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平成 27 年度 新潟大学医学部・歯学部訪問レポート
平成 27 年度 新潟大学医学部・歯学部訪問レポート 1 目 的 新潟県の医歯学の大学研究施設の訪問研修を通じ、最先端の医療施設、医療技術に関 する知見を広げる。また、医師の講演を聴いたり実習体験したりして、高い動機付けを 行うとともに、医療に従事する倫理観の涵養を図る。 2 日 程 8月5日(水)新潟大学歯学部 8:15 新潟高校正面玄関前に集合・点呼 8:20 学校出発(徒歩で新潟大学歯学部へ) 8:50 歯学部玄関に集合 9:00~ 9:20 9:20~10:20 歯学部長挨拶及び歯学部の概要説明 (引率教諭:泉田、高橋) 歯学部長 11:30~11:50 新潟高校 OB 学生との懇談 11:50~12:00 質疑応答(終了後は現地解散) 8月6日(木)新潟大学医学部 12:40 新潟高校正面玄関前に集合・点呼 12:45 学校出発(徒歩で新潟大学医学部へ) 13:20 新潟大学医療人育成センター着 14:00~16:00 教授 寺尾 豊 教授 井上 誠 教授 歯学部講堂 模擬講義2「摂食嚥下障害とその治療」 13:30~14:00 健康 歯学部講堂 模擬講義1「口の健康と微生物学:観て考えて」 10:30~11:30 前田 (引率教諭:石沢、西條) 開会式(司会:伊藤正洋先生);医療人育成センター2階セミナー室 開会のあいさつ 牛木 辰男 医学部長 医学科についてのお話し 竹林 浩秀 入試委員長 本日の予定・注意事項 伊藤 正洋 先生 3班に分かれて実習 1班:シミュレーター→外科実習→救急・ドクターヘリ 2班:外科実習→救急・ドクターヘリ→シミュレーター 3班:救急・ドクターヘリ→シミュレーター→外科実習 ※シミュレーター(髙橋昌先生),外科実習(若井俊文先生),救急(本多忠幸先生) 16:10~16:40 模擬講義 16:40~17:00 閉会式;医療人育成センター2階セミナー室 (終了後は現地解散) 神吉 智丈 先生 歯学部訪問で学んだこと 新潟大学歯学部は 1965 年に設置された。歯学部は二つの学科から構成されている。一つは歯学科で一つは 口腔生命福祉学科である。 超高齢化社会の到来により歯の形成の回復を望む健常者型の患者が減少し、口腔機能の回復を望む高齢者型 の患者が増加すると予想される。この変化に伴い自立度の低下、全身的な疾患、加齢による口腔内の変化、歯 の喪失のリスク増加が懸念される。つまり治療の難度・リスクが増加するのである。これからの歯科治療需要 は介護に重点が置かれると予想できる。 また新潟大学歯学部を訪問して、二つの模擬講義を受けてきた。 ◎模擬講義1「口の健康と微生物:見て考えて」 歯の病気には大きく分けて虫歯と歯周病がある。歯周病とは歯と歯茎の間から入ったバイ菌が、歯肉に炎症 をひき起こし、さらに、歯肉の中にある歯槽骨を溶かしてしまう病気である。 歯周病になるメカニズムは歯 垢や歯石がたまり歯と歯の間や歯と歯肉の間に細菌が繁殖し、そこが炎症を起こして歯肉炎になり、歯茎から 出血するようになり、歯肉だけに起きていた炎症がさらに進行し歯の根と歯肉がはがれ、歯槽骨が溶けるよう になる。こうなってしまうと歯がぐらぐらしだし抜け落ちてしまったりする。歯周病は高齢者の病気ではなく 若年性の歯周病や遺伝性の歯周病もある。歯科医師が検診などで患者のことをよく見てさまざまな可能性を考 えることで病気に気付けたり、進行を抑えたりできるのである。歯とは一生使うもので、抜けてしまったら取 り返しのつかないものである。歯の病気は全身疾患につながるため病気になると体の様々な部位で弊害が起き てしまう。だからこそ歯科医師が患者をしっかりみて考えることが必要なのである。 ◎模擬講義2「接触嚥下障害とその治療」 物を飲み込んだ時に正常な場合は食道に流れ込むが、接触嚥下障害の場合気道に入り込んでしまう。これを 誤嚥という。むせない誤嚥も多く、自覚症状がないため気づくのが遅く、むせる誤嚥より肺炎を引き起こす確 率が高いと言われている。誤嚥が原因で起きる肺炎を誤嚥性肺炎という。肺炎自体は手術などで治るが誤嚥が 治っていないため誤嚥性肺炎は再発してしまうのである。高齢者の楽しみの一つに食事がある。それなのに接 触嚥下障害のせいでせっかくの楽しみが苦しいものとなってしまうのである。