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規制影響事前・事後評価書

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規制影響事前・事後評価書
作成年月:平成15年3月
決 裁 者:消費経済部長 小川 秀樹
主管課長:消費経済政策課長 押田 努
規制影響事前・事後評価書
規制等法律名: 特定商取引に関する法律の一部を改正する法律
1.規制等の必要性
迷惑メール は、平成13年春以降、特に携帯電話で、いわゆる出会い系サービスやアダルト
関連商品等に関する商業広告メールを一方的に送りつける事態が拡がり、社会問題化してい
た。
例えば、携帯電話に送られる迷惑メールについては、携帯・PHS 関係6グループ企業に対
して、平成13年5月以降、毎月5∼10万件、場合によってはそれ以上の苦情相談が寄せられ
ている(※1、2)。また、同年秋、当省が行った迷惑メールに関する調査によると、一般消費者の
80 %以上がこのようなメールにつき「迷惑」と受け止めている(※3)。
※1.携帯電話・PHS会社への苦情相談件数
【備 考 】 件 数 は 、携帯電話・PHSを利
160,000
143,063
140,000
件数
6グループ(NTT ドコモ、 KDDI/au 、
120,000
107,855
100,000
件
94,857
81,542
73,936
80,000
60,000
57,069
42,583
40,000
20,000
用した電子メールサービスを提供する
19,080
ツーカー、ジェイフォン、アステル、
70,559 74,787
63,568
DDI ポケット)の集計値
61,153
出所: 総 務 省 資 料
24,678
18,477
20
01
.1月
20
01
.2月
20
01
.3月
20
01
.4月
20
01
.5月
20
01
.6月
20
01
.7月
20
01
.8月
20
01
.9月
20
01
.10
20 月
01
.11
20 月
01
.12
月
20
02
.1月
20
02
.2月
0
※2.国民生活センター及び消費生活センターへの苦情相談件数
迷 惑 メールの苦情相談件数について、国民生活センターによる公式統計はないが、「メー ル 」関連
の苦情相談を検索して調べたところでは、以下のとおり。
3,000
件数
2,672
2,500
2,000
件1,500
872
1,000
1,033
571
500
19
22
30
39
148
152
237
11
FY
1四
半
期
11
FY
2四
半
期
11
FY
3四
半
期
11
FY
4四
半
期
12
FY
1四
半
期
12
FY
2四
半
期
12
FY
3四
半
期
12
FY
4四
半
期
13
FY
1四
半
期
13
FY
2四
半
期
13
FY
3四
半
期
0
-1-
※3.迷惑度に係る三和総研委託調査結果
上;携帯向け
下;PC向け
0.0%
(平成13年11月)
20.0%
40.0%
非常に迷惑
やや迷惑
60.0%
51.1%
11.6%
中身によるためどちらとも言えない
3.9%
特に迷惑とは感じない
1.4%
3.0%
80.0% 100.0%
82.9%
29.4%
16.1%
0.2%
むしろ役に立つ場合が多い 0.1%
不明
0.0%
0.2%
さらに、このような商業広告メールを見て取引に入った消費者が、後から不当な代金請求を
受けるなど、取引上のトラブルに巻き込まれるケースもみられる(※4)。
※4.迷惑メールをきっかけとした取引上のトラブル事例
∼当省消費者相談室への苦情相談事例より∼
【事例1】 通信販売のケース
広 告 メー ル で 「無料サービス」と書かれていたので出会い系サイトを10分間利用したところ、
利用後に1時間以内は6千 円 と言われた。支払わずにいたら、事業者から電話があり、「延滞料1
日 5百円で合計17万円になる。6万円でいいから支払え」と言われた。
【事例2】 通信販売のケース
携 帯 メールで送られてきた出会い系サイトにアクセスし、画面上で料金を見たら高かったの
で、申込段階まで進まずに切った。ところが、その後、メールで利用料の請求があり、さらに延長
金の請求もされた。事業者に聞くと、サイト上の申込ボタンを押して「ピンポン」と音が流れた以降
は課金されるシステムだというのだが、そのような操作をした認識はない。
【事例3】 内職商法のケース
携帯電話に「高収入のアルバイトをしないか」という勧誘メールが入り、記載されていた電話番
号に電話した。電話で指定された喫茶店に出向いたところ、「アルバイト(接客業務)をするには、
