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自動車用エンジンオイルの劣化特性およびろ過方法に関する研究

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自動車用エンジンオイルの劣化特性およびろ過方法に関する研究
自動車用エンジンオイルの劣化特性およびろ過方法に関する研究
9701131 西條
1. 序論
エンジンオイルはシリンダー内で生じる燃焼生成物の混入
や,エンジンオイル自体の劣化で発生する酸化物により性能
が低下する.このため自動車用エンジンは走行距離に応じて
定期的にオイル交換を必要とされている.もし発生する燃焼
生成物や酸化物を常に効率よく取り除くことができればエン
ジンオイルを長期間使用できる可能性がある.そのためには
従来のオイルフィルタより優れた汚れの除去能力を持ち,除
去能力を長期間維持できるオイルフィルタを開発しなければ
ならない.
今年度は劣化したエンジンオイルの状態を調べるために粘
度,透過率,比重の点から調べてみることにした.また上記
の条件を満たすオイルフィルタの開発のために従来方式ろ過
方法(図 1(a))と新方式ろ過方法 1)(図 1(b))の比較研究を試みた.
従来方式ではエンジンオイルがろ紙を貫通して流れ,汚染
粒子はろ紙の穴にひっかけられて除去される.これに対して
新方式ではエンジンオイルは平行に置かれたろ紙の間を流れ,
汚染粒子はろ紙の表面に付着して除去される.
剛弘
煙突
煙突固定台
熱電対
電源
温度コントローラー
ビーカー
マントルヒーター
エンジンオイル
図 2 エンジンオイルの加熱劣化装置
IN
+5V
発光ダイオード
TLN 101
フォトトランジスタ
TPS 601
汚染粒子
OUT
1kΩ
ろ紙
100Ω
1kΩ
10kΩ
図 1(a) 従来方式ろ過方法
図 1(b) 新方式ろ過方法
図 1 ろ過方法
2. 実験装置および方法
2-1 エンジンオイルの劣化方法
図 2 に示す加熱装置を用いて新品のエンジンオイルを
200℃で 100 時間保持し,適当な時間ごとにサンプルを採取し
た.以下,劣化オイルと称する.
2-2 粘度の測定
デジタル表示型粘度計を用いて劣化オイルの油温 30~
110℃の区間を 10℃きざみで粘度を測定した.
2-3 透過率の測定
透過率の測定には図 3 に示す自作の回路を用いた.図 4 は
装置の概略図である.スライドグラス上のサンプルをセット
したときと何も挿入しないときとの出力電圧比を透過率と定
義した。
2-4 比重の測定
JIS Z 8804 液体比重測定方法に準拠して比重びんを用いて
4℃の純粋の水の重さ(a)と 15℃の劣化オイルの重さ(b)を電子
天秤で測り,(a)に対する(b)の比を比重とした.
2-5 従来方式ろ過と新方式ろ過の比較実験
従来方式ろ過装置は図 5 に示すとおりである.新方式ろ過
装置を図 6 に示す.新方式ろ過装置ではろ紙から 2m の高さ
にオイルタンクを設け,ろ紙は水平な定盤の上に置き,その
上に金属板と重りを置いた.重りは金属板と合わせて 2kg に
なるように調整した.オイルはろ紙と金属板の間を流れる.
サンプルには 200℃50 時間加熱したものを用いた.サンプル
は 30℃に保温した状態で循環させた.流量は積算式流量計を
用いて計測した.また 0.01%の炭素粉を混ぜた新品エンジン
オイルでも実験を行った.
GND
図 3 透過率測定装置の回路図
オイル
カバーグラス
アクリル板
スライドグラス
テスター
GND
+5V
切り替えスイッチ
図 4 透過率測定装置
ロート
ろ紙
ビーカー
ロート台
図 5 従来方式ろ過装置
フロート
スイッチ
温度コントローラー
流量計
重り
ろ紙
金属板 熱電対
電源
定盤
逆止弁
+5V
+5V
ポンプ
図 7 各加熱時間の劣化オイルの粘度
ヒーター
エンジン
オイル
ポンプ制御装置
図 6 新方式ろ過装置
3. 実験結果および考察
劣化オイルの実験結果を図 7~9 に示す.図 7 より劣化オイ
ルの粘度は加熱時間が長いものほど高く,特に低温での粘度
変化が大きいことがわかる.このことからエンジンオイルが
劣化するとエンジン始動特性の悪化を招くものと考えられる.
図 8 より劣化オイルの透過率は加熱時間が 50 時間まではゆ
るやかに減少するが,50 時間以降は減少が大きくなることが
わかる.これは 50 時間ぐらいでエンジンオイルに含まれる酸
化防止剤の効果が失われ,これ以降エンジンオイルの劣化が
急激に進むと考えられる.
図 9 より劣化オイルの比重は加熱時間が 50 時間までは微量
の値でしか増加しないが,50 時間以降は増加傾向が認められ
る.これは上記と同様のことが考えられ,エンジンオイルが
劣化すると比重が増えることがわかる.
従来方式ろ過と新方式ろ過の比較実験の結果を図 10 に示
す.新方式の方が透過率の改善効果が大きいことがわかるが,
1.5 回で詰まってしまった.今後,重りの重さの影響を調べる
必要があると考えられる.0.01%の炭素粉を混ぜた新品エン
ジンオイルも,すぐに詰まって止まってしまい実験データが
取れなかった.
4. 結論
研究の結果,以下のことがわかった.
(1) 自動車用エンジンオイルの熱による劣化に対して一定期
間エンジンオイルに含まれる添加剤により劣化を抑制効
果が認められ,添加剤の効果が失われると急激に劣化が
進む.
(2) 新方式の方がろ過性能は優る可能性があるが,重りの重
量によっては返って目詰まりを起こしやすい.
その都度添加剤を補充し燃焼生成物や酸化物を完全に取り
除ければ長期間使用できる可能性があると思う.今後,除去
方法について更なる研究が必要である.
図 8 各加熱時間の劣化オイルの透過率
図 9 各加熱時間の劣化オイルの比重
参考文献
1) 東忠則,住本守央,木村功;舶用ディーゼル機関における
潤滑油の半永久使用・廃油ゼロ技術の研究開発と実用化,日
本舶用機関学会誌第35巻第3号(2000-3),pp.178-189
図 10 従来方式ろ過と新方式ろ過の透過率の比較
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