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平成26年度コウノトリ野生化対策懇話会 議事録【概要】

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平成26年度コウノトリ野生化対策懇話会 議事録【概要】
平成26年度コウノトリ野生化対策懇話会 議事録【概要】
(1) コウノトリ野生復帰の現況と展開
①
野外コウノトリの個体数増加と移動
委 員
「野外での飼育」とはどういうイメージのものか。
郷公園
大きなものとして放鳥拠点がある。郷公園は放鳥のための拠点を何カ所かつくってきた。たいてい
の場合、拠点から托卵によって遺伝的多様性を考慮に入れた幼鳥が育って出て行く。もちろん周囲の
環境整備が必要だが、野外飼育ができれば、豊岡から出て行った個体がそこに留まる可能性を高める
ことにつながると考えている。
委 員
「ペアごとの生存幼鳥個体数」について、生まれて生存している子どものかなり多いペアと少ない
ペアとがある。なぜ多いペアと少ないペアがあるのか。
郷公園
いくつか要因がある。繁殖経験が長いにも関わらず、育てられないペアがいる。それは広大な田ん
ぼの巣塔で営巣している。リリース開始初期には邪魔をする個体がいなかったのだが、全体の個体数
が増えていったときに、四方八方がオープンなところだと他の個体による侵入の頻度がどんどん高ま
っていった。そのような場所で繁殖すると、縄張り防衛行動に時間と労力が使われ、子育てに労力を
使うことができなくなったようだ。
委 員
コウノトリの繁殖地域を広げるために、特にどういうことをすべきなのか。
郷公園
実際、養父市・朝来市ですでにリリースをしている。現在、そこでリリースされた個体が定着する
か観察している。しかし、移動した全ての個体が最後には戻ってきている。問題は、行った先に相手
がいないということだ。どうにかして行った先に留まるように仕向けないといつまで経っても豊岡に
戻ってくることになる。そして、(豊岡盆地内が)一杯になり、どこでも繁殖できないということが起
こってしまうと予想している。
(豊岡盆地の)外に行って定着してもらう方法を考える必要がある。
委 員
24 ペアになったときに、性成熟した個体が全て戻ってきたときにどういう状況になるのか。
郷公園
巣を乗っ取り合う状況になるだろう。今までも繁殖に失敗したペアが隣の巣に行き、強い執着を示
し、最後にはヒナを殺したことがある。ペアが留まるようなことになると、闘争が激化すると思う。
1
② 餌環境の全国評価と豊岡における自然再生の展開
委 員
越前と豊岡との比較で、両生類や昆虫はあるのに、魚類が含まれていないのはなぜか。また、コウ
ノトリの繁殖のことを考えると、4月、5月ぐらいに調査した方がよかったのではないかと思うが。
郷公園
魚については調査しなかったのではなく、捕れなかった。現状の水田に関して言えば、魚はあまり
生息していない。調査時期の選定だが、6月はヒナに頻繁に餌をやる時期であり、非常に餌量が多い
時期であることが理由である。
委 員
調査結果の夏のところでは、餌動物全体というのと、カエル類、バッタ・イナゴ類と分けて評価さ
れているが、この餌動物全体というのは、数としては匹数か。
郷公園
基本的にこれまでのデータから1㎝以上の生物を対象にしている。そこで、匹数をデータとしてい
る。これは、重量レベルでも評価しているが、大きく傾向は変わらない。また、いろんな人が調査で
きる手法を取りたいということもある。
委 員
畦には除草剤をまいていないのか。
郷公園
いろんな畦が入るように調査地を選定した。30 本ランダムに選んでいるので、平均的な傾向はつか
めていると考える。
委 員
全国的にコウノトリが生息可能な地域を検討するというのであれば、景観要素が必要ではないか。
単に餌のみならず、水田と周辺の森林との組み合わせなど、水田自体がすごく広いよりも少し混ざっ
ていた方が良いなど、そのような景観的な分析も必要かも知れないと思うが。
郷公園
将来的にそこまでもっていければ、すばらしいと考えている。豊岡のいろんなタイプの水田で調査
を実施し、水田間の群集構造の違いや、その発現をモデル化できるのかということを検討している。
川についても、淵にたくさんさ魚がいても、浅場に魚が出てこないと餌場にはならない。浅場に魚類
が出現するメカニズムを明らかにする必要がある。景観からの評価というのは、将来的には行ってい
きたいが、現在は試行的にいろいろな要素検討を行っている段階だ。
2
(2)本格的野生化に向けた今後の方向性について
委 員
「グランドデザイン」をつくった際もメタ個体群の構造をいかにつくっていくのかという戦略的な
発想をしていかなければならないということであったが、今回の提言は非常に前向きではないかと思
う。餌環境を十分つくるということが前提の条件である。その後、積極的にソフトリリースできると
いうような拠点を想定される場所に積極的につくっていこうととらえたわけだが。
郷公園
必ずしもリリースできるとは限らない。そういう所に持って行く個体が問題である。
委 員
今、越前市で取り組んでいるのが、モデルケースになると思う。
委 員
国内の移動も大切なのだが、
もっと長期的なスパンを考えれば、
大陸との交流が重要になると思う。
