...

配布資料

by user

on
Category: Documents
7

views

Report

Comments

Transcript

配布資料
「モビリティ マネジメント」(MM)
「モビリティ・マネジメント」(MM)
について
京都大学
藤井 聡
モビリティ マネジメントの考え方
モビリティ・マネジメントの考え方
モビリティ・マネジメントの定義
(定義)
ひとり一人のモビリティ(移動)や
個々の組織・地域のモビリティ(移動状況)が,
社会 も個人 も望ま
社会にも個人にも望ましい方向に自発的に変化することを促す,
方向 自発的 変化する
を促す,
コミュニケーションを中心とした多様な交通施策を活用した
持続的な一連の取り組み.
(具体的施策)
・コミュニケーション施策
・交通システムの改善
・マネジメント組織の形成と活性化
(電子百科辞典Wikipediaより)
「過度なクルマ依存社会」について~
-
渋滞
(←道路行政的論点)
地球 暖化問題 (←ワイルドカード的論点)
地球温暖化問題
中心市街地衰退/都市郊外化 (←都市計画的論点)
公共交通モビリティの衰退 (←運輸行政的論点)
健康/ダイエット
康/
(←国民の一般関心事項)
事故 (←警察行政的論点/国民の一般関心事項)
出費 (←国民の
(←国民の一般関心事項)
般関心事項)
社会的豊かさ
(社会的厚生水準)
※ 時間があり,かつ,少々抽
時間があり かつ 少々抽
象的議論が可能な場合に効果的.
そうでなければ,スキップ可能.
現実の
様々な都市における
自動車利用水準
自動車の
無い社会
自動車を
適度に利用する社会
社会的な
社会的
自動車依存傾向
自動車だけに
依存する社会
これがMMの目標
~交通政策上の基本的考え方について~

MMの3つの基本的な考え方がある.
①交通問題を社会問題として捉える。
①交通問題を社会問題として捉える
(つまり,防犯や福祉などと同様に交通問題を捉える.
だから,「人々の意識」や「コミュニケーション」を重視.
識」
」
これが,交通問題をシステムの問題として捉えるTDMとの違い)
②かしこいクルマの使い方を考える.
(クルマを “わる者扱い”しない
わる者扱い”しない.そして,
そして
「よい社会を目指すため」の一アプローチとして,MMを位置づける)
③持続的に,展開する.
(目的に向かって,「マネジメントを持続的に続けていく」のがMM)
コミュニケーションの有効性について~
・職場MM1:
職場
宇治のワンショットTFPで,クルマ通勤者の2割が他手段も利用
宇治
ッ
,ク
通勤者
割 他手段 利用
するようになったそうです.それで,鉄道事業者は年間2千万以上売り上げが伸び
たそうです.
・職場MM2:福山都市圏の職場MMで,マスコミ等も使いながら,いわゆるエ
福山都市圏の職場MMで マスコミ等も使いながら いわゆるエ
コ通勤を地道に何年もかけて呼びかけたところ,参加者が1万人以上になって,実
際に,渋滞が緩和したそうです.
・居住者MM1:オーストラリアのパースのTFPで,市民全員に訪問コミュニ
ケーションを行ったところ,地域全体の自動車分担率が8%も低下したそうです.
・居住者MM2:
居住者MM2 京都市で,地元の主婦がよく呼んでいる「京都リビング」とい
京都市
地
主婦がよく呼ん
る「京都 ビ グ と
う紙面を使って「かしこいクルマの使い方」を呼びかけたところ,1割くらいの人がク
ルマ利用を削減させて,地域全体の社会的便益が7億ほどとなったらしいです.
「クルマを控えると,ものすごくCO2削減に効果的であるが,一般の
人 は う
人々はこういったことを知らない.ついては,こうしたグラフを分かり
た とを知らな
は う たグ
を分かり
易く提示したりして,かしこいクルマの使い方を呼びかける.」
「こんな情報も,効果的である.
これは,クルマを使えば,消費するカロリーが半減して,健康にも
ダイエットにも,クルマを控えた方がいい,ということを示すグラフ.」
「また,いろいろと“動機付け”をする一方で,次のような情報を,
できるだけ個別的に,丁寧に作り込んで,提供するのが,
効果的なMMのコツ.」
市役所用の地図
任天堂用の地図
(マップの裏面)
職場に公共交通でアクセスする
ための時刻表や地図などの詳細
情報を掲載(市役所の場合)
モビリティ・マネジメントを
モビリティ
マネジメントを
都市交通政策の大局の中で
どう位置づけていくとよいのか?
望ましい都市地域 交通の実現に向けて
望ましい都市地域・交通の実現に向けて
連携
交通システム施策
まちづくり施策
連携
交通システム整備と
交通行動変容のための
コミュニケーション施策
連携
コミュニケーション施策
コミュニケ
ション施策
(狭義の)MM
土地利用規制・開発と
目的地行動変容のための
コミュニケ ション施策
コミュニケーション施策
※ こうした大局的マネジメントが不可欠.
これを「広義のMM」,あるいは
「戦略的MM」と言っても差し支えない
しかし,今まで,コミュニケーション施策は,十
分に実施されてこなかった.
だから,これからは,コミュニケーションを中心
だから
これからは コミ ニケ シ ンを中心
としたMMを,実務の中でしっかりと位置づけ
ていくことは 極めて重要である
ていくことは,極めて重要である
MMの必要性の合理的説明:
の必要性の合理的説明
費用便益分析
◆費用便益分析の事例:
- リビング京都紙面を活用したMM施策
リ ング京都紙面を活用した
施策
(費用=3350万円 便益=7億9500万円/年 一年あたりのB/C=23.5)
◆費用便益の項目
- 交通事故損失減少便益
- クルマ走行費用減少便益
- CO2削減便益
~以上三点は,自動車総走行台キロの変化から算定
- 健康増進便益
~歩行時間の変化から算定
- 旅行時間短縮(=渋滞損失減少)便益
~自動車トリップ数の変化を加味した配分計算より算定 (京都の事例では未実施)
◆その他
- CO2削減量
-公共交通事業収益の増収
MMについての基礎知識
MMの分類

