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ドリフトチューブ線形加速器の省電力化に関する要素技術開発

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ドリフトチューブ線形加速器の省電力化に関する要素技術開発
Proceedings of the 10th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (August 3-5, 2013, Nagoya, Japan)
ドリフトチューブ線形加速器の省電力化に関する要素技術開発
COMPONENT TECHNOLOGY DEVELOPMENT FOR ELECTRIC POWER SAVING
WITH A DRIFT-TUBE LINAC
山本和男#, 永山貴久
Kazuo Yamamoto #, Takahisa Nagayama
Mitsubishi Electric Corporation
Abstract
A drift-tube linac has been employed for a low energy region of a hadron accelerator, and the application diverges into
many branches from investigation to an industrial use. One of the biggest problems of this system is enlargement of a
power supply system for it needs several hundred kW at a peak to operate. The power consumption of a drift-tube linac
is estimated as sum of a wall loss, which is proportional to resonator surface resistance including contact region, and a
beam loading. Therefore we tried to apply a cryogenic apparatus to reduce wall loss which is correlated with
temperature. We manufactured several prototype drift-tube cavities, consisting 2 cells, and applied 30 K approximately.
Then the Q-factor, which is inversely related with wall loss, was measured. The prototype cavity which has edge shape
contact shows more than 2 times Q-factor which means we would be able to reduce power consumption to half.
In this paper, we report the structure characteristic of the prototype drift-tube cavities and the temperature dependence
test result of the Q-factor .
はじめに
ドリフトチューブ線形加速器は、ハドロン加速器
の低エネルギー部分に使用され、用途は研究用から
産業用まで多岐にわたる。ドリフトチューブ線形加
速器を運転するには、ピークで数百kWの高周波電
力量を必要とする [Ref.1-2] ため、電源システムの肥大
化が課題である。
高周波電力は、ドリフトチューブ電極(DT)間
に加速電界を発生させるため共振器へ供給される。
その量は共振器での消費電力量と加速ビームによる
ローディング量で決まる。上記共振器での消費電力
量は、共振器内の接触抵抗と表面抵抗による量であ
る。
そこで、上記課題に対し、低温状態で物質の抵抗
値が減少する物理現象を、ドリフトチューブ線形加
速器の共振器に適用し、上記共振器での消費電力量
を低減させることで、電源システムを小型化にする
要素開発を実施している。
表面抵抗を削減するためには、残留応力ひずみに
よる接触抵抗の増加のほか、動作温度点でのQ値変
動が問題となる。上記らは消費電力量が増加する要
因であるが、低温状態でのDT位置の変動も、加速
器としての性能を劣化させる要因となる。また、共
振器構造の製造技術として、たとえば拡散接合方式
[Ref.3]
を用いるとメンテナンス性が低下することも問
題である。
本開発では、製作が容易で低コストに消費電力量
を半減される低温ドリフトチューブ線形加速器の基
礎検討として、セル数 2 からなる IH 型共振器を、
冷凍機により最大 30 K まで冷却する特性評価機を
試作した。
本発表では、特性評価機の構造特徴と、特性評価
機を用いた Q 値の温度依存性試験結果について報
告する。
2.
特性評価機の設計
2.1
共振器形状設計
図 1 に特性評価機用共振器の寸法図を示す。共振
器構造としてIH型を採用し、DT形状は外径φ30 mm
内径φ12 mmを採用した。DT長は 2 本とも 50 mm、
ギャップ長は 25 mmに固定し、共振周波数が 400
MHz 程 度 に な る よ う 3 次 元 電 磁 界 解 析 ソ フ ト
SOPRANO[Ref.4] を使用して空洞径を設計した。その
結果、空洞径はφ229 mmにて共振周波数 400.88
MHz、Q値 7073 が得られた。
φ30
φ12
25
50
25
50
25
φ10
30
25
125
25
175
Figure 1: Dimensional outline drawing of the resonator.
___________________________________________
#
φ229
50
1.
[email protected]
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Proceedings of the 10th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (August 3-5, 2013, Nagoya, Japan)
内に固定する支持部材から構成される。超電導空洞
に使用される液体ヘリウムや液体窒素などの液体媒
体は用いず、冷凍機のみで冷却する構造とした。
冷凍機からの低温状態を共振器に伝熱する伝熱性
部材形状および共振器を真空容器内に固定する支持
部材形状は、入熱と冷凍機特性から検討した。輻射
に対しては、外部からの輻射による伝熱の抑制に20
層のMulti Layer Insulator(MLI:輻射4 W/m2 以下)
を採用し、輻射による伝熱を2.8 Wに抑えた。また、
伝熱に対しては、共振器を容器内に固定する支持部
材としてガラエポ樹脂を採用し、支持部材の形状を
強度的に必要最小限としたことから、入熱3.1 Wに
抑えた。その結果、外部からの入熱は5.9 W と見積
もったが、実際には、これにQ 値測定用アンテナ
からの熱流入、測温抵抗からの入熱などが加わり10
W程度になると想定している。
Table 1: Specification of the resonator
共振周波数
400 MHz
Q値
7000
共振器全長
175 mm
共振器内径
φ229 mm
ドリフトチューブ電極数
2 本
ドリフトチューブ電極長
50 mm
ドリフトチューブ電極形状
外径φ30 mm
内径φ12 mm
リッジ長
2.2
125 mm
共振器構造設計
共振器構造は、製作の容易さと DT 同士の同軸度
確保のため、DT とリッジを有する構造体を DT ユ
ニットとし(図 2(a))、それに半円筒形状の銅板を
取り付ける構造とする。通常のドリフトチューブ線
形加速器では、銅板が真空容器を兼ねていたため、
強度・気密の観点から、一体物として削り出してい
た。しかし、特性評価機における共振器構造では、
断熱の必要性から、ビーム通路を除く共振器全体を
断熱材で覆い、断熱材ごと真空容器に格納する必要
がある。そのため、銅板に要求される機能は、冷却
時の DT ユニットとの接触抵抗が低く、ある程度の
位置精度が確保できることである。そのため、銅板
を側部と胴部とに分け、端部と側部との間には RF
コンタクトを使用する薄板接続構造を採用した。
DT
リッジ
真空容器
伝熱性部材
冷凍機
共振器
支持部材
Figure 3: General drawing of the prototype cavity.
