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実数値遺伝的アルゴリズムを用いた 省エネルギー装置付

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実数値遺伝的アルゴリズムを用いた 省エネルギー装置付
実数値遺伝的アルゴリズムを用いた
省エネルギー装置付舶用プロペラの
性能向上に関する研究
平成26年6月
龍 知 宏
目次
第1章
緒論 ················································1
1.1
研究の背景 ····················································································· 1
1.2
プロペラおよび省エネ装置 ································································ 5
1.2.1
プロペラおよび省エネ装置の開発の歴史 ········································ 5
1.2.2
既存の高効率プロペラおよび省エネ装置 ········································ 5
1.2.3
ターボリング············································································· 8
1.3
研究の目的 ···················································································· 10
1.4
本論文の構成 ················································································· 11
第2章
ターボリング付プロペラの性能計算 ···················12
2.1
緒言 ····························································································· 12
2.2
性能計算法 ···················································································· 13
2.2.1
SQCM による定常プロペラ性能計算法 ·········································· 13
2.2.2
ハブ渦モデル············································································ 18
2.2.3
後流渦面形状の計算 ·································································· 20
2.2.4
ターボリング装備時のプロペラ性能計算法 ···································· 22
2.3
ターボリング付プロペラ性能計算法の検証 ········································· 24
2.3.1
計算対象のプロペラおよびターボリング ······································· 24
2.3.2
計算結果 ·················································································· 26
2.3.3
実験結果 ·················································································· 41
2.4
結言 ····························································································· 48
i
第3章
実数値遺伝的アルゴリズムを用いた翼形状最適化手法 ···49
3.1
緒言 ····························································································· 49
3.2
最適化手法と最適化問題の設定 ························································· 51
3.2.1
実数値遺伝的アルゴリズム ························································· 51
3.2.2
交叉法 ····················································································· 52
3.2.3
世代交代モデル········································································· 54
3.2.4
設計変数と目的関数 ·································································· 54
3.2.5
制約条件 ·················································································· 56
3.2.6
最適化の手順············································································ 57
3.3
ターボリング付単純形状プロペラの改良············································· 59
3.3.1
翼形状最適化の方針 ·································································· 59
3.3.2
翼形状最適化の結果 ·································································· 61
3.3.3
実験結果との比較······································································ 85
3.3.4
性能向上の確認········································································· 90
3.4
結言 ····························································································· 93
第4章
実船プロペラおよびターボリングの改良 ···············94
4.1
緒言 ····························································································· 94
4.2
翼形状最適化 ················································································· 94
4.2.1
翼形状最適化の方針と制約条件 ··················································· 94
4.2.2
実船プロペラおよびターボリングの要目と最適化の結果 ·················· 96
4.2.3
実験結果との比較···································································· 121
4.2.4
性能向上の確認······································································· 126
4.3
結言 ··························································································· 130
第5章
結論 ··············································131
ii
謝辞·······················································134
参考文献···················································135
付録 Holden の方法 ········································139
表図題一覧 ·················································141
iii
記号一覧
c:
コード長
Cmax i :
最大キャンバー
C pn :
圧力係数(プロペラ回転数 n および直径 D により無次元化)
c(r ) :
 
C1 , C 2 :
翼断面 r におけるコード長
D:
プロペラ直径
i:
繰り返し計算回数
J:
プロペラ前進係数
K:
プロペラ翼数
KT :
推力係数
KQ :
トルク係数
k:
プロペラ翼番号
:
後流渦の周方向節点番号(翼後縁→後流)
M:
プロペラ翼表面、およびキャンバー面のスパン方向分割数
m:
プロペラ翼表面における吹出し強さ
N:
プロペラ翼表面のコード方向分割数
Nw :
後流渦の周方向分割数
N :
プロペラキャンバー面のコード方向分割数
n:

n:
プロペラ毎秒回転数
子個体を表す実数ベクトル
翼表面、またはキャンバー面の法線ベクトル
nX , nY , nZ : 空間固定座標系における翼表面、又はキャンバー面の法線
ベクトル各成分
o  xyz :
プロペラ固定座標系
O  XYZ :
空間固定座標系
o  xr :
プロペラ固定の円筒座標系
Pi :
ピッチ
  
P1, P2 , P3 :
親個体を表す実数ベクトル
p:
計算点における圧力
p0 :
基準となる静圧
iv
Q:
トルク
R:
プロペラ半径
r :
プロペラ翼における  番目の分割位置半径
r:
プロペラ半径位置
SB :
プロペラ翼表面
SH :
プロペラハブ表面
ST :
ターボリング表面
T:
推力
t :
1タイムステップあたりの時間刻み幅
VA :

V:
プロペラ前進速度

VI :

Vm :

V :

V S :
合速度ベクトル
流入速度ベクトル
吹出しによる誘導速度ベクトル
渦による誘導速度ベクトル
後流渦節点でのプロペラ周りの流れを表す特異点分布に
よる誘導速度ベクトル

vkB :

vkF :

vkT :

vk  :

X:
単位強さの束縛渦要素による誘導速度ベクトル
単位強さの自由渦要素による誘導速度ベクトル
単位強さの後流渦要素による誘導速度ベクトル
単位強さの馬蹄渦要素による誘導速度ベクトル
設計変数の実数ベクトル
 k :
キャンバー面の馬蹄渦の渦強さ
 0 () :
ハブ内部の束縛渦分布
 1() :
プロペラ翼根の束縛渦分布
O :
プロペラ効率
:
プロペラ回転角度(基準位置からの角度)
 :
後流渦面の周方向刻み角度
:
半径方向の分割位置番号(翼根→翼端)
:
コード方向の分割位置番号(前縁→後縁)
LP
:

キャンバー面のコード方向のローディングポイント
CP
 :
キャンバー面のコード方向のコントロールポイント
v
L(r ) :
半径方向  断面の前縁
 T (r ) :
半径方向  断面の後縁
:
円周率
:
流体密度
m :
プロペラ、ターボリング、ハブすべてを含むプロペラ表面
上の吹出しによる撹乱速度ポテンシャル
mean :
 :
翼断面ピッチ角の半径方向平均

V S による流体力学的ピッチ角
:
プロペラ回転角速度
vi
第1章
緒論
1.1 研究の背景
近年、船舶の省エネルギー(以下、省エネと称す)化への要求がかつてないほど
高まっている。その理由のひとつとして、燃料の高騰があげられる。燃料価格が高
騰した 1970 年代のオイルショックの頃から、船舶の省エネ化は重要な課題とされ
てきたが、近年の海運不況の影響もあり、運航に関するコストダウンがさらに重視
されるようになった。燃料消費量を抑えることはコストダウンにつながるため、40
~50%ロード程度で航行する減速運転が頻繁に行われている。
船舶の省エネ化への要求が高まっているもうひとつの理由として、CO2 等の温室
効果ガスの増加による地球温暖化のような、地球環境問題への関心が高まっている
ことがあげられる。
地球の平均気温は、この 100 年間でおよそ 0.74℃上昇したといわれている[1]。
この気温上昇の原因は、自然由来の要因と人為的な要因に分けられるが、20 世紀
後半の温暖化に関しては、人類の生活により排出された CO2 やメタンガス等の温
室効果ガスが大きな要因と考えられており、今後も気温の上昇が続くことは確実視
されている。地球の気温が上昇することで、海面の上昇による陸地の水没や異常気
象、種の絶滅等の生態系への影響等、様々な問題が起こる可能性が指摘されている。
地球温暖化の抑制を目的として、温室効果ガスの国際的な排出規制が 1997 年に
定められた。「気候変動に関する国際連合枠組条約京都議定書」いわゆる京都議定
書である。ここでは、国別に温室効果ガスの排出量を規制しているが、国際海運・
国際航空については国別の規制が馴染まないため、国連の専門機関である国際海事
機関(IMO:International Maritime Organization)や国際民間航空機関(ICAO:
International Civil Aviation Organization)により削減目標が定められている。
国際海運からの温室効果ガス、特に CO2 の排出量は 8.7 億トン(2007 年)であ
り、世界の CO2 排出量の 2.7%を占めている。現在、国際物流の 9 割は海運による
ものであり、途上国を中心とした経済発展に伴い、その輸送量は今後ますます増加
することが予想される。もし、CO2 削減のための対策を何も講じなければ、国際海
1
運からの CO2 排出量は 2030 年に 2007 年の 1.7 倍、2050 年には 3.4 倍になると予想
されている[2]。
このような状況のもと、船舶から排出される CO2 を削減するため、2011 年 7 月
に「船舶による汚染の防止のための国際条約」(MARPOL 条約)付属書Ⅵの改正
案が採択され、2013 年以降に建造される船舶に対し、EEDI(Energy Efficiency Design
Index:エネルギー効率設計指標)が義務付けられることが決定された。EEDI は、
1 トンの貨物を 1 マイル運ぶ際の CO2 排出量(g)を意味する。2013 年以降に新造
船の契約が結ばれる船舶には、船種ごとに EEDI 規制値が設定される。EEDI 対象
船は、模型による水槽試験結果および海上公試運転における速力試験結果により、
EEDI 規制値を満足していることを確認し、認証機関(船級協会)から認証を受け
る必要がある。もし、EEDI 規制値を満足できない場合は、その船舶は運航できな
い。また、EEDI 削減率は 2015 年から 2025 年までの間、5 年ごとに 10%ずつ厳し
くなる。2025 年には現在より 30%削減するよう定められており、さらなる船舶の
省エネ化が必要となる。
船舶の省エネ化とは、少ない燃料で効率良く航行することであり、これは船舶の
推進性能を向上させることに他ならない。現在、船舶の推進性能向上のために様々
な技術の開発が進められている[3]。Table 1.1 にその一例を示す。
Table 1.1 Technologies for energy saving
Technical fields
Technologies
・Hull form improvement
Hull
・Reduction of frictional resistance
・Improvement of propulsive performance in waves
Propulsion
Operation
・Improvement of propeller
・Improvement of energy saving device
・Operation support system
・High efficiency engine
Engine
・Dual fuel engine
・Hybrid system
2
Table 1.1 に示した省エネ技術の概要は以下のとおりである。
[Hull:船体系]
船型の改良は、船舶の推進性能を向上させる大きな要因であるが、近年はホール
ドキャパシティや主機据え付けスペースの確保、構造上のルールによる制限や船殻
重量の増加等の問題により船型が肥大化する傾向があり、推進性能を重視した船型
にすることが非常に難しいのが現状である。
船体表面に働く摩擦抵抗は、船体に働く抵抗成分のうち 6 割から 8 割を占めてい
る。この摩擦抵抗を低減するため、低摩擦塗料や空気潤滑システムの開発が行われ、
実用化されている。低摩擦塗料[4]は、船体表面の凹凸を減少させることで、空気潤
滑システム(MALS:Mitsubishi Air Lubrication System)[5]は船底を気泡層で覆うこ
とで、それぞれ船体に働く摩擦抵抗を低減している。
従来、船舶の推進性能は、水槽試験のような平水中での性能で評価されてきたが、
近年では波浪中を航行するような、実海域での性能評価も重視されており、波浪中
の航行に適した船首形状を持つ船舶も多数建造されている[6]。
[Propulsion:推進系]
舶用プロペラ(以下、プロペラと称す)は、船舶の推進性能に大きな影響を及ぼ
すため、船舶の省エネ化のカギを握る重要な要素である。様々な高効率プロペラが
各プロペラメーカーにより開発されているが、その設計法は過去に行われた体系的
な水槽試験データに基づくプロペラ設計チャートによるものが一般的であり、設計
法に関してまだ発展の余地があると考えられる。
省エネ装置は、その形状や取り付けられる位置により効果が異なる。現在、数多
くの省エネ装置が開発・実用化されており、その多くが船体抵抗の低減や自航要素
の改善、プロペラ効率の向上を目的としている。省エネ装置は、簡単な構造で特に
メンテナンスの必要もなく、比較的安価で容易に装備可能なものが多く、その効果
が期待されている。
[Operation:運航系]
船舶自体のハードウェア的省エネ化技術ではないが、気象状況等を考慮した運航
最適化システムや、減速運転も含めた運航計画最適化により、燃料消費の削減すな
3
わち排出される CO2 等の温室効果ガスの削減が図られている。
[Engine:主機系]
高効率エンジンは、各エンジンメーカーによりエコエンジンが開発されている。
これらのエコエンジンは低回転・高出力となる傾向があり、船型との兼ね合いもあ
るが、大直径プロペラの採用による推進性能向上も期待できる。一方で、高出力ゆ
えにプロペラ軸への負担が大きくなる傾向があり、プロペラの設計が難しくなると
いう問題もある。また、LNG を燃料として使用できるデュアルフューエルエンジ
ンや、主機のハイブリッド化等、様々な技術が開発されている。
以上のように、船舶の省エネ化について様々な研究開発が行われ、また実際に使
用され効果をあげているが、前述の EEDI の件もあり、さらなる省エネ効果が求め
られている。
本研究では、プロペラおよび新来島どっくが特許権を所有する、プロペラに装備
する省エネ装置「ターボリング」を、実数値遺伝的アルゴリズムによる翼形状最適
化手法を用いて改良することにより、従来のターボリング付プロペラの性能をさら
に向上させることを目的とする。
4
1.2 プロペラおよび省エネ装置
1.2.1 プロペラおよび省エネ装置の開発の歴史
省エネへの関心の高まりとともに、船舶に装備する省エネ装置の開発が盛んに行
われるようになった。
1980 年代には、プロペラ前方に装備するダクトやリアクションフィンのように
船体抵抗を低減し、自航要素を改善するものや、高効率プロペラや PBCF(Propeller
Boss Cap Fins)のようなプロペラ付加物、バルブやフィン付舵が開発された。
1990 年代に入ると、船体抵抗低減、自航要素改善を目的として、船尾フィンが開
発された。フィン型の省エネ装置は、前述のダクト型と比較すると、コスト面で優
れているといえる。
2000 年代に入ると、ポッドプロペラのような新しいプロペラや、従来の主機お
よびプロペラと、モーター駆動のポッドプロペラを組み合わせたハイブリッド二重
反転プロペラを搭載した船舶が建造される等、新技術を用いた船舶の省エネ化が行
われるようになった。また、省エネ装置の研究開発も続けられている。例えば船尾
フィンは、各造船会社がそれぞれ独自のものを開発し実用化しており、現在では省
エネ装置は造船会社の省エネへの意識の高さと技術力の高さの象徴となっている。
船舶に装備する省エネ装置についての研究動向が佐々木[7]、Carlton[8]、梶谷ら
[9]によりまとめられている。
1.2.2 既存の高効率プロペラおよび省エネ装置
省エネ装置は、取り付け位置やその形状により、得られる効果が異なる。Carlton
は、Fig. 1.1 のように省エネ付加物が取り付けられる領域を 3 領域に分類した[8]。
ZoneⅠは、船体船尾部のプロペラ前方の領域であり、ここに装備される省エネ装
置は、フィン型やダクト型のものが多く、船体抵抗の低減や、船尾流場の改善を目
的としている。
ZoneⅡは、プロペラが設置されている領域であり、プロペラ自体の改良や、プロ
ペラ付加物によるプロペラ回転流の回収、付加推力の獲得を目的としている。
ZoneⅢは、舵を含むプロペラ後方の領域であり、プロペラ回転流による付加推力
の獲得を目的としている。
5
Fig. 1.1
Zones for classification of energy-saving devices[8]
Fig. 1.1 の各領域に装備される省エネ装置の概要を以下に示す。
[ZoneⅠ](プロペラ前方)
・リアクションフィン(三菱重工業)[10]
リアクションフィンは、プロペラ前方に放射状に配置された複数のフィンにより、
プロペラの回転方向と逆向きの回転流をプロペラに与える。伴流率の改善に効果的
な省エネ装置である。フィンのねじり角は、フィン自体の抵抗が発生しないよう設
計されている。
・ダクトプロペラ
プロペラの前方に翼型断面を持つ円形ダクトを装備し、周囲の水を強制的にプロ
ペラに流入させることにより推進効率を向上させる。従来はプロペラの外周を覆う
ものが一般的であったが、プロペラのキャビテーションに伴うエロージョンにより、
ダクトが腐食する例が相次いだ。その対策として、HZ ノズル[11]や SSD[12] (ど
ちらも日立造船)のような、ダクトをプロペラ前方に装備するものが開発された。
ダクトの断面が翼型であるため、ダクト自体も推力を発生していると考えられる。
6
・船尾フィン
プロペラ前方に装備される船尾フィンは、細長い板をほぼ水平に取り付けたもの
であり、船尾流れを整流・加速し、剥離を抑えることで船体抵抗を低減する。また、
プロペラへ流入する流れを変化させ、自航要素を改善する。リアクションフィンや
ダクトと比べると、構造がシンプルであり、かつ小型なものが多いためコスト的に
は優れているが、フィン自体による推力は期待できない。LV-FIN(IHIMU)[13]、
NCF(名村造船所)[14]、STF(サノヤス造船)[15]、A.S. FIN(新来島どっく)[16]
等、各造船会社から、取り付け位置や形状等に独自の工夫を凝らしたものが開発さ
れている。
[ZoneⅡ](プロペラ位置)
・高効率プロペラ
プロペラの性能を向上させるためには、回転流や粘性による損失を減少させる必
要がある。タンカー船型のプロペラでは、回転流による損失も粘性による損失もほ
ぼ 10%程度とされている。粘性による損失を減少させるために、粘性抵抗を低減
するよう翼形状を改良したプロペラがプロペラメーカーにより多数開発されてい
る。また、ハブ渦の発生を抑える NHV プロペラ(ナカシマプロペラ)[17]や、翼先
端を曲げることで翼端渦を抑える CLT プロペラ[18]や Kappel プロペラ[19]等、数
多くのプロペラが開発されている。
プロペラの形状を特殊なものにすることなく性能を向上させる方法として、大直
径・低回転プロペラがある。比較的簡単に大きな効果を得ることができるが、プロ
ペラチップクリアランスが小さくなってしまうため、振動の発生が懸念され、船型
の見直しが必要となる。また、バラスト状態ではプロペラ没水率が小さくなるため、
船尾喫水を大きくとる必要があるなど、実現するためには問題も多い。
・二重反転プロペラ
同軸上に互いに逆向きに回転する 2 個のプロペラを配置したもので、省エネ効果
は大きいが、構造が複雑でありイニシャルコストも大きいため、実船への搭載例は
少ない。通常のプロペラの後方にポッドプロペラを配置したハイブリッド二重反転
プロペラも実用化されている[20]。
7
・PBCF
PBCF(Propeller Boss Cap Fins)[21][22]は MOTEC により開発された省エネ装置
である。プロペラボスキャップに複数のフィンを付けることにより、ハブ渦を拡散
して弱め、プロペラ効率を向上させる。
・ターボリング[23]
ターボリングは神戸製鋼所により開発され、現在は新来島どっくが特許権を所有
している。ターボリングは、プロペラ後方に装備する小翼を有する省エネ装置であ
り、プロペラトルクを低減させることにより、プロペラ効率を向上させる。詳細に
ついては後述する。
[ZoneⅢ](プロペラ後方)
・省エネ舵
プロペラ後方では回転流が生じているが、これは推進力とはならないため、エネ
ルギーが捨てられている状況となっている。この回転流を回収するため、舵にも
様々な工夫がなされている。舵にバルブやフィンを装備した SURF-BULB(ユニ
バーサル造船)[24]や RBS-F(川崎重工業)[25]、AT-Fin(IHIMU)[26][27]の他、
プロペラ軸を境に左右にひねったリアクション舵[28]がある。
1.2.3 ターボリング
ターボリング(Fig. 1.2)[23]は、プロペラの後方に装備する省エネ装置である。
ターボリングの翼数はプロペラと同じであり、その直径はプロペラ直径の 40%で
ある。ターボリングは、プロペラボスに直接ボルトで固定されており、プロペラと
ともに回転する。ターボリングを取り付けるためのボルト穴は、プロペラキャップ
を取り付けためのボルト穴を流用できるため、就航船に対しても特別な加工なしに
装備可能である。
ターボリングの特徴として、その翼がプロペラ翼とは逆向きのキャンバーを有し
ていることがあげられる。プロペラ後流中において、ターボリングの翼は Fig. 1.3
に示すようにプロペラの翼とは逆向きの推力およびトルクを発生する。このとき、
プロペラおよびターボリングを合わせた推力およびトルクは減少する。プロペラ効
率は推力とトルクとの比率で表されるため、ターボリングによる推力の減少率より
8
トルクの減少率が大きい場合、プロペラ効率が向上することになる。ターボリング
の装備により、1.5%から 2.5%程度の効率向上が水槽試験結果により確認されてい
る。なお、効率の向上量は、船種によって異なり、低速船より高速船の方がより効
果が大きい。
現在、ターボリングは非線形プロペラ揚力面理論をベースとした設計システムに
より設計されている。ターボリングの直径やピッチ分布は、装備するプロペラの直
径やピッチ分布により決定され、また、展開面積比や翼断面形状は決まっており、
ターボリングの翼形状にはほとんど自由度がないのが現状である。さらなる省エネ
効果を得るためには、ターボリング翼形状を見直し、最適な形状にすることが必要
である。
Fig. 1.2
Turbo-Ring
Torque/r
Lift
Thrust
Thrust
Lift
Torque/r
Turbo-Ring
Fig. 1.3
Propeller
Principle of a Turbo-Ring
9
1.3 研究の目的
前述のとおり、ターボリングの翼形状や性能は、プロペラによってほぼ決まって
しまうため、さらなる性能向上のためには、ターボリング翼形状を最適化する必要
がある。しかし、現在の設計法では、ターボリングの性能は、非線形プロペラ揚力
面理論に基づく計算結果を、実験ベースの補正値により修正することで求めている
ため、ターボリングの翼形状が変わると、その性能を精度良く求めることは困難で
ある。そのため、ターボリング付プロペラの性能を精度良く求めることができる新
しい性能計算法が必要である。
本研究の目的は、プロペラ翼とターボリング翼との翼間干渉影響を考慮し、プロ
ペラおよびターボリングそれぞれの翼形状を最適化し、ターボリング付プロペラの
性能を向上させることである。そのために、以下の 2 点を行う必要がある。
1)
翼間干渉影響を考慮した、ターボリング付プロペラの性能計算法の開発
2)
プロペラおよびターボリングの翼形状最適化手法の開発
ターボリング付プロペラの性能計算法として、九州大学において開発された簡便
なパネル法 SQCM[29]に、ハブ渦モデルを組み込んだ計算法を開発する。本計算法
の精度検証のため、ターボリングの要目を変更し、感度調査を行う。そして曳航水
槽においてプロペラ単独性能試験を実施し、計算結果との比較検証を行う。
さらに、実数値遺伝的アルゴリズムを用いた翼形状最適化手法を開発し、プロペ
ラおよびターボリングのそれぞれの翼形状を最適化する。また、さらなる性能向上
を目指し、プロペラ翼形状およびターボリング翼形状の同時最適化も実施する。こ
れらの改良プロペラおよび改良ターボリングの性能を、曳航水槽での実験により確
認することで、本最適化手法の検証を行う。
最後に、本最適化手法の実用化に向け、実船への装備を想定したプロペラおよび
ターボリングに本最適化手法を適用して改良し、さらなる推進性能向上を図る。
10
1.4 本論文の構成
本論文は「実数値遺伝的アルゴリズムを用いた省エネルギー装置付舶用プロペラ
の性能向上に関する研究」と題し、5 章で構成されている。
第 1 章は緒論であり、本研究の必要性ならびに関連する研究の経緯について概説
し、本研究において対象とする省エネ装置ターボリングについて詳述する。そして、
本研究の目的であるターボリング付プロペラ性能計算法と、プロペラおよびターボ
リングの翼形状最適化手法の構築において重要な課題を述べる。
第 2 章ではターボリング付プロペラの性能計算法について述べる。そして、本研
究の対象として設計した、翼の輪郭を数式で表した単純形状プロペラおよびターボ
リングについて性能計算を行い、推力、トルクが本計算法により精度良く表現でき
ることを示す。また、ターボリング形状の違いによる性能の差異が、本計算法によ
り表現可能かを確認するため、ターボリングの翼形状を変化させ感度調査を行い、
実験結果と比較することで、本計算法の有用性を示す。
第 3 章では翼形状最適化手法とその検証について述べる。実数値遺伝的アルゴリ
ズムを用いた翼形状最適化手法を開発し、検証のため第 2 章に示した単純形状プロ
ペラおよびターボリングのそれぞれの翼形状を最適化する。これは、本最適化手法
の問題点の抽出を目的とするものであり、第 4 章で述べる実船プロペラおよびター
ボリングの翼形状最適化の基盤となる。改良プロペラおよび改良ターボリングにつ
いて実験を行い、翼形状最適化による性能向上を確認する。
第 4 章では、第 3 章で示した最適化手法を実船プロペラおよびターボリングに適
用する。本最適化手法による改良プロペラおよび改良ターボリングについて実験を
行い、翼形状最適化による性能向上の確認を行う。これは、本最適化手法を実用化
し、ターボリング付プロペラのさらなる性能向上を図る礎となる。
第 5 章は本論文の結論であり、本研究によって得られた成果をまとめる。また、
本研究において不足する点や、今後取り組むべき課題について述べる。
11
第2章
ターボリング付プロペラの性能計算
2.1 緒言
プロペラおよびターボリングの翼形状最適化を行うための準備として、ターボリ
ング付プロペラの性能計算法を開発する必要がある。プロペラおよびターボリング
は近接しているため、プロペラ翼とターボリング翼との間の干渉影響が無視できな
い。そのため、翼間干渉影響を考慮できる計算法であることが必要である。また、
ターボリングがハブ渦に与える影響も考慮できなくてはならない。近年、プロペラ
の性能を計算するツールとして、CFD が用いられるようになってきているが、計算
のための格子生成が難しく、また計算に非常に時間がかかる等の問題がある。
本研究では、ターボリング付プロペラの性能計算法として、九州大学において開
発された簡便なパネル法 SQCM[29]に、ハブ渦を翼端渦として理論的に扱うモデル
[30]を組み込んだ計算法を開発する。SQCM は、計算用データの作成が容易であり、
かつ計算時間が短いため、翼形状最適化の過程で得られる多数の解の評価に適して
いる。本計算法では、プロペラおよびターボリングの両方にハブ渦モデルを適用し、
前後に重ね合わせることで、プロペラ後流場中のターボリングに流入する複雑な流
れや、放出されるハブ渦強さ、ハブのボスキャップに作用する抵抗等を厳密に取り
扱うことでプロペラ翼とターボリング翼の間の干渉を考慮する。
本計算法の有用性を検証するため、対象となるプロペラおよびターボリングを設
計し、計算結果と実験結果を比較する。また、ターボリングの形状の違いによる性
能の差異が本計算法で表現できるかどうかを確認するため、翼形状を系統的に変化
させたターボリングを複数設計し、計算結果と実験結果を比較検証することで、本
計算法の有用性を確認する。
12
2.2 性能計算法
2.2.1 SQCM による定常プロペラ性能計算法
SQCM とは、翼のキャンバー面上に揚力面理論の一種である Lan[31]の QCM
(Quasi-Continuous Vortex Lattice Method)に従って、渦格子とコントロールポイン
トを配置し、さらに翼表面には Hess and Smith 法[32]による吹出しとコントロール
ポイントを配置して、キャンバー面と翼表面で垂直速度をゼロとする境界条件から
渦強さと吹出し強さを求める方法である。
翼数 K 、直径 D のプロペラが、非粘性、非圧縮性の無限流体中で前進速度 V A 、
回転角速度  (  2n , n は毎秒回転数)で運動している場合を考える。x 軸をプ
ロペラ回転軸に一致させ、 x 軸上の任意の点に原点 o を取る。そして z 軸を鉛直上
向きに、 y 軸をプロペラ固定座標系 o  xyz が右手系になるように設定する。流体
がプロペラへ流入する速度 V A は x 軸の正方向を向き、プロペラは後方より見て時
計回りに回転している。流場の計算はこのプロペラ固定座標系において行うが、プ
ロペラに働く力、モーメントの計算に際しては空間固定座標系 O  XYZ を導入す
る。なお、原点 O の位置は、原点 o の位置と一致させる。 X 軸は x 軸に一致し、
Y 軸および Z 軸は時刻ゼロ、すなわち回転角  がゼロのとき、 y 軸、 z 軸に一致す
るものとする。
SB
Fig. 2.1
Coordinate systems of propeller
13
さらに、計算の便宜上、プロペラ固定の円筒座標系 o  xr を導入する。このと
き、直交座標系 o  xyz と円筒座標系 o  xr の関係は以下のようになる。
x  x , y  r sin  , z  r cos 
(2.1)
ただし、
r  y 2  z 2 ,   tan 1(y / z)
であり、  はプロペラ後方より見て反時計回りを正とする。
プロペラ翼表面 SB をスパン方向に M 分割(分割位置で半径一定)、翼断面のフェ
イス面およびバック面をそれぞれコード方向に N 分割の合計 (M  2N )  K 個の
パネルに分割し、それぞれのパネル内で強さ m が一定の吹出しを分布させる。プ

