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プラズマ計測におけるレーザートムソン散乱

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プラズマ計測におけるレーザートムソン散乱
(KYU至当δi寒湿擶K搬俘論点瀟窃
九州大学大学院総合理工学研究科報告
第21巻第2号155−160頁平成!!年9月
Vol.21, No,2pp.155−160 SEPT.1999
プラズマ計測におけるレーザートムソン散乱
スペクトルの微弱光観測の極限的性能
村 岡 克 紀*・M.D. BOWDEN*・内 野 喜一郎*
貯留康弘**・野口正紀***・M.A. MANSOUR*
(平成11年5月22日 受理)
The ultimate detection capability of measuring spectra of laser
Thomson scattering for plasma diagnostics
Katsunori MURAOKA, Mark D. BOWDEN, Kiichiro UCHINO,
Yasuhiro SUETOME, Masanori NOGUCHI and Mansour A. MANSOUR
The ultimate detection Iimit of laser Thomson scattering for plasma diagnostics is discussed, in terms of
the signal−to−noise ratio (SNR) for the detected photon numbers against various possible noise sources.
First, the general expression of SNR is given, and detailed discussions are made for Thomson scattering in−
tensities against noises caused by Rayleigh scattering and the stray light, based on measured slit functions.
Possible means of improving the obtained detection limit are discussed, and it was found that・the refinement
of spectrometers would be the clue for achieving the detection limit in electron density of the order of lO15
m−3 Ctypical of an RF(radio−frequency)capacitively−coupled plasma. Afurther discussion is made for a
possibility of performing a Thomson scattering experiment on discharges realized in a plasma display paneL
Following the above findings, it looks feasible to carry out the experiment even for this plasma having a re−
latively modest electron density of lO18m−3 but extremely small scattering volume(0.1×0.1×0.3mm3).
1.序
論
レーザートムソン散乱による電子温度,密度測定法
の各種放電プラズマに適用してプラズマ中の電子挙動
解明のために有用なデータを得てきた]).その過程で,
1980年代後半からグロー放電プラズマへの適用を開始
は1960年代後半に電子密度1019m−3以上を有する磁界
した.それはこの頃から電子サイクロトロン共鳴
閉じ込め高温プラズマの「非協同トムソン散乱」計測
(ECR, electron cyclotron resonance)プラズマや誘導
法として開発されたもので1),散乱光の強度から電子
結合プラズマ(ICP, induction coupled plasma)とい
密度,散乱光のスペクトルから電子の運動状態が得ら
う電子密度が1018m−3台の,いわゆる高密度グロー放
れる.後者の散乱光スペクトルは電子の運動の結果の
ドップラー効果を直接反映するので,その測定により
電プラズマが実現され,それらが半導体製造プロセス
に利用されようとして実用上からそのプラズマ性能解
電子エネルギー分布関数を求めることができる.もし
明への要求が大きかったことによる.同時にその電子
それがガウス分布のときは電子群内で十分熱化が進ん
密度がトムソン散乱手法の密度下限に入る可能性がで
でいるとの確認が得られ,同時にそのスペクトル幅か
てきたというのが着眼点であった2).実際にはグロー
ら電子温度を求めることができる.
放電プラズマがDCで点火していることを利用して,
その後,この手法は1980年代中頃までにレーザー
多パルスレーザーを用いて微弱なトムソン散乱信号を
レーダーの技法と組み合せたLIDAR(light detection
データ積算して稼げば,1016m−3台のプラズマまで測
and ranging)トムソン散乱やmm単位の空間分解能を
定できることを示して実績を挙げてきた3).またその
持ちブラウン管画面上にスペクトル形状とその空間分
過程で,ある種のグロー放電では電子エネルギー分布
布を二次元表示するようなTVTS(television Thom−
関数(EEDF, electron energy distribution function)
son scattering)などの高度な形式にまで完成された。.
がマックスウェル分布から外れる場合があることを示
著者らはこの手法を1970年代よりアーク放電その他
し3),それは電子間のエネルギー緩和の不足により説
明できることも示した4).
