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調 査 報 告 - 日本産業機械工業会
調査報告 シカゴ 調 査 報 ____________________________________ シカゴ 告 ●米国における工作機械市場の状況等について IMTS2008(International Manufacturing Technology Show:国際製造技術展)が、9 月8日から13日までの6日間、米国製造技術協会(AMT)の主催によりシカゴで開催され た。IMTSは、日本のJIMTOF(日本国際工作機械見本市)、欧州のEMO(欧州国際 工作機械見本市)とともに世界3大工作機械展の一つに数えられ、2年に一度シカゴのマコ ーミックプレイスで開催される。展示面積約120万平方フィート(約11万1千㎡)の広さに 1,500以上の出展があり、世界119カ国以上から92,000名以上の来場者を数え、好況時に開催 された前回(2006年)を上回る規模となった。 米国経済が低迷する中で、予想以上の活況を呈した会場から、設備投資意欲は依然として 強く、不況を感じないといった声が多く聞かれた。以下に、世界第4位の市場規模を持つ米 国の工作機械市場の状況等について紹介する。 1.世界における米国工作機械産業の位置付け (1)世界の工作機械生産 2007年の世界の工作機械生産高は、702.0億ドルとなり(上位29カ国の合計)、対前年比18% 増となった。前年に続き、日本が7%増(米ドル換算)の144.4億ドルで首位となり、2位の ドイツに勝った。両国の生産高を合わせると、世界の生産高の約39%を占める。中国は、2005 年に50億ドルであったが、2007年に2倍に成長し、日本、ドイツに迫る勢いである。イタリ ア(前年比27%増)、ドイツ(同26%増)の増加率も高い。 このような中で、米国は前年比3%減となり、主要生産国の中で対前年比が唯一マイナス となった。 表1.世界の工作機械の生産高 順位 国 2006年生産高 2007年生産高(百万ドル) 全体 切削機械 成形機械 (百万ドル) 変化率 現地通貨 米ドル 1 日本 14,443.5 88% 12% 13,557.6 8% 7% 2 ドイツ 12,725.4 76% 24% 10,120.3 15% 26% 3 中国 10,090.0 71% 29% 7,060.0 (ドル建) 43% 4 イタリア 7,272.7 49% 51% 5,707.5 17% 27% 5 韓国 4,550.0 68% 32% 4,112.0 11% 11% 6 台湾 4,378.0 80% 20% 3,841.0 14% 14% 7 米国 3,578.0 79% 21% 3,688.9 (ドル建) -3% 70,197.5 - - 59,533.7 - 18% 世界合計 注:世界合計は上位29カ国の合計 出所:Gardner -8- 調査報告 シカゴ (2)世界の工作機械輸出 2007年の世界の工作機械輸出高は、前年比18%増の392.0億ドルとなった(上位29カ国の合 計)。ドイツが2006年から日本を抜き、輸出高の最も高い国となっている。両国とも輸出高は、 他国を大きく引き離しており、世界の輸出高に占める両国の割合は約43%となった。上位8 カ国の中で、生産高に占める輸出の割合が高いのは、台湾(78%)、スイス(74%)、ドイツ (同72%)であり、対前年比が最も高いのは、中国(34%増)であった。 米国は、韓国に抜かれ7位となったほか、主要輸出国の中で、対前年比が唯一マイナスと なった。 表2.世界の工作機械の輸出高 順位 国 輸出高(百万ドル) 2007年 2006年 2007年生産高 変化率 現地通貨 米ドル に占める割合 1 ドイツ 9,167.8 7,516.0 12% 22% 72% 2 日本 7,610.1 6,513.0 18% 17% 53% 3 イタリア 4,207.6 3,318.7 16% 27% 58% 4 台湾 3,408.0 2,964.0 15% 15% 78% 5 スイス 2,457.5 2,236.7 5% 10% 74% 6 韓国 1,800.0 1,450.0 (ドル建て) 24% 40% 7 米国 1,659.8 1,802.3 (ドル建て) -8% 46% 8 中国 1,600.0 1,190.0 (ドル建て) 34% 16% 18% 56% 世界合計 39,201.1 33,151.1 - 注:世界合計は上位29カ国の合計 出所:Gardner (3)世界の工作機械輸入 2007年の世界の工作機械輸入高は、前年比14%増の358.7億ドルとなった(上位29カ国の合 計)。中国が、69億ドルで2位の米国を大きく引き離し首位を維持しているが、その差は縮ま りつつある。中国、米国ともマイナス成長である一方、続くドイツ、台湾、イタリアが対前 年比40%以上の高い成長率となった。