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ケーブル自動切断機の開発 ケーブル自動切断機の
ケーブル自動切断機の開発 - 「第二種電気工事士」資格取得指導に向けて 「第二種電気工事士」資格取得指導に向けて - 情報電子科 鈴木嘉春 1 はじめに 2.研究の概要 .研究の概要 全国の工業高等学校で電気系の学科を有する所は, (1)ケーブル自動切断機の概要 その多くが第二種電気工事士の資格指導を行っている。 ①セットした 100m 巻のケーブルを,設定した長さと この資格は技能試験があり,屋内配線の模擬回路を規 本数に自動で裁断する 定時間内に作成しなければならない。合格するために ②技能試験で用いる VVF,VVR,IV,EEF など多種ケー は経験と修練が必要で,この指導には大量のケーブル ブルに対応する を必要とする。 ③線径は技能試験で用いるφ1.6~2.0mm に対応する ④なるべく簡単な機構で,他校でも複製できることを 目標とする ⑤刃部分が駆動するので安全に利用できる機構とする 図 1 技能試験課題の例 図 2 技能試験練習の様子 回転台 VVF ケーブル このような 100m 巻ケーブルを 人数分裁断する 送りローラー 指導に当たっている多くの学校では100m 巻のケー ブルを購入し,課題毎に異なる長さに裁断して生徒に 配布する。この作業が非常に大変であり,例えば生徒 カッター 40 名が受験する場合,指導が終わるまでに採寸・裁断 制御基板 の作業をのべ 5000 回以上繰り返すことになる。学科 の職員総出でこの作業を行ってやっと間に合う状態で 操作パネル あり,怪我も絶えない。かく言う私もペンチを片手に 裁断作業をしている最中に指を挟んでしまい,全治 2 図 3 ケーブル切断機の構造 ヶ月の怪我を負った。傷は治ったが今も時々痛む。 そこで,ケーブルの裁断を自動で行う装置があれば 特に④は今回の開発にあたって重点としたところで 安全で迅速な資格指導が行えると考え,開発に取り組 あり,第二種電気工事士の資格指導を行っている全国 むことにした。この作業を自動化することで教員の時 の工業高校で,容易に複製できるよう,次の点に留意 間を生徒の指導の方に当てることができ,合格率を上 した設計とする。 げることにもつながる。 ・設計図,部品リスト,回路図,プログラムソースは 公開することを前提とする 3.設計 ・入手しやすい汎用部品を使用する (1)設計概要 ・工業高校の設備,道具で可能な加工方法のみとする 図 3 のように,ベニヤ板上にケーブル裁断機構,ケ ・シンプルで故障しにくく,メンテナンスが容易な設 ーブル送り機構,操作パネル,電源回路を搭載した構 計とする 成とする。 ・切断部の安全性を確保する (2)部品の選定 ・図面,手順書,部品が揃えば,生徒が課題研究等で 複製を前提とするため,構成部品は基本的にどこで も製作できる構成とする。 も入手可能な汎用部品を使用する。ホームセンター, ・技能試験では数種類のケーブルを使うため,この装 通信販売等で,型式やメーカーを特定すれば注文可能 置も2~3台製作し,それぞれのケーブルはセットし なものに限定した。 たままにする運用方法が望ましい。そのため複数台を (3)制御回路 重ねられる箱形形状とするほか,重ねてもケーブルの 重量に耐えられる構造とする。 モータの駆動は確実性を優先してリレー制御とした。 電源は AC100V から DC12V と DC5V を生成し駆動 用と制御用とする。ケーブル長や本数の表示は 7 セグ (2)開発項目 メント LED アレイを,設定には通常のアナログボリ ・送り部:ケーブルを所定の長さまで引き出す機構 ュームを A/D 変換して利用する。これらの制御全体は ・裁断部:太いケーブルを安全に自動で切断する機構 多ポートを備えるPICで行う。 消費電力は最大で50W ・操作部:長さや本数をセットするパネル ほどとなった。 ・制御部:モータやカッターを駆動制御するボード ・電源回路:全機構に電源を供給する回路 4.研究内容 (1)ケーブル裁断機構の試作 (3)同等品の調査 この装置で一番困難と思われるケーブルの裁断機構 市販のケーブル自動切断機で VVF ケーブルに特化 の試作から始めた。まず,太くて硬い VVF ケーブル したものは見あたらず,似たようなものでも高価なこ をモータの力で裁断できるかどうかをテストした。使 とから,学校で電気工事士指導用に導入することは難 用するモータは廃品の車のワイパーモータなどを試し しい。なるべく既製品の材料で安価に作成でき,部品 てみたが,入手性に難があるためタミヤのギアドモー 表と設計図があれば他校でも複製可能なものを目指し, タとした。 全国の工業高校で利用できるようなものを開発しよう と考えた。 ナイロン製のラックを円周に取り付けたクランク板 を,30 歯のピニオンを装着したモータで回転させる。 