*量子プロセス理工学専攻
**
ハ子プロセス理工学専攻修士課程(現在㈱東芝)
***
汢ェ工業大学工学部
以上の成果を基に,本研究はレーザートムソン散乱
スペクトルの微弱光観測の極限的性能を決めているソ
一156一
プラズマ計測におけるレーザートムソン散乱スペクトルの微弱光観測の極限的性能
と書けば,微分断面積σ(ゐ,θ)はπ、(r)には依存せ
incident laser beanl
ず,π、(r,∂のみに関係する.π、(r,’)は電子自身の
wavelength:λi
intenSity:Io
熱的揺らぎによるものと,個々のイオンが電子による
plasma
デバイ遮蔽によって電子群に遮蔽された状態で熱運動
し,それに追従する電子群の密度揺動とに分けること
洩
ができる,前者の密度揺動が寄与する散乱断面積を電
子項σ,(ん,θ)と呼び,後者をイオン項σ,(ん,θ)と
呼ぶ.すなわち
σ(λゴ,θ)=σθ(λゴ,θ)十の(ん,θ)
(3)
と書ける.σ、(λゴ,θ),の(ん,θ)はプラズマの条件と
Fig.1
Scattering of laser light by a plasma. The
散乱条件(入射電磁波の波長λi,偏光と散乱角θ)に
left−hand inset indicates the vector relationship be−
tween incident(傷),scattered (ゐ3),and differen−
よって決まる.島一ゐ、=ゐ(ただし,光散乱ではコ
tial(た)wave−veCtOrS.
ンプトン散乱を無視できるので1傷1=1ん、1=2π泌
と書け,そのベクトル関係はFig.1の配置の下では
フト的およびハード的因子を明らかにすることを第一
その挿入図のようになる)として,無次元量1制λD
の目的にしている.さらに,この極限的性能ぎりぎり
が1よりずっと大きいかまたは1に近いかで定性的特
のパラメータを持つ実用上重要な二種類の放電プラズ
マ(高周波放電プラズマ,プラズマディスプレイ放電
徴が大きく異なる.前者,すなわち散乱の差波長λ
=2π/1祠がデバイ長λDより十分小さければ,プラ
プラズマ)についての計測実施の際の問題点と,その
ズマによる散乱断面積は電子の熱運動のみによって決
解決策を明らかにすることを第二の目的としている.
まる.これを電子の個々の熱運動によって決まるという
意味で非協同的散乱(incoherent scattering)と呼ぶ.
2. トムソン散乱信号の大きさ
電子速度分布関数がマックスウェル分布の場合
弔 1
2.1散乱スペクトルの一般式
電磁波の粒子群による散乱強度を求めるために
Fig.1の記号を用いる.すなわち,入射電磁波の波長,
KneC
」ωpc
σ=σe=
2紬・i・(θ2)伽
θ
2ω・sin喜
強度をそれぞれλi,1。とし,散乱角θ方向の受光立
(4)
体角49あたりの波長がλとノ+4λの間にある散乱
光強度1(λ)は
・
ここで,ωi=2πレi=2π6μi,6は光速,砺は電子の
平均熱速度』ωD=ん・o,κは定数である.
1(λ)4∫24λ=10・π・レP・σ(λ歪,θ)494λ
(1)
逆に,後者すなわち差波長λがデバイ長λDと同程
度かそれ以上になれば,電子項とイオン項が同程度の
で与えられる6).ここで〃は粒子数密度,σ(λi,θ)は
大きさになる.これはイオンを遮蔽する電子群の協同
微分散乱断面積,レは散乱体積である.散乱種によ
的運動による散乱という意味で協同的散乱(collec・
ってレーリー(電磁波波長に比して十分小さい場合で,
tive scattering)と呼ばれ,散乱スペクトルは7セ, Z,
レーザー光の場合は原子・分子等による),ミー(電
槻/鵬に複雑に関係する.