ロペラ翼に分布させた吹出しによる速度ベクトル V m は吹出しによる撹乱速度ポ
テンシャル  m を用いて以下のように表される。

V m   m
(2.2)
ただし、
m 
 1

4
k 1 

K

S

dS 

(x  x)2  (y  y)2  (z  z)2

m(x, y, z)
B
k :プロペラ翼番号
x, y, z :特異点座標
次にキャンバー面を吹出しパネルのスパン方向の分割位置に合わせて M 分割、
コード方向に N  分割する。なお、スパン方向の分割位置番号を (翼根→翼端)、
コード方向の分割位置番号を (前縁→後縁)とし、分割位置は渦が配置されるロー
ディングポイント(L.P.)に相当する。ここで、キャンバー面および後流渦面に沿っ
LP
た  軸を設定すると、キャンバー面のコード方向のローディングポイント 
およ
びキャンバー面に配置する計算点、すなわちコントロールポイント(C.P.)の位置
CP
 は、QCM の配置法に従って次式で表される。
14

 T (r )   L(r ) 
1  cos 2  1  

2
2N  


 T (r )   L(r ) 
1  cos   
  L(r ) 

2
N  

LP
 
  L(r ) 
 CP

(2.3)
ただし、
r 

1
r  r 1
2

ここで、L(r ) および  T (r ) はそれぞれスパン方向分割断面位置 r の前縁(L.E.)
および後縁(T.E.)の位置を表している。そして、(2.3)式で表される位置に合わせ
て、合計 (M  N  )  K 個の馬蹄渦をキャンバー面に Fig. 2.2 のように配置する。
この馬蹄渦は1本の束縛渦および自由渦と後流渦による 2 本の渦線分で構成され
る。なお、後流渦は文献[33]と同様の手法で T.E.から 2 回転半まで幾何学的に配置
し、 N w 個に分割された渦線分で表す。ここで、 k 番目の翼において、キャンバー
面の ~  1 間の任意の  に束縛渦が位置する単位強さの馬蹄渦による誘導速度

ベクトル vk  は、次式で表せる。


vk   vkB  
N

  v


vkF 1   vkF 
  
Nw
T
k  1 

 vkT

(2.4)
 1
ただし、

vkB :キャンバー面上、  ~   1 間の  における単位強さの束縛渦による
誘導速度ベクトル
F
vk :キャンバー面上、  の  ~   1 間における単位強さの自由渦による
誘導速度ベクトル

vkT :後流中、 の  ~   1 間における単位強さの後流渦による誘導速度ベ
クトル(  は位置番号, T.E.→後流)
15

Free Vortex
Fig. 2.2
Arrangement of vortex systems
また、個々の渦線分による誘導速度ベクトルは Biot-Savart の法則により計算する。
キャンバー面の馬蹄渦の渦強さを  k とすれば、QCM の渦モデルによる誘導速度
ベクトルは、(2.4)式を用いて以下の式で与えられる。

V 
K M N

  kvk 
(2.5)
k 1  1  1
ただし、
 
c(r )
2N 
sin
2  1

2N 
c(r ) :翼断面 r のコード長


このようにして、合速度ベクトル V は、流入速度ベクトル V I と渦による誘導速

度ベクトル V  、そして翼表面に配置する吹出しパネルによる誘導速度ベクトル

V m を加えることによって、次のように表される。




V  VI  V   Vm
(2.6)
SQCM における境界条件は、翼表面とキャンバー面のコントロールポイントに
おいて翼表面とキャンバー面を貫く流れがないという条件を与える。よって、境界
16

条件式は翼表面またはキャンバー面の法線ベクトルを n として、以下の式で与えら
れる。
 
V n  0
(2.7)
プロペラ翼表面の圧力 p は、次式で表される Bernoulli の式より計算する。

1
p  p0    V
2 
2
 2
 V I 

(2.8)
ただし、
p 0 :基準となる静圧
 :流体密度
圧力係数 C pn は次式で表される。
C pn 
p  p0
(2.9)
1 2 2
n D
2
このようにして翼表面の圧力が求まればプロペラに働く力は圧力積分によって
求めることができる。プロペラ翼表面での単位法線ベクトルの X 、 Y および Z 成
分をそれぞれ nX 、nY および nZ とすれば、プロペラに働く推力 T 、トルク Q は次
の式で表される。
S
Q  
S
T 
B
B
(p  p 0 )nX dS
(p  p 0 )(nY Z  nZ Y ) dS
(2.10)
また、プロペラの前進係数 J 、推力係数 KT 、トルク係数 KQ およびプロペラ効
率 O は、次のような式で定義される。
J 
VA
T
Q
J KT
, KT 
, KQ 
, O 

2
4
2
5
nD
n D
n D
2 KQ
17
(2.11)
2.2.2 ハブ渦モデル
パネル法を用いたプロペラ性能計算はハブを含めて行う場合があるが、一般にハ
ブ渦は考慮されず、ハブ表面にパネルを配置することでその排除効果を表現してい
るに過ぎない。このような場合、プロペラ翼根を翼端として扱うため、翼根から強
い翼端渦が流出し、ハブ表面には特異な流れが生じる結果となる。したがって、ハ
ブ表面流れやハブに作用する力を正確に求めることはできない。
ハブを考慮する上で、もうひとつ重要なプロペラ性能への影響として、鏡像効果
がある。プロペラ翼根断面はハブが壁面として作用するため循環分布がゼロに閉じ
ず、有限の値を保っていると考えるべきである。そして、ハブが揚力体の延長部を
担い、プロペラ中心がプロペラ全翼共通の翼端となり、強い翼端渦が形成されボス
キャップ後端から流出する。これがハブ渦である。舩野[34]は CFD による計算結果
からハブ近傍の流れを検証し、ハブ渦を翼端渦として扱う揚力線理論のモデルに現
象が類似していることを示した。しかし、ハブ渦と鏡像効果を一体的に考慮した理
論的計算法は未だ確立されていない。
ターボリングのようなプロペラ付加物の性能計算では、ハブ周りの流れを精度良
く求めることが重要であり、理論に則して実際の流場を表現する必要がある。ここ
では、SQCM によるプロペラ性能計算においてハブ渦を考慮するための方法を示
す[30]。
基本的な考え方は、QCM によって定義される揚力面を延長し、翼端の位置をプ
ロペラ翼根からプロペラ中心線に移動させることである(Fig. 2.3)。そこで、
Fig. 2.2 で示される馬蹄渦列を Fig. 2.4 に示すようにハブ内部に一列追加する。この
追加部の半径方向位置番号を   0 とする。ハブ内部の束縛渦分布  0 () は、厳密には
コントロールポイントとその境界条件によって決定されるべきであるが、簡便のた
め、プロペラ翼根の束縛渦分布  1() と強さが等しいと仮定する。これによって、翼
根渦線上には強さが等しく向きが反対の渦が重なるため、翼根渦強さは相殺されて
ゼロとなる。そして、束縛渦分布  0()( 1()) の積分による強さの翼端渦がハブ渦と
して放出される。このように、従来法では翼根渦として扱われた翼端渦は、安定的
にハブ渦として放出される。この方法に従うと、(2.5)式は次式に置き換えられる。
18

