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文章特集 もう一度やり直す基本のき 日本語“綴り方”講座
17 男たちが日本語を論理的に きた論理性を重んじる男の文学なんだと ︻脚注︼ ❶平安時代には係り結びがありました。 ﹁ぞ﹂ ﹁なむ﹂ ﹁や﹂ ﹁か﹂の係り助詞が あったら連体形で結ぶ、 ﹁こそ﹂があっ たら已然形で結ぶ、という約束です。 ﹁花ぞ咲きける﹂ ﹁花なむ咲きける﹂ ﹁花 こそ咲きけれ﹂がそうですが、係り結 びの約束が緩くなったために、そこに 格助詞が入る隙間ができました。 はっきり言う。武士、僧侶など男たちが したが、それは話し言葉においてです。 思います。曖昧にしないで、単刀直入に ︱︱主語を示す﹁が﹂が生まれたのはい 表立った言語の担い手となり、主語や目 く、武士や教養人が使っていた山の手 の﹁オメー﹂ ﹁イテー﹂式の言葉ではな ばれました。ここで言う東京語は下町 要でした。そこで東京語が共通語に選 は、日本のどこでも通用する言葉が必 ❸明治になり、近代国家を統一するに なのです。 のです。書き言葉では、論理的な言語 ❷従来、日本語は曖昧と言われてきま つのことでしょうか。 話し言葉の訓練が日本人には足りない そう。上方女が﹁叱り手﹂のことを﹁ひ とは稲妻かへ。オツダネヱ。江戸では叱 か り 手 ﹂ と 言 っ た こ と に 対 し、﹁ ひ か る 的語などの格関係をはっきり示すように 院政期以降ですね。さらに、鎌倉・室 かつての規範と新しい規範 町 時 代 に な る と、﹁ 花 が 咲 く ﹂ の よ う に、 なったわけです。 主語意識をもって﹁が﹂を使っています。 それまでは﹁花咲く﹂なんていう形で、 戸時代には江戸の人も力を持ってきたか る と い ふ の さ。 ﹂ と 反 撃 し て い ま す。 江 ︱︱江戸時代には、江戸語が共通語的な 表現することが多い。 ︱︱それまで﹁が﹂はなかった? ら、負けていないんですね。 ︱︱新旧の規範がぶつかりあっている? 位置づけになりますね。 政治の中心が言葉の中心になります。 ﹁が﹂は昔からありましたが、ちょっと 用法が違うのね。﹁梅が香 ︵今で言えば ﹁梅 方をしている人は、新しい言葉の使い方 内容は四編九冊に分けられ、初編・四 台に、当時の庶民の生活を描いたもの。 ❹式亭三馬が書いた滑稽本。浴場を舞 言葉を指します。 戸語が共通語になっていきます。 に対して、﹁なんだよ、その言葉づかいは﹂ 編が男湯、二編・三編が女湯となって 言葉が変わるとき、古い伝統的な言い 鎌 倉・ 室 町 時 代 に な る と、 ﹁が﹂は主語 ︱︱反発もあったようですね。 って怒るんですね。﹁なんや、 からからと。 ❺ を表す用法で使われだすっていうこと。 ﹃ 浮 世 風 呂 ﹄ に は、﹁ さ う だ か ら 斯 だ か さかいと言え﹂と。 ❹ 鎌倉・室町時代には主語は﹁が﹂で明示 らと。あのまァ、からとはなんじゃヱ。﹂ ﹃羅生門﹄ ︶ いると云う事を意識した﹂ ︵芥川龍之介 死が、全然、 自分の意志に支配されて 例・ ﹁下人は始めて明白にこの老婆の生 ますが、明治・大正時代は違いました。 伴い、 ﹁全然うまくない﹂のように言い どがあります。 ﹁全然﹂は普通は否定を ❺最近の例で言うと、 ﹁全然うまい﹂な います︵上記引用箇所は二編から︶ 。 しようよ、目的語は﹁を﹂で明示しよう と書かれています。これは上方女が江戸 ﹁ そ うだから﹂ ﹁女だから﹂と言うのです ︱︱ 規 範 と 言 う と、 ﹁ら抜き言葉﹂を思 言葉は常に動いている やっぱり武士の時代だからだと思うん が、 そ れ に 反 発 し て、﹁ な ん や、 か ら か い出しますが。 女 に 対 し て 言 っ た も の で す。 江 戸 女 は で す よ。 貴 族 は﹁ 花 咲 く、 花 な む 咲 く ﹂ らと﹂と激しい対抗心を燃やしたわけで ❶ と言いますが、武士は﹁花が咲く﹂と言 す。それまで千年も上方言葉が規範だっ ❷ う。論理関係が明らかです。 と言っているのに、字幕は﹁ 見 ら れ る ﹂、 NHK の字幕を見ていると、おもしろ いのね。画面に出ている人は﹁見れる﹂ たのですから当然ですね。 鎌倉・室町時代は漢文訓読で培われて ︱︱江戸女も負けていませんね。 ︱︱なぜ、論理関係をはっきりさせた? ︱︱それはなぜ? よ、という意識が強くなってきた。 ❸ の香﹂ ︶ ﹂みたいな用法が中心なんですね。 ですから江戸に幕府ができて、言葉も江 0 18 ﹁ 食 べ れ る ﹂ と 言 っ て い る の に、 字 幕 は き言葉で﹁見れる﹂は抵抗があります。 ︱︱ただ、話し言葉ならいいですが、書 ぞ﹂って歌があるじゃない︵笑︶ 。 ﹁酒が飲める、酒が飲める、酒が飲める した規則。 ❻文法的に﹁正しい﹂ものとして規定 にて原稿を執筆してもらいました。 ❼公募ガイド一九九四年八月号の巻頭 ﹁食べられる﹂ 。 ❻ ︱︱なぜ、﹁酒を﹂になった? ❽ 言文不一致ですね。 ︱︱規範文法にのっとって日本語を日本 でも、若者はどんどん使っちゃうわけ 一致させたんだけど、書き言葉は変わり させないと近代化できないということで どちらを使ったらいいですか。 ︱︱﹁酒を﹂のほうが新しいんですね。 だから﹁酒を﹂となったのだと思います。 ❽慶応二年、前島密は、日本が西洋に ですよ。今はみんな﹁見れる、 食べれる﹂ にくいから、常に話し言葉が先行しちゃ ﹁酒が飲める﹂は﹁酒﹂が強調されます。 西 洋 文 法 の 知 識 で、 ﹁飲む﹂の目的語 ですね。日常会話では、若者は誰も﹁見 うんですね。結局、乖離現象が起きる。 ﹁ 飲 め る も の は 何?﹂ ﹁酒です﹂という て書き言葉と話し言葉を一致させると 明治期に、西洋語のように言文を一致 られる﹂なんて言っていません。 ︱︱それでもいつか平気で﹁見れる﹂と ぐ あ い に。 一 方、 ﹁酒を飲める﹂のほう いうものでした。 語に翻訳しているんですね。 ︱︱以前、大野晋先生に、当時問題にな 書ける日が来て、その頃にはまた先行し は﹁酒﹂がクローズアップされない。ど の水女子大学卒、東京大学大学院修士課程修了、文学博士。明治 大学国際日本学部教授。『日本語の歴史』『日本語の古典』『犬 ません。 ちられる﹂と可能形にすることもでき ちる﹂に人の意思はありませんので、﹁落 ちる﹂と言うこと自体できませんし、﹁落 と え ば﹁落 ち る ﹂ ︶ と な る と、 ﹁酒を落 ともできます。しかし、 これが自動詞 ︵た 可能形にして﹁酒を飲める﹂と言うこ をとって﹁酒を飲む﹂ と言えますし、 明らかに変だという使い方はだめだけ ︱︱両方正しいと迷いますね。 ろみは、当初は仮名で書くことによっ 一致運動の始まりです。前島密のもく 廃止之議﹂を建白します。これが言文 葉の隔たりが原因だと痛感し、 ﹁漢字御 後れをとった原因は書き言葉と話し言 っていた﹁ら抜き言葉﹂についてどう思 ている別の言葉が生まれていて、常に追 ❾﹁飲む﹂は他動詞ですので、目的語 ❼ いますかと聞いたのですが、﹁いいんじ ちらもOKですね。 表現効果が高いかどうか いかけっこをしているわけですね。 撮影 神楽千砂 ゃない﹂とあっさり。 大野先生は、言葉はどうせ変化すると 見 越 し て い る か ら、 ﹁いいんじゃない﹂ いいんじゃないですか。それよりも、表 ど、そうじゃないときは、違っていても ︱︱﹁酒を飲める﹂は今では正しいとさ 現効果が高いかどうか。 ❾ のは言葉を扱っている評論家のことが多 れていますが、本来は﹁酒が飲める﹂で ︱︱特に文学ではそうですね。 とおっしゃったんですね。だめだと言う い。研究者は言葉の推移を知っているか すよね。 は「びよ」と鳴いていた』など著書多数。 正しいというのは、ひとつ前の伝統的 な言い方に合っているということに過ぎ ないんですね。文章というのはどのくら い表現効果があるかどうかが大切なんで す か ら、 規 範 か ら は ず れ て い て も、 ﹁い いね、これ﹂という目で見るべきじゃな いかしら! ︱︱自由に表現する? 紫式部なんかは﹁鮮やか﹂から﹁あざ あざと﹂という言葉を作っちゃった。文 学なら、類推できる範囲で﹁あら、新鮮 19 ね﹂っていうところを狙って言葉を使っ てもいいんじゃないですか。 『日本語の歴史』(岩波新書) 『日本語の古典』 (岩波新書) ら、変化を受け入れちゃう傾向がある。 山口仲美(やまぐち・なかみ) 1943年、静岡県生まれ。お茶 文節は意味が分かる最小の単位 ❶ 文は文節に分けられます。文節は、意 味が分かる範囲で、できるだけ短く切っ たまとまりです。 文節に分ける方法は簡単です。合いの ❷ 手を入れて読めば分けられます。 ﹁私は︵ねえ︶たらこの︵ねえ︶パスタ が︵ねえ︶好き。 ﹂ はい、できました。 多くの文節は、あとにある文節に係り ます。これを係り受け関係と言います。 ❸ に 係っています。 入れ子構造にすると読みにくい ❹ 係り受け関係が入れ子構造になってい ると、読み手は非常に苦労します。 僕は山本が佐藤が受賞したと電話した のかと思った。 佐藤が受賞したと山本が電話したのか と僕は思った。 入れ子構造を解消し、係り受け関係を 近づけましたので、かなり読みやすくな りました︵図2参照︶。 実に多くの係り受け関係が ︻脚注︼ ❶文章とは、厳密には一つのまとまり のある内容を書き表した全体を言いま す。ですから、 ﹁私はたらこのパスタが好き。 ﹂ これは厳密には文章ではなく、単に 文と言います。 ❷﹁たらこの﹂も文節ですが、係り受 け関係を見る際はここまで細かく分け と考えてかまいません。 ず、 ﹁たらこのパスタが﹂で一つの文節 係る文節は、複数ある場合もあります。 ❸﹁書くことは楽しい﹂の場合、 ﹁書く ています。 このような係り受け関係は、本特集 では﹁美しい ↓ 花﹂のように↓で示し と被修飾語の関係でもあります。 であれば、 ﹁美しい﹂と﹁花﹂は修飾語 の関係でもあります。また、﹁美しい花﹂ ことは﹂と﹁楽しい﹂は、主語と述語 図3を見てください。三つの文節がす ❺ べて﹁吠えた﹂に係っています。 図4はどうでしょうか。かなり複雑に なっています。 