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第4号 - 錯体化学会
<錯体化学若手の会ニュース>2009 年度第 4 号 2010 年 3 月発行 錯体化学若手の会北海道・東北支部 〒980-8578 仙台市青葉区荒巻字青葉 6-3 東北大学大学院理学研究科 遠藤勝俊 TEL:022-795-3878 錯体化若手の会ホームページ E-mail: [email protected] http://www.sakutai.jp/yccaj/index.htm 目次 (1) 錯体化学若手の会夏の学校 2010 開催案内及び若手講演募集 (2) 日本化学会第 90 春季年会若手シンポジウム案内 (3) 錯体化学討論会シンポジウム案内 (4) 海外留学体験記 (5) 来年度(2010 年度)の会員登録について (6) 事務局より (1)錯体化学若手の会夏の学校での講演募集のご案内 名古屋大学 河野 慎一郎 錯体化学若手の会夏の学校 2010 開催案内及び若手公演募集 <HP アドレス: http://supra.chem.nagoya-u.ac.jp/yccaj/top> 2010 年度の錯体化学若手の会夏の学校は中部東海支部でお世話させていただ きます。来る 8 月 9 日から 8 月 11 日にかけて、三重県亀山市関町の関ロッジに て開催する運びとなりました。 開催地として選びました三重県亀山市関町は、江戸時代に古代三関の一つ「鈴 鹿関」が置かれていた場所で、東海道五十三次で知られる江戸から四十七番目 の宿場町として参勤交代や伊勢参りの人々でにぎわっていた街です。この歴史 的に趣のある場所で、全国各地の活発に研究している若手研究者の皆さんと、 錯体化学を軸に熱心な議論を行えればと思っております。講演には新しい分野 を開拓されている先生方や活躍している学生を招き、熱い議論ができる環境作 りを行って参りたいと思っております。 また、若手研究者(学生も含む)による講演を公募中(4 件程度)です。是非ご 応募下さい。また、参加者によるポスターセッションも予定しております。 より多くの皆様の参加を心よりお待ちしております。 期日:平成 22 年 8 月 9 日(月)∼平成 22 年 8 月 11 日(水) 会場:国民宿舎関ロッジ 三重県亀山市関町新所1574-1 http://www.city.kameyama.mie.jp/sekilodge/ 会費(予定):一般 25000円、学生20000円程度 参加申込締切:7月9日(金) 定員:100 名程度 講師の先生方 石谷 治 先生 (東京工業大学大学院理工学研究科化学専攻 教授) 加藤 隆史 先生 (東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻 教授) 林 高史 先生 (大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻 教授) 大越 慎一 先生 (東京大学大学院理学系研究科化学専攻 教授) 松尾 豊 先生 (東京大学大学院理学系研究科化学専攻 特任教授) 岸村 顕広 先生 (東京大学大学院工学系研究科マテリアル工学専攻 助教) 尚、若手研究者による講演者を申し込みされる方は、5 月 28 日(金)までにお 申し込み下さい。 