居住者MM

学校教育MM

職場MM
MMの施策の分類
①MM実施主体の組織化
- 「組織」の中でMM担当者/部局の設置
- 「地域」の中で,「○○地域MM協議会」等を設置
②コミュニケーション施策
- トラベル・フィードバック・プログラム(TFP)
(ワンショットTFP/標準TFP/フルセットTFP)
- マスコミを通じた説得的コミュニケーション:リビング京都の事例
を
説得的
ビ グ京都 事例
-MM講習会/ワークショップ等の開催
③交通システムの改善
~自発的な行動変容をサポートする施策~
- 企業バスの導入
- 既存バスシステムの改善
- P&Rやロードプライシング
等
トラベル・フィードバック・プログラム
トラベル
フィ ドバック プログラム
(TFP)


対象者に,自らの交通行動を振り返ってもらって,
「かしこいクルマの使い方」を考えてもらうための コ
「かしこいクルマの使い方」を考えてもらうための,コ
ミュニケーションプログラム.
ワンショットTFP
- 最もシンプルなもので,職場で多用されている.
- 以下の2~3点を配布し,アンケートを回収
① 動機付けのための冊子
② アンケート票(=行動プラン票)←かしこいクルマの使い方を
考えてもらうきっかけ作りのための仕掛け.
(③ 代替手段の詳細情報 -時刻表や地図など-)
時刻表や地図など )

標準TFP
- 最初の接触(例:ワンショットTFP)に加えて,
アンケート票で得られた回答に基づいて,
答
づ
より詳細な情報・メッセージを提供する.
コミュニケーション・アンケート

TFPの参加者を募る際に,「TFPに参加してください」
といっても ほとんど誰も参加しない
といっても,ほとんど誰も参加しない.
※人々は,「よく分からないもの」「未知なるもの」には
参加しない.

それ故,(TFPとは言わずに…)「アンケートに協力して
ください」とお願いすることが 般的.
ください」とお願いすることが一般的
※そのアンケートに各種情報を「挟み込む」のが一般的
→詳しくは,「ツール等の作成方法①」で説明

このような「意識と行動変容のため」のアンケートを,
一般に「コミュニケーションアンケート」と言う
般に ミ
ケ ションアンケ ト」と言う
行動プラン法



(日本の)TFPにおける重要なコミュニケーション技術
情報を提供すると共に,「どの様に行動を変えるか」を
考えてもらい これをアンケ ト(=コミュニケーション・アンケート)
考えてもらい,これをアンケート
に記述してもらう.これによって,行動の変容を促す.
どの様な行動プランを考えてもらうかは,提供する状
況や各種状況を勘案の上 臨機応変に検討する必要
況や各種状況を勘案の上,臨機応変に検討する必要
あり.
「かしこいクルマの使い方を考える
プロジェクト」


MMの展開を図る場合,「MM」や「TFP」という言葉
は 一般の人には理解できない
は,
般の人には理解できない.それ故,それらの
それ故 それらの
用語は,基本的には表だってあまり使用しない.
その代わり 以下のような説明をする
その代わり,以下のような説明をする.
「現在,○○市では,地球温暖化や渋滞対策のために,
かしこいクルマの使い方を考えるプロジェクト ○○
○○”
“かしこいクルマの使い方を考えるプロジェクト
を始めました.このプロジェクトは,皆様ひとり1人に、
“普段の交通の仕方”を振り返っていただき、
より豊かな社会とより豊かな個人生活をお考えいただく、
考
きっかけをつくるプロジェクトです。 」

ロゴを決めておいた方が得策.
職場MMにおける
個人的プログラムと組織的プログラム


職場MMには,「個人的プログラム」と「組織的プログラム」の二種
類がある.
個人的プログラム
対象:企業内の従業員 (の個人的行動変容:personal behavior modification)
概要:宇治や朝霞でのワンショットTFPの様に,MM施策
実施者が,従業員に直接,「かしこいクルマのつ
かい方」を呼びかける.

