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「困り感のある生徒の就労支援のための学校体制の構築と外部機関との
「困り感のある生徒の就労支援のための学校体制の構築と外部機関との連携」
大阪府立大手前高等学校
定時制の課程
1
本校の概要
本校は大阪府庁に隣接し、目前に大阪城を望む交通至便地に位置している単位制普通科
の夜間定時制課程の高校であり、平成 22 年度に創立 60 周年を迎える伝統校である。
本校は定員 80 人、2 クラス募集の学校であるが、きめ細やかな対応をするために、表 1
のように 1 クラス当たり 30 人以下に抑え指導に当たっている。また、表 2 のように新卒者
だけでなく過年度生や中高齢者の生徒が多く在籍している。特に、 60 歳以上の高齢者が
18.3%を占め、各年次とも最高齢の生徒は 80 歳代である。
進路状況は、表3のように 40 数名の卒業生にうち 10 人前後が大学、短大、専修学校に
進学し、半数近くがアルバイトである。就職者はここ2年増加しているが、希望者全員が
就職できていない状況である。
表1
生徒数(平成 21 年 5 月 1 日)
1 年次(4 クラス) 2 年次(3 クラス) 3 年次(2 クラス) 4 年次(2 クラス)
男
女
計
男
女
計
男
女
計
男
女
計
合計
56
60
116
21
47
68
17
35
52
20
22
42
278
表2
年齢別在籍状況(平成 21 年 5 月 1 日)
1 年次
2 年次
3 年次
4 年次
新卒年齢
58
16
22
16
~19 歳
36
21
8
3
20,30 歳代
5
8
10
11
40,50 歳代
8
3
1
1
60 歳~
9
20
11
11
表3
進路状況(平成 18~20 年度)
大学
短大
専修学校
18 年度
5
0
3
19 年度
5
1
3
20 年度
6
0
3
2
就職
アルバイト
未定
卒業生
4
21
14
47
3
11
6
19
48
3
10
20
4
46
各種学校
研究の動機
本校では、学校生活を過ごしていく中で、45 分の授業時間を座っていることができない、
周囲の状況を考えて行動できない、コミュニケーションが取りにくいなどの何らかの課題
がある生徒が多く在籍している。また、本人や保護者からの申し出により、療育手帳など
を所持し、明らかな障がいがある生徒も在籍している。
文部科学省の「発達障がい等困難のある生徒の中学校卒業後における進路に関する分析
結果」によると高校進学者中の生徒の割合は定時制では 14.1%という結果があるが、本校
の場合、生徒自身はもちろんのこと、クラスメイト、教職員が感じる発達 障がい等困難の
ある生徒の割合は文部科学省の数値よりはるかに高い。
何らかの支援が必要な生徒(以下
困り感のある生徒と表記)が多く在籍していると教
職員は認識しているが、今日までもっぱら担任が一人で当該生徒に対応することが多く、
抱え込む傾向にあった。
また、教職員自身も、ここ数年、クローズアップされてきた発達 障がいに関する知識は
十分でなく支援方法について手探りの状態であり、さらに、卒業後の就労場所の確保とな
ると一層難しい状況であった。
このような中、本校では今年度、学校提案型個性化推進事業(GP 事業)を通して、発達
障がい等により困り感のある生徒に対する支援の在り方や校内組織の確立及び外部組織の
連携について研究をすることとした。
3
研究の概要
研究の具体的な内容は下記の通りである。
○
困り感のある生徒を支援する組織の設置
○
外部人材を活用した教員研修により発達障がいについての理解の促進
○
外部機関との連携の検討
○
先進校の視察
4
校内支援委員会の設置に向けて
(1)
平成 20 年度までの体制
従来、本校では生徒指導部に教育相談係を設置してきたが、前述のようにあくまで担任
主導で生徒相談が実施されることが多く、教育相談係に生徒情報が多く寄せられる状況で
はなかった。また、本校は身体的に配慮を要する高齢の生徒も多いため 2~3 ヵ月ごとに実
施される生徒情報交換の場では、様々な配慮事項の情報があふれ、個々の生徒の支援につ
いての検討に至らない状況であった。
平成 20 年度は、他校で開催された「高等学校における発達 障がい支援モデル事業」等に
よる研修 ※ 1 に教員が参加し、情報収集を行い職員会議で報告した。年度末には大阪府教
育センターから講師を招き職員研修を実施し、発達障がいについて教職員の共通理解を図
るようにした。また、本校での夏季教員集中研修会で、 1 人の教員の提案ではあったが、
生徒支援員会設置の提案がなされた。しかし、全国単位制高等学校長等連絡協議会三重大
会で発表された静岡県立浜松大平台高等学校の生徒チェックシート ※ 2 の導入も検討した
が、本校では教員の賛同が得られず実施に至らなかった。
※ 1 大 阪 府立 佐 野工 科 高等 学 校定 時 制 が実 施 した「 発達 障が いに つ い て理 解 を深 め 支援 につい て 考 える 」連続 講 座等