胴部
側部
Table 2: Specification of the prototype cavity
RF
コンタクト
(a)DT ユニット
(b)共振器構造
Figure 2: Schematic drawings of the resonator.
3.2
共振器材質
(表面粗度)
銅 C1020
(▽▽)
冷凍機
SHI 製 CH-110
真空容器全長
750 mm
真空容器外径
φ670 mm
冷凍機-共振器伝熱性部材
銅 C1020
共振器固定支持部材
ガラエポ樹脂
真空排気機器
ターボ分子ポンプ
ヒータ
HI-SD ROD
全体設計
カートリッジヒーター
図 3 に特性評価機の全体構成図を示す。前項の
400 MHz 共振器と、最大 20 K まで冷却可能な冷凍
機と、低温状態を保持する真空容器、および冷凍機
と共振器を連結する伝熱性部材、共振器を真空容器
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温度測定器
極低温用白金-コバルト
測温抵抗体
Proceedings of the 10th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan (August 3-5, 2013, Nagoya, Japan)
Q 値の温度依存性試験
3.
図 4 に製作した特性評価機の全体図を示す。周辺
機器として真空排気系と真空度計、温度上昇用の
ヒータが DT ユニットに、温度計は DT ユニットと
銅板の側部に取り付けられている。Q 値はネット
ワークアナライザを用いて共振周波数とともに温度
に対して測定を実施した。
図 5 に DT ユニットの温度と共振器の Q 値の測定
結果を示す。共振器の構造は上述した薄板接続構造
であり、DT ユニットと銅板との接触面には接触抵
抗を削減するための RF コンタクトとしてインジウ
ム線を取り付けている(図 6(a))。
図 5 より、インジウム接触の場合、60 K あたり
で Q 値が一時低下する現象が再現性を持って測定
された。これは、DT ユニットと銅板を構成する銅
材(C1020)中に、熱収縮率の異なるインジウム線
が入ることにより、一時的に接触面における接触抵
抗が増加したと考えられる。
そこで、銅板胴部側の接触面構造をエッジ状にし、
温度の低下とともに DT ユニットに銅板が食い込み
接触抵抗がより低減する構造に改良した(図 6(b))。
その結果、一時的に Q 値が低下する現象は解消さ
れ、100 K 程度で常温 Q 値の 2 倍、60 K 程度で 3 倍、
30 K 程度で 3.8 倍まで Q 値を増加できることが実証
できた。60 K 程度以下では理論値から外れていく
が、銅の材料特性や表面粗度の影響と考察される。
真空度計
真空容器
ネット
アナ
(b) Connection with a sharp edge.
Figure 6: Partial view of the connection area.
共振器
(MLI 内)
4.
温度計
Q値 (常温での値を1と規格)
ヒータ調整用
スライダック
Figure 4: General view of the prototype cavity.
5
理論値
エッジ接続
インジウム接続
4
参考文献
3
2
1
50
100
150
200
温度 [K]
Figure 5: Measurement results.
250
まとめ
セル数 2 からなる IH 型共振器を用いた特性評価
器を設計試作し、低温度に対する Q 値測定を行っ
た。接触面にインジウムの RF コンタクトを用いた
場合、低温過程にて接触抵抗が増加する現象が測定
されたが、エッジ形状を用いた接触方式により改善
された。C1020 の材質で表面粗度▽▽程度の共振器
にて、100 K 程度で Q 値が 2 倍になることから、高
真空排気機器の代わりに冷凍機を採用し、かつ、液
体媒体を使用しない伝熱性部材による冷凍構造を用
いれば、低コストに消費電力を半減できるドリフト
チューブ線形加速器を得る可能性が示唆された。
真空排気
機器
0
(a) Connection with an indium.
300
[1] K. Yamamoto, et. al., “Experimental verification of an APF
linac for a proton therapy facility” Nuclear Instruments and
Methods in Physics Research B 269 (2011) 2875-2878.
[2] Y. Iwata, et. al., “Performance of a compact injector for a
heavy-ion medical accelerators” Nuclear Instruments and
Methods in Physics Research A 572 (2007) 1007-1021.
[3] Isamu Sato, et.al., “ Development of the compact source of
monochromatic coherent X-ray for cancer medical
treatment” Proceedings of the 7th Annual Meeting of
Particle Accelerator Society of Japan, pp219-223, August
4-6, 2010, Himeji, Japan
[4] Cobham Technical Services, http://www.cobham.com/
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