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次世代保安向上技術調査

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次世代保安向上技術調査
平成 22 年度経済産業省委託事業
平成22年度地方都市ガス事業
天然ガス化促進対策調査
「次世代保安向上技術調査」
(保安技術調査)
(総合調査)
調 査 報 告 書
平 成 23 年 2 月
社団法人日本ガス協会
目
次
Ⅰ.調査の概要
1.背景と目的
1
2.事業実施体制
1
3.事業内容
4
3.1
他調査の実施者に対する助言等
4
3.2
委員会の設置、運営
4
3.3
フォローアップ等の調査
4
4.事業の実施結果
5
4.1
他調査の実施者に対する助言等
5
4.2
委員会の設置、運営
17
4.3
フォローアップ等の調査
18
Ⅱ.調査の実施結果
1 . フォローアップ等の調査
21
1.1
平成20年度の年度フォローアップ等の技術調査
23
1.2
平成21年度の年度フォローアップ等の技術調査
27
1.3
平成22年年度新規把握技術調査
29
1.4
進展が確認された技術の調査
30
付録1 要素技術マトリクス(ジャイロ)
57
付録2 要素技術マトリクス(管内走行(大口径))
59
付録3 要素技術マトリクス(管内走行(小口径))
61
付録4 要素技術マトリクス(広域漏洩検知)
63
付録5 要素技術マトリクス(他工事監視システム)
65
付録6 要素技術マトリクス(ロケーター)
67
Ⅰ.調査の概要
Ⅰ
調査の概要
1.背景と目的
都市ガスは、膨大な導管網を通じて供給されており、十分な安全確保を図りつつ導管網を効率
的に維持管理していくことは、都市ガスの「安全で安定した供給」という社会的ニーズに応える
ために重要な課題である。
都市ガス業界では、これまで保安レベル向上のために様々な技術開発を継続し施策を講じてい
るが、他工事に伴う不可避・他律的な要因による事故等への対応等、ガスの安全に対する近年に
見られる非常に厳しい社会的な認識に対応していくためには、今後の技術開発の方向性を検討す
る際に、従来の延長線上とは異なるアプローチを踏み、新技術の導入によるブレークスルーが必
要となっている。
そこで各分野の有識者の協力の下、これまでとは異なる視点も含め、都市ガス業界では十分に
活用しきれていない可能性のある他業界の技術の急速な進展によって得られた成果や、最先端の
技術シーズなどに視点を広げ、国際的かつ業界分野横断的に客観性をもった幅広い調査を実施し、
導管の保安レベル向上に資する技術開発を一層充実させることが必要である。
本事業では、都市ガス導管(以下「導管」という。
)に係る保安の向上と効率的な維持管理に資
する可能性のある技術シーズについて、幅広い調査を実施する。現状のガスの維持管理技術に精
通し、ニーズを有している都市ガス事業者(以下「事業者」という。
)の観点である技術面と利用
面から、保安向上のための技術的アプローチに活用できる要素技術の抽出と整理を行った。
導管網がどのような状態であるか、常に把握しておくことにより、不具合の発生を「予知・予
防」することに道を拓く。
2.事業実施体制
社団法人日本ガス協会は、経済産業省より委託を受け、平成22年度「次世代保安向上技術調
査(保安技術調査(総合調査))」を実施した。調査にあたっては、日本ガス協会内に設置した
事務局組織「導管保安向上技術プロジェクトグループ」において本事業を専門的に実施した。
調査を効率的かつ円滑に実施するため、都市ガスの保安技術および異業種(航空・宇宙分野、
医療分野等)における保安・先端技術等に係る学術的および実務に精通した専門家からなる「次
世代導管保安向上技術調査特別委員会」を設置した。
上記体制に基づき、別に実施された「次世代保安向上技術調査(保安技術調査(ジャイロの要
素技術に関するサンプル評価の実施等)
)
」ならびに「次世代保安向上技術調査(保安技術調査(管
内走行性等の要素技術に関するサンプル評価の実施等))
」についての「他調査の実施者に対する
助言等」を実施するとともに、「委員会の設置・運営」および「フォローアップ等の調査」を行
うことにより、調査事業全体の進捗・達成状況および成果について評価等を実施した。
導管保安向上技術プロジェクトグループの事業従事者は総勢12名で構成されており、全員が主
要都市ガス会社において本事業に必要な専門分野の部局に在籍する社員である。都市ガスの輸送供
給に精通し、導管の保安・維持管理に関する高い知識と知見を有するエキスパートで構成している。
1
また、上記委員会の下部組織として「推進ワーキンググループ」および「メーカー合同会議」を
設置し、関連する調査・評価事業間の調整、調査・評価事業全体の進捗管理および成果の達成状況
の確認を実施して、平成22年度調査事業の効率的な推進を行った。
図1-1に調査体制(全体相関図)、図1-2に調査体制を示す。また、表1-1~1-3に
委員会等の名簿を示す。
経済産業省
原子力安全・保安院 ガス安全課
1.総合調査/(社)日本ガス協会
①他調査の実施者に対する助言等
特別専門委員会
②委員会の設置・運営
③フォローアップ等の調査
委
託
2.ジャイロの要素技術に関するサン
プル評価の実施等/㈱ニシヤマ
①サンプル評価の実施
審議
②ガス導管への適用可能性の検討
事業説明
3.管内走行性等の要素技術に関する
推進WG
サンプル評価の実施等/日立情報
通信エンジニアリング
①サンプル評価の実施
②ガス導管への適用可能性の検討
図1-1 調査体制(全体相関図)
経済産業省
日本ガス協会
【審議体制】
【実施体制】
会長
次世代導管保安向上技術調査
専務理事
特別委員会
原子力安全・保安院 ガス安
常務理事
合同会議
全課
技術開発部
推進ワーキンググループ
導管保安向上技術
プロジェクトグループ
図1-2 調査体制
2
表1-1 次世代導管保安向上技術調査特別委員会名簿
委員長 藤江 正克
早稲田大学 教授(生命理工学専攻)
委 員 濱田 泰以
京都工繊大学 教授(先端ファイブロ専攻)
鎌田 敏郎
大阪大学 教授(維持管理工学専攻)
細田 祐司
㈱日立製作所 機械研究所
長谷 耕志
東京ガス㈱ 技術開発本部基盤技術部長
尾崎 洋一郎 大阪ガス㈱ 導管事業部導管部部長
オブザーバー
栗原 和夫
経済産業省原子力・安全保安院ガス安全課長
関係者 池島 賢治
日本ガス協会常務理事
中村 雅幸
日立情報通信エンジニアリング㈱プロダクションサービス事業部長
西山 正晃
㈱ニシヤマ 営業副本部長
事務局 田畑 健
日本ガス協会技術開発部長
日本ガス協会
技術開発部 導管保安向上技術 PJG
表1-2 導管保安向上技術プロジェクトグループおよび推進ワーキンググループ名簿
マネジャー 樋口 裕思 [大阪ガスからの専任出向]
長沢 圭介 [大阪ガスからの兼務出向]
木林
哲也 [北海道ガスからの兼務出向]
白土 忠人 [京葉ガスからの兼務出向]
橋本 義和 [東京ガスからの兼務出向]
石川 雅章 [東京ガスからの兼務出向]
伏見 隆之 [静岡ガスからの兼務出向]
平井 稔雄 [東邦ガスからの兼務出向]
安達 俊彰 [東邦ガスからの兼務出向]
綱崎 勝
[大阪ガスからの兼務出向]
枇杷友啓郎 [広島ガスからの兼務出向]
古野 俊秋 [西部ガスからの兼務出向]
表1-3 合同会議名簿(推進ワーキンググループメンバーを除く)
荒谷 猛
[日立情報通信エンジニアリング㈱]
岡村 栄二
[日立情報通信エンジニアリング㈱]
十々木一仁 [㈱ニシヤマ]
太田 龍宏 [㈱ニシヤマ]
3
3.事業内容
3.1 他調査の実施者に対する助言等
平成22年度地方都市ガス事業天然ガス化促進対策調査(次世代保安向上技術調査(保安技術
調査(ジャイロの要素技術に関するサンプル評価)
)および平成22年度地方都市ガス事業天然ガ
ス化促進対策調査(次世代保安向上技術調査(保安技術調査(管内走行性等の要素技術に関する
サンプル評価)
)
(以下「他調査」という。
)の実施者に必要な助言等を行うとともに、他調査で得
られた調査結果や下記3.2の委員会での評価結果を取りまとめ、ガス事業者の視点から各技術
の有望性を判断した。
3.2 委員会の設置、運営
次世代導管保安向上新技術調査・評価を効率的かつ円滑に実施するため、都市ガスの保安技術
および異業種(航空・宇宙分野、医療分野等)における保安・先端技術等に係る学術的および実
務に精通した専門家からなる「次世代導管保安向上新技術調査・評価特別委員会」を設置し、調
査・評価事業全体の進捗、達成状況、および成果について評価等を実施した。
委員会の運営については、社団法人日本ガス協会内に設置する「導管保安向上技術プロジェク
トグループ」において専門的に実施した。
3.3 フォローアップ等の調査
平成20・21年度地方都市ガス事業天然ガス化促進対策調査(次世代保安向上技術調査(保
安技術調査)
)で情報収集を行った技術について、継続して情報収集を行うとともに、本情報収集
を通じて得られた新たな技術については、担当者・関係者に連絡を取るなどして詳細を把握し、
都市ガス導管の保安向上と効率的な維持管理に資する可能性を判断した。
上記の事業を実施するにあたり、提案書の作成など必要に応じて平成20年度および平成21
年度地方都市ガス事業天然ガス化促進対策調査(次世代保安向上技術調査(保安技術調査))で得
られた成果(技術調査によって得られた技術等)を利用した。
4
4.事業の実施結果
4.1 他調査の実施者に対する助言等
2.に示した体制に基づき、別に実施された「次世代保安向上技術調査(保安技術調査(ジャ
イロの要素技術に関するサンプル評価の実施等))
」ならびに「次世代保安向上技術調査(保安技
術調査(管内走行性等の要素技術に関するサンプル評価の実施等))」についての「他調査の実施
者に対する助言等」を行い、ガス事業者の視点から各サンプル評価技術の有望性を判断した。
以下に、他調査(「次世代保安向上技術調査(保安技術調査(ジャイロの要素技術に関するサ
ンプル評価の実施等)
)
」ならびに「次世代保安向上技術調査(保安技術調査(管内走行性等の要
素技術に関するサンプル評価の実施等)
)
」)の評価結果と、ガス事業者の視点から各サンプル評価
技術の有望性を判断した課題と将来展望の概要を示す。
また、サンプル評価結果を踏まえて各技術分野の有望技術のガス導管への適用性を検討し、技
術分野を俯瞰することができる資料として昨年度から作成している要素技術マトリクスを更新し
た。要素技術マトリクスの様式を図1-3に示す。
評価
項目
要求
性能
現行の
技術水準
有望技術
1
有望技術
2
・・・
・・・
・・・
評
価
課題
評
価
展望
目的
原理
概要
・・・
・・・
・・・
・・・
候補技術の
総合評価
図1-3 要素技術マトリクス
縦軸は各技術分野の評価項目とし、左から順に、2030年時点で満足すべき到達水準を示す
要求仕様、現在ガス事業者が保有する技術の現状の水準を示し、それに対する有望技術の状況を
順次記述している。なお、基本的にはここまでは昨年度の作業で作成済みである。
本年度は、サンプル評価等で得られた結果を各有望技術の状況に反映すると共に、それぞれの
技術の総合評価を記述した。また、各評価項目における現状評価と課題を明確化し、技術戦略マ
ップや業界専門家などの意見を参考に各評価項目の将来展望を記述した。更に、各技術の総合評
価、各評価項目の課題と展望を踏まえて、ガス導管への適用性について技術分野全体の総合的な
課題と将来展望を示した。各技術の要素技術マトリクスを、付録に添付する。
5
4.1.1 ジャイロの要素技術に関するサンプル評価の実施等
4.1.1.1 MEMSジャイロ
【評価機種】MEMSジャイロ 国内製1機種(TAG0012)
【評価内容】
以下の配管にMEMSジャイロを挿通させ経路計測を行い、ガス導管への適用可能性の検討
を行った。
・管路 a 50A のエルボ、ストエルを含む 4m 未満の配管
・管路 b 50A のエルボを3ヶ含む 4m 未満の配管内
・管路c 3m 未満の 100A 配管から、上記 2 配管が分岐した配管
【評価結果】
・管路 a、b、c の配管を挿通する事ができ、配管の形状が検出可能となった。
・スムースな挿通が得られれば、高い測定精度が得られることがわかった。
【課題】
・50A 未満の配管に対応するため、センサユニットの小型化が必要。
・滑らかな挿通性を確保するためには管内でのセンタリング走行を可能とする車輪付走行装置
が必要。
・活管での使用を可能とするためには防爆対応の検討が必要。
・発生した誤差が走行距離とともに累積しないためのキャンセリング機能(誤差補正技術)の
検討が必要。
【将来展望】
・2025年頃までにMEMSの小型化・高性能化が見込まれる(経済産業省・2010年技
術戦略マップより引用)ため、挿通性が改善し、測定精度の向上が見込まれる。
・誤差補正は、高精度に補正されたネットワーク型GPSによるマップ情報や、現在地の絶対
座標値を利用することで可能。また、2014年に打ち上げ予定の準天頂衛星により、GP
Sの精度向上も見込まれ、これらの技術と組合せ、なおかつガス事業用途に特化したソフト
を開発することでMEMSジャイロの更なる測定精度の向上が期待できる。
・防爆に関しては規格の変更が必要となりハードルは高いが、活管以外における実際のニーズ
に基づいた測定方法を確立することは可能。
・管内走行ロボットと組合せるなど、使用目的を複合化することにより、次世代の導管保安向
上に向けて適用範囲の拡大が可能な有望技術と考えられる。
6
4.1.1.2 DTGジャイロ
【評価機種】DTGジャイロ 国内製2機種(TUG-NAVI)
①TAG0011(2軸はDTG、X軸にMEMSを使用)
、②TAG0010(3軸DTG)
【評価内容】
DTGジャイロを3種類の速度にて以下の配管に挿通させ経路計測を行い、ガス導管への
適用可能性の検討を行った。
・挿通速度:250m/h、500m/h、1000m/h
・口径:150A、300A
・総延長:100m、高低差:1m
・配管仕様:配管角度 45°、エルボ継手 14 個使用した模擬配管(接続部は溶接とフラ
ンジ接合)
【評価結果】
・補助輪を装着した場合はスムースな挿通性により高い測定精度が得られた。
・補助輪を装着しない場合、挿通時に管内の段差等により大きな衝撃を受けた際にセンサが誤
った角度・方向を認識するケースが認められた。
・センサの急激な姿勢変化やバックテンションによるセンサの浮きにより、大きな測定誤差が
認められた。
【課題】
・150A 未満の配管に対応するため、センサユニットの小型化が必要。
・滑らかな挿通性を確保するためには、管内でのセンタリング走行を可能とする車輪付走行装
置が必要。
・活管での使用を可能とするためには防爆対応の検討が必要。
・発生した誤差が走行距離とともに累積しないためのキャンセリング機能(誤差補正技術)の
検討が必要。
【将来展望】
・2025 年頃までにバッテリの高密度化が見込まれる(経済産業省・2010 年技術戦略マップより
引用)ため、更なる小型化が実現できる可能性が高い。これにより、挿通性の改善が可能と
なり、測定精度の向上が期待できる。
・誤差補正は、高精度に補正されたネットワーク型GPSによるマップ情報や、現在地の絶対
座標値を利用することで可能。また、2014年に打ち上げ予定の準天頂衛星によりGPS
の精度向上も見込まれ、これらの技術と組合せ、なおかつガス事業用途に特化したソフトを
開発することで、測定精度の向上が期待できる。
・防爆に関しては規格の変更が必要となりハードルは高いが、活管以外における実際のニーズ
に基づいた測定方法を確立することは可能。
・管内走行ロボットと組合せるなど、使用目的を複合化することにより、次世代の導管保安向
上に向けて適用範囲の拡大が可能な有望技術と考えられる。
7
4.1.2 管内走行性等の要素技術に関するサンプル評価の実施
4.1.2.1 能動スコープ
【評価機種】能動スコープ
サンプル評価用試作機(東北大学)
【評価内容】
口径 32A、50A の配管を使用して能動スコープの走行性能を評価した。
・適当な間隔毎に、エルボ(ネジ継手)による曲りを設けて蛇行形状にした水平配管に能動型
スコープカメラを挿通し、水平方向に曲る場合のエルボ通過数の限界を把握した。
(水平エルボ通過試験)
・水平エルボ通過試験で使用した配管を垂直にして同様の評価を実施し、垂直方向に曲る場合
のエルボ通過数の限界を把握した。
(垂直エルボ通過試験)
・戸建て住宅の灯外内管と供給管を模擬した連続継手(エルボ+ストリートエルボ)を含む配
管に能動スコープカメラを挿入し、実現場での適用を想定した場合の走行性能を把握した。
(供給管模擬試験)
【評価結果】
・垂直エルボ通過試験以外では、現状ガス事業者が使用している管内カメラよりも多くの曲り
を通過可能であることが確認できた。
・垂直配管の上昇では能動体による推進力を得られないため、その後の曲り通過が困難となる。
・挿入時は能動体の推進力とケーブルの押込みの相乗効果で多くの曲りを通過できるが、後退
時はケーブルを引くしかないため、挿入よりも曲り通過数が尐ない。
【課題】
・挿入の限界は、エルボの曲りや段差と能動体のモータ部の段差や太さ・曲りにくさが干渉す
るためであり、これを軽減する必要がある。
・上りの垂直走行や挿入数が多くなるにつれケーブルを送り出す力が必要となることから、ケ
ーブルの剛性が必要なため、曲り通過性とのトレードオフとなる。
・能動体は振動によって前進するため、挿入よりも引抜きの性能が劣っている。侵入できたら
必ず引抜ける方法を検討する必要がある。
・ニーズの大きい小口径(25A、32A)の適用には、小型化、細径化が必要である。
【将来展望】
・配管内の挿通に合わせた最適化検討を行っていないにも関わらず、多数のエルボを通過する
ことが確認できた。現状の技術水準でも配管への最適化に向けて改良可能な要素は多く、配
管検査や補修などに活用可能な有望技術である。ただし外形のスリム化に対するニーズに対
しては、より小型で高出力のモータの実現が必要な場合も考えられる。
8
4.1.2.2 車輪型ロボット
【評価機種】車輪型管内走行装置(INSPECTOR)
① TYPE1000(口径 100A 用) ② TYPE4000(口径 200A 用)
【評価内容】
口径 100A、200A の配管を使用してINSPECTORの走行性能を評価した。
・適当な間隔毎に、エルボによる曲りを設けて蛇行形状にした水平配管に車輪型管内走行装置
を走行させ、水平方向に曲る場合のエルボ通過数の限界を把握した。
(水平エルボ通過試験)
・水平エルボ通過試験で使用した配管を垂直にして同様の評価を実施し、垂直方向に曲る場合
のエルボ通過数の限界を把握した。
(垂直エルボ通過試験)
・エルボを含まない直線配管に車輪型管内走行装置を走行させ、各ポイントでの牽引力を測定
し、最大走行性能を把握した。
(直線走行性能試験)
【評価結果】
・水平エルボ通過試験の結果、概ね 20 個程度の曲りが通過可能と推測されるが、配管内の状況
(汚れやほこり、溶接線の段差など)による影響は大きい。
・垂直エルボ通過試験の結果、概ね 15 個程度の曲りが通過可能と推測される。これは、水平よ
り尐ない理由は垂直配管を上るためにロボットの自重を持ち上げる力が必要となるためであ
る。また、水平と同様に配管内の影響は大きい。
・直線走行性能試験の結果、管種にもよるが、1~2km の走行が可能と推測される。
【課題】
・ 実配管の内部状態によっては、ロボットと配管内部の摩擦抵抗の低減により駆動力が低下し、
今回想定した値より低下する可能性がある。
・600mm 未満の口径では曲率 1.5D の曲りのみを対象としているため、現状ではニーズが大き
いネジ継手などの配管に適用できない。
・走行速度が 100~200m/h 程度と遅いため、1 日での検査可能な距離が限られることから、数
km の検査を行うには高速化が必要となる。
【将来展望】
・ロボットに十分な牽引力があることから、リアルタイムの結果を求めなければケーブルを引
く代わりに大容量のバッテリと検査結果等を記録する装置を牽引することで牽引負荷による
走行距離の制限は軽減できる。目的と運用方法に合わせたカスタマイズにより適用範囲の拡
大が可能な有望技術である。ただしケーブルレスとした場合は、ロボットが配管内で故障し
た場合の救出方法などを確立する必要がある。
9
4.1.3 他工事破損に強い導管材料性能の技術
【評価機種】配管材料9種類、防護材料1種類
配管材料 (単層管)PE80、PE100、PE100+、ナイロン管
(複合管)ワイヤーメッシュ補強PE管、パンチングメタル補強PE管、鋼帯補強
PE管、ポリアリレート繊維補強PE管、アラミド繊維補強PE管
防護材料 PE管防護材
【評価内容】
・重機の爪を対象管に押し付けながら徐々に荷重を上げていき、最大掘削力まで載荷して押付
に対する性能を把握した。
(押し付け試験)
・重機の爪を対象管に衝突させて衝撃に対する性能を把握した。なお、衝撃力は、掘削機の仕
様より算出し、試験装置に合わせた錘と距離を決定した。
(衝撃試験)
・重機の爪を対象管に最大掘削力で押し当てた状態で、爪をゆっくり1m程度移動させてスク
ラッチに対する性能を把握した。なお、水平方向に発生する力も掘削機の仕様より算出した。
(スクラッチ試験)
【評価結果】
・上水道などで実用化されて普及しているPE100が、スクラッチにおいてPE80よりも
多尐の優位性があることが確認できた。
・海外でガス管として実績のあるナイロン管が、重機による押付とスクラッチに対して高い耐
性を有することが確認できた。
・繊維や鋼帯で補強した複合管が、押付け、衝撃、スクラッチの他工事損傷防止に効果がある
ことが確認できた。
・PE80に防護材を巻くことで、複合管と同様に他工事損傷を防止する手段となることが確
認できた。
【課題】
・今回のサンプル評価は他工事損傷に対する耐久性の内、パワーショベルによる管体部の耐久
性に限定したものであり、その他対象作業(カッター、ブレーカー、オーガー、ボーリング、
矢板打設など)への耐久性や、その他材料部位(継手、取出し突起部など)への耐久性を評
価する必要がある。
・今回のサンプル評価では異業種で使用されている配管を扱ったため、実際にガス管として使
用するには、その他の項目を含めて総合的な評価が必要である。ガス導管が具備すべき条件
としては、他工事損傷に対する耐久性以外に、耐震性、耐食性、耐薬品性、可とう性、施工
性、信頼性、経済性などがある。
・複合管、防護材は単層管と比較してコストが増加することになる。異業種における普及との
相乗効果によるコスト低減と、他工事損傷による効果との比較検討が必要となる。
・材料によっては、配管の接合や既存配管への連絡・切断など、各種導管材料(継手など)の
10
工法開発が必要である。
【将来展望】
・現在ガス管として使用しているPE80は、耐震性、耐食性、耐薬品性、可とう性、施工性、
信頼性、経済性など、優れた性能を兼ね備えていることから、新材料の導入検討にあたって