※ 2 支 援 すべ き 生徒 の 課題 を 見つ け る ため に 、教科 担 当者 が学 習 面( 態度・ 能 力 )、行 動 面( 性 格 傾 向 、社 会 性 )、そ
の 他( 自 己肯 定 感等 )の項 目 に つい て 、担 任 は自 己肯定 感 等 、登 校 状態 、 家庭 状況、 言 語 面、 そ の他 の 項目 に
つ いて 、 保健 室 は健 康面に つ い て生 徒 個々 人 を観 察する 記 録 簿
(2)
支援教育コーディネーターの指名
今年度、大阪府教育センター研修の「高等学校における支援教育コーディネーター養成
研修」に教員 1 名を参加させ、本校での支援教育の推進役とし、体制もできていない状況
であったが当該教諭を支援教育コーディネーターとして指名した。
(3)
校内支援委員会の設置
多くの教員研修の実施及び障がいがある生徒の就労支援の報告がなされることによって、
教職員間で 1 人担当の教育相談係から複数の教員で構成される組織の必要性が意識される
ようになった。
その結果、12 月に各学年代表、教育相談係(支援教育コーディネーター)、進路指導部
代表、養護教諭、教頭の 8 名からなる校内支援員会が発足した。
校内支援委員会の当面の目標は「学校生活において、あらゆる障がいに起因する「困り
感」をもつ個々の生徒への適切な支援を模索する」こととした。
(4)
校内支援委員会の活動
まず、設置時に下記のような活動を実施することになった。
・教員の「気づき」の促進のため、生徒情報をメモの形で収集する。そのために、各教務
室に報告メモ用紙(気になるメモ)をおく。
・現段階での要支援生徒の検討を始める。
・外部機関との連携の可能性を探るために、諸機関へ出向き、情報を集める。
外部機関:大阪府立中津支援学校、大阪府発達障がい支援センター「アクトおおさか」、
関西大学心理臨床カウンセリングルーム、大阪府障がい福祉事業団大阪 INA 職業
支援センター、大阪市職業リハビリテーションセンター、大阪府総合労働事務 所
職業カウンセリングセンター、大阪障がい者職業能力開発校、大阪障がい者職業
センター
その後、次年度の新入生を迎えるに当たり、迅速で適切な対応によって学校生活を支援
するために迅速な生徒情報を入手する必要があるとの合意によって、合格者説明会時に保
護者向けのアンケートを実施することとなった。
5
教員研修の実施
(1)
講演「高等学校における発達障がいのある生徒の支援の在り方とその課題について 」
実施日時
平成 21 年 11 月 19 日(木)
講
大阪大谷大学教育福祉学部
師
小田浩伸准教授
内容概略
○
授業担当者として次のナチュラルサポートが必要であると提案された。
①教室内を静かにさせる。
②教科書・ノートが全員そろっている。
③教室環境が大事-机の下がゴミの山になっていない。
○
など
保護者との連携での留意すべき事柄として次のようなアドバイスを受けた。
①保護者の気持ちを考え、まず支援ありきの立場での対応が絶対に必要である。
②「一度、医療機関で検査を受けてください」は絶対にやめて欲しい。
③情報提供を行うことで保護者との「連携」を深めることができる。
○
その他として、教員が教室を巡回することで「困っている生徒・支援が必要な生徒」
の「(担任・授業担当者の)気づき」を促進させなければならない。そして、生徒が
「わからない」ということが言える雰囲気をつくり、1 時間で一つでもわかったとい
う授業を展開してもらいたい。
○
「わかる」授業の工夫として、次の 5 点を強調された。
①授業担当者間の連携の工夫
②学習における支援(教材の工夫、板書の工夫、大事な部分の強調、予定変更の事前
予告など)
③行動上の支援(授業におけるルール・約束づくり)
④得意分野の強調支援(自尊心・自己評価を高める工夫)
⑤コーディネータの役割を明確にして(「生徒がわかるか」というテーマでの)授業
研究の定例化、校内組織委員会の機能化の促進
○
ナチュラルサポートのポイントとして、次の8ポイントをあげられた。
①指示やルールは簡潔、明確にする。
②よいところを探して、たくさんほめる。
③こだわりや関心事は、何かに生かす方向へすすめる。
④(向かい合うことが苦手で相手のテンションを上げないために)ワンアップ・ワン
ダウン(優位な立場を入れ替えながら)対応する。
⑤(曖昧さは伝わりにくいため)役割内容は具体的に伝える。
⑥自己選択・自己決定ができる場面をつくる。
⑦必要以上の叱責はしない。
⑧「あとで…」には必ずあとで対応する。
○
最後に、発達障がいの子どもには「(幼児期からの)早期教育」が必要である。「そ
んなに早くにレッテルをはってよいのか」という意見もあるが、早期教育をほどこさ
ず何も対応しなければ、学齢期の失敗体験やいじめがフラッシュバックとして思春期
に現れ、
「うつ」や「不適応」などの二次障がいを併発するおそれがある、と警告を出
された。
感
想
プレゼンテーションを活用して非常に分かりやすく、興味をひく研修であった。講演