の係り受け関係を作っているわけです。 私たちは文を書くとき、これほど多く とてつもなく読みにくい文章です。図 係り受け関係を意識しなくても、文は ❹﹁入れ子﹂と言って分かりにくければ、 ってください。 マトリョーシカ人形のような構造と思 気づかない、気づいても直せないという ❺﹁太った犬が﹂も﹁太った ↓ 犬﹂に 何度も確認しましょう。 書きながら、あるいは書いたあとも、 ら変ですね。 ﹁私の夢は⋮⋮何だ﹂と、 は、 ﹁私の夢は ↓ 思っていた﹂ですか さんの三振をとりたいと思っていた﹂ ガースに入り、江夏投手のようにたく ❼たとえば、 ﹁私の夢は憧れの阪神タイ きに威力を発揮します。 ❻文法を知っていると、特に推敲のと つにしています。 分けられますが、ここでは便宜的に一 ことになってしまいかねません。 ❼ かないと、係り受け関係がおかしいのに 書けます。しかし、知識として知ってお ❻ 1を見れば分かるとおり、係り受け関係 が入れ子になっているからです。 では、入れ子構造を解消しましょう。 [図 3] ﹁書くことは楽しい。 ﹂ この場合、 ﹁ 書 く こ と は ﹂は﹁ 楽 し い ﹂ [図 1] [図 2] [図 4] 20 係る言葉は長い順に ❷ 膠着語である日本語の場合、語順は自 ❶ 由に決めてかまいません。この点で、語 順が重要となる外国語︵たとえば英語や ❸ 中国語︶と日本語は大きく異なります。 C D E F 古びた十年前に読んだ厚い本 古びた厚い十年前に読んだ本 厚い十年前に読んだ古びた本 厚い古びた十年前に読んだ本 いずれも文法的には問題ないですが、 のはAですね。Bもぎりぎりセーフ。し 読みやすさは格段に違います。一番いい 僕は君が好きだ。 かし、C∼Fは変ですね。 ︵ア︶の場合も、﹁私は出無精だ﹂の﹁私 は﹂に引っ張られて、一瞬、 ﹁私﹂が﹁こ んな日は家でのんびりするのがいい﹂と 言ったかのようです。主語が変わったと きは、まっさきに明示したいです。 ︵イ︶今度こそは何がなんでも入賞して やると十年前に誓った。 いつかと思ったら十年前かと言いたい 語 順 で す。 ﹁ い つ、 ど こ で ﹂ と い っ た 重 要な情報は先に書きたいです。 ︵ウ︶十分もしたら彼の両親がおそらく け距離と言いますが、Aのほうが係り受 ﹁おそ ら く ﹂ の よ う な 文 全 体 に 係 る 副 詞 趣旨としては︵イ︶と同じです。この 迎えにくるはずだ。 け 距 離 が 近 い︵ 図5 参 照 ︶。 同 じ 言 葉 に は、先に書いて文の趣旨を予告したほう 誤 読 が な く、 よ り し っ く り く る 語 順 を ❺ あ り ま せ ん。 い ろ い ろ 入 れ 換 え て み て、 以上は原則であって厳格な決まりでは たほうがいいでしょう。 せ ん。﹁ を 格 ﹂ は で き れ ば 述 語 に 近 づ け 長い順ではありますが、しっくりきま ︵エ︶作品をメールで見た。 ❹ 係るものが複数ある場合、長い順に並べ が親切です。 ︵ア︶私は出無精だ。こんな日は家での す。そうした例を出してみます。 長い順でないほうがいい場合もありま 長い順にできない場合 ると読みやすくなるということです。 係る言葉と受ける言葉の距離を係り受 その差はどこにあるのでしょう。 君が僕は好きだ。 いずれも正解です。 では、以下の三つの文を一つにした場 合はどうでしょうか。 十年前に読んだ本 古びた本 厚い本 A 十年前に読んだ古びた厚い本 B 十年前に読んだ厚い古びた本 [図5] んびりするのがいいと父は言った。 主語が分からない場合は、とりあえず 前の文の主語を引き継ぐものと思います。 探してみてください。 ︻脚注︼ ❶膠着語とは、膠のように助詞がくっ つくことで格を決める言語。 ﹁鉛筆が﹂ ﹁ 鉛 筆 を ﹂ の よ う に、 く っ つ い た 助 詞 に よ っ て 主 格︵ 主 語 ︶な の か 目 的 格︵ 目 的 語 ︶ な の か が 決 ま り、 語 順 に つ い ては自由度が高い。 ﹁述語︵述部︶は最後に来る﹂ ❷語順は自由と言っても、 ﹁修飾語は被修飾語の前にある﹂ という決まりはあります。 と ❸ た と え ば、 英 語 で は、 I LIKE YOU 書 く べ き と こ ろ、 YOU LIKEと I 書いた ら意味が違ってしまいます。 ❹逆に、 ﹁最近はごくおとなしい﹂と書 こうとして、 ﹁ごく最近はおとなしい﹂ と書いてしまうと、 ﹁ご く ↓ お と な し い﹂が﹁ごく ↓ 最近﹂という関係にな ってしまいます。 ﹁ごく﹂のような程度 を示す副詞の場合は、受ける言葉の直 前に置きましょう。 ❺補足。 ﹁とても書きよいペン﹂と﹁消 しゴム付きのペン﹂を合わせ、 ﹁とても 書きよい消しゴム付きのペン﹂と書い ても誤読の心配はないと言えます。普 通は誰も﹁書きよい消しゴム﹂とは思 いませんから。しかし、 ﹁とても大きい ペン﹂と﹁消しゴム付きのペン﹂を一 つにし、 ﹁とても大きい消しゴム付きの ペン﹂と書くと、一瞬、 ﹁とても大きい 消しゴム﹂と読めます。このようなケ ースもありますので、文節と文節の境 目にある言葉同士のなじみにも注意し てください。 