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喫煙による健康影響

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喫煙による健康影響
喫煙 による健康影響
一 と くに 唾 液 中 ロ ダ ン塩 と メ ラ ニ ン色 素 沈 着 か らの 考 察 一
Effects
of
Smoking
Habits
—With Special Reference
on
Human
to Salivary
Health
Thiocyanate
and
Melanin Pigmentation—
山 中 す み へ ・石 川博 美
Sumie
緒
Yamanaka.
Hiromi
Ishikawa
疾 患 に 対 す る影 響 も大 き く、 近 年 と くに増 加
言
して い る心 疾 患 の 大 き な要 因 とな って い る。
近 年 、 喫 煙 に よ る健 康 影 響 の 問題 は 、 世 界
さ ら に、 若 年 女性 と くに妊 婦 に 対 す る喫 煙
的 に大 き な 関心 事 とな っ て お り、1987年 に は
の 影 響 と して 、 早 産 、 周 産 期 死 亡 の 危 険 性 や 、
東 京 で 第6回 喫 煙 と健 康 世 界 会 議 が 開 催 さ れ
先 天 性 奇 形 児 、 低体 重 児 の 出 生 割 合 の 増 加 な
る な ど、 そ れ らが効 を奏 して 、 英 国 や 米 国 な
どが 数 多 い研 究 に よ っ て 明 らか とな っ て い る。
s
ど先 進 諸 国 の 喫 煙 率 が急 速 に低 下 して い る 。
我 が 国 に お い て も、 厚 生 省 が"た ば こ 白書"
(喫煙 と健 康1)、1987年)を
発 表 した り、嫌 煙
i)
こ の よ う に、 喫 煙 は 、 人 の 健 康 に対 して か
な り悪 影響 を及 ぼ す こ とが 明 らか とな って い
権 運 動 の 盛 り上 が り もあ っ て、 男 性 の 喫 煙 率
る もの の 、約400年 も前 か らの 習 慣 で あ る こ と
は 、1966年の83.7%を
か ら、 成 人 に お い て は 個 人 の 嗜 好 の 自由 に委
最 高 に 、1987年 に は61.6
%に まで 漸 減 し た。 一 方 女 性 の場 合 は、 同 じ
く1966年 の18。0%を 最 高 に、 以後15%前
ね られ て い る の が 現 状 で あ る。
後を
しか し、 近 年 喫 煙 率 が 逆 に増 加 して い る若
はな ったが、近
年 女 性 につ い て は、 出産 とい う重 要 な任 務 を
年20代 、30代 の 若 年 女 性 は む し ろ増 加 して い
か か え 、 胎 児 の 健 康 に まで影 響 す る こ と を考
る傾 向 に あ る。 若 年 女 性 の 喫 煙 は 、 本 人 自 身
え る と、個 人 の 自由 で は す ま され ず 、 何 らか
の健 康 の み な らず 、 将 来 の妊 娠 、 さ らに は 胎
の 方策 が 必 要 で あ る と思 わ れ る。
上 下 し、1987年 に は13.4%に
児 に対 す る影 響 か ら考 え て 、 と くに 由 々 し き
問題 とい え る。
また 、 中学 生 や 高校 生 な ど未 成 年 者 の 喫 煙
も、 非 行 な どの 点 か ら社 会 問 題 とな っ て い る
喫 煙 の健 康 に対 す る最 も大 き な影 響 と し て
が 、 健 康 影 響 か ら考 えて も 「未 成 年 の う ち に
は 、 肺 ガ ン を始 め と して 、 口腔 ガ ン、 食 道 ガ
喫 煙 を開 始 した 者 は、 成 人 後 の 喫 煙 者 に比 べ
ン、 膀 胱 ガ ン な ど、 ガ ン の発 生 を高 め る こ と
て ガ ンや 心 臓 病 の 危 険 性 が か な り高 くな る 」
