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IBM i バックアップ事情 - バックアップ時間短縮のための外部ストレージ活用
IBM i バックアップ事情 - バックアップ時間短縮のため の外部ストレージ活用 IBM i バックアップの課題 昨今、ERP のようなデータ量、特に累積データが膨大になるシステムやインターネット接続で 24 時間 365 日サービス前提をはじめ業務稼働時間の長いシステムが増えています。その結果、シ ステムバックアップ時間をいかに短縮するか、というシステム課題が大きくなっています。 またバックアップをテープ媒体や仮想テープ装置等に保管する場合はそのメディア数、ボリューム 量を以下に削減するか、バックアップ・復元の運用をいかに簡素化するか、という事も検討事項に 挙げられる事が多くなりました。 IBM i バックアップ機能の拡張 上記のような課題に対応して IBM i の拡張機能として主に以下のようなものがあります。 1. 活動状態保管の機能拡張 活動状態保管(オンラインバックアップ)の機能を順次拡張しています。最近の拡張として はライブラリーと IFS を同一静止点で取得可能とするオプションが追加されました。(IBM i 6.1 以降) 2. QUSRSYS ライブラリー保管時のシステム値等の同時保管 IBM i 6.1 以降では QUSRSYS を SAVLIB コマンド等で保管した際、RTVSYSINF コマン ドが自動実行され、OS の設定値(システム値、:EDTD, *SRVATR, *SRVPVD, *NETA, *RPYLE)も保管されます。システムを制限状態にして SAVSYS コマンドでシステムの保 管を行わなくとも、QUSRSYS 復元時に UPDSYSINF コマンドで OS 属性を復元出来ま す。 3. 相互依存関係のあるオブジェクトの復元順序を柔軟化 異なるライブラリー上の論理ファイル/物理ファイルは復元順序を問わずに復元が可能と なりました(IBM i 6.1 以降)また、IBM i 7.1 からはジャーナル、ジャーナルレシーバーも復 元順序を問わず復元が可能となりました。 4. テープメディア上での保管順序の記録 テープメディア上の何番目に保管されたか順序番号を記録し、復元時に順序番号を指定 する事で途中のデータをスキップしテープ読み取り時間を短縮できます。 IBM i + 仮想テープ装置でのバックアップ IBM i から利用できる仮想テープ装置としては大きく 2 つ挙げられます。 1. IBM i OS の提供する仮想テープ装置機能 IBM i OS 上で仮想テープ装置を構成し、物理テープメディアの代わりに IBM i のストレー ジ(ハードディスク)上にテープバックアップイメージを保管します。保管したバックアップイ メージは IFS のファイルとして他システムへの FTP などが可能です。 仮想テープ装置を使う 2. 仮想テープ・ライブラリー ProtecTIER IA サーバーでも利用可能な ProtecTIER をファイバーチャネルで接続し、IBM i に仮想 テープ装置として構成します。IBM i からテープ装置として認識された ProtecTIER のスト レージにテープバックアップイメージが取得されます。複数世代管理をする場合、 ProtecTIER の重複データ削減機能を利用して、大幅に保管容量を削減する事が出来ま す。また、ProtecTIER をもう一台遠隔地に設置してリモートバックアップも構成できます。 この場合も重複排除された最小限のデータを転送する事になり、必要回線帯域を大幅に 削減する事ができます。 IBM i での TS7600 ProtecTIER 利用基本ガイド IBM i のバックアップ時間=サービス停止時間を短縮したい 以上の手法ではそれぞれメリット・デメリットがありますが、バックアップ時間=サービス停止時間 の観点では、最低でも数十分、1 時間以上~のサービス停止が必要となる場合があります。シス テム運用上、バックアップ時間の確保が難しいケースも考えられます。 この問題を解決する方法として注目されているのが、オープン系と同じようにストレージ(外部スト レージ)機能を使ってバックアップを行う方法です。