は、今回のサンプル評価結果に加え、下記に示す他の評価項目を総合的に勘案しながら、既
存や新規の材料を組合せた導入範囲・方法について長期的視点で検討する必要がある。
・配管の重要性(圧力、供給量、供給戸数など)
・他工事損傷の可能性(埋設位置・深さ、他埋設物との関係など)
・市街化度(繁華街の有無・規模など)
・工事種別(新設、取替、移設など)
・その他、来るべき水素社会に向け、より安全性、信頼性を高めた供給インフラとしての将来
検討の知見として、今回のサンプル評価結果を活かす。
11
4.1.4 ガスの広域漏えい検知に関する技術
4.1.4.1 メタンガス画像計測システム
【評価機種】国内製1機種(メタンガス画像計測システム(福井大学))
【評価内容】
・遠隔ガス検知を想定した距離を決定し、その距離において検出する都市ガス濃度を変化した
場合の検出性能を測定する。測定結果より、低濃度の都市ガスの検出限界濃度を把握した。
(ガス検知濃度性能試験)
。
・大規模災害時の広域漏えいを想定したガス濃度を決定し、この濃度の都市ガスを検知する距
離を可変した場合の検出性能を測定する。測定結果より、災害時の都市ガスの検出限界距離
を把握した。
(ガス検知距離性能試験)
。
【評価結果】
・今回のサンプル評価試験では、反射板から波長 3.39μm(ガス吸収帯波長)の反射板からの
赤外線散乱光を検知することができず、ガスの画像化は再現できなかった。
(光パラメトリック発振器の出力、波長幅の性能が低下、検出部のノイズが大きいためS/
Nが低下)
・波長 1.06μm の赤外線を使用し、スキャン制御、測定後の画像化は実現できることを確認
した。
(波長 3.39μm の赤外線を使用できれば、ガスの画像化は可能)
【課題】
・原理的には確立した技術だが、福井大学では、再現性が確立しておらず発振部、検出部の性
能は実験ごとにバラツキがある水準である。
(赤外線が見えず、また光路の調整が非常に微細であり、これらの調整方法が確立していな
い)
・半導体レーザなどのように小型で容易な方法による出力が難しく、短い波長の原理と比較す
ると、小型化、コスト、難易度などでは優位性が低い。
・より長距離・低濃度のガスを検出するためには光源の高出力化が必要。
【将来展望】
・福井大学による発振・検出の再現はできなかったものの、光パラメトリック発振器や差周波
技術によるこの波長利用は年々進歩しており、高出力化、安定化、小型化など実用化に向け
た基盤が醸成されつつある。
・今回は再現できなかったが、検出が容易な短い波長に変換する和周波変換技術と、最先端の
赤外線光源の技術を融合することで、ガス検知性能は理論的には非常に高まる。
将来的にはパッシブ方式のように気温や背景の条件によって性能が変化するものでなく、測
定環境の影響が小さいガス画像化システムを構築することが期待される。
12
4.1.4.2 赤外線カメラ
【評価機種】海外製1機種(FLIR システムズ GF320)
【評価内容】
・上空からの遠隔ガス検知を想定した距離を決定し、その距離において検出可能な都市ガスの
濃度を把握した。
(ガス検知濃度性能試験)
。
・ガス検知濃度性能試験で把握した濃度の都市ガスを地上付近に配置して、上空から測定した
場合を模擬した評価を行い、災害時のガス検知性能を把握した。
(上空からのガス検出性能試験)
。
【評価結果】
・UAV(無人飛行機)との組合せによる遠隔ガス検知を想定した場合、地表が晴天時のアス
ファルトのように暖かい状況であれば、30m(望遠レンズ 120m)の高さからでも十分に
1000ppm・m 程度のガス漏洩を発見できる可能性がある。
・地上からの漏洩位置検知(人による調査)を想定した場合、漏えいの危険がある位置がある
程度想定できる場合は、
ガスと背景に温度差があれば背景を問わず 30~40m(望遠レンズ 120
~160m)から 1000ppm・m 程度のガス漏洩の発見、あるいは漏えい位置の特定できる可能性
が高い。
【課題】
・温度に応じて物質が放射する赤外線を使用する方式であることから、背景の温度が低い場合
(悪天候、土、植物、水や水分、寒冷地など)では性能が低下するため、使用範囲が制限さ
れる。
・温度差がある気体(熱源排気など)が発する赤外線の影響も受けるため、漏えいガスとの識
別を検討する必要がある。特に大規模災害で、多数の火災が発生した場合に、火災の熱や煙
と漏洩ガスとの区別が可能かどうかが重要となる。
【将来展望】
・パッシブの赤外線ガス検知方式では、上記課題の改良・改善は原理的に難しい。ただし波長
吸収帯のみによる画像化だけではなく、非吸収帯の検知結果を同時に測定し、比較処理(除
算等)することができれば、熱源の影響を軽減した高感度モードの代替技術が可能と考えら
れる。
13
4.1.5 他工事監視システムに関する技術
【評価機種】海外製1機種(OptaSense)
【評価内容】
・光ファイバを埋設したフィールドで、他工事により発生する土木作業を模擬し、ガス管損傷
の危険があるイベントの検知性能を把握した。
(基本性能試験)
。
・市街地での工事を想定し、光ファイバの埋設位置近傍に自動車を走行させた状態で基本性能
試験と同様の試験を実施した場合の検知性能を把握した。
(市街地想定試験)
。
【評価結果】
・アスファルトカッター、重機によるアスファルトの剥がし作業など、道路工事の初期に行わ
れる作業の振動は大きく、自動車の通行が多い市街地でも確実に検知できる可能性が高い。
・重機のエンジン音や掘削による振動は、自動車の走行による振動よりも大きく、市街地でも
検知できる可能性が高い。
・重機や人による掘削において、配管に衝撃が加わったかどうかについても、検知できる可能
性がある。
【課題】
・基本的には、振動がほとんどないエリアでのセキュリティーを当初の目的として発展してき
ため、アスファルトカッターやオーガーなどのイベントを識別する信号処理は現状存在しな
い。
・音響的特徴の有無と検知可能性について検討した結果、実現可能性が高いと判断したが、光
ファイバの埋設環境に依存する要素も大きいため、最終的には実地調整や運用後のデータ蓄
積によるブラッシュアップが必要となる。
・検知の可能性については評価したが、ディテクターを開発した後に、検知までの時間などの
評価が必要となる。
【将来展望】
・振動を検知する技術(ハード)としては基本的に完成しており、性能を左右するのは検知し
た信号の解析技術(ソフト)となる。ソフトの実現や性能向上は、技術的なブレークスルー
よりも、他業界も含めた普及と実運用によるデータの蓄積がカギとなる。
検知に使用するファイバの条件は尐ないことから、通信事業者等の所有する既設の埋設光フ
ァイバを利用し、ガス以外のインフラも含めた監視システムが構築できれば、社会的なメリ
ットは非常に大きい。
14
4.1.6 ロケーター(GPR)に関する技術
【評価機種】 海外製1機種(連続波方式(ORFEUS)
)
国内製1機種(パルス波方式(3DGPR)
)
【評価内容】
・深さ 60~300cm に埋設した口径 25~200A の鋼管を探査した。
(探査深度試験)
・深さ 30、60、120cm に上下に埋設した口径 25、50、80A、離隔 10、30、50cm の鋼管を、
各埋設深さの違いで隔離の異なる上下管を探査した。(上下管分離試験)
・深さ 30、60、120cm に水平に埋設した口径 25、50、80A、離隔 10、30、50cm の鋼管を、
各埋設深さの違いで隔離の異なる水平管を探査した。(水平管分離試験)
・深さ 30、60、120cm に埋設した口径 25、50、80A の鋼管に対し、アスファルトおよびコン
クリートを 5、10cm 舗装したフィールドで管を探査した。コンクリートには、直径 1cm の
鉄筋を 5、10、15cm 間隔で厚さ中心部に入れ、鉄筋の影響も評価した。(舗装種確認試験)
・深さ 120cm に埋設した口径 80A の鋼管および 75A のPE管を探査した。
(管種確認試験)
・実際の道路に即し、深さ 0~150cm に鋼管、PE管、ヒューム管を埋設したフィールドで、
探査精度と3次元表示およびマップ表示による総合的な評価を実施した。
(輻輳管確認試験)
【評価結果】
・ORFEUSについては、現時点ではガス事業者保有技術と同等の探査性能を示すことが確
認できた。
・3DGPRについては、3D化することにより輻輳した埋設管の状況であっても通常のロケ
ーターで表示される画像に比べ視覚的にわかりやすくなっている。
【課題】
・3DGPRは基準位置座標特定およびデータ通信のための無線 LAN 環境構築など計測準備
に時間が 30 分程度必要であり、平面座標の探査時間も 1 時間程度必要である。
・3DGPR/ORFEUSともに試作レベルであるため専門知識が必要で、後処理による画
像解析が必要であった。そのため現場でのリアルタイムでの探査は困難である。
【将来展望】
・3DGPR/ORFEUSともにPCの性能が向上すれば将来的に本体で画像処理すること
ができ、現場での3次元化等ができるようになると考えられる。
・ORFEUSは技術開発プロジェクトを昨年に終えた段階で、製品化に向けたさらなる改良
が続けられているため、探査精度・使い勝手等はさらに向上すると考えられる。
・3DGPRの特徴である絶対座標化とそれを用いた3D画像化技術は有望であり、より高性
能なロケーターと組み合わせることでさらなる高性能なシステムを構築できる。
15
4.1.7
総合評価
上記に示したとおり、6つの要素技術分野において、異業種他分野から有望視して抽出した10
種類の要素技術を評価した。
概して、異業種他分野で既に導入済みの要素技術に関しては、成熟度が高く、改良開発を実施す
ることによりガス事業への展開の可能性が見える技術がいくつか確認できた。また、その改良開発
の方向性については、ガス業界への導入のため特殊な方向に向かう必要はなく、他用途での適用に
際し一般に期待されている技術革新の方向と同一視できることも確認できた。
一方、どの業界にも未導入の要素技術をいくつか評価した。これらは、言わば技術の種の状態で
あり、本事業の着目眼としては正しい選択ではあったが、今後の技術の成熟を期待しなければガス
業界への導入が想像しがたい。これらの技術は、その技術が適用を目指している分野での導入がま
ず先決であり、その技術の成熟とその業界での実績を踏まえ、ガス業界への導入を検討するという
ステップが妥当であるといえる。
また、評価した要素技術のなかには、新技術の導入が見込まれる2030年度のスペックには不
十分ではあるものの、ガス事業者が既に導入している技術を凌駕する技術をいくつか確認できた。
これらの技術は、2030年度スペックを達成するまでの技術進展を待つだけではなく、ガス業界
向けの改良の検討に着手したい魅力的な技術である。
本事業で作成した要素技術マトリックス表は、各2030年度のスペックを達成するための検討
課題を記すとともに、課題解決の将来展望として、技術戦略マップ等から読み取った各要素技術の
開発完了年度を極力反映させた。このマトリックス表を活用することで、市場での技術開発の進展
を睨みつつ、ガス業界として開発に着手するタイミングをウォッチングできる状態となった。
本事業の成果は、機器メーカー、他事業受託者および事業に参画した各ガス事業者が共有化する
ともに、日本ガス協会の正会員に通知する。事業は今年度にて終了するが、この成果をベースにガ
ス業界への導入の可否を継続検討する際は、再起動がスムースに行えることを念頭において本報告
書を作成した。地域特性の違いなどにより各ガス事業者のニーズと開発の方向は微妙に異なること
から、共有化できる検討課題部分を取りまとめ、機器メーカーや他調査の実施者等も含め、検討の
継続展開をすることが望ましい。
本事業を実施することにより、2030年のガス導管の保安向上に資する技術の芽を先読みでき、
着目した技術のその後の進展を俯瞰できる状態になったことは、ガス業界にとって大きな成果であ
る。
16
4.2
委員会の設置、運営
4.2.1 委員会等の運営実績
平成22年度については、全3回の委員会を開催した。第一回(平成22年7月23日開催)は、
事業実施計画の審議、第二回(平成22年11月15日開催)は、事業進捗の審議、第三回(平成
23年2月14日開催)は、平成22年度事業成果の審議、という位置付けの下に開催した。
推進ワーキンググループおよび合同会議については全6回開催した。
4.2.2 委員会等の開催内容
4.2.2.1 次世代導管保安向上技術調査特別委員会
(1) 第一回次世代導管保安向上技術調査特別委員会
日時 平成22年7月23日(金)
議題 ・平成22年度事業計画、プロジェクト体制、年間スケジュール
(2) 第二回次世代導管保安向上技術調査特別委員会
日時 平成22年11月15日(月)
議題 ・平成22年度事業進捗報告
(3) 第三回次世代導管保安向上技術調査特別委員会
日時 平成23年2月14日(月)
議題 ・平成22年度事業成果報告
4.2.2.2 推進ワーキングおよび合同会議
(1) 第1回推進ワーキングおよび合同会議
日時 平成22年10月21日(木)
場所 日本ガス協会
議題 事業進捗報告、要素技術物別役割分担の確認、委員会準備
(2) 第2回推進ワーキングおよび合同会議
日時 平成22年12月9日(木)
場所 大阪ガス
議題 事業進捗報告、サンプル評価結果報告
(3) 第3回推進ワーキングおよび合同会議
日時 平成23年1月11日(火)
場所 日本ガス協会
議題 事業進捗報告、要素技術マトリックスの確認
(4) 第4回推進ワーキングおよび合同会議
日時 平成23年1月25日(火)
場所 日立情報通信エンジニアリング
議題 委員会資料、報告書
17
4.3
フォローアップ等の調査
平成20・21年度地方都市ガス事業天然ガス化促進対策調査(次世代保安向上技術調査(保
安技術調査))で情報収集を行った技術は、平成20年度報告書に記載分で66技術、21年度
報告書記載分で29技術であった。これらの技術に対し継続して情報収集(以下「フォローアッ
プ作業」と称す)を行い、進展の有無を確認した。またこの作業を通じて新たに関連する技術と
して3技術を確認した。したがって最終的な調査対象技術は98技術となった。
各技術の進展状況を判断した結果を図1-3に示す。
H20年度掲載分 :66技術
H21年度新規掲載分:29技術
H22年度新規確認分: 3技術
合計98技術
本事業に関連する進展あり :4技術※
進展ありだが本事業に関係薄 :5技術
今年度サンプル評価試験実施技術 :15技術※
※今年度新規確認 3技術含む
進展が確認できず/明らかに進展なし :74技術
図1-3:技術フォローアップ調査の結果(件数)
報告書記載時点から技術的な進展が見られる技術は9件あったが、ガス事業への適用可否を判
断した結果、本事業に関連する進展が見られた技術は4件となった。その技術一覧を示すととも
に、詳細を調査した結果を表1-4に示す。
なお技術の内容および進展度を確認するためにヒアリングを実施した技術には、表中の状況欄
に「ヒアリングを実施」と記述し表を着色している。ヒアリングを実施した技術は以下の3件で
あった。
・自律型管内漏水検知システム Smart Ball/Pure Technologies(東亜グラウト工業)
・非冷却式赤外線モジュール/NEC
・飛行船ロボット/神戸大学、JAXA
18
表1-4:フォローアップ調査対象技術一覧
ヒアリングした技術
ガス事業に関連する進展ありまたは新規把握した技術
技術・プロジェクト・製品名
高信頼性でPE管も検知できる地中探査レーダの開発
(GIGA)
Mapping the Underworld
高精度GPS移動計測装置*
自律型管内漏水検知システム Smart Ball*
研究/開発元
EU プロジェクト
(Thales Air Defence等)
英国 国プロ
三菱電機
Pure Technologies
東亜グラウト工業
状況
地中探査レーダ技術に関する調査プロジェクト。その成果はOREFUSに引き継がれ開発が進められた。ORFEUSにつ
いては今年度サンプル試験を実施。
英国で進められているガス配管を含む地下埋設物の探査技術の技術開発プロジェクトで、現在第2期が進行中。
GPS/レーザスキャナ/カメラを連動して道路周辺状況を高速移動しながら把握。
技術ヒアリングを実施。
配管内でボール(音響センサ内蔵)を転がし、漏水箇所を特定。
*新規把握技術
進展が確認されたもののガス事業に関連が薄い技術
技術・プロジェクト・製品名
研究/開発元
へび型クローラロボット
電気通信大学
壁面歩行ロボット(RISE)
Boston Dynamics
高高度無人航空機(Zephyr UAV)
QinetiQ
非冷却式赤外線モジュール
NEC
光ファイバ温度分布計測システム・光ファイバガスセンサ
日立電線
状況
報告書記載のロボットの後継機が開発されている模様。ただしあくまでレスキュー用ロボットとしての機能向上で、ガス
事業への適用困難。
プロジェクト終了後もコンソシアムの参加大学により開発が継続。ただし壁面や柱状のものを登る機能の向上が行わ
れており、ガス事業への適用は困難。
報告書記載時点から連続飛行記録を大幅に延長。ただし高高度における連続飛行性能向上を目指しており、センサを
搭載して地上のガス漏洩検知などの技術的検討はなされていない。
技術ヒアリングを実施。
報告書計算時点の製品より温度分解能を向上させた新製品を提供。ただし都市ガスの主成分であるメタン検出精度は
向上せず。
報告書記載時点の製品より小型化・改良した製品を開発。ただしガス配管にそのまま適用できる水準のものではな
い。
今年度サンプル評価試験を実施した技術
技術・プロジェクト・製品名
孔曲がり計測装置(TUG-NAVI)
能動スコープカメラ
車輪型走行ロボット INSPECTOR
スチールメッシュ入りPE管(ワイヤーメッシュ補強PE管)
UBESTAナイロン12
多摩川精機
東北大学
INSPECTOR
三菱樹脂
宇部興産
研究/開発元
送ガス用鋼帯補強PE管
古河電工
金属強化PE配管システム(パンチングメタルPE管)
送水用パイプ
HDPE パイプ PE100 PE100+
ポリエチレン管用防護材
メタンガス画像計測システム
ガス漏れ検知用 赤外線サーモグラフィ FLIR GF320*
OptaSense
ORFEUS
3DGPR
日立金属
三井金属エンジニアリング
ライオンデルバセル
大東電材
福井大学
FLIR
QinetiQ
IDS 等
東北大学
状況
ジャイロセンサを管路内に挿通させ、測長器と組み合わせて配管径路を計測。
配管内に先端にカメラを装備したケーブルを挿通させ管内の状況を把握。
配管内を走行し、管内の状況を探査するロボット。
PE管にスチールメッシュを入れて補強した配管。
強固なアラミド結合を有するナイロン12を材料とした配管。
PE管に鋼帯(SUS)を入れて補強した配管。
PE管にポリアリレート繊維を入れて補強したポリアリレート繊維補強管でも試験を実施。
PE管に炭素鋼を入れて補強した配管。
PE管にアラミド繊維を入れて補強したアラミド繊維補強PE管。
水道用として使用されている高密度PE管と非開削工法用として開発された耐表面傷付き性を付与したPE100による配
管。
PP繊維でできたシートを2層巻きした防護材。
メタンガス検出に特化して漏洩状況を把握、画像化。
都市ガス漏れ検知に適した周波数に特化した赤外線サーモグラフィ。
光ファイバセンサを配管近くに敷設し他工事等を検知する。
欧州で開発された連続波方式(SFCW)を採用したロケーター。
絶対座標化とそれを用いた詳細な3Dマップを作成可能なロケーター。
進展が確認できなかった技術
技術・プロジェクト・製品名
研究/開発元
飛行船ロボット
神戸大学,JAXA
ラマン散乱を用いた水素ガス濃度の遠隔計測
ラマン散乱を用いた漏洩水素ガス流の可視化
テラヘルツ関連技術
カーボンナノチューブを用いた超高感度ガスセンサ
テラヘルツ帯の広帯域・超低雑音受信機
パイプラインの4次元地理情報システム応用
光ファイバ神経網技術
配管向けECDA技術
天然ガス漏洩のダイレクトな可視化(VOUGE)
抗原抗体反応を利用した超高感度においセンサ
無電源10m超応答可能な無線タグ温度センサ
磁歪(MsS)による内部腐食の検知技術の開発
渦電流センサによる鋼管表面の腐食度合いのマッピング
化の技術
Inner UT システム
新たな管路内調査方法(ミラー方式及び展開図化)の導入
超音波検査法による更生管の品質確認に関する基礎検討
四国総合研究所
四国総合研究所
スペクトルデザイン
大阪大学
産業技術総合研究所
日立製作所
東京大学,鹿島建設
CC Technologies
Advantica
九州大学
仙台地域知的クラスタ
SwRI
ガス本管向け自走式検査ロボットの開発 (Explorer)
CMU, SwRI
ガス本管向けの検査ロボット機構 (TIGER)
Automatika, NGA
下水管やその他埋設管内のクリーニング装置(FACT Pig)
ねじ推進へび型ロボット
へび型配管ロボット
へび型水陸両用ロボット
パイプ点検ロボット
磁石車輪式ロボット
ビームスプリッタを用いた視野可変内視鏡
高安全水圧能動カテーテル
水圧駆動型腹腔鏡マニピュレータの開発
臓器までの距離を計測する立体内視鏡測距システム
小型超高圧油圧アクチュエータ
医療用マイクロロボット
Durham Pipeline Technology
電気通信大学, 岡山大学,日本SGI
岡山大学
東京工業大学
愛知工業大学
Autonomous System Lab
東京大学
名古屋大学
大阪大学
早稲田大学
岡山大学
東北大学
東京工業大学・東京精機・
応用計測研究所・日本電産
極限環境適応型アクチュエータユニット
長菱エンジニアリング
東京都下水道局
日本管路更生工法品質確保協会
東京農工大学,ダブル技研
遠隔深部腹腔内手術用マニピュレータ
低侵襲手術用多自由度鉗子
低侵襲脳外科手術用マスタマニュピレータ
低侵襲手術支援用多自由度鉗子
配管検査ロボット
超小型自律ヘリコプタ MUFLY
PIGPEN
自律飛行する携帯可能なUAV
無人ヘリコプタ
農業管理用無人飛行機
PE管を位置検知する複合アレイシステムの開発
名古屋大学
工学院大学
工学院大学・早稲田大学
慶応義塾大学
三井造船
Eidgenossische Technische Hochshule Zurich
PSI
日立製作所,川田工業,防衛省
千葉大学
QinetiQ
Witten Technologies
惑星探査用地中レーダ CRUX GPR
NASA
アレイアンテナを用いたインパルス地雷探査レーダ
ベクトル地中レーダ
超高分子量PE繊維強化PE管
衝撃吸収プラスティック
プラスティック複合材料
FRP接合技術
形状記憶合金継手
漏洩防止テープ
腐食による差し水と位置の検出 (MOTE)
電気通信大学,群馬高専
名古屋大学,筑波大学
京都工芸繊維大学
東レ
ホーペック
日本大学
新日本製鐵
群馬大学
CC Technologies, SwRI
三菱エンジニアリングプラスチックス/出光興産
住友ダウ/帝人化成
egeplast
Pipelife
Specialty Products, Inc.