内容は、発達障がいの有無に関わりなく、すべての支援につながる内容であったと感想
をいう教員が多かった。
また、定時制の教職員だけでなく、全日制や他校の教員も参加しての盛況な講演であ
った。
(2)
講
講演「職業カウンセリングセンターの業務紹介」
師
実施日時
大阪府総合労働事務所職業カウンセリングセンター
山本千晶氏
平成 21 年 12 月 3 日(木)
内容概略
○
業務内容
「あなたに向いている仕事を考えましょう」という立ち位置で、カウンセリング・職
業適性検査による自己理解を実施し、職業情報を伝え、職業理解のマッチングすすめる
機関であること、ハローワークのように職業紹介は実施していないことを強調された。
最近は、知的障がい・発達障がい等の在学中の若年層の相談も増加しているというこ
とである。
○
各種検査の活用と留意点
Prep-Y 職業興味検査、Capt-Y 性格検査、GATB(厚生労働省編一般職業適性検査)等の
検査を実施するに当たり、特に検査後の注意として、検査のやりっ放しあるいは検査結
果だけを返却するのではなく、担任(担当者)が個々の生徒と話し合う材料として使用
することを強調されていた。
検査結果の返却の方法として、本人の能力・性格の特徴を肯定的に受けとめることが
できるように配慮しながら、職業選択の方向性をいくつか提示し、本人の興味、得意・
不得意など感想や意見を求めながら絞り込んでいく、という手法を教えていただいた。
○
職業情報の提供の促進
「知らない仕事は選べない」ので、職業情報(職業の内容)を知らせる機会を増やす
ことが課題としてあげられた。
感 想 等
当該センターを今まで一部の教員は活用していたが、研修によってセンターの機能につ
いて教職員の理解が進んだようであった。障がいの手帳を所持していない生徒が就労を検
討するときに、第一に利用できるのが職業カウンセリングセンターであることは共通理解
できた。
また、事例紹介ということで、本校の生徒も検査を受けたことのある GATB(厚生労働省
編一般職業適性検査)についての結果の見方についての説明があり、理解がすすんだ。
しかし、この機関ではキャリアカウンセリングを実施するのであり心理的なカウンセリ
ングは実施していない点を理解する必要がある。
(3)
講演「障がい者雇用現場からの発信-就労支援を考えるから就労支援をうみだすへ-」
実施日時
平成 22 年 2 月 18 日(木)
講
師
矢野紙器株式会社代表取締役
内
容
○
矢野
孝氏(ネクストステージ大阪 LLP)
中小企業家の障がい者雇用への取組と姿勢
良い会社、良い経営者、良い経営環境という 3 つの目的と経営者として①作業能力(仕
事をやってくださいと言ったときに、仕事をこなせる作業力がある )、②作業効率(仕
事ができても、能率が悪ければ採算がとれない)、③作業意欲(仕事は上手だが、気の
向いた時にしか仕事をしない)という 3 つの社員に対する人材感を持っている。
さらに、経営者として「意欲を育む環境(領域)づくり」を目指している。「君がい
ないと本当に会社(皆)は困るんだ」ということを社員に分かってもらう 必要 があ る。
さらに、「働く事を通して知的障がいのある社員が社会貢献できる機会を作り出す」、そ
して「障がいのある人を受け入れることができない職場は一人前の職場ではない」とい
う教育感で企業経営を行っている。
○
LLP とは
有限責任事業組合[Limited Liability Partnership(リミテッド・ライアビリティ・
パートナーシップ)]のことで、専門的な知識や経験、ノウハウをもった人的資源と企業
が、力を合わせて新たな事業に取り組みやすくするための事業体制度で ある。
○
ネクストステージ大阪 LLP の活動
暮らしにつながる地域社会の中で、
「生きにくさ」を持つ人々に、体験や共働を通じた
実践の中で、就労や教育の機会や環境を多角的に提供する事を目的として 活動している。
具体的に、職域開拓、就労支援、就労継続を行っている。ネクストステージ大阪 LLP
の中で、矢野紙器では、障がい者を多く採用し、障がい者の就労支援をうみだしている。
ネクストステージ大阪の活動について説明していただいた。
感
想
本校でも、障がいがある生徒のインターンシップ先として矢野紙 器を活用させていただ
いているが、ネクストステージ大阪 LLP 全体の活動について知る機会となった。また、講
師の矢野氏の障がい者の就労支援にかける熱い思いを感じることができた。
※
本校では、同年度に文部科学省「チャレンジ事業」研究の一環として、
「大阪市リハビ
リテーションセンターの見学と業務内容について」の職員研修(講師
同センター所長
乾
伊津子氏)を実施した。この研修を通して、3 障がいの手帳を所持している生徒の今後の
進路指導に選択の幅が広がった。また、定時制高校という特長を生かし、3 障がいの手帳
を所持している生徒の就労体験などに保護者・家族、主治医等と連携をとりながら、当セ