国内消費高に占める輸入高(輸入浸透度)は、上位8 カ国のうち(但し概算値のメキシコを除く)、台湾、インドがともに74%で最も高く、次いで 米国が69%となっている。 -9- 調査報告 シカゴ 表3.世界の工作機械の輸入高 順位 国 輸出高(百万ドル) 2007年 2006年 2007年生産高 変化率 現地通貨 米ドル に占める割合 1 中国 6,900.0 7,243.0 (ドル建て) -5% 45% 2 米国 4,253.6 4,474.6 (ドル建て) -5% 69% 3 ドイツ 3,694.5 2,535.4 33% 46% 51% 4 台湾 2,815.0 2,010.0 40% 40% 74% 5 イタリア 1,990.9 1,397.4 30% 42% 39% 6 メキシコ 1,544.8 1,154.1 (ドル建て) 34% 93% 7 韓国 1,400.0 1,358.0 (ドル建て) 3% 34% 8 インド 1,317.8 世界合計 837.1 44% 57% 74% 35,873.8 31,445.5 - 14% 53% 注:世界合計は上位29カ国の合計。メキシコはおおよその推計。 出所:Gardner (4)世界の工作機械の市場規模 2007年の工作機械の市場規模は、前年比16%増の668.7億ドルとなった。中国の工作機械市 場は対前年比17%増の153.9億ドルとなり、2位の日本(76.2億ドル)の2倍の規模となり、 前年に引き続き首位となった。上位9カ国のうち、対前年比が最も高かったのはインド(+ 49%)で、ドイツ(+41%)、イタリア(+34%) 、台湾(+28%)と続く。 米国の工作機械市場は、ドイツに抜かれ、世界第4位となった。また、各主要市場が成長 する中で、日本とともに、マイナス成長となった。 表4.世界の工作機械の市場規模 順位 国 消費高(百万ドル) 2007年 2006年 変化率 現地通貨 米ドル 1 中国 15,390.0 2 日本 7,619.4 7,858.6 -2% -3% 3 ドイツ 7,252.1 5,139.7 29% 41% 4 米国 6,171.8 6,361.2 (ドル建て) -3% 5 イタリア 5,056.0 3,786.2 22% 34% 6 韓国 4,150.0 4,020.0 (ドル建て) 3% 7 台湾 3,785.0 2,887.0 31% 31% 8 ブラジル 1,822.2 1,423.2 (ドル建て) 28% 9 インド 1,774.8 1,191.2 36% 49% 66,870.3 57,827.8 - 16% 世界合計 13,113.0 (ドル建て) 注:世界合計は上位29カ国の合計 出所:Gardner -10- 17% 調査報告 シカゴ 2.米国工作機械産業の概況 (1)米国の工作機械の輸入状況 米国の過去10年間における工作機械の輸入の推移を見ると、1998年のピーク(48.7億ドル) から2002年に底(26.0億ドル)を打つまで減少基調で推移してきたが、その後一貫して増加 し、2006年に47.3億ドルまで達した。2007年は、前年比4.4%減の45.2億ドルとなった。最大 の輸入相手国は日本で輸入全体に占める割合は4割超となり、次のドイツと合わせると両国で 米国の工作機械輸入全体の6割弱を占める。 図1.米国の工作機械輸入額の推移 (単位:百万ドル) 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 1998年 1999年 2000年 2006年 2007年 その他 898.5 829.0 853.2 2001年 2002年 761.5 539.7 2003年 547.3 2004年 2005年 607.3 712.4 835.0 831.7 イタリア 219.1 200.4 198.7 204.3 137.0 174.1 198.9 180.8 237.3 256.5 韓国 160.5 115.6 112.8 94.6 52.4 58.3 145.9 202.4 258.3 276.8 スイス 245.6 222.2 263.7 190.5 160.7 140.0 219.2 263.9 277.9 218.2 台湾 346.5 256.5 296.6 206.6 132.2 125.4 191.8 259.8 320.5 350.8 ドイツ 722.2 672.5 712.4 620.8 480.7 517.2 605.1 705.9 715.5 666.4 日本 2,274.9 1,961.8 2,163.3 1,654.6 1,101.2 1,216.3 1,381.3 1,825.6 2,082.1 1,919.6 表はグラフの並び順になっております。 出所:AMT (2)米国の工作機械の輸出状況 米国の工作機械の輸出については、2003年(13.6億ドル)にかけて概ねなだらかな減少傾 向が続いたが、以後、一貫して増加を続け、2006年に22.8億ドルに達した。2007年は、前年 比6.6%減の21.2億ドルとなった。