Inspector
SINTEF
中央大学
カーネギーメロン大学
Reduct
日本信号(株)
NTTフォトニクス研究所
東海大学
SYSCA
九州大学
NEC
SwRI
NTTインフラネット
ICCS等
東北大学
東北大学
19
Hexel One
SoluForce
Drangonsheild
車輪型走行ロボット Makro Plus
車輪/蛇行併用型ロボット Piko
ミミズロボット
ヘビ型配管ロボット
DuctRunner
リモガス
高感度ガス検出用中赤外線波長変換光源
光圧縮センサ
半導体センサ
においセンサ(表面分極制御法)
監視用小型無人機システム
固定翼小型無人航空機 バスターシステム
セキュアロケーティングシステム
WATERPIPE
地雷探査システム ALIS
リアルタイムキネマティックGPSを用いた金属探知機
現地訪問時点では更なる開発への着手する予定であったが、そこからの進展は確認できず。
SwRI
多自由度モータ(球面超音波モータ)
ポリカーボネート
状況
技術ヒアリングを実施。
開発は進められているが、飛行実験とそれに伴う修正が主で、報告書記載時点からの進展は確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
関連論文は発表されているが、都市ガスの主成分を検出する方向の研究ではない。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
本プロジェクトは調査プロジェクトであり、開発段階への進展もなし。
プロジェクトの幹事会社であったAdvantica 社は買収され、開発は引き継がれていない。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
コンソシアム解体後も開発が継続しているようであるが具体的な進展は確認できず。
製品化されたものであり、情報に変更なし。
製品化されたものであり、情報に変更なし。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
技術開発が続けられていることは確認しているがプロジェクト終了まで詳細情報が開示されないため新規情報は確認
できず。
技術開発が進められていることは確認しているがプロジェクト終了まで詳細情報が開示されないため新規情報は確認
できず。
開発元は会社を清算、組織母体の大学においても後続の研究は見られず。
ねじ型推進ロボットの第2試作機が開発されて以降、具体的な進展を確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
報告書未掲載の配管検査用ロボットを確認したが、実際にはその時点で開発されていたことが判明。その後の進展は
確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
関連の論文は発表されているが手術用マニュピレータとしての開発に関するもの。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
利用事例は見つかるものの、技術的な新たな進展に関する情報は見当たらない。
プロジェクトは終了し、最終報告書が作成されているはずであるが公開されていない。
開発が進行中であることは確認しているが、成果がプロジェクト終了まで公開されないため確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず、開発元でももはや推進していない。
開発元企業が2009年10月に倒産し、製品を引き継いで扱う企業もなし。
本来は月面の地中探査用に開発され、本体に関する改良は行われていないようであるが、クレーターの探査などに転
用されている。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
プロジェクトのメインであった研究室では当該分野に関する研究は終了の模様。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
商品化予定とプレスリリースされていたが、その後の進展に関する発表がなされていない。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
当時中心となっていた研究室では当該技術は「過去の研究テーマ」として分類されている。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
当時の研究者が大学に残っておらず、研究内容も引き継がれていない。
現地訪問時では更なる開発に着手する予定であったが、進展は確認できず。
製品化されたものであり、情報に変更なし。
製品化されたものであり、情報に変更なし。
製品化されたものであり、情報に変更なし。
製品化されたものであり、情報に変更なし。
現地調査訪問時に開発が中断していることを確認。
報告書記載時点での最新技術を調査しており、その時点からの進展は未公表。
報告書記載時点での最新技術を調査しており、その時点からの進展は未公表。
報告書記載時点での最新技術を調査しており、その時点からの進展は未公表。
既に製品化されたものであり、情報に変更なし。
Webでは「開発中」との表記が見られるが、具体的な進展を確認できず。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
報告書記載時点での最新技術を調査したのでその時点からの進展は未発表。
既に製品化されたものであり、情報に変更なし。
高感度においセンサの開発は一段落している。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
プロトタイプを開発したのみ。
Webページ検索・文献検索では進展を確認できず。
報告書記載時点で既にプロジェクトは終了しており新たな進展なし。
報告書記載時点で最新技術を調査したのでそこからの進展は未発表。
報告書記載時点で最新技術を調査したのでそこからの進展は未発表。
19
20
Ⅱ
調査の実施結果
17
1.フォローアップ等の調査
平成20・21年度地方都市ガス事業天然ガス化促進対策調査(次世代保安向上技術調査(保
安技術調査))で情報収集を行った技術は、平成20年度報告書に記載分で66技術、21年度
報告書記載分で29技術であった。これらの技術に対し継続して情報収集(以下「フォローアッ
プ作業」と呼ぶ)を行い、進展の有無を確認した。またこの作業を通じて新たに関連する技術と
して3技術を確認した。したがって最終的な調査対象技術は98技術となった。
各技術の進展状況を判断した結果は下図のようになった。
H20年度掲載分 :66技術
H21年度新規掲載分:29技術
H22年度新規確認分: 3技術
本事業に関連する進展あり :4技術※
合計98技術
進展ありだが本事業に関係薄 :5技術
今年度サンプル評価試験実施技術 :15技術※
※今年度新規確認 3技術含む
進展が確認できず/明らかに進展なし :74技術
図1-1:技術フォローアップ調査の結果(件数)
この判断のための作業は以下の手順で実施した。
調査対象技術リストの
作成
技術の進展の確認
なし
あり
進展あり?
進展なしの技術
進展が見られた技術
新規に確認した技術
サンプル評価試験を
実施する技術
コンタクトを試み
ヒアリングを実施
(最低3箇所)
試験の成果を
フォローアップ
結果とする
まとめ
図1-2:フォローアップ作業の手順
21
すなわち、
① 平成20・21年度の報告書に記載されている技術およびサンプル評価試験対象技術か
ら、調査対象技術リストを作成する。
② 今年度サンプル評価試験を実施する技術については、その成果をもって進展確認の結果
とする。
③ サンプル評価試験を実施しない技術については、開発元のウェブで最新状況を確認する。
④ ウェブ等で状況が確認できない技術については、技術名・開発者(社)名・プロジェク
ト名などで文献検索を行い、最新の状況を確認する。
⑤ 進展の有無を判断する。
(進展有無判断の方針については後述する。)
⑥ ⑤の結果として進展が確認された技術および作業を通じて新規に確認された技術につ
いては、過年度報告書記載時点からの進展状況をまとめる。
⑦ ⑥で確認した技術の開発元に対してコンタクトを試み、対応していただけた場合にはヒ
アリングを実施し、技術詳細を確認する。
⑧ 以上の成果をまとめる。
また進展の有無に関しては以下のような方針で判断を行った。

開発元の企業・組織が清算されて技術を引き継ぐ主体がないまたは組織は存在してい
るが該当技術開発が過去のものとして扱われている状態となっている、情報源がなく
なっている技術は「明らかに進展なし」と見なす。

研究開発主体が存続していても、Web および文献検索を実施して報告書記載内容と比
較して追加の情報が得られないものは「進展が確認できず」と見なす。各企業や研究
機関内部では実際には研究開発が進められていることも想定されるが、公開されてい
る情報(Web または文献)で判断しているため、
「進展なし」と区別して「進展が確
認できず」としている。

報告書記載時点で製品であったもの(商品化されているもの)については、その後の
商品の改良の有無を確認し、改良版や新製品が提供されていれば「進展あり」とする。

前項までの基準で新情報が確認できれば「進展あり」と判断されたとしても、その方
向性が本調査に関連するものとは限らない。そのため本調査やガス事業に関連するか
否かという観点から、
「本事業に関連する進展あり」または「進展ありだが本事業と
は関連が薄い」という分類を行う。
図1-1に示したとおり、今年度サンプル評価試験を実施する技術を除けば大半の技術に進展
が見られないか、進展があったとしてもガス事業とは関連が薄いと見られるものであった。
各年度の調査結果と、進展のあった技術について次節以降に記す。
22
なお、次節以降で、各技術の進展度について判断した結果を記号で示している。これらは共通
で以下のような意味で用いている。
表1-1:進展度を示す記号
記号
進展度・状況
◎
本事業に関連する進展あり。
○
技術的に進展は見られるものの、本事業に関連する方向ではない。
□
今年度サンプル評価試験を実施
×
進展が確認できず。または明らかに進展なし。
進展があったと見なせる技術(表1-1における◎・○・□)については1.4で個別に説明
を行う。
なお、
「サンプル評価試験」とは、今年度別途受託している「次世代保安向上技術調査(保安技
術調査(ジャイロの要素技術に関するサンプル評価の実施等))」ならびに「次世代保安向上技術
調査(保安技術調査(管内走行性等の要素技術に関するサンプル評価の実施等))」において実施
されている実験を指す。
1.1 平成20年度のフォローアップ等の技術調査
平成20年度報告書に記載した技術は全体で66件あり、最新の情報を確認した結果は以下の
ようになった。
H20年度報告書掲載分 :66技術
本事業に関連する進展あり :1技術
進展ありだが本事業に関係薄 :5技術
今年度サンプル評価試験実施技術 :6技術
進展が確認できず/明らかに進展なし :54技術
図1.1-1:平成20年度技術フォローアップ結果(件数)
各技術の状況確認結果を下表に示す。進展に関する記号の意味は表1-1のとおりである。
23
表1.1-1:平成20年度技術フォローアップ結果
番
号
1
技術・プロジェクト・製
品名
高信頼性で PE 管も検知
できる地中探査レーダ
の開発(GIGA)
研究/開発元
進展
EU プロジェクト
(Thales Air
Defence 等)
◎
2
へび型クローラロボッ
ト
電気通信大学
○
3
壁面歩行ロボット
(RISE)
Boston
Dynamics
○
4
高高度無人航空機
(Zephyr UAV)
QinetiQ
○
5
非冷却式赤外線モジュ
ール
NEC
○
6
光ファイバ温度分布計
測システム・光ファイバ
ガスセンサ
日立電線
○
7
OptaSense
QinetiQ
□
8
9
孔曲がり計測装置
多摩川精機
(TUG-NAVI)
スチールメッシュ入 PE
三菱樹脂
管(ワイヤーメッシュ補強 PE 管)
□
状況/概要
地中探査レーダ技術に関する調査プロジェクト。そ
の成果は OREFUS に引き継がれ開発が進められた。
ORFEUS については今年度サンプル試験を実施。
報告書記載のロボットの後継機が開発されている模
様。ただしあくまでレスキュー用ロボットとしての
機能向上で、ガス事業への適用困難。
プロジェクト終了後もコンソシアムの参加大学によ
り開発が継続。ただし壁面や柱状のものを登る機能
の向上が行われており、ガス事業への適用は困難。
報告書記載時点から連続飛行記録を大幅に延長。た
だし高高度における連続飛行性能向上を目指してお
り、センサを搭載して地上のガス漏洩検知などの技
術的検討はなされていない。
報告書計算時点の製品より温度分解能を向上させた
新製品を提供。ただし都市ガスの主成分であるメタ
ン検出精度は向上せず。
報告書記載時点の製品より小型化・改良した製品を
開発。ただしガス配管にそのまま適用できる水準の
ものではない。
光ファイバセンサを配管近くに敷設し他工事等を検
知する。
ジャイロセンサを管路内に挿通させ、測長器と組み
合わせて配管径路を計測。
□
PE 管にスチールメッシュを入れて補強した配管。
10
UBESTA ナイロン 12
宇部興産
□
強固なアラミド結合を有するナイロン 12 を材料とし
た配管。
11
金属強化 PE 配管システ
ム(パンチングメタル PE 管)
日立金属
□
PE 管に炭素鋼を入れて補強した配管。
12
送ガス用鋼帯補強 PE 管
古河電工
□
PE 管に鋼帯(SUS)を入れて補強した配管。
PE 管にポリアリレート繊維を入れて補強したポリアリレ
ート繊維補強管でも試験を実施。
四国総合研究所
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
四国総合研究所
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
スペクトルデザ
イン
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
大阪大学
×
関連論文は発表されているが、都市ガスの主成分を
検出する方向の研究ではない。
産業技術総合研
究所
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
日立製作所
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
13
14
15
16
17
18
ラマン散乱を用いた水
素ガス濃度の遠隔計測
ラマン散乱を用いた漏
洩水素ガス流の可視化
テラヘルツ関連技術
カーボンナノチューブ
を用いた超高感度ガス
センサ
テラヘルツ帯の広帯
域・超低雑音受信機
パイプラインの 4 次元地
理情報システム応用
19
光ファイバ神経網技術
20
配管向け ECDA 技術
21
22
天然ガス漏洩のダイレ
クトな可視化(VOUGE)
抗原抗体反応を利用し
た超高感度においセン
サ
東京大学,鹿島
建設
CC
Technologies
×
Advantica
×
九州大学
×
24
本プロジェクトは調査プロジェクトであり、開発段
階への進展もなし。
プロジェクトの幹事会社であった Advantica 社は買
収され、開発は引き継がれていない。
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
番
号
技術・プロジェクト・製
品名
研究/開発元
進展
状況/概要
23
無電源 10m 超応答可能な
無線タグ温度センサ
仙台地域知的ク
ラスタ
×
コンソシアム解体後も開発が継続しているようであ
るが具体的な進展は確認できず。
SwRI
×
24
25
26
27
28
29
磁歪(MsS)による内部
腐食の検知技術の開発
渦電流センサによる鋼
管表面の腐食度合いの
マッピング化の技術
Inner UT システム
新たな管路内調査方法
(ミラー方式及び展開
図化)の導入
超音波検査法による更
生管の品質確認に関す
る基礎検討
ガス本管向け自走式検
査ロボットの開発
(Explorer)
現地訪問時点では更なる開発への着手する予定であ
ったが、そこからの進展は確認できず。
SwRI
×
長菱エンジニア
リング
×
製品化されたものであり、情報に変更なし。
東京都下水道局
×
製品化されたものであり、情報に変更なし。
日本管路更生工
法品質確保協会
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
CMU, SwRI
×
×
30
ガス本管向けの検査ロ
ボット機構 (TIGER)
Automatika,
NGA
31
下水管やその他埋設管
内のクリーニング装置
(FACT Pig)
32
ねじ推進へび型ロボッ
ト
Durham
Pipeline
Technology
電気通信大学,
岡山大学,日本
SGI
33
へび型配管ロボット
技術開発が続けられていることは確認しているがプ
ロジェクト終了まで詳細情報が開示されないため新
規情報は確認できず。
技術開発が進められていることは確認しているがプ
ロジェクト終了まで詳細情報が開示されないため新
規情報は確認できず。
×
開発元は会社を清算、組織母体の大学においても後
続の研究は見られず。
×
ねじ型推進ロボットの第 2 試作機が開発されて以降、
具体的な進展を確認できず。
岡山大学
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
東京工業大学
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
愛知工業大学
Autonomous
System Lab
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
東京大学
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
名古屋大学
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
大阪大学
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
早稲田大学
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
岡山大学
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
東北大学
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
43
極限環境適応型
アクチュエータユニット
東京工業大学・
東京精機・応用
計測研究所・日
本電産
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
44
多自由度モータ
(球面超音波モータ)
東京農工大学,
ダブル技研
×
報告書未掲載の配管検査用ロボットを確認したが、
実際にはその時点で開発されていたことが判明。そ
の後の進展は確認できず。
45
遠隔深部腹腔内手術用
マニピュレータ
名古屋大学
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
35
へび型水陸両用ロボッ
ト
パイプ点検ロボット
36
磁石車輪式ロボット
34
37
38
39
40
41
42
ビームスプリッタを用
いた視野可変内視鏡
高安全水圧能動カテー
テル
水圧駆動型腹腔鏡マニ
ピュレータの開発
臓器までの距離を計測
する立体内視鏡測距シ
ステム
小型超高圧油圧アクチ
ュエータ
医療用マイクロロボッ
ト
25
番
号
46
47
48
技術・プロジェクト・製
品名
低侵襲手術用多自由度
鉗子
低侵襲脳外科手術用マ
スタマニュピレータ
低侵襲手術支援用多自
由度鉗子
研究/開発元
進展
状況/概要
工学院大学
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
工学院大学・早
稲田大学
×
関連の論文は発表されているが手術用マニュピレー
タとしての開発に関するもの。
慶応義塾大学
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
49
配管検査ロボット
三井造船
×
利用事例は見つかるものの、技術的な新たな進展に
関する情報は見当たらない。
50
超小型自律ヘリコプタ
MUFLY
Eidgenossische
Technische
Hochshule
Zurich
×
プロジェクトは終了し、最終報告書が作成されてい
るはずであるが公開されていない。
51
PIGPEN
PSI
×
開発が進行中であることは確認しているが、成果が
プロジェクト終了まで公開されないため確認でき
ず。
52
飛行船ロボット
神戸大学,JAXA
×
開発は進められているが、飛行実験とそれに伴う修
正が主で、報告書記載時点からの進展は確認できず。
日立製作所,川
田工業,防衛省
千葉大学
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
54
自律飛行する携帯可能
な UAV
無人ヘリコプタ
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
55
農業管理用無人飛行機
QinetiQ
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず、開
発元でももはや推進していない。
56
PE 管を位置検知する複
合アレイシステムの開
発
Witten
Technologies
×
開発元企業が 2009 年 10 月に倒産し、製品を引き継
いで扱う企業もなし。
57
惑星探査用地中レーダ
CRUX GPR
NASA
×
本来は月面の地中探査用に開発され、本体に関する
改良は行われていないようであるが、クレーターの
探査などに転用されている。
58
アレイアンテナを用い
たインパルス地雷探査
レーダ
電気通信大学,
群馬高専
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
59
ベクトル地中レーダ
名古屋大学,筑
波大学
×
プロジェクトのメインであった研究室では当該分野
に関する研究は終了の模様。
超高分子量 PE 繊維強化
PE 管
衝撃吸収プラスティッ
ク
プラスティック複合材
料
京都工芸繊維大
学
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
東レ
×
商品化予定とプレスリリースされていたが、その後
の進展に関する発表がなされていない。
ホーペック
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
63
FRP 接合技術
日本大学
×
64
形状記憶合金継手
新日本製鐵
×
65
漏洩防止テープ
群馬大学
×
66
腐食による差し水と位
置の検出 (MOTE)
CC
Technologies,
SwRI
×
53
60
61
62
26
当時中心となっていた研究室では当該技術は「過去
の研究テーマ」として分類されている。
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
当時の研究者が大学に残っておらず、研究内容も引
き継がれていない。
現地訪問時では更なる開発に着手する予定であった
が、進展は確認できず。
1.2 平成21年度のフォローアップ等の技術調査
平成21年度報告書に記載した技術は全体で29件あり、最新の情報を確認した結果は以下の
ようになった。
H21年度報告書掲載分 :29技術
本事業に関連する進展あり :1技術
進展ありだが本事業に関係薄 :0技術
今年度サンプル評価試験実施技術 :8技術
進展が確認できず/明らかに進展なし :20技術
図1.2-1:平成21年度技術フォローアップ結果(件数)
また各技術の状況確認結果を下表に示す。進展に関する記号の意味は表1-1のとおりである。
表1.2-1:平成21年度技術フォローアップ結果
技術・プロジェクト・
製品名
研究/開発元
1
Mapping the
Underworld
英国 国プロ
◎
2
ORFEUS
IDS 等
□
3
3DGPR
東北大学
□
4
車輪型走行ロボット
INSPECTOR
INSPECTOR
□
5
能動スコープカメラ
東北大学
□
6
メタンガス画像計測シ
ステム
福井大学
□
7
送水用パイプ
三井金属エン
ジニアリング
□
8
HDPE パイプ
PE100 PE100+
ライオンデル
バセル
□
9
ポリエチレン管用防護
材
大東電材
□
番号
10
ポリカーボネート
11
Hexel One
三菱エンジニアリン
グプラスチックス
出光興産
住友ダウ
帝人化成
Egeplast
12
SoluForce
13
Dragonshield
進展
状況
英国で進められているガス配管を含む地下埋設物の
探査技術の技術開発プロジェクトで、現在第 2 期が
進行中。
欧州で開発された連続波方式(CSCW)を採用したロ
ケーター。
絶対座標化とそれを用いた詳細な 3D マップを作成可
能なロケーター。
配管内を走行し、管内の状況を探査するロボット。
配管内に先端にカメラを装備したケーブルを挿通さ
せ管内の状況を把握。
メタンガス検出に特化して漏洩状況を把握、画像化。
PE 管にアラミド繊維を入れて補強したアラミド繊維
補強 PE 管。
水道用として使用されている高密度 PE 管と非開削工
法用として開発された耐表面傷付き性を付与した
PE100 による配管。
ポリプロピレン繊維でできたシートを2層巻きした
防護材。
×
製品化されたものであり、情報に変更なし。
×
製品化されたものであり、情報に変更なし。
Pipelife
×
製品化されたものであり、情報に変更なし。
SPI
×
製品化されたものであり、情報に変更なし。
27
技術・プロジェクト・
製品名
車輪型走行ロボット
Makro Plus
車輪/蛇行併用型ロボ
ット Piko
16
番号
進展
状況
INSPECTOR
×
現地調査訪問時に開発が中断していることを確認。
SINTEF
×
報告書記載時点での最新技術を調査しており、その
時点からの進展は未公表。
ミミズロボット
中央大学
×
報告書記載時点での最新技術を調査しており、その
時点からの進展は未公表。
17
ヘビ型配管ロボット
カーネギーメ
ロン大学
×
報告書記載時点での最新技術を調査しており、その
時点からの進展は未公表。
18
DuctRunner
Reduct
×
既に製品化されたものであり、情報に変更なし。
19
リモガス
日本信号(株)
×
Web では「開発中」との表記が見られるが、具体的な
進展を確認できず。
20
高感度ガス検出用中赤
外線波長変換光源
NTT フォトニ
クス研究所
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
21
光圧縮センサ
東海大学
×
報告書記載時点での最新技術を調査したのでその時
点からの進展は未発表。
22
半導体センサ
SYSCA
×
既に製品化されたものであり、情報に変更なし。
23
においセンサ
(表面分極制御法)
九州大学
×
高感度においセンサの開発は一段落している。
NEC
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
SwRI
×
プロトタイプを開発したのみ。
NTT インフラ
ネット
×
Web ページ検索・文献検索では進展を確認できず。
ICCS 等
×
東北大学
×
東北大学
×
14
15
24
25
26
27
28
29
監視用小型無人機シス
テム
固定翼小型無人航空機
バスターシステム
セキュアロケーティン
グシステム
WATERPIPE
地雷探査システム
ALIS
リアルタイムキネマテ
ィック GPS を用いた金
属探知機
研究/開発元
28
報告書記載時点で既にプロジェクトは終了しており
新たな進展なし。
報告書記載時点で最新技術を調査したのでそこから
の進展は未発表。
報告書記載時点で最新技術を調査したのでそこから
の進展は未発表。
1.3 平成22年度新規把握技術調査
1.1および1.2の情報収集作業を通じて確認した新規技術が3件あった。具体的な内容は
1.4で記載する。
表1.3-1:平成22年度新規把握技術(概要)
番号
技術・プロジェクト・
製品名
1
高精度 GPS 移動計測装
置
三菱電機
GPS/レーザスキャナ/カメラを連動して道路周辺状況
を高速移動しながら把握。
2
自律型管内漏水検知シ
ステム Smart Ball
Pure Technologies
(カナダ)
東亜グラウト工業
配管内でボール(音響センサ内蔵)を転がし、漏水箇所
を特定。
3
ガス漏れ検知用 赤外
線サーモグラフィ FLIR
GF320
FLIR (米国)
日本バーンズ
都市ガス漏れ検知に適した周波数に特化した赤外線サ
ーモグラフィ。
研究/開発元
技術の概要
29
1.4 進展が確認された技術の調査
1.4.1 本事業に関連する進展が見られる技術
本事業に関連する進展があったと見なせる技術は、今年度の新たに確認した技術を含め、下表
に示す4技術のみであった。
表1.4.1-1:本事業に関連する進展が見られる技術
年度
H20
H21
H22
H22
技術・プロジェクト・
製品名
高信頼性で PE 管も検知
できる地中探査レーダ
の開発(GIGA)
Mapping the
Underworld
高精度 GPS 移動計測
装置 MMS
自律型管内漏水検知シ
ステム Smart Ball
概要
研究/開発元
EU プロジェクト
( Thales
Defence 等)
Air
英国 国プロ
三菱電機
Pure Technologies
(カナダ)
東亜グラウト工業
30
地中探査レーダ技術に関する調査プロジェクト。その成果
は OREFUS に引き継がれ開発が進められた。ORFEUS につい
ては今年度サンプル試験を実施。
英国で進められているガス配管を含む地下埋設物の探査
技術の技術開発プロジェクトで、現在第 2 期が進行中。
車載のカメラ・レーザスキャナによる撮影で対象の位置・
状態計測し、マップを作成。
音響センサを格納したボールを管内で転がし、計測した音
響データから漏水箇所を検知するシステム。
1.4.1.1 高信頼性で PE 管も検知できる地中探査レーダの開発(GIGA)
本 プ ロ ジ ェ ク ト Ground penetrating radar innovative research for highly reliable
robustness/accuracy gas pipe detection/location(高信頼頑強性/高精度ガス配管探査のための
地中探査レーダ)はその頭文字をとって GIGA プロジェクトと呼ばれており、欧州委員会の資金
により2002年1月から2003年12月まで実施された、地中探査レーダ(GPR)技術の
精度を向上させるための調査プロジェクトである。
プロジェクト実施時点における最新の地中探査レーダ(ロケーター)技術を調査し、必要とさ
れるロケーターの仕様をまとめ、高精度の探査が可能なモデルの検討を進めた。プロジェクト内
でいくつかのサンプル試験も実施されているが、基本的な性格は調査プロジェクトであり、成果
物として高精度のロケーターは製作されていない。そのためこれを実装するための技術開発プロ
ジェクトが要望されていた。この流れを受けて GIGA に参加企業・研究機関を中心となり EU フ
レームワークプロジェクトの支援の下に実施されたプロジェクト Optimised Rader to Find
Every Utility in the Street(ORFEUS)へと発展した。
2つのプロジェクトの概要は以下の表のとおりである。
表1.4.1.1-1:GIGA と ORFUES の比較
GIGA
Thales Air Defence:仏
OSYS Technology 社:英
IDS 社:伊
Gas de France:仏
Trakto-Technik spezialmaschinen 社:独
GERG(ヨーロッパガス 研究グループ)
(既にプロジェクトのページは削除)
URL
ORFEUS
OSYS Technology 社:英
IDS 社:伊
Gas de France:仏
Trakto-Technik spezialmaschinen 社:独
GERG(ヨーロッパガス 研究グループ)
英国水道産業研究所(UKWIR)
:英
デルフト工科大学:蘭
フィレンツェ大学:伊
ブルーノ大学:チェコ
http://www.orfeus-project.eu/
EU the 5th Framework Programme (FP5)
資金
EU the 6th Framework Programme (FP6)
2002 年 1 月~2003 年 12 月(24 ヶ月)
総額:2,993,362 ユーロ(約 3.6 億円)
補助:1,496,680 ユーロ(約 1.8 億円)
高性能なロケーターに関する最新情報を検
討し、要求される仕様をまとめた。
期間
規模1
2006 年 11 月~2010 年 4 月(42 ヶ月)
総額:4,900,000 ユーロ(約 5.8 億円)
補助:2,450,000 ユーロ(約 2.9 億円)
GIGA の成果を基にロケーターを開発し、欧
州各地で計測実験を実施、性能を確認しつ
つある。
幹事
参
加
機
関
成果
ORFEUSプロジェクトについては、平成21年度の現地調査でプロジェクトに参画してい
る大学・企業を訪問しており、また今年度にサンプル評価試験を実施してその技術的内容を確認
している。
1
1ユーロ=120 円として換算。
31
1.4.1.2 Mapping the Underworld プロジェクト
Mapping the Underworld プロジェクトは英国における国家プロジェクトであり、平成21年
度に実施した海外現地調査において、ORFEUSプロジェクトに関する情報を収集するために
IDS社を訪問した際に、同社が関与している地中探査関連プロジェクトとして紹介されたもの
である。このプロジェクトは、英国工学・物理科学研究会議(EPSRC2)の出資で実施されてお
り、IDS社の他にはバーミンガム大学・バース大学・リード大学・シェフィールド大学・サザ
ンプトン大学・英国水道産業研究所(UKWIR)などが参加して進められている。
英国では、わが国と同様、都市部の地下には下図のようにガス配管や電線・電話線のケーブル
などのユーティリティ用配管が縦横に敷設されており、工事による破損が問題になっていること
が本プロジェクトの背景にある。
図1.4.1.2-1:英国における地下埋設物の状況
このような状況を受けて埋設インフラを正確に計測・把握するため2005年にこのプロジェ
クトが開始された。試掘せずに地中埋設インフラの位置を特定するためにGPRまたは音響セン
サを使ったマルチセンサや複数データソースからの統合技術、将来 のガス配管検知のために
RFID タグを利用したシステムなどを研究・開発している。
2005年から始まった第1フェーズ(規模:120 万ポンド≒約 1 億 5600 万円;1 ポンド=130
円として)では技術調査を実施し、埋設インフラの探査には複数技術の組み合わせによる方法の
みが信頼性を確保できると結論づけて2008年に終了した。これを受けて2008年11月に
第2フェーズが開始された。第2フェーズの規模は 350 万ポンド(約 4 億 5500 万円)である。
プロジェクトは8つのテーマに分けて進められており、
「ワークパッケージ」としてその進展を報
告している。各ワークパッケージ(以下 WP と記す)の概要を以下に記す。
図の出典
2
http://www.mappingtheunderworld.ac.uk/people.html
物理科学や工学の研究および教育を支援する英国政府の基金機関の1つ。
32
表1.4.1.2-1:MTU の各 WP の概要
WP1
WP 2
WP 3
WP 4
WP 5
WP 6
WP 7
WP 8
名称
概要
GPRの設計と最適化
Advancing Ground Penetrating Radar
Technology
音響センサによる探査技術
Vibro-Acoustic
Technologies
Advancement
電磁場計測による探査技術
Low Frequency Electromagnetic Field
Technologies
磁場探査技術
Magnetic Field Technologies
複数センサアレイと信号処理技術の開発
Development of Multi-Sensor Array and
Signal Processing
環境に応じて信号出力方法を切り替えて使う新たなハー
ドウェアの開発。
埋設資産記録とセンサデータの融合
Fusion of Sensor Data with Buried
Asset Records
土壌条件に対する複数センサデバイスの
チューニング
Tuning of the Multi-Sensor Device to the
Ground Conditions
試験設備の設計と準備
Proving Trials and Specification of a
National MTU Test Facility
地面を振動させる/配管を振動させるという2つの方法
で起きる振動による音響を計測し配管位置を把握する技
術の開発。
地表近くにある小さい非伝導性の物体を検知するために
低周波の電磁波を用いて計測を行う技術の開発。
特に電力ケーブルの探査に特化した磁場探査技術の開発
複数のセンサアレイからの信号処理を行い、精緻なマッ
プを作成
(3 点以上の GPS 参照点を準備し、WP1 から WP3 で改
良しているセンサによる計測結果と組み合わせる)
埋設資産のデータとマルチセンサによる計測結果のデー
タを照合し、埋設物の大きさなどを推定するモデルの構
築
探査対象の土壌の条件を基に各センサのパラメータを最
適にチューニングするための知識ベース推論システムの
開発
本プロジェクトで利用するテストサイトの準備・構築
本プロジェクトは進行中であるため最終的な成果に基づく評価はできないが、2010年2月
に対外的なカンファレンスを実施しており、各 WP の方向性や取り組みが公開されている。本報
告書の内容はその時点の情報に基づくものである。
WP1「GPRの設計と最適化」では、計測対象の状況や環境に応じて複数の発信方式を使い分
け ら れ る よ う に 実 装 し た 装 置 の 開 発 に 取 り 組 ん で い る 。 そ の 3 種 類 の 方 式 と は FMCW
( Frequency-Modulation Continuous Waves ; 周 波 数 変 調 連 続 波 方 式 )・ SFCW ( Stepped
Frequency Continuous Waves;ステップ周波数連続波方式)・OFDM(Orthogonal-Frequency
Division Multiplexing;直交波周波数分割多重方式)である。このように探査対象によって適切
な方式を採用するには機器自体を変えないと対応が困難であったが、これを1台で実現すること
を目指している。装置をいかにコンパクトに収めるかが重要な課題である。
WP2「音響センサによる探査技術」では、装置そのものの開発ではなく、フェーズ1の調査で
有効と判断した手法で実験し、どの程度正確に把握できるかを確認することに重点が置かれてい
る。土壌の種類や振動の与え方を様々に変え、どのように計測結果が異なるかを確認しようとい
うものである。
WP3 の「電磁場計測による探査技術」は、地表で地中に向かって電磁場を発生させると、計測
範囲内に非伝導性の物体が存在していれば場に乱れ(アノマリー)が生じることを利用して探知
33
を行うものである。本 WP では、計測されたアノマリーがデータ上の異常であるのか、配管と思
われる絶縁体であるのかを判定するための技術開発が行われている。
WP4 の「磁場探査技術」は、特に埋設されている電力ケーブルの探査に特化した技術である。
本 WP では、地中の電力ケーブルに三相の交流電流が流れている際にケーブル周辺に発生する磁
場をモデル化しその特徴を把握した上で、その磁場を探知できるコイルを用いた計測装置の開発
と試験に取り組んでいる。
WP5 の「複数センサアレイと信号処理技術の開発」では、WP1~4 で開発される技術を実装し
たセンサを複数組み合わせた信号処理を検討している。
ロケーターによるデータ・音響センサによるデータ・電磁場計測によるデータなどを統合して
地下の詳細なマップを作成しようとの試みである。
「統合」には物理的な装置としての統合、装置
の操作方法の統合、分析のためのデータフォーマットの統合の3つの作業が含まれており、最初
に取り組まれているのは異なる計測原理で取得されるデータを統一したフォーマットに格納する
方法の検討である。
WP6 の「埋設資産記録とセンサデータの融合」では、実際の地下埋設状況のデータと、上記の
各種センサの計測結果データを照合し、ある手法で計測された結果が実際にはどのように判定さ
れたかをすり合わせてチューニングを行い、新たな計測の際にその成果をフィードバックする仕
組み(知識ベース推論システム)を開発している。
WP7 の「土壌条件に対する複数センサデバイスのチューニング」では、計測の際に現場の土壌
の性質に合わせて操作者の知見を基に行われるパラメータ調整に関するデータを蓄積し、適切な
パラメータを提示するための知識ベース推論システムを開発している。
WP8 の「試験設備の設計と準備」では、WP1~7 の実施にあたって適切な試験場所の検討・準
備を行う WP である。
各 WP とも非常に興味深いものであり、今後の進展を定期的に確認する必要があると思われる。
34
1.4.1.3 高精度GPS移動計測装置
MMS
本技術(製品)は三菱電機(株)により開発された製品で、GPSアンテナ・IMU(慣性計
測装置)・オドメーター(走行距離計)・レーザスキャナ・カメラを搭載したユニットを自動車の
天板上に装備し、走行しながら位置計測と周辺画像取得・レーダによる探索を行うことで、道路
及び周辺の状況を自動的かつ連続的に把握し、絶対座標化することができるシステムである。
図1.4.1.3-1:高精度GPS移動計測装置 MMS に装備されているセンサ類
それぞれのセンサで取得されたデータの計測時刻を正確に合わせることにより、計測位置と周
辺の状況を再現することができる。通常、このような移動しながらの計測では低速での走行を余
儀なくされ周辺の交通に影響を与えることが多いが、一般道(~60km/h)でも高速道路(~
80km/h)でも交通規制することなく高精度で計測可能である。またカメラやレーザスキャナを搭
載していることにより、トンネル内や高架下などGPSが使用できない場所での位置計測も可能
となっている。
各計測技術や装置は必ずしも新規なものではないが、これらを統合し、正確にデータを照合・
解析し、精度の高いマップを作成するようシステム化した点は評価できる。現在、道路台帳附図
の作成や下水道情報管理、トンネルの健全性評価などに利用されており、他工事監視や、ガス管
の埋設位置の絶対座標化などに活用できると考えられる。
図の出典
http://www.mitsubishielectric.co.jp/pas/service/mms.pdf
35
1.4.1.4 スマートボール(Smart Ball)
本製品はピュア・テクノロジーズ社(Pure Technologies;カナダ)で開発された、音響センサ
を用いた漏水箇所検知システムである。日本国内では、平成22年4月より東亜グラウト工業(株)
がピュア・テクノロジーズ社と提携し、農業用水の漏水位置検知を実施している。
スマートボールは、音響センサを用いた漏洩検知システムであり、コア(スマートボール本体)
とそれを保護するアウターシェル(外殻)からなる。
図1.4.1.4-1:スマートボールとSBR(受信機)
コアは直径 66mm のアルミ合金の球であり、内部には管内の音を記録する音響センサ、温度計、
ボールの回転を記録する加速度計、微弱な磁界の変化を記録する磁気センサ、これらのデータを
格納するSDカードと、各センサ稼動のためのバッテリが搭載されており、12 時間の連続稼動が
可能な蓄電容量がある。
図1.4.1.4-2:スマートボールのコア内部
図の出典
http://www.toa-g.co.jp/gijitu01.html
東亜グラウト社提供 資料
36
コアをそのまま配管の中に転がすのではなく、アウターシェルを装備する。これによりコアを
防護すること、大きさを確保することで流体の抵抗を受けて推進力を向上させること、コアの振
動などを直接受けないようにしてノイズを低減させるなどの効果を持つ。
図1.4.1.4-3:コアにアウターシェルを装備した状態
管内での音響データはコアが計測して格納するが、正確な位置を把握するためにコアからは3
秒に1回超音波パルスを発信し、地上ではその信号を受け取り、位置追跡を行う。
位置追跡のためには埋設管に位置センサを設置しておく必要がある。この位置センサは管内の流
体が液体なら 800m、気体なら 200m 以下に1つずつ設置する必要がある。また SBR(Smart Ball
Receiver)と呼ばれる受信機を2セット準備し、ボール本体の移動を追尾して移動する必要があ
る。
国内ではまだガス配管に対する漏洩検知の計測実績はないが、海外ではガス高圧管による試験
的な計測事例があると報告されている。しかしながらガス低圧管内でこのスマートボールが計測
を想定している区間を無事走行できるか困難であると考えられ、今後の技術開発が待たれる。
図の出典
東亜グラウト社提供 資料
37
1.4.2 進展が見られるものの本事業には関係が薄い技術
報告書記載時点より何らかの進展が見られる技術であっても、本事業とは関連が薄いと考えら
れる技術は下表に示す5件であった。
表1.4.2-1:進展が見られるものの本事業には関係が薄い技術
年度
技術名
開発元
H20
へび型クローラロボ
ット
電気通信大学
H20
壁面歩行ロボット
(RISE)
Boston Dynamics
高高度無人航空機
(Zephyr UAV)
QinetiQ
H20
非冷却式赤外線モジ
ュール
NEC
H20
光ファイバ温度分布
計測システム・光フ
ァイバガスセンサ
日立電線
H20
概要
報告書記載のロボットの後継機が開発されている模様。た
だしあくまでレスキュー用ロボットとしての機能向上で、
ガス事業への適用困難。
プロジェクト終了後もコンソシアムの参加大学により開
発が継続。ただし壁面や柱状のものを登る機能の向上が行
われており、ガス事業への適用は困難。
報告書記載時点から連続飛行記録を大幅に延長。ただし高
高度における連続飛行性能向上を目指しており、センサを
搭載して地上のガス漏洩検知などの技術的検討はなされ
ていない。
報告書計算時点の製品より温度分解能を向上させた新製
品を提供。ただし都市ガスの主成分であるメタン検出精度
は向上せず。
報告書記載時点の製品より小型化・改良した製品を開発。
ただしガス配管にそのまま適用できる水準のものではな
い。
38
1.4.2.1 へび型クローラロボット
報告書に記載されていたのはヘビ型クローラロボット KOHGA の初期バージョンであるが、現
在までに後継機の KOHGA2 / KOHGA3 が開発されている。
表1.4.2.1-1:報告書記載時点との比較
報告書記載時
名称
現時点
KOHGA
KOHGA3
画像
KOHGA は災害時の瓦礫内での要救助者の探索を目的に2002年から開発しており、上表左
のように瓦礫内への進入や障害物の乗り越えを容易にするため、ヘビのように細長い形状をした
ロボットであった。先に進んだユニットが描いた軌跡を後続のユニットが追従するような「先頭
追従制御」を搭載し、遠隔操縦を容易にしている。
さらに瓦礫上を容易に走破する能力を持つロボットとして、2005年から KOHGA2 の開発
が着手された。移動機構として不整地走破性が高いクローラを採用し、クローラアームロボット
の機構配置の変更が可能となっている。これを利用してマニピュレータモード/ヘビ型モード/
瓦礫上モードを現場の状況によって使い分けることができるようになった。2007年にはより
高速・高トルク化した KOHGA3 が開発された。
KOHGA 自体は年を経るごとに改良されてはいるが、その方向性は瓦礫上での走行性能の向上
に向かっており、管内探査などに転用できる技術ではなく、本事業との関係性は薄い。
図の出典
http://www.mechatronics.me.kyoto-u.ac.jp/modules/kenkyu/index.php?content_id=3#content_1_2
39
1.4.2.2 壁面歩行ロボット(RISE)
報告書記載時点で確認していたロボットは RISE バージョン 2 であったが、現在では後継機の
バージョン 3 が開発されている。バージョン 2 開発当時のコンソシアムは既に解散しているが、
参加大学の1つであったペンシルバニア大学で開発を継続し、改良を施したものである。
表1.4.2.2-1:報告書記載時点との比較
Ver.