組織的プログラム
対象:企業そのもの
対象
企業そのもの
(の組織的行動変容:organizational
(の組織的行動変容
g
behavior modification))
事例:酒匂川流域の取り組み,国交省の「エコ通勤」の様に,従業員
ではなく企業そのものに接触し,通勤制度,通勤補助の改変
や通勤バスの導入等を促すもの なお その中のシンプルな
や通勤バスの導入等を促すもの.なお,その中のシンプルな
取り組みの一つとして,ワンショットTFPの様な個人的プログラ
ムが位置づけられる場合もある.
まとめ


「MM」の実務を進めるには
関係者 意識 共有が何 りも重
関係者の意識の共有が何よりも重要.
そうした共有認識を形成するためにも,状況・相手に応
じた臨機応変なMMの説明が不可欠
臨機応変な
説 が
欠
(詳細は,本プレゼンの前半部を参照)

一方,当該プロジェクト・地域のMM推進の中心人物
方 当該プロジ クト 地域のMM推進の中心人物
は,MM技術の基礎知識を,十分に理解しておく必要
がある
(最も基礎的なことは,本プレゼン後半を参照,より詳細な部分
は,これからの各種研修の中で講習)
参考情報
・入門書
『モビリティ・マネジメント入門』(藤井・谷口著
学芸出版社)
・態度・行動変容に関する実務的研究
『モビリティ・マネジメントの手引き』(土木学会 編)
・ 国土交通行政のための心理学
『社会的ジレンマの処方箋:
都市・交通・環境問題の心理学』(藤井著
ナカニシヤ出版)
・日本モビリティ・マネジメント会議HP(各種の事例情報)
http://www.plan.cv.titech.ac.jp/fujiilab/jcomm/
一点,注意!
(某県のP&Rチラシ)
・パーク&ライドって何?
・字/情報量が多すぎる?
・(そのクセに)なぜ,漫画? (これは,媚び?)
しかし,相手は「子供」ではなく大人では?
・...で,結局,メッセージはなに?
(参考事例)
「富山レールライフプロジェクト」
の取り組み
京都大学 藤井 聡
プロジェクトでの今年の取り組み
① 高原兄の「かしこいクルマの使い方、考えんまいけ!」
9月~12月まで、合計17回(ラジオ)
・KNBラジオにて、毎週月曜日の午後6時15分から5分間
→ 約7%※の放送エリアの方々(約7万人)が、聴取した!
(※:サンプリング調査より)
② 上滝線、笹津線の沿線の皆様への、
ダイレクトメール・アンケート(11月)
・以下のものを配布
・「時刻表」「かしこいクルマの使い方」を考えるためのパンフレット」
その上で、「もっと電車・バスを使うためにはどうしたらいいか?」を、自由記入
→ 9300戸の皆様に配布/50%の方からご返信!
③ HPの解説
(HP)
ラジオを聞いた方は。。。。
公共交通を使って外出する割合(クルマと公共交通)
約1.5倍!
ラジオを聴取してもらうことで、
公共交通で出かける割合が、約1.5倍に!
アンケートに答えた方は。。。。
公共交通を使って外出する割合(クルマと公共交通)
約1.5倍!
アンケートに答えてもらうだけで、
公共交通で出かける割合が、約1.5倍に!
アンケートとラジオの双方に
接触した方は。。。。
公共交通を使って外出する割合(クルマと公共交通)
約1.73倍!
アンケートとラジオの双方の接触すると、
公共交通で出かける割合が、約1.73倍に!
もう一つ、
重要なプロジェクト効果が見つかった。。。。
「クルマを控えて、公共交通を使った方が、
いろいろといいことあるみたいだよ….」
という口コミ!
‐ アンケートに回答すると「口コミする人」が20%に
‐ ラジオを聞くと「口こみする人」が30%に!
「口コミ」も大きな効果!
公共交通を使って外出する割合(クルマと公共交通)
約1.53倍!
「クルマを控えた方がいいよ….」と口コミされると….
公共交通で出かける割合が、約1.53倍に!
簡単に試算すると….
• ラジオの聴取率が約7%
で
• ラジオを聞いた人が「口コミ」をする割合が30%
だから….
• 富山エリアの約2%=約2万人強が口コミをした!
つまり….
• ラジオによって、約10%(=7%+2%+0.6%+….)の人々が
公共交通で出かける傾向が1.5倍になったと推計。
Fly UP