3)と い うこ とか ら、見 の がせ な い 問 題 で あ ろ
で あ り、1986年 のWHO委
員 会 報 告2)で も
「た ば こ煙 は 、 人 に対 して発 ガ ン性 が あ る」と
結 論 して い る。
う。
こ の よ う に喫 煙 に よ る健 康 影響 が と くに 憂
ま た喫 煙 は、 虚 血 性 心 疾 患 な どの循 環 器 系
一29一
慮 さ れ る若 年 女 性 や 未 成 年 者 に対 して は 、 喫
煙 に関 す る徹 底 した 健 康 教 育 や 保 健 指 導 が 必
方
要 で あ る。 しか し若 年 女 性 や 未 成 年 者 は 、 一
般 に 人 前 で の 喫 煙 が 許 され ず 、 陰 で の か くれ
た 喫 煙 で あ り、 ア ン ケ ー トや 面 接 調 査 で は偽
1)唾
法
液 中 ロ ダ ン塩 の 測 定
20歳 代 大 学 生160名(う ち喫 煙 者90名 、 非 喫
りの 申告 が 多 く、 喫 煙 の 実 態 を正 し く把 握 で
煙 者70名)、50歳
きな い とい う問 題 が あ る。 した が っ て、 こ れ
者15名 、 非 喫 煙 者17名)と
以 上 の 正 常 者32名(う ち喫 煙
、喫 煙経験 のあ り
らの 人 に対 す る健 康 教 育 、 保 健 指 導 に際 して
え な い小 学6年 生108名 につ い て、混 合 唾 液 を
は 、 喫 煙 の 実 態 を正 し く把 握 す る ため の指 標
約3ml採
(Index)と
煙の有無 、喫煙量 について質 問紙法や面接 法
な り う る成 分 が 望 まれ る。
そ こで 著 者 ら は、 喫 煙 に よ り唾 液 中 ロ ダ ン
取 す る と と もに 、 本 人 や 家 族 の 喫
に よ り調 べ た。 唾 液 中 ロ ダ ン塩 濃 度 の 測 定 は、
塩 濃 度 が 高 くな る こ とに 着 目 して 、 こ れ らが
混 合 唾 液 を3500rpmで
未 成 年 者 や 若 年 女 性 に対 す る保 健 指 導 の際 の
上 清1mlを
喫 煙 の 指 標 と して 有 効 に 利 用 し う る可 能 性 に
して発 色 させ 、470nmに
つ い て検 討 す る こ とに した 。 す な わ ち、 唾 液
り行 な っ た。
中 ロダ ン(チ オ シア ン)塩 は 、 生 体 内 に取 り
2)ロ
込 まれ た シ ア ン化 合 物 の解 毒 排 泄 物 で あ る が 、
遠 沈 処 理 した後 、そ の
用 い て 塩 酸 酸 性 下 で ロ ダ ン鉄 と
て比 色 す る方 法 に よ
腔 内 メ ラ ニ ン色 素 沈 着 の 観 察
大 学 生160名 につ い て は 、唾 液 採 取 の 際 に開
血 液 中 よ り も唾 液 中濃 度 の 方 が高 く、 シ ア ン
口 させ て 口腔 内 を観 察 し、 下 顎 、 上 顎 の 前 部
化 合 物 の 生 体 内 摂 取 量 の 指 標 と して有 効 とさ
歯 肉 に、 暗 褐 色 の び らん 性 の メ ラ ニ ン 色 素 沈
れ て お り、 喫 煙 に よ っ て シア ン化 合 物 の 取 り
着 が あ るか を調 べ る と と もに 喫 煙 との 関 係 を
込 み 量 が 増 加 す る こ とか ら喫 煙 の指 標 成 分 に
検 討 し た。
もな り うる と思 わ れ る 。
結果及び考察
さ ら に、 今 回 の 調 査 の 際 に、 喫 煙 との 関 係
で 最 近 報 告4・5)さ れ て い る"喫 煙 者 メ ラ ノー
液 中 ロダ ン塩 の 変 動
口腔 内粘 膜 へ の
唾 液 中 ロ ダ ン塩 を喫 煙 との 関 係 か ら検 討 す
つ い て も併 せ て検 討
る に 先 立 っ て 唾 液 中 ロ ダ ン塩 の変 動 要 因 を調
シ ス"(Smokers'melanosis、
メ ラ ニ ン色 素 の 沈 着)に
1)唾
した 。 この メ ラ ニ ン色 素 の 沈 着 は 、 口腔 内 と
べ た 。 大 学 生6名
