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光平面照明
5 2. ホログラフィ 2.1 ホログラフィの原理 a. ホログラフィとは ホログラフィ:平面状の記録媒体に空間 ザ レー をしまい込む技術 y x 観察者 z 物体 O コヒーレント光で照明された物体からは 反射波の散乱波がやってくる。 (a) コヒーレント光で照明された物体 M レー L ある面上の無数の仮想波源からの球面波と HM (ハーフミラー) L とらえることもできる。 つまり新しく設定した適当な面上*にもと y 物体 O の波面と全く同じものを再現すれば空間(3 x z 次元像)が現れる。 *ホログラフィでは乾板やフィルム (b) ホログラムの記録 レー ザ Huygens の 2 次波源の考え方に従えば、 ザ L 観察者 三次元虚像 ホログラム (c) ホログラムからの像再生 図 2-1 ホログラフィの原理 記録:干渉性の良い光で物体を照明し、その反射光(or 散乱光、透過光)と同一 光源から発した別の均一な照明光を乾板に当てる。 前者を物体光、後者を参照光。 上記二つの光の干渉が生じ、その濃淡(干渉縞)が乾板に記録される。 得られた干渉パターン(あるいは乾板)をホログラムという。 ↑”全てのものが記録されたもの” 再生:ホログラムは回折格子として作用する。元の参照光と同一の再生用照明光を ホログラムにあてると回折光が得られる。この回折光は先の物体光と同一の 波面を有する。→3 次元像が得られる。 つまりホログラフィ:ある平面上に存在した波面を、その平面に置いた記録媒体に ║ 収める技術と言える。 波面再生法(wave-front reconstruction)と呼ばれていた。 6 b. ホログラフィの歴史 (14 ページ参照) ・Gabor の提案 1948年 電子顕微鏡の一方式として考案 参照 電子線波長λe, (∼5 pm), 再生光波長λe(∼500nm) 再生像倍率 m = λe = 10 5 (後述する) λe 問題点 1.真の像(直接像)の他に別の像(共役像)が重なって生じる。 2.物体が透過性である必要。 ↑ 2 重像(twin image)の問題 ・ Leith-Upatnieks の 2 光束法 1962 年 光をあらかじめ2つに分ける 物体光 参照光 > 両光間に角度θ 物体光 ・ 直接像と共役像が分離 ・ 反射物体にも利用可(図 2.1) 2 次元、3 次元像の記録、光学情報処理、情報記録、空間計測などに利用 θ = 0 ⇒ Gaborの方法 c. 波面再生の説明 上記波面再生の原理を説明しよう。図2-1を用いる。 レーザ光で照明された物体からの散乱光を E 0 ( χ , y , z , t ) = Re { 2O( x, y, z) exp( jωt )} (2.1) と表そう。ここで O は Object の意である。また参照光を ER ( x, y, z , t ) = Re { 2 R( x, y, z) exp( jωt )} (2.2) 7 とする。このとき Z = O に置かれた乾板面上の光の強度分布 I ( x, y ) は I ( x, y ) = E0 ( x, y, o, t ) + ER ( x, y, o, t ) = O ( x , y ) + R ( x, y ) 2 2 2 2 = O( x, y ) + O( x, y ) + R*O + RO* (2.3) は時間平均、*は複素共役を表す。 となる。ここで 式(2.3)は O( x , y ) = O0 ( x , y ) × exp{ jφO ( x , y )} (2.4) R( x , y ) = R0 ( x , y ) × exp{ jφR (x , y )} (2.5) と振幅と位相を分離して表現すると I (x , y ) = {O0 ( x , y )} + {R0 ( x , y )} 2 2 + 2 R0 ( x , y ) ⋅ O0 ( x , y ) ⋅ cos(φO − φ R ) (2.6) となる。 上式第 1、第 2 項はそれぞれ物体光、照明光の強度に対応し、 (x.y)についてゆ っくりと変化する。第 3 項は両立の位相差 φ0−φR で変化する量で 干渉縞 を表してい る。 写真乾板の露光、現像後の振幅透過率Tを T ( x, y ) = T0 + KI (x, y ) (2.7) とする。