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RMZLに基づく擬似デッドラインを用いた スケジューリングアルゴリズムの
情報処理学会第 75 回全国大会 2L-5 RMZL に基づく擬似デッドラインを用いた スケジューリングアルゴリズムの提案 箭内 健† 東京都市大学† 1 兪 明連† 序論 近年,組み込みリアルタイムシステムにおいてマルチ 横山 孝典† る.図 1 にグローバル RM と RMZL によるスケジュー リング例を示す.ただし,実行するタスクセット及び プロセッサの利用が一般化してきている.しかし,マル プロセッサ数は τ は τ = {τ1 = (2, 3), τ2 = (2, 3), τ3 = チプロセッサ環境における最適なスケジューリングアル (2, 3)}, M = 2 とする. ゴリズムは確立しておらず,さまざまな研究がされてい る.本研究ではシングルプロセッサ環境で最適であった RM(Rate Monotonic) [1] にゼロ余裕時間ルールを追加 した RMZL(Rate Monotonic until Zero Laxity) [2] を 1 1 2 2 3 3 基に擬似デッドラインを追加したアルゴリズムを提案 デッドラインミス し,スケジュール成功率が向上していることをシミュ レーション評価により示す. 2 0 1 2 Time 3 1 2 3 Time (b) グローバルRM 0 (a) RMZL システムモデル 図 1: RMZL(a) とグローバル RM(b) のスケジュール例 本研究では,周期的タスクから成るタスクセットの スケジューリングを対象とし,マルチプロセッサ環境 図 1 から分かるように,グローバル RM では τ1 , τ2 でのリアルタイムスケジューリングの研究における一 が優先され,τ3 の実行が遅れるため τ3 がデッドライン 般的なシステムモデル [2] を仮定する. ミスを起こしている.しかし,RMZL では時刻 1 にお システムは M 個のプロセッサを持ち,N 個のタスク から構成されるタスクセット τ は τ = {τ1 , τ2 , ...τi , ..., いて τ3 の余裕時間が 0 となり,最高優先度を獲得する ことでスケジュールに成功している. τN } が与えられる.各タスク τi は最悪実行時間 Ci と周 期 Ti により,τi = (Ci , Ti ) と構成される.Ui = Ci /Ti をタスク τi の利用率と呼ぶ.また,U (τ )/M をシステ 大幅に向上させたが,周期の長いタスクは最高優先度 ム利用率と呼ぶ.各タスク τi は周期 Ti の間隔でジョブ ラインミスを起こす可能性がある. RMZL はグローバル RM よりスケジュール成功率を を獲得するのが遅く,後半に処理が偏ることでデッド を生成する.タスク τi が生成する k 番目のジョブを τik LP-RMZL(Limited Preemptive-RMZL) [3] LP-RMZL は,一度実行を開始したジョブは余裕時 と表す.τik は時刻 rik でリリースされ,デッドライン dik は次のジョブのリリース時刻とする.ある時刻 t に おいて,ジョブ τik の残り実行時間を Cik (t) とすると 間 0 のジョブにしかプリエンプトされないというルー き, τik の余裕時間 (Laxity) を Lik = dik − t − Cik (t) と定義する. RMZL と LP-RMZL によるスケジューリング例を示す. 3 ルを RMZL に追加したアルゴリズムである.図 2 に ただし,実行するタスクセット及びプロセッサ数は τ は τ = {τ1 = (1, 2), τ2 = (1, 2), τ3 = (1, 4), τ4 = (6, 8)}, 関連研究 グローバル RM 周期の短いジョブを優先して実行する RM をマルチ M = 2 とする. プロセッサ環境に適用させたグローバル方式の RM(以 降グローバル RM) が提案されたが,スケジュール成功 1 1 2 2 3 3 4 4 率が低いという問題点がある. RMZL(RM until Zero Laxity) デッドラインミス RMZL は,グローバル RM において,余裕時間がゼロ となったジョブに最高優先度を与えるアルゴリズムであ 0 1 2 3 4 5 6 7 (a) LP-RMZLのスケジュール例 8 Time 0 1 2 3 4 5 6 7 8 Time (b) RMZLのスケジュール例 図 2: LP-RMZL(a) と RMZL(b) のスケジュール例 A Proposal of Scheduling Algorithm using Pseudo Deadline Based on RMZL † Tokyo City University 1-227 Copyright 2013 Information Processing Society of Japan. All Rights Reserved. 