磁波波長と同程度以上の粒子群による)など多数のも
本研究で対象にする可視域近辺の波長のレーザーを
のがあるが,特に荷電粒子の場合をトムソン散乱と呼
用いた散乱で,θ=90。程度,グロー放電のパラメー
ぶ.電子,イオンが共存しているときの散乱は質量の
タのプラズマの場合は1制あ》1となり,非協同散
大きな違いにより電子によるものが圧倒的に(質量比
乱領域にある.
ほど)大きく,イオンによるものは無視できる.
2.2 散乱スペクトル強度
プラズマ中の電子群からの散乱を考える.位置r,
Fig.1の配置で受光システムに入射する非協同ト
時間’での電子密度を〃、(r,ρとし時間平均密度を
ムソン散乱による波長λからλ+4λにある光子数
喝(r),密度揺動を喝(r,’)として
く砺(λ)は式(1),(3)より
η,(r,’)=喝(r)十喝(r,’)
(2)
砺(λ)一{1(λ)加}d9一(鷺1)恥V碗(λ・θ)d9
(5)
平成11年
九州大学大学院総合理工学研究科報告 第21巻第2号
一157一
で与えられる.ここで,1(λ)を加i@:プランク定
i ,。佑1、pec,mm
数,レi=c/∼i)で除して散乱強度を光子数に直し,為
=E〃〈S(EZはレーザーエネルギー, Sはレーザー
ビームの散乱部での断面積)として実験パラメータに
曾
置き換えた∫
包
光電測光観測のSN比を決めるのは光電変換後の光
電子数である.波長λからλ+4λ間のそれを2>T
レ灘
,の
=
i
嘗
一讃一苧鰯純、饗.繍・
9ら
NT(λ)=Nph(λ)ηεNMfD
emission
着
鼻
(λ)とすれば,
b・・k即・un
㍉
器
532i
538
i〃
(6)
525
530
となる.ここでηは観測系の透過率(式(1)では無視
540
wavelength(nm)
した入射光学系の透過率もこれに含ませることとす
Fig・3
Arl example of measured scattered spectra.
る),εは光電子増倍管の量子効率,砺は観測時間内
のレーザーパルス数,乃は微弱光観測に用いるフォ
30mTorr Rayleigh
トンカウンティングシステムの効率,である.
1104
3.微弱散乱スペクトル観測のSN比を決め
8000
る要因
1011㎡・
3.1概
要
6000
々
電子密度がいくら低くてトムソン散乱信号が小さく
ても,多パルスレーザーを用いてデータ積算すればい
くらでも信号が増える,しかしノイズも積算されるの
旨
毬
4000
=
臨
あ
2000
で,結局検出下限はこのデータ積算過程で生ずるノイ
一一
E…
@・・101呼m・3・・
ズに対して信号を十分なSN比で検出できるかどうか
0
で決まる.
1011㎡3
この状況下でのノイズ源としては二種類ある.その
一つはプラズマからの背景光であり全スペクトルに分
一10
あり,レーザー波長において分光器の装置幅の範囲内
に鋭いピークをもって現れる.前者については既報で
0
5
10
△λ(㎜)
布する.他は中性気体等からのレーリー散乱光とプラ
ズマ容器壁等によるレーザー光の乱散乱による魚心で
.5
Fig.4 Comparison of a Rayleigh scattering spectrum from
an argon gas at 30 mTorr with the Thomson scat−
tered spectra at indicated different electron
densities.
論じているので6),回報では後者について検討する.
YAG Iaser
Plasma
v勢gd㎜P
3.2 実験装置及び実験方法
Fig.2に実験装置を示す.ここでの実験対象のプラ
ズマを4章の一つの応用目標である高周波(RF)放
Beam d㎜P
国一一一
電により得られるものとした.その放電プラズマに
ノ
Bames
YAGレーザーの第二高調波(波長532 nm)を入射し,
プラズマからの散乱光を受光レンズで集光して分光器,
ICCDカメラで信号を検出する.散乱光以外の光を最小
Double
monochromater
\
限に抑えるために本研究では従来にも増してバッフル,
ビューイングダンプなどを慎重に設計し,配置している.
3.1に述べた代表的なスペクトル形状をFig.3に
示す.