は い え 、 一 種 の シ ミの よ うな 色 素 沈 着 で あ り、
日内 変 動 をみ た結 果 がFig.1で
につ い て 唾 液 中 ロダ ン塩 の
審 美 陛 を損 な う とい うこ とか ら、 未 成 年 者 や
が か な り大 き い こ とが わ か っ た 。概 して 、 唾
若 年 女 性 に とっ て は 美 容 上 好 ま ざ る現 象 で あ
液 分 泌 量 の少 な い朝 や 夜 間 に唾 液 中 ロ ダ ン塩
っ て、 喫 煙 を思 い止 ま らせ る一 つ の要 因 に な
濃 度 が 高 い こ とか らこ の 変 動 要 因 と して は 、
り うる もの と思 わ れ る。
唾 液 の 分 泌 量 や 、 そ の ほ か 食 物 な どの 因 子 が
あ るが 、変 動
し たが っ て 、 本 論 文 で は、 喫 煙 に よ る 多 く
考 え られ るが 、 喫 煙 者 の 唾 液 中 ロダ ン塩 は 、
の健 康 影 響 の 中 で、 と くに唾 液 中 ロ ダ ン塩 と
非 喫 煙 者 に比 べ て 高 濃 度 で の 変 動 で あ り、 喫
メ ラニ ン色 素 沈 着 に 限 っ て調 査 し、 そ の影 響
煙 に よ る影 響 は 明 ら か で あ っ た 。 特 に喫 煙 者
が と くに憂 慮 され る若 年 女 性 や 未 成 年 者 に対
が1日40本
と 多 い大 量 喫 煙 者(Table.A)で
す る健 康 教 育 や 保 健 指 導 の際 に 有 効 で あ るか
は1日10本
とい う比 較 的低 い喫 煙 者(Table.
を考 察 した の で 報 告 す る。
B)に 比 べ て も高 濃 度 域 で の 変 動 で あ っ た 。唾
液 中 ロ ダ ン塩 の 由 来 と して は、 食 品 中 と くに
豆 類 な ど に含 まれ る シ ア ン配 糖 体 な ど もあ る
が 、 それ 以 上 に た ば こ 煙 中 に含 まれ る シ ア ン
一30一
者90名 及 び 非 喫 煙 者70名 の 唾 液 中 ロ ダ ン塩 の
度 数 分 布 を示 し た もの で あ るが 、 非 喫 煙 者 の
唾 液 中 ロ ダ ン塩 は、3.26±1.43mg/dlで
ある
の に対 して 、 喫 煙 者 の そ れ は8.55±3.59mg/
d1と2.6倍 有 意 に 高 か っ た。(P<0.001)
しか しな が らJarvisら6)が
、非 喫 煙 者 にお
け る唾 液 中 ロ ダ ン塩 を6.9mg/dl、 喫 煙 者 にお
け る そ れ を14.2mg/d1と
報 告 して お り、 ま た
喫 煙 者 と非 喫 煙 者 の ボー ダ ー ラ イ ン をStoo=
keyら7)が11mg/d1に
。Gilliesら8)が10mg/
d1に 設 定 して い る こ と を考 え る と、今 回行 な
っ た 結 果 は低 い値 で あ った 。 そ の理 由 と して
Fig .1 Hourly changes
of salivary
thiocyanate
levels
は、摂取 している食品の種類や量 、 さらには
大 気 中 シ ア ン化 合 物 濃 度 の 差 異 が推 察 され る
の で 、 この 点 に つ い て は 今 後 検 討 した い。
今 回 の 結 果 か ら、 喫 煙 者 と非 喫 煙 者 との唾
液 中 ロ ダ ン 塩 の ボ ー ダ ー ラ イ ン を5∼6
mg/d1に
設 定 す る こ とが で き る の で 、 そ の値
が6mg/dl以
上 な ら ば 喫 煙 を疑 っ て もほ ぼ
ま ちが い な い もの と考 え られ る。 実 際 に も、
今 回の 調 査 の 際 に 、 ア ン ケー ト上 で 非 喫 煙 者
Salivary
thiocyanate
(mg/dl)
で あ っ た 女 子 大 生2名
の 唾 液 中 ロ ダ ン塩 が
各 々6.8及 び8.3mg/dlを
示 した の で 、改 め て
