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自分の思いを豊かに表現できる子をめざして
自分の思いを豊かに表現できる子をめざして 西脇市立西脇小学校 主幹教諭 生田しず子 1 取組の内容・方法 (1)伝え合う力を高める学級づくり 本校では、今年度の研究目標を「基礎学力を高め、自己肯定感を育てる学びの場の 創造」として、研修を推進してきた。具体的な研修内容として、①学習基盤力を高め る ②基礎的・基本的な学習内容の確実な修得 ③「分かる授業」 「自ら学ぶ学習」の ための指導力向上 ④自己肯定感を育てる指導の工夫 を目標に取り組んできた。 これらの取組により多くの成果が見られる。徹底した指導により鉛筆を正しく持つ 子どもが増えたこと、朝の学習時の音読によりリズムよく1日のスタートが切れたこ と、繰り返し学習により漢字・計算の力がついたこと、教職員の連携した指導により 学年集団としての力がついたことなど多くの成果を感じている。 一方、自己肯定感育成のために欠かせないことが、学級経営である。①一人一人の 子どもはかけがえのない存在であり、それぞれが大きな可能性を持っている。②温か な学級の雰囲気の中で子どもは存在感を感じ、自由な発想をし、失敗を恐れず挑戦す る意欲が湧く。特に、国語のように言葉を通して伝え合う力を高める場では、互いを 尊重する学級づくりが大切であると考え取り組んでいる。 (2)国語科学習を通して ・正しく音読できる力 子どもたちは、朝のモジュールタイムにおける音読によりリズムある音読ができる ようになり、生活にもリズムが生まれるようになった。また、家庭でも学校でも毎日 のように音読をしている。音読テストを学習の中に取り入れ、子ども自身の自己評価、 相互の評価を取り入れることで正しく読むことを意識できるようになり、一字一句間 違わず正しく読むという意識が生まれてきた。正しく読むことによって、内容を読み 取る力も伸びてきている。 ・漢字全問クリア 該当学年で学習する漢字を1学期に全て学習する「漢字の先取学習」を全校で実施 している。3学期には、漢字全問クリアに挑戦させている。音読や漢字修得の取組に より、基礎的な学力の向上が見られ、全国学力・学習状況調査や西脇市で独自に行っ ている学力調査でも好結果が見られる。 ・一人の読みをみんなの読みに 物語文でも説明文でも、課題に即して読み取った内容を発表する場が多い。一人一 人の読みをより確かなものにし、全体の読みにすることによって、読み取る力を伸ば し語彙力をも伸ばすことができる。その際、キーワードとなる言葉を考えさせ、自分 たちの経験したことや生活との関連を見つけることができた。そうすることで、読み は深く確かなものとなって全体の読みになり、一人一人の心に残るものになった。 ・ 「出口のある授業」をめざして 「朗読会を開こう」 「ペープサート劇をしよう」「おすすめの本を紹介」「トーク番組 を開こう」 「新聞を作ろう」など、目的を持って読むことによって、子どもたちの読 みは意欲的になる。また、それを誰に紹介するのか、どのような場で聞いてもらうの かなど、場面設定をすることで書き方や発表の仕方も変わってくる。そして、それは 表現力や活用力を身につける大切な場となる。 実践例① 6学年「ニュース番組 −平和特集−」 「平和のとりでを築く」の学習を終えた後、戦争に関係ある本や新聞、インターネッ トで見つけた資料などを読む。その後、班ごとにテーマを決め、ニュースキャスターに なって、戦争や平和についてのニュースを伝えるというめあてで学習を進めた。 子どもたちは、オープンスクールで発表する場面を想定して意欲的に目的意識を持っ て学習に臨むことができた。他の班の発表も興味深く聞くことができ、自分の班の発表 と比較して聞くなど、表現力を高めることに結びついた。 授業後の感想(オープンスクールで発表) 私は、このニュース番組をやって、戦争のこわさを知った。特に、北朝鮮が地球を 2つにわるほどの核兵器を持っているなんてびっくりした。もしそんなことがあれば どうしよう・・・と思いながら聞くことができた。それから、世界の子どもたちが、 家にお金がない、親が死んでしまったなどの理由から働いているというのを知ってび っくりした。私は、いくら家族のためでも働けないと思う。私たちは、本当に幸せな んだなと思った。 私たちは、戦争をしている国の子たちと比べると、とっても幸せです。私たちの幸 せを分けてあげたいと思います。このニュースをして、あらためて戦争のこわさ、寂 しさ、不安さを感じました。このニュースをしてよかったです。本物みたいでした。 私は、戦争が起きていない時代に生まれてきて良かったです。しんどい思いをして いる子たちをちょっとでも助けることができるなら、協力したいです。 保護者の感想 平和特集の授業を参観して、子どもたちが『成長したな。 』と思いました。班で協力 して、くわしくしっかりまとめ、内容もよく、どの班もうまく取り上げていました。 「戦 争」という一つのテーマをいろいろな視野から調べて、親である私も知らない戦争を、 子どもたちに教えてもらいました。 