ンターの活用を考えることができるようになった。
6
外部機関との連携の検討
本校では、平成 20 年度より担任等の一担当者が、一部の生徒の就労支援などで外部機関
と連携してきた。今年度、校内支援委員会が主体となって、生徒の就労支援先と して検討
できる外部機関の情報収集に努め、資料を作成した。
表4
連携あるいは今後の連携のために情報収集を行った外部機関の一覧
外部機関名
20 年 度
21 年 度
アクト大阪
○
大 阪 INA 職 業 支 援 セ ン タ ー
○
大阪市職業リハビリテーションセンター
大阪障がい者職業センター
○
○
大阪府立中津支援学校
○
関西大学心理カウンセリングルーム
○
コネクションズ大阪
○
○
職業カウンセリングセンター
○
○
ネクストステージ大阪
○
○
※
○は連携を実施した年度である。
資料を収集することによって、現在、次のような情報が収集できた。
在学中の就労体験に従事できる機関として、障 が い 者 の 手 帳 の 有 無 を 問 わ ず 、大 阪市 職
業 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン セ ン タ ー、コ ネ ク シ ョ ン ズ 大 阪、ネ ク ス ト ス テ ー ジ 大 阪 が 利 用 可
能である。
進 路 決 定 の 支 援 機 関 と し て 、障がい者の手帳を所持している場合はハローワークを経由
して大 阪 障 が い 者 職 業 セ ン タ ー で 職 業 評 価 を 実 施 す る の が 一 番 適 切 な ケ ー ス で あ る 。 ア
ク ト 大 阪 は 本 校 で 利 用 経 験 は 無 い が 、こ の 機 関 と 連 携 し な が ら 高 校 生 の 就 職 決 定 が 行 わ
れ て い る ケ ー ス も あ る 。 障がい者の手帳を所持していない場合は 職 業 カ ウ ン セ リ ン グ セ
ンターで、適性判断を実施しカウンセリングを実施してもらう方法が妥当である。
卒 業 後 の 進 路 と し て 、手 帳 を 有 し て い る 場 合 、訓 練 校 と し て は 大 阪 INA 職 業 支 援 セ ン
ター、大阪市職業リハビリテーションセンターが考えられる。
そ し て 、 定 時 制 の 場 合 、 昼 間 の ア ル バ イ ト 等 に 従 事 す る た め の 相 談 機 関 と し て 、 ハロ
ーワークを経由して大 阪 障 が い 者 職 業 セ ン タ ー が 在 学 中 の 利 用 も 可 能 と 思 わ れ る 。
大 阪 府 立 中 津 支 援 学 校 に は 、 支 援 教 育 の 拠 点 校 と し て 、WISC- Ⅲ な ど の 指 導 を 仰 い で
い る 。ま た 、関 西 大 学 心 理 カ ウ ン セ リ ン グ ル ー ム と は 、生 徒 の カ ウ ン セ リ ン グ 相 談 を 依
頼している。
収集した各機関の業務内容などはHPを参照されたい。
○
大阪府発達障がい支援センター
大阪市淀川区十三東 3-18-12
TEL
アクト大阪
イトウビル 1 階(最寄り駅
阪急京都線「十三」駅)
06-6100-3003
http://homepage3.nifty.com/actosaka/
○
大阪府障害者福祉事業団
大阪 INA 職業支援センター
箕面市稲 6 丁目 15-26(最寄り駅
北大阪急行「千里中央」駅あるいは阪急宝塚線「豊
中」駅から阪急バス、「豊島高校前」バス停下車)
TEL
0727-29-7021
http://www.sfj-osaka.net/inasyoku/
○
大阪市職業リハビリテーションセンター
大阪市平野区喜連西 6-2-55(最寄り駅
TEL
地下鉄谷町線「喜連瓜破」駅)
06-6704-7201
http://www.v-sien.org/jigyoudata/soudan/map.html
○
大阪障害者職業センター
大阪市中央区久太郎町 2-4-11
クラボウアネックスビル 3・4F(最寄り駅
地下鉄中
央線「堺筋本町」駅)
TEL
06-6261-7005
http://www.jeed.or.jp/jeed/location/chiiki/27_osaka.html
○
大阪府立中津支援学校
大阪府大阪市北区中津 2 丁目 2−22(最寄り駅
線「中津」駅)
TEL
06-6372-8256
http://www.osaka-c.ed.jp/nakatsu-y/
地下鉄御堂筋線、阪急電車宝塚線・神戸
○
関西大学心理カウンセリングルーム
吹田市山手町 3-3-35(最寄り駅
TEL
阪急千里線「関大前」駅)
06-6368-1015
http://www2.ipcku.kansai-u.ac.jp/~ycynaka/CounselingRoom/index.html
○
コネクションズ大阪
大阪市東淀川区東中島 1-13-13
コプラザ)」3F(最寄り駅
TEL
大阪市立青尐年文化創造ステーション「KOKO PLAZA(コ