Kは定数。再生用照明光を R ′( x, y ) = R0′ ( x, y ) exp{iφ R ( x, y )} (2.8) とすると、乾板の右側に現れる波動は、 R′( x, y ) ⋅ T ( x, y ) = T0 R′ + KR′ O + KR′ R 2 2 + KR′R*O + KR′RO* となる。 第1∼3項:直接透過光 第4項 :直接像(再生像);Oに比例 第5項 :共役像 (2.9) 8 2.2 ホログラフィの分類 以上述べたような基本形の他に実際には様々な形式のホログラフィがある。 ホログラムの分類は以下のさまである. 1) 干渉縞の次元による分類 2)干渉縞の記録状態による分類 ・ 二次元ホログラム ・ 振幅ホログラム ・ 三次元ホログラム ・ 位相ホログラム ・ ブレーズドホログラム ・ 複素振幅ホログラム 3)物体波面による分類 ・ フレネルホログラム ・ ・フラウンホーファーホログラム レンズレスフーリエ変換ホログラム 表 2.1 ・イメージホログラム ホログラムの分類 この他、ホログラフィの撮影、再生方式も各種ある。 a.干渉縞の次元による分類 ・2次元ホログラム 薄い乾板に厚み方向に均一に記録された ホログラム。上記の考察の対象はこの形。 ・3次元ホログラム(体積ホログラム) 比較的厚い透明な感光材料に立体的に記録 されたホログラム。通常右図の様に物体光と参 照光を互いに反対方向から入射させる。これを 体積ホログラムという。 ブラッグ回折により三次元像が得られる。 リップマン ブラッグホログラム or リップマン ホログラムという。 ブラッグ回折(後述)のため波長選択性。 図 2.2 リップマン形体積ホログラム 9 ∴白色光でカラー再生可 b.干渉縞の記録状態による分類 ・ 振幅ホログラム 振幅透過率 or 反射率分布の形で記録 場所的な振幅変調 ・ 位相ホログラム 感光材料の厚み or 屈折率比として干渉縞を記録 場所的な位相変調 ・ ブレーズドホログラム 感光材料表面に凹凸をつくり 反射光に 場所的な位相変調 を加える。 ・ 複素振幅ホログラム 振幅+位相 ◎ 図 2.3 ホログラムの効率:直接像への光の分配比 ブレーズドホログラム 振幅 < 6.25 % 位相 < 34 % (2次元) < 100 % (3次元) c. 物体波面による分類 図 2.4 幾何学的影と種々の回折像 ・ フレネルホログラム 物体と乾板面の距離zが有限の場合:通常のホログラム ・ フラウンホーファーホログラム(フーリエ変換ホログラム) z ≧ w 2/ λ (λ:波長, w:物体の大きさ)のとき得られる フラウンホーファー回折像を物体光としたホログラム。実際は図4.5の様にレン ズを用いないと実現不可。フラウンホーファー回折像=物体面上の振幅分布の フーリエ変換。 10 図 2.5, いろいろなホログラム作成法 ・ レンズフーリエ変換ホログラム 物体と参照光点光源を乾板面から等しい距離においたホログラム。 フレネル回折波と球面波による干渉縞≒フラウンホーファー回折波と 平面波によるそれ。 ・ イメージホログラム レンズ等による実像を乾板面上(あるいはその近く)に作り、得られた ホログラム。白色光再生時の色分散少(後述) 。 記録情報の分散性(後述)は 少ない。 2.3 ホログラフィの結像理論 図 2.6,2.7 を用いて、物点 O の結像点を求めよう。 a.基本式 物点 O( x 0 , y 0 , z 0 ) を、点 R ( X R , YR , Z R ) に点光源を有する参照光で 物体 照明 物体 (xi, yi, zi) O (xO , yO , zO) x O (xO , yO , zO) x 再生像 z R (xR, yR, zR) y 参照光光源 記録媒体 参照光光源 C (xC, yC, zC) y 照明光光点 (a) 記録時 図 2.6 解析の対象とする光学系 z ホログラム R (xR, yR, zR) x r s z y P ホログラム面 (b) 再生時 図 2.7 解析に使用する記号 11 記録するフレネル振幅ホログラム(2次元)を考える。再生光点は C ( xc , y c , z c ) 再生像点を (xi , y i , z i ) とする。 