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その他の現代の諸課題③

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その他の現代の諸課題③
第5章
現代の諸課題
その他の現代の諸課題③
貧困・飢餓問題への取り組み
1. 現代の思想
① ロールズ(アメリカ)…主著:
『正義論』
社会倫理学の復権を提起し、公正としての正義を第一原理として「平等な自由の原理」
を、第二原理として「格差原理」をあげ、自由競争とその結果生じる貧富の差を肯定した。
② セン(アマーティア=セン)(インド出身)…主著:
『貧困と飢饉』
『不平等の
経済学』
英植民地時代のインドでの貧困の経験(ベンガル大飢饉(1943))をもとに、貧困や飢餓か
ら人間を救うには、経済的な開発や援助だけでなく、識字能力と自由な言語能力の育成が
不可欠とし、人間の潜在能力の開発と発展と説いた。また、貧困・飢饉・病気・戦争など
人間の生命と生活を脅かすリスクから守る人間の安全保障を提唱。 2.第二次世界大戦後の国際的取組み
① ユネスコ(国連教育科学文化機関)
(1) 概要
教育・科学・文化・通信を通じて国家間の協力を促進し、世界の平和と安全をはかるこ
とを目的とした専門機関。
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第 58 講
その他の現代の諸問題③
(2) ユネスコ憲章
「戦争は人の心の中で生れるものであるから,人の心の中に平和のとりでを築かなけれ
ばならない。相互の風習と生活を知らないことは,人類の歴史を通じて世界の諸人民の間
に疑惑と不信をおこした共通の原因であり,この疑惑と不信のために,諸人民の不一致が
あまりにもしばしば戦争となった。
」
② ユニセフ(国連児童基金)
発展途上国の児童・青少年に対する食糧・医療などの援助を目的とする機関。
③ ODA(政府開発援助)
先進国から開発途上国への資金などの援助。日本は 1990 年から 2000 年までのあいだ
世界最大の援助支出国。
④ 国連貿易開発会議(UNCTAD)(1964∼)
先進国に有利になっている貿易システムの改善や発展途上国への援助拡大を通じて南
北問題(貧しい「南」と豊かな「北」の不均衡の問題)の解決をめざす。
人権問題
1.人権保障の国際化(共生社会の実現をめざす)
① 世界人権宣言(1948)
人権尊重が平和的な国際社会の形成には不可欠。人種・皮膚の色・性・言語・宗教など
から生まれる差別をなくすことを目的とし市民権・政治的自由権に加え社会権・労働権・
教育権などを規定。
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第5章
現代の諸課題
② 国際人権規約(1966)
世界人権宣言を法的拘束力のあるものとして条約化。
(1) 難民の地位に関する議定書(1967) • 難民条約(難民の地位に関する条約)(1951)が、1951 年以前(とくに第二次大戦・第一次
中東戦争を前提)に発生した難民に対しても適用される時間の制約を伴うものだった
ため、議定書として作成。
• 日本は難民の認定・受け入れに消極的。
(2) 人種差別撤廃条約(1965) (3) 女子差別撤廃条約(1979) (4) 子どもの権利条約(1989)
意見表明の権利など、子どもは権利行使の主体。
③ 常設国際刑事裁判所設置(1997)…本部:ハーグ(オランダ)
国家や軍による非人道的行為を断罪。
2.アムネスティ=インターナショナル
思想・宗教などを理由に投獄されている「良心の囚人(政治犯)」の釈放運動、拷問・死
刑の廃止を求める運動など、国際的に人権擁護運動を行う NGO 団体。
※NGO(非政府組織)
政府から独立した民間組織(例:国境なき医師団)ODA に比べ規模は小さくても地元住民
の要求に沿った活動が可能。NPO と同じく営利を目的としない(ただし無報酬という意味
ではない)。採算性を確保し常勤者には報酬を支払うことも必要。とくに行政からの独立を
強調する場合に NGO と呼んで区別する。
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平和問題
1.反核運動
① 第五福竜丸事件(1954)
杉並の主婦の運動→第一回原水爆禁止世界大会(広島・1955) 原水爆禁止運動。
② ラッセル・アインシュタイン宣言(1955) 著名な科学者 11 名が核兵器の廃絶を訴える宣言(日本からは湯川秀樹も参加)。
