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縄文人からのメッセージ
道庁ランチタイムセミナー 平成23年12月12日/会場:道庁1階道民ホール交流広場 『縄文人からのメッセージ』 大 島 直 行 (伊達市噴火湾文化研究所所長・札幌医科大学客員教授) はじめに-縄文人からのメッセージに耳を傾けよう- 私たち人類は、長い歴史の中でさまざまな文化をつくってきました。大雑把に言いますと、私 たち人類の祖先である猿(類人猿)と私たちを分けているのは文化です。人類のみが文化を作り 出してきたのです。そしてこの文化は、長い間、自然環境と共存関係を築いてきたのですが、し かし、ある時から対立する関係になってしまいました。農耕文化の登場です。この文化が発達す るほどに自然環境は人間によって傷付けられてきたのです。 ところで、考えてみると、自然環境を傷付けてきた文化は、実は「物質文化」とばれる文化、 言うなれば「物」をつくり出す文化だったのです。特に、農耕社会の拡大とともに物資文化は発 達を遂げてゆきました。しかし、人類がつくり出した文化は、この物質文化だけではなかったは ずです。そうです、私たち人類が長い歴史の中で手に入れたもう一つの文化があるはずです。そ れは「精神文化」と呼ばれる文化、言うなれば「心」をつくる文化です。私たちの先祖は、農耕 を行なうまでは、物作りに逸る気持ちを「心」でコントロールし、環境(自然)と文化(人間) の調和をうまく図ってきたのです。この日本列島で、長い間そうした心の文化を育んだ人々、そ れが今日お話する「縄文人」なのです。 私たちが暮らす現代社会はどうでしょうか。地球規模で進む環境汚染や自然破壊はもう限界に きています。今、マスコミなどで盛んに取り上げられているエネルギー問題も、人類の生存に関 わる大きな課題として、その対応は一刻の猶予もなりません。私たちは、こうした深刻な状況に 何とか歯止めをかけなければなりません。 幸い 、私がお話しする縄文人は、「環境と文化の調和」を図る達人として、今世界が注目し だしています。地球規模で押し寄せる環境破壊にブレーキをかけるために、彼ら縄文人が1万年も の長きにわたって育んできた叡智に耳を傾け、心をつくる文化を取り戻そうという機運が、日本 だけでなく欧米においても高まりつつあるのです。縄文文化に真摯に向き合い学ぶことで、希望 に満ちた人類の確かな未来が見えてくるはずです。 Ⅰ.なぜ私は「縄文」にこだわるのか 1)縄文人は私たちの「祖先」だから ・アイヌも琉球人も和人(日本人)も祖先は縄文人 ・より多くの縄文遺伝子を受け継いだのがアイヌ民族 2)縄文人からのメッセージが聞こえるから ・「人間とは何か」「真の豊かさとは何か」を問いかける ・「自然との共生」は人間の本来の生き方 *知的な行為 Ⅱ.考古学者が語らない縄文人の真の生き方 1)技術的な革新を望まない=「取り過ぎない」生き方 ・ナベ(土器)やナイフにも「カミ」が宿る *カミ=God ではなく Spirit ・技術を研ぎすまさない *「タブーTaboo」という文化装置 2)生産力の増大を望まない=自然と「共生する」生き方 ・農耕、栽培、牧畜をしない *家畜化しない ・自然(動物、植物、月)と仲良く生きる *「神話」という文化装置 3)社会的な拡大を望まない=「争わない」生き方 ・ムラを大きくしない *「100 件 500 人説」は現代人の妄想 ・嫉妬しない、嫉妬させない *「嫉妬の回避」という文化装置 4)安定社会を目指す=技術的・経済的発展を望まない生き方 ・精神文化の拡大(土器、土偶、貝塚、環状列石)*縄文文化の本質はここにある Ⅲ.縄文人からのメッセージ 1)体に刷り込まれた「しぐさ」の遺伝子 ・「蹲踞(そんきょ)」*渋谷の「ヤンキー」 ・「ナンバすり足」*チンパンジーの遺伝子 2)心に刷り込まれた「カミ」の遺伝子 ・「神話」と「民話」 *「月の神話」の重要性 ・「タブー」と「迷信」*茶津貝塚の奇跡 3)生活に刷り込まれた「暮らし」の遺伝子 ・「里山システム」 ・生物多様性の中で生きる *世界に誇れる暮らしのシステム ・「家畜化をしない」という縄文遺伝子のなせる業 ・「爺婆・孫システム」 ・持続可能な家族環境の確立 *入江貝塚の奇跡 Ⅳ.縄文的生き方のすすめ 1)自然と「共生する」*科学に頼りすぎない ・海、山、川、月と仲良く生きる *「神話的世界観」を取り戻す 2)「物へのこだわり」から逃れる ・技術を研ぎすまさない *「もの」に命を感じる 3)決して「手を付けてはいけない」ものを持つこと *それが縄文哲学 最後に一言.縄文文化は人類の確かな未来を約束する(安田喜憲) 1)世界文化遺産としての縄文 ・「高い精神性」に普遍的価値 *これぞ「人類共有の遺産」 2)知的観光資源としての縄文 ・これからの観光の要 *知事公約「(仮称)北海道縄文道民会議」