最大の輸出国はメキシコで、2007年は全体の13.4%を占め た。過去10年ほどメキシコ向けとカナダ向けがほぼ同程度で拮抗して推移しており、2005年 以降、カナダがメキシコを若干上回っている。両国を合わせると、輸出全体の1/4を占め る。 -11- 調査報告 シカゴ 図2.米国の工作機械輸出額の推移 (単位:百万ドル) 2,500 2,000 1,500 1,000 500 0 1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 その他 697.2 576.9 658.4 663.1 574.6 623.6 682.3 827.3 1,022.2 944.2 ベルギー 13.8 17.9 22.1 25.0 40.2 50.2 66.9 89.8 129.8 178.6 日本 139.8 112.2 113.3 110.2 77.6 86.2 81.3 92.4 151.6 96.5 ドイツ 86.7 79.9 149.3 145.3 61.2 86.4 122.7 145.9 154.7 129.8 中国 100.8 76.4 72.5 124.1 145.7 107.6 167.2 181.2 216.6 207.5 カナダ 354.6 334.6 310.8 253.7 242.4 222.8 222.4 256.9 295.0 284.0 メキシコ 297.1 339.3 302.0 306.5 224.2 180.0 203.0 265.1 305.5 284.1 表はグラフの並び順になっております。 出所:AMT (3)主な米国工作機械メーカの状況 ○Haas Automation(本社:カリフォルニア州オクスナード) 航空、重機、自動車等向けにCNCマシニングセンタ等を製造。創業者Gene Hass氏による オーナー企業。株式は非公開。2007年売上高は、前年比18%増の8億8,000万ドルであった。 世界中に140以上の直販店を持つ。2007年は米国内工場で生産した機械の52%を輸出し、将 来的には70%への引き上げを目指す。本年4月にインドに2つの直営店を設置すると発表し、 インドの市場拡大に特に注力している。このような積極的な海外戦略により、2006年に欧州 での工作機械売上高は58%増加、中国での売上高は65%増加となった。 ○Hardinge(本社:ニューヨーク州エルミラ) 航空、自動車、通信、建設機械、医療機器向けにCNC旋盤、CNCマシニングセンタ等 を製造。従業員数1,500名以上。2007年の売上高は前年比9.1%増の3億5,630万ドルであった。 広範なプロダクトラインを持ち、中小企業から大企業まで旋盤、切削機械、研磨機、圧延 機械を提供している。 米国、スイス、台湾、中国に工場を持つなど積極的な海外戦略を展開し、2007年収益の地 域別内訳は、北米34%、欧州46%、中国その他の地域20%となった。 ○MAG Industrial Automation Systems(本社:ミシガン州スターリングハイツ) 航空、重機、自動車等向けに5軸制御マシニングセンタ等を製造。Cincinnati Machine等 の買収を通じて、MAGブランドとして10以上のブランドを組織。2007年売上高は、 13億8,900 -12- 調査報告 シカゴ 万ドル。米国、カナダ、ドイツ、中国、韓国、ブラジル、ロシア、ハンガリー、英国、スイ ス、インドに工場及び販売店を持つ。 本年8月に、ロッキードマーティン社との間で、同社の世界中の主要工場における全ての 工作機械をMAGブランドから提供する契約を結んだ。メンテナンス、トレーニング、部品 交換等のサービスも提供する内容となっている。 ○Flow International(本社:ワシントン州ケント) 航空、自動車、食品、建築等向けにウォータージェット切削加工機等を製造。UHP(超 高圧)ウォータージェットシステムで世界シェア60%を占める。2008年度売上高は3億5,600 万ドルで、うち55%は米国外の顧客に販売。インドネシア、カナダ、ブラジル、ドイツ、英 国、スウェーデン、スペイン、イタリア、フランス、台湾、日本、中国にオフィスあり。 航空業界の好調を受け、同業界からの収益が前年度比8%増となった。本年7月に最大の 競合企業であるOMAX社との合併について、連邦取引委員会から認可を取得した。 3.需要産業の状況 (1)米国製造業の業績見通し 民間のビジネス調査グループであるカンファレンス・ボードが2008年第2四半期に調査し たCEO指数(ビジネス・コンフィデンス測定。現在の経済情勢、6ヶ月先の経済の展望及 び自身の産業の展望に関する各社CEOに対する調査で、ポジティブがネガティブを上回っ ていれば50ポイント以上となる。 )は、39ポイントとなり、前期の38ポイントより微増となっ たが、これらは2000年第4四半期に31ポイントを記録して以来、最低の水準である。 