21 テンは係り受け距離による しかし、普通は﹁この論文は﹂を先に テンの打ち方は自由とは言え、作文の り受け距離が遠いので、ここでいったん ってしまいます。このようなときは、﹁係 書くでしょう。すると、長い順でなくな 授業で﹁ぼくはクラスで一番になりたい 文を切りますね﹂という意味でテンを入 ❶ で す ﹂ と 書 い て、 ﹁ ぼ く は、 ク ラ ス で 一 れるといいです。 ❷ むきっかけを作った。 この論文は、のちの日本語ブームを生 番になりたいです﹂に直されたりした人 も多いのではないでしょうか。 しかし、論理的なテンの打ち方を教え るのは難しいので、直された文を見て、 こうとの声が出た﹂でひとまとまりのよ ❶たとえば、文節の切れ目にすべてテ ︻脚注︼ ︽重文の境目︾ ❷テンを打ちなさいと言われる例。 ても誤りではありません。 夢中で、 原稿を、書いていた﹂と書い ン︵読点︶を入れ、 ﹁僕は、さっきまで、 うに見えます。 し か し、 係 り 受 け は、﹁ 生 徒 の 間 か ら ↓ 出た﹂です。係り受け距離が遠いので、 テンが必要でしょう。 ❺ 生徒の間から、サークルを作り、定期 昼に原稿を書き、夜中に投函した。 ︽倒置法︾ 本を出したいな、一度くらいは。 ︽感嘆の言葉などのあと︾ 的に学んでいこうとの声が出た。 以下のテンはどうでしょうか。 おお、神よ。 ︽挿入句の前︾ が出た﹂ の三つのまとまりがあるよう を作り﹂ ﹁定期的に学んでいこうとの声 ❺これでは﹁生徒の間から﹂ ﹁サークル に捉えてください。 ❹この﹁長い﹂ とか﹁遠い﹂ は感覚的 多くの公募、特に文学賞では⋮⋮。 ❸機械的ではだめという意味です。 君が、今日まで書き続けてきたことに は大きな意味がある。 ような主格の﹁が﹂ではなく、名詞と名 こ の﹁ が ﹂ は、﹁ 君 が ↓ 笑 っ た ﹂ の ﹁長い順でない﹂ ﹁係る言葉がともに長 ❸ ﹁は﹂のあとには機械的にテンを打つも のと思い込んでしまっている人も多いよ 詞をくっつける﹁が﹂です。 ❹ い﹂などの理由で係り受け距離が遠くな ってしまう。そのようなときにテンを打 に見えてしまうと思うなら、 ﹁生徒の間 から、サークルを作って定期的に学ん たこと﹂という名詞を﹁が﹂でくっつけ つまり、 ﹁君﹂ ﹁今日まで書き続けてき うです。 では、どうしたら? つ、ということです。 た も の。﹁ 君 が 今 日 ま で 書 き 続 け て き た でいこうとの声が出た﹂ としてもいい て遊ぶ僕を抱いた﹂なら﹁泥だらけな けなのは父﹂ 、 ﹁父は、 泥だらけになっ って、遊ぶ僕を抱いた﹂なら﹁泥だら か分かりませんが、 ﹁父は泥だらけにな ぶ僕を抱いた﹂は、どっちが泥だらけ ❻たとえば、 ﹁父は泥だらけになって遊 でしょう。 こと﹂でひとまとまりです。 し ま う と、 ﹁ 君 が ﹂ が 浮 い て、 何 か 遠 く まとまりのあるものをテンで分断して 少 な い な が ら、 ﹁このテンはいかがな 自由なテンですが、なかにはテンの有無 ほとんどのテンは、あってもなくても に係るかのように思われてしまいます。 に あ る 述 語︵ 例 文 な ら﹁ 意 味 が あ る ﹂︶ 生徒の間からサークルを作り、定期的 ものでしょう?﹂という例もあります。 テンの有無が問題となる場合 いい目安があります。 前章で、﹁ ︵係る言葉が複数ある場合は︶ 長い順に並べる﹂と書きましたが、なん らかの理由があって長い順にできないと き、係る言葉の間にテンを打つ、という ものです。 のちの日本語ブームを生むきっかけを に学んでいこうとの声が出た。 分からなくなったりする場合 もありま どっちが泥だらけか分からない状態に のは僕﹂です。そして、 ﹁父は、泥だら このテンは重文の境目にあるような印 す。適当に打たず、適切な位置に打ちま 戻ってしまいます。 この論文は作った。 ❻ ﹁のちの日本語ブームを生むきっかけ 象 が あ り ま す。 つ ま り、 ﹁生徒の間から しょう。 で意味が取りにくくなったり、意味自体、 を﹂も﹁この論文は﹂も﹁作った﹂に係 サークルを作り﹂と﹁定期的に学んでい けになって、遊ぶ僕を抱いた﹂にすると、 っており、長い順に並んでいます。 22 活用語尾から送るのが原則 ﹁話し手﹂ ﹁隣り合う﹂のようになります。 複合語の場合は、送り仮名がつく場合 ら、ふりがなを付けましょう。 ❶ 活 用 と は、 動 詞、 形 容 詞、 形 容 動 詞 ︻脚注︼ た と え ば、 ﹁もうしこむ﹂なら複合語 ︵エ︶漢字の意味が薄いもの ﹁変わる・変える﹂も同様。﹁ 動 か す ﹂ る﹂とされました。﹁分かる・分ける﹂ 送 り 仮 名 の 付 け 方 ﹂ で ﹁ 終 わ る・ 終 え 起きます。それゆえ、 内閣告示﹁改正 える﹂だか分からないという不都合が ですが、これだと﹁おわる﹂だか﹁お わ る ﹂ は 活 用 語 尾 か ら 送 れ ば﹁ 終 る ﹂ ❸原則ですから、例外もあります。