報告書記載時
現時点
Rise V2
Rise V3
長さ:25cm 重量:2kg
長さ:98cm 重量:5.4kg
画像
ロボットとしての機構は大きくなり、重量も増加しているが、足の数を 6 本から 4 本に減らす
ことで制御を簡略化する一方で馬力を上昇させて昇降速度の向上を実現した。バージョン 2 では
秒速 5cm の上昇速度がバージョン 3 では秒速 21cm と大幅に改善された。
しかしながら、このような柱状のものを登る能力・速度の改善は見られるものの、それ以外の
要素についての進展は見られず、本事業との関係性は薄い。
図の出典
http://kodlab.seas.upenn.edu/~rise/newsite/
40
1.4.2.3 高高度無人航空機(Zephyr UAV)
Zephyr UAV は太陽電池をエネルギー供給源とする超軽量の炭素繊維製UAVで、2008年
に飛行時間 82 時間の世界記録を樹立している。しかしこの記録は2010年に大幅に更新され、
14 日間となっている。中にバッテリに充電し、夜間はバッテリの電力を使って飛行することで数
ヶ月間の無着陸飛行を可能にし、これにより衛星に求められる機能をより安価に実施することを
目的としている。離陸は人力によることから、長距離の滑走路は不要で、着陸時も距離を必要と
しない。本技術は、高高度から他工事やガス漏えいなどを検出する技術と組み合わせることで、
初めて活用される技術である。
表1.4.2.2-1:報告書記載時点との比較
報告書記載時
現時点
全幅:18m 質量:30kg
全幅:22.5m 質量:50kg
連続飛行時間:82 時間
連続飛行時間:14 日 21 分間
画像
この技術進展はUAVとしての連続飛行時間を延長する方面での性能向上であり、例えばガス
漏洩検知のための赤外線カメラなどを搭載して巡回するなどの検討は行われておらず、本事業と
の関係は薄いと思われる。
図の出典
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/7577493.stm
http://www.QinetiQ.com/home/newsroom/news_releases_homepage/2010/3rd_quarter/zephyr_-_14_days.ht
ml
41
1.4.2.4 非冷却式赤外線モジュール
報告書に記載時点で確認されていた赤外線センサモジュールの改良型が提供されていた。
表1.4.2.4-1:報告書記載時点との比較
名称
報告書記載時
現時点
HX0830M1/HX3100F0
C100C/C100CT
75mK 以下
50mK 以下
画像
温度
分解能
画像処理機能を本体に搭載することで若干サイズは大きくなっているものの、温度分解能を向
上させている。測定可能周波数帯は双方とも 8~14μm であり、赤外線による都市ガスの漏洩検
知性能という観点からは向上は見られない。
図の出典
http://www.nec-avio.co.jp/jp/products/ir-module/pdf/ir-module.pdf
http://www.nec-avio.co.jp/jp/products/ir-module/pdf/catalog-c100.pdf
42
1.4.2.5 光ファイバ温度分布計測システム・光ファイバガスセンサ
報告書に記載時点で確認していた製品は FTR2000 であったが、フォローアップ作業により、
小型化・軽量化した FTR3000 が開発されていたことを確認した。
表1.4.2.5-1:報告書記載時点との比較
報告書記載時
現時点
FTR2000
FTR3000
最大測定距離
5km
2km
インタフェース
10Base-Tx
10Base-Tx
名称
画像
USB
サイズ (mm)
480×1325×450
300×97×160
10kg
3kg
W×H×D
質量
当初本製品に着目したのは、ガス配管に沿わせて光ファイバを敷設することで温度変化や振動
を計測して管の異常を検知する技術に応用が可能という観点からであった。製品として小型軽量
化されていることと、インタフェースにUSBが追加されたことで利用性は改善しているが、ガ
ス保安技術という観点からの技術進展は見られない。
図の出典
http://www.jpowers.co.jp/english/product/pdf/OPThermo_E.pdf
http://www.jpowers.co.jp/pr/091124/091124j.pdf
43
1.4.3 今年度サンプル評価試験を実施した技術
今年度にサンプル評価試験を実施した技術は下表に示す15技術である。その成果がそれぞれ
の
技術の最新の情報とし、以下にその概要を記す。なお、それぞれのサンプル評価試験の条件及び
結果の詳細については、別途報告書に記載されている。
表1.4.3-1:今年度サンプル評価試験を実施した技術
技術名
開発元
孔曲がり計測装置(TUG-NAVI)
多摩川精機
能動スコープカメラ
東北大学
車輪型走行ロボット
INSPECTOR
スチールメッシュ入り PE 管
(ワイヤーメッシュ補強 PE 管)
UBESTA ナイロン 12
INSPECTOR 社
送ガス用鋼帯補強 PE 管
ポリアリレート繊維補強パイプ
金属強化 PE 配管システム
(パンチングメタル PE 管)
送水用パイプ
古河電工
HDPE パイプ PE100/PE100+
三菱樹脂
宇部興産
日立金属
三井金属エンジ
ニアリング
ライオンデルバ
セル社
ポリエチレン管用防護材
大東電材
メタンガス画像計測システム
ガス漏れ検知用 赤外線サーモ
グラフィ FLIR GF320
OptaSense
福井大学
FLIR 社
ORFEUS
EU プロジェク
ト
東北大学
マイアミ大学
3DGPR
QinetiQ 社
概要
ジャイロセンサを管路内に挿通させ、測長器と組み合わせ
て配管径路を計測。
配管内に先端にカメラを装備したケーブルを挿通させ管
内の状況を把握。
配管内を走行し、管内の状況を探査するロボット。
PE 管にスチールメッシュを入れて補強した配管。
強固なアラミド結合を有するナイロン 12 を材料とした配
管。
PE 管に鋼帯(SUS)を入れて補強した配管とポリアリレー
ト繊維を入れて補強した配管。
PE 管に炭素鋼を入れて補強した配管。
PE 管にアラミド繊維を入れて補強したアラミド繊維補強
PE 管。
水道用として使用されている高密度 PE 管と非開削工法用
として開発された耐表面傷付き性を付与した PE100 によ
る配管。
ポリプロピレン繊維でできたシートを2層巻きした防護
材。
メタンガス検出に特化して漏洩状況を把握、画像化。
都市ガス漏れ検知に適した周波数に特化した赤外線サー
モグラフィ。
光ファイバセンサを配管近くに敷設し他工事等を検知す
る。
欧州で開発された連続波方式(SFCW)を採用したロケータ
ー。
絶対座標化とそれを用いた詳細な 3D マップを作成可能な
ロケーター。
44
1.4.3.1 孔曲がり計測装置(TUG-NAVI)
TUG-NAVI は、3軸のジャイロと3軸の加速度センサを搭載し、管内に挿入、通過させた配管の
位置とその経路を特定する孔曲り計測装置であり、水平面、垂直面の形状の他、3Dの表示も可
能である。
図1.4.3.1-1:TUG-NAVI(TAG0012)外観
図1.4.3.1-2:簡易配管によるデモと結果表示
基本的には曲率の大きな曲りのみでエルボなどが存在しない配管を測定対象としているため、
ガス配管のように、曲率の小さなエルボなどが存在する配管での性能は未知数である。
機械式ジャイロ(ダイナミカリーチューンドジャイロDTG)を使用しているため外形が大き
く、今後の小型化は難しいが、MEMSよりも高感度、高精度の測定が可能であり、大口径で延
長が長い配管の測定では超小型ジャイロよりも有望である。
2025年頃までにMEMSの小型化・バッテリの高密度化による小型化が見込まれるため、
挿通性が改善し、測定精度の向上が着込まれる。誤差補正技術についても、ガス事業用途に特化
した補正方法を開発することで、測定精度の向上が期待できる。
管内走行ロボットと組合せるなど、使用目的を複合化することにより、将来的に導管保安向上
技術において、適用範囲の拡大が可能な有望技術と考えられる。
図の出典
開発者提供資料
45
1.4.3.2 能動スコープカメラ
東北大学で開発された、スコープカメラに独自開発した自走機構(繊毛振動移動機構)を搭載
したものである。
直径 30mm 以上の穴から挿入し、内部映像を手元のディスプレイで確認可能で、
環境によって 5~20cm 程度の段差乗り越えが可能である。
図1.4.3.2-1:能動スコープカメラの原理
図1.4.3.2-2:能動スコープカメラの簡易デモ
管内走行とは異なる技術であるが、非常にシンプルで実用性が高い技術である。垂直配管を登
るなどは難しいが、単純に管内カメラを挿通するのが難しい、複数の曲りを持つ供給管内の検査
などへの応用は期待できる。カメラのケーブルに繊毛を巻きつけて振動させるだけであるため、
耐久性が高いだけでなくコストも安くまた取り扱いも容易と考えられる。
図の出典
http://www.rm.is.tohoku.ac.jp/index.php?Cilia%20Vibrated%20Drive%20Mechanism
46
1.4.3.3 車輪型走行ロボット INSPECTOR
INSPECTOR社(ドイツ)で開発された、車輪を管内面に設置させて走行するロボット
である。車輪部を上下に伸縮でき、管内の上下側に確実に車輪を接触させて、強力な駆動力を発
揮できる。発電所配管・配水管検査ロボットである。
図1.4.3.3-1:INSPECTOR の外観
垂直配管はもちろん、溶接配管(100A)で 90°EL(1.5DR)12 曲り以上の走行が可能である。
ただしネジ継手の走行性能は不明である。配管の口径によってサイズが違う6種類のロボットが
あり、
対応可能な口径は多いが、
単一サイズのロボットが適応可能な配管サイズは限られており、
例えば最小サイズの Type1000 は、口径 70mm~110mm となっている。
●仕様

対象口径 :75~750mm(口径毎に 6 タイプラインナップ)

操作方法 :コントローラーによる有線操作

電力、通信:有線
下水道や一部のプラントなどの分野ではすでに広く市販されており、完成度が高い。接続ケー
ブルにも工夫を施すことで 12 個以上のエルボを通過できる走破性は評価できる。ただし配管内面
の段差の走行性能は未知数であり、基本的には適用範囲は口径変化のない配管に適している。
ロボットに十分な牽引力があることから、リアルタイムの結果を求めなければケーブルを引く
代わりに大容量のバッテリと検査結果等を記録する装置を牽引することで牽引負荷による走行距
離の制限は軽減できる。目的と運用方法に合わせたカスタマイズにより適用範囲の拡大が可能な
有望技術である。ただしケーブルレスとした場合は、ロボットが配管内で故障した場合の救出方
法などを確立する必要がある。
図の出典
現地訪問時に撮影
47
1.4.3.4 各種材料
現在ガス配管に用いられているPE管よりも他工事破損に強いと思われる導管材料を複数選択
し、試験を行った。
(1)スチールメッシュ入りPE管(ワイヤーメッシュ補強PE管)
:三菱樹脂
三菱樹脂では、ワイヤーメッシュで補強したPE管を提供している。PE/接着層/スチール
メッシュ/接着層/PEからなる 3 種 5 層管であり、管同士の接続は EF 融着接合で行う。
図1.4.3.4-1:ワイヤーメッシュ補強PE管
ポリエチレンを用いていることから可撓性を持ち、軽量であると同時に、金属補強により耐圧
性を高め、低線膨張性も確保している。
図の出典
開発者提供資料
(2)UBESTA ナイロン 12:宇部興産
配管用における樹脂材料と言えばポリエチレンが主流である。宇部興産ではこれを独自開発し
たナイロン 12 で配管を開発した。
もともとナイロン(ポリアミド)は、ポリエチレン結合の間にアミド結合が存在するポリマー
であり、ナイロンによる配管は PE 管と分子構造的には非常に似通っている。同社が開発したナイ
ロン 12 は、高品質で燃料チューブやエアブレーキチューブに数多く採用されている。オーストラ
リア・ニュージーランドでは都市ガス配管にも適用されており、我が国の都市ガス配管への用途
拡張を目指して開発を実施している。
これらのほか、対クリープ性(負荷に対する変形を長時間抑える性質)も既存PE管よりもよ
いとされている。なおナイロン 12 はポリエチレンに比べて高価であるため、単純に既存PE管の
代替になるものではないと同社でも認識しており、一層の廉価化・高性能化への開発を続けてい
く予定を表明している。
海外ではガス配管として導入実績があり、PE以外の材料としては有望と思われるが、開発元
も認めているようにコストが高く、なお一層の開発努力に期待したい。
48
(3)送ガス用鋼帯補強PE管・ポリアリレート繊維補強パイプ:古河電工
古河電工では長年、水道用・消防用・温水用のポリエチレン管を開発・製造している。現在市
販されている鋼帯補強PE管としては送配水用のアクアレックス-Lがある。また同社では、送ガ
ス用の鋼帯補強 PE 管及び継ぎ手の開発を進めている。これらの配管は下図に示すとおり高密度ポ
リエチレン管を内管として鋼帯やポリアリレート繊維で補強し、さらにその外層をポリエチレン
により保護層を形成している。
図1.4.3.4-2:鋼帯補強PE管・ポリアリレート繊維補強パイプ
鋼帯補強PE管は、ポリエチレンの持つ軽量性・可撓性に加え鋼帯補強による高耐圧性を確保
し、さらに保護層で耐候性なども備えている。ポリアリレート繊維補強パイプは高強度であるだ
けでなく耐摩耗性にも優れている。これらの配管はガス配管への適用の努力も続けられており、
充分使用に耐えうる配管となる可能性が大きい。
図表の出典
http://www.furukawa.co.jp/jiho/fj114/fj114_04.pdf
http://www.furukawa.co.jp/tukuru/pdf/aqualex_p221.pdf
(4)金属強化PE配管システム(パンチングメタルPE管):日立金属
日立金属(株)では設備用配管として鋼管・樹脂被覆鋼管などを製作してきたが、より軽量で
強度を持った配管の開発を進めてきた。それがパンチングメタル PE 管である。
図1.4.3.4-3:パンチングメタルPE管
既存配管と比較して金属強化により PE 層を薄肉化でき、口径を大きくしても軽量とすることが
できる。また内管と外管がPEであることより耐食性が高い。また中間層に金属を用いているこ
とにより熱膨張性が低く抑えられるなどの利点がある。
図の出典
http://www.hitachi-metals.co.jp/rad/pdf/2008/vol24_s17.pdf
49
(5)送水用パイプ:三井金属エンジニアリング
三井金属エンジニアリングでは様々な用途の送水用配管を製造しているが、上水・簡易水道、
下水の高圧送水配管用として WEETM を製造している。この配管は可撓性に優れているだけでなく、
波付鋼管外装のため外圧強度が優れている。同社で手がけている配管は送水用配管であるので、
送ガス時に要求される条件を満たすことができるかは実験等による確認が必要である。
図1.4.3.4-4:高圧送水用パイプ WEETM
図の出典
http://www.igu.org/html/wgc2006/pdf/paper/add10946.pdf
(6)HDPE パイプ PE100/PE100+:ライオンデルバセル
現在ガス配管用PE管として利用されている配管は JIS 規格 JIS K 6774 で指定されているP
E80と呼ばれているものであるが、水道分野ではさらに強度を増したPE100と呼ばれる配
管が使用されている。PE100とは 20℃で、管が 50 年間破壊しない一定応力値の信頼下限値
が 10MPa 以上であることが証明された樹脂である。
図1.4.3.4-5:PE100による水道用配管
図の出典
http://www.kubota-ci.co.jp/library/katarogu_PDF/B40-09_katarogu-wpe1_100304.pdf
50
(7)ポリエチレン管用防護材:大東電材
不用意な道路掘削工事による掘削機械等の衝撃から、ガス用PE管が破損・損傷することを防
止するために樹脂板を設置する。重機の先端部分がこのような防護板に当たることで操作者に注
意を喚起することができ、配管本体への衝撃を未然に防ぐことができると期待できる。
図1.4.3.4-6:ポリエチレン管用防護板
PE管表面の損傷を抑制するために配管に直接巻くものとして樹脂製シート状の防護材も提供
している。
図1.4.3.4-7:都市ガス用防護シート
これらは市販品であるのですぐにも利用可能である。
図の出典
http://www.daito-d.co.jp/Products/bh_003.html
http://www.daito-d.co.jp/Products/bh_004.html
51
1.4.3.5 メタンガス画像計測システム
福井大学で開発された、メタンガスの検知に有効な 3.3μm の吸収帯を使用した技術であり、波
長 3.3μm の赤外線をメタンガスに照射し、反射光を和周波技術により 0.8μm に変換して検出す
ることで、検出感度を数十倍に向上する。これをスキャンすることで画像化して検出する。
OPO beam
Galvano scanner
OPO
3.39m
1.55m LD seeder
PPMgLN LP Filter
Injection seeded
Nd:YAG Laser
1.06m
Methane gas leak
1.06m
Optical
delay
Upconverter
0.81m
PMT
BP Filter
Pipeline
Display
Temp. controller
Current controller
3.39m
PPMgLN
Topographic target
Signal
Processor
Galvano driver
図1.4.3.5-1:メタンガス画像計測システムの構成
図1.4.3.5-2:メタンガスの映像化例(右:可視光、左:メタンガスの映像化)
●仕様(参考)

波長 :3.3μm(光パラメトリック発振器)

検知距離 :2m(検出限界は不明)

検出感度:20ppm・m 以下
高濃度のガスでは、はっきりとメタンガスを映像化しており、有望な技術である。低濃度の場
合の性能、遠距離の場合の検出限界などは不明であるが、3.3μm の赤外線の光源は改良が進んで
おり、検出性能の向上が期待できる。
図の出典
開発者提供資料
52
1.4.3.6 ガス漏れ検知用 赤外線サーモグラフィ FLIR GF320
メタンやその他の揮発性有機化合物(VOC)ガス漏れを検出することが可能な赤外線カメラ
で、検出方法としてはパッシブ型である。通常のサーモグラフィは、温度に比例して物質が放出
している赤外線をある程度の帯域で受光して温度を検出するが、本技術では、バンドパスフィル
タより対象ガスの吸収帯のみを検出することで、特定のガスの影響を映像化している。
図1.4.3.6-1:赤外線サーモグラフィ FLIR GF320
パッシブの赤外線ガス検知方式では、上記課題の改良・改善は原理的に難しい。ただし波長吸
収帯のみによる画像化だけではなく、非吸収帯の検知結果を同時に測定し、比較処理(除算等)
することができれば、熱源の影響を軽減した高感度モードの代替技術が可能と考えられる。
図の出典
開発者提供資料
53
1.4.3.7 OptaSense
OptaSenseは英国QinetiQ社で開発された、COTDR 方式を利用した光ファイバ
による音響信号検知システムで、パイプラインや重要施設の近傍に埋設し、地上の音を観測する
ことでテロ攻撃から守ることを目的としたセキュリティーシステムである。
図1.4.3.7-1:OptaSenseシステム構成
地上を人が走る程度の音から検知が可能で、重機など危険があるものとそれ以外を識別する信
号処理機能も開発されている。
図1.4.3.7-2:OptaSenseの波形
世界各地で実用化されている技術であり、新設する重要配管や、既に光ファイバが埋設されて
いるエリアの監視には非常に有望である。市街地の実績は尐ないが、技術的なハードルは低く、
むしろ費用対効果(システム+ファイバ整備)の方が課題となる。通信事業者等の所有する光フ
ァイバを利用し、ガス以外のインフラも含めた監視システムが構築できれば、社会的なメリット
は非常に大きい。
図の出典
開発者提供資料
54
1.4.3.8 ORFEUS
ORFEUSは地中埋設インフラの位置確認・維持管理・修繕などを効率的に進めるために、
ロケーター(GPR)技術の技術開発を行うプロジェクトである。連続波技術と超広帯域アンテ
ナを用い、探査深度を確保しつつ解像度を向上させたシステムを開発することを目的の1つとし
て挙げている。その詳細を把握するため、プロジェクトの参画機関のうちIDS社・デルフト工
科大学・フィレンツェ大学に対し現地調査・ヒアリングを実施した。
ORFEUSは地中埋設インフラの位置確認・維持管理・修繕などを効率的に進めるためにロ
ケーター技術の技術開発を行うプロジェクトである。ORFEUSプロジェクト全体としては 2
種類の探査装置を開発している。1つは水平ボーリング用探査レーダシステムに搭載するアンテ
ナであり、もう1つが地表からの地中探査レーダシステムである。本事業に関連する技術として
注目したのは後者のORFEUSである。
ORFEUSではロケーターの探査深度と分解能の向上を達成するために扱うことのできる周
波数帯の拡大とダイナミックレンジの拡大を目指し、ステップ周波数連続波(SFCW;Stepped
Frequency Continuous Wave)方式を採用し、超広帯域アンテナを開発して、既存のロケーター
より性能を向上させた。
図1.4.3.8-1:ORFEUSプロジェクトで開発されたシステム
図の出典
サンプル評価試験時に撮影
55
1.4.3.9 3DGPR
2次元平面上で走査して取得したGPRデータから地中の 3 次元立体構造を可視化が可能であ
る。このときレーザを使用した測距システムを使用して高精度に位置を測定できる地中レーダシ
ステムを東北大学とマイアミ大学が共同で開発しており、通常のGPR計測と区別するために、
3DGPRと呼んでいる。
従来のGPR装置の位置測定は装置の車輪の回転で行うことが一般的であるが、車輪のスリッ
プなどを考えると数%程度の誤差が含まれる。埋設管のような細い物体の計測を行うと、GPR
装置自体の位置測定の誤差が数 cm の細い物体に対して加わるため、鮮明な形状の可視化が行え
ない場合が多かった。これに対して3DGPRでは細い物体についても非常に正確に形状の可視
化が行える特長を持っている。
図1.4.3.9-1:3DGPRによる計測風景