申込方法: web サイトをご覧の上、1) 氏名、2) 性別、3) 職名・学年、4) 所 属機関、研究室、5) 連絡先(郵便番号、住所、電話番号、e-mail アドレス)、6) 口 頭発表希望、ポスター発表の有無、を明記して、e-mail にて下記までお申し込 み下さい。 連絡先: 〒464-8602 名古屋市千種区不老町 名古屋大学大学院理学研究科 物質理学専攻(化学系) 河野慎一郎 TEL&FAX:052-789-2470 E-mail:[email protected] (2)日本化学会第 90 春季年会 若手シンポジウム案内 開催責任者 筑波大学 二瓶雅之 日本化学会第 90 春季年会(3/26(金)‐29(月)、於:近畿大学本部(東大阪)キャン パス)において、若手の会が主催するシンポジウムが開催されます。テーマは 「動的金属錯体の機能制御!価数制御と電子移動!」です。錯体化学を研究し ている皆様は、何らかの形で「機能」というものに興味をもって研究を進めて いると思います。一口に機能といっても、幾何構造や電子状態等に由来する反 応性や物理的性質など、その対象は多岐にわたります。しかし、それらの多く は「電子」に起因していますから、如何に電子の配列や電子移動を制御するか は、非常に重要且つ一般的な課題であるといえます。本シンポジウムでは、金 属錯体における電子の価数配列と電子移動の制御による動的機能の発現に焦点 を絞り、この分野の最前線で活躍している若手研究者の講演をとおして、今後 の機能分子科学の将来展望を議論したいと考えています。皆様には、是非とも 本シンポジウムにご参加いただき、活発な議論を通して研究の輪を広げて頂き たいと思います。周辺の方々もお誘い合わせのうえ、是非ご来場くださいます ようお願い致します。詳細は下記、および本ニュースレターに掲載されている 講演要旨をご参照ください。 テーマ:動的金属錯体の機能制御 -価数制御と電子移動日時: 3 月 26 日(金) 17:20-19:00 会場: S5 会場 21 号館 422 教室 (中長期シンポジウム「超分子金属錯体‐超分子構造から機能への展開」(3 月 26 日(金) 13:30-17:15)に引き続き行われます) プログラム 17:20-17:45 配位組み替え設計による分子構造変換と単電子駆動 (東大院理)久米晶子 17:45-18:10 酸化状態の双安定性を利用した固体中での機能発現 (東北大院理)高石慎也 18:10-18:35 