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A2:感覚、知覚

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A2:感覚、知覚
A2:感覚、知覚
ここでは、感覚、知覚の順に見ていきますが、細目に分類せず、一項目として扱います。内容的には、視覚を中心と
した記述になっています。
出題頻度が高い内容には、心的回転や知覚の恒常性などがありますが、他にも、これらと同じように重要な内容が
いくつもあります。しかし、それらの一つ一つは説明が比較的容易です。
A21:感覚、知覚
スコア
比率
35
年
5
5
8
9
10
14
16
0.35
No
4
7
5
3
6
5
5
ランク
B
小問
all
all
all
all
all
all
all
H23 年度版(Ver.1.0):スコア=大問 5 点、小問 1 点の合計/比率=スコア/(試験期間(20 年)*5 点=100)→ランク:0.8 以上 A,0.3 未満 C
【参考資料】
・心理学(東京大学出版):p63~73
この項は、H10 までの出題が多く、特に H17 以降は 5 年間開示問題に現れていませんが、実際には非
開示問題でポツポツと出題されている可能性があると思います。
1.感覚
(1)刺激と感覚
生活体に作用し、反応を引き起こす可能性のある物理的エネルギーが刺激で、感覚とは、感覚器官が刺激されたとき
生じる、主観的印象や意識経験をいいます。そして、夫々の感覚器官で感知する体験の種類を感覚モダニティ(様相)と
いいます。
感覚受容器が感知できない刺激は感知しないため感覚は生じません。これを不適刺激といいます。一方、ある刺激
により、本来生じる感覚以外のモダリティの感覚が生じることを共感覚 16-5A といいます。また、刺激の量が感覚を感じる下
限刺激量より小さくても感知しません。これを刺激閾といいます。これに対し、刺激がそれ以上増加しても感覚が増加
しなくなる刺激量があり、これを刺激頂といいます。感覚受容器は刺激の大きさを感知できますが、感知しうる最小限
の差異のことを弁別閾(丁度可知差異)16-5B といいます。
Fechner,G.T に由来する刺激に対する感覚の測定法を精神物理学的測定法といいますが、以下に示すフェヒナーの
法則は感覚の強さが刺激の強さ(水準)の対数に比例するというものです。この関係は、刺激強度の限定された領域
のみで成立するものであり、感覚と刺激強度の間にはべき乗則(E=k・Rn)が成立する方が一般的なようです。なお、フ
ェヒナーの法則は、弁別閾と刺激強度の比が一定であるとする、下記のウェーバーの法則を積分することで得られます。
・フェヒナーの法則:E=KlogR(E:感覚の強さ、R:刺激水準)
・ウェーバーの法則:⊿R/R=k(⊿R:弁別閾、)
また、生活体が適応行動を取るためには、刺激の時間-空間的変化が必要と言われています。
(2)視覚
感覚で最も重要なものが視覚です。視覚は、網膜の感光細胞で光刺激が電気信号に変換され、その信号が大脳
皮質後頭野の視覚領に送られることで生じますが、脳の視覚情報の処理については A4 脳と睡眠、生理学で扱いま
すので、ここでは、感覚の受容の部分についてまとめます。
網膜の感光細胞には錐体と桿体
16-5C
があります。錐体は視覚1°の中央部分に密集していて、明所視機能を担い、
色識別ができます。これに対して、桿体は視覚の周辺部に多く存在し、暗所視機能を担い、感度が高いのが特徴で
す。
視覚の重要な要素である色覚のメカニズムには、光の 3 原色に対応した受容器の組み合わせで説明する三色説(ヤン
グーヘルムホルツ説)や、白/黒、赤/緑、黄色/青の 3 種の視物質を仮定する反対色説(ヘリング)がありますが、赤緑色盲や
色の残像(補色)を説明できることや、3 種の受容器を対とする実証データがあることから、後者が有力視されていました。
しかし、最近では、錐体では三色説的処理が行なわれ、網膜経節細胞までに反対色説的な処理が行われるとする段
階説(処理の階層性)が有力です。
(3)感覚の順応
暗順応曲線
刺激閾以上の刺激が与えられても、時間とともに感受性が低下する現
錐体による部分
象を感覚の順応といいます。感覚の順応は感覚一般に生じますが、痛覚
では軽い痛み以外は順応が生じません。
視覚において、明るい場所に出たときに生じる順応(明順応)は感覚の
閾
値
桿体による部分
順応ですが、暗い場所に入ったときに徐々に見えなかったものが見えて
くる現象(暗順応:右図)は順応の回復過程です。
経過時間
2.知覚
知覚とは、単純に感覚受容器を通じて外界および自己の状態を感知
することをいいますが、実際には、脳が様々な処理を行っていますし、知覚のための様々な脳の機能が先天的に存
在する事がわかってきています。ここでは、そういったことを整理していきます。
なお、知覚経験は背後の連続体上に成立し、その基準となる心理的ゼロ点が存在し、それを順応水準(AL)といいま
す。これは、直接注意を向けている対象の刺激(焦点刺激)と背景刺激および過去に与えられた刺激の残存効果によ
り規定されます。
また、知覚の元となる各々の感覚(感覚モダリティ)の情報間に矛盾があるときには視覚優位の判断が働きます 10-6A。
(1)初期視覚過程と視覚の成立
人は、下記のような新生児の研究の結果から、出生直後に角や縁などに対する何らかの視覚情報処理機能を有す
ることがわかっていて、これを初期視覚過程といいます。両眼立体視もそういった機能の一つです。
・ファンツの実験:新生児が色の刺激より人の顔のような図形を長く凝視する。
・サラパテークとケッセンの実験:新生児の眼球運動が三角形の角に集中する。