V 
K M N

   kvk  
k 1  2  1
K
1 N

   k1vk 
(2.12)
k 1  0  1
(2.12)式は前述の仮定により、  k 0 が  k1 で置き換えられることを示しており、未知
Z
数はハブ渦を考慮しない従来法と同じである。
Y
X
ADDED LIFTING SURFACE
ROOT VORTEX
HUB VORTEX
Fig. 2.3
Fig. 2.4
Outline of hub vortex model
Arrangement of vortex systems
19
2.2.3 後流渦面形状の計算
プロペラの後流渦面はプロペラ後流場の速度ベクトルに従って形成されるが、一
般にパネル法における後流渦面形状は、既知としてモデル化して配置される。
SQCM では、後流渦を翼後縁よりキャンバー面に沿って流出させ、1/4 回転後に翼
の幾何ピッチとなるように配置するモデルを標準としている。しかし、近年は後流
渦面形状を未知として扱う方法も計算機の発達により実用の範囲内となったこと
から、高荷重状態の計算等、後流渦面を厳密に扱う計算例も発表されている[33][35]。
ターボリング付プロペラ性能計算のような干渉問題では、プロペラ後流場の推定精
度が重要となるため、やはり後流渦面形状の変形を考慮する必要がある。本項では、
定常単独プロペラにおける後流渦面の計算法を述べる。
後流渦面を計算する基本的な考え方は後流渦面の節点(後流渦面の刻み角  毎
にできる分割点)で誘導速度ベクトルを計算し、これに従い、下流側の節点の位置
を決めるものである。非定常プロペラ問題の場合、時刻ゼロからタイムステップ毎
に後流渦節点の誘導速度ベクトルに従って、後流渦面を配置するが、定常プロペラ
問題の場合、後流渦面の初期形状を与え、誘導速度ベクトルに従って、再配置を繰
り返す方法を用いる。以下、その手順を示す。
Ⅰ)後流渦面の初期形状を配置する。初期形状は平均幾何ピッチモデルで表す。こ
の場合、円筒座標系における後流渦節点の位置( x , r ,  )と上流側の節点位置
( x1 , r 1 , 1 )との関係は次式となる。
x  x  1  r 1    tan mean
(2.13)
r  r 1
   1  
ただし、
 :半径方向節点(分割)番号
 :後流渦周方向節点番号
 :後流渦面の周方向刻み角度
mean :ピッチ角の半径方向平均値
20
Ⅱ)プロペラ周りの流れを表す特異点分布を求め((2.7)式)、その特異点分布によ

る後流渦節点での誘導速度ベクトル VS(VSx , VSr ,V S)(Fig. 2.5)を計算す
る。なお、後流渦節点における誘導速度は後流渦自身の特異性により計算できな
いため、後流渦格子節点 4 点の平均位置で誘導速度ベクトルを求め、周方向、半

径方向に補間することで V S を求める。

Ⅲ)V S に従いプロペラ翼後端からの後流渦面を再配置する。円筒座標系における
後流渦節点の位置( x , r ,  )は、 t   / 2n とおいて次式となる。
x  x  1  r  1    tan 
(2.14)
r  r  1  VSr  t
    1  

ただし、  は V S による流体力学的ピッチ角であり、次式となる。
 V  V Sx 

   tan 1  A
 R V


S 

(2.15)
Ⅳ)Ⅱ)、Ⅲ)を後流渦面が収束するまで繰り返す。収束判定には推力係数 KT を用
い、
KT 
KT (i)  KT (i 1)
KT (i)
 0.001
(2.16)
を満たすまで繰り返す。 i は繰り返し計算回数である。なお、計算時間短縮のた
め、後流渦面の変形は放出後から 1/4 回転まで考慮し、これより下流は(2.14)式
による幾何ピッチモデルを適用する。
Fig. 2.5
Movement of vortex nodes
21
2.2.4 ターボリング装備時のプロペラ性能計算法
プロペラおよびターボリングの両方に SQCM を適用し、それぞれの境界条件を
同時に解くことで、翼間の干渉を考慮したターボリング付プロペラ性能計算を行う。
ターボリングに流入する複雑な流れや、放出されるハブ渦強さ、ボスキャップに作
用する抵抗等を厳密に取り扱うため、2.2.2 項、および 2.2.3 項に示した計算法を組
込む。
まず、(2.2)式における  m はターボリング表面 ST 、ボスキャップを含むハブ表
面 SH にも吹出し分布を配置し(Fig. 2.6)、次式で求められる。
m 
 1

m(x, y, z)



dS
  4 SBST SH
2
2
2




(x  x )  (y  y )  (z  z )
k 1 

K
(2.17)
次に揚力面の取り扱いについて述べる。Fig. 2.7 に模式図を示す。プロペラ、ター
ボリング共有のハブ内部に 2.2.2 項に従って、揚力面を追加する。これにより、セ
ンターライン( x 軸)上で翼端渦が重なり合い、ボスキャップ後端から放出される。
したがって、ハブ渦強さはプロペラ部によるハブ渦強さと、ターボリング部のハブ
渦強さの和として算出され、(2.12)式は次式となる。

 K M N

V  
 k vk     

 k 1   2  1

 
k 1   0  1
 K M N


 k vk     

 k 1   2  1

N
1
K
K
1
k1


vk     

プ ロ ペ ラ


 k1 vk     

 1
タ ー ボ リ ン グ
N
(2.18)

k 1   0
プロペラ、ターボリングおよびハブ表面への流入速度は(2.6)式で表される。それ
ぞれの物体表面について境界条件(2.7)式を同時に満たすことで、プロペラおよび
ターボリングの干渉を考慮した特異点分布が求まる。(2.8)式による圧力を積分し、
ターボリング付プロペラの推力 T 、トルク Q を求める。
S
Q  
S
T 
B S T
B S T
SH
SH
(p  p0 )nXdS
(p  p0 )(nY Z  nZ Y ) dS
22
(2.19)
z
Fig. 2.6
Fig. 2.7
Surface of propeller with a Turbo-Ring
Combination of lifting surfaces around a blade root
23
2.3 ターボリング付プロペラ性能計算法の検証
2.3.1 計算対象のプロペラおよびターボリング
前節で述べたターボリング付プロペラ性能計算法を検証するため、対象プロペラ
およびターボリングについて計算と実験を実施し、結果の比較検証を行う。
本研究における対象プロペラとして、翼の輪郭を数式で表した単純形状プロペラ
(以下、原型プロペラと称す)を設計した。本プロペラは基礎研究を目的としてい
るため、スキューやレーキはつけず、極力単純な翼形状とした。なお、本プロペラ
は、低速肥大船のプロペラを想定している。また、本プロペラに装備するターボリ
ング(以下、原型ターボリングと称す)の設計も行った。原型プロペラの主要目を
Table 2.1 に、原型ターボリングの主要目を Table 2.2 に示す。
さらに、本計算法の感度調査として、原型ターボリングをもとに、Table 2.3 に示
すように翼形状を系統的に変化させたターボリングを 5 種類設計した。変更した項
目は、直径、翼根部のピッチ角、最大キャンバーである。ターボリング A および B
は、直径を変更したものである。ターボリング C および D は、翼根部のピッチ角
を変更したものである。ターボリング E は、原型ターボリングの最大キャンバー高
さを 1.5 倍したものであり、ピッチ角の分布は原型ターボリングと同じである。変
更した項目の一覧を Table 2.3 に示す。Fig. 2.8 は、プロペラおよびターボリングの
ピッチ角分布である。ターボリングの翼先端のピッチ角は、原型プロペラのピッチ
角を超えないよう設定した。
Table 2.1 Principal particulars of an original propeller
Diameter
0.25m
Pitch Ratio at 0.7R
0.680
Expanded Area Ratio
0.500
Boss Ratio
0.1800
Number of Blade
4
Skew Angle
0.0deg.
Rake Angle
0.0deg.
Blade Section
NACA
24
Table 2.2 Principal particulars of an original Turbo-Ring
Diameter
0.10m
Pitch Angle (Root)
32.0deg.
Pitch Angle (Tip)
28.0deg.
Expanded Area Ratio
0.250
Boss Ratio
0.4500
Number of Blade
4
Blade Section
NACA
Table 2.3 Parameters of Turbo-Rings
Name of TR
Diameter
Pitch Angle(Root)
Pitch Angle(Tip)
Original Turbo-Ring:TO
0.100m
32.0deg.
28.0deg.
Turbo-Ring A:TA
0.1125m
32.0deg.
25.5deg.
Turbo-Ring B:TB
0.125m
32.0deg.
23.0deg.
Turbo-Ring C:TC
0.100m
22.0deg.
28.0deg.
Turbo-Ring D:TD
0.100m
42.0deg.
28.0deg.
Turbo-Ring E:TE
0.100m
32.0deg.
28.0deg.
0.8
TO , TE
TA
TB
TC
TD
Propeller
r/R
0.6
0.4
0.2
10
20
30
40
50
PITCH ANGLE (deg.)
Fig. 2.8 Pitch angles of Turbo-Rings and propeller
25
60
2.3.2 計算結果
ターボリング付プロペラの性能計算を実施するにあたり、プロペラ翼とターボリ
ング翼、およびハブのパネル分割を行った。なお、ハブとはプロペラボスとターボ
リングボス、およびボスキャップを合わせたものである。Fig. 2.9 にパネル分割図
を、Table 2.4 にプロペラ翼とターボリング翼、およびハブそれぞれのパネル分割数
を示す。
プロペラ後流渦とターボリング表面、および後流渦面計算点の干渉による特異性
を回避させるため、半径方向の分割位置はプロペラおよびターボリングで一致させ
る。また、ハブ表面のパネル分割についてターボリングとの接続部を軸方向に 1 パ
ネルとしているが、これも便宜的に特異性を回避させるためである。
ターボリングの翼とプロペラの翼は、正面から見るとプロペラの回転方向にずれ
た状態で配置されている。このずれ角は、従来のターボリング設計法により求めら
れるものである。本プロペラに装備するターボリングは、プロペラの翼に対し、プ
ロペラの回転方向に 13.3 度ずれた位置に配置されている。なお、プロペラおよび
ターボリングの翼間距離は 0.10 D ( D :プロペラ直径)である。
Fig. 2.9 Panel arrangement (with a Turbo-Ring)
26
Table 2.4 Number of panels
Propeller
Radial direction
20
blade
Chordwise direction
16
Turbo-Ring
Radial direction
10
blade
Chordwise direction
16
Forward of propeller
4
Propeller
3
Turbo-Ring
1
Boss cap
9
Circumferential direction
24
Hub
Fig. 2.10 に原型プロペラ単独および原型ターボリング付プロペラの性能計算結
果を示す。ターボリング装備により、推力はほとんど変化していないがトルクが減
少しており、プロペラ効率が向上している。
Fig. 2.11 に推力およびトルクの成分の計算結果を示す。上図はプロペラ翼の推力
およびトルク、下図はターボリング翼の推力およびトルク、ハブの推力である。な
お、ハブのトルクはほとんどゼロであるため、ここでは図示しない。
上図より、ターボリングを装備することで、プロペラ翼の推力、トルクが増加し
ていることが分かる。これは、プロペラ後方にターボリングがあることにより、排
除伴流が生じプロペラへの軸方向流入速度が低下したために、プロペラ翼に流入す
る流れの迎角が大きくなったためと考えられる。一方、下図より、ターボリング翼
はマイナスの推力とトルクを発生することが分かる。また、ターボリングが装備さ
れていないときは、ハブには抵抗が働くが、ターボリング装備時には推力が働いて
いることが分かる。ターボリング装備時にハブに働く抵抗が減少するのは、ターボ
リング翼がプロペラ翼と逆方向のハブ渦を生成し、プロペラのハブ渦を弱めている
ためである。これが、ターボリングによる推力減少とある程度相殺されることで、
プロペラ単独と同等の推力となる。その結果、全体ではトルクだけが減少し、プロ
ペラ効率が向上すると考えられる。
27
0.24
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ
0.18
KT
0.16
w/o TR
w/ TO
0.14
0.12
0.3
0.4
0.5
J
0.70
ηO
0.60
0.50
w/o TR
w/ TO
0.40
0.3
0.4
J
0.5
Fig. 2.10 Calculated results of propeller characteristics (with TO)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
28
0.24
0.22
10KQ-P
KT,10KQ
0.20
0.18
KT-P
0.16
w/o TR
w/ TO
0.14
0.12
0.3
0.4
0.5
J
HUB
KT-HUB
KT,10KQ
0.00
w/o TR
w/ TO
TURBO-RING
-0.01
10KQ-TR
KT-TR
0.3
0.4
J
0.5
Fig. 2.11 Thrust and torque components
(Upper : propeller blade, Lower : Turbo-Ring blade and hub)
29
Fig. 2.12 から Fig. 2.17 に、ターボリングの翼形状を変化させた感度調査の結果を
示す。
Fig. 2.12 は、ターボリングの直径を変化させたものである。ターボリングの直径
が大きくなると、推力およびトルクは減少する。また、ターボリング付プロペラの
効率はターボリングの直径が大きくなるほど、わずかではあるが低下している。
Fig. 2.13 にターボリングの直径を変化させた場合の推力およびトルクの成分の計
算結果を示す。上図はプロペラ翼の推力およびトルク、下図はターボリング翼の推
力およびトルク、ハブの推力である。ターボリングの直径が大きくなるにつれ、プ
ロペラ翼の推力およびトルクは増加しているが、ターボリング翼により生じるプロ
ペラと逆向きの推力およびトルクも増加するため、Fig. 2.12 上図のように全体の推
力およびトルクが減少している。
Fig. 2.14 は、ターボリングの翼根部のピッチ角を変化させた場合の計算結果であ
る。ターボリング翼根部のピッチ角が大きくなると、推力が増加し、ターボリング
付プロペラの効率が向上している。Fig. 2.15 にターボリングの翼根部のピッチ角を
変化させた場合の推力およびトルクの成分の計算結果を示す。上図はプロペラ翼の
推力およびトルク、下図はターボリング翼の推力およびトルク、ハブの推力である。
ターボリング翼根のピッチ角が大きくなるにつれ、プロペラ翼の推力およびトルク
は減少している。また、ターボリング翼により生じるプロペラと逆向きの推力およ
びトルクも減少している。また、ターボリング翼根のピッチ角が大きくなると、推
力の減少率に対しトルクの減少率が大きくなる傾向があり、効率向上に寄与してい
ることが分かる。
Fig. 2.16 は、ターボリングのキャンバー高さを変化させた場合の計算結果である。
ターボリングのキャンバー高さが大きくなると、推力、トルクともに減少し、わず
かではあるがターボリング付プロペラの効率が低下している。Fig. 2.17 にターボリ
ングのキャンバー高さを変化させた場合の推力およびトルクの成分の計算結果を
示す。上図はプロペラ翼の推力およびトルク、下図はターボリング翼の推力および
トルク、ハブの推力である。ターボリングのキャンバーを高くすると、プロペラ翼
の推力およびトルクはわずかではあるが増加する。一方、ターボリング翼が生じる
逆向きの推力およびトルクは増加するが、効率はわずかに低下している。ターボリ
ングの翼形状を変化させても、ハブに働く力に大きな変化はなく、ターボリングを
装備すればハブ渦が弱められることが分かる。
30
Fig. 2.18 に、プロペラの設計点 J=0.4 におけるプロペラ性能計算結果の比較を示
す。上図に推力およびトルク、下図にプロペラ効率を示す。ターボリングの有無や、
ターボリング形状の違いにより、プロペラ性能に差異が現れていることが分かる。
31
0.24
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ
0.18
KT
0.16
TO
TA
TB
0.14
0.12
0.3
0.4
J
0.5
0.70
ηO
0.60
0.50
0.40
TO
TA
TB
0.3
0.4
J
0.5
Fig. 2.12 Calculated results of propeller characteristics (Diameter)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
32
0.24
0.22
10KQ-P
KT,10KQ
0.20
0.18
KT-P
0.16
TO
TA
TB
0.14
0.12
KT,10KQ
0.00
-0.01
0.3
0.4
J
0.5
HUB
KT-HUB
TURBO-RING
TO
TA
TB
10KQ-TR
-0.02
KT-TR
-0.03
0.3
Fig. 2.13
0.4
J
0.5
Thrust and torque components(Diameter)
(Upper : propeller blade, Lower : Turbo-Ring blade and hub)
33
0.24
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ
0.18
KT
0.16
TO
TC
TD
0.14
0.12
0.3
0.4
J
0.5
0.70
ηO
0.60
0.50
0.40
TO
TC
TD
0.3
0.4
J
0.5
Fig. 2.14 Calculated results of propeller characteristics (Pitch angle at root)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
34
0.24
0.22
10KQ-P
KT,10KQ
0.20
0.18
KT-P
0.16
TO
TC
TD
0.14
0.12
0.3
0.4
J
0.5
HUB
KT-HUB
KT,10KQ
0.00
TO
TC
TD
10KQ-TR
TURBO-RING
-0.01
KT-TR
-0.02
0.3
Fig. 2.15
0.4
J
0.5
Thrust and torque components(Pitch angle at root)
(Upper : propeller blade, Lower : Turbo-Ring blade and hub)
35
0.24
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ
0.18
KT
0.16
TO
TE
0.14
0.12
0.3
0.4
J
0.5
0.70
ηO
0.60
0.50
TO
TE
0.40
0.3
0.4
J
0.5
Fig. 2.16 Calculated results of propeller characteristics (Camber height)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
36
0.24
0.22
10KQ-P
KT,10KQ
0.20
0.18
KT-P
0.16
TO
TE
0.14
0.12
0.3
0.4
J
0.5
HUB
KT-HUB
KT,10KQ
0.00
TO
TE
TURBO-RING
10KQ-TR
-0.01
KT-TR
-0.02
0.3
Fig. 2.17
0.4
J
0.5
Thrust and torque components(Camber height)
(Upper : propeller blade, Lower : Turbo-Ring blade and hub)
37
0.21
KT, 10KQ
0.2
10KQ
0.19
0.18
KT
0.17
0.16
0.15
w/o TR TO
TA
TB
TC
TD
TE
w/o TR TO
TA
TB
TC
TD
TE
0.57
ηO
0.56
0.55
0.54
0.53
Fig. 2.18 Comparison of propeller characteristics (Calculation : J=0.4)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
38
Fig. 2.19 に原型プロペラおよび原型ターボリング付プロペラの圧力分布の計算
結果を示す。プロペラ単独の場合、ボスキャップ後端でハブ渦による大きな負圧が
見られるが、ターボリングが装備されることにより、負圧が小さくなっていること
が分かる。これは Fig. 2.20 のハブ表面の流線形状からも分かるように、ターボリン
グによってハブ渦が低減され、ボスキャップ後端で渦が生成されにくくなるためで
ある。
Fig. 2.19 Pressure distribution(J=0.4)
(Left : w/o TR, Right : w/ TR)
Fig. 2.20 Stream lines on a boss cap(J=0.4)
(Left : w/o TR, Right : w/ TR)
39
Fig. 2.21 に後流渦面形状の計算結果を示す。プロペラおよびターボリングの後流
渦は、放出後 1/4 回転までは変形を考慮し、それより後方では幾何ピッチモデル[29]
を用いる。ターボリングの有無によりプロペラ翼根部の後流渦面のピッチが大きく
異なっていることが分かる。このように、プロペラおよびターボリングの翼間干渉
問題を解く上で、後流渦形状は重要な算入要素であると思われる。
Fig. 2.21 Comparison of deformed wake(J=0.4)
(Upper : w/o TR, Lower : w/ TR)
40
2.3.3 実験結果
前項で性能計算を実施した原型プロペラおよび原型ターボリング、翼形状を変化
させたターボリング 5 種類について、模型を製作し、(一財)日本造船技術セン
ターの曳航水槽において実験を行った。実験結果と計算結果とを比較検証すること
で、本計算法の有用性を確認する。プロペラおよびターボリング 6 種類の模型の写
真を Fig. 2.22 に示す。
TO
TA
TB
TC
TD
TE
Fig. 2.22 Propeller and Turbo-Ring models
プロペラ性能を計測するために通常行われるプロペラ単独性能試験(POT:
Propeller Open Test)(Fig. 2.23)では、プロペラはオープンボートの上流側に配置
され、一様流中で計測されるが、プロペラの後方にオープンボートがあるため、ハ
ブ渦の影響が反映されない。本研究では、ターボリングによるハブ渦低減効果も評
価する必要があるため、プロペラをオープンボートの下流側に配置した逆 POT
(Fig. 2.24)を実施した。逆 POT では、プロペラはオープンボートの伴流中にある
が、ターボリング有無でのプロペラ性能を比較するためにはこの方法が適している。
本研究の実験結果は、すべて逆 POT の結果である。
41
Fig. 2.23 Propeller open test
Hub Vortex
Fig. 2.24 Reverse propeller open test
Fig. 2.25 から Fig. 2.28 に、計算結果と実験結果との比較を示す。Fig. 2.25 はター
ボリング有無での計算結果と実験結果との比較である。Fig. 2.26 はターボリングの
直径を、Fig. 2.27 はターボリングの翼根部ピッチ角を、Fig. 2.28 はキャンバー高さ
を変更したものの計算結果と実験結果との比較である。両者の間には、定量的な差
異はあるものの、定性的には良く一致している。
Fig. 2.29 は、プロペラの設計点 J=0.4 における、ターボリングの形状を変化させ
た性能計算結果と実験結果とを比較したものである。上図に推力およびトルク、下
図にプロペラ効率を示す。実験結果は、計算結果より推力、トルクともに高めとなっ
ているが、ターボリングの形状の違いによる性能の差異が表れており、定性的には
良く一致している。また、プロペラ効率は計算結果と実験結果とで良く一致してお
り、本計算法によりターボリング付プロペラの性能を精度良く推定できることを確
認した。
42
0.24
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ
0.18
0.16
KT
Cal. Exp.
0.14
0.12
w/o TR
w/ TO
0.3
0.4
0.5
J
0.70
ηO
0.60
0.50
0.40
Cal. Exp.
0.3
0.4
w/o TR
w/ TO
J
0.5
Fig. 2.25 Comparison of calculation and experiment (with TO)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
43
0.24
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ
0.18
0.16
Cal. Exp.
0.14
0.12
KT
TO
TA
TB
0.3
0.4
J
0.5
0.70
ηO
0.60
Cal. Exp.
0.50
0.40
0.3
0.4
J
Fig. 2.26 Comparison of propeller characteristics (Diameter)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
44
TO
TA
TB
0.5
0.24
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ
0.18
0.16
KT
Cal. Exp.
0.14
0.12
TO
TC
TD
0.3
0.4
J
0.5
0.70
ηO
0.60
Cal. Exp.
0.50
0.40
0.3
0.4
J
TO
TC
TD
0.5
Fig. 2.27 Comparison of propeller characteristics (Pitch angle at root)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
45
0.24
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ
0.18
0.16
KT
Cal. Exp.
0.14
0.12
TO
TE
0.3
0.4
J
0.5
0.70
ηO
0.60
0.50
0.40
Cal. Exp.
0.3
0.4
J
TO
TE
0.5
Fig. 2.28 Comparison of propeller characteristics (Camber height)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
46
0.21
KT, 10KQ
0.2
10KQ
0.19
Exp.
Cal.
0.18
KT
0.17
0.16
0.15
w/o TR TO
TA
TB
TC
TD
TE
0.57
ηO
0.56
0.55
Exp.
Cal.
0.54
0.53
w/o TR TO
TA
TB
TC
TD
Fig. 2.29 Comparison of propeller characteristics (J=0.4)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
47
TE
2.4 結言
本章ではパネル法 SQCM にハブ渦モデルを組み込んだプロペラ性能計算法を用
いて、プロペラおよびターボリングの翼間干渉影響を考慮しながら、ターボリング
付プロペラの性能を計算する方法を示した。本計算法の有用性を確認するため、翼
形状を変化させたターボリングによる感度調査を行い、また、曳航水槽において実
験を行い、計算結果と実験結果との比較を行った。その結果、以下のことを確認し
た。
1) 計算結果と実験結果とは良く一致しており、本計算法でターボリング付プ
ロペラの性能推定が可能であることを確認した。
2) ボスキャップの圧力分布や表面の流線、プロペラ後流渦形状も計算で求め
ることが可能であり、計算の結果、ターボリングによりハブ渦が弱められ
ていることを確認した。
以上のように、良好な結果が得られたため、次章以降では本計算法をターボリン
グ付プロペラの性能評価に用いる。
48
第3章
実数値遺伝的アルゴリズムを用いた
翼形状最適化手法
3.1 緒言
プロペラの設計法は、水槽試験結果に基づくチャートを用いた設計法が現在でも
一般的である。揚力面理論やパネル法は、プロペラ設計において試行錯誤しながら
用いられてきた。しかしながら、最適化手法を用いたプロペラ設計手法に関する研
究も行われている。川北と星野[36]は、SUMT(Sequential Unconstrained Minimization
Technique)によるプロペラ翼の圧力分布を最適化した新しい翼断面形状を設計し
た。竹腰ら[37]は SQP(Sequential Quadratic Programming)法を用いて複雑な制限下
でプロペラ効率を最大化した。Karim と池畑[38]や Jung ら[39]は、遺伝的アルゴリ
ズム(GA:Genetic Algorithm)を用いた最適化手法を発表している。
GA は、最適化問題を解くための手法として、一般的に用いられている。GA は、
生物の進化の過程を模倣した最適解探索手法[40]であり、1975 年に Holland[41]によ
り提唱された。GA は、交叉や突然変異といった遺伝子操作により、既に存在する
解(親個体)から新しい解候補(子個体)を生成し、自然淘汰により解の選択を行
うことで世代交代を繰り返し、最適解を見つける方法である。
本研究では、プロペラおよびターボリングの翼形状を最適化するための手法とし
て、実数値 GA[42][43]を用いた。GA では、親個体から子個体を生成するために交
叉法が必要となるが、ここでは、小野ら[43]により提案された単峰性正規分布交叉
(UNDX:Unimodal Normal Distribution CROSSover)を用いた。交叉法として UNDX
を用いた実数値 GA は、レンズの光学的性能最適化等に用いられ、その有用性が確
認されている[44]。また、実数値 GA は船舶工学の分野においても、船型最適化に
応用されている[45][46][47][48]。
本章では、実数値 GA を用いた翼形状最適化手法を開発し、プロペラおよびター
ボリングの翼形状を最適化する。また、さらなる性能向上のために、プロペラ翼形
状およびターボリング翼形状の同時最適化も合わせて実施する。なお、翼形状最適
49
化の過程におけるターボリング付プロペラの性能評価には、第 2 章で述べたターボ
リング付プロペラ性能計算法を用いる。
本最適化手法の有用性を確認するため、改良プロペラおよび改良ターボリングに
ついて曳航水槽において実験を行う。
50
3.2 最適化手法と最適化問題の設定
3.2.1 実数値遺伝的アルゴリズム
遺伝的アルゴリズム(GA : Genetic Algorithm)は、生物の進化の過程を模した確
率論的な最適化手法の一種である。GA では、ある世代(generation)を形成する個
体(individual)の集合である集団(population)の中で、最適化問題の目的関数に対
し、高い適合度を持つ個体が高い確率で生き残るような選択(selection)を行う。
次世代の集団は、交叉(crossover)と突然変異(mutation)により生成される。世代
交代を繰り返すにつれ、目的関数に対してより高い適合度を持つ個体が増加し、最
適解が得られる。
GA において、個体とは最適化問題の解のひとつである。一般的な GA において、
個体はひとつの設計変数あたり適当な個数(ビット数)の 0 または 1 という整数値
の列で表される。この 0 または 1 の列(ビットストリング)は、10 進数への変換
を経て実数である設計変数に写像される。各個体の染色体(chromosome)は設計変
数の数だけビットストリングを並べることにより表現される。ビットストリングに
より表現される空間を遺伝子型(genotype)空間、実数値により表現される空間を
表現型(phenotype)空間といい、表現型から遺伝子型への写像をコーディング
(coding)、逆に遺伝子型から表現型への逆写像をデコーディング(decoding)とい
う。ビットストリングによるコーディングが行われた GA はビットストリング GA
という。
ビットストリング GA は様々な問題へ適用されているが、遺伝子を 0 と 1 のみで
表現するため、染色体が似通った個体であっても、必ずしも実際の形状が似ている
とは限らない。一方、染色体をビットストリングではなく、実数値により表現する
ものを実数値 GA といい、設計変数が連続な値をとる最適化問題においては、ビッ
トストリング GA より確実に最適解を得ることができるとされている[42]。本研究
においては、交叉法として UNDX、世代交代モデルとして MGG モデルを用いた実
数値 GA を採用する。UNDX および MGG モデルについては後述する。
51
3.2.2 交叉法
GA では、次世代の個体を生成するための交叉法が必要となる。本最適化手法で
は、交叉法として 単峰性正規分布交叉( UNDX:Unimodal Normal Distribution
CROSSover)を用いた。UNDX[43][44]は、小野らによって提案され、レンズの光学
的性能最適化問題に用いられ、その有用性が確認されている。


