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パーソナリティとパフォーマンスについての考察
2005 年度 修了 パーソナリティとパフォーマンスについての考察 立命館大学応用人間科学研究科 臨床心理学領域 本研究は、人間を形成する要因であるところの遺伝子と環境、そのバランスを調整する 目 的 で 人 間 の 遺 伝 子 的 つ ま り 生 得 的 な 資 質 に 着 目 し 、 行 動 主 義 の SR 理 論 の S( 刺 激 ) と R ( 反 応 ) の 間 に 仲 介 変 数 O( 認 知 ・ 動 機 付 け な ど 内 的 な 活 動 ) を 想 定 し 、 さ ら に 動 機 付 け や反応の違いの背景にパーソナリティの違い(特に先天的な気質)があるものとし、それ らの仮説を検証し、考察を述べるものである。具体的には、リスクテーキングな状況下で の行動選択、つまりメリットもデメリットもある課題(A 群)とメリットもデメリットも な い 課 題 ( B 群 ) の ど ち ら を 選 ぶ の か と い う こ と と 、 そ の 実 験 の 結 果 と 、 性 格 検 査 ( TCI、 NEOFFI) の 結 果 を 組 み 合 わ せ る も の で あ る 。 実 験 の 結 果 と し て 、 ま ず 、 A 群 B 群 が ほ ぼ 半 数ずつにわかれることと、最終的に得点のあがらない個人がいないこと、つまり、人間は 最初から最高の成績をあげるのではなく、なんらかの動機付けを得て成長していくという 特性を持っているということがわかった。また、B 群は、ノルマを達成できる能力を有し ているにもかかわらず、性格的な特性のためにリスクを回避するような選択肢を選んでい る と 考 え ら れ た 。実 験 と NEO・ TCI の 2 つ の テ ス ト の 結 果 か ら は 、A 群 を 選 択 す る 個 人 は 協 調性が低い場合が多く、また、情緒安定性が高い(情緒不安定という意味)もしくは損害 回 避 が 高 い 場 合 が 多 い と い う こ と が わ か っ た 。 NEO の 高 情 緒 安 定 性 と TCI の 高 損 害 回 避 は 同 時 に 示 さ れ る こ と が 多 く( 高 N の 80% が 高 HA を 示 し て い る )、こ の 2 つ の 項 目 の 関 連 性 を示唆された。このことは、自律神経の不安定さとセロトニンの欠乏が関係することから も裏付けられる可能性がある。こういった特徴を持つ個人は、情緒が不安定であるために 現状に不満を抱きやすく、満足を求めるゆえにより多くを得られるような選択をするので はないかと思われる。また、こういった特徴をもつ個人には男性が多く見られる傾向にあ った。これは、男性が自立を推奨されるという日本の風潮の中で育っているからとも考え られるが、男性性と自律神経系には何か関連があるという可能性も考えられる(女性ホル モンであるエストロゲンとセロトニンには関連があると言われており、女性は男性と比べ て一般にセロトニンの分泌量が多くなるため、翻ってこういった結果になったとも考えら れ る )。 し か し 、 情 緒 安 定 性 が 高 い か ら と い っ て 必 ず し も 協 調 性 が 低 い と は 限 ら ず 、 ま た 、 情緒安定性が低いからといって必ずしも協調性が高いとも限らないなどパーソナリティは 複雑であるので、人間の全貌について理解を深めるためにはさらなる研究が必要であると いえる。 立命館大学 大学院