JR及び地下鉄御堂筋線「新大阪」駅)
06-6328-0550
http://www.connections-osaka.com/
○
大阪府総合労働事務所
大阪市中央区石町 2-5-3
職業カウンセリングセンター
エル・おおさか南館 4 階(最寄り駅
地下鉄谷町線、京阪電
車「天満橋」駅)
TEL
06-6946-2614
http://www.pref.osaka.jp/sogorodo/counseling/
○
ネクストステージ大阪 LLP
大阪市天王寺区北河堀町 8-18 矢野紙器株式会社内(最寄り駅
地下鉄谷町線「四天王寺
前」駅)
TEL
06-6772-0776
http://www.nsosaka.com/
7
先進校の視察
本校の「困り感のある生徒」支援の方策を検討するために、次の 3 校の学校視察を実施
した。
静 岡 県 立 浜 松 大 平 台 高 等 学 校 ( 平 成 19 年 度 文 部 科 学 書 「 高 等 学 校 に お け る 発 達 障 が
い 支 援 モ デ ル 事 業」 指 定 ) は、 教 員 に 「 発 達 障 が い か も し れ な い」 、「 先 入 観 を 持 っ て
もらおう」という視点で生徒各自に対応した指導を実施するために、チェックシート、
「TK( 田 中 式 ) バ ッ テ リ ー テ ス ト M2 」 を 生 徒 全 員 に 実 施 し て い る 学 校 で あ る 。
東 京 都 立 世 田 谷 泉 高 等 学 校 は チ ャ レ ン ジ ス ク ー ル と し て 設 置 さ れ 、 さ ら に 平 成 19 年
度 文 部 科 学 書「 高 等 学 校 に お け る 発 達 障 が い 支 援 モ デ ル 事 業」の 指 定 を 受 け た 学 校 で あ
る 。当 該 高 校 は 、入 学 時 に 生 徒 か ら の 丁 寧 な 聞 き 取 り や 日 常 生 活 で の イ ン シ デ ン ト レ ポ
ート作成によって生徒の特徴をつかみ指導に役立てている学校である。
京都府立福知山高等学校三和分校は、知的な遅れのある生徒への支援として基礎学習を
実施し、発達障がいのある生徒への支援として生徒の障がい特性をふまえた指導を心がけ
ている学校である。
(1)
静岡県立浜松大平台高等学校
①
視察日時:平成 21 年 10 月 1 日(木)
②
視察場所:静岡県立浜松大平台高等学校定時制の課程
(静岡県浜松市西区大平台 4-25-1)
③
訪 問 者:大阪府立大手前高等学校定時制の課程
④
応 接 者:静岡県立浜松大平台高等学校定時制の課程
教諭
鈴木
健三郎(4年次主任)
教諭
内藤
景治
(敬称略)
⑤沿革・概要
ア
沿革
平成 18 年 4 月 静岡県立農業経営高等学校設と静岡県立浜松城南高等学校 (県
内唯一の独立定時制高校)との再編整備により開校
単位制による全日制の課程総合学科及び単位制による定時制の
課程普通科を設置
全日制課程総合学科生徒定員
160 名
定時制課程普通科生徒定員
200 名
平成 21 年 4 月 第4回入学式挙行
イ
学級数・生徒数など
単位制、定時制、普通科(最長 6 年在籍可能、5 年次以降は第 4 学年に在籍)
第 1 学年
第 2 学年
第 3 学年
第 4 学年※
合計
学級数
生徒数
学級数
生徒数
学級数
生徒数
学級数
生徒数
学級数
生徒数
10
184
9
182
5
129
4
66
28
561
ウ
教員数
校長は全日制との兼務、教員の勤務は二部制である。
校長
准校長
教頭
教諭
期付講師
養護教諭
非常勤講師
実習助手
ALT
1
1
1
34
12
1
22
0
1
スクールカウンセラー
1
エ
卒業者数(平成 20 年度)
オ
進路状況(平成 20 年度)
種別
人
大学
19
短期大学
4
⑥
特別支援教育の取組
ア
生徒の実態把握
119 名
就職
専修学校
大学校
その
各種学校
技術専門校
学校斡旋
縁故・自己開拓
他
29
3
35
5
24
a 「チェックシート」調査
「教師から見た困り感」のある生徒として、「学習態度」 37%、「学習能力」18%、
「学校不適応」31%、
「自己肯定感」15%等の生徒のいるほか、
「行動面の性格傾向」
26%、
「行動面での社会性」8%など、約7割程度に何らかの「教師から見た困り感」
があった。
b「TK(田中式)バッテリーテスト M2」の実施
「学校不適応」26%、「対人不適応」16%、「自己肯定感が低い」14%等が特に多い
ことや、「学習能力」において遅れが目立つ生徒も 19%在籍することが判明した。
イ
指導方針
a 個別支援計画の立案
生徒の実態と支援計画に分けて作成
b 要支援生徒を含む授業集団全体の授業改善を行い、習熟度別3展開授業を実施。
c生活指導の改善-生徒指導内規の見直しを行う。
ウ
発達障がいのある生徒に対する授業やテストにおける評価方法の工夫
一部教科科目のテストの漢字を総ルビにしたところ、過年度より平均点で大きく上
回った。
⑦
ア
学校訪問での協議内容