面 接 に よ っ て確 認 し た とこ ろ 、1日5本
以下
で は あ る が 喫 煙 して い る実 態 が 判 明 した。 女
Fig .2 Histgram of salivary thiocyanate
levels in twenty agers
子 学 生 の場 合 に は 、 喫 煙 に 関 す る健康 教 育 が
よ り普 及 して い る環 境 に あ る ため 、 公 の場 で
の 喫 煙 が しが た く、 更 衣 室 や 化 粧 室 で か くれ
化 水 素(別 名 青 酸 、HCN)が
られ る。 シ ア ン(-CN)は
多 い もの と考 え
、 生 体 に対 して 有
て 喫 煙 して い る こ とが 多 い よ うで あ る。
害 な物 質 で あ り、 肝 臓 に お い て無 毒 化 され て
こ の よ う な若 年 女 性 や 未 成 年 者 に み られ る
"偽 喫 煙 者"す な わ ち 陰 で の 喫 煙 者 を見 出 す 手
ロ ダ ン(チ オ シア ン、-SCN)の
段 と して 、 簡 便 に分 析 で き る唾 液 中 ロダ ン塩
形 に な り、 主
に唾 液 を通 じて 排 泄 され る の で あ る。 した が
が 有 効 な指 標 に な りう る こ とが示 され た 。
っ て 、 唾 液 中 ロ ダ ン塩 は 、 摂 取 した 食 品や 大
次 に喫 煙 量 す な わ ち1日 喫 煙 本 数 と唾 液 中
気 中 の シ ア ン化 合 物 の 量 に もあ る程 度 は影 響
ロ ダ ン塩 との 関係 を、 喫 煙 者90名 に つ い て 調
さ れ るが 、 それ 以 上 に 喫 煙 に よ る影響 が 大 き
べ た 。Fig.3に
く、 喫 煙 者 の 値 が 高 くな る と考 え られ る。
0.80(P<0.01)と
2)喫
煙 量 が 増 え る と、 唾 液 中 ロ ダ ン塩 が 高 くな る
煙 と唾 液 中 ロ ダ ン塩 との 関係
次 に 大 学 生160名 につ い て 、喫 煙 との 関係 か
ら唾 液 中 ロダ ン塩 を調 べ た。Fig.2は
、喫 煙
一31一
示 す よ う に、 相 関 係 数r=
有 意 な関 係 が み られ 、 喫
こ とが 明 らか とな っ た 。 この こ とは 、 喫 煙 量
が 増 え る とシ ア ン化 水 素 の 生 体 内へ の 取 り込
が あ り うる の で 、 喫 煙 経 験 の あ りえ な い 小 学
生(108名)に
つ い て 、 同居 家 族 内 で の 喫 煙 者
の有 無 との 関 係 か ら、 唾 液 中 ロダ ン塩 を調 べ
た。Table1に
示 す よ うに 、男 女 差 お よび 家 族
内 に お け る喫 煙 者 の 有 無 に よ る差 は全 くみ ら
れ ず 、 受 動 喫 煙 の 影 響 は認 め られ な か っ た。
また これ とは別 の 、 非 喫 煙 者 の 大 学 生 に つ い
て の 喫 煙 室 に お け る受 動 喫 煙 に よ るモ デ ル 実
験 で も、 唾 液 中 ロ ダ ン塩 は 一 時 的 に 高 くな る
傾 向 が み られ た もの の 、 食 事 な どに よ る 日内
Number
Fig .3 Relation
thiocyanate
Table
of cigarette
変 動 を越 え た有 意 な上 昇 で は な か っ た。 これ
between
salivary
and number of cigarette
らの こ とか ら、 唾 液 中 ロ ダ ン塩 は 、 受 動 喫 煙
に よ っ て それ ほ ど影響 を受 け ず 、 受 動 喫 煙 の
1. Levels of salivary thiocyanate
in
children with relation to passive
smoking
Smoking
habit
in family
指 標 に は な りえ な い こ とが わ か っ た。 受 動 喫
煙 の成 因 で あ る 副 流 煙 に は 、 喫 煙 者 が 直 接 吸