情報処理学会第 75 回全国大会 図 2 のように,LP-RMZL では一度実行を開始した τ4 がプリエンプトされず連続して実行することができ るため,スケジュールに成功している.LP-RMZL では 各々1000 セットずつ投入し,各アルゴリズムでシミュ RMZL よりスケジュール成功率を向上したが,RMZL でスケジュールに成功したタスクセットがスケジュー ルできなくなる場合がある. ルしたタスクセットの総数) とする.なお,プロセッ 4 レーションを行う.比較する項目はスケジュール成功率 (スケジュールに成功したタスクセット数 / スケジュー サ数は 4 とした.以下の図 4 にスケジュール成功率の グラフを示す.図 4 からスケジュール成功率が RMZL, LP-RMZL より向上しているのがわかる. LP-RMZLPD (LP-RMZL add Psuedo Deadline) 1 LP-RMZL を基にスケジュール成功率を向上するア ルゴリズム LP-RMZLPD を提案する.LP-RMZLPD 0.8 Success Ratio とは擬似デッドラインと擬似実行時間を使用して,周 期の前半にゼロ擬似余裕時間ルールを LP-RMZL に適 用したものである.タスクの周期の半分の位置に擬似 0.6 0.4 的なデッドラインを設定し,それを擬似デッドライン 0.2 と呼ぶ.また,各タスクの実行時間の半分を擬似実行 LP-RMZLPD LP-RMZL RMZL RM 時間とし,擬似デッドラインまでの余裕時間 (擬似余裕 時間) が 0 のジョブに準最高優先度を擬似デッドライン まで与える.準最高優先度は最高優先度の次に高い優 先度を意味する.つまり,余裕時間が 0 のジョブは,擬 似余裕時間が 0 のジョブに実行を妨げられない.また LP-RMZLPD では,一度実行を開始したジョブは,余 裕時間 0 のジョブ,または擬似余裕時間 0 のジョブに しかプリエンプトされない. 図 4 に LP-RMZLPD でスケジューリングした例を示 す.ただし,実行するタスクセット及びプロセッサ数は τ は τ = {τ1 = (2, 4), τ2 = (2, 4), τ3 = (1, 4), τ4 = (6, 8)}, M = 2 とする. 0 0.3 6 0.4 0.5 0.6 0.7 System Utilization 0.8 0.9 1 図 4: スケジュール成功率 結論及び今後の課題 本研究では,LP-RMZL に擬似デッドラインを設定 した LP-RMZLPD を提案し,シミュレーションにより 有効性を示した.しかし,提案したアルゴリズムはス ケジュール可能性が解析されていないため,一般的な 評価がされてるとは言えない.また,余裕時間の検出 など実装面で問題が発生する可能性がある.これらは 今後の課題とする. 謝辞 擬似デッドライン 1 1 2 2 3 3 本研究は JSPS 科研費 24500046 の助成を受けたもので す. 参考文献 デッドラインミス 4 4 0 1 2 3 4 5 6 7 8 Time 0 (a) LP-RMZLPDのスケジュール例 1 2 3 4 5 6 7 [1] C. L. Liu and J. Layland,“ Scheduling algorithms for multiprogramming in a hard real-time envi- 8 Time (b) LP-RMZLのスケジュール例 図 3: LP-RMZLPD(a) と LP-RMZL(b) のスケジュー ronment ”,Journal of the ACM, Vol. 20, No. 1, pp. 46-61, 1973. ル例 τ4 が時刻 1 において擬似余裕時間が 0 となり,準最 高優先度を獲得して実行している.このようにするこ [2] Monotonic に基づくマルチプロセッサ用リアルタ イムスケジューリング”, 情報処理学会, コンピュー とで,周期の長いタスクが早い時刻において実行する ことができるためデッドラインミスを起こすことなく ティングシステム,Vol.2,No.1,pp.64-74,2009. スケジュールできている. 5 [3] 評価 武田 瑛,船岡 健司,加藤 真平,山崎 信行“ , Rate シミュレーションにより評価する.ランダムに生成し たタスクセットをシステム利用率 30%から 100%まで 西垣公平,兪明連,横山孝典“ , RM に基づいたリア ルタイムスケジューリングアルゴリズムの提案と 可能性解析 ”, 電子情報通信学会, D,Vol. J95-D, No. 6,pp. 1347-1355,2012. 1-228 Copyright 2013 Information Processing Society of Japan. All Rights Reserved.