...

1 プロジェクト名 研究背景 研究目的 及び目標 成果概要

by user

on
Category: Documents
15

views

Report

Comments

Transcript

1 プロジェクト名 研究背景 研究目的 及び目標 成果概要
プロジェクト名
研究背景
研究目的
及び目標
成果概要
亜熱帯地域の海洋開発計画に伴う新技術の研究
近年、日本の沿岸域は荒廃現象が進み、海産生物の生産能力の低下が顕著となって
いる。また、沿岸のコンクリート構造物から溶出したアルカリが沿岸域の生物生産能
力を低下させているとも考えられている。
そこで、本研究開発では、セメントの一部をフライアッシュに置き換えた低アル
カリタイプのコンクリートを検討するとともに、鉄分供給により藻類繁殖効果を有す
る「鉄岩化工法」を併せて検討し、それらの効果が最も得られやすい魚礁でその確認
を行う。
これにより、産業廃棄物であるフライアッシュの有効利用とコンクリート魚礁の機
能向上を図り、ひいては沖縄沿岸域の環境を改善するコンクリートを開発することを
目的とする。
本研究開発の結果、以下の成果が確認できた。
1.魚礁追跡調査
(1)最も藻類繁殖機能が高く、魚礁を中心とした食物連鎖が確立していたのは、フラ
イアッシュコンクリートに鉄岩化塗料を塗布した魚礁であった。
(2)造礁性イシサンゴの着床基盤に最も適していたのは、フライアッシュコンクリー
トのみの魚礁であった。
2.藻類繁殖状況水槽実験
(1)水深5m程度の海洋環境を想定した水槽実験での藻類繁殖効果は、フライアッ
シュコンクリートに本研究で特許出願を考えている新鉄岩化塗料を塗布した供試
体(BC-Fe(B)供試体)のみに、統計学的な観点からも優位差がある事が確認され
た。
(2)天然海水の流水条件でも、フライアッシュコンクリート供試体や鉄岩化施工供試
体は、ベースコンクリートよりもアルカリの溶出量が抑えられる事が判った。ま
た、タンクリーチング試験では、その結果がより明確になった。
(3)タンクリーチング試験の結果、フライアッシュコンクリート及び鉄岩化塗料から
は、重金属等の有害物質の溶出は確認できず、環境への影響が無い事が判った。
(4)また、(1)の屋外水槽実験で最も藻類繁茂した BC-Fe(B)供試体は、藻類の発生・
繁殖に必要な鉄分や窒素・ケイ素の溶出が多く、アルカリの溶出が少ない事が確
認された。
3.海洋開発のための新規コンクリートの仕様 提案に関する研究
(1)圧縮強度の発現
従来のコンクリートと比べて単位セメント量が約2/3と少なくとも、フライアッ
シュを添加したコンクリートは長期材齢での強度発現が大きく、材齢が56日に
至れば従来のコンクリートの材齢28日強度を充分に上回ることが確認された。
(2)ポロシチー(細孔容積量)
フライアッシュを添加した配合では乾燥条件でない養生の場合、フライアッ
シュ成分とセメント成分の反応(ポゾラン反応)により細孔構造が緻密化してい
る。水分の供給される養生条件である海洋工事のコンクリートとしては、フライ
アッシュを添加することによるコンクリート組織の緻密化が得られ品質・性能の
確保・向上に効果的である。
(3)中性化の進行性
フライアッシュを多量添加したコンクリートは、従来のコンクリートに比べて
中性化速度係数は約2倍程度となるが、今回、対象とする海洋コンクリートは海
水中または護岸土中に施工され、大気の炭酸ガスによる中性化進行の生じる環境
ではなく、中性化の進行性は構造物の耐久性に影響しない。逆に、①セメント量
を低減しても従来のコンクリート同様以上の強度が得られることと、②ポロシ