金属多核錯体における分子内電子移動の外場制御 (筑波大院数物)二瓶雅之 18:35-19:00 レドックス活性錯体液晶の動的機能 (北大院理)張 浩徹 (「化学と工業」誌三月号 296、302 ページも併せてご参照ください) ㈩⚵ߺᦧ߃⸳⸘ߦࠃࠆಽሶ᭴ㅧᄌ឵ߣන㔚ሶ㚟േ ᧲੩ᄢቇᄢቇ㒮ℂቇ♽⎇ⓥ⑼ ਭ☨ ᥏ሶ છᗧߩೝỗߦኻߒߡᔕ╵ߔࠆಽሶ᧚ᢱࠍ⚵ߺ┙ߡࠆߦߪޔಽሶߩ㔚ሶ㈩⟎ࠍቯ ⊛ߥࡃࡦࠬߩߢนㅒᄌ឵ߢ߈ࠆ⚵ߺࠍࠆߎߣ߇ࠠࡐࠗࡦ࠻ߣߥࠆࠊࠅߣޕ ߌಽሶᕈߩ࿕‛ᕈߢߪޔߩޘಽሶߩ㔚⩄㈩⟎߇ޔ✢ޔ㕙ޔ3 ᰴర᭴ㅧ╬ߩࡀ࠶ ࠻ࡢࠢߩਛߢߩ㔚⏛᳇⊛⋧↪ߩવ㆐ࠍ৻ᄌߐߖࠆߣᦼᓙߢ߈ࠆࠇߎޔߒ߆ߒޕ ࠄߩಽሶࠍቅ┙ߐߖߚߣ߈ߦޔቯᕈߪ⸽ߐࠇߕޔߩޘಽሶ߇⁛┙ߦᯏ⢻ࠍᜂ ߁ߎߣߪ࿎㔍ߢࠆޕ ߘߎߢᚒޔߪޘಽሶߩਛߦቯᕈߣ㔚⩄⒖േࠍ⚵ߺㄟࠎߛ㍲⚵ߺ┙ߡࠍ⋡ᜰߒޔ ᭴ㅧᄌ឵ࠍ․ቯߩ႐ᚲߦ⛉ࠅㄟߎߣߢ⸳⸘ޔ㚟േࠍน⢻ߦߔࠆ ߩޘಽሶ߇⁛┙ߦ᭴ㅧޔ㔚ሶᖱႎࠍᜬߢ߈ࠆࡐ࠹ࡦࠪࡖ࡞ࠍ⸳⸘ߔࠆ ⸥ߩᓮߐࠇߚേ߈ߩᖱႎ㧔ᣇะޔ࿁ᢙ㧕ࠍ㔚ሶߩᖱႎߦォ౮ߔࠆ ߣ߁⺖㗴ࠍ⸳ቯߒߚޕ ࿁ォㆇേߪޔಽሶߩ㊀ᔃ⟎ࠍ⒖േߔࠆߎߣߥߊ㚟േߢ߈ߜࠊߥߔޔ〔゠ߩߘޔㆇ േࠍᓮߔࠆࡐ࠹ࡦࠪࡖ࡞߇੍᷹น⢻ߢࠆߎߣ߆ࠄޔ㔚ሶ⒖േࠍᓮߔࠆಽሶࡔࠞ ࠾࠭ࡓߣߒߡ↪ߢࠆޕᚒߪޘ࿁ォਛߩቯ⁁ᘒࠍࠆߚߦࡦࠫࡒࡇޔⅣਛ ߩੑߟߩ⓸⚛ේሶ߇㊄ዻਛᔃߦߘࠇߙࠇ㈩ߢ߈ࠆ᭴ㅧࠍ⠨߃ߚߦࠇߎޕ㔚ሶ⒖േࠍ ⋧㑐ߐߖࠆߚߦࠍࡦࠫࡒࡇޔ㕖ኻ⒓ߦ⟎឵ߔࠆߎߣ߇ലߢࠆ(Fig.1)ޕCu(II/I) ߩ㉄ൻㆶరࡐ࠹ࡦࠪࡖ࡞ߪޔd10/d9 ߩ㔚ሶ㈩⟎ߦ ߁㈩᭴ㅧᄌൻࠍ߁ߚޔ㈩ㇱࠅߩ┙ ᭴ㅧߦᢅᗵߢࠆޔߡߞ߇ߚߒޕ㕖ኻ⒓ࡇࡒࠫ ࡦⅣ߇ォߒߡ㈩ߔࠆߣޔCu ਛᔃߩ㉄ൻㆶర㔚 ߇ࠪࡈ࠻ߒޔ㔚ሶ㚟േߔࠆߎߣ߇ߢ߈ࠆޕ Fig. 1 㕖ኻ⒓⟎឵䊏䊥䊚䉳䊮䈮䉋䉎ォ⇣ᕈ i ޣṁᶧਛߢߩォ․ᕈޤ1 o ㈩ሶ Mpmpy ߪ Cu(I)ߦ㈩ߔࠆߣ 296K ቶ᷷ߢ 102s-1 ⒟ᐲߩ㗫ᐲߢォߔࠆ߇ޔ 252K ߎࠇࠍഥ㈩ሶ LAnth ߢߺㄟߎ ߣߢォߩಓ⚿ࠍ⹜ߺߚߩߎޕ㍲ߪ Cu(I)ߢߪ i ޔCu(II)ߢߪ o ߇ቯߢ Fig. 2 [Cu(Mpmpy)(LAnth)]+䈱䉰䉟䉪䊥䉾䉪䊗䊦䉺䊝䉫䊤䊛 (10 mVs-1,0.1MnBu4NBF4-CH2Cl2/Acetone) ࠅޔቶ᷷ߢߪ㉄ൻߦ߁ォ߇ࠨࠗ ࠢ࠶ࠢࡏ࡞࠲ࡕࠣࡓ߆ࠄ⺒ߺขࠇࠆޔߒ߆ߒޕ245K ߢߪߎࠇࠄߩ⇣ᕈߪޘ ߩนㅒߥ㉄ൻㆶరᵄࠍ␜ߒߡ߅ࠅ(Fig.2)ޔૐ᷷ߢߪㅦᐲ⺰⊛ߦ߽ࡇࡒࠫࡦⅣߩォ ߪಓ⚿ߐࠇ㧔ኻ߳ߩᾲំേߪߥ㧕ޔ㌃ਛᔃ߆ࠄ㔚ሶߩࠅ߇ߞߡ߽ࡇޔ ࡒࠫࡦߩะ߈ߪḰቯ⁁ᘒߦ࠻࠶ࡊߐࠇࠆޕ ޣォ-㔚ሶ⒖േࠪࡦࠢࡠ♽ޤ2 Cu-MPyPm ♽ߪⅣォߦࠃࠅ Cu ਛᔃߩ㉄ൻㆶర㔚ࠍࠪࡈ࠻ߐߖޔォ ON/OFF ߩਔ⁁ᘒߢ㔚ሶ⒖േ߇น⢻ߢࠆߺ⚵ࠍࠇߎޕㄟࠎߛಽሶౝ㔚ሶ⒖േ♽ߣߒߡࠚࡈޔ ࡠࡦࠍㅪ⚿ߒߚ FcMpmpy ࠍ↪ߡ Cu ㍲ࠍวᚑߒߚޕ a ߎߩ㍲ߪࡕࡁࠞ࠴ࠝࡦ⁁ᘒߢߪ i:o = 3:2 ߩᷙวߦߥࠆ߇ޔቶ᷷(ォ ON)ߢ㉄ൻ ߔࠆߣหᤨߦォߦࠃߞߡ߶߷ o ߣߥࠅ㉄ޔൻਛᔃߪ Cu(II)ߦዪߔࠆ߇ࠈߎߣޕ 213K㧔ォ OFF㧕ߢ㉄ൻߔࠆߣޔๆࠬࡍࠢ࠻࡞ߪ i/o ⇣ᕈᲧߦᓥ߁ 2 Ბ㓏ᄌൻߣ ߥࠅޔi ߢߪࡈࠚࡠࡦㇱߩ㉄ൻߦ․ᓽ⊛ߥๆᏪ߇ࠇࠆޕ ߎߩࠨࡦࡊ࡞ࠍ 223K ߦ᷷ߔࠆߣ 15 ಽ⒟ᐲߢ o-Cu(II)߳ߩ 1 Ბ㓏ߩࠬࡍ g=2 ࠢ࠻࡞ᄌൻ߇ߎߞߚޔߚ߹ޕห᭽ߩ ET ㉄ൻ-᷷ㆊ⒟ߦࠃࠆ EPR ࠬࡍࠢ࠻࡞ Ͳ oxidizedat193K Ͳ Afterrelaxation 20 mT ߢߪ Cu(II)↱᧪ߩࠬࡇࡦኒᐲ߇ 0.36 ߆ࠄ 0.87 ߦߒ(Fig.3)ޔォ ON ߦ หᦼߒߡ㉄ൻਛᔃ߇ࡈࠚࡠࡦ߆ࠄ Cu ߦ⒖േߒߡࠆߎߣ߇ࠊ߆ߞߚޕ Fc Cu i isomer Fc Cu o isomer Fig. 3 ォ-㔚ሶ⒖േ䈮䈉 EPR ᄌൻ(acetone, 100K)䇯 193K 䈪㉄ൻ⋥ᓟ(㕍)䇮ቶ᷷᷷ᓟ(⿒) ޣォㇱ߳ߩᯏ⢻ᕈㇱዉޤ ߎߎ߹ߢߪォㇱߩ᳓⚛ේሶߣࡔ࠴࡞ၮߩࠨࠗ࠭ലᨐߢ Cu ਛᔃߩ㔚ሶ⒖േࠍ⺃ ߒߚ߇ޔォㇱߩୃ㘼ߢޔォᓮࠬࠢ࠶࠼ߚ߹ޔㇱߩⓨ㑆⟎ߣ㉄ൻ⁁ᘒ ߩࠪࡦࠢࡠߥߤ߇ᦼᓙߢ߈ࠆޔ߈ߣߩߎޕዉߔࠆ⟎឵ၮߩࠨࠗ࠭ߦࠃߞߡߪߔߴߡ ᄖߦᒢ߆ࠇߡߒ߹ޔi-o ᄌ឵߇㔍ߒߊߥࠆߦࡦ࠻ࡦࠕߢߎߘޕ߹ࠇߚⓨ㑆 ߦS-ᓎ♽ࠍㅢࠅᛮߌߐߖࠆߚߦޔ2 ㊀⚿วࠍߒߡࡈࠚࡠ࠾࡞ၮࠍዉߒߚޕ ߎߩߣ߈ 2 ㊀⚿วߩవߩࡈࠚࡠ࠾࡞ၮߪ┙㓚ኂߣߥࠄߕޔCu(I)-Fc ߩ⁁ᘒߢォ ᐔⴧ߇ᚑ┙ߔࠆ㧔i:o ~ 1:1㧕ߩߎޕ㍲ߢߪవߩ㍲ߣห᭽ߦޔォߦ߁ࡈࠚࡠ ࠾࡞ၮߣ㌃ਛᔃߩ㉄ൻㆶర㔚ߩㅒォ߇ߎࠅޔ1 㔚ሶ㉄ൻࠍォ ON ߦߔࠆߎߣ ߦࠃࠆォ-㔚ሶ⒖േࠪࡦࠢࡠ߇᷹ⷰߐࠇߚ㧔Fig.4b㧕ޔ㔚ሶ⒖േࠍࠊߥㆶర⁁ᘒ ߦ߅ߡ߽ޔォ⇣ᕈ o 㑆ߩ MLCT ㆫ⒖ߦ⋧ [Cu(I)-Fc]+ i o [Cu-Fc]2+ ㆑߇ࠄࠇ(Fig.4a)ޔ ォ߇ Cu ਛᔃ-ࡈࠚࡠ i ࡦ㑆ߩS㔚ሶ♽ࠍߔ ࠆ⋧↪ߦᓇ㗀ߔࠆ ߎߣ߇␜ໂߐࠇߚޕ Fig. 4 ⇣ᕈߩๆࠬࡍࠢ࠻࡞㧦(a)Cu(I)-Fc; ォߦ߁㔚ሶ⒖േߩߥ ႐ว(ޕb)1 㔚ሶ㉄ൻ; ォߦࠪࡦࠢࡠߒߚ㔚ሶ⒖േߩࠆ႐ว 1. Kuniharu Nomoto, Shoko Kume, Hiroshi Nishihara, J. Am. Chem.Soc., 2009, 4085-4087. 