﹁お 未然 かた・らない 連用 かた・ります 終止 かた・る 連体 かた・るとき 仮定 かた・れば 命令 かた・れ 共通する﹁かた﹂の部分が漢字の読 みになります。 尾が変化します。 ❷たとえば、 ﹁語る﹂は以下のように語 の語尾が変化すること。 ︵イ︶接続詞・副詞 ﹁ ま た ﹂﹁ し か し ﹂﹁ た だ し ﹂﹁ お よ び ﹂ な ど 接 続 詞、 ﹁まず﹂ ﹁そのうち﹂ ﹁よう やく﹂﹁しばらく﹂﹁おおむね﹂など副詞 も大半が仮名書きです。 ︵ウ︶形式名詞 ﹁○○したとき﹂﹁したところ﹂ ﹁したた います。たとえば、 ﹁やま﹂ ﹁かく﹂など になる前の送り仮名に準じ、﹁申し込む﹂ ﹁ 作 家 と い う 夢 ﹂、﹁ そ ん な ふ う に ﹂﹁ そ とつかない場合があります。 で す。 そ こ に﹁ 山 ﹂ ﹁書﹂など漢字が中 となりますが、下に特定の言葉がつく場 のくらいは﹂﹁大人になる﹂﹁書くことが もともと日本にあった言葉を和語と言 国から入ってきて、 読みは﹁サン﹂ ﹁ショ﹂ 合 は、 ﹁ 申 込 書 ﹂ の よ う に な り ま す。 片 め﹂﹁したこと﹂など。 だと言う。それなら﹁山﹂と書いて﹁や ない﹂﹁そのうちに﹂など。 ﹁見ていただく﹂など﹁て﹂のあとの動 方 だ け 送 っ て﹁ 申 込 む ﹂ と か﹁ 申 し 込 ﹂ 求 人 の 紙 面 で は、 よ く﹁ 問 い 合 わ せ ﹂ 詞のようなものは、動詞ではなく補助動 ま ﹂、﹁ 書 ﹂ と 書 い て﹁ か く ﹂ と 読 ま せ が﹁問合せ﹂になっていたりします。そ ︵オ︶補助動詞 名詞 の 場 合 は、 ﹁ 山 ﹂ で﹁ や ま ﹂ と ﹁見て、頂く﹂ではなく、 ﹁見 れ で も 誤 り と は 言 え ま せ ん が、﹁ こ の 人、 詞。つまり、 とはしません。 読 む 、これで済みます。しかし、 ﹁書く﹂ て い た だ く ﹂ で 一 語 で す か ら、 ﹁見て頂 よう、というのが漢字の訓読みです。 の場合はそうはいきません。 送り仮名も知らないの?﹂と思われても く﹂とはしません。 ﹁ 生 まれる﹂﹁捕らえる﹂も送 り す ぎ で ❺ ﹁ 書 ﹂ 一 字 で﹁ か く ﹂ と 読 む と し ま し 損ですか ら、迷ったら確認しましょう。 ︵カ︶接尾辞 す が 、﹁ 動 く ﹂﹁ 生 む ﹂﹁ 捕 る ﹂ との整 る為に努力したい。そんな風に思って居 る。漸く先が見えて来たと思う今日この 頃で有る﹂ このようなほとんど意味のない漢字表 記はしないほうがいいでしょう。 にするかが分かってくると思います。 でいれば、どのようなときに仮名書き れます。ですので、報道の文章を読ん ❻新聞記事は常用漢字に準拠して書か 思えてしまいます。 断作用により﹁見て、 頂く﹂のように すが、 ﹁見て頂く﹂にすると、漢字の分 ❺﹁見ていただく﹂だと一語に見えま は、市 販 の 用 字 用 語 辞 典 も 便 利 。 ❹文化庁のHP で確認できます。また 合性からこのように表記されます。 ﹁僕たち﹂﹁彼ら﹂など。 用の制限ではありませんが、 ❻ もちろん、これらは目安であって、使 かですが、では、仮名書きが望ましいも 次に、漢字で書くか、ひらがなで書く ❹ ょ う。 す る と﹁ か け ﹂ は ど う 書 き 表 せ 仮名書きにするもの ❷ ばいい? ﹁書け﹂と書いたら﹁かくけ﹂ と読まれてしまいそうです。 ❶ そこで動詞の活用を調べて、共通する ❸ 読みを漢字に当てることになりました。 これが送り仮名の原則です。 ﹁原稿を見て頂き、この様な事に成って 常用漢字にないもの、特に難読漢字は 嬉しい。今後共、作家と言う頂点を極め のを挙げましょう。 名詞は活用しません。だから、送り仮 仮 名 書 き に し ま す。 た だ、 ﹁ち密﹂のよ 送り仮名が変わる場合 名はつきません。 ﹁話﹂ ﹁隣﹂一語で﹁は うな交ぜ書きはせず、別の言い方にする ︵ア︶難読漢字 なし﹂ ﹁となり﹂と読みます。 しかし、動詞の場合は送り仮名がつき、 か、読み手にとって難読と判断されるな 23 ﹁は﹂と﹁が﹂ ❶ ﹁は﹂は副助詞 です。ひとつのものを取 り出し、他と区別します。 ﹁あの選手はイチローです﹂ い ろ い ろ な 選 手 が い る 中 で、 ﹁あの選 手は︵誰かというと︶イチローです﹂と 言ったわけです。 一方、格助詞の﹁が﹂は、ひとつのも のを取り出し、他は無視します。 ﹁あの選手がイチローです﹂ これは、イチローって誰だと話題にな り、それに答えて言ったものです。 ﹁が﹂と﹁を﹂ ❷ ❸ 語の﹁好き﹂は形容動詞なのです。です か ら こ の 場 合 は﹁ が ﹂ を 使 い ま す。 ﹁僕 は君が好き﹂が正解です。 ﹁に﹂と﹁を﹂ ﹁ 水 に 溶 け る ﹂﹁ 水 を 飲 む ﹂ の﹁ に ﹂ と ﹁を﹂は迷いませんが、 ﹁ボールが窓に直撃した﹂ ﹁ボールが窓を直撃した﹂ ︻脚注︼ そ﹂ ﹁だけ﹂ ﹁しか﹂ などがあります。 ❶副助詞は、 ﹁意味を副える助詞﹂ 。 ﹁こ トだ﹂という意味です。 ❺ ちなみに、 ﹁が+述語﹂で終わる文章 を現象文と言い、これは江戸時代に生 とは意味が違います。 