チー構造が緻密化され品質・性能が向上することの利点を考えれば、海洋コンク
リートととして有効なコンクリートといえる。
1
(4)塩化物イオンの浸透性
フライアッシュ添加量の増加に応じて、塩化物イオンの浸透が抑制され、フラ
イアッシュを添加しない従来のコンクリートに比べてコンクリート中への拡散係
数は6割以下に低減されることが確認された。フライアッシュを多量添加するこ
とにより、塩害によるコンクリート構造物の鉄筋腐食の抵抗性が高く、耐久性に
優れる海洋コンクリート構造物が実現できる。
(5)フライアッシュを多量添加した「海洋コンクリート」の新規仕様の提案
今回の検討結果から、フライアッシュを添加した「海洋コンクリート」として
有効利用する場合の新規仕様を検討した。
事業化に向
本研究の結果、魚礁の最適コンクリートはフライアッシュコンクリートに鉄岩化塗
けた段組み
料Bを施工する事であると判った。ただし、これらの結果にも幾つかの問題点があげら
[今後の展
れ、これらを改善または検討する事により、より効果の高い魚礁が完成できると考え
望]
られる。以下に事業に向けて改善すべき点、検討すべき点を述べる。
(1)サンゴ礁海域型の魚礁の開発
4種類の基盤・基質の魚礁のうち、№4のFAC-Fe魚礁が最も魚礁効果が高いと確
認できたが、この効果を更に上げるため、今後は魚礁の隙間(シェルター)の大き
さや形の研究を進め、サンゴ礁海域型の魚礁の開発を目指すものである。
(2)サンゴ着床基盤の開発
造礁性のイシサンゴの着床基盤には、鉄岩化塗装を施さないフライアッシュコン
クリートの魚礁が適していた。よって、より効果的なフライアッシュコンクリート
を用いたサンゴ着床基盤を開発し、赤土流出などにより荒廃したサンゴ礁回復技術
の確立を目指すものである。
(3)鉄岩化塗料Bの耐久性向上
本研究開発で考案された鉄岩化塗料Bは、最も藻類繁茂に効果が高かったが、スク
レーパーによる藻類の剥ぎ取り作業で容易に剥がれる事が確認された。よって、こ
の鉄岩化塗料Bの付着強度を上げる等、耐久性向上を目指すものである。これによ
り、藻類繁殖機能も長期化させる事になると考えられる。
(4)鉄岩化塗料Bの栄養塩配合検討
水槽実験で最も藻類繁茂が確認されたBC-Fe(B)供試体からは、藻類の発生・繁殖
に必要な鉄分や窒素・ケイ素の溶出が多く、アルカリの溶出が少ない事が確認され
た。
よって、今後はこれらの要素について、更に配合量を工夫することにより、藻類
繁茂により効果的な鉄岩化塗料を作成する事が重要と考えられる。
また、本研究で開発されたコンクリートは、環境にも良いコンクリートであるた
め、魚礁以外の海洋コンクリート構造物(消波ブロックや護岸等)にも広く利用を
提案出来ると考えられ、これらの事業化についても検討していく必要があると考え
られる。
(5)フライアッシュ添加コンクリートの有効利用の推進課題と取組
沖縄県(熱帯および亜熱帯海域)において、今後、フライアッシュを多量添加し
たコンク リートを海洋コンクリートとして有効利用を推進するに当たっての課題
と取組を表1に示す。
2
表1
課題
フライアッシュ添加コンクリートの有効利用の推進課題と取組
取組
コンクリートの
コスト
配合条件やフライ
アッシュの種類に
よっては高性能AE
減水剤の使用が必要
となりコストに影響
あり
フライアッシュの
安定供給
良質なフライアッ
シュの大量ストック
コンクリートを製造
可能な生コン工場の
限定
フライアッシュ用保
管材料ビンを工場が
保有していない
フライアッシュ多量
コンクリートを製造
できる技術者の有無
フライアッシュ多量
添加コンクリートを
現行の仕様基準に従