2. Shoko Kume, Kuniharu Nomoto, Tetsuro Kusamoto, Hiroshi Nishihara, J. Am. Chem.Soc., 2009, 4085-4087. ㊄ዻᄙᩭ㍲䈮䈍䈔䉎ಽሶౝ㔚ሶ⒖േ䈱ᄖ႐ᓮ 䋨╳ᵄᄢᢙℂ䋩㩷 ੑ↉㓷ਯ ᨵエߥ㔚ሶ᭴ㅧࠍ߽ߟ㊄ዻ㍲ߪޔ᭴ㅧߣ㔚ሶ⁁ ᘒߩ㑆ߦᒝ⋧㑐ࠍ␜ߔߎߣ߆ࠄޔᾲ߿శߥߤߩᄖ ႐߿ൻቇೝỗޔಽሶ᭴ㅧᄌൻࠍ㚟ߒߡ㔚ሶࠍേ⊛ ߦᠲࠅޔᄙ᭽ߥᯏ⢻ࠍ⊒ߐߖࠆߩߦᦨ߽ㆡߒߚ‛ ⾰♽ߩ৻ߟߢࠆࡦࠕࠪޕൻ‛ࠗࠝࡦ᨞ᯅ⇣ᩭ㊄ዻ ᄙᩭ㍲ߪࡦࠕࠪޔൻ‛ࠗࠝࡦࠍߒߚ⇣⒳㊄ዻࠗ ࠝࡦ㑆ߩ㔚ሶ⊛⏛᳇⊛⋧↪ߦࠃࠅ⥝ޔᷓ ᕈ⾰ࠍ␜ߔޕ1-3 ਛߢ߽ㄭᐕޔ㊄ዻࠗࠝࡦ㑆ߩಽሶ ౝ㔚ሶ⒖േ߇⺃ߔࠆࠬࡇࡦォ⒖(Charge Transfer Fig. 1. ㋕䉮䊋䊦䊃྾ᩭ㍲䈫㈩ሶ. Induced Spin Transition, CTIST)ࠍ␜ߔൻว‛߇ᢙႎ๔ߐࠇޔᣂߚߥቯᕈ‛⾰ߣߒߡᦼ ᓙߐࠇߡࠆޔࠄ߇ߥߒ߆ߒޕಽሶౝᄙ㔚ሶ⒖േߩࠦࡦ࠻ࡠ࡞߿ᄙ㊀ቯᕈߩ⊒ߦ㑐 ߔࠆႎ๔ߪήߢߎߎޕ㊀ⷐߥὐߪޔCTIST ߦ߅ߌࠆੑߟߩ⁁ᘒߩࠛࡀ࡞ࠡᏅ('G)ߣ ࠛࡦ࠻ࡠࡇᏅ('S)ࠍᅤߦᓮߔࠆ߆ߢࠅ⇣ޔ⒳㊄ዻࠗࠝࡦ㑆ߩ㉄ൻㆶర㔚Ꮕ߅ޔ ࠃ߮ࠬࡇࡦ⁁ᘒ᭴ㅧߩᄌൻࠍ⠨ᘦߔࠆߎߣߢน⢻ߣߥࠆ⎇ᧄޕⓥߢߪࡦࠕࠪޔൻ‛ࠗࠝ ࡦ᨞ᯅ㋕-ࠦࡃ࡞࠻Ⅳ⁁྾ᩭ㍲[Fe2Co2(CN)6(L1)2(L2)4](PF6)2 (Fig. 1) (L1 = tris(dimethyl pyrazolyl)borohydride, L2 = di-t-butyl-2,2’-bipyridine) (1)ߦ߅ߌࠆ CTIST േߩ⊒ߣᓮࠍ ⋡⊛ߣߒߚޕ Ⅳ⁁྾ᩭ㍲ 1 ߦ߅ߌࠆੑᲑ㓏 CITST േ ㍲ 1 ߪޔੑߟߩ㋕ࠗࠝࡦߣੑߟߩࠦࡃ࡞࠻ࠗࠝࡦ߇ ߦࠪࠕࡦൻ‛ࠗࠝࡦߢ᨞ᯅߐࠇߚⅣ⁁྾ᩭࠦࠕ᭴ㅧ ࠍ߽ߟޕන⚿᥏᭴ㅧ⸃ᨆߩ⚿ᨐޔ㍲ 1 ߪ 200 K ߢ [FeIIIls2CoIIhs2]⁁ᘒ(HS ⁁ᘒ)ࠍ␜ߒޔ330 K ߦ߅ߡߪ [FeIIls2CoIIIls2]⁁ᘒ(LS ⁁ᘒ)ࠍ␜ߔߎߣ߇ࠊ߆ߞߚ(Fig. 2)ޕ ㍲ 1 ߩ 5-330 K ߦ߅ߌࠆ⏛ൻ₸᷹ቯߩ⚿ᨐޔFmT = 0.00, 3.00, 5.96 emu mol-1 K ߦࡊ࠻ࠍ߽ߟੑᲑ㓏ߩჇടࠍ␜ ߒߚ(Fig. 3)ޔߪࠇߎޕFe(II)ࠗࠝࡦ߆ࠄ Co(III)ࠗࠝࡦ߳ߩ ᾲ⺃ಽሶౝ㔚ሶ⒖േߦၮߠߊ CTIST േߦࠃࠅޔLSĺ IMĺHS ⁁ᘒ߳ߣᄌൻߒߚߎߣࠍ␜ߔޕశࠍ↪ߡ IM ⁁ᘒߩන⚿᥏᭴ㅧ⸃ᨆࠍⴕߞߚ⚿ᨐޔIM ⁁ᘒߪ HS ⁁ᘒ ߣ LS ⁁ᘒ߇ 2:2 ߢⷙೣ㈩ߒߚ྾ᦼ᭴ㅧࠍ߽ߟߎߣ ߇ࠄ߆ߦߥߞߚޕ Fig. 2. HS, LS ⁁ᘒ䈱㔚ሶ⁁ᘒ. Ⅳ⁁྾ᩭ㍲ 1 ߦ߅ߌࠆశ⺃ CITST േ 5 K ߦ߅ߡ LS ⁁ᘒߦ 720 nm శࠍᾖߒߚߣߎࠈޔFmT ୯ߪᕆỗߦჇടߒߚޕశᾖ ᓟߩ 46 K ߦ߅ߡFmT ୯ߪ 5.17 emu mol-1 K ߦ㆐ߒ ߩߡో߷߶ޔLS ⁁ᘒ߇శ⺃ HS ⁁ᘒ ߳ߣᄌ឵ߐࠇࠆߎߣ߇ಽ߆ߞߚޕశ⺃ HS ⁁ᘒߪࠆߥࠄߐޔടᾲߦࠃࠅ 62 K ߢࠊߕ߆ߥ ࠬ࠹࠶ࡊࠍߥ߇ࠄ⏛ᕈ LS ⁁ᘒ߳ߣ✭ߒߚޕએࠃࠅޔLS ⁁ᘒߩ FeIIĺCoIII IVCT ࡃࡦ࠼ࠍㆬᛯ⊛ߦశബߔࠆߎߣߢޔశ⺃ 