市販のケーブルカッターの柄を片側だけ固定し,もう (4)予算の確保 片方をクランクで上下させることで切断する(図 4) 実はこの研究は平成 24 年度から開始しており,平 成 25 年度の課題研究で生徒の課題として取り組んだ こともある。その際は安定して稼働するまでには至ら なかったが,必要な部品の多くは購入できた。不足分 は平成26 年度のげんでん支援事業に申請したところ, この研究が認められたので,助成金として充てること が出来た。 図 4 裁断部 クランク径φ147mmでVVF1.6-2芯, 1.6-3芯, 2.0-2 ケーブル引き出し長のカウントには図 6 のようなカ 芯が容易に切断できるトルクがあったが,クランク径 ウンタディスクを送りローラーに取り付け,反射型フ が小さいとカッターの開口部が小さく,ケーブルが引 ォトインタラプタで回転数をカウントする。ローラー っかかる恐れがあったので,φ280mm のもので再度 の直径とカウント数から,引き出したケーブル長を算 試作した。するとカッターとケーブルのクリアランス 出する。単純な仕組みだが,カッターセンサーと同じ は確保できたが,全高が高くなってしまい,装置が大 回路で検出が出来る上,引き出し長の誤差は±5cm 型化してしまった。しかし電動でケーブルを裁断する 以内に収まっている。技能試験のケーブル用としては ことには成功したので,試作 2 号機以降で小型化に取 十分な精度である。 り組む。 図 4 ではカッターの固定柄が下側になっているが, これだと裁断時に下の刃がケーブルを押し上げてしま い,次のロード時にケーブルが引っかかってしまう問 (3)制御回路の試作 ブレッドボードで回路を試作し,制御プログラムを コーディングして動作を確認した。(図 8) 題が起きたので取り付け方向を逆にした。 また最大開口点で停止するようにセンサを取り付け た。センサは当初透過型のフォトインタラプタを用い たが,加工精度が荒くても確実に動作するよう,反射 型に変更した。(図 5) 図 5 カッターセンサー 図 6 カウンタディスク 図 8 試作制御回路(ブレッドボードモデル) ボリュームで長さと本数をセットし,スタートボタ (2)ケーブル送り機構の試作 裁断機構以上に,ケーブル送り機構の開発は困難を ンを押すとケーブルの送りと裁断が自動で繰り返され る。裁断が終わるとブザーが鳴り停止する。ケーブル 極めた。100m 巻の VVF ケーブルをターンテーブル の手動送りや巻き戻し, 緊急停止などの機能も備える。 上に乗せ,送りローラーで挟んで引き出す方式とした 回路については大きな問題もなく動作したので,後 が,ローラーの滑りやねじれの問題の解決に時間がか の量産化のため,配線パターンを製作中である。 かった。試作初号機では未だ時々誤動作するため,現 在改良中である。 図 7 ケーブル送りローラー 図 9 制御基板(試作 2 号機) 5.試運転 (キ)制御プログラムの効率化 試作初号機は平成 26 年 7 月中旬に全要求項目の動 (ク)製作手順書の作成 作が確認できたので仮組の状態で試運転に入った。ケ (ケ)動作確実性の向上 ーブルの滑りとねじれで時々停止することはあったが, (動作時の滑り,詰まり,送り長誤差の最小化) 概ね狙い通りの動作が確認できた。何点かの改良は必 要であるが,概ねこの設計コンセプトでケーブルの自 まだまだ改良の余地はあるが,図面を見て第三者が 動裁断が可能であることを実証した。この装置を使用 複製品を製作できる段階には近づいている。更に改良 して今年度の技能試験指導において,実際にのべ数十 を加え,今後完成したものは学校 Web サイト等で公 人分のケーブルを供給した。 開していきたい。 6.今後の課題 試作初号機の動作で明らかになった問題点は以下の ようなものである。 ・ケーブル送りの滑り,ねじれ,詰まり 7.参考文献 7.参考文献 ・ケーブル送りガイドの位置と精度 ・8ピン PIC マイコンの使い方がよく分かる本 ・送り機構のカウントミスによるケーブル長の誤差 ・モータの過熱 ・ギアの摩耗 ・クランク版のオーバーサイズ(ケースからはみ出る) ・ケーブルエンプティー検出の誤動作 ・レギュレータ回路の過熱 ・冷却系の不足 ・動作音が大きい ・ブザー音が小さい これらは試作 2 号機以降で順次解決していこうと考え ている。 試作初号機はコンセプト実証機としての位置づけの ため,生産性,再現性に問題が残っている。現在,生 産性向上実験の為の試作 2 号機の設計製作を行ってい る。 電気工事士の指導を行っている他の工業高校でも, 図面とプログラムをダウンロードすれば複製できるよ うに,装置構造の大幅な再検討を行った。 (ア)部品点数の削減 (イ)入手容易な部品への変更 (ウ)加工手順の簡略化 (エ)裁断機構の小型化 (オ)構造部材の軽量化 (カ)制御回路の基板化 後閑 哲也 著 技術評論社 椋田 實 著 技術評論社 ・はじめての C