えば使用できない
現行仕様への不適合
コンクリートの流動
性を阻害しないフラ
イアッシュの種類を
限定する
より高性能な減水剤
を用いて使用量の低
減をはかる
フライアッシュの使
用によ
るトータルな材料費
の低減
海洋コンクリートに
適するフライアッ
シュの選定と大量ス
トック手段
県内の対応可能工場
把握
実施工段階のデータ
入手とそれに基づく
選定基準の整備
県内生コン工場技術
者へのコンソーシア
ム成果の周知
発注機関へのメリッ
トアピールによる仕
様改訂
資料配付、講習会の
開催等
適用メリットの社会
認知のための発表
海洋工事への採用提
案
新規混和剤の情報収
集
フライアッシュの流
通整備
・フラッシュアッシュ選
定基準
・ストックヤードの整
備・確保
工場設備調査
沖縄総合事務所、沖
縄県および各市町村
への研究成果の周
知、説明
土木学会、日本コン
クリート工学協会等
への論文投稿・発表
コンソーシアム成果
説明と適用提案また
は試験施工の提案
研究体制
研究組織及び管理体制
(管理法人)
(再委託先)
(財)南西地域産業活性化センター
沖縄電力株式会社
総括研究代表者
沖縄職業能力開発大学校 校長
大城 武
飛島建設株式会社
研究開発推進委員会
沖縄県生コンクリート工業組合
株式会社沖縄構造設計
(受託研究)
琉球大学工学部(国立)
琉球大学理学部(国立)
3
研究実施場
[委託]
所一覧表
財団法人 南西地域産業活性化センター
〒900-0015 沖縄県那覇市久茂地 3 丁目 15 番 9 号
アルテビルディング那覇2階
[再委託]
1)沖縄電力株式会社(最寄り駅:那覇交通 牧港バス停留所)
〒901-2602 沖縄県浦添市牧港五丁目2番1号
2)飛島建設株式会社(最寄り駅:地下鉄半蔵門線 半蔵門駅)
〒102-8332 東京都千代田区三番町2番地
技術研究所材料研究室(最寄り駅:東武鉄道野田線 川間駅)
〒270-0222 千葉県東葛飾郡関宿町木間ヶ瀬5472
3)株式会社沖縄構造設計(最寄り駅:琉球バス 農協前バス停留所)
〒901-2221 沖縄県宜野湾市伊佐2丁目12番1号
4)沖縄県生コンクリート工業組合(最寄り駅:那覇交通 埠頭入り口バス停留所)
〒900-0001 沖縄県那覇市港町2丁目14番1号
〔受託研究〕
1)琉球大学工学部(国立)(最寄り駅:那覇交通 琉大東口バス停留所)
〒901-0000 沖縄県中頭郡西原町字千原1番地
2)琉球大学理学部(国立)(最寄り駅:那覇交通 琉大東口バス停留所)
〒901-0000 沖縄県中頭郡西原町字千原1番地
生物圏研究センター瀬底実験所(最寄り駅:琉球バス 瀬底バス停留所)
〒905-0227 沖縄県国頭郡本部町字瀬底3422
工業所有権
本研究開発の成果を表2として申請予定である。
等の取得状
表2 工業所有権
況
内
区
分
名称(仮称)
発明特許の概要
容
廃棄物を原料と海水藻魚岩礁体の製造方法
コンクリート、自然岩や廃棄物を再利用した岩礁体に、鉄塩
含む材料とともに3栄養素(チッソ、リン、カリ)を含有さ
た塗工材でコーティングして、海水および水中に定住させて
岩礁体表面に動植物類、魚類、藻類が生息・付着・繁殖でき
ようにした、海水藻魚岩礁体の製造方法である。
対外発表と
・グリーンコールデーin japan
の状況
・㈱港建技術サービスに対し、研究開発概要の紹介
説明概要:「藻類繁殖によるコンクリート魚礁の研究」
「実大魚礁を用いたコンソーシアムの研究概要」
連絡窓口
財団法人南西地域産業活性化センター
連絡先 tel 098-869-2180
fax 098-869-0661
4
(担当;緑川・富田)
Fly UP