また、全米独立企業連盟(National Federation of Independent Business)が2008年7月 に調査した中小企業楽観指数(中小企業を対象とした雇用、設備投資、在庫等の10の調査を 基に算出。)は、前月より1.0ポイント減少して88.2となり、過去28年間で最低の水準となっ た。最も重要な問題として挙げられたのは、1位インフレ、2位税、3位売上減少であった。 今後2,3ヶ月の設備投資計画(21%)では、1970年以降、最も低い水準となり、今後6ヶ 月の経済成長の期待(ポジティブ%からネガティブ%を差し引いたもの)は、△17%となっ た。 いずれも経済低迷を反映して、ビジネス環境の認識が悪化している。 なお、製造業の新工場建設については、Supply Home Times誌によれば、2006年の600億ド ルから2007年は880億ドル規模に成長し、2008年はそれを更に上回るペースで建設が進み、総 投資額は北米で1,810億ドル(米国のみでは1,290億ドル)に上る。新工場建設数は、2007年 に656工場であったところ、2008年は既に1,000件を超えている。成長の原動力となっている のは、エネルギー分野における石油生産、採掘、精製、送電施設の建設であり、地域別に見 ると、南西部や五大湖地域で成長している。州別に見ると、最も多くの工場建設が進むのは、 テキサス州95件で、続いてフロリダ州、ワシントン州、アリゾナ州、ワイオミング州、イリ ノイ州、ニューメキシコ州となっている。 (2)工作機械の需要構造 米国における工作機械の需要分野別データは、AMTにおいても1996年時点のものしか提 供されていないが、その割合は次の通りである(図3)。産業機械(農業機械、建設機械、鉱 山機械、エンジン、エレベータ、事務機等)41%、組立金属製品(缶、コンテナ、ねじ等) -13- 調査報告 シカゴ 23%、電気機械(発電機、テレビ等)16%、輸送機械(自動車、船舶、鉄道等)13%、精密 機器(光学機器、時計、計測・分析機器、医療機器等)7%。 図3.米国工作機械の需要分野別シェア 精密機器(SIC38) 7% 組立金属製品 (SIC34) 23% 輸送機械(SIC37) 13% 電気機械(SIC36) 16% 産業機械(SIC35) 41% 出所:AMT (3)主な需要産業の生産動向及び設備稼働率 米国における工作機械の需要産業の2008年6月の生産指数は、農業機械99.3、建設機械 134.3、家電91.6、自動車・同部品94.7、航空機・同部品129.4となり、耐久財全体では、124.6 となった。各需要産業とも、2002年頃を境に上昇傾向にあり、建設機械、農業機械等が大き く伸びてきたが、この1~2年で減少に転じた。航空・航空部品は2004年に91.0まで落ち込 んだ後、2005年以降堅調に伸びている。 表5.工作機械の需要産業の生産指数 (2002年=100) 産業分類 (NAICS) 2007年 6月 7月 8月 2008年 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 耐久財製造業 125.1 116.3 123.1 125.5 124.1 123.3 121.3 119.7 120.9 123.6 120.7 120.5 124.6 (全体) 農業機械製造業 102.7 105.5 117.8 119.6 121.4 112.3 89.7 106.4 115.4 120.1 120.1 110.3 99.3 (333111) 建設機械製造業 145.4 135.5 129.3 164.8 142.1 136.0 124.3 148.6 152.2 165.9 135.9 132.6 134.3 (33312) 家電製品製造業 99.2 86.1 95.6 101.8 103.2 99.1 81.9 85.2 93.0 97.1 95.0 93.8 91.6 (3352) 自動車・同部品 111.1 68.7 105.4 99.6 104.5 95.4 78.2 87.6 102.7 89.0 86.8 81.8 94.7 製造業(3361-3) 航空機・同部品 123.7 123.9 126.6 128.3 128.3 131.4 131.9 130.9 127.7 128.3 127.9 127.4 129.4 製造業(3364) 出所:Federal Reserve Board 設備稼働率は、航空機を除く各需要産業とも2000年から2002年にかけて(航空機は1998年 から2000年にかけて)大きく下がった。この間、自動車、電機は、コンピュータ等と比較し て下がり幅が比較的小さかった。2002年を境に上昇基調となるが、自動車・同部品は、2005 年頃から大きく低下した。2008年6月の各需要産業の設備稼働率は、電気機器・同部品84.2、 -14- 調査報告 シカゴ 航空機・同部品79.2、組立金属製品78.8、コンピュータ・電子機器78.4、機械73.6、自動車・ 同部品66.5となり、耐久財全体では75.5となった。 表6.