い込 む 主 流 煙 以 上 に、 ター ル や ニ コチ ン、 一
members
Smoking
酸 化 炭 素 な どの 有 害 物 質 が 多 く含 まれ て い る
Female
2.86±1.17 (n=30)
3.05±1.45 (n=20)
2.67±1.14 (n=28)
2.76±1.59 (n=30)
て は 副 流 煙 中 で は 大 きな 因 子 とな ら な い もの
Total
2.99±1.29 (n=50)
2.71±1.18 (n=58)
と推 察 さ れ る。
Non
Male
smoking
こ とが わ か っ て い るが 、 シア ン化 水 素 につ い
受 動 喫 煙 の 指 標 と して は 、 ニ コチ ン の代 謝
(unit;mq/dl)
産 物 で あ る コ チ ニ ン濃 度6)な ど が 適 当 で あ
って 、 唾 液 中 ロ ダ ン塩 は 適 しな い も の とい え
Table
2. Levels of salivary thiocyanate
relation to smking habit
12 years
Non
smoker
Smoker
2.82+1.33
(n=108)
Twenty
agers
る。しか し、Table2に
with
唾 液 中 ロダ ン塩 を ま と
め て示 した よ うに 、 本 人 自身 の 喫 煙 、 す な わ
50 years
ち能 動 喫 煙 の 指 標 として は有 効 で あ る こ とが
3.26 ±1.43
(n=70)
2.80± 2.05
(n=17)
わ か った 。
8.55 ± 3.59
(n=90)
11.39±5.46
(n=15)
現
(unit;mq/dl)
4)喫
煙 に よ る 口腔 内 メ ラ ニ ン色 素 沈 着 の 発
喫 煙 に よ る生 体 影 響 が 数 多 く報 告 され て い
る 中 で 、 最 近 報 告 され て い る影 響 と して"喫
み 量 が 多 くな る こ とを示 す もの で あ り、 た ば
煙 者 メ ラ ノー シ ス"が
こ 煙 中 の 有 害 物 質 の ニ コチ ンや 一 酸 化 炭 素 も
係 の調 査 の 過 程 で 観 察 した 。 口腔 内 の 上 顎 、'
多 く取 り込 まれ る こ とに な り、 そ れ らの 危 険
下 顎 の 前 部 歯 肉 に 、 暗 褐 色 の 色 素 沈 着 を見 出
性 も高 くな る こ とが 当 然 予 想 さ れ うる。
し、Hedin4)が 最 初 に 報 告 した の で あ るが 、著
以 上 は 本 人 自身 の喫 煙 、 す な わ ち能 動 喫 煙
者 ら もFig.4に
あ るの で 、 喫 煙 との 関
そ の1例
を示 す よ う な 口腔
に よ る唾 液 中 ロダ ン塩 へ の 影 響 で あ っ た が次
内 メ ラ ニ ン色 素 沈 着 を数 多 く認 め た 。 メ ラ ニ
に受 動 喫 煙 に よ る影 響 を調 べ た。
ン色 素 沈 着 の 発 現 率 を喫 煙 との 関 係 で ま とめ
3)唾
た の がTable3で
あ るが 、 非 喫 煙 者 に お け る
発 現 率 が13.9%で
あ るの に対 して 、 喫 煙 者 に
液 中 ロダ ン塩 に対 す る受 動 喫 煙 の 影 響
中学 生 以 上 に な る と、 い わ ゆ る"偽 喫 煙 者"
一32一
Table
3. Gingival
salivary
smoking
habit
pigmentation
rate
thiocyanate
gingival
pigmentation (%)
+
no smoking
(n=70)
smoking
(n=90)
響 の 結 果 と推 察 され う る。
and
by smoking
この 喫 煙 者 メ ラ ノー シス は 、 口腔 内 とは い
habit
salivary
thiocyanate
(mg/di)
え開 口 時 に は 見 え る部 位 で あ り、 ま た著 者 ら
