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FSP006 - 日本加速器学会
Proceedings of the 13th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan August 8-10, 2016, Chiba, Japan PASJ2016 FSP006 若狭湾エネルギー研究センター シンクロトロンの現状 PRESENT STATUS OF THE SYNCHROTRON OF THE WAKASA WAN ENERGY RESEARCH CENTER 栗田哲郎 ∗A) 、羽鳥聡 A) 、林豊 A) 、長崎真也 A) 、廣戸慎 A) 、小田桐哲也 A) 、山田裕章 A) 、山口文良 A) 淀瀬雅夫 A) 、清水雅也 A) 、和田一人 A) 、辻宏和 A) Tetsuro Kurita∗ A) , Satoshi HatoriA) , Yutaka HayashiA) , Shinya NagasakiA) , Shin HiroroA) , Tetsuya OdagiriA) Hiroaki YamadaA) , Fumiyoshi YamaguchiA) , Masao YodoseA) , Masaya ShimizuA) Kazuto WadaA) , Hirokazu TsujiA) A) The Wakasa Wan Energy Research Center Abstract The accelerator complex at the Wakasa Wan Energy Research Center (WERC) consists of a 5 MV Schenckel type tandem accelerator and a 200 MeV proton synchrotron. Using this system, the element analysis,medical, biological and material sciences are performed. In the 2015 fiscal year of the period from May 11, 2015 to April 1, 2016, experimental time amounted 2051 hours. The percentage of experiment time using the synchrotron was 49.7%. Also we report development of LLRF system. In our system, the phase noise superimposed on RF causes to excite phase oscillation of beam bunch. The problem of the system is that the frequency multiplier which 10 multiplies the frequency generated by DDS amplifies phase noise. In the improvement plan, DDS directly generates RF frequency to eliminate the frequency multiplier. On the other hand, a signal to detect the cavity voltage must be produced by up-conversion. The detail design is reported. Also, calibration of cavity voltage using beam is reported. 1. はじめに 2500 Experimental Time [hour] 若狭湾エネルギー研究センター加速器施設 (W-MAST) は、タンデム加速器および、それを入射器としたシンク ロトロンによって、広範囲のエネルギーのイオンビーム (陽子 : 数 MeV-200 MeV; He, C : 数 MeV/u-55 MeV/u) を様々な実験に供給している [1]。シンクロトロンから のビームは、がん治療の基礎研究および材料/生物/細胞 への照射実験に利用されている。 2000 He2+ 220MeV 1500 C6+ <660MeV C6+ 660MeV 1000 H+ ≤100MeV H+ ≤180MeV 500 H+ 200MeV Tandem Accelerator Year Figure 1: Trend of beam time categorized by ion and energy. 1400 1200 1000 宇宙開発 800 材料照射 600 開発/調整 400 生物照射 200 臨床照射 医療(基礎/開発) 06 20 07 20 08 20 09 20 10 20 11 20 12 20 13 20 14 20 15 20 05 0 20 Figure 1 に近年のビーム別の実験時間(加速器の調整/ コンディショニングなどの時間を含めず、実験にビー ムを供給した時間)の推移を示す。 2008 年から、シンクロトロンの入射器であるタンデ ム加速器の耐電圧性能が劣化し、トラブル対応や修繕 作業のために多くの時間が割かれ、実験時間が減る傾 向にあった。2011 年 1 月から 2012 年 6 月まで、タンデ ム加速器の耐電圧を回復させるため、絶縁コラムの交 換作業が行われ、長期間の運転の中断が発生した。運 転は 2012 年度は 7 月から再開された。 2015 年 3 月から 4 月にかけて定期点検を行い、2015 年度は 5/11 から 2016/4/1 まで運転を行った。入射器で あるタンデム加速器のターミナル電圧が定格の 5MV ま で上がらないという問題はあったが、概ね計画通り実 験にビームを供給できた。 