テキストとマッサージ器具を12万円で買う必要がある」と言われ、強引に契約させられて、前金1
万円を支払った。しかし、後になって、やはり止めようと思い電話をしたところ、契約は成立してい
るのだから残り11万円を支払うよう言われた。
また、本問題は、電子商取引ビジネスの健全な発展にとっても、重大な阻害要因となりつつ
ある。すなわち、消費者が迷惑メール対策で自らの電子メールアドレスを変更すること等によ
り、本来必要なメールが届かなくなるなど、優良な通信販売事業者等にとっても、電子メールに
よる商業広告の手法を十分に活用しきれないといった問題点が指摘されている。
なお、これまでも本問題に対しては、通信事業者によって、メールアドレスをランダムに自動
生成して大量に送ってくるような場合には受信をブロックするなど、いくつかの対策がとられて
きているところであるが、こうした対策には限界があり、十分な効果をあげるには至っていない。
-2-
このような状況を踏まえ、現行の特定商取引に関する法律(特定商取引法)の下で対応可
能な事項から早急に対応するという方針の下、同法に基づき、必要な省令改正を行い、平成1
4年 2 月より通信販売等に係る広告について、通信販売事業者等の電子メールアドレス、商業
広告であることを示すマーク、受信拒否の連絡方法の有無といった新たな表示義務を追加し
たところ(※5)であるが、さらに対応を十全なものとすることが必要であるため、特定商取引法の
改正を行うこととした。
※5 省 令 改 正 の 概 要
電 子 メールにより商業広告を送るときは、通信販売等(通信販売以外の取引形態としては、連鎖取
引販売取引及び業務提供誘引販売取引)に係る広告表示事項として以下の事項を追加。
①通信販売業者等の電子メールアドレスを表示すること
②消費者の請求ないし承諾を得ていない場合は、通信販売等についての広告である旨を表示す
ること
③通信販売業者等から広告を受けることを希望しない消費者がその旨の意思を表示するための方
法がある場合にはその連絡方法を表示すること(ただし、その方法がない場合にはその旨を表
示すること)
2.規制等の目的
迷惑メール問題に対応するため、通信販売事業者等に必要最小限の新たな義務を課すこ
とにより、消費者利益の保護及び商取引の適正化の確保を図る。
【参考】 本法全体の目的及び概要
以下の措置を講ずることにより、特定商取引 ※ を公正なものとし、取引の相手方である購
入者等が不当な損害を受けることのないよう、取引の相手方である購入者等の利益の保
護、適切かつ円滑な商品等の流通・役務の提供を達成する。
① 取引の公正を図るための措置
・広告の表示、誇大広告の禁止、書面交付の義務付け、不当勧誘の禁止
② 購入者等が受けることのある損害の防止のための措置
・申込の撤回、損害賠償等の額の制限 など
など
※ 「特 定 商 取 引 」とは、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引、特定継続的役務提
供及び業務提供誘引販売取引をいう。
(注)なお、特 定 電 子 メールの送信の適正化等に関する法律(以 下 「特定電子メール法」という。)
は、送信者に対し電子メールの送信の適正化のための義務を課すことにより、電 子 メールの利
用についての良好な環境の整備を図ることを目的としている。
3.規制等の概要
通信販売等に係る規制として、下記の2事項を追加。
①
消費者が通信販売事業者等に対して電子メールによる商業広告の受け取りを希望しな
い旨の連絡を行った場合には、その消費者に対する商業広告の再送信を禁止すること。
② 消費者が通信販売事業者等に対して連絡する方法の表示を義務づけること。
-3-
(注)なお、特定電子メール法は、送信者に対し、①受信拒否の通知をした者に対する再送信の禁
止、②当該送信者名や(送信に用いた及び受信拒否の通知を受けるための)電子メールアドレ
ス等の表示、③プログラムを用いて作成したランダムな架空電子メールアドレスに宛てた送信の
禁止、等を義務づけている。
4.規制等の導入・改廃により期待される効果・費用
(効果)
効果1)消費者; ①迷惑メールの受信にかかる費用の軽減 ※6、②不安感・不快感(深夜・早
朝のメール受信、個人情報流出の懸念、メールアドレス変更に伴う手間等)の解消、③迷惑
メールを契機とするトラブルの回避、など
※ 6 例えば、ある大手通信事業者の場合、メール1通につき0.9∼ 2.1円の受信料がかかる。
効果2)通信販売事業者等; (消費者が迷惑メール対策として自らのメールアドレスを変更す
ることによる)顧客のメールアドレス喪失の回避、迷惑メールの被害拡大による電子商取引
縮小の回避
(注 )なお、反射的効果として、①通信設備環境の改善(迷惑メールの大量送信に伴う通信機能障