の 経 過 観 察 か ら一 旦 着 色 した 後 は、 禁 煙 して
も消 失 しな い と思 わ れ る こ とか ら、 口 腔 の 審
13.9
86.1
3.26
58.0
42.0
8.60
美 性 を そ こな う もの で あ る。 さ ら に こ の 色 素
沈 着 の部 位 が 口腔 内粘 膜 に と ど ま らず 、 皮 膚
上 と くに顔 面 に 出現 す る と、 美 容 上 さ らに 嫌
わ れ る シ ミ とな るで あ ろ う。 今 回 の調 査 の 中
お け る そ れ は58.0%と
有 意 に 高 く、 喫 煙 者 の
半 数 以 上 に メ ラ ニ ン色 素 沈 着 が み られ た。 さ
で も、 「喫 煙 す る よ う に な っ て シ ミが 増 え た 」
と い う女 子 大 生 の 声 を耳 に し たが 、 喫 煙 者 メ
ラ ノー シス との 関 係 か ら、喫 煙 に よ り顔 面 に
も メ ラ ニ ン 色 素 の 沈 着 す なわ ち シ ミが 生 じる
こ と もあ りう る。
した が っ て 、 喫 煙 に よ りガ ンや 心 臓 病 、 胎
児 へ の影 響 な ど重 大 な健 康 影 響 が もた ら され
る こ とが わ か って い る が 、 メ ラニ ン色 素 の 沈
着 とい う美 容 上 の 生 体 影 響 も あ る とい え よ う。
美 容 上 の 関 心 が と くに 強 い 若 年 女 性 や 未 成
年 者 に とっ て は 、 メ ラ ニ ン色 素 沈 着 は 喫 煙 を
Fig .4 Melanin
pigmenthe
in a 23 year
old man
attached
思 い止 ど ま らせ る一 つ の要 因 に な り う る と思
gingiva
わ れ る の で 、健 康 教 育 の 中 で も この 事 を指 導
し て い くこ とは 有 効 で あ ろ う。
らに 、 喫 煙 本 数 が20本 以 上 と喫 煙 量 が 増 え る
以 上 の こ とか ら、 喫 煙 に よ る影 響 が と くに
と と も に、 また 喫 煙 年 数 が 長 くな る と と もに
深 刻 で あ る 未 成 年 者 や 若 年 女 性 に対 して は 、
色 素 沈 着 の範 囲 や 色 調 の程 度 が 著 し くな る傾
ガ ンや 心 臓 病 、 胎 児 へ の 影 響 な ど と と もに 、
向 が観 察 され た 。 これ らの こ とか ら、 口腔 内
メ ラニ ン色 素 沈 着 とい う美 容 上 の 影 響 も含 め
メ ラニ ン色 素 沈 着 の 発 現 に は 、 喫 煙 が大 き く
て 地 道 な健 康 教 育 が 必 要 で あ り、 更 に簡 易 な
関 わ っ て い る こ とは 明 らか で あ っ た。 メ ラニ
唾 液 中 ロ ダ ン塩 を用 い た徹 底 的 な保 健 指 導 に
ン 色 素 の 沈 着 機 構 は、 複 雑 で あ り、 チ ロ シ ン
よ り、 近 年 増 加 して い る若 年 女 性 や 未 成 年 者
や 副 腎 ホ ル モ ン、 脳 下 垂体 ホ ル モ ン な どが 関
の 喫 煙 を減 少 させ うる と思 わ れ る。
与 して い る こ とが わ か って い る が 、 喫 煙 との
関 係 で は 未 だ 明 らか とは な っ て い な い 。 喫 煙
に よ っ て ビ タ ミンC(ア
結
論
ス コル ビ ン酸)の 消
喫 煙 に よ る肺 ガ ンや 心 臓 病 、 胎 児 へ の影 響
費 が 増 加 して喫 煙 者 の 血 中 ア ス コル ビ ン酸 量
な どの 健 康 影 響 が 明 らか な事 実 と な り、 世 界
は非 喫 煙 者 に 比べ て 有 意 に低 い とい う報 告9)
的 に喫 煙 率 が低 下 して い るな か で 、 わ が 国 で
や 、 チ ロ シ ン代 謝 に ビ タ ミンCが 必 要 で あ る
は 若 年 女 性 の 喫 煙 率 が 逆 に増 加 傾 向 に あ る こ