UNDX では、Fig. 3.1 に示すように、2 個の親個体を表す実数ベクトル P1 , P2 お

P
よび 3 番目の親個体の実数ベクトル 3 の位置関係によって決まる正規乱数を用い
 
て、2 個の子個体の実数ベクトル C1 , C 2 を生成する。ここで各個体は nD 個の設
計変数を成分とする nD 次元の実数ベクトルにより表される。なお、Fig. 3.1 は例
として設計変数が 2 個の場合を示している。
 
P
子個体は基本的に、2 個の親個体 1 , P2 を結ぶ線分の周辺に、正規分布に従っ

て生成される。3 番目の親個体 P3 は、正規分布の標準偏差を決めるために補助的

に用いられる。正規分布の標準偏差は、その主軸成分すなわち 2 個の親個体 P1 ,

P2 を結ぶ方向の成分 1 は両親間の距離 d1 に比例させ、それ以外の軸の成分  2 は、

P
3 番目の親個体 3 と両親を結ぶ直線との距離 d2 に比例させる。これにより、両親
が表現型空間において離れて存在している場合には、子個体は広い範囲に生成され、
両親が近くに存在している場合には、両親に近い狭い範囲に生成される。ここで、
主軸以外の標準偏差を nD で割ることにより、設計変数の数が増加しても主軸か
ら大きく外れることなく子個体が生成されるよう配慮されている。このとき、生成
される子個体のベクトルは(3.1)式で表される。
Fig. 3.1 Concept of UNDX (Two-dimensional case)
52




C1  (P1  P2 ) 2  z1 e1 
nD
z
k

ek
k 1




C 2  (P1  P2 ) 2  z1 e1 
(3.1)
nD
z
k

ek
 
~ N 0,   k  2,・・・・・, n
D

k 1
ただし、
z1 ~ N 0, 1
2
zk
2
2





e1  (P1  P2 ) P1  P2


ei  ej i, j  1,2,・・・・・, nD
 i  j 
1   d1
 2   d2
nD
ここで、
 
C1 , C 2 :
  
P1 , P2 , P3 :
子個体を表す実数ベクトル
d2 :
親個体を表す実数ベクトル


P1 および P 2 の距離

P3 と線分 P1P2 との距離
nD :
設計変数の個数
2
z1 ~ N 0, 1 :
第 2 項に用いる正規乱数、平均 0
d1 :
 
~ N 0,  :
zk

ei :
2
2
第 3 項に用いる正規乱数、平均 0

e1 に垂直かつ線形独立な単位ベクトル
1 ,  2 :
標準偏差
,  :
標準偏差を決定するパラメータ(   0.5,   0.35 )
である。
53
3.2.3 世代交代モデル
GA による最適化では、世代交代モデルと呼ばれるものが必要である。世代交代
モデルとは、集団の中から子個体を生成するための親個体の選択(複製選択:
selection for reproduction)および生成された子個体のうち、次世代に生き残る個体
の選択(生存選択:selection for survival)を決めるものである。
本研究では、佐藤ら[49]により提案された MGG(Minimal Generation Gap)モデ
ルを世代交代モデルとして用いる。MGG モデルは、複製選択の際にランダムに親
個体を選択すること、生存選択の際にルーレット選択により最適解ではない 1 個体
を選択することから、集団の多様性保持に優れているといわれる。また、生存選択
においてある程度良好な個体が次世代へ残されるようになっており、集団の分布が
徐々に最適解がある方向へ移動するよう促しており、効率的に最適解が求められる
という性質がある。MGG モデルの詳細は 3.2.6 項 最適化の手順 において示す。
3.2.4 設計変数と目的関数
プロペラおよびターボリングの幾何形状は、以下で表現される。
・ 直径
・ 翼数
・ コード長
・ スキュー
・ レーキ
・ ピッチ分布
・ 半径方向の最大翼厚分布
・ 最大キャンバー分布(翼断面形状)
通常、直径や翼数は主機の馬力と回転数、振動面を考慮して決定される。また、
コード長やスキュー、レーキ、最大翼厚分布は強度面やキャビテーション性能を考
慮して決定されるのが一般的である。そのため、プロペラおよびターボリングの性
能は、ピッチ分布および翼断面形状によりほぼ決まるといってよい。
本最適化手法においては、翼形状最適化にあたり、プロペラ性能への影響が大き
いピッチ分布および最大キャンバー分布を設計変数とする。それ以外の幾何形状
データ、すなわちコード長やスキュー、レーキ、最大翼厚分布等は別途設定する必
54
要があり、ここでは原型となるプロペラおよびターボリングを設計し、設計変数以
外の幾何形状データは原型のものを流用する。
翼形状最適化にあたっては、基本となる翼型が必要である。ここでは、プロペラ
およびターボリングの基本翼型として、コード方向の翼厚分布が NACA66、キャン
バー分布が NACA a=0.8 の翼断面形状をすべての半径方向位置で用いる。Fig. 3.2 に
これらのコード方向の分布を示す。これらは無次元化された値であるため、実際の
値は各断面の最大翼厚および最大キャンバーを乗じたものとなる。
Thickness (NACA 66)
Camber (NACA a=0.8 Mean Line)
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
0.2
Fig. 3.2
0.4
x/C
x/c
0.6
0.8
1
Blade thickness and camber distribution of basic blade section
翼形状最適化の設計変数、すなわち半径方向のピッチ分布と最大キャンバー分布
は、Fig. 3.3 に示すとおり、それぞれ半径方向の 3 点により定義される。このとき、