実験時間は昨年度 (2014 年度) と同程度の 2051 時間 であった。シンクロトロンを使った実験の割合は、約 49.7%であった。 Figure 2 に近年のシンクロトロンが使われた実験テー マ別の実験時間の推移を示す。シンクトロンのビーム 20 20 05 運転状況 Experimental Time [hour] 2. 06 20 07 20 08 20 09 20 10 20 11 20 12 20 13 20 14 20 15 0 Year Figure 2: Trend of beam time of the synchrotron categorized by experimental interests. ∗ [email protected] - 1332 - Proceedings of the 13th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan August 8-10, 2016, Chiba, Japan PASJ2016 FSP006 F.G. 10 0.5-10 MHz BPF 70.5-82MHz DDS LPF fc:15MHz 10MHz 加速高周波位相ノイズによる位相振動の 発生とその対策 近年、Figure 3 の上段のように位相フィードバックを オフにすると、位相振動が発生するようになった。通 常は、加速中は位相フィードバックにより位相振動を 抑制しているので問題にならないが、捕獲時(adiabatic capture)や出射時は位相フィードバックをオフにする 必要があるので、捕獲電荷および出射電流の安定性に 影響を及ぼす。 71.5-81 MHz 61.5-71 MHz 6.15-7.1 MHz reference signal 3. fDDS fRF 71MHz Reference signal generating part Feedback signal control part signal for detection の主な用途はイオンビーム育種や粒子線がん治療の基 礎研究である。2014 年度から、人工衛星搭載用電子機 器の放射線環境化での試験を行うユーザーが集まり始 め、2015 年度も 11%の利用時間の割合を占めた。 Cavity voltage pattern Superimposing 2nd Harmonics coherent detection BPF fc:71MHz BW: 70kHz Accelerating cavity Figure 4: Schematics of current circuit of low level RF. Generating Signal for Detection signal source is DDS IRM 0.5 DELAY DELAY 0 -1 1 0 DDS -0.5 ×2 and Phase Shift GAIN CONTROL AMP 180 Superimposing 2nd Hamonics Replacing the reference signal with a function generator 71MHz Reference Signal Phase difference between beam bunch and RF [a.u.] 1 Voltage Controller 0.5 Signal for Detection Cavity Voltage Pattern BPF fc:71MHz BW: 70kHz 0 -0.5 Coherent Detection -1 0 50 100 150 200 Time from the injection [ms] 250 300 加速 空洞 Feedback Processing Part Figure 3: Phase oscillation without phase feed-back (upper plot). The phase oscillation does not occur when the reference signal is replaced with a function generator (lower plot). 原因は、加速高周波信号に重畳する位相ノイズであ ること、加速高周波周波数生成部に位相ノイズを増幅 している箇所があることを確認している [2]。 Figure 4 に高周波制御系の概要を示す。源発振器であ る DDS の周波数を 10 逓倍し、PLL によって 10MHz に ロックされた VCO の周波数を足し合わせている。当初 は VCO にフィードバック信号を入力してビームフィー ドバックを行っていたが、現在はフィードバック信号 を ADC でデジタル化し、DDS に直接重畳させる方式 に切り替えている [3]。 このシステムでは DDS で生成した周波数を 10 逓倍 しているので、位相振動の原因である位相ノイズも 10 倍にしてしまっている。10 逓倍をやめれば、十分に位 相ノイズは小さくなり、位相振動が抑えられる [2]。 そこで、図 5 のように、DDS で加速高周波の周波数 を直接生成する方式に改造を進めている。この場合、空 洞電圧モニタ信号やビーム位置モニタの検波のために、 加速周波数に 71MHz を足し合わせた信号(検波用高周 波信号)が必要である。空洞電圧モニタ信号を検波用 基準信号を掛け合わせて中間周波数の 71MHz に変換し てから同期検波を行っている。 周 波 数 変 換 の 方 法 と し て 、Double Balanced Mixer(DBM) と ハ イ パ ス フィル タ ー を 組 み 合 わ せ る方法が考えられる。しかし、今回は 71MHz を搬送 Figure 5: An improvement plan of a circuit to generate reference signal. 