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「実感を伴って基礎的・基本的な内容を確実に定着できる指導」
事 例 中学校 技術・家庭科 第2学年「プログラムによるロボット制御」 テーマ 「実感を伴って基礎的・基本的な内容を確実に定着できる指導」 ∼応用ソフトウェアのマクロ機能を活用した制御の学習を通して∼ 1 授業改 ・具体物を通して学びが実感できる題材・教材の開発 善のポ ・学んだことが次の学習に生きる、系統性を明確にした指導計画の作成 イント ・学びが生活に結び付く指導過程の工夫 学習状況の把握と分析 学習状況の把握 【 評 価 規 準 】 < 題 材 レ ベ ル > BasicやLogoの言語を用いたグラフィックプログラムの作成 生活や技術への関心・意欲・態度 生活を工夫し創造する能力 生活の技能 生活や技術についての知識・理解 ・コンピュータを 働かせるプログラ ムに関心をもち、 その役割と機能に ついて考えようと している。 ・プログラムを 用いて、課題を 解決するために 情報処理の手順 を工夫している。 ・簡単なグラフ ィックプログラ ムの作成・編集 ができる。 ・簡単なグラフィ ックプログラムの 作成手順や知識を 身につけている。 ・生活とコンピュ ータプログラムを 用いたシステムと の関係について理 解している。 【把握方法】 ・実習(画面制御)の観察: 「生活を工夫し創造する能力」 「生活の技能」 ・学習プリントの記述 : 「生活や技術への関心・意欲・態度」 「生活や技術についての知識・理解」 学習状況の結果と分析 【結果】 従来の授業では、BasicやLogo等の言語でグラフィックのプログラム 作成(国旗等を描く)を扱ってきたが、実習の姿や学習プリントの記述から生徒 の実態を把握したところ次のようであった。 評価規準に対して「おおむね満足できる」状況の生徒 (36人中) 生活や技術への関心・意欲・態度 ・・・・・・・・ 22人 生活を工夫し創造する能力 ・・・・・・・・ 30人 生活の技能 ・・・・・・・・ 24人 生活や技術についての知識・理解 ・・・・・・・・ 23人 また、課題の達成状況をみると、十分達成している生徒と達成不十分な生徒と の 差 が 見 ら れ た 。 特 に 、 後 者 の 生 徒 は 、「 画 面 を 制 御 す る プ ロ グ ラ ム は 難 し い 。」 「コンピュータを活用して機械を制御しているという実感をもつことができず、 授 業 で 学 ん だ 知 識 を 生 活 に 生 か せ な い 。」 な ど と い う 意 識 も 見 ら れ た 。 これらの様子から、次の点がつまずきの要因になっていると分析した。 ●プログラミング言語が複雑で、理解が困難な生徒がいる。 ●プログラムによって画面上の図形を制御するだけでは、機械を制御してい るという実感をもちにくい。 ●学習内容と生活とのかかわりが薄く、生徒は学ぶ必然性をもちにくい。 授業改善へ 2 分析に基づく授業改善 (1) 授 業 改 善 の 方 針 1 の 「 学 習 状 況 の 結 果 と 分 析 」 で 分 析 し た 「 つ ま ず き の 要 因 ( ● )」 か ら 、 次 の 三 点 の 改善が必要であると考えた。 ① 命令語が複雑でなく、プログラムの処理が具体物の動きで確認できるような題材・ 教材を開発する必要がある。 ② 前時までの学びが、本時の気付きや課題解決に生かされるよう、系統性を明確にし た学習指導計画の作成が必要である。 ③ 授業での学びが生活に結び付く指導過程を構築する必要がある。 こうした改善を行い、生徒が生活の中から課題解決の方法を導き出したり、生活の中で コンピュータの果たす役割について考えたりすることで、より学習に対して関心をもち、 意欲的に活動することが期待できると考えた。 (2) 改 善 の 具 体 的 方 途 と 実 践 ① 具 体 物 を 通 し て 学 び が 実 感 で き る 題 材 ・ 教 材 の 開 発( 資 料 3 ) ○プリンタポートを使って制御できるLEDを用いた制 御基盤を作成した。また、今後のコンピュータにも対 応できるよう、USBポートを使用できるものも同時 に作成した。 この教材の利点は、コンピュータの情報処理がLED の点滅で確認できること、比較的安価に製作できることである。 ○信号機をイメージした制御対象物を作成した。 身近にある機械を教材とすることで、生活との結びつきを実感として捉えられるよ うにした。 ○ 応 用 ソ フ ト ウ ェ ア( エ ク セ ル )の マ ク ロ 機 能 を 使 っ て 制 御 で き る ソ フ ト を 開 発 し た 。 どの学校にも導入されているソフトウェアであり、プログラムの指導で大切な「手 順」を考えられるよう工夫した。 ○思考が信号機から2進法につながるような学習プリントを作成した。 信号機の点灯→8灯LED→2進法数値、という思考を記録として残せるようにす ることで、生徒がどの時点でつまずいているかを捉えることができ、指導に生かす ことができた。 ②学んだことが次の学習に生きる、系統性を明確にした指導計画の作成 各時間のねらいを明確にするとともに、前時までに学習したことを生かして自らの考 えをつくり、課題解決できるよう系統性を考えた指導計画を作成した。特に、1次の題 材として信号機を取り上げ、プログラム作成の基礎的・基本的な知識・技能を身に付け 2次の題材であるロボット制御の学習に生かせるようにした。 従前の題材指導計画 1 プログラム学習を始めよう 改善した題材指導計画 1 ・ BASIC ソ フ ト の 使 い 方 2 日本の国旗を描こう の情報処理について学ぼう 2 ・ LINE 、 CIRCLE 命 令 の 使 い 方 3 チェコの国旗を描こう 人間と関連させてコンピュータ プログラム作成を通して、2進 法の原理を学ぼう 3 ・ CONNECT、 PAINT命 令 の 使 い 方 実際の信号機と同じように点灯 ・消灯するLED信号機の制御 プログラムを作成しよう 4 ギリシャの国旗を描こう 4 ・ FOR∼ NEXT命 令 の 使 い 方 5 国旗を描こう 6 ・今まで学習した命令語を使った LED制御プログラムをロボッ ト制御に生かそう 5 プログラムを実行してロボット を思い通りに操作しよう 7 国旗の描画(国旗を選択) 6 プログラムに工夫を加えて複雑 8 できたプログラムを連結しよう 7 な動きを創り出そう ・ MERGE , IF ∼ THEN ∼ ELSE 命 8 様々なコンピュータ制御につい 令の使い方 て知ろう ③学びが生活に結び付く指導過程の工夫 授業の終盤で生活に結び付けるような指導過程を考えた。本時の授業では電光掲示板 の数字がそれぞれLEDで作られており、本時の学習と同じように内蔵のコンピュータ からの信号で制御されていることを取り上げた。こうした場の位置付けにより、生徒が コンピュータをより身近なものとして感じ、生活とコンピュータと製品(もの)とのか かわりについて理解を深められると考えた。 3.授業改善後の成果 ①具体物を通して学びが実感できる題材・教材の開発について プログラム作成の学習において言語の理解に終わるのではなく、命令語を単純にする ことで、基礎・基本である「手順」や「合理性」について思考を深めることができた。 また、身近な生活にある具体物をコンピュータで制御することで、この題材を学ぶ必然 性が理解できたとともに、自分の考えで機械が自動的に動いていることを実感として味 わうことにより学習意欲を高めることができた。さらに、2進法の学習についてもLE Dの制御教材により視覚で確かめることができ、理解を深めることができた。 本 時 の 学 習 で あ る「 実 際 の 信 号 機 と 同 じ よ う に 点 灯 ・ 消 灯 す る プ ロ グ ラ ム を 作 成 す る 」 ためには、点灯パターンの把握(信号機1と2の点灯・消灯状況をひとつのパターンと し て 見 る 見 方 )、 2 進 数 か ら 1 0 進 数 へ の 変 換 、 各 パ タ ー ン の 点 灯 時 間 の 3 つ が ポ イ ン トとなる。そうした考え方を学習プリントに記すことで、プログラムを実行した時の不 具合から修正点を見付けやすかったことや、個のつまずきを把握し指導・援助に生かす ことができたなど、学習プリントの活用は効果があったと考える。 ②学んだことが次の学習に生きる、系統性を明確にした指導計画の作成について 授 業 後 の 振 り 返 り に は 、「 正 確 に 動 作 さ せ る た め に は 、 順 番 と 時 間 が 大 切 で あ る こ と が理解できた」などとプログラム作成の基本である手順について綴る生徒が多くいた。 前時までに生徒は、AからHまでの各LEDを点灯するための数値見付け(2進法の 学 習 )、複 数 の L E D を 点 灯 さ せ る 数 値 見 付 け 、プ ロ グ ラ ム の 作 成 方 法 を 学 ん で き た が 、 系統性を明確にした学習指導計画に改善したことが、こうした生徒の振り返りにつなが ったと考える。 今後、ロボット制御の実践に向かうが、LED制御の時はどうであったか想起するよ う助言することにより、ロボット制御との関連を考えながら、生徒たちは主体的に取り 組むことができると考えている。 ③学びが生活に結び付く指導過程の工夫について 本時の授業においては、普段の生活で見慣れている信号機を教材とすることで、より 生活と関わった学習を行うことができた。また、授業の終盤には電光掲示板を提示した が 、こ の こ と が さ ら に 生 活 と コ ン ピ ュ ー タ の か か わ り の 見 方 や 考 え 方 を 深 め た と 言 え る 。 翌週の授業ことである。ある生徒は、自宅付近の信号機の動きを観察してきて、色々 な点灯パターンがあることに気付いたことを、またある生徒は電気炊飯器や洗濯機の自 動化とそれに組み込まれたコンピュータとの関係について話してくれた。 このように、学びを生活と結びつける場を位置付けることは、ひとつの事象から他の 事象に広げることであり、一般化を図ることができる。 こうしたことから、生活の中における製品(もの)とコンピュータとのかかわりなど 技術への見方や考え方を深める手だてとして有効であったと考える。