実数値 GA における個体を表す実数ベクトル X は、これら 6 個の設計変数を成分

とし X(P1, P2 , P3, Cmax1, Cmax 2 , Cmax 3 ) と表される。
これらの設計変数は、初期集団生成の際はランダムに、その後は実数値 GA の交
叉法 UNDX により生成される。
Pi
Cmax i
Parabolic Curve
Design Variables
generated randomly, or by UNDX
(i  3)
(i  1)
Boss ratio
(i  2)
1.0
0.5
Fig. 3.3
Design variables
55
r/R
本最適化問題における目的関数は、プロペラ効率であり、最適化の過程で生成さ
れるターボリング付プロペラの効率は、第 2 章で開発したターボリング付プロペラ
性能計算法により評価する。
3.2.5 制約条件
本最適化問題の目的関数はプロペラ効率であるが、いくらプロペラ効率が高くて
も強度面や振動面に問題があれば採用はできない。最適化問題を解くためには、何
らかの条件を与え、最適化の方向性をある程度制限する必要がある。本最適化手法
では、プロペラ翼およびターボリング翼の形状を最適化する際の制約条件として、
推力とキャビテーション性能を選定した。なお、ここでキャビテーション性能とは
キャビテーション発生量を指す。
推力の条件は、改良プロペラの推力が原型プロペラの推力を下回らないこととす
る。ターボリング最適化の際は、原型ターボリング付プロペラの推力を制約条件と
して用いる。
キャビテーション性能の条件は、船尾変動圧力とキャビテーション性能には相関
があると考え、便宜的ではあるが、Holden の方法[50](付録参照)により求めた船
尾変動圧力振幅の 1 次の翼周波数成分の値(以下、船尾変動圧力と称す)を制約条
件とする。改良プロペラの船尾変動圧力が原型プロペラと同等ならば、キャビテー
ション性能も同等と見なす。原型プロペラの船尾変動圧力を計算し、その値を上限
値とする。なお、キャビテーション性能の低下を許容してでもプロペラの性能を向
上させたい場合は、船尾変動圧力の上限値を上回る値を制約条件として設定する。
56
3.2.6 最適化の手順
世代交代モデルである MGG モデルの概要を Fig. 3.4 に示す。
Step 2
Step 4
Step 3
Step 1
Fig. 3.4
MGG model
MGG モデルに従い、実際に行われる翼形状最適化の手順は次の 4 ステップで表
される。
[ステップ 1]
初期集団の生成
設計変数をランダムに生成することにより、翼の半径方向のピッチ分布および最
大キャンバー分布を生成し、プロペラの幾何形状データを作成する。このとき、プ
ロペラ翼およびターボリング翼の半径方向のコード長、スキュー、レーキ、最大翼
厚分布は原型のものを流用する。
第 2 章で述べた SQCM を用いたプロペラ性能計算法により、プロペラ性能を計
算する。また、Holden の方法により船尾変動圧力を計算する。ある個体(改良プロ
ペラ)が推力およびキャビテーションの両方の制約条件を満足していれば、この個
体は初期集団に加えられる。この制約条件を満たす個体(改良プロペラ)の数が
N P 個になるまで上記の手順を繰り返す。
57
[ステップ 2]
複製選択
交叉(子の生成)のため、一対の親(両親)を集団からランダムに選ぶ。
[ステップ 3]
交叉
ステップ 2 で選ばれた両親から、UNDX により 2 個の子個体を生成する。それ
らについて、性能計算および制約条件の確認を行う。制約条件を満足している場合、
そのプロペラは次のステップでの評価対象として選定される。制約条件を満たす子
個体の数が 2  N C 個になるまで上記の手順を繰り返す。
[ステップ 4]
生存選択
ステップ 2 で選ばれた両親およびステップ 3 で生成された 2  N C 個の子個体
の中から 2 個の個体を選ぶ。最も性能が良い(目的関数が最大である)個体と、そ
れを除く 2  NC  1 個の個体の中からルーレット選択により選ばれたものである。
これら 2 個の個体を、ステップ 2 で選ばれた両親と置き換える。ステップ 2 から 4
を繰り返し、プロペラ効率が収束するまで計算を行う。
なお、ターボリングの翼形状最適化の場合は、制約条件を原型ターボリング付プ
ロペラの推力とし、改良ターボリングとプロペラの推力の和が制約条件を満たすか
どうかにより評価する。
58
3.3 ターボリング付単純形状プロペラの改良
3.3.1 翼形状最適化の方針
3.2 節で述べた実数値 GA を用いた翼形状最適化手法の検証のため、第 2 章で設
計した単純形状プロペラと原型ターボリングの改良を試みた。翼形状最適化は以下
の 3 ケースについて実施した。
(1) ターボリングが装備されない単純形状プロペラ(原型プロペラ)の翼形状の
単独最適化
(2) 単純形状プロペラに装備された原型ターボリングの翼形状の単独最適化
(3) 単純形状プロペラに原型ターボリングが装備された状態でのプロペラおよ
びターボリング翼形状の同時最適化
(2)のターボリング翼形状の単独最適化では、プロペラおよびターボリングの翼
間干渉影響が考慮されているにもかかわらず、プロペラの翼形状が変化しないため、
ターボリング付プロペラの性能向上が限定的なものになる可能性がある。そこで、
(3)のように、プロペラ翼形状およびターボリング翼形状の両方を同時に変化させ
ることで、ターボリング付プロペラのさらなる性能向上が期待される。
原型プロペラ、原型ターボリングおよび上記の翼形状最適化により得られた改良
プロペラおよび改良ターボリングの名称を Table 3.1 のように定義する。
59
Table 3.1 Definition of propeller and Turbo-Ring
PO
Original propeller
PI
Improved propeller
TO
Original Turbo-Ring
TI
Improved Turbo-Ring
PIS ,
Improved propeller and Turbo-Ring
TIS
obtained by simultaneous optimization
(1)
(2)
(3)
翼形状最適化における制約条件は、それぞれ以下のように設定した。なお、翼形
状最適化は、乱数のシードを変えて複数実施しており、最も性能が良いものを採用
した。翼形状最適化により得られたプロペラおよびターボリングの性能は、原型プ
ロペラの設計点(J=0.4)におけるプロペラ効率で評価した。
(1) プロペラ翼形状の単独最適化
改良プロペラ翼の推力が原型プロペラ翼の推力以上となること。
(2) ターボリング翼形状の単独最適化
改良ターボリング付プロペラの推力が原型ターボリング付プロペラの推力
以上となること。
(3) プロペラ翼およびターボリング翼形状の同時最適化
改良プロペラ翼、改良ターボリング翼およびハブの推力の和が、原型プロペ
ラ翼、原型ターボリング翼およびハブの推力の和以上となること。
60
3.3.2 翼形状最適化の結果
原型プロペラおよび改良プロペラのピッチおよび最大キャンバーの分布を
Fig. 3.5 に示す。原型プロペラ PO のピッチ分布が一定であるのに対し、改良プロペ
ラ PI(単独最適化)および PIS(同時最適化)の翼根部のピッチはともに大きくなっ
ている。また、改良プロペラ PI(単独最適化)の最大キャンバーは、翼根部付近で
は原型プロペラ PO とは逆向きとなっており、改良プロペラ PIS(同時最適化)の
キャンバーは、翼根部ではほとんどゼロとなっている。
原型ターボリングおよび改良ターボリングのピッチと最大キャンバーの分布を
Fig. 3.6 に示す。原型ターボリング TO のピッチ分布が直線であるのに対し、改良
ターボリング TI(単独最適化)のピッチ分布は、翼根部と翼先端で小さく、翼の中
央付近では大きくなる弓なりのピッチ分布となっている。改良ターボリング TIS(同
時最適化)のピッチ分布も、改良ターボリング TI(単独最適化)のものとほぼ同じ
傾向である。一方、最大キャンバー分布は、カーブの傾向に違いはあるが、翼根部
ほどキャンバーが大きくなるという傾向はすべてのターボリングで一致しており、
ピッチ分布ほどの差異は見られない。
61
1
PO
PI
PIS
0.8
r/R
0.6
0.4
0.2
0
0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1
-0.05
0
0.05
0.1
Maximum Camber/c
Pitch Ratio
Fig. 3.5 Pitch and maximum camber distribution of a propeller
(Left : Pitch, Right : Maximum camber)
TO
TI
TIS
1
r/R
0.8
0.6
0.4
0
1
2
-0.15
3
-0.1
-0.05
Maximum Camber/c
Pitch Ratio
Fig. 3.6 Pitch and maximum camber distribution of a Turbo-Ring
(Left : Pitch, Right : Maximum camber)
62
0
Fig. 3.7 から Fig. 3.11 は、プロペラ翼形状の単独最適化の計算結果である。
Fig. 3.7 は、GA による最適化の履歴であり、横軸は SQCM による性能評価の回数
である。
Fig. 3.8 は、性能計算結果である。プロペラ翼形状の単独最適化の際、制約条件
として推力が原型プロペラ以上となるよう設定したとおり、計算結果では、改良プ
ロペラの推力が増加している。プロペラが改良されたことでハブ渦が弱まり、ハブ
に働く抵抗が低減されたため、見かけ上推力が増加したと考えられる。プロペラの
改良によりトルクは減少しており、プロペラ効率が向上している。
Fig. 3.9 に推力およびトルクの成分の計算結果を示す。上図はプロペラ翼の推力
およびトルク、下図はハブの推力である。なお、ハブのトルクはほとんどゼロであ
るため、ここでは図示しない。改良プロペラ翼の推力は原型プロペラ翼とほぼ同程
度であるが、トルクが減少している。また、原型プロペラのハブには逆向きの推力
が働いているが、改良プロペラのハブには推進方向の力が働いている。これは、ハ
ブ渦が弱められ、抵抗が低減したことを意味する。
Fig. 3.10 はプロペラの設計点 J=0.4 におけるプロペラ翼の半径方向の推力分布、
Fig. 3.11 はトルク分布である。改良プロペラの推力およびトルクは、0.6R から 0.7R
を境にして、翼端では増加、翼根付近では減少していることが分かる。
63
ηO(PI) / ηO(PO)
1.06
1.04
1.02
1.00
0.98
0.96
0
Fig. 3.7
20000
40000
60000
Number of evaluation
History of propeller efficiency (Improved propeller)
64
0.24
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ
0.18
KT
0.16
PO
PI
0.14
0.12
0.3
0.4
J
0.5
0.70
ηO
0.60
0.50
PO
PI
0.40
Fig. 3.8
0.3
0.4
J
0.5
Calculated results of propeller characteristics (Improved propeller)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
65
0.24
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ-P
0.18
KT-P
0.16
PO
PI
0.14
0.12
0.4
0.5
J
HUB
KT-HUB
KT,10KQ
0.00
0.3
PO
PI
-0.01
0.3
Fig. 3.9
0.4
J
Thrust and torque components (Improved propeller)
(Upper : propeller blade, Lower : hub)
66
0.5
dKT/d(r/R)/K T(PO)
2
1
PO
PI
0
0.2
Fig. 3.10
0.4
0.6
0.8 r/R
1
Thrust distribution in radial direction (Improved propeller : J=0.4)
dKQ/d(r/R)/K Q(PO)
2
1
PO
PI
0
0.2
0.4
0.6
0.8 r/R
Fig. 3.11 Torque distribution in radial direction (Improved propeller : J=0.4)
67
1
原型プロペラおよび翼形状を単独最適化した改良プロペラの圧力分布の計算結
果を Fig. 3.12 に示す。原型プロペラではボスキャップ後端でハブ渦による負圧が
見られるが、改良プロペラでは負圧が小さくなっていることが分かる。Fig. 3.13 に
ハブ表面での流線形状を示す。プロペラ翼形状の最適化により、ボスキャップ後端
の渦が弱められていることが分かる。
Fig. 3.12 Pressure distribution(J=0.4)
(Left : Original propeller, PO, Right : Improved propeller, PI)
Fig. 3.13
Stream lines on a boss cap(J=0.4)
(Left : Original propeller, PO, Right : Improved propeller, PI)
68
Fig. 3.14 に後流渦面形状の計算結果を示す。プロペラ翼形状の最適化により、プ
ロペラ翼根部の後流渦面のピッチが異なっていることが分かる。
Fig. 3.14 Comparison of deformed wake(J=0.4)
(Upper : Original propeller, PO, Lower : Improved propeller, PI)
69
Fig. 3.15 から Fig. 3.21 は、原型プロペラに装備したターボリングの翼形状の単独
最適化の計算結果である。Fig. 3.15 は、GA による最適化の履歴であり、横軸は
SQCM による性能評価の回数である。
Fig. 3.16 は、性能計算結果である。なお、原型および改良ターボリングは、いず
れも原型プロペラに取り付けられている。原型ターボリング付プロペラの推力は、
原型プロペラ単独と同程度であるのに対し、改良ターボリング付プロペラの推力は
増加している。また、改良ターボリング付プロペラのトルクは原型ターボリング付
プロペラのトルクよりもわずかに増加している。なお、いずれのターボリングも、
装備することでプロペラ単独よりもトルクを低減している。プロペラ効率は改良
ターボリング付プロペラが最も高く、翼形状最適化の効果が得られている。
Fig. 3.17 に推力およびトルクの成分の計算結果を示す。上図はプロペラ翼の推力
およびトルク、下図はターボリング翼の推力およびトルク、ハブの推力である。プ
ロペラ翼の推力およびトルクは、ターボリングを装備することで増加する。改良
ターボリングを装備した場合は、原型ターボリングを装備した場合に比べ推力およ
びトルクの増加量は小さい。原型および改良ターボリング翼はともにプロペラとは
逆向きの推力、トルクを生じるが、改良ターボリング翼の方が、逆向きの推力、ト
ルクは小さい。また、トルクの減少率に比べ推力の減少率が大きく、効率向上に寄
与していると考えられる。また、ターボリングを装備することで、ハブに働く逆向
きの推力が減少しており、ターボリングによりハブ渦が弱められていることが分か
る。
Fig. 3.18 はプロペラの設計点 J=0.4 におけるターボリング付プロペラの半径方向
の推力分布、Fig. 3.19 はトルク分布である。ターボリングを装備すると、ターボリ
ング翼があるプロペラ翼の半径方向 0.4R までの推力およびトルクが低下している
ことが分かる。原型ターボリングでは顕著であるが、改良ターボリングではその傾
向が抑えられている。
Fig. 3.20 はプロペラの設計点 J=0.4 におけるプロペラ翼およびターボリング翼そ
れぞれの半径方向の推力分布、Fig. 3.21 はトルク分布である。ターボリングを装備
することで、翼根付近のプロペラ自体の推力およびトルクは増加している。一方、
ターボリングは負の推力およびトルクを生じている。原型ターボリングと比較する
と、改良ターボリングが生じる負の推力およびトルクは小さく、また推力の減少率
よりトルクの減少率が大きいため、プロペラ効率が向上していると考えられる。
70
ηO(PO+TI) /ηO(PO)
1.06
1.04
1.02
1
0.98
0.96
0
10000 20000 30000
Number of evaluation
Fig. 3.15 History of propeller efficiency (Improved Turbo-Ring)
71
40000
0.24
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ
0.18
KT
0.16
PO
PO+TO
PO+TI
0.14
0.12
0.3
0.4
0.5
J
0.70
ηO
0.60
0.50
0.40
PO
PO+TO
PO+TI
0.3
0.4
J
0.5
Fig. 3.16 Calculated results of propeller characteristics (Improved Turbo-Ring)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
72
0.24
0.22
10KQ-P
KT,10KQ
0.20
0.18
KT-P
0.16
PO
PO+TO
PO+TI
0.14
0.12
0.3
0.4
0.5
J
HUB
KT-HUB
KT,10KQ
0.00
PO
PO+TO
PO+TI
TURBO-RING
-0.01
10KQ-TR
KT-TR
0.3
Fig. 3.17
0.4
J
0.5
Thrust and torque components (Improved Turbo-Ring)
(Upper : propeller blade, Lower : Turbo-Ring blade and hub)
73
dKT/d(r/R)/K T(PO)
2
1
PO
PO+TO
PO+TI
0
0.2
Fig. 3.18
0.4
0.6
0.8 r/R
1
Thrust distribution in radial direction with Turbo-Ring (Improved Turbo-Ring : J=0.4)
dKQ/d(r/R)/K Q(PO)
2
1
PO
PO+TO
PO+TI
0
0.2
0.4
0.6
0.8 r/R
1
Fig. 3.19 Torque distribution in radial direction with Turbo-Ring (Improved Turbo-Ring : J=0.4)
74
dKT/d(r/R)/K T(PO)
2
PO
PO w/ TO
PO w/ TI
1
0
TO
TI
0.2
Fig. 3.20
0.4
0.6
0.8 r/R
1
Thrust distribution in radial direction (Improved Turbo-Ring : J=0.4)
dKQ/d(r/R)/K Q(PO)
2
PO
PO w/ TO
PO w/ TI
1
0
TO
TI
0.2
0.4
0.6
0.8 r/R
Fig. 3.21 Torque distribution in radial direction (Improved Turbo-Ring : J=0.4)
75
1
Fig. 3.22 に原型プロペラ、原型ターボリング付プロペラおよび改良ターボリング
付プロペラの圧力分布の計算結果を示す。プロペラ単独の場合、ボスキャップ後端
でハブ渦による大きな負圧が見られるが、ターボリングが装備されることにより、
負圧が小さくなっていることが分かる。また、原型ターボリングと改良ターボリン
グとを比較すると、改良ターボリングの翼表面の負圧がわずかではあるが低減して
おり、逆向きの推力の発生が抑えられていることが分かる。
Fig. 3.22 Pressure distribution(J=0.4)
(Upper : Original propeller, PO, Lower left : PO with original TR, TO,
Lower right : PO with Improved TR, TI)
76
Fig. 3.23 に、ハブ表面の流線形状を示す。ターボリング装備により、ボスキャッ
プ後端で渦が生成されにくくなっている。ターボリング翼形状の最適化により、ボ
スキャップ後端で渦がさらに弱められていることが分かる。
Fig. 3.23 Stream lines on a boss cap(J=0.4)
(Upper : Original propeller, PO, Lower left : PO with original TR, TO,
Lower right : PO with Improved TR, TI)
Fig. 3.24 に後流渦面形状の計算結果を示す。ターボリング翼形状の最適化により、
翼根部の後流渦面のピッチが異なっていることが分かる。
77
Fig. 3.24 Comparison of deformed wake(J=0.4)
(Upper : Original propeller, PO, Middle : PO with original TR, TO,
Lower : PO with Improved TR, TI)
78
Fig. 3.25 から Fig. 3.31 は、原型プロペラ翼形状およびターボリング翼形状の同時
最適化の計算結果である。Fig. 3.25 は、GA による最適化の履歴であり、横軸は
SQCM による性能評価の回数である。
Fig. 3.26 は、性能計算結果である。原型プロペラ単独と比較すると、推力はほと
んど変化していないが、トルクが大きく減少しており、ターボリング付プロペラの
効率が向上している。Fig. 3.27 に推力およびトルクの成分の計算結果を示す。上図
はプロペラ翼の推力およびトルク、下図はターボリング翼の推力およびトルク、ハ
ブの推力である。ターボリング翼と同時に最適化したプロペラ翼の推力は、原型プ
ロペラ翼より増加している。また、トルクは原型プロペラ翼よりも減少しており、
プロペラの効率が向上していることが分かる。ターボリング翼が生じる推力および
トルクはともにプロペラ翼と逆向きであるが、推力の減少率よりもトルクの減少率
の方が大きく、効率向上に寄与していることが分かる。また、ターボリングにより
ハブ渦が弱められており、ターボリング付プロペラの性能が向上していることが分
かる。
Fig. 3.28 はプロペラの設計点 J=0.4 におけるターボリング付プロペラの半径方向
の推力分布、Fig. 3.29 はトルク分布である。プロペラ翼およびターボリング翼を同
時に最適化すると、プロペラ翼の半径方向 0.4R から先では推力はほとんど変化し
ていないが、トルクが減少しており、そのためプロペラ効率が向上していると考え
られる。また、ターボリングの影響によるとみられる翼根付近の推力およびトルク
の減少があるが、Fig. 3.18 や Fig. 3.19 と比較すると、半径方向 0.4R における不連
続が軽減されている。
Fig. 3.30 はプロペラの設計点 J=0.4 におけるプロペラ翼およびターボリング翼そ
れぞれの半径方向の推力分布、Fig. 3.31 はトルク分布である。改良プロペラ翼の推
力およびトルクは、翼根付近では原型プロペラ翼よりも増加しているが、ターボリ
ング翼が生じる負の推力およびトルクにより打ち消されていることが分かる。
79
ηO(PIS+TIS) /ηO (PO)
1.06
1.04
1.02
1.00
0.98
0.96
0
20000 40000 60000 80000
Number of evaluation
Fig. 3.25 History of propeller efficiency (Improved prop. & Turbo-Ring)
80
0.24
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ
0.18
KT
0.16
PO
PIS +TIS
0.14
0.12
0.3
0.4
0.5
J
0.70
ηO
0.60
0.50
PO
PIS +TIS
0.40
0.3
0.4
J
0.5
Fig. 3.26 Calculated results of propeller characteristics (Improved prop. & Turbo-Ring)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
81
0.24
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ-P
0.18
KT-P
0.16
PO
PIS +TIS
0.14
0.12
0.3
0.4
J
0.5
HUB
KT-HUB
KT,10KQ
0.00
KT-TR
TURBO-RING
10KQ-TR
-0.01
PO
PIS+TIS
0.3
Fig. 3.27
0.4
J
0.5
Thrust and torque components (Improved prop. & Turbo-Ring)
(Upper : propeller blade, Lower : Turbo-Ring blade and hub)
82
dKT/d(r/R)/K T(PO)
2
PO
PIS+TIS
1
0
0.2
Fig. 3.28
0.4
0.6
0.8 r/R
1
Thrust distribution in radial direction with Turbo-Ring
(Improved prop. & Turbo-Ring : J=0.4)
dKQ/d(r/R)/K Q(PO)
2
PO
PIS+TIS
1
0
0.2
0.4
0.6
0.8 r/R
Fig. 3.29 Torque distribution in radial direction with Turbo-Ring
(Improved prop. & Turbo-Ring : J=0.4)
83
1
dKT/d(r/R)/K T(PO)
2
PO
PIS w/ TIS
1
0
TIS
0.2
0.4
0.6
0.8 r/R
1
Fig. 3.30 Thrust distribution in radial direction (Improved prop. & Turbo-Ring : J=0.4)
dKQ/d(r/R)/K Q(PO)
2
PO
PIS w/ TIS
1
0
TIS
0.2
0.4
0.6
0.8 r/R
1
Fig. 3.31 Torque distribution in radial direction (Improved prop. & Turbo-Ring : J=0.4)
84
3.3.3 実験結果との比較
前述の改良プロペラおよび改良ターボリングについて、(一財)日本造船技術セ
ンターの曳航水槽において逆 POT を実施した。プロペラおよびターボリングの写
真を Fig. 3.32 から Fig. 3.34 に示す。
Fig. 3.32 Propeller models
(Left : Improved propeller, Right : Original propeller with Improved Turbo-Ring, TI)
Fig. 3.33
Turbo-Ring models
(Left : Original Turbo-Ring, Right : Improved Turbo-Ring, TI)
Fig. 3.34
Turbo-Ring models
(Left : Original Turbo-Ring, Right : Improved Turbo-Ring, TI)
85
計算結果および実験結果の比較を、Fig. 3.35 から Fig. 3.37 に示す。
Fig. 3.35 は、プロペラ翼形状の単独最適化の結果である。プロペラ翼形状の単独
最適化にあたり、改良プロペラの推力が原型プロペラの推力を下回らないよう制約
条件を与えていたが、実験結果では改良プロペラの推力が約 1.7%低下している。
推力低下の原因については、今後調査が必要であるが、次章ではプロペラ翼形状を
