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車いすを用いた着脱式足こぎユニットの開発および評価
325 車いすを用いた着脱式足こぎユニットの開発および評価 Development and Evaluation of the Detachable Cycling Unit by the Wheelchair ○学 大嵜 将吾(名城大学大学院) 学 中曽 克也(名城大学大学院) 正 楊 剣鳴(名城大学) Shogo Osaki, Katuya Nakaso , Yang Jian Ming ,Meijo University, 1-501 Siogamaguti Tempaku-ku Nagoya 468-8502, Japan Key Words: Cycling Wheelchair , rehabilitation, Cycling Unit 1.緒言 近年,日本は少子高齢社会に突入し,高齢者や障害者等の 増加によって引き起こる,介護人材の需要の増加と少子化に 伴う介護従事者の不足から,介護者人材の不足が懸念される. そして介護支援を受けることのできない人達が増加してい くと予測される.この問題の解決策の一つとして,介護を必 要とする人々自身が,個人によって行うことができるリハビ リ方法の確立が求められている.そこで本研究では半身麻痺 者などでも使用することが可能である,リハビリ用に開発さ れた足こぎ車いすに着目した. 2.背景 足こぎ車いすは,半身麻痺者などの歩行が困難である人が, 自らの両足を使ってペダルを漕ぐことによって,移動するこ とができるリハビリ用に開発された車いすである.過去の研 究より,ペダルを漕ぐことによって運動機能が改善されたと いう報告があり,肢体障害者や高齢者などにも有効であると 言える.しかし調査の結果,足こぎ車いすにはいくつかの問題 点があることが分かった.一般的な車いすの使用者は足こぎ 車いすに乗り換える必要がある点や,一般的な車いすと比べ 高価である点,休憩する際に車いすを押してもらっても,ペダ ルが車輪と連動しているため,休むことができない点などが 挙げられる.本研究ではこれらの問題に対し,着脱式足こぎユ ニットの開発によって解決を目指した. Fig.1 Detachable Cycling Unit することで,駆動と旋回を一つの車輪で可能な構造に設計を 行った(Fig.2).クランクの位置が高く漕ぎにくい点は,車いす のJIS規格,人間工学の二つの観点から,JIS規格を満た しつつ,かつクランクの位置が低くなるように設計を行った (Fig.3). 3.研究概要 着脱式足こぎユニットは,新たに足こぎ車いすを購入しな くても,普及している既存の一般的な車いすに,開発したユニ ットを装着することで,足こぎ車いすと同じようにリハビリ が可能な車いすを目指している.また着脱式にすることで,い つでも一般的な車いすに戻すことが可能になると共に,他の 車いすに装着して使用することも可能である.そして休憩す る際の問題も解決することが可能であると考えられる.本研 究ではこの着脱式足こぎユニットの製作を行い,着脱式足こ ぎユニットを装着した車いすと通常時の車いす,足こぎ車い すを比較して評価を行った. 4.着脱式足こぎユニットの開発 過去の研究 [1]に,リカンベントバイクをベースに製作され たユニットがあるが,これは構造が大きくなり,車いすのJI S規格を満たしていない点がある.また,リカンベントバイク をベースに使用しているため,クランクの位置が高く,漕ぎに くい点や車いすへの取り付けの容易さなどが問題となって いる.本研究ではこれらを踏まえ,着脱式足こぎユニット (Fig.1)の開発を行った. まずリカンベントバイクは一つの車輪で,駆動と旋回を行っ ているため,リカンベントバイクを使用せずに,一つの車輪で 駆動と旋回を行うことができる構造設計が必要であった.そ のためシャフトドライブのように軸とかさ歯車を使用 Fig.2 Turning and driving parts Fig.3 Crank parts 車いすへの取り付けに関してはあらかじめ車いすに,普段使 用しても妨げにならない位置に,フレームを取り付け,そのフ レームにユニットを装着可能なように設計を行った(取り付 け位置はサイズ調整可能である).装着の際はドライバーなど の工具を使用することなく,容易に装着が可能なように蝶ね じを使用,または取り外し可能なクランプ構造に設計を行っ た. 日本機械学会東海支部第 65 期総会・講演会講演論文集(’16. 3. 17-18) No.163-1 5.評価 本研究では,着脱式足こぎユニットを装着した車いすと通 常時の車いす,足こぎ車いすの 3 つを用いて,基本的設計評価 (容易な取り付け,サイズの調整が可能,クランクの位置を低 くする,安全性に配慮する,軽量であることなど),振動評価, 姿勢評価,速度評価を行った.本論では振動評価と姿勢評価の 2 つを記す. 5.1 振動評価 振動評価では加速度センサー(Fig.5)を用いて計測を行い, 車いすと足こぎ車いすと比較して,製作した着脱式足こぎユ ニットの振動は,前者 2 つの車いすの振動程度に抑えること ができているか,路面の種類が変わっても同様に抑えること ができているかどうか評価を行った. Fig.6,Fig.7 以外の舗装された道路,タイルでも着脱式足こぎ ユニットの振動は車いす,足こぎ車いすよりも振動が抑えら れているという結果になった.そのため振動に対して,着脱式 足こぎユニットは有意性があると言えることが分かった. 5.2 姿勢評価 姿勢評価では(Fig.8)の SR ソフトビジョンを用いて,体圧を 測定する.これは着脱式足こぎユニットを付けた際に,通常の 車いすより傾く構造になっているため,圧力が一部分に集中 していないかどうか計測する(褥瘡[3]の原因となるため). Fig8. SR Soft Vision Fig.9 Body Pressure 実験は各車いすのそれぞれ平坦,上り下り坂の時の体圧分布 (Fig.9)を測定した.測定をする前に予めキャリブレーショ ン(Fig.10)を行い,MATLAB(Fig.11)を用いて解析を行った. Fig.5 Acceleration sensor mounting position 実験[2]はタイル,荒れた道,舗装された道路,大学内の廊下で測 定を行い,測定方法は動き始めてから 1 分間測定し,動き始め 終わりの 15 秒間を除いた中間の 30 秒間のZ軸方向のデータ で比較を行っていった.なお速度は 1.0(m/s)を目安として一 定速度になるように実験を行った.実験結果を Fig.6,Fig.7 に 示す.青線が車いす,赤線が足こぎ車いす,緑線が着脱式足こぎ 車いすである. Fg.10 Calibration result Fig.11 MATLAB analysis Table1 Body pressure distribution experimental results 実験結果より,着脱式ユニットでは許容範囲ではあるものの, 体圧が大きいため改善する必要があることが分かった. Fig.6 Fig.7 Z -axis direction Corridor Z -axis direction Rough road 6.考察 今回開発した着脱式足こぎユニットは,振動においては問題 ないと言えるが,姿勢においてはクッションなどを用いて体 圧を分散させる必要があると言える.今後は,その他の評価結 果を踏まえたうえで,より実用性の高いものにするため改善 を行っていく必要がある. 7.参考文献 [1] 桧森江靖 小林義和 “FES サイクリングユニットの製作 と乗車ポジション評価” (秋田工業高等専門学校研究紀要 50, 17-24, 2015-02-28) [2]岡村美好 “タイル舗装の目地が走行中の車いすの振動 と 乗 り 心 地に 及 ぼ す影 響 ” ( 土 木 学 会 論 文 集E Vol. 64 (2008) No. 1 P 237-246) [3]山本泉 “在宅における褥瘡の対策” (日医雑誌 第 126巻・第12号/平成13(2001)年12月15日)