そこで行われた治療として、人 間の体の機能を鍛えて向上させるというものがある。物を噛んで飲み込むのに必要なあごの筋肉、喉の筋肉を 鍛えたところ誤嚥の症状が改善された。医療に頼り切らないで自分の体から直すことで症状を和らげることも 可能なのである。 ほとんどすべての科がこの接触嚥下障害にかかわっている。つまり人体の器官同士は一見関係がなさそうに 見えてもすべて密接につながりあっているので、誤嚥が他の病気を引き起こす原因となってしまうのである。 ◎感想 新潟大学歯学部歯学科には姉が通っており、また私の父、祖父、叔父もみな歯科医師なので歯学部にとても 興味があった。模擬講義の内容はとてもわかりやすく、私はほとんど歯に関する知識がないがよく理解できた。 先生方が強調して仰っていたことに口腔内の疾患は全身の疾患につながるということがあった。たとえば接触 嚥下障害が誤嚥性肺炎を引き起こすなどである。日本はアメリカなどと比べて歯に対する意識が低いと思う。 歯のケアは見た目をよくするだけでなく体の健康にもつながるのである。日ごろから歯をよく磨いたり定期検 診に行ったりすることはとても大切な手立てなのだ。 今回の訪問で歯学部に対してより一層興味が持てたのでよかった。 医学部訪問で学んだこと ◎医学部について:新潟大学医学部の説明。 ①医学部生の進路:臨床医、医学研究者・教育者、医療行政官(WHO、厚生省など)になる。 ②どんな人材の育成を目指しているか:医学を通して人類の幸福に貢献するような人材。医学知識・技術・判 断力を素に豊かな人間性、全人的医療、チーム医療、国際性、研究心、主体性、強い向学心、高い倫理性を兼 ね備えた、バランスの取れた医師の養成を目指している。 ③教育の特徴:少人数教育を重視、臨床実習の充実、海外で活躍できる医師の育成、研究力の育成、教授と学 生のタイトなつながり、多彩なクラブ活動、卓越した最先端の医学研究、学生の意見に基づいた教育改善など が特徴的である。 ◎実習:シミュレーターを体験したり外科実習をしたりドクターヘリに搭乗したりした。 ○シミュレーター:外科医師が手術の練習をシミュレーターで行う。今回体験したシミュレーターはエコーで 体の内部を見るシミュレーターや、気管にカメラを入れるシミュレーターや、冠動脈カテーテルをいれるシミ ュレーター、大腸にできた穴をふさぐシミュレーター、機械で縫合針と糸をもって実際に縫合するシミュレー ターなどであった。シミュレーターはゲーム感覚で行える。練習している人は様々なシチュエーションに応じ た対応をしなければならない。これらのシミュレーターで十分に手術の練習をしてから現場で実際に患者の手 術をするのである。 ○外科実習:外科実習では縫合の仕方と糸の結び方を習った。縫合針は折れやすく、曲がりやすい。縫合は簡 単なように見えてとても緻密な作業であると分かった。糸を結ぶことも固く結ぶことが難しかった。 ○救急・ドクターヘリ:新潟大学病院に常駐していて緊急医療を専門とする医師と看護師が搭乗している。出 動要請があれば 5 分以内に出動し、現場で治療してから病院に搬送するという仕事をしている。ドクターヘリ は維持費がとてもかかる。24 時間 365 日飛べるようにするために年間約 2 億円かかっている。新潟県が 2 機 目のドクターヘリを導入することは決定している。新潟県内で最も出動要請がある地域は十日町のあたりであ る。ドクターヘリの出動頻度の平均は一日に約一回である。 ◎模擬講義 オートファジー(自食作用)についての講義であった。オートファジーとは細胞が細胞内のたんぱく質を分解 するための仕組み、つまり自分を食べて生きる仕組みのことである。オートファジーの役割には飢餓応答、細 胞内異物の除去、オルガネラの恒常性維持などがある。飢餓応答について:オートファジーとは細胞内凝集体 の浄化機構である。オートファジーができないマウスは神経変性疾患を発症するため異常たんぱく質や凝集体 が分解できず蓄積してしまう。オートファジー不能マウスは肝機能障害と肝腫瘍を発症する。細胞内異物の除 去:細胞内の感染生物の分解除去を行う。オルガネラ(細胞小器官)の恒常性維持:異常なミトコンドリアを分 解する。 ◎感想 今回の新潟大学医学部訪問でわたしは多くのことを得られたと思う。今まで医学部を目指してはいたが実際 に大学に入って話を聞くことや、病棟を見たりしたことがなかった。集中治療室の前の廊下も歩いたがその緊 張感に圧倒された。