平成 21 年度の動き
a生徒指導の懲戒処分の在り方を、
「家庭謹慎」から「登校謹慎」へと方針を転換した。
生徒に、
「登校謹慎学習活動票」を所持させ、登校後、担任の指導→授業出席→登校謹
慎学習活動票記入→担任または主任の指導→帰宅→反省事項記入→保護者コメント→
翌日担任へ提出というサイクルで指導を行い、
「登校謹慎学習活動票」の評価が一定期
間良好になった時点で謹慎指導終了する。
b各教室に「授業の約束」掲示し、視覚による注意喚起を行う。
イ
チェックシートについて
チェックシートの本校への導入について、生徒に対し教員が先入観を持ってしま
う・レッテルをはってしまうのでは、という 危惧についての議論が本校(大手前高校
定時制)でなされた。しかし、むしろ「発達障がいかもしれない」
「先入観を持っても
らおう」という視点で生徒と触れ合うことが重要であるというアドバイスを受けた。
生徒には「言ってもわからない、叱っても伝わらない」ということを前提に、
「発達 障
がいかもしれないという考え方」で対応されている。
チェックシートを有効にする条件として、①教師からの視点としてのチェックシ
ート、②保護者からの「学校生活に関するアンケート」、③生徒本人に書かせた「私の
ニガテなことは何だろう」、客観的なデータとして④TK式バッテリーテストを総合的
に使用している。
ウ
校内支援体制の構築について
誰でもできるようにシステム化し、この時期にはこれをするということを明確にし
て教員の負担があまり大きくならないように考えられている。
エ
就業支援の実績は
ハローワークなどはまだまだ発達障がいについての理解が進んでいないので、積極
的な情報発信を実施されている。
(2)
東京都立世田谷泉高等学校
①
視察日時:平成 21 年 10 月 2 日(金)14:00~16:00
②
視察場所:東京都立世田谷泉高等学校(東京都世田谷区北烏山 9 丁目 22 番 1 号)
③
訪 問 者:大阪府立大手前高等学校定時制の課程
教諭
内藤
景治
④
応 接 者:東京都立世田谷泉高等学校
校長
安田
健
教諭
高田
幸治(教育相談担当、特別支援教育コーディネーター)
(敬称略)
⑤
東京都立世田谷泉高等学校の沿革・概要
ア
沿革
平成 9 年 9 月
都立高校改革推進計画第一次実施計画により、都立烏山工業高等学
校全日制、都立代々木高等学校三部制及び定時制、 都立明正高等学
校定時制を発展的に統合し、世田谷地区チャレンジスクール(仮称)
の設置が決定される。
平成 12 年 10 月
東京都立世田谷泉高校設置
平成 13 年 4 月
第 1 回入学式挙行
平成 21 年 4 月
第 9 回入学式挙行
イ
学級数・生徒数(平成 21 年 4 月 14 日現在)など
多部制(午前部Ⅰ部、午後部Ⅱ部、夜間部Ⅲ部)、単位制、定時制、総合学科
各年次
学級数 6
第 1 年次
第 2 年次
第 3 年次
第 4 年次
合計
Ⅰ部
57
59
58
49
223
Ⅱ部
55
64
58
54
231
Ⅲ部
58
53
50
36
197
170
176
166
139
計
ウ
教員数
校長
副校長
主幹
1
2
5
エ
651
教諭
養護教諭
43
非常勤講師
実習助手
スクールカウンセラー
26
3
1
1
卒業者数
入学生
15 年度
16 年度
17 年度
18 年度
13 年度
70
38
8
4
57
43
8
2
69
43
14
69
26
14 年度
15 年度
16 年度
19 年度
計
120
17 年度
110
55
計
70
95
120
124
97
最長 6 年
オ
進路状況(平成 20 年度)
種別
大学
短期大学
人
28
4
⑥
専修学校
各種学校
29
チャレンジスクールとしての実践
技術専門校他
7
就職
学校斡旋
その他
10
2
不登校経験者や中途退学者(在籍生徒の約 8 割がそれまでの学校生活で不登校を経験)
等、これまでの学校生活で自らの力が出せなかった生徒を積極的に受け入れている。ま
た、開校当初より、カウンセリング室を設置し、教育相談教諭(カウンセリング室常駐)
を指名、スクールカウンセラーの配置を行ってきた。
⑦
特別支援教育の取組
平成 17、18 年度から都立の養護学校と連携して、特別支援教育体制の構築に努め、
平成 19 年度以降は下記のような深化した実践を展開した。
ア
校内支援体制の構築
a校内委員会(特別支援教育推進委員会)の設置
構成員として、副校長・生徒部主幹教諭・進路部主任・年次主任・教育相談担当
教諭・養護教諭・特別支援教育コーディネーター・スクールカウンセラー・臨床発
達心理士とし、年次会、分掌部会で取り上げられた生徒の情報交換及び生徒の実態
把握を行う。必要に応じてケース会議を開催し、具体的なチーム対応を検討した。
b 特別支援教育コーディネーターの設置と役割
教育相談担当教諭を特別支援教育コーディネーターとして指名し、6時間の授業
を担当しながらカウンセリング室で相談業務に従事してもらっている。
役割として、
