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船 外 機 艇 に も 訪 れ た 大 き な 変 化 ! ボ ー ト

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船 外 機 艇 に も 訪 れ た 大 き な 変 化 ! ボ ー ト
エンジンがこのように左右違う方向
に向くのは見慣れない光景である。
スラスター不要なシステムならでは。
船外機艇でもこのようなジョイスティックによる操船が
可能になるのがシステム最大の特徴だ。
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OCEAN LIFE
オ
プ
テ
ィ
マ
ス
の
衝
撃
船
外
機
艇
に
も
訪
れ
た
大
き
な
変
化
!
ボ
ー
ト
を
ジ
ョ
イ
ス
テ
ィ
ッ
ク
シ
ス
テ
ム
で
制
御
可
能
!
船外機艇をより細やかに操り、より効率良
く動かせたらどんなに楽だろう。なぜ船内
外機艇ではジョイスティックシステムが用
意されているのに、船外機艇にはないの
だろう?!そんな問いに対する回答がここ
で紹介するテレフレックスマリン社がアナ
ウンスしたオプティマス360だ。メーカ
ーを問わず、どのような船外機艇にも搭載
できるこのシステム、ボートメーカーはも
ちろん新艇に搭載できるが、中古艇へも搭
載可能なシステムだ。ステアリングを大き
く回したり、2基の船外機のシフトレバー
をそれぞれ操作したり、そういった行為も
終わりを告げるかもしれない。
文と写真=テリー鈴木
by Terry SUZUKI
取材協力=テレフレックスマリン
Thanks to Teleflex Marine
オプティマス360
OCEAN LIFE
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ボートを垂直に離岸させる様子。水流が複雑な動きをしていることがわかるだろう。
るパワーステアリングシステム、電子シフ
ト&スロットルシステム、あるいはジョイス
オプティマスはジョイスティック単体のことではなく、ステアリングシステム全体のことを指している。
ハンドルの操作角や切れ角、あるいはハンドルの重さなどを任意で設定することができる。
ティックなど複数の装置全体をオプティマ
スあるいはオプティマス360と呼んでい
る。この装置の特徴は、バウスラスターを
使用せずに船外機だけを搭載したボート
をジョイスティックによって360度自由自在
のコントロールを可能とするシステムだ。ご
存知の通り、インアウト艇向け、専用のポ
ッドドライブを使用したボート、あるいは
バウスラスターを併用することで同様の操
船方法を可能とした「専用」
システムはす
船体を360°
回転させることができる。もちろん船外機が2基搭載されていることが前提となる。
でに販売されている。だが、このオプティ
マスシステムはエンジンとスロットルがワイ
ヤーなど機械的に制御されている船外機
艇であればメーカーを問わずどのボート
にも搭載できるのが特徴だ。ただし船外
機が2基搭載されたボートでなければな
らない。なおいきなりジョイスティックを搭
載せず、まずは電子制御されたステアリン
ジョイスティックは過敏な動きはしない。だが独特の遅れはあるので、多少の慣れは必要だろう。
電子制御に欠かせないユニット一式はヘルムステーション裏側にまとめられていた。
グシステムを搭載し、状況に合わせてジ
ョイスティックを追加するといったアップグ
レードも可能。アップグレードの際もおお
がかりなシステム変更は不要で原則プラ
グアンドプレー、つまりコントロールユニッ
バウスラスターは不要である。このようなシステムはテレフレックス社以外ではない。
トにケーブルを接続すれば機械同士が自
動交信し設定を変更してくれる。もちろん
このシステムにGPSナビゲーションシステ
ムを接続すれば、オートパイロットとして機
現
在のボートにおける大きなトレンド
能になるほか、状況にあわせて操作レバ
体をジョイスティックで行えるようになるケ
能させられる。ただし、すでにエンジン
のひとつにボートの電子制御化と
ーの振り幅をリニアに変化させることがで
ースも多い。この手の推進装置を導入す
を電子制御する装置
(※)
が搭載されたボ
いうものがある。これはエンジン本体は
きるので、細かい操作がより行いやすく
るとやはり燃費性能の向上という恩恵に
ートには後付けすることはできない。また
もちろんだが、ボートを制御するために必
なる。このような 電 子 装 置 の 信 号 は
も預かれる。無駄な動きをせずに状況に
値段も決して安くはない。アメリカでのシ
要不可欠な装置をすべて電子的に接続
NMEA2000などで規格化されている。
あわせて装置を調整することで、推進装
ステム全体の販売価格はUS$17,995(約
し、それぞれの装置が保有する情報をす
この規格に対応していれば例えばGPS
置によっては2割から3割程度の燃費向
1,500,000円)
、これに搭載するための工
べての機器で共有しようというもの。この
ナビゲーションなどとも接続が可能となる。