自分自身の生活をふりかえることができ、反省し、考えさせられました。子どもた ちも、もう一度、自分の生活を見直すいいきっかけになったのではないでしょうか。 「平 和」のありがたさを忘れず、そして、今から成長していく中で、 「戦争」は忘れてはな らないことです。だから、今日の授業の大切さを分かってほしいなと思います。 子ども達の「戦争は必要でしょうか。」という言葉が心に残りました。私たちが親と して願うのは、 「平和な未来」です。今のこの生活を当たり前と思わず、感謝すること を忘れずに過ごしていきたいです。 実践例② 3学年「昔話をしょうかいしよう」 「3年とうげ」の話の組み立て「はじまり・出来事・ 変化・むすび」を学習し、それと同じような組み立ての 昔話を見つける。紹介したい話を組み立てに即してあら すじを書き、自分の感想を交えて2年生に紹介する学習 を展開した。 2年生に紹介するということが、3年生の子どもにと って大きな意欲づけとなった。2年生に分かりやすいよ うに、2年生の子が本をたくさん読むようになど工夫し ながら意欲的に準備できたことが大きな収穫である。 (3)評価と指導の一体化 評価とは、子ども一人一人の変容やつまずきを把握し、教師の指導や支援の改善 に生かすために行うものである。また、学習目標や評価の観点を子どもたちと共有 することにより、子どもの自己評価活動や相互評価活動を取り入れることは、子ど も自身が自ら学習しようとする意欲につながる。 例えば、 「新聞作り」や「報告文を書く」など書く活動では、書くときに取り入れる べき事柄を見つける。書く段階では、それが、作文の中にどれだけ取り入れられたかを 評価する。この評価は子ども自身でも、また子どもたち相互にもできることであり、自 分のよい点や課題が分かり次の活動の目標を持つことができるという良さがある。学期 に一度は取り入れることにより、読む力・書く力が伸びていることを子どもが自分自身 で感じることができるようになった。 (4)あらゆる学習の場で 国語科の学習で学んだことは、あらゆる教科の中で生かすことができる。総合的な学 習や社会科学習の中では、収集した情報をまとめ発表する場が多い。どんな情報を選択 し、まとめるか、どこで誰に伝えるのかなど、国語科で学んだことがどれだけ活用でき るか大切な実践の場でもある。常に、各教科や道徳で学んでいることを繋ぎながら、子 どもたちの伝え合う力が伸びるよう指導・支援することが大切である。 (5)全校的な取組として 本校では、国語科と算数科の授業研究を中心に、 「どんな力をつけるかを明確にした 授業になっていたか」「子どもたちの自己肯定感が育つような場があったか」「考えを 伝え合い深まりあうような場があったか」など、全員が同じ視点で授業し、研修を積 み重ねている。一人の十歩より、全員の一歩の高まりこそが、子どもたちを高めてい く最も重要なことと考え取り組んでいる。 語彙力を高めるための環境作りも大切に している。「にしわきっこ、文学の広場」と 題して、学年ごとにコーナーを設け、四字熟 語やその時期にあったことわざ、言葉に関す るクイズ、子どもたちの作文や詩などを掲載 している。子どもたちは、自然に言葉に触れ て感じたり考えたり、広く言葉に出合うこと により、豊かな言語活動ができるようになっ てきた。 2 取組の成果 (1)学級の子どもたち 読み間違いが減り音読が上手になってくることに伴って、言葉を大切に読み進めて いくことができる子が増えてきた。何より本の好きな子が増え、国語の学習が好きな 子が増えてきた。また、何度も書く活動を取り入れてきたことで、書くことへの抵抗 感が減り、 「はじめ・中・終わり」の段落を意識して書くことができ、日記等の日常生 活でも生かせるようになった。 (2)校内では どんな子どもたちに育ってほしいか共通理解し取り組むことができ、朝のモジュー ルタイムや漢字の先取学習など全校的に進めていることが、子どもたちの語彙力を高 めるためによい成果をもたらしている。 3 課題および今後の取組の方向 子どもたちの書く力や話す力が、確実に伸びてきているのを感じる。今後も継続して、 一人一人に応じた指導法や支援の方法を考えることはもちろん、「分からない」「できな い」という一人の課題をみんなで解決する学習の場を設定することを大切にしたい。そ うすることで全体が伸び、より信頼し合える学級づくりにつながると考える。 全校的な取組として、音読や漢字学習については成果が見られるが、書く力や話す力 といった表現力の育成については、さらに研修を重ねていく必要がある。ワークシート や作文指導法などの開発、年間指導計画の見直しを行い、ねらいや指導内容をより分か りやすく系統だったものにしていくことにより、指導の改善に結びつけたい。 若手教職員が非常に多くなっている現在、先輩教員の持っている考えや技術を、共有 化することは全体が伸びる大切なことである。今後も校内にとどまらず他校との交流を 図り、豊かに表現できる子の育成をめざして取り組んでいきたい。