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第1回「コーチングって何?」

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第1回「コーチングって何?」
最近になって、ビジネスの世界だけでなく、医療の世界でも「職場の上司と部下」や「医
師と患者」の間のコミュニケーションツールとして“コーチング”という言葉が一般的に
なってきました。弊社のホームページを訪れるのは医療の現場で勤務なさっている方々が
圧倒的に多いと思いますが、これから約半年間に亘って 2 週に 1 回ペースで、
“コーチング”
について自分の頭の中を整理しつつ、思いつくままにお話させて頂こうと思います。
今考えている概略のテーマとスケジュールは以下のように考えていますが、お話している
うちにどんどん変わっていくこともありなので、そのあたりはご勘弁をお願いいたします。
1.
コーチングって何?
2.
コーチングが必要になった時代的背景
3.
コーチングの基本原則
4.
コーチングとティーチング
5.
「変わりたい脳」と「変わりたくない脳」
6.
心理学からみたコーチングが機能する理由
7.
動機付け要因
8.
パラダイムからの脱却
9.
コーチングの基本スキル
10. 質問する(4回程度)
11. 傾聴する(3回程度)
12. フィードバックする(4回程度)
13. 部下育成のポイント
14. ミッション・ビジョンを共有する
15. GROWモデル
16. 目標設定のポイント
17. 最後に
さて、今日は第1回目の『コーチングって何?』です。早速始めたいと思います。
『第1回:コーチングって何?』
皆さんは、「コーチ」から何を連想されますか?
スポーツのコーチ、バッグのコーチ、四国の高知(冗談です)・・・
※バッグのコーチは今では革製品で有名ですが、当初は馬車のホロの生地でバッグ
を作っていたことにより、トレードマークが幌馬車(コーチ)になった経緯があ
ります。
実は起源は1500年代に遡りますが、語源はハンガリー北部のコークス(Kocs)という
村の名前で、この村では伝統的に自家用四輪馬車が作られていました。
このことから英国では「馬車」をコーチと呼ぶようになり、その後19世紀に貴族が子弟の
家庭教師としてケンブリッジなどの名門大学の学生を雇うようになり、以来、“コーチ”と
いう言葉が家庭教師を意味する俗語として用いられるようになりました。
つまり、生徒は家庭教師という「馬車」に乗せてもらって目的地まで連れて行ってもらっ
ているように感じたために、この呼称が使われ始めたそうです。
コーチングに対してトレーニングという言葉がありますが、「馬車(コーチチング)」は
「個々が自分の望むところに、自分の望むコースで進めるように手助けしてくれる」とい
うイメージに対して、「列車(トレーニング)」は「皆が決まった線路(コース)で、同じ
場所に、強制的に連れて行かれる」という違いをイメージしてください。
トレーニング
コーチング
上から下に行われる
横の関係で行われる
均一性が要求される
自ら選択する主体性を保持
評価するのはトレーナーである
評価するのは自分自身
その後、1880年代になって、スポーツの世界でも“コーチ”という言葉が使い始めら
れるようになりました。
スポーツの世界での“コーチ”がビジネスの世界で使われるようになったのは、さらに時
代が下って1974年に、米国のテニスコーチであるティモシー・ゴールウェイが「イン
ナー・ゲーム・オブ・テニス」という本を出版したのがきっかけです。
この本は、本来テニスのことを書いた本ですが、スポーツ界よりもむしろビジネスマンに
多く読まれてベストセラーになりました。当時は米国では統制型マネジメントが全盛でし
たが、過去の知識や経験に基づく“ティーチング”という手法では、人材育成という面で
行き詰まりを感じていた時代でもありました。企業が発展するためには如何に部下を動機
づけするかということが重要と考えられるようになっていたからです。
ティモシー・ゴールウェイがこの本の中で語っていることを簡単にご紹介すると、
一人の人間の中には、「セルフ1」と「セルフ2」が存在する。選手のスキルを上達させ
るためには、コーチは「こんなボールが来たときは」「スタンスはこのように」「グリップ
はこうして」
「フォロースルーはこのように」などと単に技術論を教えるのではなく、「明
確な視覚的イメージ」をプレーヤーに植え付けることによって、
「セルフ1」の弊害を断ち
切り、「セルフ2」がもつ感性を磨かせることが重要である。
問題解決のためには、自分がコントロールできるものとできないものとを識別できる知恵
を養わなければならないが、一面では目に見える事象にフォーカスすることによって、目
に見えないものをコントロールすることができるようになる。
重要変数(パフォーマンスを高めることに密接に関係する目に見える事象)にフォーカス
することによって、アウェアネス(気づき)を高め、学習能力やパフォーマンス能力を阻
害する『セルフ1』を鎮めることができる。
彼は、例えば選手に対して、
『ボールをよく見なさい』と教えるのではなく、
『テニスボー
ルの縫い目の回転方向が見えますか?』と質問します。そのことによって、選手の中に意
識されていない重要変数であるアウェアネス(気づき)を高めることによって、自然にテ
ニスが上達するように導いていきます。
ここまで書いて気が付いたのですが、これはBSC(バランスト・スコア・カード)の手
法によく似ていませんか?
BSCの手法については、いずれまたこのコーナーでご紹介する予定です。
パラダイム
セルフ1
知識・過去のノウハウに基づいた命令・義務感・思い込み
インナーゲーム(内なる戦い)
セルフ2
⇒
ありのままの自分・感性・成功
イメージ
意識して定着させる
コーチング
パラダイムからの脱却
ティモシー・ゴールウェイによる“コーチング”の定義は
「コーチングとは、会話や人間のあり方を通じて、対象者が、本人の望む目標に向かっ
て、本人の満足の行く方法で進むことを促進する環境を生み出す技術である。」
「コーチングとは、ある人間が最大限の成績を上げる潜在能力を開放することである。
それは、その人に教えるのではなく、その人が自ら学ぶのを助けることである。」
つまり、一流のコーチとは選手の能力を最大限に引き出すコミュニケーション能力(相手
を動機づけできる能力)を持った人であると言えます。
スポーツのコーチの役割を説明するエピソードとして、ゴルフの天才タイガーウッズとコ
ーチのブッチ・ハモンドの話がよく引き合いに出されますが、彼は大事なショットを打つ
前にタイガーにこう聞きます。
ブ ッ チ:
「このショットはどう打ちたいんだい?」
タイガー:
「こうやって打ちたいんだ」
ブ ッ チ:
「わかった」
タイガーがショットするとまたやってきて、こう質問します。
ブ ッ チ:
「今うまくいったね!いったい、どう考えて打ったんだい?」
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