ノ
ICCD Camera
Fig.2
Arrangement of laser scattering apparatus on an
RF discharge plasma.
1)既設システムでの検出下限
Fig.4は30mTorrのレーリー散乱とトムソン散乱
のスペクトルを示す.同図より,電子密度が1017m−3
プラズマ計測におけるレーザートムソン散乱スペクトルの微弱光観測の極限的性能
一!58一
35
● 0.lmTo礎
1017
▲ lmTon
■ 3mTom
30
…●…
× 10mTorr
+ 30mTo㍑
c..._,..
25
..
○
φ
20
髪
の
15
4
▲
o
φ
ボ
旦 1016
○
口o
4
■
10
”白… …
○
▲
吻
5
*
拳 +
=D.....*..
*
十
十
,.
+
0
0.1
0.2
03
0.4
0.5
0.6
0.7
0.8
1015
Fig・5
10
1
0.1
slit width(㎜)
100
pressure(mToπ)
.Signaレto−noise ratios (SNR)calculated from Eq.
(7)atハ砺=4800 for a plasma having T、=2.5eV
Fig・6
andηβ=1×1016 m−3 against Rayleigh scattering in−
Electron densities which yield SNR=10 at a slit
width of O,7mm at different pressures.
tensities at different slit widths at the indicated
pressures。
lo17
膠Gaussian distribution
のトムソン散乱スペクトルもレーリー散乱に埋もれて
怩leasured distribution
しまうように見える.ここではこのような状況下での
レーリー散乱信号とトムソン散乱信号についての検討
●
を行い,既設のシステムを用いての電子密度の検出下
限を求める.ここではプラズマの電子温度を,高周波
放電の典型的な値として2.5eVとした.またレー
@
φ
F
且lo’6
@
口の
ザー迷光はレーリー散乱スペクトルに等価的に含ませ
■
モ
て考える.
■
@
?’
レーリー散乱信号の影響が少ない(」λT)、/2<」λ〈2
10wer hmit fbr ideal
申
/
rpectrometer
(」λT)1/2の範囲で正確なトムソン散乱スペクトルを観
10置5
測する状況を考える.この波長域で次式で表わされる
0」
SN比が10以上,すなわち
S/N=
S
lO
100
pressure(mTorr)
Fig。7 A possibility of improving the lllinimum detection
N。・〉高
価 画
l
>10
(7)
limit of electron densities from the measured(●),
through Gaussian (■), ultimately to the idea正
(horizontal line).slit functions.
を検出下限と考える.ここで,NTはトムソン散乱,
NRはレーリーによる光電子数を表す.
この検討では既設のシステムで分光器の入ロスリッ
2)システム改良による電子密度の検出下限の改善
の可能性
ト幅を0.2∼0.7mm,動作ガス圧力0.1∼30mTorrと変
上記1)で述べたように,既設のシステムで数
化させてレーリー散乱スペクトルを求めた.次に電子
mTorr以下の低圧力の放電ではユ015m−3オーダーの測
温度が2.5eV,電子密度が1×1016m−3のトムソン散
定が可能であるが,高圧力(数10mTorr)の放電では
乱スペクトルを算出し,式(7)からSN比を算出した.
それは困難になる.ここではこの改善の可能性を検討
結果をFig.5に示す。縦軸にSN比,横軸にスリ
する.考えられる改善の可能性は次の三点である.
ット幅をとり,0.1∼30mTorrの動作ガス圧力に対す
a)装置関数が理想的な分光器を用いるシステム
るSN比を表している.この結果,どの動作圧力に対
b)装置関数の狭い分光器を用いるシステム
しても入ロスリット幅0.7mmがSN比が最:も高いこと
c)他のレーザー光源を用いるシステム
が判明した.
a)分光器の装置関数は光の回折,光軸のずれ,球
Fig.5のスリット幅0.7mmでSN=10を満たすとき
の電子密度を求め,Fig.6に示す.