2 㔚ሶ⒖േߦࠃࠆ CTIST േߩ⊒ߦᚑഞߒ ߚޔߦࠄߐޕశ⺃ HS ⁁ᘒߩ CoIIĺFeIII IVCT ࡃࡦ࠼ࠍ 532 nm శߢബߔࠆߎߣߦࠃࠅޔ ᄌ឵ല₸ߪૐ߽ߩߩㅒశ⺃ CTIST േ߽น⢻ߥߎߣࠍߒߚޕ Ⅳ⁁྾ᩭ㍲ 1 ߩṁᶧਛߦ߅ߌࠆ CITST േߣࡊࡠ࠻ࡀ࡚ࠪࡦߦࠃࠆᓮ 1 ߩࡉ࠴ࡠ࠾࠻࡞ṁᶧਛߩ᷷ᐲนᄌ UV-Vis-NIR ࠬࡍࠢ࠻࡞ࠍ᷹ቯߒߚ⚿ᨐޔቶ᷷߆ࠄ 180 K ߳ߩ಄ළߦޔHS ⁁ᘒ߆ࠄ LS ⁁ᘒ߳ߩ CTIST േ߇᷹ⷰߐࠇߚޕṁᶧਛߦ߅ߌ ࠆ HS ⁁ᘒࡈ࡚ࠢࠪࡦߩ᷷ᐲଐሽࠍࡊࡠ࠶࠻ߒߚ߽ߩࠍ Fig. 4 ߦ␜ߔ⚿ߩߘޕᨐޔ1 ߪṁ ᶧਛߦ߅ߡ৻Ბ㓏 CTIST ࠍ␜ߒޔHS ⁁ᘒߣ LS ⁁ᘒߩᐔⴧ᷷ᐲ(T1/2)ߪ⚂ 230 K ߢࠆߎ ߣ߇ಽ߆ߞߚޔߦࠄߐޕቶ᷷ߦ߅ߡ 1 ߩṁᶧߦ㉄ࠍᷝടߒߚߣߎࠈߩ㉄ޔᷝട㊂ߩჇട ߦޔHS ⁁ᘒ߆ࠄ LS ⁁ᘒ߳ߩ CTIST േ߇⺃ߐࠇࠆߎߣ߇ಽ߆ߞߚޔߦࠇߎޕ HS ⁁ᘒߣ LS ⁁ᘒߩᐔⴧ᷷ᐲ(T1/2)߇㜞ߊߥࠅޔᐔⴧ᷷ᐲࠍ㉄ᷝടߦࠃࠅ⚂ 50 K ࠪࡈ࠻ߐ ߖࠆߎߣ߇ߢ߈ࠆߎߣ߇ࠊ߆ߞߚޔߪࠇߎޕ1 ߩᧃ┵ࠪࠕࡁၮ߳ߩࡊࡠ࠻ࡦઃടߦࠃࠅ LUMO ࡌ࡞߇ቯൻߒߚߎߣߦࠃࠆߣ⠨߃ࠄࠇࠍࡦ࠻ࡠࡊޔ↪ߔࠆߎߣߢൻቇೝỗ⺃ CTIST േߣ߁ቅ┙ಽሶ․ߩ߹ߞߚߊᣂߒ CITST േߩ⊒ߦᚑഞߒߚޕ Fig. 3. ㍲ 1 ߩ࿕⁁ᘒߦ߅ߌ ࠆ CTIST േ. Fig. 4. ㍲ 1 䈱ṁᶧਛ䈮䈍䈔䉎 CTIST േ䈱㉄ᷝട䈮䉋䉎ᄌൻ.㩷 ޣᢥ₂ޤ (1) M. Nihei, M. Ui, M. Yokota, L. Han, A. Maeda, H. Kishida, H. Okamoto, H. Oshio, Angew. Chem. Int. Ed., 2005, 44, 6484-6487. (2) M. Nihei, M. Ui, N. Hoshino, H. Oshio, Inorg. Chem., 2008, 47, 6106-6108. (3) M. Nihei, M. Ui, H. Oshio, Polyhedron, 2009, 28, 1718-1721. 金属錯体液晶が示す揺動構造とレドックス双安定性 (北大院理) 張 浩徹 【序】熱、光、電場等に応答しその物理化学的状態を双安定化しうる分子はナノスケール における分子スイッチや分子メモリ等の分子素子への応用が期待されている。分子性物質 の双安定物性の起源は単一分子若しくは多分子間の相互作用により発現する電子的又は構 造的自由度のいずれかに帰属される一方、近年単一分子内での物理化学的変化とマクロ現 象が連動した特異的現象の発現とその合理的設計が注目されはじめている。そのためには、 マクロ相の変化を誘起しうる「分子」の設計と、単一分子内での変化を敏感に反映しうる 「集団」の設計が不可欠とされる。