最適化する際に制約条件として与える推力の見直しを行う等の対策をとることで
対応する。
計算結果および実験結果を比較すると、原型プロペラの推力、トルクおよび効率
は、実験結果の方がわずかに高めとなっているが、定性的には概ね一致している。
一方、改良プロペラの実験結果は、計算結果に対し推力、トルクが低下しており、
特にトルクの低下量が大きい。最適化により改良プロペラの効率は向上しているが、
改良プロペラの性能推定精度には疑問が残る。
Fig. 3.36 は、ターボリング翼形状の単独最適化の結果である。原型および改良の
いずれのターボリングも装備することにより、トルクは減少するが、改良ターボリ
ング付プロペラの方がトルクはやや高めである。また、推力も改良ターボリング付
プロペラの方が原型ターボリング付プロペラよりやや高めであるが、計算結果に見
られるような明確な差はなく、効率はほぼ同等となっている。計算結果および実験
結果を比較すると、原型ターボリング付プロペラの推力およびトルクの実験結果は、
計算結果よりわずかに高めであるが、効率はほぼ等しい。一方、改良ターボリング
付プロペラの推力は計算結果と実験結果とで同等であり、トルクが計算結果より高
めとなっているため、効率は計算結果よりも低下している。しかし、原型ターボリ
ング付プロペラの効率と比較すると同等以上であり、最適化によるターボリング改
良の効果は得られている。
Fig. 3.37 は、原型プロペラ翼形状および原型ターボリング翼形状の同時最適化の
結果である。計算結果とは異なり、同時最適化したターボリング付プロペラの推力
が原型プロペラよりも減少している。トルクの減少が大きいため、原型プロペラ単
独よりも効率は向上しているが、計算結果と比較すると効率の向上量は少ない。
本最適化手法を用いてプロペラ翼形状を最適化すると、実験結果では推力が不足
することを確認した。原因は不明であり、今後調査が必要であるが、次章では推力
の低下をあらかじめ見込んで、制約条件として与える推力を大きめに設定すること
で対応する。
86
0.24
0.22
10KQ
KT,10KQ
0.20
0.18
0.16
KT
Cal. Exp.
0.14
0.12
PO
PI
0.3
0.4
J
0.5
0.70
ηO
0.60
0.50
0.40
Cal. Exp.
0.3
0.4
J
PO
PI
0.5
Fig. 3.35 Comparison of propeller characteristics (Improved propeller)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
87
0.24
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ
0.18
0.16
KT
Cal. Exp.
0.14
0.12
PO
PO+TO
PO+TI
0.3
0.4
J
0.5
0.70
ηO
0.60
Cal. Exp.
0.50
0.40
0.3
0.4
J
PO
PO+TO
PO+TI
0.5
Fig. 3.36 Comparison of propeller characteristics (Improved Turbo-Ring)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
88
0.24
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ
0.18
0.16
KT
Cal. Exp.
0.14
0.12
PO
PIS +TIS
0.3
0.4
0.5
J
0.70
ηO
0.60
0.50
0.40
Cal. Exp.
0.3
0.4
PO
PIS +TIS
J
0.5
Fig. 3.37 Comparison of propeller characteristics (Improved prop. and Turbo-Ring)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
89
3.3.4 性能向上の確認
プロペラおよびターボリングの翼形状最適化によるプロペラ効率の向上率を示
す。プロペラ効率の向上率は、原型プロペラ単独のプロペラ効率に対する比率であ
る。
Table 3.2 および Fig. 3.38 は、それぞれの性能計算結果をまとめたもの、Table 3.3
および Fig. 3.39 はそれぞれの実験結果をまとめたものである。なお、結果はすべて
原型プロペラの設計点(J=0.4)における KT/J2 での値であり、計算結果の KT/J2=1.0455、
実験結果の KT/J2=1.0581 である。
[計算結果]
・プロペラ翼形状の単独最適化
:3.5%向上
・原型ターボリングを装備
:2.4%向上
・ターボリング翼形状の単独最適化:3.4%向上
(原型ターボリング付プロペラから 1.0%向上)
・同時最適化
:4.9%向上
[実験結果]
・プロペラ翼形状の単独最適化
:2.7%向上
・原型ターボリングを装備
:1.6%向上
・ターボリング翼形状の単独最適化:1.9%向上
(原型ターボリング付プロペラから 0.3%向上)
・同時最適化
:2.4%向上
実験結果では、改良ターボリング付プロペラの効率は、原型ターボリング付プロ
ペラより 0.3%向上しているが、これは計算結果と比較すると少なめである。
計算結果では、プロペラ翼形状およびターボリング翼形状の同時最適化により最
も効率が向上していたが、実験結果では、プロペラ翼形状の単独最適化により最も
効率が向上している。また、ターボリングのみを改良するよりも、プロペラを改良
する方が効率向上のためには効果的であることを確認した。
90
Table 3.2 Calculated results
KT
KQ
O
O / O (PO )
PO
0.1673
0.01970
0.5405
―
PI
0.1691
0.01935
0.5593
1.035
PO+TO
0.1672
0.01922
0.5536
1.024
PO+TI
0.1683
0.01925
0.5585
1.034
PIS+TIS
0.1672
0.01877
0.5671
1.049
Table 3.3 Experimental results
KT
KQ
O
O / O (PO )
PO
0.1693
0.01980
0.5444
―
PI
0.1673
0.01894
0.5593
1.027
PO+TO
0.1690
0.01943
0.5533
1.016
PO+TI
0.1696
0.01949
0.5544
1.019
PIS+TIS
0.1658
0.01874
0.5573
1.024
91
0.58
PO
PI
PO+TO
PO+TI
PIS+TIS
0.57
0.55
0.54
0.53
0.52
Design Point
ηO
0.56
1
1.5
KT /J2
Fig. 3.38 Comparison of propeller efficiency (Calculation)
0.58
PO
PI
PO+TO
PO+TI
PIS+TIS
0.57
0.55
0.54
0.53
0.52
Design Point
ηO
0.56
1
KT /J2
Fig. 3.39 Comparison of propeller efficiency (Experiment)
92
1.5
3.4 結言
本章では、実数値遺伝的アルゴリズムを用いた翼形状最適化手法を開発し、単純
形状プロペラおよび原型ターボリングの翼形状最適化を実施した。本最適化手法に
よりターボリング付プロペラの性能が向上することを確認するため、曳航水槽にお
いて実験を行った。その結果、以下のことを確認した。
1) 本最適化手法により、プロペラおよびターボリングを改良することで、性
能を向上させることができることを確認した。
2) 推力およびトルクは実験結果と計算結果とで差異があるが、効率は精度良
く推定できることを確認した。
実数値 GA を用いた翼形状最適化により、ターボリング付プロペラの性能を向上
させることができることが確認された。しかし、計算結果と実験結果との間には差
異があることや、実験においてはプロペラ翼形状を最適化すると推力が低下する等、
いくつか問題があることも確認された。原因については、今後さらに調査する必要
がある。
また、実験結果では、プロペラおよびターボリングの翼形状を同時最適化した
ターボリング付プロペラの性能が、改良プロペラ単独の性能よりも悪く、計算結果
と異なっている。その原因についても、今後調査する必要がある。
さらに、実験結果から、以下のことが考えられる。
1) ターボリング付プロペラの性能向上のためには、ターボリングの改良だけ
では効果が少なく、プロペラ自体の改良が必須である。
2) 改良プロペラに改良ターボリングを取り付けることで、さらなる性能向上
の可能性がある。
上記の知見に基づき、次章では実船プロペラおよびターボリングを改良する。
93
第4章
実船プロペラおよびターボリングの
改良
4.1 緒言
第 3 章では、実数値 GA を用いた翼形状最適化手法により、単純形状プロペラお
よびターボリングの翼形状を最適化し、性能が向上することを確認した。本章では、
この翼形状最適化手法を、実船装備を想定したプロペラおよびターボリングに適用
し改良する。実船プロペラは、基礎研究用の単純形状プロペラとは異なり、スキュー
やレーキを有する、より複雑な形状をしている。また、重量や慣性モーメント、翼
厚や翼に働く応力等、性能面以外にも考慮すべき項目が数多く存在する。実際の設
計時には、これらの項目をすべて満たす必要があり、その上で最大限に性能を向上
させなければならない。
ここでは、第 3 章において得られた知見に基づき、実船プロペラおよびターボリ
ングの翼形状最適化を実施する。改良されたターボリング付プロペラについては、
曳航水槽において実験を行い、性能を確認する。
4.2 翼形状最適化
4.2.1 翼形状最適化の方針と制約条件
本章では、第 3 章において得られた知見に基づき、最適化の手順を以下のとおり
に定めた。
Ⅰ)原型プロペラ翼形状を単独最適化し、改良プロペラを設計
Ⅱ)改良プロペラに装備する原型ターボリングを設計
Ⅲ)原型ターボリング翼形状を単独最適化し、改良ターボリングを設計
この、プロペラ翼形状およびターボリング翼形状の二段階最適化とあわせて、プ
94
ロペラ翼形状およびターボリング翼形状の同時最適化も実施する。なお、ターボリ
ング付プロペラの性能評価対象は、原型プロペラ単独の性能とする。これらの原型
プロペラ、原型ターボリングおよび上記の翼形状最適化から得られた改良プロペラ
および改良ターボリングの名称は、Table 3.1 で定義したものと同じとする。
第 3 章では、プロペラ翼形状最適化により実験においては推力が低下する問題が
あることを述べた。その原因については、今後調査を行う必要があるが、本章では、
制約条件である目標とする推力に所定の値をあらかじめ上乗せすることで、改良プ
ロペラの推力が原型プロペラの推力と同等となるようにする。なお、推力の上乗せ
量は、第 3 章で得られた結果をもとに決定した。推力の制約条件は以下のとおりで
ある。
(1) プロペラ翼形状の単独最適化
・改良プロペラの推力が原型プロペラの推力の 1.2%増し以上となること。
・ハブ抵抗についての制約は考慮しない。
(2) ターボリング翼形状の単独最適化
・改良ターボリング付プロペラの推力が原型ターボリング付プロペラの推
力以上となること。
・改良ターボリング付プロペラのハブの抵抗が、原型ターボリング付プロペ
ラの抵抗以下となること。
(3) プロペラ翼およびターボリング翼形状の同時最適化
・改良プロペラおよび改良ターボリングの推力の和が、原型プロペラおよび
原型ターボリングの推力の和の 1.8%増し以上となること。
・同時最適化したターボリング付プロペラのハブの抵抗が、原型ターボリン
グ付プロペラの抵抗以下となること。
なお、キャビテーション性能の制約条件については、第 3 章と同様に、Holden の
方法により求めた船尾変動圧力を用いる。
95
4.2.2 実船プロペラおよびターボリングの要目と最適化の結果
対象船として、新来島どっくにおいて建造したプロダクトタンカーを選定した。
最適化の対象となるプロペラの要目を Table 4.1 に示す。この原型プロペラの翼形
状を前述の最適化手法を用いて改良した。なお、翼形状最適化は、乱数のシードを
変えて複数実施しており、最も性能が良いものを採用した。翼形状最適化により得
られたプロペラおよびターボリングの性能は、原型プロペラの設計点(J=0.431)に
おけるプロペラ効率で評価した。この改良プロペラに対し、原型となるターボリン
グを設計した。原型ターボリングの要目を Table 4.2 に示す。この原型ターボリン
グの翼形状を、前述の最適化手法を用いて最適化した。
また、原型ターボリング付改良プロペラをベースに、プロペラ翼形状およびター
ボリング翼形状の同時最適化も実施した。
計算に用いたパネル分割の例として、原型ターボリング付改良プロペラのパネル
分割図を Fig. 4.1 に示す。パネル分割数は、第 2 章および第 3 章で用いた単純形状
プロペラおよびターボリングと同じである。ターボリングの翼とプロペラの翼は、
正面から見るとプロペラの回転方向にずれた状態で配置されている。このずれ角は、
従来のターボリング設計法により求められるものである。本プロペラに装備する
ターボリングは、プロペラの翼に対し、プロペラの逆回転方向に 7.4 度ずれた位置
に配置されており、プロペラおよびターボリングの翼間距離は 0.14 D ( D :プロ
ペラ直径)である。
原型および改良プロペラのピッチ分布および最大キャンバー分布を Fig. 4.2 に示
す。原型プロペラ PO のピッチ分布に対し、改良プロペラ PI(単独最適化)および
PIS(同時最適化)の翼根部のピッチは大きくなっている。また、改良プロペラ PI
(単独最適化)および改良プロペラ PIS(同時最適化)の翼根部付近のキャンバー
は、原型プロペラ PO と比較すると小さくなっている。
原型および改良ターボリングのピッチ分布および最大キャンバー分布を Fig. 4.3
に示す。原型ターボリング TO のピッチ分布が直線であるのに対し、改良ターボリ
ング T(
I 単独最適化)および改良ターボリング TIS(同時最適化)のピッチ分布は、
翼根部と翼先端で小さく、翼の中央付近では大きくなる弓なりのピッチ分布となっ
ている。一方、最大キャンバーは、原型ターボリング TO よりと比較すると全体的
に小さくなっている。
96
Table 4.1 Principal particulars of an original propeller
Diameter
Ship
Model
6.00m
0.25m
Pitch Ratio at 0.7R
0.6528
Expanded Area Ratio
0.515
Boss Ratio
0.1600
Number of Blade
4
Skew Angle
30.0deg.
Rake Angle
4.0deg.
Blade Section
MAU
Table 4.2 Principal particulars of an original Turbo-Ring
Diameter
Ship
Model
2.40m
0.10m
Pitch Ratio at 0.7R
1.3547
Expanded Area Ratio
0.250
Boss Ratio
0.3604
Number of Blade
4
Blade Section
NACA
Fig. 4.1 Panel arrangement (with a Turbo-Ring)
97
1
PO
PI
PIS
0.8
r/R
0.6
0.4
0.2
0
0.5 0.6 0.7 0.8 0.9
-0.05
0
0.05
0.1
Maximum Camber/c
Pitch Ratio
Fig. 4.2 Pitch and maximum camber distribution of a propeller
(Left : Pitch, Right : Maximum camber)
TO
TI
TIS
1
r/R
0.8
0.6
0.4
0
1
2
-0.1
3
-0.05
Maximum Camber/c
Pitch Ratio
Fig. 4.3 Pitch and maximum camber distribution of a Turbo-Ring
(Left : Pitch, Right : Maximum camber)
98
0
Fig. 4.4 から Fig. 4.8 は、プロペラ翼形状の単独最適化の計算結果である。
Fig. 4.4 は、GA による最適化の履歴であり、横軸は SQCM による性能評価の回数
である。
Fig. 4.5 は、性能計算結果である。制約条件として、推力を大きめに与えたため、
改良プロペラの推力が増加している。トルクはほとんど変化していないため、プロ
ペラ効率が向上している。
Fig. 4.6 に推力およびトルクの成分の計算結果を示す。上図はプロペラ翼の推力
およびトルク、下図はハブの推力である。なお、ハブのトルクはほとんどゼロであ
るため、ここでは図示しない。改良プロペラ翼の推力は原型プロペラ翼より増加し
ており、トルクは変化していない。また、原型プロペラのハブには逆向きの推力が
働いているが、改良プロペラではこれが低減されており、ハブ渦が弱められ、抵抗
が低減したことが分かる。
Fig. 4.7 はプロペラの設計点 J=0.431 におけるプロペラ翼の半径方向の推力分布、
Fig. 4.8 はトルク分布である。改良プロペラ翼の推力およびトルクは、0.6R から 0.7R
を境にして、翼端では増加、翼根付近では減少しているが、最適化の際に推力を大
きめに与えたため、推力の減少量は少ない。
99
ηO(PI) /ηO (PO)
1.03
1.02
1.01
1.00
0.99
0.98
0
Fig. 4.4
5000
10000 15000
Number of evaluation
History of propeller efficiency (Improved propeller)
100
20000
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ
0.18
KT
0.16
0.14
PO
PI
0.12
0.3
0.4
J
0.5
0.70
ηO
0.60
0.50
PO
PI
0.40
Fig. 4.5
0.3
0.4
J
0.5
Calculated results of propeller characteristics (Improved propeller)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
101
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ-P
0.18
KT-P
0.16
0.14
PO
PI
0.12
0.3
KT,10KQ
0.000
0.4
J
HUB
0.5
KT-HUB
-0.005
PO
PI
-0.010
0.3
Fig. 4.6
0.4
J
Thrust and torque components (Improved propeller)
(Upper : propeller blade, Lower : hub)
102
0.5
dKT/d(r/R)/K T(PO)
2
1
PO
PI 0
0.2
Fig. 4.7
0.4
0.6
0.8 r/R
1
Thrust distribution in radial direction (Improved propeller : J=0.431)
dKQ/d(r/R)/K Q(PO)
2
1
PO
PI 0
0.2
Fig. 4.8
0.4
0.6
0.8 r/R
Torque distribution in radial direction (Improved propeller : J=0.431)
103
1
原型プロペラおよび翼形状を単独最適化した改良プロペラの圧力分布の計算結
果を Fig. 4.9 に示す。原型プロペラではボスキャップ後端でハブ渦による負圧が見
られるが、改良プロペラでは負圧が小さくなっていることが分かる。Fig. 4.10 に示
すハブ表面での流線形状にあまり変化は見られないが、プロペラ翼形状の最適化に
よりボスキャップ後端で渦の強さが弱められていると考えられる。
Fig. 4.9 Pressure distribution(J=0.431)
(Left : Original propeller, PO, Right : Improved propeller, PI)
Fig. 4.10
Stream lines on a boss cap(J=0.431)
(Left : Original propeller, PO, Right : Improved propeller, PI)
104
Fig. 4.11 に後流渦面形状の計算結果を示す。プロペラ翼形状の最適化により、プ
ロペラ翼根部の後流渦面のピッチが異なっていることが分かる。
Fig. 4.11 Comparison of deformed wake(J=0.431)
(Upper : Original propeller, PO, Lower : Improved propeller, PI)
105
Fig. 4.12 から Fig. 4.18 は、改良プロペラに装備したターボリングの翼形状の単独
最適化の計算結果である。Fig. 4.12 は、GA による最適化の履歴であり、横軸は
SQCM による性能評価の回数である。
Fig. 4.13 は、性能計算結果である。ここでは、比較対象は改良プロペラとしてい
る。原型ターボリングを装備することで、推力、トルクともに減少している。トル
クの減少率の方が大きいため、効率はプロペラ単独より向上しているが、その量は
わずかである。一方、改良ターボリングを装備すると、推力はプロペラ単独とほぼ
同等で、トルクだけが減少している。原型ターボリング付プロペラと比較しても、
効率が向上している。
Fig. 4.14 に推力およびトルクの成分の計算結果を示す。上図はプロペラ翼の推力
およびトルク、下図はターボリングの推力およびトルク、ハブの推力である。プロ
ペラ翼の推力およびトルクは、ターボリングを装備することで増加する。改良ター
ボリングを装備した場合は、原型ターボリングを装備した場合に比べ推力およびト
ルクの増加量は小さい。原型および改良ターボリング翼はともにプロペラ翼とは逆
向きの推力、トルクを生じるが、改良ターボリング翼の方が、逆向きの推力、トル
クは小さい。また、改良ターボリング翼はトルクの減少率に比べ推力の減少率が大
きく、効率向上に寄与していると考えられる。ターボリングを装備することで、ハ
ブに働く逆向きの推力が減少しており、ターボリングによりハブ渦が弱められてい
ることが分かる。
Fig. 4.15 はプロペラの設計点 J=0.431 におけるターボリング付プロペラの半径方
向の推力分布、Fig. 4.16 はトルク分布である。ターボリングを装備すると、ターボ
リングの翼があるプロペラ翼の半径方向 0.4R までの推力およびトルクが低下して
いることが分かる。原型ターボリングでは顕著であるが、改良ターボリングではそ
の傾向が抑えられている。
Fig. 4.17 はプロペラの設計点 J=0.431 におけるプロペラ翼およびターボリング翼
それぞれの半径方向の推力分布、Fig. 4.18 はトルク分布である。ターボリングを装
備することで、翼根付近のプロペラ翼の推力およびトルクは増加している。一方、
ターボリング翼は負の推力およびトルクを生じている。原型ターボリング翼と比較
すると、改良ターボリング翼が生じる負の推力およびトルクは小さく、また推力の
減少率よりトルクの減少率が大きいため、プロペラ効率が向上していると考えられ
る。
106
ηO(PI+TI) /ηO (PI)
1.03
1.02
1.01
1.00
0.99
0.98
0
2000
4000
6000
Number of evaluation
Fig. 4.12 History of propeller efficiency (Improved Turbo-Ring)
107
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ
0.18
KT
0.16
PI
PI+TO
PI+TI
0.14
0.12
0.3
0.4
J
0.5
0.70
ηO
0.60
0.50
0.40
PI
PI+TO
PI+TI
0.3
0.4
J
0.5
Fig. 4.13 Calculated results of propeller characteristics (Improved Turbo-Ring)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
108
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ-P
0.18
KT-P
0.16
PI
PI+TO
PI+TI
0.14
0.12
0.3
0.4
J
0.5
HUB
KT-HUB
KT,10KQ
0.000
-0.005
TURBO-RING
-0.010
PI
PI+TO
PI+TI
KT-TR
10KQ-TR
0.3
Fig. 4.14
0.4
J
0.5
Thrust and torque components (Improved Turbo-Ring)
(Upper : propeller blade, Lower : Turbo-Ring blade and hub)
109
dKT/d(r/R)/K T(PO)
2
1
PI
PI +TO
PI +TI
0
0.2
Fig. 4.15
0.4
0.6
0.8 r/R
1
Thrust distribution in radial direction with Turbo-Ring (Improved Turbo-Ring : J=0.431)
dKQ/d(r/R)/K Q(PO)
2
1
PI
PI +TO
PI +TI
0
0.2
0.4
0.6
0.8 r/R
1
Fig. 4.16 Torque distribution in radial direction with Turbo-Ring (Improved Turbo-Ring : J=0.431)
110
dKT/d(r/R)/K T(PO)
2
PI
PI w/ TO
PI w/ TI
1
0
TO
TI
0.2
Fig. 4.17
0.4
0.6
0.8 r/R
1
Thrust distribution in radial direction (Improved Turbo-Ring : J=0.431)
dKQ/d(r/R)/K Q(PO)
2
PI
PI w/ TO
PI w/ TI
1
0
TO
TI
0.2
0.4
0.6
0.8 r/R
Fig. 4.18 Torque distribution in radial direction (Improved Turbo-Ring : J=0.431)
111
1
Fig. 4.19 に原型プロペラ、原型ターボリング付プロペラおよび改良ターボリング
付プロペラの圧力分布の計算結果を示す。原型ターボリングと改良ターボリングと
を比較すると、改良ターボリングの翼表面の負圧が低減しており、逆向きの推力の
発生が抑えられていることが分かる。
Fig. 4.19 Pressure distribution(J=0.431)
(Upper : Improved propeller, PI, Lower left : PI with original TR, TO,
Lower right : PI with Improved TR, TI)
112
Fig. 4.20 に、ハブ表面の流線形状を示す。ターボリング装備により、ボスキャッ
プ後端での渦の向きがプロペラ単独とは逆向きになっている。ターボリング翼形状
の最適化により、ボスキャップ後端で渦がさらに弱められていることが分かる。
Fig. 4.20
Stream lines on a boss cap(J=0.431)
(Upper : Improved propeller, PI, Lower left : PI with original TR, TO,
Lower right : PI with Improved TR, TI)
Fig. 4.21 に後流渦面形状の計算結果を示す。ターボリング翼形状の最適化により、
翼根部の後流渦面のピッチが異なっていることが分かる。
113
Fig. 4.21 Comparison of deformed wake(J=0.431)
