あなたが所有する形のない資産や大事なもの したこと 起業家応援マガジンVOL.74(2016年8月24日) 起業資源の棚卸し(2) 自分自身が持っているもの、できること ○勤務先の同僚や上司、部下 ○家族や親戚 ○顧客や仕入れ先など、社外の関係者 ○出身地の友人や知人 ○以前同僚だったり先輩だったりした人 ○趣味などの仲間 ○競合他社や同業者の知り合い ○ご近所や地域の仲間 ○利害関係のない異業種の知り合い ○その他、生協やPTA、同窓会などの知り合い 過小評価しがちな、自己の起業資源 ところが、必死に記憶を探ってみたものの、シートに書ける事柄が浮かばないと いう人がいます。これは、思い出せないのではなく、該当する事実を無意識に除外 しているからです。例えば「保有資格」のところに、「自動車運転免許」と書かな い人がいます。実際には持っているのに、「誰でも持っているから」といって書き ません。しかし、本当に誰でも持っているでしょうか? 高齢化社会の日本では、 免許を返納するお年寄りが年々増えています。自動車を運転できることは起業資源 のひとつに十分なりうるのです。 起業により、自らの働く環境を変えた場合、「ありふれた もの」がお宝になったり、 「平凡な能力」が特技になったりす ることがあることを念頭に置き、20 通りの質問 に該当する事 実をひとつでも多く書き出すことが肝要です。 自己の起業資源同士を組み合わせる さて、資源の棚卸しがある程度進んだら、次のステップに移ります。自己の資源 と資源を組み合わせることによる事業アイデアの発見です。 ここに、4項目が入るマトリックスを用意しました。これを「組み合わせ発想法 シート」と呼びます。行と列に棚卸しの結果出てきた資源の名称を書き入れます。 見本に入っている言葉は、実際に棚卸し作業に取り組んだ40代の女性のシートか ら、私が4つ選び出して入れたものです。 「空手歴2年」と「英会話ガイド」は「趣 味や仕事以外の活動」に対する回答から、「ビーズ収集」は「たくさん持っている もの」から、「米国在住妹」は「家族や親戚」からといった具合です。そして「組 み合わせ発想法シート(2)」のように、それぞれを組み合わせることで実現でき そうな事業アイデアを探ってみるのです。 起業家応援マガジンVOL.74(2016年8月24日) 例えば【A】の「空手歴2年」と「英会話ガイド」を組み合わせてみます。すぐ に思いつくのは、「外国人相手の空手教室」でしょうか。もう少し考えてみます。 今度はその逆で、「日本の子供たちに空手と同時に英会話を教える教室」が浮かび そうです。市場性は後者のほうが高そうですね。このような感じでほかの組み合わ せについてもアイデアを出していきます。 4つの資源を組み合わせれば、もはや誰も真似できない 【A】から【D】まで取り組んでみると、かなりの数のアイデアが出てくるでし ょう。しかしできることなら、4つの資源すべてを組み合わせるアイデアにまで到 達したいところです。実は、この見本にある4つの資源を組み合わせた事業がすで に誕生しています。空手の道着に和風の絵柄をビーズ刺繍したものを製造し、その カタログを持参して外国人観光客相手のガイドに出掛け、折りを見て営業。注文を 受け、その注文数が一定量に達したところで国際宅配便を使ってアメリカの妹さん のところに出荷。妹さんはアメリカ国内宅配便を使って注文者に納品する、という ビジネスです。 起業家応援マガジンVOL.74(2016年8月24日) この「ビーズ空手着製造販売ビジネス」は、実現可能性も高ければ、模倣困難性 も高いアイデアです。もともと自分の持っているものやできること、縁のある人を 資源にしているのですから、実現は可能です。 一方、英会話が堪能な人や空手を習っている人、ビーズを持っている人、家族や 親戚が海外で暮らしている人などは、世間にたくさんいるものの、その4つを兼ね 備えている人となると、恐らく何人もいないでしょう。ということは、真似したく ても真似できる人がほぼいない、ということになります。 まとめ 「自分」を起点にして資源を探り、その資源を組み合わせることで、あなたにし か始めることのできない事業アイデアを発見できます。まずは「己を知る」ことから。 次回の第3回は、「アイデア発想法を活用して、ビジネスチャンスを見出そう」 です。それではまた来月。 プロフィール 増田紀彦(ますだ・のりひこ) ◆一般社団法人 起業支援ネットワーク NICe ◆株式会社タンク 代表理事 代表取締役 地方新聞社、広告会社勤務を経て、87年、株式会社タンク設立。97年、起業・ 独立・新規事業を応援する情報誌『アントレ』創刊に参加。2007年、経済産業 省『起業支援ネットワーク NICe』チーフプロデューサー就任。同事業の民営化に より現職。著書に『起業・独立の強化書』、『正しく儲ける「起業術」』ほか共著も 多数。 ◆起業支援ネットワーク NICe サイト http://www.nice.or.jp/