本研究ではこの様な課題に対し、レドックス活性金属 及び配位子が創り出す「ソフトな電子」と、アルキル長鎖を主とする「ソフトなマクロ構 造」を共存・連動・相互依存させた新しい双安定系の構築を指向している。1-6 我々はその 具体的アプローチとして液晶場に着目している。液晶は結晶と液体の中間的性質を示す第 三の分子集合相として知られ、これまでに主に LCD 等の構造機能に立脚した基礎及び応用 研究が盛んに行われてきた。本講演ではこの様な固体様の自己組織化能と液体様の柔軟性 を併せ持つ液晶場において「電子」をトリガーにして分子及びマクロ相を変換しうるレド ックス活性双安定液晶について報告する。 【分子設計】レドックス活性液晶の構造を Fig.1 に 示す。これらの分子は共通してレドックス活性配位 子、秩序構造を作り出す剛直平面構造及び無秩序構 造を安定化しうる柔軟部位を併せ持つ。我々は結晶 相を大幅に不安定化する 3—オクチルトリデシル鎖 を付与し、液晶相を強く安定化することで室温付近 200!を超える範囲において発現するヘキサゴナ ルカラムナー液晶(Colho)群を得た。 【電気化学的相変換】得られたカラムナー液晶相は、レドックス活性部位が揺らぎつつ約 3.5 Åの相関長で積層した構造を有していることから、レドックスによる分子状態の変換 に加え、それに付随するマクロ構造の変換に興味が持たれる。配位原子にO原子を有する カテコラート(Cat)錯体液晶の場合、液晶相の直接的定電位酸化により配位子中心の一電 子酸化反応が生じ、常磁性の単量体モノカチオンを生じる(Fig. 2a)。一方、S原子を有 するベンゼンジチオラート(Bdt)錯体液晶の場合、三分子当たり二電子の金属中心の酸化 が結果的に生じ、反磁性の三量体ジカチオンを生じる(Fig. 2b)。Bdt錯体由来の酸化種 については、モデル錯体である[Pt(Bdt)(C1bpy)]の化学的酸化により得られる酸化種が液晶 の電気化学的酸化により得られる酸化種と類似した吸収スペクトルを与えること、またそ のX線構造解析並びにXPS測定等から、[PtII,II,IV3(Bdt)3(Cnbpy)3]2+(PF6)2というPt(II), Pt(IV)を 含む混合原子価状態の反磁性三量体ジカチオン種が生成することから帰属することがで きる。興味深いことに酸化に伴い両錯体の液晶相は不安定化し、構造秩序を有さないイオ ン性液体へと可逆的に相変換される。この過程は、有次元構造体が崩壊する過程と、無次 元構造から有次元構造が組み上がる過程を電気化学的に駆動していることになる。更に興 味深いことにポテンシャルステップ法により得られた電流の時間応答には、酸化反応及び 還元反応のそれぞれの過程に明確な電流ピークが出現し、レドックスに伴い生じている相 変換過程における核生成過程と核成長過程を含む自己組織化過程の存在を示した。