IBM の外部ストレージ(V7000 など Storwize シ リーズや XIV 等)の FlashCopy(フラッシュ・コピー)機能を使用すればシステムのサービス停止時 間は数分程度と劇的に短縮することも可能です。 これまでの IBM i + 外部ディスク活用時の課題点 System x など IA サーバーでは一般的な外部ストレージですが、IBM i ではあまり普及していませ んでした。理由の第一はパフォーマンス的な問題で、IBM i の内蔵ディスクが外部ストレージに比 較して圧倒的に高速であったためです。ですが昨今の外部ストレージの高速化や IBM i 自身の 外部ストレージへの最適化などの相乗効果で、外部ストレージでもパフォーマンスが内蔵ディスク とそん色ないケースも増えてきました。加えて、上述の ような外部ストレージのバックアップ機能 を利用し、サービス停止時間を短縮したい、という要望が重なり、外部ストレージの接続を検討す る IBM i システムが増えてきました。が、ここで一点、IBM i を外部ストレージを接続する際の ハードルが存在していました。それが IBM i ストレージの IASP 化です。 IASP 化を PC サーバーやパソコンに例えると、OS を C ドライブに導入し、ユーザーアプリケーショ ン・データは USB やネットワークドライブで接 続した D ドライブに分けて導入する、という事が出 来ます(図1)。IA サーバーや UNIX ではきわめて一般的な方法ですが、AS/400 ファミリーでは OS とユーザーデータを別々なディスクスペースに分ける、と言う概念はあまり一般的ではありま せんでした。AS/400 が開発された当初は IASP という機能・概念はなく、当時の高価なハードディ スクを出来るだけ少ない台数で最高のパフォーマンス、管理の容易性を実現するためにハード ディスク全体を1つの 仮想ディスクとして OS、ユーザーデータをすべて格納するという設計が一 般的なものとして長年使用されてきました。 IASP が初めて導入されたのは 2001 年 OS/400 V5R1 ですでに 10 年以上の実績がありますが、 昨今 FlashCopy によるバックアップ時間の短縮、XSM(クロスサイトミラーリング)や Global Mirror、 Metro Mirror 等のストレージリモート複製のベース構成として実績が増えています。 OS を含めたシステム全体の静止点を取得するよりもユーザアプリケーション・データのみの静止 点を取得する方が、システム運用上容易で手順も簡素化できるなどのメリットがあるため、ユー ザーアプリケーション、データを IASP として設定した外部ディスク上に作成し、これらをフラッシュ コピーなどストレージの機能を利用してごく短時間にバックアップを取得することが可能となりま す。 図1 IASP 化の設定方法 従来、AS/400 ファミリーでは OS、ユーザーアプリケーション・データとも 1 つの仮想ディスク空間 (SYSBAS や ASP1 と表現されます)にまとめて導入する事が一般的で、IASP 化するにはアプリ ケーションやジョブの設定等にいくつかの改修(=IASP 化したストレージのオブジェクトを使用す るために、それぞれのジョブ・プログラム等から IASP のネームスペースやパスを明示的に追加す る)が必要です。具体的には以下のような設定を行う必要があります。 1. CLP などで SETASPGRP コマンドでアクセスする IASP のグループ(IASP の番号)をセッ トする 2. SBMJOB コマンドの初期 ASP グループのパラメーターをセットする 3. ジョブ記述の INLASPGRP パラメーターに IASP のグループをセットする 以下では 3 についてご紹介します。 IASP の詳細については以下のリンクをご参照下さい。 IBM PowerHA SystemMirror for i 入門 - 機能概要 SystemMirror for i 入門 - 独立 ASP ジョブ記述 初期 ASP グループパラメーターによる IASP の設定方法 IASP のアクセスに使用するパラメーターとして、ジョブ記述に INLASPGRP 初期 ASP グループ パラメーターがあります。(図 2) 図2 ジョブ記述はあらゆるジョブで必ず一つ使用されますので、IASP 化に際して確認や変更がしやす く、対応漏れが発生しにくい、ということが言えます。