3DGPRの特徴である、絶対座標化とそれを用いた3D画像化技術は現行の探査技術と組み
合わせることでさらなる高性能なロケーターを構築しうる可能性を持っている。今後の技術開発
が待たれる。
図の出典
サンプル評価試験時に撮影
56
添付資料
付録1
評価項目
要求仕様
目的
各種継手を有する配管を
内部から経路計測する。
原理
(方式)
-
多摩川精機
超小型ジャイロ
(TAG0012)
先導体
(TAG0010)
ジャイロ:DTG x 3軸(X.Y.Z)
加速度 :MEMS x 3軸(X.Y.Z)
測長器 :エンコーダー
(TAG0011)
ジャイロ:DTG x 2軸(Y.Z)
:MEMS x 1軸(X)
加速度 :MEMS x 3軸(X.Y.Z)
測長器 :エンコーダー
走行距離は外部エンコーダーにより検出。
(TAG0010)
(TAG0011)
先導体 補助輪
課題
評
価
展望
-
ジャイロ:DTG x 3軸(X.Y.Z)
加速度 :MEMS x 3軸(X.Y.Z)
測長器 :磁気
走行距離は本体内蔵型磁気式測長器により
検出。
-
(DR2/50)
評
価
-
姿勢・加速度を計測するセンサを管路内に挿通させ、移動量を計測する測長器のデータと合わせて演算し3次元位置情報を取得。
走行距離は外部エンコーダーにより検出。
-
REDUCT
DuctRunner
(DR2/50,DR-HDD-4.2)
3次元管経路計測
ジャイロ:MEMS x 3軸(X.Y.Z)
加速度 :MEMS x 3軸(X.Y.Z)
測長器 :エンコーダー
概要
多摩川精機
TUG-NAVI
(TAG0010,TAG0011)
要素技術マトリクス(ジャイロ)
(DR-HDD-4.2)
ジャイロ本体
先導体 補助輪 管内挿通状況
補助輪 管内挿通状況
特徴
-
エルボ挿通が可能な小型ジャイロ
長時間使用が可能なジャイロ
長時間使用が可能なジャイロ
-
管種
材質を問わない
可能
可能
可能
○
3次元表示
-
可能
可能
不可
-
マップ化
-
CADフォーマットで出力可
CADフォーマットで出力可
可能(フォーマット不明)
-
リアルタ
イム表示
-
不可
不可
不可
測定後に誤差の補正処理を実施しているた
め、現状のソフトでは対応できない。
測定後に誤差の補正処理を実施しているた
め、現状のソフトでは対応できない。
本体のメモリーにデータを記録しているた
め、現行のシステムでは対応できない。
-
防爆認定取得のために、本体が大きくなり、ケーブルも曲り
にくくなるため、直管のみの使用に限られる。
防爆性
活管挿入の可否
不可
不可
価格
(台)
-
試作品のため未設定
(TAG0010):1,200万円
(TAG0011):1,100万円
適用範囲
適用業務
-
使用実績
-
配管の位置計測 ボーリング位置管理
なし
《サンプル評価品》
(TAG0012)エルボ通過用評価機
φ40 x L61mm
寸法
口径
-
25A以上
電力、ゼネコン
《サンプル評価品》
(TAG0010)外部電源供給型
φ102 x L300mm
(TAG0011)3分割型
φ43 x L180mm
(本体、駆動通信回路、整流回路)
《参考》
(TAG0012)推進工法用試作機
φ23 x L139mm
《参考》
(TAG0010)一体型
φ50 x L700mm
(TAG0011)一体型
φ45 x L563mm
《サンプル評価品》
50A以上 (1.0D以上の曲り通過)
《サンプル評価品》
(TAG0010) (TAG0011)
150A以上(1.5D以上の曲り通過)
《参考》
計算値 25A以上
(50A 2.4D以上の曲り通過)
(25A 17D以上の曲り通過)
《参考》
(TAG0010)
計算値 75A以上
(150A 6.8D以上の曲り通過)
( 75A 31.5D以上の曲り通過)
(TAG0011)
不可
《参考》本体のみ、€=\110
(DR-HDD-4.2):3.5万€(385万円)
(DR2/50):6.0万€(660万円)
配管の位置計測
欧州における・ガス管・石油パイプライン・
水道配管・電力ケーブル管・下水道配管など
実績は多数あり。
本体およびケーブルを防爆仕様に設計することは可能である
が、サイズが大きくなることと、ケーブルの曲がり性が極端
に悪くなり、エルボ通過ができなくなる。
×
△
(参考)
今後、防爆仕様のフレキシブルケーブルが開発されるか、防
JISC670079-10 Zone0(可燃性ガス容器内)で定められた防爆
爆認定の法令が改正された場合、対応できる可能性はある。
認定には、耐圧防爆構造が必要となる。
-
-
-
《参考》代表機種を抜粋
(DR2/50)
40A:φ40.8 x L950mm
(DR-HDD-4.2)
150A:φ125~150 x L1200mm
(交換式可動脚付)
300A:φ275~300 x L1000mm
(交換式可動脚付)
計算値40A以上(口径毎に設計)
ガス管での設定口径は不明。
-
(TAG0010,TAG0011)
× 全口径に適用させるためには、ジャイロの小型化が必要。
× DTGジャイロは、DC45V電源の内蔵が必要なため、寸法が大
きくなってしまう。
× DTGジャイロは、回転体が必要な構造のため小型化は出来な
い。
△ 2011年までに自動車用リチウムイオンなどの高エネルギー
密度型二次電池の技術開発計画があり、2020年頃にはエネ
ルギー密度が現状の倍になることが見込まれている。
この技術が実現できれば小型・大容量の電源が可能とな
る。
(TAG0012)
(課題評価基準)
○・・・要求仕様を満たしている(試験条件を含む)。
△・・・条件により要求仕様は満たすが、課題を多く抱える。
×・・・要求仕様を満たしていない。
57
(展望評価基準)
○・・・すでに他分野で導入されている
△・・・技術の発展を待つ必要がある
×・・・実現の可能性がない
57
多摩川精機
多摩川精機
REDUCT
超小型ジャイロ
TUG-NAVI
DuctRunner
(TAG0012)
(TAG0010,TAG0011)
(DR2/50,DR-HDD-4.2)
《サンプル評価品》
《サンプル評価品》
《参考》
曲管
エルボ・ストエルの通過 先導体があれば、50A 1.0Dの90度エルボ、ス 先導体があれば、150A 1.5Dの45度エルボ14ヶ 代表機種はエルボ通過不可。
トエル、サービスチーを含む総延長10mの配 を含む、総延長100mの配管の通過が可能。
特注品で設計値1.5Dの装置あり。
通過性
が可能
管の通過が可能。
《サンプル評価品》
《サンプル評価品》
ガス配管で10mの評価実績あり。
ガス配管で100mの評価実績あり。
測定延長
-
《参考》
《参考》
《参考》
600mの計測実績あり。
2500m通過の実績あり。
100mの計測実績あり。
評価項目
要求仕様
《サンプル評価結果》
水平:4~11cm(at.4m)
鉛直:1~13cm(at.4m)
《カタログ値》
水平:±0.5%
鉛直:±0.3%
《サンプル評価結果》
水平:49~91cm(at.100m)
鉛直:16~32cm(at.100m)
《カタログ値》
水平:±0.3%
鉛直:±0.2%
《カタログ値》
水平 :±0.25%
鉛直 :±0.1%
評
価
課題
マップ精度以上
(最大誤差±5cm以下)
展望
○
-
【挿通性】
△ 走行装置の開発が必要。
・ジャイロへの衝撃軽減
・管や継手の定位置(中心部)を走行
・継手段差部の通過性
【挿通性】
△ 他のサンプル評価実施中のロボットへの搭載なども含め、走
行装置を検討することで改善される。
【ソフト】
△ 発生した誤差が距離とともに累積するため、誤差を補正する
ための項目(GPS・図面・カメラ情報など)の収集が必要。
【ソフト】
△ 2014年から予定されている準天頂衛星の打ち上げにより、GPS
情報の精度向上が期待され、補正項目に利用可能となる。
また、それに合致したソフト開発が必要。
誤差累積を防止するための補正項目に合致したソフト開発は
○ 容易である。
【ジャイロ】
長時間使用の場合は、ドリフト量の影響が大きくなる。
【ジャイロ】
原理上、ジャイロのドリフト現象を無くすことはできない
△ が、短時間で測定する方法や各地点毎に発生誤差を補正する
方法などの技術開発が実施されている。
△
測定精度
評
価
△
《誤差の原因》
《誤差の原因》
エルボを通過させるために小型化した結果、 低速走行時にジャイロの特性であるドリフト
直管部でジャイロが傾き角度誤差が生じてい (静止状態でジャイロ自らが徐々に方位移動
る。
してしまう現象)が顕著となり、位置誤差が
生じている。
エルボ・ストエルの複合継手部通過がスムー
ス で な い た め 、 デ ー タ取 得の サン プリ ング 継手部通過時に大きな衝撃が生じた場合、計
レートが追いつかず、精度にバラツキが生じ 測不能(オーバーレンジ)となり、誤った方
ている。
位を認識してしまう。
管や継手で通過する位置が、上下左右に変化 ケーブルの摩擦抵抗が大きい場合、強力な牽
す る た め 、 位 置 誤 差 ・距 離誤 差が 生じ てい 引力によりエルボ近傍でジャイロが傾き、角
る。
度誤差が生じている。
先導体があれば、50A 1.0Dの90度エルボ、ス
トエル、サービスチーを含む総延長10mの配
管の通過ができた。
測定誤差は最大13cmであった。
その誤差要因は、傾いたり配管中心部を通過
できないこと、誤差補正が十分でないなどで
あり、以下の技術的課題について解決できれ
ば、将来、管路計測技術として有望と考えら
れる。
候補技術
の
総合評価
【挿通性】
配管や継手の中心部を正確に通過することが
できる走行装置が必要。
摩擦抵抗軽減ケーブルまたは、走行装置内に
ケーブル送り出し・巻き取り機構が必要。
-
先導体があれば、150A 1.5Dの45度エルボ14ヶ エルボを有する配管に適用するには、新たな
を含む、総延長100m以上の配管の通過ができ 開発が必要になるため、今回のサンプル評価
た。
から除外した。
測定誤差は最大91cmであった。
その誤差要因は、溶接部通過時の衝撃や、長 ベルギーでは、非開削で敷設した配管の正し
時間計測時のドリフト現象の影響であり、以 い位置情報を確認することが定められてい
下 の 技 術 的 課 題 に つ いて 解決 でき れば 、将 る。
来、管路計測技術として有望と考えられる。
EUでは同社のシステムが利用されているが、
【挿通性】
主体は大口径のエルボを持たない配管であ
継手部通過時の衝撃を抑えたスムースな走行 る。
装置が必要。
摩擦抵抗の尐ないケーブルが必要。
【ソフト】
【ソフト】
誤差が累積しない誤差補正方法(GPS等を利用
誤差が累積しない誤差補正方法(GPS等を利用 した地点毎の絶対座標による誤差補正)が必
した地点毎の絶対座標による誤差補正)が必 要。
要。
【ジャイロ】
【ジャイロ】
DTGジャイロの小型化、実現できない場合は
走行装置搭載を前提としたジャイロが必要。 DTGジャイロと同じ性能のMEMSジャイロが必
より小型の電子部品の採用によるジャイロの 要。
小型化が必要。
ただし、DTGジャイロは電源OFF時の衝撃で破
損するため、耐衝撃性に優れたジャイロが必
要。
《新たな走行装置、誤差補正技術があれば高い測定精度が得られ
る》
《誤差抑制・補正技術の開発が進めば、ジャイロの測定精度は飛躍
的に向上すると考えられ、配管路計測技術が確立される。》
管や継手部の中心をスムースに走行する走行装置、摩擦抵抗の尐な 1.走行装置は、サンプル評価実施中のロボットの技術開発が進
いケーブル、多種の誤差発生を抑える技術、発生した誤差を補正す み、小型化したジャイロを搭載することにより、測定精度の向上が
る技術、耐衝撃性に優れた小型ジャイロの開発が必要である。
可能となる。
ジャイロの小型化については、電子回路を表面実装用の超小型電
1.挿通性・小型化・測定精度は密接に関係しており、精度を高め 子部品を使用することで実現できる。なお、2025年頃までに自動車
るには、ジャイロのセンタリング、スムースな挿通を可能とする走 用MEMSジャイロの小型化、高機能化が見込まれ、より一層の小型化
行装置の開発が必須であり、走行装置に搭載でき、長時間使用でき が可能となる。
る小型で高性能なジャイロの開発が必要である。
2.摩擦抵抗の尐ない特殊ケーブルの開発動向、ケーブル送り出
2.スムースな挿通と牽引トルク軽減のためには、摩擦抵抗の尐な し・巻き取り機構を有する走行装置の海外動向調査を実施し、該当
いケーブルが必要である。
品があれば、牽引トルク軽減が可能となり、精度向上が可能とな
る。
3.発生誤差の累積防止と長時間における測定精度向上のために
は、各地点ごとの絶対座標値の補正や映像を監視しながらの補正が 3.発生誤差の補正は、高精度に補正されたネットワーク型GPS
必要である。
によるマップ情報や現在地の絶対座標値を利用することで可能。さ
らに2014年に打ち上げ予定の準天頂衛星により、精度向上が見込ま
4.原理上、ジャイロのドリフト現象を無くすことはできないが、 れる。
他の技術と併用したドリフト誤差補正技術が必要である。
サンプル評価実施中のロボットの技術開発が進み、映像による角
度補正機能をソフトに組み込むことにより、測定精度向上が可能と
なる。
4.ジャイロのドリフト現象補正方法として、スムースな走行装置
よる短時間測定や、GPS等を利用した地点毎の誤差補正方法などが
メーカーで検討されており、この補正技術が確立されれば、飛躍的
な精度向上が可能となる。
(課題評価基準)
○・・・要求仕様を満たしている(試験条件を含む)。
△・・・条件により要求仕様は満たすが、課題を多く抱える。
×・・・要求仕様を満たしていない。
(展望評価基準)
○・・・すでに他分野で導入されている
△・・・技術の発展を待つ必要がある
×・・・実現の可能性がない
58
58
付録2
評価
項目
要求仕様
目的
原理
―
―
概要
―
要素技術マトリクス(管内走行
小口径用)
ヘビ型ロボット
(岡山大学 他)
能動型スコープカメラ
(東北大学)
ミミズ運動ロボット
(中央大学)
ヘビ型ロボット
(CMU)
管内検査用(詳細不明)
多関節の蛇行運動
ヘビ を 模擬 し た形 状 で配 管内 を
蛇行 し て走 行 する 。 胴体 部を 配
管に 押 し付 け て推 進 する こと か
ら、 蛇 行振 幅 を変 化 する こと で
形状変化に柔軟に対応できる。
災害時狭窄部探査用
繊毛振動型移動機構
スコープカメラなどの索状体全
体を角度をつけた繊毛で覆う。
全体に振動を加えることで推進
力を得る。振動を与える以外の
制御が不要で単純な構成にな
る。
管内検査用(詳細不明)
蠕動運動(電動、エア)
複数のモジュールの膨張/縮
小を組合せて、膨張時と縮小時
の長さの変化を利用してミミ
ズを模擬した蠕動運動を行う。
管内検査用(詳細不明)
多関節の蛇行運動
ヘビを模した形状で、ヘビ
と同様に、蛇行するほか、
回転などの多彩な動作で平
地、配管内、配管外を走行
する。隣同士の関節が 90°
ずれており、立体的な動き
が可能。
ただし配管の曲りを通過す
るソフトはできていない。
適用口径
呼び径 75A 未満
50~100A
32A 以上
約 50A
サイズ
質量
動力
―
―
―
―
不明
モータ
φ28mm(最大)
不明
モータ(バイブレータ)
不明
不明
直動モータ又はエア
鉛直走行
鉛直走行可能
可能
一部可能
可能
管内断面
変化
・拡径/縮径対応可能
・バルブ部通過可能
可能
可能
外形以上の口径内での走行が可
能
可能
ただし収縮時の外形以上、膨張
時の外形以下の口径に限る。
ケーブル
有無
なし
あり
あり
あり
牽引力
検査機器(カメラ等)
を牽引・搭載可能
未知 。 管種 、 通過 形 状に よる 。
垂直 配 管走 行 時は 自 重+ ケー ブ
ルが限界に近い。
未知。原理的には接地部の摩擦
係数を小さくして、微尐な走行
能力で推進するため、限定的。
未知
配管の口径と合致すれば、比較
的高い性能を得やすいと思わ
れる。
曲り通過
性能
通過可能
※40 エルボ(90°エ
ルボ)以上通過可能
可能
エルボを通過可能(3~4個)
ロボットよりもケーブルが課題
50A で 6~9 曲り 32A で 3~5 曲
りの通過が可能。
50A ではエルボ+ストエルも通
過可能。
可能
ただしガス管のエルボでは未知。
複数通過性能も未知
約 50A 以上
参考
参考
評
価
課題
評
価
展望
口径が小さいほど、管内へ
いずれの方法も、より小口径に適用
の挿入は難しく、特に 32A
するためには、アクチュエータの小
以下の口径に適用可能な
型化が必須となる。
走行技術は限られる。
技術ロードマップによると、2015 年
△ 特に、ヘビ型など複雑な機 △ 以降にロボット用のアクチュエータと
構を持つシステムの小型
して小型大容量アクチュエータや瞬
化は難しい。
発アクチュエータの開発が見込まれ
ており、これらの利 用 による改 善 が
期待できる。
約φ45 1m
約 3kg
モータ
現時点で可能ではあるが、 建物内を除けば、長距離の鉛直配
基本的には短い距離に限
管 を上 る必 要 性 は小 さいことから、
可能
△
△
る。
現 状 技 術 で対 応 可 能 であるが、完
成度の向上が求められる。
口径変化への適用可能、あ
一定の範囲においては現状の方式
るいは口径に依存しない
で原理 的には既に適用 可 能だが、
可能
△
△
方式であるが、変化量に制
変化の幅には制限が残る。
限がる。
現状ではケーブルレスは
動力源、検 査情報の記 録 、自立走
困難であり、実現されてい
行アルゴリズムなどが必要となる。
ない。
ロードマップによれば、PC 等に使用
あり
× 能動スコープに関しては、△ する小型のバッテリは普及期に入っ
ケーブルが推進力を持つ
ておりこれらの使 用 が見 込 める。ま
方式であり、ケーブルレス
た、他 分 野 にお いてエネ ルギー 密
は不可。
度の向上も予想されている。
カメラ程度は非常に小型
小 型 大 容 量 アクチュエータ等 が開
であることから、搭載は問
発されれば、現状よりも小型で同等
未調査
△ 題ないが、その他の検査機 △ 以 上 の性 能 を持 ったシス テム 開 発
器(センサ)の搭載余力が
が可能となる。
小さい。
2015 年以 降に性 能向 上 が期待で
きる。
ロボットの能力としては可
特に 32A 以下の小口径の
ただし要求仕様のハードルは高い。
能。
曲り通過が困難。装置の小
△
△
ただし曲りを通過するため
型化が必要。
のプログラムが未開発。
59
評価
項目
要求仕様
ヘビ型ロボット
(岡山大学 他)
能動型スコープカメラ
(東北大学)
平均 250m/h 以上
5~20mm/s=0.3m/分~1.2m/分
配管 形 状に よ る。 口 径が 大き い
方が速い。
50mm/s=3m/分(コンクリート
面/最大)
数十~数 mm/s(配管 50A 内、
通過曲り数による)
25~30mm/s=1.5m/分~1.8m/
分
数百 m 以上
15m
ケー ブ ル延 長 と、 通 信方 法の 変
更で、ある程度の延長は可能。
8m
現状のニーズとスコープの長さ
により決定しているが、8m が限
界ではない。
不明
選択可能
可能
曲り の 通過 性 能と 同 等と 思わ れ
る。
ただし3D の連続曲りは不可。
可能
ただし先端の首振りによる操作
で可能な範囲
不明
耐久性
―
関節 が ギア 駆 動で あ るた め、 雑
な取 り 扱い は 不可 。 可動 点が 多
いの で 、故 障 率は 高 くな る可 能
性あ り 。た だ し一 部 が故 障し て
もあ る 程度 の 走行 性 能は 維持 で
きる。
高い。
機械的な駆動部はなく、シンプ
ルな構造。
バイブレータとしてのモータが
あるのみで、一部が故障しても
影響は限定的。
後退機能がないため、引抜き時
の工夫が必要。
現状の完成度は高くないが、ロ
ボット外形が柔軟な構造とな
ることから、将来的には比較的
高くすることが可能と考えら
れる。
活管適応
防爆可否
活管対応可能
防爆性能有り
不可
将来 的 には 適 用可 能 と考 えら れ
る。
不可。
将来的には適用可能性あり。
不可
将来的には適用可能と考えら
れる。
速度
走行延長
分岐選択性
垂直 配 管、 曲 り 、 分 岐、 口径 変
化に 対 応可 能 な方 式 であ る点 は
魅力 的 であ る が、 走 行速 度が 遅
く、 ま た牽 引 力が 非 常に 小さ い
点がデメリットである。
将来 、 ワイ ヤ レス 化 など が可 能
であ れ ば走 行 性能 は 向上 でき る
と考 え られ る が、 現 状は 実験 室
レベ ル であ り 、走 行 性能 、耐 久
性とも今後の開発次第である。
候補
技術の
総合
評価
―
管内走行とはやや違う技術であ
るが、非常にシンプルで実用性
が高い技術である。
一定条件下では短距離の上昇も
可能で、管内カメラを挿通する
のが難しい、複数曲りの供給管
内の検査などへの応用が期待で
きる。
カメラのケーブルに繊毛を巻き
つけて振動させるだけであるた
め、取り扱いも容易で一部が故
障しても他の部分のみである程
度の走行が可能である。
ミミズ運動ロボット
(中央大学)
垂直配管、曲り、分岐などの通
過が可能で、ある程度の口径変
化にも対応できる代わりに、走
行速度が遅い点はヘビ型ロボ
ットと似ている。原理から推測
する相違点は、口径変化への対
応が限定的な分、牽引力を強化
可能となる点である。ただし現
状のロボットの性能は不明。
走行時は配管の大部分がロボ
ットでふさがるため、活管での
使用には工夫が必要。
ヘビ型ロボット
(CMU)
評
価
課題
評
価
展望
いずれの方式も、速度を稼
アクチュエータの性能向上による速
ぐには不利な方式であり、 度の向上は期待できるが、限定的。
未調査
△ 仕様を満たすのは困難。 △ 比 較 的 大きめの口 径では、車 輪 走
行などと組合せることで性能向上が
期待できる。
現状ではケーブルレスは
ケーブル接続を前提に、アクチュエ
困難であり、この長さが走
ータの性 能向 上でその分だけ走 行
不明
行距離の限界となってい
距離の延長は可能。
現 状 は 専 用 ケ ー ブ ル は な △ る。能動スコープはケーブ △ また、ケーブルレス化による走 行 延
く、配線が数 m 程度
ルレスは不可。
長 の可 能 性 もあるが、スタックせず
に自 由 に 走 行 する まで の ハードル
は非常に多い。
先端を任意の方向に向け
機能的には仕様を満たしているが、
ロボットの能力としては可
る機構があれば選択可能。 実際の使用状況に合った操作性の
能。
△ だが、性能向上や完成度の ○ 改良は必要となる。
ただしプログラムの開発が
向上が求められる。
アク チ ュ エ ー タの 進 歩 で 方 式 の 選
必要。
択肢が広がる。
関節部が多い(モータ 16 個)
ため、車輪などのタイプと
比較すると耐久性では不利
と思われるが、試作品は関
節を手で曲げても問題な
く、またボディーも堅牢で
比較的耐久性が高い印象だ
った。
防爆は考慮していない。