工作機械の需要産業の設備稼働率 産業分類 (NAICS) 耐久財製造業 (全体) 組立金属製品 製造業(332) 機械製造業 (333) 2007 年 2008 年 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 78.1 78.8 78.3 78.1 77.6 77.8 77.7 77.4 76.8 76.8 75.5 75.2 75.5 81.0 81.2 81.2 81.4 81.1 81.5 81.4 81.2 81.1 80.9 80.2 80.2 78.8 78.4 79.0 78.0 79.1 78.0 77.2 76.5 76.7 75.9 76.8 74.7 74.4 73.6 コンピュータ・電子機 76.5 77.4 76.8 76.6 77.1 77.5 77.6 76.7 77.4 78.5 78.4 78.0 78.4 器製造業(334) 電気機器・同部 84.5 84.6 84.1 84.2 82.9 83.3 84.0 83.8 82.5 83.8 83.5 84.3 84.2 品製造業(335) 自動車・同部品 74.6 75.8 74.8 72.9 71.9 72.5 72.6 71.3 70.6 67.2 62.7 63.1 66.5 製造業(3361-3) 航空機・同部品 78.4 78.8 79.0 79.9 79.8 80.9 80.4 81.0 79.8 79.8 79.2 78.4 79.2 製造業(3364-9) 出所:Federal Reserve Board (4)自動車製造業の動向 米国の自動車生産台数は、1999年の1,308万台をピークに2001年には1,151万台まで落ち込 んだ。その後、2002年に1,232万台まで回復した後、緩やかに減少を続け、2006年には2001 年を下回る水準となった。最近では、ガソリン価格の高騰や米国経済の減速から、米国自動 車販売台数は過去15年で最低水準まで落ち込んでいる。大型トラックやスポーツ用多目的車 (SUV)が敬遠され、大型車を得意とする米国のデトロイト3の直撃を受けている。GM は、ピックアップトラック生産工場3ヶ所とSUV生産工場1箇所の閉鎖を発表した。GM、 フォードとも生産台数を大幅に減らしている。他方で、ホンダ、トヨタ、スバル等の日本メ ーカの生産台数は堅調に伸びており、米国における自動車・トラック生産のうち、日本メー カが占める割合は2007年で27%となった。また、現代(韓国)の成長も顕著である。 Automotive News Data Centerによれば、米国における自動車・トラックの生産台数は、2008 年を底に、2009年以降回復していくものと予測している。 -15- 調査報告 シカゴ 図4.米国の自動車生産台数の見通し (単位:台) 12,000,000 11,500,000 11,000,000 10,500,000 10,000,000 9,500,000 9,000,000 生産台数 2008年 10,059,384 2009年 10,284,683 2010年 10,633,539 2011年 10,875,777 2012年 11,011,721 出所:Automotive News Data Center (5)航空機製造業の動向 米国の航空宇宙産業の売上高は、底を打った1995年から1998年にかけて増加した後、なだ らかに推移してきたが、2003年頃から増加基調が鮮明になり、2004年は軍用航空機が、2006 年以降は民間航空機が航空宇宙産業の売上全体を押し上げている。2007年は、前年比8.5%増 の1,987億ドルとなった。2007年の売上高の内訳は、軍用航空機28%、民間航空機27%、宇宙 20%、ミサイル9%となっている。2008年には、2,000億ドル突破が見込まれている。 雇用については、3年連続で増加しており、2007年は特に製造部門における雇用増加(8% 増)が目立った。近年では、技術者が多く、労働賃金の安いインドへのオフショアリングが 目立つようになった。 図5.米国の航空機売上高の推移 (単位:百万ドル) 250,000 200,000 150,000 100,000 50,000 0 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 関連機器・サービス 宇宙 ミサイル 航空機(軍事) 航空機(民間) 25,618 30,533 8,825 35,800 52,931 24,123 29,708 9,298 34,032 47,580 25,272 29,499 10,391 35,215 51,256 25,392 34,624 12,847 38,147 41,340 24,438 35,857 13,488 40,402 32,441 表はグラフの並び順になっております。 