しかし、このような機能は、出生後に実際の感覚刺激が与えられないと、維持発達が行われません。また、単なる環
境刺激の受容過程だけでなく、運動系の関与による自己調整やフィードバック過程の経験を経て、視覚と運動機能の連
動(視覚運動協応)や奥行きの知覚を獲得していきます。
(2)形の成立
ゲシュタルト心理学では、刺激をまとまりとして知覚することを「体制化」といいますが、その最も典型的なものが、視覚に
おける形の知覚です。
Rubin,E.J によれば、一様な視野は知覚されず、異質な2領域があって初めて形が知覚され、2領域は「図」と「地」
5-4,9-3B
(「図」:形として浮き出して見える領域/ 「地」:その背景となる領域)に分化します。Wertheimer,M によれば、複
雑な図はなるべく簡潔で「良い」形(ゲシュタルト要因)にまとまりを作る(群化)傾向があるとされます。これはプレグナンツの
原理(傾向)といわれ、主観的輪郭や透明視などの形の知覚を説明します。
詳細は、過去問の解説で見ていきます。
(3)空間知覚と運動知覚
空間知覚とは、感覚受容器を通じて対象と自己が位置づけられる空間を知覚することで、その知覚された空間を知
覚空間(空間枠組み)といいます。知覚される刺激が比較的一様な時は自己中心的定位が働き、水平方向が遠く、上
方向は近く知覚されますが、刺激が多数の時には、視空間の方が自己の定位を規定する空間枠組みとなります。
空間知覚で重要な知覚が、遠近感や 3 次元的広がりの知覚である奥行き知覚 10-6C ですが、この知覚は、眼の生理
学的機能である水晶体の調節、両眼輻輳、両眼視差、運動視差だけでなく、大きさ、重なり、遠近法的配置、陰影、
濃淡、きめ勾配(ギブソン)などの心理学的要因にも影響されます。また、視覚の成立に記述したように、運動系からのフ
ィードバックも奥行き知覚の獲得には必要です。
運動知覚 14-5 は、網膜像(視覚)と随意運動、運動視差などが中枢で処理された結果としての知覚空間内での運動
の知覚であり、以下のような現象から、その特徴が理解できます。
①仮現運動:静止画像を適度な速さで経時的に示すと運動が知覚されます。このことは、運動知覚が個々の要素
の知覚で構成されているのではないことを示しています。
②誘導運動:「雲間の月」の見え方で、一般に、より小さい囲まれた対象の方が動いているように見える現象です。
これは、空間枠組みに対する相対的変化が運動として知覚されることを示しています。
③自動運動:暗黒中の光点が実際には運動していなくても、運動しているように見える現象で、空間枠組みが存
在しないと、静止しているものが動いて見えることを示しています。
④運動残効:一定の速度で動いているもの(例えば、流れ落ちる滝など)を見ていて、静止しているものに目を転じ
ると、それが逆の方向に動いて見える現象をいいます。
⑤輪郭や点の集まりで示された人やものの画像の動き:輪郭や一連の点が動くと、何かがわかることがあります。こ
れは、刺激要素間の実際には存在しない因果関係が知覚されていることを示しています。
(4)知覚の特性
いままで記述してきた以外にも、知覚に関わる様々な脳の特異的な処理のメカニズムがあります。ここでは、その代表
的なものを列挙します。
①知覚の恒常性:対象が発している光や音などの刺激を遠刺激 16-5D といい、それが感覚受容器に届いたときの刺
激を近刺激といいますが、近刺激が変化しても、対象の様々な特徴(遠刺激)が比較的変化せずに
知覚される現象をいいます。具体的には、斜めから見ても TV の画像が変形して見えない現象など
をいい、知覚が感覚受容器の情報だけに依存せず、推論的な知性が補正を加えるため、変化が実
際ほど感じられません。
*知覚の恒常性は、視覚で語られることが多いですが、他の感覚でも生じます 8-5A。
*知覚の恒常性は、一般的に、視野が分節化しているほど高くなる傾向 9-3C があります。
視野の分節化とは、等質な視野に弁別閾以上の刺激差をもつ異質な領域が出現し、その領域がひ
とまとまりになって周囲から分離することをいいます。分離し独立した領域が多いほど、知覚の比較対
象が多くなり、恒常性が働きやすくなります。
②錯覚:推論的な知覚の補正のため、実際とは異なる見え方をする様々な現象をいい、月の錯視、シャパンティエ効
果(大きいほうが軽く感じる)、幾何学的錯視などがあります。
③心的回転
5-7
:イメージ空間で 3 次元の物体を回転させる操作をいい、空間知覚と運動知覚を含む脳の高次機能
で、認知のメカニズムの研究によく用いられます 9-3A。イメージ空間での運動や操作は、現実の空間にお
ける運動や操作と対応しています 10-6D。
④選択的注意(知覚):カクテルパーティー効果などをいいます。
⑤静止網膜像の実験 10-6B:実験的に網膜上を全く動かない像を作ったものの知覚実験をいいます。このような像
は、すぐに消失し見えなくなりますが、尐しでも動くとすぐに見えます。このことは、知覚には変化が
必要である事を示しています。
⑥マッハの帯:Mach,E によって発見された、高輝度からある勾配で低輝度に変化する場所に見える明るい帯をいい、
視覚が光刺激の 2 次微分に規定されるため生じる現象です。このことは、人が、光刺激の強度勾配
の変化点を輪郭として見ていることを示しています。
⑦マスキング現象 8-5B:2つの感覚がかき消しあう現象をいい、臭覚や味覚でよく体験する現象ですが、聴覚や視覚の
領域でも存在します。同時に提示される刺激による同時マスキングのほかに前の刺激がマスキングする順
行マスキングや後からの刺激がマスキングする逆向マスキングもあります。
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