③ パグウォッシュ会議
核兵器と戦争の廃絶をめざす科学者の会議(1957∼) 2.核軍縮
① 部分的核実験禁止条約(PTBT)(1963)…米英ソ調印。仏・中未加盟。
② 核拡散防止条約(NPT)(1968)…62 カ国調印。
(1) 核保有国(米英仏ソ中)
核兵器の譲渡禁止・誠実な核軍縮交渉の実施義務。
(2) 非核保有国
核兵器の製造・取得禁止。国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れ義務。インド・パキス
タン・イスラエル非加盟。北朝鮮脱退(2003)。
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現代の諸課題
③ 包括的核実験禁止条約(CTBT)(1996)
米・中・インド・パキスタンなど未批准。未発効。
④ 「核なき平和」演説(2009)(プラハ)…オバマ大統領(米)
3.その他の軍縮関連条約
① 化学兵器禁止条約(1993)
② 対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)(1997)…米・中・露未署名。
③ クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)(2008)…米・中・露未署名。
4.戦争責任
(1) 前提
第二次世界大戦はドイツ・イタリアのファシズム、日本の軍国主義によってはじめられ
た侵略戦争である。
(2) ドイツ
• ニュルンベルク裁判(1945∼46) 戦争犯罪断罪。
• ヴァイツゼッカー(ドイツ大統領) 1985 年「過去に目を閉ざす者は、結局、現在にも目
を開かなくなる」(「荒野の 40 年」)。
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センは『不平等の再検討』において、
「すべての人に平等に配慮しようとすれば、不利な立場
の人を優遇する、
『不平等な扱い』が必要な場合がある」と述べている。ここで言う、不平等な
扱いを通じた平等への配慮の例として正しいものを、次の①∼④のうちから一つ選べ。 (センター試験) ① 従来は女子のみを入学対象にしていた大学を男女共学とする制度改革。
② 求人広告を出す際、年齢、性別などに制限を設けることを禁じる法規定。
③ 人種、信条、性別、社会的身分又は門地による差別を禁じる憲法上の規定。
④ 企業に一定割合で障碍者を雇用することを義務付ける法規定。
現代社会においてもまだ数多くの差別が残っている。こうした差別に対する姿勢として適当
でないものを、次の①∼④のうちから一つ選べ。 (センター試験) ① 差別が続く一因は、
日常生活の中に存在する差別に気づいていないことにある。
そこで、
差別とは何かを考え、身近にある差別から目をそらさないようにする。
② 差別が続く一因は、差別の構造を明らかにすることで差別する意識が生まれるところに
ある。そこで、差別の構造については学び知る機会を設けないようにする。
③ 差別が続く一因は、差別を生み出してきた要因や背景が十分に理解されていないことに
ある。そこで、差別の社会的要因や歴史的背景について学ぶようにする。
④ 差別が続く一因は、他者の痛みや苦しみにまで思いが及ばないことにある。そこで、想
像力を働かせて、差別すること・されることについて考えるようにする。
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「地球市民」としての責務に関して、日本国憲法前文にはすでに、
「われらは、平和を維持し、
れいじゅう
専制と 隷 従 、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉あ
る地位を占めたいと思ふ」とあるが、その現状についての記述として最も適当なものを、次の
①∼④のうちから一つ選べ。 (センター試験) ① 日本は、世界人権宣言の内容を条約化した国際人権規約に従って人権保障に努めており、
規約人権委員会から是正の勧告を出されたことはない。
② 日本は、非人道的な対人地雷の使用・生産・貯蔵を禁止し、廃棄を求める「オタワ条約」
を批准し、全面禁止に向けた国際的な動きに貢献している。
③ 日本は、発展途上国に対する政府開発援助の規模は小さいものの、環境や住民の暮らし
には十分に配慮をしており、他国の手本となっている。
④ 日本は、多くの難民を受け入れており、人数の点でも、また難民に保障される最低限の
医療・生活支援の点でも、欧米諸国に匹敵するほどである。