(Upper : Improved propeller, PI, Middle : PI with original TR, TO,
Lower : PI with Improved TR, TI)
114
Fig. 4.22 から Fig. 4.28 は、改良プロペラ翼形状およびターボリング翼形状の同時
最適化の計算結果である。Fig. 4.22 は、GA による最適化の履歴であり、横軸は
SQCM による性能評価の回数である。水槽試験のスケジュールの都合により、計算
時間が十分に取れず、収束前に計算を打ち切っている。
Fig. 4.23 は、性能計算結果である。比較対象は改良プロペラ単独である。最適化
の際に制約条件として推力を大きめに与えたが、計算結果では推力が減少しており、
推力の上乗せ量が不十分であったと考えられる。プロペラ単独よりもトルクが減少
しているため、効率は向上している。
Fig. 4.24 に推力およびトルクの成分の計算結果を示す。上図はプロペラ翼の推力
およびトルク、下図はターボリング翼の推力およびトルク、ハブの推力である。ター
ボリングと同時に改良したプロペラ翼の推力およびトルクは、原型プロペラ翼から
ほとんど変化していない。しかしながら、ターボリング翼が生じるプロペラ翼と逆
向きの推力およびトルク、およびハブに働く抵抗が推力となっていることで、プロ
ペラ単独よりも効率が向上していると考えられる。
Fig. 4.25 はプロペラの設計点 J=0.431 におけるターボリング付プロペラの半径方
向の推力分布、Fig. 4.26 はトルク分布である。プロペラ翼およびターボリング翼を
同時に最適化すると、プロペラ翼の半径方向 0.4R から 0.8R の間で推力およびトル
クが増加している。一方、翼根付近および翼端では推力およびトルクが減少してい
る。これは、第 3 章における単純形状プロペラ翼およびターボリング翼の同時最適
化とは傾向が異なる。
また、Fig. 4.27 はプロペラの設計点 J=0.431 におけるプロペラ翼およびターボリ
ング翼それぞれの半径方向の推力分布、Fig. 4.28 はトルク分布である。ターボリン
グ翼が負の推力およびトルクを生じているため、ターボリング付プロペラの翼根付
近の推力およびトルクが減少していることが分かる。
115
ηO(PIS+TIS) /ηO (PI)
1.03
1.02
1.01
1.00
0.99
0.98
0
5000
10000
Number of evaluation
15000
Fig. 4.22 History of propeller efficiency (Improved prop. & Turbo-Ring)
116
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ
0.18
KT
0.16
0.14
PI
PIS +TIS
0.12
0.3
0.4
0.5
J
0.70
ηO
0.60
0.50
PI
PIS +TIS
0.40
0.3
0.4
J
0.5
Fig. 4.23 Calculated results of propeller characteristics (Improved prop. & Turbo-Ring)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
117
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ-P
0.18
KT-P
0.16
0.14
PI
PIS +TIS
0.12
0.3
0.4
HUB
KT-HUB
0.000
KT,10KQ
0.5
J
10KQ-TR
KT-TR
TURBO-RING
-0.005
PI
PIS+TIS
-0.010
0.3
Fig. 4.24
0.4
J
0.5
Thrust and torque components (Improved prop. & Turbo-Ring)
(Upper : propeller blade, Lower : Turbo-Ring blade and hub)
118
dKT/d(r/R)/K T(PO)
2
PI
PIS+TIS
1
0
0.2
0.4
0.6
0.8 r/R
1
Fig. 4.25 Thrust distribution in radial direction with Turbo-Ring
(Improved prop. & Turbo-Ring : J=0.431)
dKQ/d(r/R)/K Q(PO)
2
PI
PIS+TIS
1
0
0.2
0.4
0.6
0.8 r/R
Fig. 4.26 Torque distribution in radial direction with Turbo-Ring
(Improved prop. & Turbo-Ring : J=0.431)
119
1
dKT/d(r/R)/K T(PO)
2
PI
PIS w/ TIS
1
0
TIS
0.2
0.4
0.6
0.8 r/R
1
Fig. 4.27 Thrust distribution in radial direction (Improved prop. & Turbo-Ring : J=0.431)
dKQ/d(r/R)/K Q(PO)
2
PI
PIS w/ TIS
1
0
TIS
0.2
0.4
0.6
0.8 r/R
1
Fig. 4.28 Torque distribution in radial direction (Improved prop. & Turbo-Ring : J=0.431)
120
4.2.3 実験結果との比較
前述の改良プロペラおよび改良ターボリングについて、(一財)日本造船技術セ
ンターの曳航水槽において逆 POT を実施した。プロペラおよびターボリングの写
真を Fig. 4.29 から Fig. 4.31 に示す。
Fig. 4.29 Propeller models
(Left : Original propeller, Right : Improved propeller with Improved Turbo-Ring, TI)
Fig. 4.30
Turbo-Ring models
(Left : Original Turbo-Ring, Right : Improved Turbo-Ring, TI)
Fig. 4.31
Turbo-Ring models
(Left : Original Turbo-Ring, Right : Improved Turbo-Ring, TI)
121
計算結果および実験結果を比較したものを、Fig. 4.32 から Fig. 4.34 に示す。
Fig. 4.32 は、原型プロペラ翼形状の単独最適化の結果である。原型プロペラの推
力、トルクおよび効率は、計算より増加している。一方、改良プロペラでは、推力
は原型プロペラとほぼ同等、トルクは減少しており、その結果、効率は向上してい
る。計算結果と比較すると、推力はほぼ一致しているが、トルクの実験値が低めで
ある。
Fig. 4.33 は、改良プロペラに装備したターボリング翼形状の単独最適化の結果で
ある。原型ターボリングを装備すると、推力およびトルクはプロペラ単独より減少
し、効率は向上している。また、改良ターボリングを装備すると、原型ターボリン
グ付プロペラよりも推力が増加している。トルクはほとんど変化せず、効率が向上
している。計算結果と比較すると、原型ターボリング付プロペラ、改良ターボリン
グとも推力は増加し、トルクはほぼ同等である。そのため、効率はいずれも計算よ
り高めとなっている。
Fig. 4.34 は、改良プロペラ翼形状および原型ターボリング翼形状の同時最適化の
結果である。最適化の制約条件として推力を大きめに与えていたが、実験の結果、
推力が減少している。推力の上乗せ量が不十分であったと考えられる。トルクが大
幅に減少しているため、効率はプロペラ単独よりも向上しているが、推力の与え方
やトルクの推定精度に課題が残る。
122
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ
0.18
KT
0.16
0.14
Cal. Exp.
0.12
PO
PI
0.3
0.4
J
0.5
0.70
ηO
0.60
0.50
0.40
Cal. Exp.
0.3
0.4
J
PO
PI
0.5
Fig. 4.32 Comparison of propeller characteristics (Improved propeller)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
123
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ
0.18
0.16
KT
Cal. Exp.
0.14
0.12
PI
PI+TO
PI+TI
0.3
0.4
J
0.5
0.70
ηO
0.60
Cal. Exp.
0.50
0.40
0.3
0.4
J
PI
PI+TO
PI+TI
0.5
Fig. 4.33 Comparison of propeller characteristics (Improved Turbo-Ring)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
124
0.22
KT,10KQ
0.20
10KQ
0.18
KT
0.16
0.14
Cal. Exp.
0.12
PI
PIS +TIS
0.3
0.4
0.5
J
0.70
ηO
0.60
0.50
0.40
Cal. Exp.
0.3
0.4
PI
PIS +TIS
J
0.5
Fig. 4.34 Comparison of propeller characteristics (Improved prop. & Turbo-Ring)
(Upper : KT and 10KQ, Lower : propeller efficiency)
125
4.2.4 性能向上の確認
プロペラおよびターボリングの翼形状最適化によるプロペラ効率の向上率を示
す。プロペラ効率の向上率は、原型プロペラ単独のプロペラ効率に対する比率であ
る。
Table 4.3 および Fig. 4.35 は、それぞれの性能計算結果を まとめたもの、
Table 4.4 および Fig. 4.36 は、それぞれの実験結果をまとめたものである。なお、結
果はすべて原型プロペラの設計点(J=0.431)における KT/J2 での値であり、計算結
果の KT/J2=0.7923、実験結果の KT/J2=0.8146 である。
[計算結果]
・プロペラ翼形状の単独最適化
:2.4%向上
・原型ターボリングを装備
:2.0%向上
・ターボリング翼形状の単独最適化:3.3%向上
(原型ターボリング付プロペラから 1.3%向上)
・同時最適化
:3.1%向上
[実験結果]
・プロペラ翼形状の単独最適化
:1.3%向上
・原型ターボリングを装備
:1.5%向上
・ターボリング翼形状の単独最適化:3.2%向上
(原型ターボリング付プロペラから 1.7%向上)
・同時最適化
:2.0%向上
プロペラ翼形状を最適化することで、プロペラの性能が向上することを確認した。
しかし、原型ターボリングを改良プロペラに装備しても、改良プロペラ単独に対し
0.2%しか効率が向上しておらず、従来の設計法により設計された原型ターボリン
グを改良プロペラに装備しても、得られる効果は非常に小さいことが分かった。一
方、ターボリング翼形状を最適化すると、改良プロペラに装備してもターボリング
付プロペラの性能が向上することを確認した。また、プロペラ翼形状およびターボ
リング翼形状の同時最適化の実験による効率向上量は、計算と比較すると少なめで
あり、これは第 3 章の単純形状プロペラと同じ傾向である。
126
実船プロペラおよびターボリングの改良の結果、はじめにプロペラを改良し、次
にその改良プロペラ用のターボリングを改良する二段階最適化を行うことで、ター
ボリング付プロペラの性能が向上することを確認した。
127
Table 4.3 Calculated results
KT
KQ
O
O / O (PO )
PO
0.1472
0.01759
0.5739
―
PI
0.1492
0.01752
0.5879
1.024
PI+TO
0.1467
0.01716
0.5853
1.020
PI+TI
0.1488
0.01731
0.5929
1.033
PIS+TIS
0.1485
0.01730
0.5914
1.031
Table 4.4 Experimental results
KT
KQ
O
O / O (PO )
PO
0.1513
0.01776
0.5843
―
PI
0.1511
0.01750
0.5917
1.013
PI+TO
0.1499
0.01726
0.5930
1.015
PI+TI
0.1523
0.01738
0.6029
1.032
PIS+TIS
0.1486
0.01694
0.5962
1.020
128
0.61
PO
PI
PI+TO
PI+TI
PIS+TIS
0.59
0.58
0.57
0.56
0.5
Design Point
ηO
0.60
1
KT /J2
Fig. 4.35 Comparison of propeller efficiency (Calculation)
0.61
PO
PI
PI+TO
PI+TI
PIS+TIS
0.59
0.58
0.57
0.56
0.5
Design Point
ηO
0.60
1
Fig. 4.36 Comparison of propeller efficiency (Experiment)
129
KT /J2
4.3 結言
本章では、実船装備を想定したプロペラおよびターボリングについて、実数値遺
伝的アルゴリズムを用いた最適化手法を適用し、改良した。さらに、曳航水槽にお
ける実験によりその効果を確認した。その結果、以下のことを確認した。
1) 実験の結果、改良プロペラおよび改良ターボリングは、原型より性能が向
上していることを確認した。
2) はじめにプロペラ翼を最適化し、その後ターボリング翼を最適化する二段
階最適化により、従来よりもターボリング付プロペラの性能を向上させる
ことができることを確認した。
3) 改良プロペラに従来の設計法で設計したターボリングを装備してもあま
り効果は得られないが、ターボリング翼形状を最適化することで、改良プ
ロペラに装備しても効果が得られることを確認した。
実数値 GA を用いた翼形状最適化により、実船ターボリング付プロペラの性能を
向上させることができることが確認された。しかし、第 3 章の単純形状プロペラと
同様に、計算結果と実験結果との間には差異があることや、プロペラ翼およびター
ボリング翼の同時最適化の実験結果が改良プロペラ単独よりも性能が悪く、計算結
果と異なっていることが確認された。その原因についても、今後調査する必要があ
る。
130
第5章
結論
本研究では、プロペラおよびプロペラに装備する省エネ装置であるターボリング
の翼形状を最適化し、性能を向上させることを目的とした。プロペラおよびターボ
リングの翼形状を最適化するために、実数値遺伝的アルゴリズムを用いた翼形状最
適化手法を開発した。翼形状最適化の過程で生成されるプロペラおよびターボリン
グ付プロペラの性能を評価するために、簡便なパネル法 SQCM にハブ渦モデルを
組み込んだ性能計算法を開発した。計算結果を曳航水槽による実験結果と比較検証
をすることで、本最適化手法の有効性を確認した。また、実船装備を想定したプロ
ペラ翼およびターボリング翼の翼形状最適化を行い、ターボリング付プロペラの性
能向上を確認した。
本研究で得られた結論は以下の通りである。
第 1 章では本研究の必要性ならびに関連する研究の経緯について概説し、ターボ
リング付プロペラの性能計算法および実数値遺伝的アルゴリズムを用いた翼形状
最適化手法の構築において重要な課題を示した。
第 2 章では SQCM にハブ渦モデルを組み込んだターボリング付プロペラの性能
計算法を提案した。本計算法は、プロペラ後流中のターボリングに流入する複雑な
流れやハブ渦の強さ、ボスキャップに作用する抵抗等を厳密に取り扱い、プロペラ
およびターボリングの翼間干渉影響を算定するものである。
本計算法を用いて、原型プロペラおよび原型ターボリングについて性能計算を
行った。さらに、ターボリング形状の違いによる性能の差異が表現できるかを確認
するため、翼形状を変化させたターボリングについて性能計算を行った。これらの
プロペラおよびターボリングについて、曳航水槽において逆プロペラ単独性能試験
を実施し、計算結果と比較した結果、本計算法によりターボリング付プロペラの性
能が精度良く表現できることを示した。
131
第 3 章では、最適化手法の一種である実数値遺伝的アルゴリズムを用いた翼形状
最適化手法を示した。本最適化手法を用いて、第 2 章で設計した原型プロペラと原
型ターボリングの翼形状最適化を行った。また、プロペラ翼およびターボリング翼
の同時最適化も実施し、実験結果との比較検証を行った。計算結果と実験結果との
間に差異は存在するものの、最適化したターボリングによりプロペラ効率が向上す
ることを確認した。また、第 4 章での実船プロペラおよびターボリングの翼形状最
適化についての指針を得た。
第 4 章では、第 3 章で提案した最適化手法を用いて実船プロペラおよびターボリ
ングを改良した。はじめにプロペラ翼を最適化し、その後ターボリング翼を最適化
する二段階最適化により、ターボリング付プロペラの性能をより向上させることが
できることを確認した。
本研究ではターボリング付プロペラの性能を向上させるため、実数値遺伝的アル
ゴリズムを用いた最適化手法を開発した。しかし、未だ不足点があり、今後の課題
が残る。以下にその課題を示す。
1) 推力およびトルクの実験結果と計算結果とにおける不一致
本研究で開発したターボリング付プロペラの性能計算法は、プロペラ効率
の差は確実に推定できるが、推力およびトルクについては実験結果との差
異が大きい。精度良く計算するために計算法の高精度化が必要である。
2) プロペラ翼形状最適化に伴う推力の低下
本研究で開発した実数値遺伝的アルゴリズムを用いた最適化手法により改
良したプロペラの推力は、実験により原型プロペラの推力より低下してい
ることを確認した。第 4 章では、最適化の制約条件として与える推力をあ
らかじめ大きめに設定することで対処したが、原因の調査と対策が必要で
ある。
3) プロペラ翼およびターボリング翼の同時最適化
本研究では、翼間干渉影響を考慮した改良手法として、プロペラ翼および
132
ターボリング翼を同時に最適化した。計算結果では性能が向上していると
いう結果を得たが、実験結果では計算結果ほどの性能向上が見られなかっ
た。制約条件や計算法の見直しを行う必要がある。
4) 翼形状最適化における設計変数の拡張
本研究では、ピッチ分布および最大キャンバー分布を翼形状最適化の設計
変数としたが、設計変数を拡大することで、さらなる性能向上の可能性が
ある。
5) プロペラおよびターボリング周りの流場の調査
PIV や CFD により、プロペラおよびターボリング周りの流場がどのように
なっているか、翼が流場の中でどのように配置されているかを把握する。
流場を把握し、最適化に反映させることができれば、実船の伴流データを
用いることで、実船の伴流中でのプロペラおよびターボリングの翼形状最
適化も可能になると考えられる。
6) 舵も含めた船尾周りの最適化
本研究では、プロペラおよびターボリングの翼間干渉影響を考慮した改良
を行ったが、舵も含めた最適化を行うことで、さらなる性能向上の可能性
がある。
7) 逆 POT におけるプロペラオープンボートの伴流の影響調査
本研究では、ターボリング付プロペラの性能確認のために、曳航水槽にお
いて逆 POT を実施した。逆 POT は、プロペラオープンボートの伴流中で
の計測となるため、伴流がプロペラ性能に与える影響の調査が必要である。
133
謝辞
本研究を行うにあたり、九州大学大学院工学研究院海洋システム工学部門 教授
安東 潤 先生には終始にわたり、丁寧な御指導を頂きました。深く感謝の意を表す
るとともに、厚く御礼申し上げます。
論文の査読にあたりましては、九州大学大学院工学研究院海洋システム工学部門
教授 古川 芳孝 先生、九州大学大学院工学研究院機械工学部門 教授 渡邉 聡 先
生より、丁寧な御指導と貴重な御意見を賜りました。心より御礼申し上げます。
研究においては、九州大学大学院工学研究院海洋システム工学部門 助教 吉武
朗 先生、金丸 崇 先生、事務室の皆様方、学生の皆様方に大変お世話になりまし
た。心より御礼申し上げます。
最後に、終始温かい御激励、御指導を頂き、かつ研究遂行に多大なる御便宜を計っ
て頂きました、株式会社 新来島どっく 技術設計本部 基本設計部 性能チーム 片
岡 史朗 課長、同 小林 正幸 係長、株式会社 マリタイムイノベーションジャパン
東濵 清 氏に心より御礼申し上げます。また、性能チームの山下 芳郎 氏、衛 琦
氏、青山 皓介 氏には研究遂行中、少なからず私の業務を分担して頂きました。心
より御礼申し上げます。また、社会人である私にこのような貴重な機会を与えて下
さるとともに御尽力賜りました株式会社 新来島どっく 門田 尚 社長ならびに関
係各位に厚く御礼申し上げます。
134
参考文献
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138
Holden の方法
付録
72 隻の実船計測データを統計的に逆解析して船尾変動圧力振幅の 1 次および 2
次の翼周波数(=プロペラ回転数×翼数)成分を求める実験式を示している。
(a) キャビテーションを生じていない場合
P0  12.45   n 2 D 2
(t / D)1.33
N 1.53(d / R)H
( K g f2 )/ m
H  1.8  0.4(d / R) : d / R  2.0
H  2.8
: d / R  2.0
ただし、
R : プロペラ半径、 N : 翼数、 (t / D) : 0.7R における翼厚比
d : プロペラの 0.9R 位置から圧力の計算点までの距離
(b) キャビテーションを生じている場合
(翼周波数の 1 次成分)
PC  0.098   n 2 D 2
(J1  J M )  f2
 0.7 R  (d / R)H
( K g f2 )/ m
H  1.7  0.7(d / R) : d / R  1.0
H  1.0
: d / R  1.0
ただし、
J1 : 平均前進率、 J M : wake peak における最小値
( J1  J M は負荷変動を表す)
f2 : 0.95R 位置および 0.8R 位置それぞれの位置におけるピッチ P と
キャンバー f の積の比 (P  f )0.95R /(P  f )0.8R(翼先端の負荷を表す)
最終的な圧力の片振幅は、キャビテーションによる振幅の位相差を 25  と仮定して、
PN  P02  PC2  2P0 PC c o 180
s (  )
1
   25  t a n
(y / z)  N
y, z  横方向座標と上下方向座標
139
(翼周波数の 2 次成分)
P2C  0.024   n 2 D 2
(J1  J M )0.85
 0.7 R  (d / R)H
140
( K g f2 )/ m
表図題一覧
Table 1.1 Technologies for energy saving .................................................................................... 2
Table 2.1 Principal particulars of an original propeller ............................................................... 24
Table 2.2 Principal particulars of an original Turbo-Ring ........................................................... 25
Table 2.3 Parameters of Turbo-Rings ........................................................................................ 25
Table 2.4 Number of panels ..................................................................................................... 27
Table 3.1 Definition of propeller and Turbo-Ring ...................................................................... 60
Table 3.2 Calculated results ..................................................................................................... 91
Table 3.3 Experimental results ................................................................................................. 91
Table 4.1 Principal particulars of an original propeller ............................................................... 97
Table 4.2 Principal particulars of an original Turbo-Ring ........................................................... 97
Table 4.3 Calculated results ................................................................................................... 128
Table 4.4 Experimental results ............................................................................................... 128
Fig. 1.1 Zones for classification of energy-saving devices ............................................................ 6
Fig. 1.2 Turbo-Ring................................................................................................................... 9
Fig. 1.3 Principle of a Turbo-Ring .............................................................................................. 9
Fig. 2.1 Coordinate systems of propeller ................................................................................... 13
Fig. 2.2 Arrangement of vortex systems .................................................................................... 16
Fig. 2.3 Outline of hub vortex model ........................................................................................ 19