上を謳う製品も少なくない。
賃が加わることになる。テレフレックスと
ような電子化をおこなうメリットは複数あ
単一メーカーの装置にすべてを依存する
ここで紹介するシステムはボートのステ
してはまずは24∼35フィート艇でエンジ
る。まずは操作性の向上である。エンジ
ことなく、複数メーカーの装置を適宜導入
アリングシステムなどをてがけるテレフレ
ンを載せ替えることなく操船システムをア
ンとスロットルやハンドルはすべて電子信
し、予算や目的にあった運用が可能とな
ックスマリン社が長い間独自に研究・開発
ップグレードしたいオーナーを顧客ターゲ
号をやりとりすることで制御される。一部
るのも大きなメリットだ。GPSはAメーカ
したシステムで「オプティマス360」
と呼ば
ットにしているようだ。
の飛行機や自動車でもすでに導入されて
ー、操舵装置はBメーカーといったことも
れている。このシステム名称は単品の装
開発過程もユニークで事前に船外機エ
いるこの技術は一般的にフライバイワイヤ
規格の上では可能である。またシステム
置を指しているのではなく、テレフレック
ンジンメーカーにこのようなシステムを開
ーとよばれるのだが、より柔軟な操作が可
全体が電子制御されているので、操船自
ス社傘下のシースターブランドで提供され
発している連絡をしなかったという。完全
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このシステムは基本となるオプティマスシステム、さら
にオプティマス360システムが組み合わされている。
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エンジンを左右に動かす油圧シリンダー。制御で電子的に行われるのが特徴だ。
これらユニットがそれぞれ
組み合わされることで本
艇をコントロールしている。
一般的なイメージとしてジョ
イスティックに注視しがちだ
が、システム全体がオプテ
ィマスを構成している。
搭載されているボートで見ても、
従来からの油圧シリンダーと大
きな違いは見受けられない。
油圧シリンダーに信号を出すユニットがこちらである。シンプルが外観になっている。
こちらは油圧式のステア
リングポンプ。通常、船
上ではでは見かけるもの
ではない。
配線も難しいことはなく、必要な箇所にプラグインするだけ。
スロットルは電子制御され
ているので、堅さやスロッ
トルのムラは一切ない。
ン関係者が試乗するためにテレフレック
「とはいえ、ユーザーあるいはボ
の部下は
かすのだ。2基の船外機はタイバーで接
グシステムに電子スロットルシステムやジ
クエンジンである。試乗した日は幸運に
スのブースを訪れ、情報収集をしていたの
ートビルダーからの声が増せば無視する
続はされておらず、電磁センサーによって
ョイスティックシステムを追加することで利
も風が5∼6メートル吹くコンディション、エ
が実に印象的だった。この場ではエンジ
とも。
ことは不可能」
エンジン方向が常にモニターされている。
用できるようになる。これらスロットル装置
ンジンをアイドリングにしたままだとボート
このような電子制御システムなので事前
からは前述のECMに電子ケーブルを接
は風下にす∼と流れてしまう。試乗する前
ンメーカーやボートビルダーへの納入価格
提示も行われており、テレフレックスとして
ではこのシステムの概要を見てみよう。
にハンドル角やハンドルの重さあるいは
続する。このECMからはアクチュエータ
にシステム全体の構成、接続方法、各ユ
はオプティマスシステムを今春に、オプテ
前述に通りこのオプティマスはシステムの
ハンドルを回すスピードなども任意で設定
ーとよばれる電子信号を実際にスロットル
ニットの説明がていねいにテレフレックス
ィマス360は初夏をメドにこのシステムを
総称なのだが、基本はEPSと呼ばれる
できるのが最大の特徴だろう。例えば女
やシフトケーブルを動作させるモーターへ
の担当者から行われる。このような電子
に仕上がった状態の製品をいきなり発表
出荷したい意向を持っているようだ。この
電子制御パワーステアリングシステムがユ
性が操船するときは軽めに、大柄の男性
信号を送るシステムになっている。
制御システムのネガティブイメージとして、
するという考え方はライバルメーカーの動
ような製品の導入にエンジンメーカー間で
ニットのコアとなる。速度に応じてステア
が操船するときは重たく、と言った設定も
実際にこのオプティマス360を試してみ
やはり万一故障したら?という質問が数多
向も大きな要因ではなかったのではない
はかなりの温度差があるようで、ある日系
リング角が変動するハンドルユニットが
簡単。このオプティマス ステアリングシス
よう。システムが搭載されたボートは2005
く寄せられているという。機械的なトラブ
かと筆者は考えている。この製品がマリ
エンジンメーカーでは
「関係者のほぼ全員
ECMと呼ばれる制御ユニットへと接続、
テムのみでの導入もでき、アメリカでの販
年製のシークラフト32。センターコンソー
ルと違い、システムトラブルを洋上で修理
ン関係者に発表されたのが2012年2月
というほど興味を示している
が試乗した」
このECMからは同じく電子制御されて