害や通信設備増強の回避)、②フィルタリングサービス導入のコスト軽減、など
(費用)
費用1)消費者; 受信拒否の送信に要する費用や手間。ただし、迷惑メールを受信し続ける
費用 (※6参照)に比較すれば微細。
費用2)通信販売事業者等; 消費者から受信拒否があれば送信先リストから削除するための
システムを構築する等の負担。しかしながら、優良な通信販売事業者等は、既に、自主的
に本規制に相当する措置を導入していることから、追加的な負担はほとんど生じない。
5.想定される選択肢の比較
(1)現状維持の場合(規制を新設しない場合)
このケースでは、通信事業者による自主的な対策等に迷惑メール問題の解決を委ねるこ
とになる。
この場合、迷惑メールに関する一定の基準(違法基準)がないため、通信事業者の技術
的な対策に費やす負担は多大なものとなるおそれがある。また、対策の効果は不十分であ
ることから、社会問題化している迷惑メール問題を放置し続けることになるため、通信事業者
、通信販売事業者等及び消費者のいずれにとっても前述のような社会的便益が損なわれる
こととなる。
(2)オプトイン規制を導入する場合
「オプトイン規制」とは、消費者から広告メール送付の請求や承諾がない限り、広告メール
を送ってはならないというものである。
本規制を導入した場合、消費者にとって受信拒否の送信に要する費用と手間が省けると
いうメリットがある反面、以下のような問題点が指摘される。
-4-
①インターネット関連分野における法規制の導入にあたっては、新たな技術やビジネスの進
展を妨げることのないよう十分な配慮が必要であるが、オプトイン規制の導入はかかる配
慮を欠くおそれがあること。
②特定商取引法上、他の販売形態(訪問販売及び電話勧誘販売)についてはオプトイン規
制が採用されていないことから、当該形態に係る規制とのバランスを失すること。
③なお、OECD電子商取引消費者保護ガイドライン(平成12年12月採択)においても、受
信を拒否する消費者の意向が尊重されるよう勧告されている。
※OECD電子商取引消費者保護ガイドライン(平成12年12月採択)(抄)
事業者は、一方的な商業広告メール(unsolicited commerciale-mai
lmessage)を受け
取 りたいか否かについて、消費者が選択できるよう、効果的かつ利用しやすい手続きを開発・実施
すべきである。
消費者が一方的な商業広告メールを受け取りたくないと表明したときは、その選択は尊重される
べきである。
(3)本規制(オプトアウト規制)を導入する場合
「オプトアウト規制」とは、電子メールによる商業広告の受け取りを希望しない旨の連絡を
行った消費者に対し、電子メールによる商業広告の再送信を禁止するというものである。
本規制を導入した場合、迷惑メールに関する違法基準を通信事業者に提供することによ
り、通信事業者の技術的な対策にかかる費用負担を軽減しつつ、技術的対策が円滑に行
われるようになるとともに、電子商取引ビジネスの健全な発展が阻害されることなく迷惑メー
ル問題の沈静化に寄与すると考えられる(上記4.参照)。
6.有識者の各種意見
○
平成14年1月産業構造審議会消費経済部会消費者取引小委員会において「電子メール
による一方的な商業広告の送りつけ問題に関する対応について(提言)」がまとめられた。
同提言では、迷惑メール問題に対し、商業広告を行う販売事業者等に対する規制の必
要性が述べられた上で、省令改正といったこれまでの対応を踏まえ、さらに十全な対応のた
めに、特定商取引法を改正し、通信販売事業者等に対して、本規制事項を義務付けること
が必要である旨、述べられている。
○ 当小委員会における提言の取りまとめにあたっては、パブリック・コメントを実施し、67件
の意見・情報が提出され、提言に反映されている。
注)パブリック・コメント 期間−平成14年1月15日∼1月25日
媒体−ホームページ掲載、窓口配布
7.規制等の実施(遵守措置)と見直しについて
(1)規制の施行
・規制内容が現実の消費者の生活及び事業者の営業活動に多大な影響を与えるものである
ことに鑑み、事業者、消費者、都道府県等の消費者行政担当部局、消費生活センター等に
対して、説明会の開催、パンフレット作成や各種メディアによる広報等を通じ、幅広く周知普
及を行った。
-5-
○ 各 種 メディアによる広報
・政府公報オンライン 「Web版広報通信 暮らしの広報データ 8月 号 」、
「モバイル携帯端末広告」、「電光板ニュース広告」 等
・テレビ広報
日本テレビ、テレビ東京、CS朝日ニューススター 等
・新 聞 広 告
全 国 紙 4紙の朝刊社会面
・雑 誌 掲 載
経済産業ジャーナル(8月 号 )、時の動き(8月 号 )、NBL(8月 1日 号 )、たしか