波として HSB と LSB の間隔が 1.5MHz 程度であり、 周波数フィルターでは LSB を十分に減衰させることは できない。 そこで、Image Rejection Mixer(IRM)を用いる必要 がある。IRM のイメージ除去比は典型的には-20dBc 程 度である。すなわち、1/10 程度までにしかイメージ成 分は減衰できない。LSB の除去が十分で無い場合の空 洞電圧の検波出力への影響を、図 6 のような簡単なモ デルで考察した。 B : conversion loss 71MHz sin( 0t B/A : image rejection ratio C : LO Isolation 0) LO RF sin(ωt) High frequency oscillation source (DDS) 1-6MHz IRM IF A cos [( )t] B cos [( 0 + )t] + C sin( 0 t) intermediate frequency signal LO Amp, Cavity and so on IF delay Δt Cavity voltage monitor signal sin( t = 0 Signal for detection RF DBM 1 A cos(2 B ) B sin [ 2 0t + ] BPF ) t Figure 6: The effect of LSB when a cavity voltage signal is converted to intermediate frequency. 周波数発振器からの信号を分岐して、一つは加速空洞 などを経て空洞電圧モニタ信号 (Cavity voltage monitor signal) となる。もう一つは、IRM によって周波数 ω0 を 足し合わせて検波用高周波信号 (Signal for detection) と - 1333 - Proceedings of the 13th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan August 8-10, 2016, Chiba, Japan PASJ2016 FSP006 なる。検波用高周波信号の LSB の振幅を A、HSB の振 4 . ビームを用いた加速空洞電圧の校正 幅を B とする。イメージ除去比は B/A となる。 図 8 に W-MAST のシンクロトロンの加速空洞の空洞 空洞電圧モニタ信号はアンプや加速空洞などを経由 電圧のモニタ系の概略を示す。 しているため、検波用高周波信号に対して時間遅れ ∆t による位相差 ∆ϕ = ω∆t が発生していると考えられる。 空洞電圧モニタ信号と検波用高周波信号を混合し、バ Magnetic ンドパスフィルターによって中間周波数 ω0 の成分を抜 Alloy き出すと、 A+B B−A cos ∆ϕ sin[ω0 t] + sin ∆ϕ cos[ω0 t] 2 2 (1) Vacuum Duct となる。A/B ≪ 1 という条件で近似すると、 { A 1 − cos(2∆ϕ) B } B sin [ω0 t + ψ] 2 (2) Amplitude of Cavity Voltage [arb. unit] となる。すなわち、中間周波数信号の振幅が位相差 ∆ϕ に依存するようなり、空洞電圧の検波出力も ∆ϕ に依 存するようになる。空洞電圧の検波出力は空洞電圧の フィードバック制御に用いられており、∆ϕ は周波数に 依存するので空洞電圧が加速とともに変化することに なる。 図 7 は IRM を用いて生成した検波用高周波信号を用 いた場合の、周波数に対する空洞電圧の振幅の変化で ある。周波数とともに位相差が変化するので、振幅が うねっている(図 7 の青線)。おおよそ 7-8%の変化幅 がある。 without cable delay with cable delay 0.25 0.2 0.15 0.1 0.05 0 1e+06 2e+06 3e+06 4e+06 frequency [Hz] Insulation Section 5e+06 Figure 7: Frequency dependency of amplitude of cavity voltage due to image component of the IRM. 周波数の変化に伴う空洞電圧モニタ信号と検波用高 周波信号の位相差をキャンセルするために図 5 のよう に、IRM の入力信号にケーブルディレイを入れた。空 洞電圧の振幅の周波数に対する依存性が最小になるよ うにケーブルディレイを調整した結果が、図 7 の緑線 である。2-3%程度まで振幅の変化を抑えられているが 完全に周波数に対する依存性を無くせていない。IRM や加速空洞などで、位相差の変化が周波数に対して非 線形になっており、ケーブルディレイでは完全にはキャ ンセルできない。 最終的には、IRM のイメージ除去比を-30dB 以上に して空洞電圧の振幅の周波数に対する依存性を 1%以下 に抑えることを計画している。 Cavity Voltage Monitor output Differential AMP Figure 8: A schematic of circuit of cavity voltage monitor. 磁性体の周りにワンターンのピックアップコイルが あり、そこで発生した電圧を容量分割器によって分割し ている。上流側と下流側の容量分割器の出力を差動ア ンプを経由させグラウンドからの電圧に変換して、空 洞電圧モニタの出力としている。 空洞電圧の校正係数は容量分割器の分割比と差動ア ンプのゲインによって決まる。これらの校正のために、 実際の空洞電圧と同程度の模擬入力を得ることは容易 ではない。そこでビームを用いて空洞電圧の校正係数 の導出を行った。 空洞電圧を反映した物理量としてシンクロトロン振 動数と同期位相が考えられる。