電動のアクチュエータを使用する場
実際に防爆仕様を想定し
合 、 防 爆 仕 様 とするの は 非 常 にハ
不可
た場合、システム全体が大
ードルが 高 い 。 能 動 スコ ー プやミ ミ
将来的には適用可能と考え ×
△
きくなり、小口径用として
ズロボットでは、気 体 を 動 力 源 とす
られる。
の使用は困難となる。
ることで防 爆 のシステム にできる可
能性がある。
基 本 的 に は 岡 山 大 学 の ヘ ビ ≪短距離、大きめの口径 では 走 行 技 術 の向 上 には、アクチュエータ
型ロボットと同様。
可能性もあるが、長距離 、小 の性能向上が不可欠である。
技術ロードマップによると、2015 年以降
構造上、関節が 90°ずれて 口径のハードルは高い≫
にロボット用の小型大容量アクチュエー
繋がっているため、こちら
の方が3D 配管に柔軟に対 要求仕様の口径、走行性能(牽 タや瞬 発アクチュエータの開 発が見 込
まれており、これらの技術を活 用するこ
応 可 能 と 思 わ れ る が 、 本 方 引力、曲り通過性、速度 、走 とで、配管内での走行技術の向上が見
式 に お け る 将 来 性 や 課 題 は 行延長)のいずれも要求 を満 込まれる。
同じである。
たせていない。
特に走行性能は各要素が トレ 現状の技術水準と、要求仕様には大き
ードオフ(速度 対 牽引 力、 な隔たりがあることから、現 実 的な展 望
曲 り 通 過 性 ( 小 型 化 ) 対 速 としては以下のシナリオが考えられる。
度・延長など)の関係にあり、1.ケーブルを使 用 し た走 行 技 術 の活
ニーズに合わせた優先順 位の 用
限 定 し た条 件 下 ( 短 距 離 、低 速 での
明確化などが必要。
使
いずれにしても、アクチ ュエ 用)で実 用 化を推 進し、走 行 技術の
向上を図る。
ータの進歩が期待される。 2.大 口 径 用 走 行 技 術 によるケーブル
レスロボットを注視
ケーブルレスによる、走 行性 大口径用の方がケーブルレスの配管
能の向上は大口径用の走 行技 ロボットの実用化が先行するので、これ
術と同様だが、それより もさ らの 技 術 の 成 熟 を 見 定 め て 小 口 径 へ
の応用を検討する。
らにハードルが高い。
3.ケーブルレスによる自立走行ロボット
の活用
大口径用のロボット技術を応用するこ
とで、次世代の保安技術への活用が見
込まれる。
60
付録3
現行の技術水準
埋設鋼管外面腐食検査装置
(ガス事業者&JFE)
評価
項目
要求仕様
目的
―
管内走行(主にガス管)
原理
―
車輪駆動
関節制御なし
駆動輪をエアによって管壁
に押付けて走行する。2 台の
駆動台車で推進力を発生し
ている。
概要
呼び径 75A 以上
サイズ
―
質量
―
動力
―
管内断面
変化
ケーブル
有無
管内走行(主に下水管)
車輪駆動、空圧による押付
け
関節制御なし
駆動輪をエアによって管
壁に押付けて走行する。複
数の駆動モジュールを連
結して推進力を確保して
いる。
ExplorerⅡ
(DOD 米)
大口径用)
MAKRO PLUS
(INSPECTOR 社 独)
(SINTEF
Piko
ノルウェー)
管内走行(主にガス管)
管内走行(主に下水管)
管内走行(不明)
車輪駆動、モータによる押
付け、関節制御あり
車輪駆動
関節制御あり
ヘビ型+車輪駆動
関節制御あり
車輪をモータで押付けて
走行する配管ロボット。ガ
スパイプライン用で、完成
度が高い。
車輪によって走行する下
水用の検査ロボット。車輪
の押付け機能はない。
ヘビのように多関節を持
ち、管壁に胴体の車輪を押
付けて走行する配管ロボ
ット。
評
価
課題
評
価
展望
―
適用口径
鉛直走行
INSPECTOR
(INSPECTOR 社 独)
要素技術マトリクス(管内走行
鉛直走行可能
・拡径/縮径対応可能
・バルブ部通過可能
・水取器通過可能
なし
・400A
口径により6種類
・75~110A
・95~140A
・130~200A
・180~325A
・310~510A
・440~750A
・150A~200A
同種の配管ロボット Tiger
内径 400~900mm
・250A 以上
・150A~300A(推定)
理論的には、全長>配管内
周
まで適用可能
長さ:7,500mm
幅 :400mm
高さ:400mm
幅は、上記適用口径によ
る。
全長 2,500mm
長さ:2,100 mm
幅 :195 mm,
高さ:205 mm
全長 1,000mm
約 30kg(66 ポンド)
不明
6kg
モータ
バッテリ
可能
車輪が付いた足をモータ
で管壁に押付けて走行す
る。
内蔵の検査装置を含めて
上昇可能。
一部可
車輪が付いている足の可
動範囲で対応可能。大口径
では対応可能だが、小口径
では不可。
モータ
バッテリ
不可
車輪を固定する機能なし。
モータ
ケーブルで供給
可能
関節を曲げて、配管内壁に
車輪を押付ける。
上昇性能は関節モータに
よる摩擦確保に依存する。
不明
モータ
ケーブルで供給
可能
車輪の押付け力があり、鉛直
走行可能。
一部可
車輪押付けの可動範囲で対
応可能。同口径の範囲内。
あり。
75 ~ 110(TYPE1000)
4kg
180 ~ 325(TYPE4000)
21kg
モータ
ケーブルで供給
可能
車輪の押付け力が強く、上
昇走行時の能力は高い。
一部可
車輪押付けの可動範囲で
対応可能。ただし頻繁な変
化(ネジ継手)や鉛直部で
の対応は難しいと思われ
る。
あり。
ただし摩擦軽減の工夫あ
り。
無線、自立走行
一部可
20cm の段差まで通過可能
(水平または緩やかな傾
斜)
無線、自立走行
可能
蛇行形状の変化で対応可
能。
あり。
△
△
△
△
直線および溶接配管で曲りのRが
1.5D であれば最低内径 75mm ま
で対応可能である。
口径が太い方が課題が小さく、要
求仕様をほぼ満足できる。
配管 内にロボットを固定する機構
があれば、鉛直走行は可能。ただ
し長 距 離 をケーブル牽 引 した場
合などは牽 引 力 低 下により性 能
低下がある。
車 輪 型の場 合は、継 手 部の段 差
など には 対 応 可 能 だ が、 口 径 変
化への対応は限定的となる。ヘビ
型 は 柔 軟 に 対 応 可 能 だ が 、 この
場合は走行性能が低下。
リアルタイムの情 報 を得 る必 要 が
なければバッテリによる自 立 走 行
が可 能 。ただしトラブル発 生 時 に
ロボットの所 在 が不 明 になる可 能
性がる。また、分岐がある場合
は、事 前 に詳 細 な地 図 情 報 を得
るかまたは地 図 情 報 を作 成 する
機能(ソフト)が必要となる。
△
○
△
△
現 時 点でほぼ要 求 仕 様 を満 足す
る。あとは曲 りの通 過 性 や走 行 距
離 とのト レードオフで 適 用 範 囲 が
変化する。
走 行 配 管 全 体 の形 状に依 存 する
がガス管 では 長 距 離 の鉛 直 走 行
はほとんどないことから、現状の性
能でもある程度の対応が可能
ヘビ型と車輪を組合せた Piko のよ
うなロボッ トの 完 成 度 が 向 上 すれ
ば適用 範囲は拡 大する。また、車
輪 型でも曲 りへの対 応 が限 定 的
であれば 現 状 の 技 術 でも 車 輪 取
付部の伸縮で対応できる。
分 岐 がな い場 合 は、 現 状 の 技 術
でもケーブルレスへの対 応 可 能 。
挿 入 部 と取 り出 し 部 を別 にするこ
とで、ロボットの後退時間を短縮し
作業効率を向上できる。地図作成
等は SLAM 技術などの研究が進
んでおり、ロードマップでも 2015 年
前後に実現可能と思われる。ただ
し配管の形状は 3 次元空間よりも
シンプルであるが特 徴が少ないた
め何を基準にするかなど、運 用面
の工 夫と必 要なセンサの搭 載が
必要。
61
評価
項目
要求仕様
牽引力
検査機器(カメラ等)を
牽引・搭載可能
曲り通
過性能
通過可能
※80 個エルボ(90°
エルボ)以上通過可
能
分 岐
選択性
速度
走行延長
耐久性
活管適応
防爆可否
選択可能
平均 500m/h 以上
数 km 以上
―
活管対応可能
防爆性能有り
現行の技術水準
埋設鋼管外面腐食検査装置
(ガス事業者&JFE)
INSPECTOR
(INSPECTOR 社 独)
ExplorerⅡ
(DOD 米)
MAKRO PLUS
(INSPECTOR 社 独)
(SINTEF
超音波探傷装置およびカメ
ラを牽引可能。
※7.2kN=3.6kN×2 台
75~110(TYPE1000)
32~34N
180~325(TYPE4000)
100~110N
不明
牽引力は大きいと思われ
る。
また、ケーブルが無いた
め、牽引力を有効に使え
る。
不明
ただし自重で引ける範囲
に限られる。
不明
関節のモータによる押付
け力しだい。
1.5D のエルボ(溶接)
4 個以下
不可能
不可能
0.02m/s(80m/h)
総合
評価
―
直線のみ
曲りあり
160~180(m/h)
110~140(m/h)
400m 以下
直線のみ
実際の現場で適用されてい
る実績あり。
実際の現場で適用されて
いる実績もあり、完成度が
高い。
将来的には適用可能。
候補
技術の
1.5D のエルボ(溶接)
14~20 個程度
―
1000~2000m
エルボ通過可能。
自立走行であり、曲り数の
制限なし。
1D のエルボ
自立走行であり、曲り数の
制限なし。
可能
可能
事前に走行経路を登録可
能。
0.1m/s(360m/h)
3.6km
制御しているモータが多
いため、システム全体とし
ての耐久性は未知数。完成
度は高いと思われる。
0.05m/s(200m/h)以上
Piko
ノルウェー)
可能と思われる。
性能不明
構造的には可能。
機能があるかは不明。
0.2m/s(720m/h)
数百 m
数m
未知
開発中。
構造的には、関節部の耐久
性が課題になると思われ
る。
将来的には適用可能。
可能。
可能
下水道や一部のプラント
などの分野ではすでに広
く市販されており、完成度
が高い。
配管内面の段差を走行で
きないため、適用範囲は口
径変化のない溶接配管な
どに限られるが、接続ケー
ブルにも工夫を施すこと
で条件次第では 20 個以上
のエルボを通過できる走
破性は評価できる。
エアによる押付けと車輪
駆動の組み合わせはシン
プルで耐久性も期待でき
る。
現状の走行性能で許容で
きる目的があれば実用化
への検討の余地がある。
数年にわたる米国国家プ
ロジェクトにより開発さ
れたロボットであり、パイ
プラインの検査に適した
高性能なロボットである。
ただし基本的には直線的
な配管を検査するコンセ
プトであるため、国内のガ
ス配管に見られる、上越し
や下越し配管の通過は難
しい。
しかし、ワイヤレスで数
km を一度で走行(検査)
でき、リアルタイムで配管
内のロボットと通信を行
う技術は他になく実用性
が高いと思われる。
開発目的が下水だったた
めに、垂直走行機能が無い
点は残念だが、ケーブルレ
スで事前に登録したルー
トを検査しながら自走す
るコンセプトは、将来のガ
ス配管検査に共通する部
分である。
このロボットそのものは
ガス配管に適用できない
が、制御方法やロボットの
関節の構造などで応用で
きる要素技術が含まれて
いる。
ただしニーズに合ったサ
イズへの変更は容易では
ないと思われる。
不明。
将来的には適用可能と考
えられる。
配管内を自由に移動し、曲
りや垂直配管も通過可能
なコンセプトで開発され
ているが、現状はとりあえ
ず構造概念を形にしたレ
ベル。
垂直配管は登れるようだ
が、走行性能は十分でな
く、また耐久性も低い。
ただしヘビ型の機構と車
輪走行を組合せた構造は、
曲りや口径変化に対応し
つつ、直線を高速で移動す
る効率的な構成であり、研
究が進めばニーズに近い
技術になる可能性がある。
評
価
△
△
△
×
×
△
課題
ロボット自 体 は自 重 +動 力 源 (ケ
ーブル、バッテリ)を牽引する能力
を 持 って いる。た だし ケーブ ルの
場 合 は走 行 距 離 と牽 引 力 や曲 り
通過性に相関関係がある。
溶 接 継 手 ではケーブルを牽 引 し
ても 14~20 曲りの通過が可能な
ロボットが実 現できている。ただし
曲 りがきつい(1D)ネジ継 手 の通
過可能なロボットは難しい。
先端関 節部に自由 度を持つヘビ
型 等 のロボットは選 択 可 能 であ
る。車輪型に関しても技術的な問
題 ではなく 適 用 範 囲 に 分 岐 を想
定していないものと考えられる。
アクチュエータの力 を速 度と牽 引
力に分けており、必要な牽引力を
確 保 し た 場 合 に 実 現 で きる 速 度
が遅い。
直線での走行性能は要求仕様に
近 い距 離 を実 現 出 来 ているが、
曲りを含んだ配 管では、この性能
が低下する。
ま た、 速 度 が 遅 け れ ば 距 離 が 増
えても作 業 時 間 で制 限 される可
能性あり。
一 部 のロボットは既 に実 現 できて
おり、 適 用 可 能 と 思 われ る。 ただ
し大きさや曲り通 過 性などを犠 牲
にする必要があり、小口径での適
用は難しい。
≪ 口 径 は 要 求 仕 様 を 満 た せ るが、 走
行性能は乖離が大きい≫
口径 75mm 以上の寸法を走行する技
術は既に実用化されており、一定の環
境では使用可能である。
最 終 的 な目 標 仕 様 を実 現 するために
は、十分な走行性能を有するケーブル
レスのロボットが必要だが、これを実現
するためには、
・断面変化への対応
・曲率の通過性向上
・走行速度、牽引力の向上
と言った、走行技術に加えて、
・マッピング技術
・位置特定技術
・自立走行技術
・故障時の救出方法
など、走 行 技 術 以 外 の多 くの要 素 技
術も必要となる。
評
価
△
△
○
展望
大 口 径 用 のロボットでは、自 重 +
αの 牽 引 力 は 既 に 実 現 できてい
る。アクチュエータの小 型 / 高 効
率化が進むことにより、余裕をもっ
た走行が可能となる。
ケーブルレスであれば、曲 り通 過
数の制限は基本的にはない。スタ
ックした場合の救出方法を確立す
れば、溶接 継手における曲り数の
制限はない。ケーブルがある場合
でも、アクチュエータの進 歩 により
性能向上が期待できる。
先端を任意の方向に曲げるアクチ
ュエータを設 けることにより、現 状
の技術でもある程度対応可能。
技術ロードマップによると、
2015 年以降にロボット用のアク
チュエータとして小型大容量ア
△ クチュエータや瞬発アクチュエ
ータの開発が見込まれている。
これらを利 用 するこ とで、牽 引
力を保ったまま、速 度の向 上
が期待できる。
△
ケーブルレス化 することにより、走
行距離の増加が期待できる。
また、小 型 大 容 量 アクチュエータ
等 に より ケ ーブル あ りでも 走 行 距
離の延長が期待できる。
適 用 水 準 にもよるが、大 型 化 、高
コスト化 する。実 際 の運 用 に 合 わ
せた最 適 化 が 必 要 。ただしリチウ
△
ムイオンなどのバッテリは安 全 性
の懸 念 もあり、動 力 の選 択 な どで
も課題がある。
走 行 技 術 の向 上 には、アクチュエータ
の性能向上が不可欠である。
技術ロードマップによると、2015 年以降
にロボット用の小型大容量アクチュエー
タや瞬 発 アクチュエータの開 発 が見込
まれており、これらの技 術を活 用するこ
とで、配管内での走行技術の向上が見
込まれる。
現状の技術水準と、要求仕様には大き
な隔たりがあることから、現実 的な展 望
としては以下のシナリオが考えられる。
1.ケーブルを使 用 した走 行 技 術 の活
用
走 行 距 離 は限 定 的となるが、走 行 技
術のみの技術で対応可能であり、一定
の条件では実用化が近い。
2.ケーブルレスによる自 立 走 行 ロボッ
トの活用
ケーブルを使 用 したロボットによる走
行技術の確立と並行して、課題で述べ
た他 の技 術 進 歩 と融 合 することで、次
世 代 の保 安 技 術 への活 用 が見 込 まれ
る。
62
付録4
現行の技術水準
評価
項目
要求仕様
目的
原理
(方式)
レーザーメタン mini
(東京ガス・エンジニアリング)
メタンガス
画像計測システム
(福井大学)
遠隔・非接触ガスセンサ
(日本信号)
赤外線カメラ
(FLIR SYSTEMS)
検出用中赤外波長変換光源
(NTT フォトニクス研究所)
ガスの遠隔検知
メタンの遠隔検知
メタン等の可視化
VOC の遠隔検知
メタン等の可視化
発信した赤外線
(1.6μm)の反射波吸収
アクティブ方式
1.6μm の吸収帯を利用し
たアクティブリモートセ
ンシング技術。ガス配管や
地表面などの標的に赤外
線を照射し、受光した乱反
射光の吸収率を測定する
事でメタンコラム密度を
算出する。
3.3μmの赤外線吸収
+和周波で1.5μm変換
アクティブ方式
3.3μm 付近の吸収帯を利
用したアクティブリモー
トセンシング技術。点測定
ではなく映像として測定
が可能である。反射光を
1.5μm に変換する技術を
応用することで、受信感度
の向上も図っている。
発信した波長
(3.4μm)の赤外線吸収
アクティブ方式
3.4μm 付近の吸収帯を利
用したアクティブリモー
トセンシング技術。単純に
安定した単一波長ではな
く、250nm の幅で波長を
変化させ、吸収帯と隣の信
号の両方を測定し、透過率
の深さからガスの濃度を
判別している。
自然の波長3.3μmの
赤外線吸収
パッシブ方式
物質から温度に比例して
放射される赤外線を利用
したパッシブのリモート
センシング技術。レーザを
発振しないことから、測定
機材が小型軽量であり、広
域を同時に動画として撮
影可能。ただしガスが低濃
度の場合は検出が難しい。
―
光パラメトリック
発信器:100μJ
差周波技術10μW
―
概要
光源
要素技術マトリクス(メタン遠隔検知技術)
評
課題
価
評
価
総合評価
差周波による(3.3μm)の赤
外線光源
メタンガスの検知に有効と
される 3.3μm の赤外線を
安定して発信する光源の技
術。これまで難しかった
数十 mW レベルの出力を実
現しており、アクティブリ
モートセンシングの測定技
術向上に応用可能。
差周波技術65mW
アクティブ方式では、近
最低検知
濃度
1000
ppm・m
以上
1~50,000ppm・m
―
100ppm・m
数 1,000ppm・m
(近距離の場合)
(ガスと気温との間にあ
る程度の温度差も必要)
―
△
関関係があり、濃度が低
いほど検知距離が短い。
する検知も可能。
力の光源は実現できてい
ない。
0.5~30m
―
2m
―
△
している。パッシブでの
光源の高出力化が必要。
大きいが、現状では高出
200m
低濃度のガス検知を実現
条件が整えば仕様を満足
進歩による改良の余地が
検知距離
△
これらの性能向上には、
3.3μm帯の光源は技術
数m~100m
(温度差による)
距離ならば現状の技術で
検知濃度と検知距離は相
アクティブ方式では、赤
外線を反射する背景が必
要であり、この背景の反
射率の違いも検知性能に
影響する。
パッシブ方式では、望遠
レンズなどにより長距離
の検知が可能だが性能は
環境条件に大きく依存す
る。アクティブ方式では、
△ 長距離の場合、距離減衰
の影響が大きい。
ただし 3.3μm の吸収帯
は吸収率が高いことか
ら、理論的には長距離で
の検知が期待できる。
63
現行の技術水準
評価
項目
要求仕様
レーザーメタン mini
(東京ガス・エンジニアリング)
メタンガス
画像計測システム
(福井大学)
遠隔・非接触ガスセンサ
(日本信号)
赤外線カメラ
(FLIR SYSTEMS)
検出用中赤外波長変換光源
(NTT フォトニクス研究所)
評
課題
価
評
総合評価
価
レーザの発振周期は現状
検知時間
0.1秒
0.1秒
17 分/画面
100×100 ドット
(50ms/画素)
1秒
動画撮影
―
パッシブは動画撮影が可
の技術で高速化が可能。
能だが、アクティブでは
反射光の検知も高速化が
ポイントごとの測定とな
可能である。マイクロコ
△ るため、画像化するため ○ ンピュータの処理速度も
に多数の測定を必要と
高速化しており、専用機
し、その分だけ時間がか
材を採用すれば現状の技
かる。
術で飛躍的な高速化が可
能。
アクティブ方式の原理で
濃度検知
可
能
メタンコラム密度を
測定可能
―
―
濃度の測定は
原理的に不可
低濃度での濃度検知精度
は、濃度ではなく、メタ
―
△ ンコラム密度が検出可 △
能。パッシブ方式は濃度
光学角度
10°以上
―
体積
UAV に搭
載可能な程
度
70(W)×179(D)
×42(H)mm
重量
UAV に搭
載可能な程
度
―
―
440(W)×320(D)
×150(H)mm
―
○
―
8kg
○
―
3.3μm の波長を使用する
305×169×161mm
―
△
600g 以下
―
現状の技術である程度の
推定が可能。
検知は不可。
共 振 ミ ラ ー と 組 み 合 わ せ 24°×18°
る 事 で 2 0 ° ま で ワ イ ド 画素数 320×240
測定が可能
は誤差が大きくなるが、
2.4kg
―
波長 3.3μm の赤外線は
場合、部品点数が多いた
発振器が大きくなるた
め現行技術であるレーザ
め、特に出力が大きくす
るためには、体積、重量
△
ーメタン程度の大きさに
するのは難しいが、現状
とも容易に持ち運べる大
の技術でも可搬可能はお
きさにない。
おきさを実現することは
可能と思われる。
64
現行の技術水準
評価
項目
要求仕様
メタンガス
画像計測システム
(福井大学)
レーザーメタン mini
(東京ガス・エンジニアリング)
遠隔・非接触ガスセンサ
(日本信号)
赤外線カメラ
(FLIR SYSTEMS)
検出用中赤外波長変換光源
(NTT フォトニクス研究所)
評
評
課題
価
価
総合評価
メ タ ン ガ ス の 吸 収 帯 と し て メ タ ン ガ ス の 検 知 に 有 効 な メ タ ン ガ ス の 検 知 に 最 も 有 パ ッ シ ブ 技 術 で あ る た め 、 本技術は赤外線の光源のみで ≪アクティブはパワー不足、パ パッシブ方式は成熟してきて
は感度が小さい 1.6μm を 3.3μm の吸収帯を使用した 効とされる 3.3μm の吸収 あ る 程 度 高 い 濃 度 の ガ ス で あるため、遠隔検知はできな ッシブは環境条件の影響が課題 おり大きな性能向上は見込め
使 用 し て い る が 、 感 度 が 小 技 術 。 高 濃 度 ガ ス の 可 視 化 帯 を 使 用 し た 技 術 で あ る な け れ ば 検 出 す る こ と が 難 いが、他の技術における、光 ≫
ないと思われるが、小型軽量