ませんが、もちろん、 ﹁日本語を書く﹂ ❷﹁日本語が書く﹂でも誤りではあり 含意のある助詞です。 現代文では圧倒的に﹁に﹂が多いよう に 思 い ま す が、﹁ に ﹂ か﹁ へ ﹂ か に は 地 域差もあるようです。 ﹁で﹂と﹁に﹂と﹁と﹂ そのほかにも、似たような意味の助詞 ﹁庭で穴を掘る﹂ だ﹂ ﹁すてきだ﹂ 。 ﹁だ﹂がつくので形容 を つ け て み れ ば 分 か り ま す。 ﹁きれい ❸形容動詞かどうかは、 あとに﹁だ﹂ まれた表現だそうです。 ﹁庭に穴を掘る﹂ 動詞です。 ﹁書くだ﹂ ﹁美しいだ﹂ 。前者 がいくつかあります。 ﹁ で﹂も﹁に﹂も場所を示す助詞ですが、 変だったら、 ﹁名詞+だ﹂です。 み ま す。 ﹁とても原稿だ﹂ 。 変 で す ね。 うなときは、 頭に﹁とても﹂ をつけて ﹁原稿だ﹂は、どうでしょう。このよ は動詞、後者は形容詞です。 ﹁ で ﹂ は 動 作 を し た、 作 用 が 及 ん だ 場 所。 ﹁ ど こ で? 庭 で ﹂ で す。 一 方、﹁ 庭 に ﹂ は﹁何を? 穴を﹂です。 ﹁親友に会う﹂ ﹁親友と会う﹂ は、どっちか悩みます。 ﹁ 窓 に 直 撃 し た ﹂ は、﹁ 窓 ﹂ に ウ ェ イ ト ﹁ に ﹂ の ほ う は 偶 然 会 い、﹁ と ﹂ の ほ う ﹁へ﹂で、近いところが﹁に﹂だったよ があります。 なお、日本語には形容動詞はないと いう説もあります。 う で す が、 ﹁家へ帰る﹂ ﹁家に帰る﹂と は約束していたのでしょう。 私たちは、親しい人に親愛を込めて文 使っているうちに混同されて意味が近 ❹もともとは遠いところに行くのが 句 を 言 う と き、﹁ ○ ○ さ ん の ば か ﹂ と は くなったとも言われています。 言 い ま す が、﹁ ○ ○ さ ん は ば か ﹂ と は 言 ﹁ 窓 を 直 撃 し た ﹂ は、﹁ 直 撃 し た ﹂ に ウ ェイトがあります。 ﹁ 日 本 語 を 書 く ﹂は﹁ を + 他 動 詞 ﹂で す 。 ﹁へ﹂と﹁に﹂ ﹁ 日 本 語 が 書 く ﹂と は 言 い ま せ ん 。﹁ が ﹂ ﹁ネットへ投げる﹂ して﹁ばか﹂と言った印象がありますが、 ﹁○○さんはばか﹂は客観的な事実と ❺﹁京へ、筑紫に、坂東さ﹂と言います。 ﹁ネットに投げる﹂ ﹁○○さんのばか﹂は敬意や愛情や友情 ❻ いません。 ﹁へ﹂は﹁移動・方向﹂。だから、﹁ネッ を 含 ん で﹁ ば か ﹂ と 言 っ た 感 じ で す。 これもよく迷います。 ト へ 投 げ る ﹂ は、﹁ 投 げ た の は ネ ッ ト の 私たちは文法的な知識はなくとも、ちゃ ❻ 井上ひさし﹃井上ひさしの日本語相 を使うのは、 ﹁鼻が長い﹂のように﹁が +形容詞・形容動詞﹂のときです。 し か し、 ﹁日本語が書ける﹂と言うこ ほうだ﹂という意味になります。 んと﹁の﹂と﹁は﹂を使い分けています。 談﹄に同様の記述があります。 ﹁僕は君を好き﹂ あるかもしれません。 あまり違わないですが、多少の名残は こさ﹂と言ったという意味です。今は へ﹂ 、九州では﹁どこに﹂ 、関東では﹁ど 方向を指し示すとき、京都では﹁どこ とはできますからややこしい。 ﹁ に ﹂ は 物 事 の 帰 着 点 で す。﹁ ネ ッ ト に 文法より、そうした言語感覚が大事です。 ❹ 正解のようですが、これは誤りです。 投 げ る ﹂ は、﹁ 行 き つ い た と こ ろ が ネ ッ 形容動詞のときも紛らわしい。 英語の﹁LIKE﹂は動詞ですが、日本 24 同じ表現を使わない ﹁作文を書いた。枚数が多すぎた。文章 ❶﹁同じ表現を使わない﹂は漢詩の作 ︻脚注︼ らすこと。文末を変えるのはそのあとで ましょう。 最初の﹁私は﹂も削れます。日本語では、 は﹂は省略可能ですし、場合によると に行ったこともある﹂の二つ目の﹁私 ある。一度だけではあるが、私は海外 ❸たとえば、 ﹁私は沖縄に行ったことが てみると、佳作入選だった﹂ ﹁応募すると、通知が来ると、中を開け す。 として、何を指しているかを明確にし にくくなりますから、 ﹁その道は﹂など くなりますが、多用すると意味がとり ﹁それは﹂といった指示代名詞を使いた ❷﹁同じ表現を使うな﹂と言われると、 ない﹂は不可能ですね。 可能ですが、日本語で﹁同じ字を使わ だそうです。漢詩は字数が少ないので 法である﹁同じ字を使わない﹂の応用 を削った。規定枚数に収めた﹂ 文末を変えてみましょう。 ﹁作文を書く。枚数が多すぎた。文章を 削る。規定枚数に収めた﹂ ❼ よくなっていません。文末の単調さと リズムの単調さは話が別です。 ﹁作文を書いたが、枚数が多すぎた。文 同じ助詞を続けない ﹁僕の愛用の黄色の表紙の手帳﹂ 章を削って規定枚数に収めた﹂ まずは悪い見本。 ﹁の﹂ばかりです。 ❹ ﹁文章を書き始めたとき、文章は難しい ﹁読後に瞬時に胸に響いた﹂ こちらは﹁に﹂の三連発。できれば言 ❺ いまわしを変えたいところ。 まずは文を適切な長さにし、文末を減 と自分の文章を読んで思った﹂ 文章という言葉が三回出てきます。く どいというか、言葉選びがぞんざいとい かない文章になります。 