確認・設定方法としては使用中のジョブ記述 をリストアップし、必要があればジョブ記述を追加作成しユーザーID などに紐付け、初期 ASP グ ループパラメーターを追加することで対応可能となります。 例えば以下では各ジョブで使用するユーザープロフィールに指定されたジョブ記述の INLASPGRP パラメーターをセットする事で対応が可能です。 DRDA 接続 ODBC 接続 JDBC 接続 5250 端末ジョブ IASP 上の IFS オブジェクトへのアクセス IBM i Access for Windows のデータ転送 など ただしジョブ記述の INLASPGRP パラメーターの指定で IASP が設定できないケースがあります。 下記のようなケースでは注意が必要です。 ジョブ記述 QDFTJOBD を使用するジョブ QDFTJOBD ジョブ記述では INLASPGRP パラメーターが有効になりません。 QDFTJOBD を使用しているユーザーアプリケーションの場合、別なジョブ記述を作成し、 INLASPGRP パラメーターを指定し使用する必要があります。 PCOMM のデータ転送 IBM i ナビゲーターの SQL スクリプト実行画面 CONNECT TO (IASP 名)で指定する必要があります。 その他 IASP の考慮事項としては、 スプールファイルの考慮点 OUTQ を IASP 上に作成可能です。CHGSPLFA コマンド等で ASPDEV パラメーターを指定する 事で IASP 上の OUTQ にもスプールを配置できます。 複数の IBM i で IASP を切り替えて利用 する場合、IASP 上のスプールは切り替えた側の IBM i からもアクセス可能です。ただし、IASP 上 のスプールファイルは元のジョブが終了した時点でジョブと切り離されるため、WRKJOB コマンド、 WRKSPLF コマンドでジョブ番号を指定したスプール検索では参照されなくなります。 フラッシュコピー FlashCopy によるバックアップの例 最後にフラッシュコピーを使用したバックアップの流れについて一例をご紹介します。(図 3) 図3 【本番区画】の IBM i と、【バックアップ区画】の IBM i 区画の 2LPAR 構成のシステムで、それぞ れの LPAR に V7000 上にシステム ASP(ASP1), IASP を構成します。 本番区画の業務をいったん停止、フラッシュコピーでバックアップを取得、本番区画は短時間(分 単位)にて業務を再開し、テープへのバックアップはバックアップ区画にて業務稼働時間中に行う、 という想定です。 1. 【本番区画】IASP のデータ静止点を取るためアプリケーション(=業務)を一旦停止する 2. 【本番区画】IASP データアクセス中断処理を実行 CHGASPACT OPTION(*SUSPEND) コマンドで IASP へのデータアクセスをサスペン ドさせる 3. 【本番区画】V7000 のフラッシュ・コピーを実行する STRSVCSSN SSN(フラッシュコピーセッション名) TYPE(*FLASHCOPY) コマンドを 実行 4. 【本番区画】フラッシュ・コピー完了後 IASP のデータアクセスを再開する CHGASPACT OPTION(*RESUME)コマンドを実行し IASP へのアクセスを再開させる 5. 【本番区画】業務を再開する 上記の 1~5 の時間がユーザー視点でサービス停止となるが、それぞれのステップは一般的な構 成であれば通常、数十秒程度で完了するため全体の停止時 間も数分程度~で可能となります。 テープへのバックアップについては 3 でフラッシュコピーが完了した後に【バックアップ区画】でテー プ装置へのバックアップを行います。 以上の案をベースとして拡張案としては遠隔地へのデータ複製などの構成も可能となります。 ※ライセンスプログラムについて STRSVCSSN 等の PowerHA 関連のコマンド・機能は IBM i OS ライセンス以外に別途以下のラ イセンスが必要となります。必要なライセンスは H/W の構成等によって変わります。 5770-HAS PowerHA SystemMirror for i 5770-SS1 オプション 41 HA スイッチャブル・リソース/XSM DSCLI DS コマンド・ライン・インターフェース -- DS6000/8000