第二次世界大戦後、国家や軍の非人道的な行為を防ごうとする努力が重ねられている。その
ような国際社会の試みに関する記述として最も適当なものを、次の①∼④のうちから一つ選べ。
(センター試験) ① 1990 年代に地雷禁止国際キャンペーンが始まり、オタワ条約が結ばれたが、軍事大国の
アメリカ合衆国やロシア連邦などは批准していない。
② 1990 年代にルワンダ内戦などで犯された罪を裁くために、臨時の国際刑事裁判所が設置
されたが、常設の国際刑事裁判所はまだ設置されていない。
③ 非人道的な兵器の使用を防ぐために国際社会は努力しているが、化学兵器については同
意が得られず、国際条約はまだ採択されていない。
④ 東西冷戦下では、核を保有することで戦争を抑止できるとする議論が盛んであったが、
現在では保有国における核兵器製造は禁止されている。
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あらゆる人びとが平等に尊重されるための取組の例として適当でないものを、次の①∼④の
うちから一つ選べ。 (センター試験) ① 国際連合教育科学文化機関憲章(ユネスコ憲章)は、第二次世界大戦において被災した子
どもを救援することを目的とし、児童と青年が個人として生活するための十分な社会整備
がなされるべきだと宣言している。
② 世界人権宣言は、第二次世界大戦後に諸国民の友好関係の発展を奨励し、世界のすべて
の人が、人種、皮膚の色、性、宗教などによって差別を受けることなく、生まれながらに
平等であることを主張している。
③ 児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)は、子どもたちの完全で調和のとれた発達
を促すために特別な保護を与える必要性を認識し、子どもへの差別を禁じ、その自由と権
利を実現することを宣言している。
④ 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(女子差別撤廃条約)は、社会と家
庭における伝統的な性別役割を変更することも、男女の完全な平等を達成するためには必
要であると主張している。
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国連が定めた各種国際年についての記述として最も適当なものを、次の①∼④のうちから一
つ選べ。 (センター試験) ① 国際婦人年の目的は、現代にふさわしい女性らしさ・男性らしさを考慮した分業体制の
導入などである。
② 国際児童年の目的は、先進国における授業時間の増加や個性を重視した少人数教育の徹
底などである。
③ 国際障害者年の目的は、障害者の雇用機会の増大や社会への完全な参加を実現すること
などである。
④ 国際先住民年の目的は、教育によって先住民を周辺の多数民族に同化させ、差別をなく
すことなどである。
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第5章
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ユネスコ憲章の文章を、次の①∼④のうちから一つ選べ。 (センター試験) ① われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努め
ている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。われらは、全世界の国民が、
ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
② 戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければ
ならない。相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の諸人民の間に
疑惑と不信をおこした共通の原因であり、この疑惑と不信のために、諸人民の不一致があ
まりにもしばしば戦争となった。
③ すべての者は、特に人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若
しくは社会的出身、財産、門地その他の地位によるいかなる差別をも受けることなく、こ
の宣言に掲げる権利と自由とを享有することができる。
④ 総会は、国際の平和及び安全の維持についての協力に関する一般原則を、軍備縮小及び
軍備規制を律する原則も含めて、審議し、並びにこのような原則について加盟国若しくは