同じ意味の接続助詞も、続くと落ち着 ﹁初心者のころ、自分が書いたものを読 ﹁兄が会いたいと言うから、午後になれ うか、練られていないというか。 んで、文章は難しいと思った﹂ と続けられます。これを中止法と言いま 強調または明示するとき以外は﹁私は﹂ ﹁から﹂も﹁ので﹂も理由を伴う接続助 すが、右記の例文は、中止法の文末がす ❽ 文末に﹁○○すると、﹂﹁○○で、 ﹂ ﹁○ ○し、﹂などをもってくれば、文章は延々 詞 で す。 ﹁ ○ ○ か ら ﹂ と 言 わ れ、 そ の 結 べて﹁と﹂です。なんだか問題を延々と い表紙の手帳﹂ ば時間がとれるので、そう答えた﹂ し か し、 ﹁ 同じ表現を使ってはいけな い ﹂ と 考 え る と 苦 し い の で、﹁ 同 じ 表 現 果が出ないうちにまた﹁ので﹂と言われ 先送りされた感じです。 ❺﹁○○に﹂でない表現を探します。 ❶ 重複はいくらでも減らせます。 は、近くではなるべく使わない﹂と理解 て、問いがダブった感じです。 ﹁応募すると、通知が来た。中を開けて 例・﹁読み終えてすぐ胸に響いた﹂ のようにして続けます。中止法のあと ❽﹁書く。 ﹂で終わるところ、 ﹁書き、 ﹂ 唱するのが一番でしょう。 古文、漢文︵の書き下し文︶などを暗 ❼文章のリズム︵律︶を養うには、詩・ なく、文脈もよじれています。 ❻﹁外 は 雨 だ っ た が ﹂ を 受 け る 言 葉 が られます。例・ ﹁僕が愛用している黄色 ❹動詞を入れると﹁の﹂の連続が避け はなくていいです。 してください。 ﹁外は雨だったが、洋服を買うつもりだ みると、佳作入選だった﹂ ❷ ﹁和史はライター志望だ。和史は大学四 ったけれど、予算不足だった﹂ います。﹁で?﹂があります。 どんな文章も、必ず問いを内包させて がはっきりしないまま次の﹁Aだったが﹂ ﹁僕は︵なんなの?︶﹂ ❻ が来て、文が着地しないまま終わってい ﹁三日前に︵なんかあった?︶ ﹂ ﹁通知が来た︵どんな?︶﹂ ❾第一限でやった係り受けも、ひとつ には、だいたいテンがつきます。 着地させる。これは、知っているようで の問いと答えの関係と言えます。 ﹁同じ文末﹂以前の問題 ﹁応募すると︵どうなった?︶ ﹂ ます。 こ れ も 同 じ。﹁ A だ っ た が、B ﹂ のB 年生で、来年卒業だ。和史は今、就職活 動をしている﹂ こちらは同じ主語の﹁和史は﹂で始ま る文章が続いています。 ❸ 同じ主語であれば文を一つにすること もできるでしょうし、主語の省略も可能 です。 ❾ ﹁同じ文末を続けない﹂という作法はよ 知らない基本中の基本です。 こうした問いに、答える。打ち上げて、 今、就職活動をしている。来年卒業の予 く耳にします。 ﹁和史はライター志望の大学四年生で、 定だ﹂ 25 なるべく原文を変えずに書き換えてください。 ︵例︶嵐が予想されたので、遠足は中止になった。 文章力を鍛えるトレーニングの時間です。 こなすことに意義があります。 に行った私を責めた。 以下の細切れの文章を書き換え、 ︵私は︶⋮⋮︵が︶⋮⋮︵に︶⋮⋮︵責められた︶。 ︻解答編︼ Q 1 イギリス人は宗教的な理由から食に贅を凝らす ことをしないので、フランス料理やイタリア料理はある が、イギリス料理というものはない。 Q 2 青木くんは平凡な画学生だったが、斯界の巨匠で ある平野画伯に君ならプロになれるよと褒められた結 果、大成した。 Q 3 私は約束の時間の五分前に待ち合わせ場所に行 ったが、何かにつけのんびりしている南国出身のある人 に、君はなんで時間を守らないのか、なんで五分も前に ﹁古池や蛙飛びこむ水の音﹂ 。この句は蛙合で公表 Q 4 ﹁古池や蛙飛びこむ水の音﹂ 。この句は、深川芭蕉 庵で行われた﹁蛙合﹂で公表された。蛙合とは全員が蛙 来るのかと責められた。 フランス料理やイタリア料理はあるが、イギリス された。蛙合は深川芭蕉庵で行われた。蛙合とは全 の句を詠むイベントで、 当初芭蕉は﹁蛙飛ンだり水の センテンスを少なくしてください。 料理というものがないのは、イギリス人が食に贅を 員が蛙の句を詠むイベントだ。当初芭蕉は﹁蛙飛ン 凝らすことをしないからで、そうしないのは宗教的 とって自然だからだが、その人の記憶を呼び起こす 私はその人を常に先生と呼んでいた。だから此処でも ただ先生と書くだけで本名は打ち明けない。これは世間 ︽ちなみに以下は夏目漱石の原文︾ よそしい頭文字などはとても使う気にならない。 言いたくなる。筆を執っても心持ちは同じことだ。よそ はその人の記憶を呼び起こすごとに、すぐ﹁先生﹂と かる遠慮ではない。私にはそのほうが自然だからだ。私 Q5 私はその人を常に先生と呼んでいた。ここでもた だ先生と書く。本名は打ち明けない。これは世間をはば トーンの世界にした。 素にして実也﹂と言い、敢えて句から色を排除してモノ 句としては﹁山吹や﹂のほうが凝っているが、 芭蕉は﹁質 した。 ﹁山吹や﹂で色、 ﹁水の音﹂で音が感じられるから の上五を提案したが、芭蕉はこれを退け、 ﹁古池や﹂に 音﹂とだけ詠んだ。弟子の宝井其角はこれに﹁山吹や﹂ だり水の音﹂とだけ詠んだ。