〈記録〉ホログラム面(z=0)上に点 P、 OP = r , RP = s とすると r= ( x − x 0 )2 + ( y − y 0 )2 + z 0 2 s = ( x − xR ) 2 + ( y − yR ) 2 + z R (2.10) 2 (2.11) 点 P に達した物体光 O( x, y, t ) 、参照光 R ( x, y, t ) は O ( x, y , t ) = O0 exp{ jφ 0 + jω t} r (2.12) R ( x, y , t ) = R0 exp{ jφ R + jω t} s (2.13) φ0 = − 2π φR = − 2π λ λ r +ψ 0 (2.14) s +ψ R (2.15) ここで、 O0 , R0 ,ψ O ,ψ R は定数。 物体光、参照光の合成振幅は ⎛O H ( x, y , t ) = O + R = ⎜ 0 ⎝ r eφ j I ( x, y ) = H ( x , y , z ) 0 + R0 s e φ ⎞⎟e ω j j t R ⎠ 2 として、 T ( x, y ) = KI ( x, y ) (2.16) (2.17) (2.18) の振幅透過率が乾板上に得られる。つまり ⎧⎪ O 2 R 2 O R ⎪⎫ T ( x, y ) = K ⎨ 02 + 02 + 0 0 [exp( j (φ O − φ R )) + exp(− j (φ O − φ R ))]⎬ (2.19) rs s ⎪⎩ r ⎪⎭ 点 C ( xc , y c , z c ) にある波長 µλ の点光源を再生用照明光とすると、ホログラム直前 (C側)の光強度分布は C ( x, y, z = −0, t ) = φc = - 2π µλ l + 4c C0 exp{ jφ c + j (ω µ )t} l (2.20) (2.21) 12 l= ( x − x c ) 2 + ( y − y c )2 + z c 2 (2.22) ∴ホログラム面透過後の光振幅分布は、 C ( x, y, z = +0, t ) = T ( x, y ) C ( x, y, z = −0, t ) ⎛ O0 2 R0 2 ⎞ C 0 ⎟ = K ⎜⎜ + exp{iφ 0 + j (ω µ )t} s ⎟⎠ l ⎝ r KO0 R0 C 0 + exp{ j (φ 0 − φ R + φ c ) + j (ω µ )t} rsl KO0 R0 C 0 + exp{ j (− φ 0 + φ R + φ c ) + j (ω µ )t} rsl (2.23) b.直接像と共役像 式(2.23)で第 1 項は直接透過光を表す。 µ = 1, C = R とし、光源 C, R ともにホログラム面から十分遠いとする。 つまり φ R = φc , s = l = const. (参照光、照明光とも乾板に垂直入射する平面波) 式(2.23)の第2項 ∝ O0 exp{ jφ0 + jω t} r (2.24) 式(2.23)の第3項 ∝ O0 exp{− jφ0 + 2 jφ R + jω t} r (2.25) となる。 式(2.24)は、式(2.12)と同じ⇒直接像 φ R = φc = const. = 0 とおくと明らかな様に、第2項と第3項の位相は大きさ同じ で符号が反対。つまり、図 2.8 のように式(2.24)はホログラム面より C 側から発す る光(その発する点が直接像:虚像)、式(2.25)はホログラム面に対し C と反対側 で集束する光(その集束する点が共役像:実像)となることが分る。 波面w1 図 2.8 波面w2 直接像と共役像の関係 13 C.振幅ホログラムの結像作用 近軸近似をすると、 ⎧⎪ (x − x0 )2 + ( y − x0 )2 ⎫⎪ r = z 0 ⎨1 + ⎬ 2 ⎪⎩ ⎪⎭ z0 1/ 2 2 ≈ x 2 + y 2 − 2 x0 x − 2 y 0 y x + y0 + z0 + 0 2z0 2z0 2 2 x 2 + y 2 − 2xR x − 2 yR y x + yR + zR + R s= 2zR 2z R (2.26) 2 (2.27) である。従って、 x y ⎫ 2π ⎧ 1 x 2 + y 2 − 0 x − 0 y ⎬ + const. ⎨ λ ⎩ 2z0 z0 z0 ⎭ ⎛x x 2π ⎧ 1 ⎛ 1 1 ⎞ φ 0 − φ R ≈ − ⎨ ⎜⎜ − ⎟⎟ x 2 + y 2 − ⎜⎜ 0 − R λ ⎩ 2 ⎝ z0 z R ⎠ ⎝ z0 z R ( φ0 ≈ − ) ( ) (2.28) ⎞ ⎛ y0 y R ⎞ ⎫ ⎟⎟ x − ⎜⎜ − ⎟⎟ y ⎬ + const. ⎠ ⎝ z0 z R ⎠ ⎭ (2.29) が得られる。 