さ い 半 面 、 現 時 点 で は 波 長 は 可 能 で あ る が 、 低 濃 度 の が 、 メ タ ン に 特 化 し た 吸 収 し い 。 ま た 、 空 気 と 漏 洩 ガ 源のパワー不足を代替する技
が 長 い 赤 外 線 よ り も 高 出 力 ガ ス 検 知 で は 、 光 源 の パ ワ 波 長 に 調 整 す る 機 能 は な ス の 温 度 差 が 小 さ い 場 合 も 術として有望である。日本信
の 光 源 や 高 感 度 の 受 光 素 子 ーなどが必要と思われる。
候補
い 。 こ の 分 野 の 光 源 や 受 光 検 出 が 難 し く 、 適 用 範 囲 は 号や福井大学の技術と本光源
が 入 手 し や す い た め 比 較 的 受 光 感 度 を 稼 ぐ た め に 、 和 素 子 は 進 歩 の 余 地 が 高 く 、 比 較 的 大 き な ガ ス 漏 洩 と 考 を組合せることで、遠隔検知
軽 量 、 か つ 安 価 で 実 用 化 さ 周 波 に よ っ て 反 射 光 を 0.8 今 後 の 性 能 向 上 が 期 待 で き えられる。
技術の
技術が向上可能と考えられ
μm に変換している点が特 る。ただし 1.5μm よりも構 今 後 、 受 光 技 術 が 進 歩 し た る。
総合
れている。
評価
波 長 の 感 度 が 低 い た め 、 劇 徴 で 、 検 知 距 離 や 低 濃 度 検 成 が 複 雑 で 高 コ ス ト に な と し て も 、 低 濃 度 の ガ ス 検 ただし要求仕様を満たすため
的な性能(距離、感度)向上は 知 性 能 の 向 上 に 有 効 な 技 術 る。
知 は 難 し い が 、 動 画 で 撮 影 には更なる高出力が期待され
困難と考えられが現時点の であるが、現時点ではシビ
で き る メ リ ッ ト を 生 か し た る。
性能で十分な範囲では本技 アな調整などを要し再現性
ニーズがあれば活用できる
術による画像化なども可能
低濃 度の ガス 検知 では アクテ
ィブ が有 利で ある が、 長距離
で実 現す るた めに は光 源のパ
ワー 不足 であ り、 要求 仕様を
満たすことが難しい。
パッ シブ は小 型軽 量で 長距離
に対 応で きる が、 低濃 度検知
が難 しい ほか 、赤 外線 を放射
する 背景 の条 件や 温度 差など
の環 境条 件の 影響 で測 定性能
などに課題がある。
は大きく変化する。
を活かした製品が実用化され
ている。
アクティブ方式では、光パラ
メトリック発振器や差周波技
術によるこの波長利用は年々
進歩しており、高出力化、安
定化、小型化など実用化に近
づいている。検出が容易な短
い波長に変換する和周波変換
技術など、新たな技術進歩の
余地も多く期待できる分野で
あり、新技術の組合せによる
性能向上が期待できる。
付録5
要素技術マトリクス(他工事監視システム)
現行の技術水準
評価項目
要求仕様
-
目的
原理
(方式)
-
-
概要
(特徴)
他工事損傷未然検知遠隔監視
システム(ガス事業者)
ガス管への他工事損傷を未然
に防ぐシステム
傾斜センサ
FOMA通信
傾斜センサが傾く等の異常を
検知すると無線で親機に信号
を発信し、親機からガス事業
者へ警報を発報する。
予め設置する場所を特定して
おく必要があり。広範囲を検
知する技術ではない。
OptaSense
QinetiQ 社 英国
パイプラインや重要施設に対す
るテロや侵入などの危機を検知
し、警報するシステム
光ファイバセンサ
C-OTDR 方式
単一の光ファイバで測定可能。既
設の通信用ファイバを利用する
ことも可。複数箇所の同時検知が
可能で、断線しても、断線箇所ま
でのセンシングを継続可能。
途中分岐はできないが、ファイバ
を一筆書きに設置する必要はな
い。
セキュアロケーティングシステム
NTT インフラネット
(Future Fiber Technologies 豪)
PIGPEN
PSI/NGA 米国
評
価
課題
評
価
展望
埋設配管、ケーブル等の破壊、 パ イ プ ラ イ ン に 対 す る テ ロ
断線の危機を検出し、警告す などの危機を検知するため
るシステム
に低周波の振動を検知し、
警報するシステム
光ファイバセンサ
振動センサ
干渉方式
無線ネットワーク
数か所で同時に振動が発生し セ ン サ モ ジ ュ ー ル を 数
て も 検 出 可 能 。 2 本 以 上 の 並 100m おきに設置。路面近く
行したファイバが必要(ただ に埋設するため、設置範囲
し同一多芯ケーブル内で可) の選択性が高い。個別のセ
断線すると、センサ機能は停 ンサを破壊されても他のセ
止する。
ンシングには影響しない。
途中分岐はできず、一筆書き 道路や他工事の際の扱いを
に設置する必要あり。
要検討。
65
現行の技術水準
評価項目
要求仕様
測定
データ
-
検知範囲
検知距離:10km
ファイバからの
距離:5m
分解能:1m
他工事損傷未然検知遠隔監視
システム(ガス事業者)
-
傾斜センサを設置した箇所の
み
-
OptaSense
QinetiQ 社 英国
標準
0.2~1kHz
高精度 0.2~5kHz
検知距離:40km(標準)
(アンプ挿入で 100km)
10km(高精度)
ファイバからの距離: 人(5m)
自動車(20m)
重機(数 10m)
ファイバ上分解能:10m
ファイバからの距離精度:-
音響信号
セキュアロケーティングシステム
NTT インフラネット
(Future Fiber Technologies 豪)
振動
~1kHz
PIGPEN
PSI/NGA 米国
振動
警報内容
検知距離:40km
ループの場合:80km
ファイバからの距離:-
(振動源による)
検知範囲:基本的に無制限
(センサを設置した範囲)
センサからの距離:100m 以
上
(自動車、重機など)
ファイバ上分解能:100m
振動発生位置:9m~27m
・配管へのダメー
ジの可能性があ
る イ ベ ン ト :
100%
・配管へのダメー
ジの可能性がな
い イ ベ ン ト :
0.1%
傾 斜 セ ン サ が 傾 く ( 15 ° ~
45°)場合
・危険の検知
・危険の位置
危険発生の検知
人の歩行から重機の工事まで 24
種類のイベントに分類し、配管に
対する危険度も併せて表示する。
必要なイベントの検知に関して
適宜対応(開発)が可能。
定常振動を除去し、カッター、 重 機 な ど 、 パ イ プ ラ イ ン へ
穿孔機、ブレーカー、バック の危険が予想される振動を
ホ ー な ど 、 配 管 に 危 険 が あ る 識別可能。
振動のみ検知する。
・振動の検知
・振動の危険度の表示
・発生位置(地図、写真表示)
・危険発生の検知
・発生位置(地図表示
センサ寿命 十~数十年程度
埋設状況、材質等により大きく変
動
センサ寿命 十~数十年程度
埋設状況、材質等により大き
く変動
・危険な振動源の接近の警
告
検査 PIG のリアルタイム位置確
認
高圧ガスの漏洩検知(漏洩音)
振動を伴う装置の運転監視
-
-
パイプライン、重要施設に対す
重機、オーガー等を使用した
パイプラインの監視に適
るテロ監視などのセキュリテ
工事検知
用。
ィー。
落石監視
振動センサを点で設置す
適用
検知距離が長い場所や、人の検
検知距離が長い場所に適用
ることから、限られたエリ
業務
知まで可能な高感度を必要と
アの監視や既埋設地域の
する用途に向く。
監視を追加する等に向い
-
-
評
価
-
分解能は仕様を満たしてい
ない。光ファイバの方式は分
布式であり、これ以上の距離
精度の実現は難しい。
○
△
△
信号処理により、ある程度の
危険識別能力は実現されて
いる。
ただし現時点で識別機能が
実現できていない危険も多
数ある。
実際に検知する環境によっ
て検知性能に差が出る。
道路の工事と、道路に隣接し
た工事の識別は難しい。
△
○
-
○
△
光ファイバはメンテナンス
フリーで長寿命と考えられ
る。
電気的なセンサを必要とす
るシステムは、電池交換など
の定期的なメンテナンスが
必要。
-
寿命
適用範囲
○
×
配管寿命と同等、 傾斜センサ電池寿命最長1年
または容易な交
換
その他の
機能
価
課題
展望
~数百 Hz
検知
分解能
危険識別
能力
評
△
-
要求仕様を満足することは
原理的に難しいが、人または
UAV などが確認のために急
行するとすれば、運用でカバ
ーするなどのアイデアで許
容する方法も考えられる。
技術としては、既に実用化段
階に入っているシステムが
多く、ある程度の危険識別が
可能。
運用で得た知見を基に改良
することで検知確率向上可
能 。 た だし 誤 検 知 率 ≒ 0%と
検知確率 100%の両立は、将
来的にも困難が予想される。
-
光ファイバがガス管と同等
の寿命となるかは現時点で
は不明。
寿命の評価や、埋設時に交換
方法について考慮すること
で適応できる。
ている。
66
現行の技術水準
評価項目
要求仕様
他工事損傷未然検知遠隔監視
システム(ガス事業者)
OptaSense
QinetiQ 社 英国
光ファイバを利用したセンサ
としては標準的な検知距離。検
知分解能、検知感度とも高いこ
とから、重機に対するファイバ
からの検知範囲も広い点は評
価できる。
道路上の工事で発生する振動
の多くが、自動車の走行よって
発生する振動よりも大きいこ
とから、市街地での運用にも適
応できる可能性が高く期待で
きる。ただし現状はパイプライ
ンのセキュリティーを目的と
したイベント検知技術しか開
発されていないため、道路工事
を検知する信号処理の開発が
必 要で あ る。( 多く の イ ベ ント
は実現可能性が高いことを検
証ずみ)
通信用のファイバを利用でき
るので、配管に並行している通
信事業者のファイバを借用で
きれば設置費用はかなり低減
できる。
候補
技術の
総合
評価
付録6
評価項目
目的
原理
要求仕様
国内の現行の技術水準
レーダマン M
(ガス事業者)
舗装、土質、輻輳管の影響を
PIGPEN
PSI/NGA 米国
光ファイバを利用したセン
サとしては標準的な検知距
離。検知分解能はやや粗い
が、落石監視では 25m を実
現しており、今後の改善は期
待できる。
ファイバからの検知距離が
短い点がデメリットではあ
るが、ファイバの設置位置や
運用方法でカバーできれば
将来的に有望な技術となる。
ベースの技術は海外である
が、日本国内でカスタマイズ
やユーザーインターフェー
スなども一部行っているこ
とから、システムの運用、保
守の点でのメリットはある。
ファイバの種類は多尐の制
限があり、検知距離から考慮
すると、新規にファイバを埋
設する必要がある。
ファイバと違い、センサモ
ジュールを埋設するタイ
プであるため、部分的な監
視や既存配管に対する監
視機能の追加は行いやす
い。
実際の評価試験では、郊外
の静かな地域で行ってい
るが、検知範囲が広い分、
市街地では一つのセンサ
が検知する振動が多種多
様かつ同時に発生するた
め、このような地域でガス
管に脅威となる工事のみ
を検出可能かは評価が必
要。
設置位置が地上に近いた
め、設置許可の基準などは
確認が必要。
また、検知データは無線+
既存通信インフラを活用
することになるため、通信
費用や通信障害発生時の
対処などの運用コストも
考慮が必要。
評
価
課題
≪技術進歩よりもユーザニーズ
に合致した評価・改良が必要≫
位置分解能は要求仕様を満たし
ていないが、検知範囲や機能は
既に要求仕様を満たしており、
信号(情報)を収集技術はある
程度実現されている。
ただし識別すべきイベントの検
知ソフトの有無、誤報の確率な
どは環境依存性が高く実環境で
の性能発揮にはカスタマイズと
一定期間の調整が必要。
評
価
展望
いずれの技術も、ハード的には
概ね完成しており、技術的なブ
レークスルーによって性能が飛
躍的に改善するものではない。
これらの技術を要求仕様に近づ
けるためには、実用化または実
用に近い環境でのデータ収集
と、これを利用したソフト的な
改良(信号解析や識別方法の改
良など)が重要であり、性能の
向上はいかに多くのデータ(情
報)を蓄積するかに左右される
ものと思われる。
いずれのシステムも、導入時の
初期コスト、工事の必要性が課
題となる。
また、方式ごとに、定期的な保
守方法の確立を要する。
要素技術マトリクス(ロケーター)
欧州の現行の技術水準
Detector Duo
(IDS 社)
ORFEUS
(EU-Project)
評
価
課題
評
価
展望
埋設ガス管検知技術
受けない埋設ガス管検知技術
-
3DGPR
(東北大・マイアミ大)
セキュアロケーティングシステム
NTT インフラネット
(Future Fiber Technologies 豪)
インパルス状の電波を送信し、埋設 イ ン パ ル ス 状 の 電 波 と 絶 対 座 標 を リ 2 種 類 の イ ン パ ル ス 状 の 電 波 を 送 信 し 、 段階的な連続波の電波を送信し、埋設物
物からの信号を画像化する。
ンクさせ、正確な画像化をする。
埋設物からの信号を画像化する。
からの信号を画像化する。
67
評価項目
要求仕様
国内の現行の技術水準
レーダマン M
(ガス事業者)
欧州の現行の技術水準
Detector Duo
(IDS 社)
3DGPR
(東北大・マイアミ大)
ORFEUS
(EU-Project)
評
価
課題
評
価
展望
誰 で も 簡 単 に 探 査 で き る こ と を 高度な測位システムと GPR を連 2 種類の周波数を同時に用い、低 既存の GPR に対しより高解像度で
目 的 に 、 各 設 定 の 自 動 化 を 図 っ 動させてデータを収集することで 深 度 ・高 深 度 両 方 の 測 定を 可 能 より深く、より高速に探査すること
ている。
探査データの位置誤差の精度向上 にしている。
を目的とする。
を図っている。
概要
-
アンテナ:ガス事業者
GPR 本体:MALA(スウェーデン)
IDS(イタリア)
送信回路:日本無線
開発元
-
アンテナ:IDS(イタリア)
受信回路:ガス事業者
iGPS:Nikon Metrology (ベルギー)送受信回路:IDS(イタリア)
画像処理:ガス事業者
画像処理:東北大・マイアミ大(米) 装置化:IDS(イタリア)
装置化:日本無線
装置化:東北大・マイアミ大(米)
アンテナ:デルフト工科大(オランダ)
IDS(イタリア)
送受信回路:フィレンツェ大(イタリア)
装置化:IDS(イタリア)
販売元
-
日本無線
(研究開発段階)
IDS
送信方式
-
パルス波
パルス波
パルス波
周波数
-
中心周波数:380MHz
中心周波数:250MHz
中心周波数:
周波数帯域:
(使用するレーダに依存)
250MHz と 700MHz
100MHz~1000MHz
大きさ
-
重量
適用範囲
埋設ガス管検知技術
適用業務
埋設物調査
使用実績
62×53cm(アンテナ部)
60kg
(使用するレーダに依存)
(試作段階)
ステップ周波数連続波 SFCW
(Stepped Frequency Continuous Wave)
60×37cm(アンテナ部)
80×40cm(アンテナ部)
15kg
130kg(総重量)
埋設ガス管検知技術
埋設物調査
-
ガス事業者4台
下水道調査会社4台
研究用
欧州のガス事業者・水道事業者 研究用
《カタログ値》
《カタログ値》
《カタログ値》
《カタログ値》
水 平 : ±10cm
水 平 : ±1cm
水 平 : ±5cm
水 平 : ±5cm
深 さ : 深 さ の 10%
探査精度
水 平 : ±1cm 以 内
深 さ : 深 さ の 2%
分 離 : 管 間 隙 5cm
分 離 : 管 間 隙 10cm
《サンプル評価結果》
《サンプル評価結果》
深 さ : 深 さ の 10%程 度
深 さ : 深 さ の 10%程 度
分 離 : 管 間 隙 10cm( 水 平 )
分 離 : 管 間 隙 10cm( 水 平 )
×
使用する周波数により精度が制限されてしま
う。
〔水平〕
タイヤにより距離計測する場合、蛇行やスリ
ップで誤差が生じる。
〔深さ〕
土 壌 に よ っ て 電 波 の 速 度 が 変 わ る が 、土 壌( 誘
電率)の補正が不十分。
△
〔分離〕
・水平分離:
アンテナの指向性が広いため分離が不十分。
・上下分離:
原理的に困難である。
アンテナの指向性を広げ、送受信アンテナの
間隔を広げることで改善可能であるが、水平
分離精度の向上と相反する。
2014 年 に 打 ち 上 げ 予 定 の 準 天 頂 衛 星 に よ
り GPS の 精 度 が 向 上 す る こ と で 水 平 方 向
の位置精度が向上することが期待され
る。
その他の課題が原理的なものであるた
め、大きな技術的ブレークスルーがない
限り状況が大きく改善することは難し
い。
68
評価項目
要求仕様
国内の現行の技術水準
レーダマン M
(ガス事業者)
《カタログ値》
3m
探査深度
(粘土地盤を除く)
いかなる土壌においても 3m 《実測値》
まで計測できること
2m
3DGPR
(東北大・マイアミ大)
《カタログ値》
3m
欧州の現行の技術水準
Detector Duo
(IDS 社)
《カタログ値》
3m
評
価
課題
評
価
展望
《カタログ値》
3m
《サンプル評価結果》
《サンプル評価結果》
1m 以下
※ サン プ ル 評 価試 験 時 以外 の
ORFEUS
(EU-Project)
2m
*使用するレーダ性能に依存
想定以上に土壌減衰が大きく、これ
を改善するには送信出力を増加さ
せる、アンテナの効率を向上させる
×
×
方法がある。低周波数を採用する場
合は探査深度と探査精度の向上と
相反する。
アンテナの送信出力は電波法上
の規制によりこれ以上増加する
ことは不可。
高効率のアンテナの開発の進展
に期待。
使用している電波の波長が数十 cm
× であり、これよりも小さい物体の大 △
きさを推定することは極めて困難。
2014 年に打ち上げ予定の準天頂
衛星により GPS で高精度(mm
単位)の位置情報精度が実現され
れば管口径推計の検討が促進さ
れる。
機 会に 同 一 フ ィー ル ド で計 測
した結果
管口径推定
管口径の推定が可能
不可
不可
不可
材質は問わず検知可能
材質は問わず検知可能
材質は問わず検知可能
25A 以上
25A 以上
25A
と口径
(ただし条件による)
(ただし条件による)
(ただし条件による)
鉄筋入りコンクリート舗装でも
コンクリート舗装
鉄筋ピッチが 10cm 以上で、探査 鉄筋入りコンクリート舗装下での 鉄 筋 入り コ ン ク リ ー ト 舗装 下 で
舗装の影響
鉄筋有探査可能
対 象 が 口 径 の 十 分 大 き い 配 管 で 探査は困難。
の探査は困難。
あれば探査できることもある。
探査結果の信 探査結果の信頼性が確認でき シ ス テ ム ノ イ ズ と 受 信 信 号 強 度
から、電波到達深度(信頼性の
信頼性推定機能なし
信頼性推定機能なし
ること
頼性
判定)を推定
適応管種
埋設管自動推
材質は問わず検知可能
25A 以上
不可
材質は問わず検知可能
PE 管は鋼管に比べ電波の反射が弱
25A 以上
△
△
く小口径では判読が困難。
(ただし条件による)
鉄筋入りコンクリート舗装でも鉄
鉄筋入りコンクリート舗装では鉄
筋ピッチが 15cm 以上で、探査対象
筋が電波をさえぎるため、電波の伝
△
△
が口径の十分大きい配管であれば
播が不十分で原理的に探査は困難
探査できることもある。
である。
信頼性推定を自動的に行う機能を
信頼性推定機能なし
△ 装備してはいないが、システムノイ ○
ズと受信信号強度から推定は可能。
-
横断画像からの推定
なし
なし
なし
土質補正
-
自動、手動
手動
手動
手動
3次元表示
-
可能
可能
不可
不可
定
操作性
候補
技術の
総合
評価
-
-
・試走による感度設定が不要
・本体を押すタイヤ走行
・画面のタッチパネル
・手元の押しボタンスイッチ
・測定準備(iGPS の設定・無線 LAN
環境構築)が必要
・本体を牽引するため事前の路面清掃
が必要
・計測と処理にそれぞれ PC が必要
・操作には知見と研修が必要
・試走による感度設定が必要
・本体を押すタイヤ走行
・画面のタッチパネル
・手元の押しボタンスイッチ
探 査 精 度 ・ 探 査 深 度 と も 要 求 仕 探査精度・探査深度とも要求仕様 探 査 精度 ・ 探 査 深 度 と も要 求 仕
様 を 満 た さ な か っ た が 、 計 測 画 を満たさなかった。
様を満たさなかった。
像が鮮明であった。
また基準位置座標特定およびデー 持 ち 運び も 容 易 で 、 初 心者 で も
現 場 で の 導 入 実 績 も 多 数 あ り 、 タ通信のための無線 LAN 環境構 使 用 しや す い よ う に 設 計さ れ て
ユ ー ザ の 視 点 か ら の 開 発 で あ る 築など計測準備に時間がかかる。 いる。概略的な探査に向く。
た め 高 い 操 作 性 も 持 ち 合 わ せ て しかしながら 3DGPR の特徴は、
い る 。 現 実 的 で 高 性 能 な 機 器 と 指定された深度における地下埋設
言える。
物の相互の位置関係を精密に図化
できることにあり、性能のよいレ
ーダと組み合わせることでより精
度の高い地中 3D 画像を作成でき
る可能性がある。
高効率のアンテナの開発の進展
に期待。
鉄筋間を通り抜ける指向性の狭
いアンテナによる高効率かつ高
分解能のシステムの開発に期待。
現行機種で実現されている機能
を参考に同等の装備を実装すれ
ば実現可能である。
・試走による感度設定が必要
・本体を押すタイヤ走行
・ノート PC でコマンド入力
探査精度・探査深度とも要求仕様を 《マップと同程度の精度を求めるならア ロ ケ ー タ ー 関 連 の ハ ー ド ウ ェ ア 技 術
満たさなかった。
ンテナを含めたシステムの高分解能化が は基本的に完成しており、原理的な課
必要。》
題については大きな技術的ブレーク
ア ス フ ァ ル ト 舗 装 の フ ィ ー ル ド に 配管の探査については現状のシステムで スルーがない限り改善は困難である。
対 し て の 探 査 結 果 は 鮮 明 で あ っ た も可能である。
準天頂衛星による位置情報システム
が、鉄筋入りコンクリート舗装下で
の精度向上や、本体における配管形態
は不鮮明な結果となっている。
探査精度・探査深度については要求仕様 の 3D 可視化などにより、高機能なシ
を満たしておらず、これを実現するため ステムとなる可能性がある。
SFCW により広い幅の周波数を利 には
用するため、浅~高深度まで一定の ・ 高精度の位置情報システムの整備
精 度 を 持 っ て 探 査 で き る 性 能 を 持 ・ 高効率・高指向性のアンテナの開発
っている。高性能を示す可能性があ などが必要である。
り、製品化にはさらなる操作性の改
良が必要。
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