とい う事 な ど を考 え合 せ る と、 口腔 内 メ ラニ
とや 未 成 年 者 の 喫 煙 が 問 題 とな って い る。
ン色 素 沈 着 は 、 喫 煙 に よ る ビ タ ミンCの 不 足
傾 向 、 さ らに それ に よ る チ ロ シ ン代 謝 へ の 影
一33一
そ こ で、 また 一 層 の 喫 煙 に 関 す る健 康 教 育 、
保 健 指 導 の徹 底 が望 まれ るが 、 そ の 一 助 とな
るべ く唾 液 中 ロ ダ ン塩 と メ ラニ ン色 素 沈 着 に
つ い て検 討 し、 次 の結 論 を得 た。
1)唾
4)Hedin,C.A.:Smokers'melanosis,
Occurenceandlocalizationintheattached
液 中 ロ ダ ン塩 は 、 食 物 か らの シア ン化
合 物 の 摂 取 に よ っ て も変 動 す る が 、 喫 煙 が 大
gingiva,Arch.Dermato1.,113,1533∼1538、
(1977)
きな要 因 で あ り、 喫 煙 者 の唾 液 中 ロダ ン塩 は
5)荒
記 俊 一 、 村 田勝敬 、 牛 尾 耕 一 、 酒 井 亮
非 喫 煙 者 に比 べ て有 意 に高 く、 また 喫 煙 量 に
二:喫
煙 者 メ ラ ノー シス の 量 一 反 応 関 係 の 解
応 じて 高 くな る こ とが わ か っ た 。
析 、 医 学 の あ ゆ み 、128,809∼810、(1984)
2)唾
液 中 ロダ ン塩 は 、受 動 喫 煙 に よ っ て 影
響 され る こ とが な い こ とか ら、 本 人 自身 の 喫
煙 の 指 標 と して 有 効 で あ り、 偽 喫 煙 者 を見 出
して 、 保 健 指 導 す る 際 の 糸 口 に利 用 し う る こ
とが わ か っ た。
3)喫
煙 者 の 過 半 数 にく 口腔 内 メ ラニ ン色 素
沈 着 が 見 出 され 、 喫 煙 に よ りメ ラニ ン色 素 沈
着 と い う美 容 上 の 影 響 が あ る こ とが わ か っ た。
以 上 の よ うな 結 果 よ り、 健 康 教 育 ・保 健 指 導
を徹 底 して 、 喫 煙 の 影 響 が と くに深 刻 な若 年
女 性 や 未 成 年 者 の 喫 煙 を早 急 に減 少 させ る こ
とが 望 まれ る。
文
1)厚
生 省 編:喫
献
煙 と健 康 、 喫 煙 と健 康 問 題
に 関 す る 報 告 書 、 保 健 同 人 社 、(1987)
2)WorldHealthOrganizationIARC
Monographson
_theEvaluationoftheCar-
cinogenicriskofchemicalstoHumans,
Tobaccosmoking,38,314
3)平
山
雄:思
_(1986)
春 期 の 健 康 増 進 をめ ぐる 諸
問 題 、 喫 煙 の 問 題 、小 児 科 診 療 、49,97(1986)
一34一
6) Jarvis, M., Tunstall-Pedoe, H., Feyerabend, C., Vesey, C. and Salloojee, Y.:
Biochemical markers of smoke absorption
and self reported exposure to passive smoking, J. Epidemiol. Community Health, 38,
335-339, (1984)
7) Stookey, G. K., Katz, B.P., Olson, B. L.,
Drook, C. A. and Cohen, S. J. Evaluation of
biochemical validation measures in determination of smoking status., J.D. Res., 66,
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