ここで、ホログラムをm倍に拡大したとする。このとき、その透過率 T ' ( x, y ) は T ' ( x, y ) = T ( x , y ) m m (2.30) であるので、直接像、共役像の波面の位相分布 φ1 , φ 2 は、 ⎛ x y⎞ ⎛ x y⎞ Φ 1 = φ 0 ⎜ , ⎟ − φ R ⎜ , ⎟ + φ c ( x, y ) ⎝m m⎠ ⎝m m⎠ 2π ⎪⎧ 1 ⎛ µ 1⎞ 2 µ 2 ≈− ⎨ ⎜⎜ 2 − 2 + ⎟⎟(x + y ) µλ ⎪⎩ 2 ⎝ m z 0 m z R z c ⎠ (2.31) ⎛ µx x ⎞ ⎛ µy y ⎞ ⎫ µx µy − ⎜⎜ 0 − R + c ⎟⎟ x − ⎜⎜ 0 − R + c ⎟⎟ y ⎬ + const. ⎝ mz 0 mz R z c ⎠ ⎝ mz 0 mz R z c ⎠ ⎭ Φ2 ≈ − 2π ⎧⎪ 1 ⎛ 1⎞ 2 µ µ 2 ⎨ ⎜⎜ − 2 + 2 + ⎟⎟ x + y µλ ⎪⎩ 2 ⎝ m z0 m z R zc ⎠ ( ) ⎛ µx x ⎞ ⎛ µy y ⎞ ⎫⎪ µx µy − ⎜⎜ − 0 + R + c ⎟⎟ x − ⎜⎜ − 0 + R + c ⎟⎟ y ⎬ + const. ⎝ mz0 mz R zc ⎠ ⎝ mz0 mz R zc ⎠ ⎪⎭ (2.32) となる。 上 2 式は {A( x 2 + y 2 ) + Bx + Cy}の形をしている。これは、式(2.28)から分る様に 14 球面波を表している。そしてその光源あるいは焦点位置が再生像点である。 ・ その点が乾板よりC側 ⇒ 虚像 ・ その点が乾板に対しCと反対側 ⇒ 実像 である。 式(2.28)、式(2.31)、(2.32)より直接像点 ( x1 , y1 , z1 ) 及び共役像点 ( x 2 , y 2 , z 2 ) が 求められる。 z1 = 1 µ m z0 − µ m 2 z R + 1/ zc 2 µx 0 µ µy y1 = 0 µ mz 0 − µx R mz R + xc / z c m 2 z0 − µ m 2 z R + 1/ zc mz 0 − µy R mz R + y c / z c m 2 z0 − µ m 2 z R + 1/ zc 1 z2 = 2 − µ m z0 + µ m 2 z R + 1/ zc x1 = − µx 0 −µ − µy 0 y2 = −µ x2 = mz 0 + µx R mz R + x c / z c m 2 z0 + µ m 2 z R + 1/ zc mz 0 + µy R mz R + y c / z c m 2 z0 + µ m 2 z R + 1/ zc (2.33) (2.34) (2.35) (2.36) (2.37) (2.38) これらは次のように書き直せる m2 1 m2 1 − = − µz1 z 0 µz c z R (2.39) x1 µ x0 ⎛ x c µ x R ⎞ ⎟ = +⎜ − z1 m z 0 ⎜⎝ z c m z R ⎟⎠ (2.40) y1 µ y 0 ⎛ y c µ y R ⎞ ⎟ = +⎜ − z1 m z 0 ⎜⎝ z c m z R ⎟⎠ (2.41) m2 1 m2 1 + = − µz 2 z 0 µz c z R (2.42) x2 µ x0 ⎛ xc µ x R ⎞ ⎟ =− +⎜ + z2 m z 0 ⎜⎝ z c m z R ⎟⎠ (2.43) y2 µ y0 ⎛ yc µ y R ⎞ ⎟ =− +⎜ + z2 m z 0 ⎜⎝ z c m z R ⎟⎠ (2.44) 15 m = µ = 1 とすると、これはレンズ公式と同じ形となる。 この結像系の倍率は、横倍率を Mlat 、縦倍率を Mlong 、角倍率を Mang として、 dx1 dy1 µ z1 m = = = 2 dx0 dy 0 m z 0 1 + m µ ( z 0 z c ) − z 0 z R M lat = ( M long = M ang = dz1 1 2 = M lat dz 0 µ (2.45) 直接像 d ( x1 z1 ) µ = d (x0 z 0 ) m M lat = − M long = ) µ z2 m z0 1 µ M ang = − = M lat (2.47) m 1 − m µ (z 0 z c ) − z 0 z R ( (2.46) 2 ) (2.48) 2 共役像 µ (2.49) (2.50) m となる。