弟子の宝井其角はこれ 今度は、なるべくセンテンスが多くなるよう 書き換えてください。 もただ先生と書くだけで本名は打ち明けず、これは 私はその人を常に先生と呼んでいたから、ここで て句から色を排除した。モノトーンの世界にした。 ている。芭蕉は﹁質素にして実也﹂と言った。敢え が感じられる。句としては﹁山吹や﹂のほうが凝っ ﹁古池や﹂にした。﹁山吹や﹂で色、﹁水の音﹂で音 な理由からだ。 なるべく原文を変えずに書き換えてください。 平凡な画学生だった青木くんが大成したのは、斯 界の巨匠である平野画伯に君ならプロになれるよと 褒められたことが原因だった。 なるべく原文を変えずに書き換えてください。 ︵青木くんは︶⋮⋮︵結果︶⋮⋮︵大成した︶ 君はなんで時間を守らないのか、なんで五分も前に ごとに、すぐ﹁先生﹂と言いたくなるのは、筆を執 世間をはばかる遠慮というよりも、そのほうが私に 来るのかと、約束の時間の五分前に待ち合わせ場所 何かにつけのんびりしている南国出身のある人は、 Q5 に﹁山吹や﹂の上五を提案した。芭蕉はこれを退け、 遠足が中止になったのは、嵐が予想されたからだ。 Q4 ︵イギリス人は︶⋮⋮︵ので︶⋮⋮︵ない︶ ︵遠足が︶⋮⋮︵のは︶⋮⋮︵からだ︶。 Q1 Q2 Q3 26 っても心持ちは同じことであって、よそよそしい頭 本来、信号の﹁進め﹂は緑である。国際法でもレ からである。私はその人の記憶を呼び起すごとに、すぐ を憚かる遠慮というよりも、その方が私に取って自然だ ない。 ︵夏目漱石﹃こころ﹄ ︶ である。余所々々しい頭文字などはとても使う気になら ﹁先生﹂と云いたくなる。筆を執っても心持は同じ事 ッド、イエロー、グリーンであり、日本に入ってき たときからもともと緑だった。それがどうして青に 野菜や果物のことを青果と言い、緑色の葉菜類を青 なってしまったのか。実は、日本語の青は緑を含む。 以下の六つの文の主題を考え、ひとつの文章 Q 6 日本の動物文学の草分けとして知られる戸川幸 夫氏は、旧制山形高校時代、絶滅したと言われていたニ 菜と言うように、古来、緑は青のひとつだった。だ ︵接続表現を足してもよい︶ から﹁青々とした芝生﹂といった表現をし、同様に として完結するように並べ替えてください。 文字などはとても使う気にならない。 地下鉄白川駅をご利用の方は、一つしかない改札を す。ロータリーの右側にはタクシー乗り場がありま と、北東と北西に道が伸びていますから、北西の道 Q ・だから、青信号は﹁青々とした青﹂になった。 Q7 ・本来、信号の﹁進め﹂は緑である。 ・実は、日本語の青は緑を含む。 若き日にニホンオオカミを求めて歩いた情熱と挫折 があったからこそである。 骨と毛皮を入手し、ついで雌雄各一頭を捕獲した。 西表島では以前からイエネコが野生化したようなネ コがいると言われていたが、戸川氏は苦心の末にその頭 戸川氏五十代のときの偉業である。 あり、当時は二十世紀最大の生物学的発見と言われた。 その後、戸川氏は、一九六七年にイリオモテヤマネコ を発見した。野生ネコの新種発見は七十年ぶりのことで オオカミを発見できなかった。 しかし、目撃情報を聞いて現地に行ってみると、その ほとんどが野犬との見間違いであり、結局、氏はニホン ホンオオカミを探して東北の地を探し歩いた。 現代人の感覚で﹁青﹂と言えばブルーそのものだか 信号が緑色でも言葉としては青と言う。ところが、 ・野生ネコの新種発見は七十年ぶりのことであり、 ら、青信号が緑ではおかしいという理屈になり、か 当時は二十世紀最大の生物学的発見と言われた。戸 くて現在のような﹁青々とした青﹂になった。 以下の説明を読んで、 ﹁駅からK社までの地図﹂を書いてください ︵地図の上方向を北に︶。 氏は、旧制山形高校時代、絶滅したと言われていた 抜けると、すぐ正面にJR白川駅の南口があります 川氏五十代のときの偉業である。 ・目撃情報を聞いて現地に行ってみると、そのほと んどが野犬との見間違いであり、結局、氏はニホン オオカミを発見できなかった。 ・若き日にニホンオオカミを求めて歩いた情熱と挫 折があったからこそである。 ニホンオオカミを探して東北の地を探し歩いた。 ので、地下道を利用してJR白川駅の北口に出てく まず、JR白川駅で降り、北口に出てください。 ・西表島では以前からイエネコが野生化したような ださい。 した。 すが、そちらへは行かず、左に進んでください。突 JR白川駅の北口には駅前にロータリーがありま ・戸川氏は、一九六七年にイリオモテヤマネコを発 き当たりにコンビニがあり、その前を右にぐるっと 以下の文章から、 のビルがK社です。 一本手前の路地を右折し、袋小路の突き当たり左側 を直進してください。やがて国道に出ますが、その ロータリーを回るようにしてロータリー入口に出る 見した。 その頭骨と毛皮を入手し、ついで雌雄各一頭を捕獲 ネコがいると言われていたが、戸川氏は苦心の末に ・日本の動物文学の草分けとして知られる戸川幸夫 Q8 話の柱となっているものを三つ取り出し、 20 それぞれ 字程度で要約してください。 27 8 Q6 Q7