医師とは人の命を救う職業であるということを再認識できたように思う。またドクターヘ リに乗せてもらったり、シミュレーターを実際に体験させてもらったりなど貴重な経験がたくさんできた。そ して改めて医師になり働きたいと思った。これからも医学部医学科に入ることを目標に頑張っていこうと思う。 医学部訪問で学んだことと感想 今回の医学部訪問では新潟大学医学部医学科に関する説明、三班に分かれての実習、模擬講義、質疑応答な どがありました。私は医学部医学科を目指しているのでどれもとても面白く、興味深くて有意義なものでした。 医学部や医師に関する説明で、まず最初に医学部を卒業して医師になった後の仕事が臨床医と研修医だけで はなかったということが意外でした。医師になってからの進む道としてほとんどの人が臨床の道へ行き、わず かな人が研究の道に行くということは知っていたのですが、そのほかにも医師として教育や行政に携わる道も あるというのは、そのような仕事があるとは知っていたものの今まで自分の頭の中で医学と結びついていなか ったので、今回の医学部訪問で初めて気づいたことでした。また、 「医学を通して人類の幸福に貢献する」と いう理念に基づいた教育や、少人数教育の重視、米国医師国家試験の取得などの新潟大学医学部の特徴や魅力 も聞くことができたことも良かったです。特に1人の教授に12人の学生しかつかないという少人数教育はこ れまででは考えられないことだったそうで、新潟大学医学部の大きな魅力の一つだそうです。 説明の次には大学や病院内をまわって3つの実習をしました。私にとって今回の医学部訪問で最も印象的だ ったのはこの実習でした。 まず外科実習をしました。針を使った縫合と自分の手で糸を結ぶ体験をしました。針を使った縫合は先生の お手本がとてもスムーズで簡単そうに見えたのですが、実際にやってみると針を狙いどおりの場所にさしたり 毎回自分が持ちやすいようなところを器具で掴んだりするのが難しかったです。また、糸を結ぶのも糸がたる まない状態を保ったまま何重にも結ぶのが難しかったです。 次に、救急・ドクターヘリの見学をしました。ドクターヘリでは県内どの地域であっても遅くても40分以 内には患者のもとへ到着することができ、ドクターヘリの特徴、強みは重症な患者を素早く大病院に搬送でき ることや、医師が搭乗して診察、治療をすることによって初期対応や病院に搬送されてからの治療などが素早 く正確にできることだそうです。ドクターヘリだけではその中で使える空間の広さや器具が制限されてしまう のですが、そこから病院に搬送するまでのスムーズな流れはとても重要なことなのだそうです。ここ数年テレ ビなどでドクターヘリという名前はよく耳にするようになりましたが、私が幼かった頃にはあまりなじみのな かったドクターヘリが今は一般的になっているという状況を実際に間近で見てみて、ここ数年の医療の著しい 進歩が感じられたように思いました。 そして最後に、シミュレーターを使った手術の体験実習をしました。エコーを使った検査のシミュレーター、 内視鏡のシミュレーター、カテーテル手術のシミュレーター、映像を見ながら体内に器具を入れて行う手術の シミュレーター、両手に器具を持って縫合するための練習台などがありました。これらの様々なシミュレータ ーはどれもとても精巧に作られていて、実際の手術に限りなく近くなるようにできているのだそうです。これ らのシミュレーターのメリットは何度失敗しても大丈夫であり、患者が人間ではないために誰も苦しい思いを しなくて済むことだそうです。私は実際にカテーテル手術のシミュレーションをやってみたのですが、映し出 されている映像や使っている器具はシミュレーションとは思えないほど精巧にできていてとても驚きました。 昔は人に協力してもらい練習させてもらっていたのが、今はその必要がなく、しかもどんな状況にでも設定、 練習できるというところにも医学の進歩が感じられました。 私が今回の医学部訪問で一番思ったことは、医学にも最先端の技術が次々に取り入れられていて日々医学が 進歩しているということです。数年前までほとんど知らなかったこと、無かったことが現在では広く存在して いるということが当たり前のようにあり、逆に数年後には今はない技術、知識が一般的なものになっているの かもしれないと考えると、この進歩のスピードは本当にすごいと思います。また、今回の医学部訪問で私が今 まで漠然と考えていた医学像というものが少しクリアになり、さらに実際に医学部でやることや医師の仕事を 間近で見ることができて医学部を目指したいという気持ちがさらに強くなりました。