つまり、 ・ µ m = 1 のとき縦倍率=横倍率 また、式(2.40)、(2.41)、式(2.43)(2.44)中の( )内は定数で、これは、像点の x あるいは y 方向への偏位を示している。つまり ・ 上記等価レンズ系は偏心レンズ系である。 共軸レンズ系の条件は、 直接像: xc µ xR yc µ yR = , = zc m z R zc m z R (2.51) 共役像: µ xR yc µ yR xc =− , =− zc m z R zc m zR (2.52) である。 µ = m = 1 が通常であるが、それでも zO , zC , z R の相対関係で倍率はいろいろに 変化する。 16 Gabor の提案は m = 1, µ = 105 とした例である。 ホログラフィの歴史(3 次元画像) 1948 Gabor ホログラフィの原理の提案 電子顕微鏡のために発案 すべてが記録されたもの:Hologram + photography ∥ Holography(作者不詳) 1949 Gabor、可視光による実験 1962 Leith、Upatnieks、二光束法、レーザの応用 1966 Upatnieks 1969 Benton、レインボーホログラフィ 1973 クロス、 他、Bragg 形ホログラフィで3色カラー像 マルチプレックスホフログラフィー ----------------------------------------------------メモ---------------------------------------------------- 17 d.ホログラム中の干渉縞 ・ 基本式 右図の様に物体光O、参照光Rとも平面波の場合を考 x 乳剤層 R える。入射方向は x − z 面。このとき、両光の波数ベ クトルを k0 , k R 、位置ベクトルを r とすると、両光の θR z θO 位相項は、 φ 0 ( z , x ) = K 0 ⋅ r = k ( z cos θ 0 + x sin θ 0 ) (4.53) φR( z,x ) = KR ⋅ r = k( zcosθR + xsinθR ) (2.54) O 図 4.9 干渉じまの間隔の計算に 用いる記号 従って、 O( z , x, t ) = O0 exp{− jφ0 ( z, x ) + jω t} (2.55) R(z , x, t ) = R0 exp{− jφ R ( z, x ) + jω t} (2.56) ∴両光の干渉による強度分布 P ( z , x) は、 P( z, x ) = O + R = O0 + R0 + 2O0 R0 cos δ ( z, x ) 2 2 2 (2.57) ここで δ (z , x ) = kz (cosθ R − cosθ O ) + kx(sin θ R − sin θ O ) k = 2π λ' (2.58) (λ' : 乳剤中の波長) δ (z , x ) = 2mπ (m:整数) (2.59) の位置が最も明るく、従って最も感光する。 ・2 次元ホログラム z = 0 とおいて、 x = 2mπ k (sin θ R − sin θ 0 ) (2.60) が明るい位置。 ∴ ∆x = λ (sin θ R − sin θ 0 ) (2.61) が干渉縞の間隔 ・3 次元ホログラム 実際のホログラム用乾板は 5∼20 µm の厚さ 式(2.58)、(2.59)より ∴3 次元。 干渉縞の位置は 18 ⎡ cosθ O − cosθ R ⎤ mλ x=⎢ ⎥z + sin θ R − sin θ O ⎣ sin θ R − sin θ O ⎦ (2.62) ∴干渉縞が Z 軸となす角 ⎧ cosθ O − cosθ R ⎫ ⎬ ⎩ sin θ R − sin θ O ⎭ α = tan −1 ⎨ = O (2.63) θO −θ R 2 R R つまり図 2.10 に示す様に干渉縞の方向は 物体光と参照光の二等分角の方向!! 干渉縞と直角に計ったその間隔は ⎛θ −θO ⎞ d = ∆x ⋅ cos α = λ 2 sin ⎜ R ⎟ (2.64) ⎝ 2 ⎠ (a) OとRが同一方向から 入射するとき (b) OとRが逆方向から 入射するとき 図2.10 干渉じまの方向 e.