面収差や,グレーティング等様々な分光器に関する要
因,ICCDカメラのイメージインテンシファイアーで
平成11年
九州大学大学院総合理工学研究科報告 第21巻 第2号
の多重反射,光電面での電荷による斥力などにより,
一159一
のである.しかしその放電寸法が0.2mm程度であるこ
理想的な直線プロファイルから外れる.そこで,装置
とからプラズマの内部状況を把握することが困難で,
関数が理想的な直線プロファイルの場合とガウス関数
専ら試行錯誤的な開発が進められてきた.すなわち,
の場合について検討し,Fig.7を得た.この図は装置
放電ガス種や圧力,電極配置,電圧印加様式などを変
関数が理想的な場合に近づくことにより検出下限が下
えた場合のプラズマからの放出光強度や寿命を評価す
がっていき,電子密度が1015m−3オーダーの測定の可
ることが行われてきた.その結果,上述のように市販
能性が出てくることを示している.
品販売のレベルにまで達したことは日本メーカーの技
b)関連して,前節までに述べた分光器(入ロスリ
術開発力に敬服するばかりである.しかし,現状では
ット0.3mmで装置関数0.62nm(半値半幅))より装置
電気入力の有効なプラズマ光放射への変換効率は数%
関数が狭いものを用いることでも改善の余地がある.
程度であるとされ,これが40インチ級のテレビでの
c)レーザー光源の波長を変えることにより,その
500W以上という大電力消費の原因になっている.そ
波長域でのプラズマ背景光,レーリー散乱信号が変化
のため,その低効率の原因を究明して効率改善の方策
する.プラズマ背景光は動作ガスに特有な信号である
を立てるため,放電シミュレーションと比較できるよ
のでプラズマ背景光が小さい波長域の光源を用いれば
うなプラズマのパラメータの計測が求められている.
影響が小さくなる.他方,レーリー散乱信号について
本グループではそのためにすでに電界計測プロジェク
は波長の4乗に反比例するので,現在用いているレー
トに着手しているが,同時に光放射に直接かかわる電
ザー光源(YAGレーザーの第二高周波,波長532nm)
子諸量についてトムソン散乱計測が行えないかを検討
よりも長い波長の光源を用いることで急激に小さくな
してみることとした.
ここで得られる典型的放電プラズマの電子諸量は,
る.
その際,トムソン散乱信号強度は波長に関係なく,
〃、=1×1018m−3,T、=2eV程度と考えられている.
スペクトルの幅は光源の波長を長くすることによりそ
この限りにおいてはうこれまでトムソン散乱で詳しい
れに比例して広がる.光源のレーザー波長をYAG
測定と検討が行われてきたECR, ICP, NLDと同程
レーザーの基本波(ユ064nm)を用いる場合,レー
度3)であるが,次に述べるような実験的に極めて厳し
リー散乱信号強度は532nmの時に比べ1/16倍半なり,
い制約が加えられる.
(1) プラズマ寸法が0.2mm程度であるから,空間分
かなりの改善が期待される.
4.高周波放電プラズマ,プラズマディスプ
解を考えると散乱体積はこれより一桁小さいものとな
り,散乱光子数が極めて小さな極限的トムソン散乱に
レイ放電プラズマへの適用の可能性
なる.
(2)放電ガス圧が500Torr程度となり,3.2の1)
4.1高周波放電プラズマ
で検討したようにレーリー散乱の影響が(そこで論じ
ここで得られる典型的なプラズマの電子骨脂は,η、
た10mTorrレベルに比して)何桁も大きい.
=5×1015m−3,乃=2eV程度と考えられている.プ
(3) プラズマが形成されるのが壁面より0.1∼
ラズマ背景光については既報6)により,観測したこの
領域のプラズマのトムソン散乱が実行できる見通しが
0.2mm程度であるため壁からの乱散乱光が避けられず,
得られている.他方,レーリー散乱と下振分について
(2)のレーリ月光と併せて極めて厳しい.