今回学んだことを受験に 少しでもいかすことができるよう頑張りたいと思います。 歯学部訪問で学んだことと感想 今回の歯学部訪問が私にとって初めての医療系の大学からの講演会だったので、様々な話が聞けて良かった です。 まず、新潟大学歯学部全体の話や、歯科医師についてなど、歯学や医療全般についての話がありました。話 を聞いて最初に驚いたのは、新潟大学の歯学部が全国的にも古い学部であるということと、新潟大学歯学部の 成績が全国的に見てもとても優秀だということです。新潟大歯学部は1965年に全国で3番目の国立大学歯 学部として設置され、研究費も全国で3番目に多いということで、全国的に見てもとても歴史があり優秀な歯 学部だということがわかりました。次に、歯学科の設置の理念についての話が少しあった後、高齢社会と歯学 の関係に関する話がありました。説明がある前は高齢化と歯に関して何の関連があるのか想像がつきませんで したが、虫歯、入れ歯など、たくさんのことで歯科医師が必要になっているということ聞いて納得しました。 体が不自由な高齢者にとっては普段私たちが何気なくとっている食事なども数少ない楽しみの一つであり、歯 や口などの治療をするときにどのようにしてその楽しみを奪わずに治療をするかということが大切だそうで す。その後、少子化など、大学教育にかかっている諸問題についての話があった後に、医療人に求められる資 質、医療人を目指す人へのアドバイスがありました。医療人に求められる資質は、①人間性が豊かなこと ② 患者中心、患者本位の立場に立つこと ③多様な環境の中で育つこと ④生涯学習すること ⑤地球人として 活動すること であり、医療人を目指す人へのアドバイスとしては、基礎学力をつけることや人間性の向上に 努めることなどがあげられました。 医療系全般に関するお話はこれくらいだったのですが、医療人に求められる資質の ④生涯学習をする と いうことに関して、興味深いお話があったので少し紹介します。 今回お話してくださった先生の患者さんの中に、歯を支える骨が溶けてしまう病気にかかってしまっていた 女性がいたそうで、驚くことに、その女性の年齢は私たちと同じ17歳だそうです。彼女はそれまでその病気 に気付けず、その病気が進行してしまったせいで奥歯のほとんどと前歯の一部を抜かなければいけないかもし れないという状況だったそうです。それを見て先生が思ったことが、「④をすべての医療人が実践できていれ ば…」ということだったそうです。その病気は若い人に多く、家族性で、菌によるもので、症状が奥歯もしく は前歯からでやすいということなのですが、それまでこの女性を見てきた先生方にこの知識があればそこまで ひどくなる前に手を打つことができたかもしれないというのです。実際、今回の件に関しても、病気が進んで しまった女性を完治させることは難しかったけれども、彼女の妹さんが同じ病気で苦しむことを病気の早期発 見によって防ぐことができたそうです。 また、子宮頸がんワクチンについても同様に医師の知識不足によって副作用に関するトラブルが起きたそう です。これも先ほどと同じく、私たちと同年代の多数の女性が副作用についての説明を医師から受けず、何の リスクも知らないままでワクチンを接種して、体が動かなくなるなどの重大な副作用に苦しめられてしまった そうです。さらに悲しいことに、医師もその副作用について知らない、詳しくないということで副作用が発症 してからもその治療が受けられずにそれらの女性は精神的にも苦しめられてしまったそうです。この件に関し ては医師一人一人が患者のたちが担って患者と接することも大切だったのではないかと思います。 今回これらの話を聞いて、もし医療系の仕事に就くことができたとしてもただ何も考えずに教科書に書いて あることを暗記するのではなく、興味を持って自分からその話を調べられるように実際のことを考えて勉強す ることが大切であり、また、自分が大学を卒業した後でも最先端の医療についていけるように生涯学習をする こともとても重要だということがわかりました。また、人の気持ちになって考えるということが医療の世界で は人の人生を左右することもあるということを知って、思いやりの心が大切であることを改めて実感すること ができました。医療人としてふさわしい人格、学力が身に着けられるようにこれからも頑張っていこうと思い ます。