三次元ホログラムと波長選択性 ・ ブラッグ回折条件 右図の様に媒質の状態変化が 層状にある場合の散乱光の生じる 角度 θ 2 は 2 つの条件で決る。 図 2.11 ブラッグの回折条件 ⅰ)ある層上の 2 点からの散乱光が強め合う:鏡面反射条件 θ1 = θ 2 (2.65) ⅱ)異なる 2 層の散乱成分が強め合う。 d = mλ 2 cosθ1 ( θ1 = θ 2 とした) (2.66) m = 1 として d=λ 2 cosθ1 (2.67) つまりブラッグ回折:波長選択性あるいは角度選択性を備えた鏡面反射。 図 2.10(b)のタイプのホログラムでは反射光が再生像を与え、上記ブラッグ回折により ・ 白色光再生で元の記録時の色の再生像が見られる。:白色光再生ホログラフィ ・ 白色光再生でカラー再生が可:白色光再生カラーホログラフィ ・ (記録時に 2 色あるいは 3 色のコヒーレント光で干渉縞を重ね焼きする) リップマンフラッグホログラム or リップマンホログラム or フラッグ形ホログラ ムと言う。 O 19 2.4 ホログラフィーの特性 a. 回折方向と回折効率 ・振幅形 2 次元回折格子 透過率分布を図 2.12(b)の様に 2πx ⎛ m⎞ m T ( x, y )⎜1 − ⎟ + cos (2.68) 2⎠ 2 d ⎝ とする。(Z=0 の面に置かれている) 図 2.12 振幅型二次元回折格子 平面波 Co e jωt が入射したとすると乾板右方向の振幅分布は、 mCO 2πx jωt ⎛ m⎞ cos C ( x, y, z = +0, t ) = C O ⎜1 − ⎟e jωt + e 2⎠ 2 d ⎝ (2.69) となる。 角度 θ ないし θ + ∆θ 方向への平面波成分の振幅を P (θ ) と書くと、 π /2 C ( x, y, z > 0, t ) = ∫ −π / 2 p (θ ) exp{− j (kx sin θ + kz cosθ ) + jω t}dθ (2.70) となる。P (θ ) は θ に関し不連続と仮定して、Z=0 において式(2.69)(2.70)が等しくなる様 にするには、 − jkx sin θ ∑ p(θ )e ∞ i =1 i i 2πx ⎛ m ⎞ mC O = C O ⎜1 − ⎟ + cos 2⎠ 2 d ⎝ 2π 2π j x − j x mC O ⎛ m ⎞ mC O d d = C O ⎜1 − ⎟ + e + e 2⎠ 4 4 ⎝ (2.71) 上式より θ i として 3 方向のみを考えれば良く、 ⎛ m⎞ p(θ 1 ) = C O ⎜1 − ⎟ 2⎠ ⎝ ⎛ 2π ⎞ θ = θ 2 = Sin −1 ⎜ ⎟ ; p(θ 2 ) = mCO 4 ⎝ kd ⎠ ⎛ 2π ⎞ θ = θ 3 = − Sin −1 ⎜ ⎟ ; p(θ 3 ) = mCO 4 ⎝ kd ⎠ θ = θ1 = 0 ; (2.72) (2.73) (2.74) であることが分る。これらが直接透過光、+1次回折光、−1次回折光である。 ±1次回折光の回折効率は η = {p (θ 2,3 ) C O }2 = (m 4 )2 (2.75) m ≤ 1∴η max = 1 = 6.25% が振幅形 2 次元ホログラムの最高効率である。 16 20 式(2.61)で ∆ x → d ,θ R = 0 とすると、d = λ sin θ 0 となり 2π = sin θ 0 となって、式(2.72)、 hd (2.73)よりホログラム作成時の波面が再生されることが分る。 図 2.12(c)の様な高次透過率の場合には、これをフーリエ展開して各項に対して上記の計 算を適用すればよい→回折光。 ・ 位相形 2 次元回折格子 透過率を T ( x, y ) = exp[ j{φ 0 + φ1 cos(2πx d )}] (2.76) とする。簡単のため φ 0 = 0 としよう。 