シンクロトロン振動数 から空洞電圧の導出には momentum compaction factor が必要であるが、momentum compaction factor は計算 から推測するほかない。そこで、同期位相の測定から 空洞電圧の導出を試みた。 空洞電圧を V (t) = V̂ sin(ωr t) (3) とすると、同期位相 ϕs は加速勾配 で決定される。 C dp V̂ = sin ϕs dt dp dt と周長 C でだけ (4) そこで、図 9 のような、フラットトップとフラットベー スの間で加速勾配が一定となる偏向電磁石のパターン でビームを加速する。そして、空洞電圧モニタ信号と バンチモニタ信号を同時に測定し、空洞電圧とバンチ 信号の位相差の変化を調べる。 位相差は、空洞電圧モニタ信号を搬送波としてバン チ信号を I/Q 信号に変換することによって得られる。そ のスキームを図 10 に示す。 空洞電圧モニタ信号を sin(ωr t) とし、バンチ信号を sin(ωr − ϕs ) とする。ここで ϕs は同期位相とする。空 洞電圧モニタ信号を 90 度位相をずらした cos(ωr t) はヒ - 1334 - Proceedings of the 13th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan August 8-10, 2016, Chiba, Japan PASJ2016 FSP006 Flat Top BL [(T/m)*m] 0.6 dp = const. dt 0.5 Synchronous Phase during Acceleration 0.4 0.3 Flat Base 0.2 50 100 150 200 time [ms] Figure 9: The pattern of bending magnet to evaluate synchronous phase. Figure 11: Change of phase difference between a cavity voltage monitor and a beam bunch over time. sin( rt Evaluated Cavity Voltage Monitor [V] LPF Beam Bunch s) I = cos( DELAY s) 0 Cavity Voltage sin( r t) Monitor DELAY Q(t) tan s (t) = I(t) 90 Q= sin( s) LPF Figure 10: A scheme to obtain IQ signals for the beam bunch signal. 450 Evaluation with Synchronus Phase 400 y = 836.79x - 11.123 350 Evaluation with Synchrotron Frequency 300 250 200 150 100 50 0 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 Cavity Voltage Monitor [Vpp] Figure 12: Calibration line of cavity voltage. ルベルト変換を利用して求めることができる。空洞電 圧モニタ信号とバンチ信号を掛け合わせ、LPF で高周 波成分を除去することにより、IQ 信号が得られる。 I(t) = cos(ϕs (t)) Q(t) = − sin(ϕs (t)) (5) (6) これより、同期位相は − tan ϕs (t) = Q(t) I(t) (7) と求められる。 空洞電圧モニタ信号とバンチ信号にはケーブルディ レイによる位相差があるので、補正する必要がある。フ ラットベースとフラットトップでの同期位相はゼロで あり、一致するはずである。すなわち、フラットベース とフラットトップの同期位相が一致するようにディレ イを調整する。そして、フラットトップ/フラットベー スの位相と加速中の位相の差が加速中の同期位相であ ると考える。その結果を図 11 に示す。 空洞電圧の設定を変えて幾つかの同期位相及びそこ から評価される空洞電圧から校正曲線を得た。結果を 図 12 に示す。合わせて、シンクロトロン振動数から得 られた、空洞電圧も合わせてプロットする。両者は一 致しており、もっともらしい結果が得られたことを支 持している。 5. まとめ 2015 年度は、加速器施設全体の実験時間は 2051 時間 であり、その内シンクロトロンを使った実験は約 49.7% であった。昨年度とほぼ同じ程度の実験時間であった。 シンクロトロンに発生している位相振動を除去し、 ビームを安定化させるために高周波基準信号に重畳す る位相ノイズを低減させる改造を検討している。アッ プコンバージョンによって、RF 周波数+71MHz の空洞 電圧検波用信号を生成するのために IRM の使用及びイ メージ成分の影響を評価した。その結果、十分に実用 になる見通しを得た。 ビームを用いて空洞電圧モニタ信号の校正を行った。 加速位相から空洞電圧モニタの校正を行い、シンクロ トロン振動数からの評価と良い一致を得た。 参考文献 [1] S. Hatori et al., “ Developments and applications of accelerator system at The Wakasa Wan Energy Research Center ” Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B241 (2005) 862. [2] 栗田哲郎 et al., “ 若狭湾エネルギー研究センター シンク ロトロンの現状 ”第 12 回日本加速器学会年会プロシー ディング, 2015. [3] 栗田哲郎 et al., “ 若狭湾エネルギー研究センター シンク ロトロンの現状 ”第 10 回日本加速器学会年会プロシー ディング, 2013. - 1335 -