・特別支援教育推進委員会を運営する。
・ケース会議及び臨床発達心理士による巡回相談(特別支援学校の特別支援教育
コーディネーターも参加)の開催及び必要資料作成する。
・PTA の「親の会」の企画・運営をする。
・スクールカウンセラー、臨床発達心理士、学生スタッフ担当の生徒情報の交換
を行う。
・医療機関や前籍校との情報交換を行う。また、地域の学校(小学校・中学校)
の先生方をリードしていく役割も考えられる。
c臨床発達心理士の巡回相談
年に 2、3 回の巡回相談を利用し、個人でなく、生徒にチームで対応する目的で
事例検討会を実施している。検討会を実施することにより、 1)医療機関などから
の情報収集、また保護者からの聞き取り(家庭での様子、生育歴)等の情報集約
により、生徒の全体像を把握して検討が可能になり、2)専門家(臨床発達心理士)
の助言により生徒の特性の理解が進み、 3)心理テストの結果についてのアドバイ
スをいただくことにより、学校生活上の対応に有効に活用でき、 4)具体的な支援
の検討を開始することができた。
dケース会議の開催
関係教職員のほか、スクールカウンセラー、臨床発達心理士、精神科医等の専
門家の助言を受けて具体的なチーム対応策をまとめる。
イ
実態把握の方法
a入学時の実態把握(個別の基礎資料)
新入生対象の教育相談担当教諭による面接を実施した。聞き取り内容は住所、生
年月日、家族構成、中学校での登校状況、スクールカウンセラーとの関わり、情緒
障がい通級指導学級等への通級、相談機関へのカウンセリング、医療機関等への受
診状況、高等学校での適応状況等である。
b日常的な実態把握
校内委員会での生徒の情報収集、生徒に直接関わった教員からのインシデントレ
ポートによる管理職への報告及び年次主任や特別支援教育コーディネーターへの報
告で日常の実態把握を行った。また、保護者と面談する際には、インシデントレポ
ートなどの情報や校内での様子など、いろいろな情報をできるだけ集めておくこと
で、信頼関係を築きやすい。
c事故等の実態把握
事故等が発生したときに、教職員がインシデントレポートを作成し、管理職に報
告する。事故等とは、負傷、自傷行為、家出、外泊、入院、 退院、パニック、その
他の気になる言動等である。
ウ
個別指導計画と個別の教育支援計画
個別の実態把握記録、巡回相談票、ケース会議資料を作成し、保存している。また、
継続的な実態把握と観察により保護者との連携を図っている。
エ
授業での工夫について
生徒による授業評価を実施し、その結果を踏まえて各教科で話し合い、授業の工夫
や配慮する点等をまとめた。課題のある生徒がいる中で、ユニバーサルデザインの視
点から授業を見直していくことが必要である。
オ
臨床発達心理士の活用
臨床発達心理士には、1)生徒や保護者からの個別相談業務、2)教職員へのコンサル
テーション、3)校内委員会、巡回相談、ケース会議への助言、4)心理検査の実施、5)
生徒への継続的面接(ソーシャルスキルトレーニングの実施)、6)保護者への支援、な
どの業務を依頼した。
⑧
学校訪問での協議内容
インシデントレポートを利用することにより、本校生徒の実態や支援の必要性、
「困り
感」の有無などを、教員全体での共通認識として持つための下地作り なる。
そして、
「支援委員会はどんな学校にも当然のこととして設置 されるものである」とい
う観点で校内支援体制の構築を考える。また、学校以外の 機関の視察を重ねることで、
支援教育とは何かが、先生方にも伝わるのではないか。
入学時の教育相談担当教諭の面談は有効に活用したい。 様々な問題が起こり対応策に
頭を悩ますケースが多いが、
「これは医療の範囲」と専門家から言われれば、教員はずい
ぶん楽になる。その観点からも専門家からのアドバイスが欲しい。
就労支援として、世田谷泉高等学校でも実施しているが、協力先の開拓を行い、また
多くの NPO の選択利用を考えながらインターンシップを実施すべきではないか。
(3)
①
京都府立福知山高等学校三和分校
視察日時:平成 22 年 2 月 9 日(火)13:00~16:30
②
視察場所:京都府立福知山高等学校三和分校(京都府福知山市三和町千束 35-1)
③
訪 問 者:大阪府立大手前高等学校定時制の課程
④
応 接 者:京都府立福知山高等学校三和分校
副校長
蘆田
美代子
教諭
谷口
藤雄
教諭
内藤
景治
(敬称略)
⑤
京都府立福知山高等学校三和分校の沿革・概要
ア
沿革
明治 33 年
京都府立第三中学校
昭和 23 年
学制改編、学校再編成により京都府立福知山高等学校として発足
定時制課程として、夜間部、夜久野分校、河口分校を設置
イ
昭和 24 年
定時制細見分校設置
昭和 30 年
細見分校を三和分校と改称
昭和 59 年
定時制夜間部閉校
生徒数(平成 21 年 4 月 14 日現在)など
4 年制の昼間定時制
ウ
エ
オ
第 1 年次
第 2 年次
第 3 年次
第 4 年次
合計
農業科
23
9
12
12
56
家政科
9
10
2
10
31
計