安全保障理事会又はこの両者に対して勧告をすることができる。
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第 58 講
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ラッセル‐アインシュタイン宣言の内容の説明として最も適当なものを、次の①∼④のうち
から一つ選べ。 (センター試験) ① 自然科学が各国の人種差別的な政策の正当化に利用されたことを反省し、人種差別的な
政策の世界的廃止を求めるものである。
② 科学者が核兵器の開発に深く関わってしまったことを反省し、紛争解決の手段としての
戦争の放棄を各国に求めるものである。
③ 第二次世界大戦中の人体実験の悲惨な経験を踏まえ、科学者の行いを反省し、本人の同
意のない人体実験の禁止を求めるものである。
④ 科学技術が地球環境に破壊をもたらすほど発展してしまっていることを踏まえ、科学技
術者の反省的自覚を求めるものである。
ラッセルについての記述として最も適当なものを、次の①∼④のうちから一つ選べ。 (センター試験) ① 戦闘的ヒューマニズムの立場に立って、世界平和の確立のため、平和の敵と断固闘うこ
とを説き、自らも反ファシズム運動に身を投じた。
② 核戦争による人類破滅の危険性を警告する宣言を発し、パグウォッシュ会議を開催する
など、核兵器廃絶運動に精力的に取り組んだ。
③ 人間ばかりでなく、あらゆる生物の生命を守り敬うことが善であると唱え、アフリカに
渡って医療とキリスト教の伝道に携わった。
④ 『戦争と平和』などで知られる文豪であると同時に、キリスト教的隣人愛や非暴力主義
を唱え、後のヒューマニズム運動に大きな影響を与えた。
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第5章
現代の諸課題
経済発展に伴う問題についての記述として適当でないものを、次の①∼④のうちから一つ選
べ。 (センター試験) ① 現代の経済は消費者の欲望を駆り立てることにより発展してきたが、環境破壊や資源の
枯渇は、経済成長には限界があることを示している。
② 南北格差の拡大に伴い、癸展途上国への経済援助が必要となっているが、近年の先進国
の人口増加は、このような援助を困難にしている。
③ 経済発展に伴う都市化の進展により、地域社会のきずなが損なわれ、道徳心の低下や福
祉コストの増大といった問題が指摘されている。
④ 経済のグローバル化に伴い、投機的取引が拡大するなど、金融市場の不安定要素が増加
し、その管理はますます困難になっている。
現代社会の問題についての記述として最も適当なものを、次の①∼④のうちから一つ選べ。 (センター試験) ① 携帯電話やインターネットなどの通信手段の発達により、直接的で対面的な出会いはも
はや不必要なものとなった。
② 都市化に伴う大衆社会の形成は、地位や財産にとらわれない個性豊かで自立的な人間を
ますます多く生み出している。
③ 高齢化社会においては、高齢者の公的年金や医療福祉を充実させるため、若い世代は以
前より多くの人数で一人の高齢者を支えざるをえなくなった。
④ 国際化が進展する今日、ボーダレス化が様々な領域で起こっている一方で、民族的アイ
デンティティを主張する動きも世界各地に見られる。
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第 58 講
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先進諸国の市民の責任を果たすために、
各国政府の働きに加え NGO(非政府組織)や NPO(非
営利組織)の活動が期待されている。これらの組織の活動の説明として適当でないものを、次の
①∼④のうちから一つ選べ。 (センター試験) ① NGO・NPO の長所の一つは、市民が自分の関心と能力にもとづいて、募金や労働など
様々な参加の仕方を選択できることにある。
② NGO・NPO は、参加者の善意にのみもとづく活動であり、参加者が金銭的な報酬を得
ることは避けるべきであるとされている。
③ NGO・NPO は、ODA(政府開発援助)に比べ、規模は小さくても、地元住民の要求に沿
ったきめ細かい支援を行うことができる。
④ NGO・NPO は、市民レベルでの活動であり、政府に頼らず一般市民の間にも地域社会
や国際社会への関心を呼び起こすことができる。
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