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第2回 - 国土交通省

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第2回 - 国土交通省
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地方・中小建設企業の海外展開支援メールマガジン
No.2(2012 年 10 月 19 日)
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※ このメールマガジンは、「平成 23 年度 建設企業の海外展開に係る調査」に
回答された企業の方々、「平成 23 年度 海外展開支援アドバイザー相談」に申
込みされた企業の方々、「平成 23 年度 海外展開セミナー」に参加申込みされ
た企業の方々、「地方・中小建設企業の海外展開支援メールマガジン」の配信
を申込みされた方々にお送りしています。
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◇ 目 次 ◇
1.「地方・中小建設企業経営者のための海外展開経営塾」開催のお知らせ
2.「平成 24 年度 海外展開支援アドバイザー事業」のお知らせ
3.海外展開に関するアドバイス
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1.「地方・中小建設企業経営者のための海外展開経営塾」開催のお知らせ
■海外での事業展開に関心のある地方・中小建設企業の経営者の方を対象として
既に海外進出している経営者から、「生の体験談」を伺い、意見交換ができる
『海外展開経営塾』を下記の通り開催します。
○プログラム、講師
・14:30
受付開始
・15:00~16:00
講師による基調講演(海外進出実績、事業概要説明)
・16:00~17:30
意見交換会(海外事業の苦労点など海外進出に役立つ知識を共有する)
・17:30~18:30
懇親会(立食での意見交換(自由参加))
・18:30
閉会
○開催日・会場
(1)11月
6日(火)
浜離宮建設プラザ(東京都)【終了済み】
(2)11月14日(水)
AP梅田大阪(大阪府)
【終了済み】
(3)11月28日(水)
浜離宮建設プラザ(東京都)【終了済み】
(4)12月13日(木)
AP梅田大阪(大阪府)
【終了済み】
※定員:地方・中小建設企業経営者の方、各回 20 名(先着順とさせていただきます)
(参加費用 1,000 円:当日、受付にてお支払ください)
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■ 経営塾の参加申込方法等は、下記の国土交通省ホームページをご覧下さい。
http://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo13_hh_000174.html
2.「平成 24 年度 海外展開支援アドバイザー事業」のお知らせ
■第1回のメールマガジンにてお知らせしましたように、「平成 24 年度 海外展
開支援アドバイザー事業」を、6 月 25 日(月)より実施しております。
本事業は、自社の建設技術やノウハウを活かして海外での事業展開を考えて
いる地方・中小建設企業の方を対象とした無料相談事業です。
海外事業に関する様々なご相談に対して、専門家が丁寧にアドバイスします。
アドバイスは「2回まで無料」で利用できます(1回あたり2時間程度)。
既に多くの企業の方々にご利用いただいています。
是非、ご活用下さい。
■ 相談の申込み方法等詳細は、下記の国土交通省ホームページをご覧下さい。
http://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo13_hh_000165.html
3.海外展開に関するアドバイス
■今回は、ベトナム在住の海外展開支援アドバイザー 片岡 利昭 氏から、現在
のベトナムの建設事情についての情報提供です。
(次回でも引き続き、ベトナムへの海外展開のアドバイスをお届けします)
------------------------------------------------------------------------------ベトナムは謎が多い国である。まだ記憶に残っているベトナム戦争だが、なぜ、ベトナ
ムは世界最強の軍事力を誇るアメリカを向こうに回して、あの戦争に勝つことができたの
か。また、80 年代初頭、なぜ、ベトナム人は大挙して東シナ海から太平洋へボートピープ
ルとして命がけで逃げ出して行ったのだろうか。さらに、1978 年 12 月、ベトナムはカン
ボジアに進攻していきその後、9年間も駐留を続けた。1978 年といえば、ベトナム戦争が
終わって3年目で、この時期、荒廃しつくした国の再建に最も大切な時期のはずなのに、
一体、ベトナムはなぜカンボジアへ行かなければならなかったのか。
その他、ベトナムを知れば知るほど、「なぜ」という謎が多い国なのである。これらの回
答はいずれかの機会に譲るとして、今回は、インフラ整備に忙しいベトナムの現状と、日
系建設会社の道路工事の状況をみることにする。
経済発展の激しいベトナムでは、現在、土木建設や橋梁建設、ビル建設が盛んであり、
それは大都市圏だけではなくかなり離れた地方都市でも同じである。このように土木建設
業者にとって魅力あるはずのベトナムなのだが、実は日系企業は、道路工事をあまり受注
していない現状がある。
その理由は、ベトナム政府は民意を大切にしており、それを最重要課題として政策に反
映していることにある。このため、住民の権利を優先させるので用地買収がなかなか進ま
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ないのである。また、ベトナム政府は何か政策を発表しても、住民や企業などからの反対
があれば、簡単にそれを撤回する。朝令暮改をすることで、政府としてのプライドよりも
民意を大切にしているのである。たとえば住民が地方政府に抗議して座り込みのデモでも