Fig. 2.4 Arrangement of vortex systems .................................................................................... 19
Fig. 2.5 Movement of vortex nodes .......................................................................................... 21
Fig. 2.6 Surface of propeller with a Turbo-Ring......................................................................... 23
Fig. 2.7 Combination of lifting surfaces around a blade root ....................................................... 23
Fig. 2.8 Pitch angles of Turbo-Rings and propeller .................................................................... 25
Fig. 2.9 Panel arrangement (with a Turbo-Ring) ........................................................................ 26
Fig. 2.10 Calculated results of propeller characteristics (with TO) ............................................... 28
Fig. 2.11 Thrust and torque components ................................................................................... 29
Fig. 2.12 Calculated results of propeller characteristics (Diameter) ............................................. 32
141
Fig. 2.13 Thrust and torque components(Diameter)............................................................... 33
Fig. 2.14 Calculated results of propeller characteristics (Pitch angle at root) ................................ 34
Fig. 2.15 Thrust and torque components(Pitch angle at root) ................................................. 35
Fig. 2.16 Calculated results of propeller characteristics (Camber height) ..................................... 36
Fig. 2.17 Thrust and torque components(Camber height) ...................................................... 37
Fig. 2.18 Comparison of propeller characteristics (Calculation : J=0.4) ....................................... 38
Fig. 2.19 Pressure distribution(J=0.4) .................................................................................. 39
Fig. 2.20 Stream lines on a boss cap(J=0.4) .......................................................................... 39
Fig. 2.21 Comparison of deformed wake(J=0.4) ................................................................... 40
Fig. 2.22 Propeller and Turbo-Ring models ............................................................................... 41
Fig. 2.23 Propeller open test .................................................................................................... 42
Fig. 2.24 Reverse propeller open test ........................................................................................ 42
Fig. 2.25 Comparison of calculation and experiment (with TO) ................................................... 43
Fig. 2.26 Comparison of propeller characteristics (Diameter) ..................................................... 44
Fig. 2.27 Comparison of propeller characteristics (Pitch angle at root) ........................................ 45
Fig. 2.28 Comparison of propeller characteristics (Camber height) ............................................. 46
Fig. 2.29 Comparison of propeller characteristics (J=0.4) ........................................................... 47
Fig. 3.1 Concept of UNDX (Two-dimensional case) .................................................................. 52
Fig. 3.2 Blade thickness and camber distribution of basic blade section ....................................... 55
Fig. 3.3 Design variables ......................................................................................................... 55
Fig. 3.4 MGG model ............................................................................................................... 57
Fig. 3.5 Pitch and maximum camber distribution of a propeller .................................................. 62
Fig. 3.6 Pitch and maximum camber distribution of a Turbo-Ring .............................................. 62
Fig. 3.7 History of propeller efficiency (Improved propeller) ...................................................... 64
Fig. 3.8 Calculated results of propeller characteristics (Improved propeller) ................................ 65
Fig. 3.9 Thrust and torque components (Improved propeller) ...................................................... 66
Fig. 3.10 Thrust distribution in radial direction (Improved propeller : J=0.4) ............................... 67
Fig. 3.11 Torque distribution in radial direction (Improved propeller : J=0.4) ............................... 67
Fig. 3.12 Pressure distribution(J=0.4) .................................................................................. 68
Fig. 3.13 Stream lines on a boss cap(J=0.4) .......................................................................... 68
Fig. 3.14 Comparison of deformed wake(J=0.4) ................................................................... 69
142
Fig. 3.15 History of propeller efficiency (Improved Turbo-Ring) ................................................ 71
Fig. 3.16 Calculated results of propeller characteristics (Improved Turbo-Ring)........................... 72
Fig. 3.17 Thrust and torque components (Improved Turbo-Ring) ................................................ 73
Fig. 3.18 Thrust distribution in radial direction with Turbo-Ring (Improved Turbo-Ring : J=0.4) .. 74
Fig. 3.19 Torque distribution in radial direction with Turbo-Ring (Improved Turbo-Ring : J=0.4) . 74
Fig. 3.20 Thrust distribution in radial direction (Improved Turbo-Ring : J=0.4) ........................... 75
Fig. 3.21 Torque distribution in radial direction (Improved Turbo-Ring : J=0.4)........................... 75
Fig. 3.22 Pressure distribution(J=0.4) .................................................................................. 76
Fig. 3.23 Stream lines on a boss cap(J=0.4) .......................................................................... 77
Fig. 3.24 Comparison of deformed wake(J=0.4) ................................................................... 78
Fig. 3.25 History of propeller efficiency (Improved prop. & Turbo-Ring) .................................... 80
Fig. 3.26 Calculated results of propeller characteristics (Improved prop. & Turbo-Ring) .............. 81
Fig. 3.27 Thrust and torque components (Improved prop. & Turbo-Ring) .................................... 82
Fig. 3.28 Thrust distribution in radial direction with Turbo-Ring (Improved prop. & Turbo-Ring :
J=0.4) ....................................................................................................................................... 83
Fig. 3.29 Torque distribution in radial direction with Turbo-Ring (Improved prop. & Turbo-Ring :
J=0.4) ....................................................................................................................................... 83
Fig. 3.30 Thrust distribution in radial direction (Improved prop. & Turbo-Ring : J=0.4) ............... 84
Fig. 3.31 Torque distribution in radial direction (Improved prop. & Turbo-Ring : J=0.4) .............. 84
Fig. 3.32 Propeller models ....................................................................................................... 85
Fig. 3.33 Turbo-Ring models ................................................................................................... 85
Fig. 3.34 Turbo-Ring models ................................................................................................... 85
Fig. 3.35 Comparison of propeller characteristics (Improved propeller) ....................................... 87
Fig. 3.36 Comparison of propeller characteristics (Improved Turbo-Ring) ................................... 88
Fig. 3.37 Comparison of propeller characteristics (Improved prop. and Turbo-Ring) .................... 89
Fig. 3.38 Comparison of propeller efficiency (Calculation) ........................................................ 92
Fig. 3.39 Comparison of propeller efficiency (Experiment) ........................................................ 92
Fig. 4.1 Panel arrangement (with a Turbo-Ring) ........................................................................ 97
Fig. 4.2 Pitch and maximum camber distribution of a propeller .................................................. 98
Fig. 4.3 Pitch and maximum camber distribution of a Turbo-Ring .............................................. 98
Fig. 4.4 History of propeller efficiency (Improved propeller) .................................................... 100
143
Fig. 4.5 Calculated results of propeller characteristics (Improved propeller) .............................. 101
Fig. 4.6 Thrust and torque components (Improved propeller) .................................................... 102
Fig. 4.7 Thrust distribution in radial direction (Improved propeller : J=0.431) ........................... 103
Fig. 4.8 Torque distribution in radial direction (Improved propeller : J=0.431) ........................... 103
Fig. 4.9 Pressure distribution(J=0.431)............................................................................... 104
Fig. 4.10 Stream lines on a boss cap(J=0.431) .................................................................... 104
Fig. 4.11 Comparison of deformed wake(J=0.431) .............................................................. 105
Fig. 4.12 History of propeller efficiency (Improved Turbo-Ring) .............................................. 107
Fig. 4.13 Calculated results of propeller characteristics (Improved Turbo-Ring)......................... 108
Fig. 4.14 Thrust and torque components (Improved Turbo-Ring) .............................................. 109
Fig. 4.15 Thrust distribution in radial direction with Turbo-Ring (Improved Turbo-Ring : J=0.431)
...............................................................................................................................................110
Fig. 4.16 Torque distribution in radial direction with Turbo-Ring (Improved Turbo-Ring : J=0.431)
...............................................................................................................................................110
Fig. 4.17 Thrust distribution in radial direction (Improved Turbo-Ring : J=0.431) ....................... 111
Fig. 4.18 Torque distribution in radial direction (Improved Turbo-Ring : J=0.431) ...................... 111
Fig. 4.19 Pressure distribution(J=0.431) ..............................................................................112
Fig. 4.20 Stream lines on a boss cap(J=0.431) .....................................................................113
Fig. 4.21 Comparison of deformed wake(J=0.431)...............................................................114
Fig. 4.22 History of propeller efficiency (Improved prop. & Turbo-Ring) ...................................116
Fig. 4.23 Calculated results of propeller characteristics (Improved prop. & Turbo-Ring) .............117
Fig. 4.24 Thrust and torque components (Improved prop. & Turbo-Ring) ...................................118
Fig. 4.25 Thrust distribution in radial direction with Turbo-Ring (Improved prop. & Turbo-Ring :
J=0.431)...................................................................................................................................119
Fig. 4.26 Torque distribution in radial direction with Turbo-Ring (Improved prop. & Turbo-Ring :
J=0.431)...................................................................................................................................119
Fig. 4.27 Thrust distribution in radial direction (Improved prop. & Turbo-Ring : J=0.431).......... 120
Fig. 4.28 Torque distribution in radial direction (Improved prop. & Turbo-Ring : J=0.431) ......... 120
Fig. 4.29 Propeller models ..................................................................................................... 121
Fig. 4.30 Turbo-Ring models ................................................................................................. 121
Fig. 4.31 Turbo-Ring models ................................................................................................. 121
144
Fig. 4.32 Comparison of propeller characteristics (Improved propeller) ..................................... 123
Fig. 4.33 Comparison of propeller characteristics (Improved Turbo-Ring) ................................. 124
Fig. 4.34 Comparison of propeller characteristics (Improved prop. & Turbo-Ring)..................... 125
Fig. 4.35 Comparison of propeller efficiency (Calculation) ...................................................... 129
Fig. 4.36 Comparison of propeller efficiency (Experiment) ...................................................... 129
145
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