出所:Aerospace Industries Association -16- 25,953 35,933 14,704 46,609 32,519 28,343 37,308 15,287 49,952 39,165 31,866 38,579 17,044 49,757 46,027 33,764 39,184 17,673 54,849 53,313 2008年 (予測) 38,236 41,165 18,655 52,207 60,374 調査報告 シカゴ 4.米国における工作機械市場の動向 (1)米国工作機械の販売動向 米国における工作機械の販売高は、1997年をピークに2003年にかけて大きく落ち込んでき たが、2004年は、ブッシュ政権による新規設備投資の優遇措置(初年度で最大57%の早期償 却が可能となるもの)による影響もあり、前年から約3割増しの大幅増加となった。Hass社 によれば、この優遇措置により製造業が設備投資を行ったことから、同社の過去1年間の出 荷額が2倍に増加したとのことである。製造業の回復及び工作機械の買替え需要と相俟って、 以降も回復基調が継続し、2005年16%増、2006年7%増、2007年微減となった。2008年上半期 の販売高は、23億1,834万ドルとなり、対前年同期比で15.3%増となった。 図6.米国における工作機械の販売高の推移 (単位:百万ドル) 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 年 年 年 年 年 年 年 年 年 年 切削機械 6,678.9 5,259.2 5,652.8 4,237.4 2,916.8 3,043.2 4,092.9 4,761.4 5,089.0 5,097.3 成形機械 1,819.7 1,781.8 1,767.6 1,463.1 867.7 931.3 988.5 1,171.6 1,272.1 1,246.0 8,498.6 7,041.0 7,420.4 5,700.5 3,784.5 3,974.5 5,081.4 5,933.0 6,361.1 6,343.3 合計 出所:AMT/米国工作機械販売協会(AMTDA) 図7.米国における工作機械の最近の販売高の推移 (単位:千ドル) 600 ,0 00 Metal Cutting 切削機械 成形機械 Metal Forming 500 ,0 00 400 ,0 00 300 ,0 00 200 ,0 00 100 ,0 00 0 6月 7月 2007年 8月 9月 10月 11月 12月 出所:AMT/AMTDA -17- 1月 2月 2008年 3月 4月 5月 6月 調査報告 シカゴ (2)米国工作機械市場に影響を与える要因 本年2月に、1,680億ドル規模の減税を内容とする2008年景気対策法が成立した。所得税を 一人当たり最大600ドル、夫婦合わせて最大1,200ドルの還付を行う個人減税と、2008年に行 われた設備投資に対して50%の特別償却を認め、中小企業の設備投資に対する税額控除の限 度額を現行の約2倍に当たる25万ドルに引き上げを行う企業減税の2本柱となっている。こ の減税措置が、前回(2004年)の優遇措置と同様に設備投資を促進する効果が期待されてい る。一方、前回の優遇措置は、2001~02年の不況の回復を下支えするものであったことに対 し、今回は国内経済が下向きのタイミングであるため、前回のような効果は見込めないので はないかとする見方もある。 オフショアリングに伴う問題として、国家安全保障上の理由から、工作機械を含む製造業 のオフショアリングの拡大を危惧する声が高まっている。工作機械の輸入浸透度は1996年の 52.5%から2006年には70.3%まで増加した。他国からの部品やシステム輸入に頼ることで、 有事の際に米国の外交政策に反対する国から必要な部品・システムを調達できなくなること への懸念がある。 この他、中国の工作機械産業が拡大する一方で、米国の同産業が著しく縮小していること についての懸念の声も挙げられている。米中経済安全保障検討委員会では、中国が米国自動 車及び同部品産業に与える影響について公聴会を開催した。同公聴会において、米国工作機 械産業の縮小を憂慮する証言が複数なされた。 米国製造業の競争力強化に向けた取り組みとしては、商務省が2004年に「Manufacturing in America」報告書において、米国製造業の現状と提言を取りまとめた。この中で、減税の恒久 化や研究開発税額控除の恒久化などが提言されている。2007年8月には、米国競争法が制定 された。米国の競争力を高めるため、数学、技術、工学の教育プログラム、研究プログラム に対して2010年まで合計433億ドルを投資することや、奨学金プログラムを新設することが定 められている。 米国製造業や、とりわけ自動車産業の不調を背景に、工作機械販売が低迷する懸念がある が、航空機、風力、鉱山など好調な需要分野によって、これらの損失が補われている。また、 世界的には工作機械市場は成長が予測されており、米国工作機械市場は、当面のところ堅調 が維持されるものと見込まれる。 -18-