プラ
売価格はUS$6,250(約525,000円)
ル艇である。このボートに搭載されてい
することはかなり難しいからだ。もちろん
のマイアミボートショーだったのだが、船外
一方、別の日系エンジンメーカーの部長
いる油圧シリンダーへ信号が送られる。こ
ス工賃である。
たエンジンは同じく2005年製のマーキュ
メーカーではあらゆる状況下を再現し、
機メーカーはもちろんだが、各方面のマリ
は採用に消極的だった。もっともこの部長
の油圧シリンダーが各船外機を左右に動
リー オプティマックス 225馬力 2ストロー
極力トラブルに見舞われないようテストは
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オプティマス360はこの電子ステアリン
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ハの字をしながらボートをコントロールしている。船体はぶれることはなく動く。
ギアのポジションやエンジン回転数を表示させてみる。複雑な動きをしていることがわかる。
上:デモ艇は7年落ちのセンターコンソール艇だっ
た。フロリダで使われずに売りに出されていたという。
中:フィッシングボートとして使いやすい設計がされて
いる。大人数での底づりもアリだろう。
下左:シンプルなレイアウトではあるのだが、その造り
はしっかりとしているのがシークラフトの特徴でもある。
下右:オプティマス専用のカラーリングが施された。
同社は開発に多額の費用を投入したといい、社運を
かけているとも。
しそうだ。というのもこのシステムは各艇
と搭載されたエンジンに合わせてプログ
ラム設定を行わなくてはならないからだ。
たしかに同じサイズのボートでもエンジン
エンジンメーカーを選ばないのもまた特徴だ。こちらはスズキ製の250馬力エンジンでのデモ。
数多くのボートが並ぶなか、人手を借りること無く着岸できるのはどんなボートであってもありがたい。
出力、ギア比、プロペラサイズ、エンジン
の間隔などは各艇違うのでこれら情報を
ECMに入力する必要がある。なのでテ
レフレックス社からトレーニングを受けた
エンジニアがこれら設定をおこなうことに
なるだろう。もちろんボートメーカーがこの
装置を採用する分には問題はないだろう
が、個人がこのシステムを導入するには日
本国内の販売体制がまず構築されること
操作にムラがない。ワイヤー式のスロット
倒しながら近づく。風の影響で船首が船
が前提となるだろう。世界最大のボートマ
ルにありがちな最初は固く、すぐにゆるゆ
台とは並行ではなくなったためにジョイス
ーケットであるフロリダ州でも南フロリダで
るで一気にエンジンを吹かしてしまう、な
ティックを回転させてみると、いとも簡単に
このシステムを販売するのはわずか3拠
んていうことはない。また低速時はハンド
修正できてしまった。もちろんこの動きは
点になるという。とはいえ、メーカーを問
ル角が大きく、高速航行時はハンドル角を
2基のエンジンをそれぞれ操作すれば充
わずすべての船外機艇
(機械制御された
狭くする、などのような設定ができるのは
分対応できるものではあるのだが、ジョ
という条件が加わるにせよ)
にこのシステ
シークラフト32 マスターアングラー
SPECIFICATIONS
9.60m
全長
全幅
2.85m
喫水
0.46m
フライバイワイヤーならでは。ジョイスティ
イスティックの操作でできてしまえるのなら
ムを搭載できる事実は無視できないだろ
何重にも行ったという。とうは言え、不可
ックを使って近くにあった台船を桟橋に
ばそれに越したことはない。操船者は落
う。船内外機艇と比べて小回りが苦手と
トランサムデッドライズ角
20.5°
抗力下でのトラブル発生はゼロではない
見立てて離着岸をしてみる。このような電
水や接触など他の事故防止により注力で
される船外機艇にデメリットはこのオプテ
燃料
1,140L
との判断から前述のECMには複数のシ
子装置はわずかなタイムラグあるので慣
きるからだ。
ィマス360によってカバーされてしまう事
乾燥重量
ステムが搭載されており、手動レバーを切
れは必要だが、それでも例えばボルボペ
り替えることでシステムを切り替えられる
ンタが先べんをつけたIPSのジョイスティ
実も無視できないはずだ。今後、このシ
ではこのシステムが発売されたら日本
巡航
26ノット
最高速度
39ノット
ックシステムとなんら操作感に遜色はな
でもすぐに使えるか、できればイエスと答
る、のかもしれない。操船がより楽に、よ
が、機械式ハンドルやスロットルと違い、
い。台船に近づくためにジョイスティックを
えたいところだが、残念ながら即答は難
り安全になることは大歓迎だ。
OCEAN LIFE
2,268kg
マーキュリー
オプティマックス225馬力×2
ステムをメーカーが標準搭載するようにな
という。オプティマスを一通り試してみる
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エンジン
OCEAN LIFE
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