Z = +0 における透過波の複素振幅は、 2πx ⎞ 2πx ⎞ ⎛ ⎛ C ( z = +0) = C O cos⎜ φ1 cos ⎟ ⎟ + jC O sin ⎜ φ1 cos d ⎠ d ⎠ ⎝ ⎝ ∞ ⎛ 2πx ⎞ n = C O J 0 (φ1 ) + 2C O ∑ (− 1) J 2 n (φ1 ) cos⎜ 2n ⎟ d ⎠ ⎝ n =1 ∞ 2πx ⎞ ⎛ n +1 + 2 jC O ∑ (− 1) J 2 n −1 (φ1 ) cos⎜ (2n − 1) ⎟ d ⎠ ⎝ n =1 (2.77) となり、式(4.71)と同様に θ =0 ; ⎛ 2π ⎞ ⎟ ⎝ kd ⎠ ⎛ 2π ⎞ θ = ± Sin −1 ⎜ 2 ⎟ ⎝ kd ⎠ θ = ± Sin −1 ⎜ ; p(θ 0 ) = CO J 0 (φ1 ) (直接透過光) (2.78) p(θ ±1 ) = jC O J 1 (φ1 ) (2.79) ; p(θ ± 2 ) = jC O J 2 (φ1 ) (±1 次回折光) (±2 次回折光) (2.80) となる。→高次回折波 η ±1 = p(θ ± 1) C O = {J 1 (φ1 )}2 (2.81) 2 φ1 = 1.84red で η max = (0.582) 2 = 33.9% 右図のようにすれば η = 100% も可能である。 ・ 3 次元回折格子 位相形なら吸収損がないので 理論最高効率は 100% 図 2.13 位相形二次元ホログラム 21 ホログラフィの解像限界 ホログラフィーの解像限界はホログラムが有限なための回折限界である。図 2.12 で D であるとして、 ホログラムの x 方向の幅が ⎧⎛ m ⎞ m 2πx ⎛ D D⎞ ⎜− < x < ⎟ ⎪⎪⎜1 − 2 ⎟ + 2 cos d 2⎠ ⎠ ⎝ 2 T ( x, y ) = T ( x ) = ⎨⎝ D D ⎛ ⎞ ⎪ 0 ⎜x < − , x > − ⎟ ⎪⎩ 2 2⎠ ⎝ (2.82) とする。一様入射光 C 0 を考えると、式(2.70)より π /2 COT (x ) = ∫ −π / 2 ∞ p(θ )e − jkx sin θ dθ ≈ ∫ p(θ )e j 2π x λ sin θ −∞ ここで k = 2π (2.83) dθ λ ,θ << π (近軸近似)、式(2.82)の偶関数性を用いた。 ∴ p (θ ) ∝ F [T ( x λ )] (2.84) となる。ところで、式(2.82)は、式(2.68)と次の 窓関数 ⎧1 (− D / 2 < x < 2 / D) T2 (x ) = ⎨ ⎩ 0 (Otherwise) (2.85) との積。一方 T2 ( x ) のフーリエ変換は t 2 (θ ) = sin (πDθ λ ) (πDθ λ ) (2.86) ∴式(2.86)と式(2.72)∼(2.74){これらは式(2.68)のフーリエ変換}とのコンボルーション により θ = θ1 = 0 付近に ⎛ 2π ⎞ ⎟ ⎝ kd ⎠ ⎛ 2π ⎞ θ = θ 3 = −sin −1 ⎜ ⎟ ⎝ kd ⎠ θ = θ 2 = sin −1 ⎜ ⎛ m ⎞ sin (πDθ λ ) ⎟ 2 ⎠ (πDθ λ ) ⎝ mC O sin (πD(θ − θ 2 ) λ ) ; p (θ ) ≈ (πD(θ − θ 2 ) λ ) 4 ; p (θ ) ≈ C O ⎜1 − ; p (θ ) ≈ mC O sin (πD(θ − θ 3 ) λ ) (πD(θ − θ 3 ) λ ) 4 (2.87) (2.88) (2.89) となり、図 2.13 の様になる。 つまり D ≠ ∞ であるための回折による広がり角 ∆θ は ∆θ = 2π D (2.90) 22 となり、ホログラムを再生像の距離を a とすると δ = a∆θ = 2aλ D (2.91) が解像限界を与える。 C.ホログラフィーの雑音 図 2.14 ホログラム寸法が有限である 主な雑音はスペックル雑音 場合の回折波振幅分布 ↑コヒーレント光学系においてしばしば見られる斑紋状雑音 ランダムな方向から物体表面あるいは像空間に達する異なる光束間の相互干渉によ り生じる空間雑音 2.5 ホログラフィによる 3 次元画像表示 a.3 次元画像表示技術としてのホログラフィーの特徴 ・長所 1) 両眼視差、ふくそう、目の調節のいずれにも矛盾しない唯一の方法 2) 情報がホログラム中にばらまかれている 3) 極めて高い情報記録密度 ・欠点 1) 記録再生に暗室を必要とする 白色光撮影ホログラフィ ・ holocoder-hologram 2) 物体は通常静止している必要あり ・ holographic-stereogram ・ multiplex-holography 3) 再生光は単色光 白色光再生ホログラフィ 4) レーザの出力・価格のため大物体・ 大再生像は困難 ・ ベネチアンブラインド法 ・ リップマンホログラフィー ・ イメージホログラフィー 5) スペクトル雑音 ・ レインボーホログラフィ (・カラーホログラフィー) 23 6) 高価な高分解機能乾板が必要 投写形ホログラフィー 7) 視野・視域の拡大のため 大きなホログラムが必要 情報量低減形ホログラフィー 8) ばく大な情報量=冗長度 以下にこれらのうちから、比較的実用性の高いリップマンホログラフィー、イメージ ホログラフィー、レインボーホログラフィーについて述べる。