な目(9月号)、時の法令(9月30日号) 等
○パンフレット作成
法改正の内容や法令違反の事案に係る情報提供を呼びかけるパンフレットを全 国 の 消 費 生
活センター等約 500 か所に配布(13万 部 )
○説明会の開催
本 年 6月 下 旬 、全国8つの経済産業局、沖縄総合事務所及び東京都等において、消費者団
体 、事 業 者 、消費者相談担当者等を対象に、改正法に関する説明会開催。
・法令違反事業者の取締には、特定商取引法第61条に基づく指定法人である(財)日本産業
協会を活用する。
・本法全体の施行実績
①行政処分件数
経
指示
済
業務停止命令
省
小計
(参考)都道府県(指示)
合
計
8年 度
2
0
2
0
2
10 年度
12
0
12
1
13
9年度
7
1
8
0
8
11 年度
6
0
6
2
8
12 年度
0
0
0
4
4
13 年度
12
1
13
7
20
②取引形態別苦情相談件数
苦情相談件数
平 成 8年度
9年度
10年度
11年度
12年度
13年度
訪問販売
通信販売
電話勧誘
連鎖販売
内職・モニター
143,306
77,136
21,914
23,864
9,939
8,488
202,508
219,126
260,526
296,302
389,493
99,581
107,307
125,323
135,638
153,471
40,455
40,014
45,977
65,270
129,628
33,978
42,428
57,381
66,020
73,300
14,441
16,045
18,178
15,738
18,648
11,681
13,523
17,366
14,091
17,619
(参考) 苦 情 相 談 件 数 (PIO−NET)
注)PIO−NET:国民センターと全国の消費生活センターをオンラインネットワークで結び、消費生
活に関する相談情報を蓄積したもの
③本法に係る最近の改正の経緯
平成 8 年: 電話勧誘販売に係る規制を新設。
平成 11 年: 特定継続的役務取引(エステ、学習塾、外国語教室、家庭教師)に係る
規制を新設。
平成 12 年: 内職・モニター商法に係る規制を新設。また、インターネット通販に係る
る申込画面の規制を追加。
平成 14 年: 迷惑メール問題(通信販売等における広告の仕方の問題)に対応した
規制を追加。
-6-
④監視体制の強化(常時モニタリング)
−
インターネット通信販売の適正化と消費者利益の保護を図るため、平成13年9月から
インターネット上の広告について本法の遵守状況の常時点検を実施。
− 具体的には、同法第11条に規定する必要的表示事項の表示状況及び顧客の意に反
する申込み画面の有無並びに同法第12条に規定する誇大広告の有無について点検を
行っており、違反のおそれのある事業者に対しては、メールを発信して是正を求めてい
る。平成13年度の点検結果は、下表のとおり。
1)点検結果概要
点検したサイト数
うち違反のないサイト数
うち違反のおそれがあるサイト数
件数
30,178
21,137
9,041
構成比
100.0%
70.0%
30.0%
件数
326
2,393
6,128
1,284
3,719
541
1,933
283
861
937
2,912
118
3,759
49
9,041
構成比
3.6%
26.5%
67.8%
14.2%
41.1%
6.0%
21.4%
3.1%
9.5%
10.4%
32.2%
1.3%
41.6%
0.5%
100.0%
2)違反のおそれのあるものの内訳
内
訳
表 示 事 項
の欠落
※
意に反する
申込画面
誇大広告
合 計
販売価格
送料
その他負担
代金の支払時期
商品等の引渡時期
代金の支払方法
商品等の返品の可否と条 件
事業者名
住所
電話番号
代表者又は業務責任者の氏名
申込操作不明確
確 認 ・訂 正 不 可
一つのサイトについて、違反のおそれのある項目が複数認められる場合があるため、各欄の件
数 ・構成比を合計しても、合計欄の数値には一致しない。
(2)規制の見直し
本規制は、法律の施行後3年を目途として見直しを行うこととなっている。
○特定商取引に関する法律の一部を改正する法律(抄)
附 則
第二条 政府は、この法律の施行後三年を目途として、この法律の施行後の情報技術を
活用した商取引に関する事情、特定商取引における電磁的方法による広告の提供の
状況等を踏まえ、この法律による改正後の特定商取引に関する法律の規定に基づく電
磁的方法による広告に対する措置について検討を加え、その結果に基づいて必要な
措置を講ずるものとする。
-7-
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