は,3.2の1)での検討によって,放電ガス圧(アル
まず,(1)について検討する.Fig.8の測定配置に
ゴンガス換算)数mTorr以下ならそれが可能であり,
おいて,ビームスポット径0.1mm,散乱長0.3mmが許容
ただちに実行して有用なデータを得て,これまで
されるものとする.ここで,π,=ユXlO18m−3,レー
ECR, ICP, NLD放電プラズマで行われてきた3)と同
ザー光源として以前と同様にYAGレーザーの第二高
様のプラズマ形成維持についての詳しい検討を行える
調波(波長532nm),その1パルスエネルギーをEL=
段階にある.
曙光換算も含めた放電ガス圧10mTorr程度以上の
場合には3.2の2)で述べた装置の改善が求められる.
この状況はよりきびしいプラズマディスプレイ放電
プラズマについて,次項で一緒に検討する.
4,2 プラズマディスプレイ放電プラズマ
プラズマディスプレイは平面大型壁掛け用ディスプ
レイとしてその開発がなされてきて,この1∼2年間
で40インチ級の大型一般テレビの商品化がなされたも
φ=0.1mm
Double
│mQnochromator
k=0.3mm
@
冒
「
・
@
@
50
一
Fig.8
@
F13
150
Assumed detection optical arrangement for a laser
Thomson scattering system on a discharge plasma
for a plasma display paneL
Photo−
高浮撃狽奄垂撃奄?
プラズマ計測におけるレーザートムソン散乱スペクトルの微弱光観測の極限的性能
一160一
10mJとしてユショット当りの光電子数を評価する.
入射光子数
能なことが示された.これは,プラズマ背景光で決ま
る測定限界にも入るとの結論6)をも併せ考え,すぐに
式(5)において
E〃41レ=10−2/3.7×10−19=2.7×
1016photons
でも計測を実行して,プラズマ研究に関する有用な
デーダを得る努力をする必要がある.
(2) 他方,数10mTorr以上のガス圧力下での高周
散乱長
L≡レ7S=・3×10−4m
微分断面積
σe(λi,θ)=8×10−30m2、奄r
波放電プラズマやプラズマディスプレイ放電プラズマ
立体角
69= 0.28sr
では,分光器の装置関数に格段の向上が求められる.
透過率
η=0.2
そのため,分光器としてダブルモノクロメータ,トリ
を用いれば,全波長域での1㌦=3.6/shotが得られ
プルモノクロメータ,また検出器としてのICCDのク
る.ここで
ロストークの可能性の排除等,基礎研究が必要である
分光測定 ×養
謝 辞
本研究の一部は通産省プロジェクト「超先端電子技
量子効率
術開発促進事業」の一環としてNEDOから委託され
ε=0.1
実施した.
とすれば光電子数!>》、=0.04/もhotとなり,フォトン
参 考 文 献
カウンティング検出可能との結論が得られる.
次に(2),(3)については,3.2(2)の(b),(c)で述べ
た色々の可能性を詳しく検討する必要がある.
5.結
論
非協同域のレーザートムソン散乱によるプラズマ計
測を行う際に,散乱光子数が極めて小さい場合の極限
的性能について検討して,以下の結論が得られた.
(1)η、=5×10正5m−3,7b∼2eV程度のパラメー
タを持つ高周波放電プラズマにおいて,数mTorr以
下のガス圧力下での放電では,既設分光器や検出器を
用いてでもレーリー散乱に妨害されることなく測定可
1)村岡克紀,前田三男:プラズマと気体のレーザー応用計
測(産業図書,1995).
2)T.Sakoda, S. Momii, K. Uchino, K. Muraoka, M.D.
Bowden, M. Maeda, Y. Manabe, M. Kitagawa and T.
Kimura:Jpn. J. Appl. Phys.30, L1425(1991).
3)K.Muraoka, K. Uchino and M.D. Bowden:Plasma
Phys. Control. Fusion.40,1221(1998).
4)T.Hori, M. Kogano, M.D. Bowden, K. Uchino and K.
Muraoka:J. Appl. Phys.83,!909(1998).
5)D.E. Evans and J. Katzenstein:Rep. Prog. Phys.32,
207(1969).
6)M.D. Bowden, Y. Goto, T. Hori, K. Uchino, K.
Muraoka and M. Noguchi:JPn. J. ApPl. Phys.38,3723
(1999).
Fly UP