すれば、新聞が大々的にそれを報道し、直ちにハノイの中央政府が動くことになる。
道路建設事業では現在、計画が発表されて資金的裏付けが付き入札の発表をしても、仮
にそれが日本政府のODA(海外開発援助資金)のプロジェクトであっても、日本の業者
は積極的に応札してこないという現象が起こっている。彼らの話では、「折角、プロジェク
トを取っても、用地買収が進まないため、予定どおり工事に入ることができない」ことが
理由のようだ。
日系の業者は、プロジェクトの受注に成功すれば、直ちに責任者と人材を送り込んで、
事務所を設置しローカルスタッフを雇い、いつでも仕事が始められるべく準備をする。と
ころが、計画路線上に虫食いのように「居座り」がいると、いつまでたっても工事が進め
られない。その間、折角開設した工事関係事務所もスタッフも具体的な仕事が開始できな
いまま、高い経費を払い続けることになる。仮に工事をスタートしても、現場に地権者が
がんばっている限りその先の仕事が止まってしまう。このような住民との土地明渡交渉は
業者の仕事ではなく、土地所有者である政府の仕事である。社会主義のベトナムでは、土
地はすべて政府のものであり、住民や業者はそれを借りているからである。
なぜ、政府はこのように住民第一主義になっているのだろうか。それは、歴史を見ると
分かることだ。すなわち、現在のベトナムの思想的背景や政治形態の基礎を作り上げた、
故ホーチミン国家主席は強いカリスマ性を持つ指導者だったが、重要案件はまわりの人た
ちの意見を充分に聞いた上で、機が熟するのを待って結論を出した。彼にはカリスマ性は
あったが、独裁ではなかった。このような温和な政策運営の伝統を重んじつつ、保守と革
新の勢力のバランスをうまく取りながら、経済改革を平和裏に進めていった。ホーチミン
氏は民意を重視し国民のための政治を目指していたのである。
翻ってみれば、第一次ベトナムブームに沸いた 1995 年から 2000 年ごろには、日系の土
木業者もこぞって競争入札に参加してきて、仕事を取って行ったものだ。しかし、年代が
進むに従って、住民の権利意識が強くなり、ゴネ得とも取られそうな極端なケースも散見
されている。たとえば土地の借用について、外資系企業に対する賃貸契約は、普通、最長
50 年とされている。しかし、住民の住宅などに対しては特に期限もないし、その賃貸料を
支払うというようなこともない。また、所有権に関する権利書は、大都市では少しずつ整
備されつつあるものの、まだまだ完備はされていない状態である。
最近では、日系企業は市内の高層ビル建設を受注できていない。残念ながら、ほとんど
は韓国や香港の企業が受注し、オフィスビルやアパート、ホテルなどの高層ビルを建設、
また広大な住宅開発を次々と進めている。日系企業が負けているのだが、それはなぜだろ
うか。その理由は、日本のコストが高いせいばかりではない。作業をするのはベトナム人
であり、資機材価格もほとんど変わらないはずだからだ。その理由は、建設予定地の調達
にある。たとえば「市内の一等地が売りに出された」というようなニュースは我々にも入
ってくるが、それを日系の大手建設会社に持ち込んでも簡単には動いてくれない。会社は
まず調査から入り、所有権者の確認、手付金の支払は領収書がないことが多いのだが、こ
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の金額は買い取り金額として算入されるのか、その他、採算性の確認や書類の審査などを
行う。そして稟議書がある。これらは日本の会社としては当たり前のことなのだが、韓国
や香港の企業の場合は違う。優良物件と判断されれば、その会長の鶴の一声で即決である。
どうしても日本が負ける原因がここにある。企業としての決断のスピードの問題である。
では、道路工事は誰がとっているのだろうか。それは中国企業である。彼らは北京オリ
ンピックが終わり、上海万博が終わって、たくさんの機材や工事関係者を抱えて困ってい
るのである。彼らは日本のODA資金を使う工事の入札に、積極的に参加してきて契約を
取っていく。道路工事は、そのほとんどはアンタイド(注)の資金供用だからだ。
中国企業は、契約を取っても日本のようにすぐには工事の準備をしない。計画沿線の用
地買収が完全に終わるのを待っているのである。ベトナム政府から、事務所設置の催促を
受けても、用地買収が済まないのに事務所も人材も用意することができない、と主張して
いるそうだ。ここでも、中国の強引な進出が見られるのである。
最近のベトナムの道路工事では、そのような状況の中でもドンナイ省のロンタンで計画
されている新国際空港の予定地近くから、ホーチミン市を迂回してメコンデルタの中心都
市カントー市までの東西ハイウエー、約 190 キロメートルが橋梁建設一ヵ所を残して間も
なく完全開通をしようとしている。この工事の目玉ともいえる、ホーチミン市の東南部を
流れるサイゴン川の地下トンネル工事だが、これは日本のODA資金により、日本の業者
が 2011 年、9年をかけて完成させたものだ。また、終点のカントー市に架かるカントー・
ブリッジは、苦労の末、日系企業の合同で完成されたものだが、その美しい景観はメコン
デルタの象徴的モニュメントとなっている。
ハノイ周辺でも急速に周辺道路が整備されつつあり、また、ハノイとホーチミン市、1700
キロ余りを結ぶ二号線の工事も順調に進んでいるようである。
最近の現地新聞によれば、ベトナム政府は道路工事が予定通り進まないのは、用地買収
にその原因があることに注目し始めた。そして、各自治体に対して必要資金の調達を進め
て、期限内の工事完了をするよう厳しい指導を始めた。
これからますます発展を続けるベトナムのこと、土木建設事業は限りなくそのチャンス
が広がっている。
(注)海外資金援助には、日系企業を対象としたタイドと、受注企業に国の指定をしない
アンタイドがある。
(次回に続く)
(海外展開支援アドバイザー
片岡
利昭)
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(配信元)
国土交通省「海外展開支援アドバイザー」事務局
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