32
19
14
22
87
教員数
校長
副校長
教諭
養護教諭
非常勤講師
実習助手
スクールカウンセラー
1
1
9
1
16
1
1
卒業者数
16 年度
17 年度
18 年度
19 年度
20 年度
17
17
19
16
14
進路状況(平成 20 年度)
進学
京都創成大学
京都短期大学
就職
ナイテック工業株式会社(学校斡旋)
⑥
学習支援研究の実践
ア
知的な遅れのある生徒への支援
福知山高等技術専門校
全クラス・全学年で、午前の授業の最後 20 分間、漢字あるいは算数の基礎学習プ
リント(毎時 1 枚のプリント、10 分勉強・10 分テストの形式、漢字と算数は 2~3 週
で交替、合格基準点以上で次のプリントに進む)を実施している。入学直後に基礎学
力テストを実施し、生徒のレベルに合わせた基礎学習プリントでスタートする。一人
の生徒が卒業までに 200~300 枚のプリントを完成させている。ほとんどの生徒はこの
基礎学習を熱心に取り組んでいる。
英語・数学において、4 学年わりの習熟度別クラス(トライ学習)を実施している。
低学力・課題を持つ生徒を尐人数の二クラス展開(3~4 人)し、きめ細かな指導がで
きるように対応している。
イ
発達障がいのある生徒への支援
教育的な手立てを具体的かつ効果的に行うため、また生徒の良いところや苦手なと
ころを具体的に明らかにする基礎資料として発達検査を利用している。
合格説明会で、高等学校は義務教育ではないという枠を明らかにし、一定の条件を
クリアしないと進級や卒業できないことを説明している。そして、 障がいがあっても
「あかんもんはあかん」の指導を徹底化させている。
一方的な形では生徒に注意や指導が入らないことを理解し、ねばり強く・ゆっくり
丁寧に、そして一人ひとりの生徒の障がい特性をふまえた指導を心がけている。
「欠課
遅刻時数票」「警告カード」「授業チェック表」など、目に見える指導の工夫を行って
いる。
⑦
学校訪問での協議内容
生徒の基礎学力定着のために入学から卒業まで「基礎学習」を実施し、効果が上がっ
ており、本校においても基礎学力を充実させるための方法として検討すべきである。
また、アルバイトができない生徒がいる状況で、就労指導に実績を残されている。就
労体験を行う上で、教員が協力企業を開拓されている。そして、学校と他の機関(ハロ
ーワーク・障がい者職業センター・保健所・児童相談所、障がい者就業・生活支援セン
ター、支援学校、職業訓練校など)との連携が積極的・効果的に行われ、進路説明会を
通じで一人ひとりの生徒に適切な進路を保障している。
障がい者手帳、福祉的就労、地域の社会資源、支援学校の実態などについての理解を
教員一人ひとりが深めることにより、保護者や生徒とのより良い信頼関係を築くことが
できると実感した。
8
今度の課題と平成 22 年度の動きについて
平成 21 年度GP事業の指定を受けることによって、教員研修、先進校視察を実施でき、
発達障がいをはじめとする理由により困り感のある生徒の支援を行う校内支援委員会を組
織することができた。校内支援委員会が作成した「気になるメモ」から、徐々にではある
が生徒の様々な情報が集まるようになってきた。また、職員会議で校内支援委員会から、
生徒の情報や提案がなされることによって、教職員自身も「今ままで何度言っても分かっ
てくれない生徒」から「何らかの困り感を持ち、こちらからの支援が必要な生徒」ではな
いかという意識を持つようになったと感じる。
平成 22 年度入学生からは、合格者説明会の際に保護者にアンケートを実施し、特に、
支援が必要と判断される場合や不登校の経験があった場合は、校内支援委員会のメンバー
が保護者と生徒に聞き取り調査を実施した。聞き取りを実施した生徒は、入学生 80 名のう
ち 20 名を越え、早急な支援方法を検討する必要性を感じた。さらに、本人、保護者の承諾
のもと、出身中学校を訪問し、学校生活を送る上での貴重な資料も入手できた。また、中
津支援学校や関西大心理カウンセリングルームからの支援も受ける方向で進展している。
しかし、校内支援委員会は設置まもないこと、臨床心理士などの専門家のアドバイスを
すばやく受けられない、対象とする生徒が余りに多いなどの理由で必ずしも順調に機能し
ているとは言いがたい状況である。また、外部機関での職業指導が必要と思われる生徒が
いても、保護者(家族)または本人の同意が得られず、今年度は、生徒を派遣することがで
きなかった。
今後は、「気になるメモ」を十分に活用し、生徒情報の収集に努め、教職員の理解、保
護者(家族)への情報提供に努めるとともに、専門家のアドバイスを受けられるシステム
作りを検討していきたい。そして、障がいの有無に関わらず在学中、卒業時に就労 「困り
感のある生徒」の支援はすべての生徒の支援につなが るという認識を再確認し、
「入ってよ
かった」学校となるように努めていきたい。
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