たぶん昔はそういうことがあったのだと思う。日本と大陸間の相互移動を再現しないと、おそらく 10
年や 20 年経ると、もう一度国内の個体群は崩壊していくような気がする。
委 員
今、私は地元の方々に協力してもらい、有機農業の学校を県下各地で開校している。そのような地
域で、コウノトリを持ってきてほしいという要望が出れば、対応してもらえるのか。
委 員
持って行ってどうされるのかということだ。まず分散(飼育のため)の小さい飼育場所をつくるとい
うイメージか。
委 員
そうだ。今、南但馬でやっていただいているような放鳥拠点のようなものをイメージしている。も
ちろんもう少し先の話だが。
郷公園
それに関連して図っていただきたいのは、先程の報告(1)でケージの中の個体は誘因効果がある
という報告が出た。そのときにソフトリリースを前提としたケージを持って行くのか、あるいは放鳥
は諦めて、デコイ効果だけを狙って実施することもいいのか。
委 員
技術論になっていくのだが、どのようにするのが一番いいのか。デコイにすべきなのか、定着して、
ケージの上あたりに巣材を持ってくるようになったときには、ソフトリリースもありなのか。両方と
も分かるが、基準を作らなければならないのではないか。ソフトリリースを前提にした場合だとそれ
なりの個体を持って行かなければならない。そこをどう考えるのか。
3
郷公園
出さないならどの個体でもいいということになる。出すとなるとどうするのかということだ。
委 員
議論は大きく分けると2つある。今は 9 つがいでかなり限界に近く、どんどん増えていき、繁殖時
期になり戻ってくるようになると問題になる。だから、この周辺でもっと繁殖できるようにしてやら
なければならないという緊急の課題がある。その場合、ソフトリリース的効果であってもデコイ的効
果であっても、そうせざるを得ないのではないか。
もう一つは、将来的に全国に展開できるのではないかということだ。その場合には、餌環境や景観
的なものも含めたコウノトリの生息地を全国的にどう評価するのかということになる。連帯したいと
いう地域は全国にたくさんあると思う。そのようなところまで広げた考え方もあるのではないか。
委 員
当面の措置としては、豊岡を中心としながら、養父市や朝来市と連携しながら、巣塔も建てながら
今後ともやっていくということは議論としてはいかがか。そして、もう一つのステップとしては、欲
しいという所は、ビオトープなどを整備しつつということか。グランドデザインの精神からいえば、
越前市や野田市のように、新たな繁殖のコアとしてつくり出す試みはあってもいいのではないか。
委 員
現在9ペアで、25 まで可能ではないかと言われたが、自立的な個体群なのか。自立させるなら、環
境整備、特に採餌環境の復元が先かとも思うが。
郷公園
それは、非常に重要なことで、現在9ペアいるが、全てが郷公園公開ケージに依存している。飼育
用のケージに侵入して、飼育用の餌を食べている。郷公園の餌場に依存しているから、自分の縄張り
に餌がないというのとは同じではない。郷公園の西公開ケージをシャットアウトすると、自分の縄張
りで隅から隅まで探して食べている。しかし、グランドデザインには、将来的には餌を徐々に少なく
していき、自立させるということは入っている。
委 員
餌を徐々に減らしていき、自然に分散するという状況をつくり、自然な自立した個体群をつくると
いうことは、過去に大陸と自由に交流していたような世界を再現するということだと考える。人工的
に増やして、どんどん放していくという事業をいつまで続けるのか。
郷公園
人工的に増やしていくことはほとんどやっていない。
グランドデザインをつくっていただいた際に、
飼育の個体はリスクマネージメントとして保持していくということであった。だから、現在ぐらいの
飼育数は保とうとしている。
4
委 員
水田にかなり依存しているので、農業者との調整が必要だ。そういう意味では、先程の郷公園の報
告でバッタやイナゴが重要な餌生物であると言われたが、農業者にとってバッタやイナゴの増加は困
るのではないか。生物多様性をどこまで維持して増やしていくかということとの関わり方が大切だ。
ただ単にコウノトリを増やせばよいのではなく、農業者の意識変革との連動も必要だ。
委 員
遺伝的多様性に関わる話が出ているが、IPPM(コウノトリの個体群管理に関する機関・施設間パネ
ル)という組織ができ、一元管理で遺伝的多様性を保っていくという体制が整いつつあるということか。
郷公園
その通りだ。今までは飼育個体だけを血統管理をしてきたが、今度は野外個体も含めた血統管理を
しようというのが IPPM だ。
委 員
報告にあったように、繁殖・定着を推進する方法論として、そこに飼育施設をつくり、誘引すると
いう方法は非常に有効な方法であるので、そのような取組を推進すべきだ。
委 員
福井県や野田市以外に豊岡のコウノトリが飛来したという市町村がたくさんある。そのようなとこ
ろでコウノトリが生息できる水田環境などをつくり、里地里山再生のシンボルとして取り組んでいき
たいというところもあるはず。そのようなところも含めて、ネットワークのような集まりをつくって
もいいのではないか。
座 長
この懇話会としては、各地での取組を積極的に推進するということを確認して、議題を終わる。
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