(いずれも白色再生) その前に b.最も基本的なホログラフィー これまでの議論で M 再生用照明光 HM 明らかな様に再生像は 2 つできる。 ホログラム レーザ 参照光 直接像:虚像 orthoscopic image −1次 である。 物体光 ホログラム乾板 共役像:実像 psudoscopic image 図 2.15 ホログラムの作成と再生 である。∴凹凸が逆になる! c.リップマンホログラフィー 体積形・反射形ホログラフィーであり、ブラッグ回折の波長選択性により白色 光再生、更には白色光カラー再生が可能。 d.イメージホログラフィー 参照光 物体光 レンズ 図 2.16 イメージホログラフィ +1次 24 ホログラム面上に結像させた像をホログラフィックに撮影する。 <特徴> ・ 色分散小 R(zR , xR ) ・ 広がりのある光源を用いてもぼけが小 O(zO , xO ) x C(zC, xC) 右図で考えよう。ここで O (xO, 0, zO) :物点 R (xR, 0, zR) :参照光点 C (xC, 0, zC) :再生光点 l (xl, 0, zl) :再生像点 z l(zl , xl ) 図 2.17 イメージホログラムの解析 4.3 節の式より m = 1 とおいて に用いる記号の定め方 1 1 1 1 − = − µz1 z 0 µz c z R (2.92) x ⎛x x1 x ⎞ = µ 0 + ⎜⎜ c − µ R ⎟⎟ z1 z0 ⎝ zc zR ⎠ (2.93) 参照光、照明光とも同一方向からの平面波とすると、 zc = z R = ∞, xc = xR , xR z R ≈ θ として z1 = 1 µ z0 (2.94) ⎛1 ⎞ x1 = x0 + ⎜⎜ − 1⎟⎟ z1θ ⎝µ ⎠ (2.95) 光源にスペクトル幅があるとして µ = 1 ± ∆µ とすると x1 − x0 = ± z1θ ∆µ (2.96) となる。つまり z1 の小さなイメージ形では白色光再生時のぼけが小さいことが分る。 次に、光源がひろがりを持ち、 xC = x R ± ∆S とすると µ = 1, Z c = Z R として、 z1 = z 0 x1 = x0 + (2.97) z1 (xc − x R ) zR ∴ x1 − x0 = ± z1 ∆S = ± z1 ∆θ zR (2.98) (2.99) となって光源のひろがりによるぼけも小さいことが分る。 イメージホログラフィーの欠点は視域(観察しうる視点の範囲)が結像系の F 数で決め られることである。 25 e.レインボーホログラフィー 2 段階の作成課程 第1のホログラム スリット 再生光 (レンズ) 第2の ホログラム 赤い像 再生照明光 (白色光) 青い像 実像 スリットも再生 される 参照光 (a) ホログラムの作成 (b) ホログラムの白色光再生 図 2.18 レインボウホログラフィ 1 段階:通常のホログラムを作る(図 2.18) 2 段階:上記ホログラムを再生、共役像(pseudoscopic image)を第 2 の乾板に記録する。 このとき、第 1 のホログラムには横長のスリットかける。⇒縦方向視差を犠牲にする。 H2 用の参照光は上下方向にかたむける。 再生:H2 に R2 と共役(方向が全く逆)の光をあて、直接像(実像)を再生する。 このとき撮影時のレーザを用いると、視域は上記のスリット部分のみ。白色光で再生す ると、目を上下にすると像の色が変化する。 (名前の由来)しかし色ずれは生じない(ス リットのため) 一般に人間にとって縦方向視差は横方向視差より価値が少ない。 2.6 まとめ ホログラフィーは 3 次元画像表示技術以外に 再生照明光 (白色光) ・ 情報処理 赤 ・ メモリ 青 ・ 合成開口レーダ ・ 計測 青い像 ホログラム 等にも用いられる。 赤い像 図 2.19 白色光再生による色ずれ