この様 な錯体液晶におけるマクロ相変換を伴うレドックス活性能は、液晶に異方的電子機能を与 えると共に電気化学的な双安定性機能を与えうる分子素子としての潜在能を示す興味深 い結果であると考える。当日はこれら錯体液晶が示す揺動構造と分光学的性質の相関につ いても併せて報告する。 【文献】 (1) D. Kiriya, H.-C. Chang, A. Kamata, and S. Kitagawa, Dalton Trans. 2006, 1377-1382 (Front Cover). (2) D. Kiriya, H.-C. Chang, and S. Kitagawa, J. Am. Chem. Soc. 2008, 130, 5515-5522. (3) D. Kiriya, H.-C. Chang, K. Nakamura, D. Tanaka, K. Yoneda, S. Kitagawa, Chem. Mat. 2009, 21, 1980-1988. (4) D. Kiriya, K. Nakamura, H.-C. Chang, S. Kitagawa, Chem. Commun. 2009, 2085-2087. (5) D. Kiriya, K. Nakamura, H.-C. Chang, and S. Kitagawa, 2010, submitted for publication. (6) H.-C. Chang, T. Shiozaki, A. Kamata, K. Kishida, T. Ohmori, D. Kiriya, T. Yamauchi, H. Furukawa, S. Kitagawa, J. Mat. Chem. 2007, 17, 4136-4138 (Front Cover). (3)錯体化学討論会シンポジウム案内 東京大学 久米晶子 Toward On-demand Functionality - Lessons on Key Ideas for Coordination Assembling 遷移金属錯体を用いた分子機能は、今や分子パーツを合理的に組み合わせて協 同性を設計することが不可欠な方法論となっている。錯体の立体構造、電磁気 特性、反応性が精密に多重化されることで、多電子移動によるエネルギー変換、 分子回路、高感度検出など時代のニーズに答える応答を得ることができる。こ うした分子設計においては、従来の教科書通りの知識からカバーできない程の 複雑な電子状態や弱い相互作用による構造の揺らぎ、多点相互作用を狙い通り に組み立てていかなければならない。 本シンポジウムは構造・電子状態・反応性の分子統合システムによる機能創出 において世界を先導している、錯体化学討論会国際会議の特別講演の先生方に、 「なぜその分子設計でなければいけなかったのか?」「分子設計で役立った知 識は何だったか?」という問題の理解に絞った、院生向けの Introductory Lecture を開催する。 またシンポジウム後半においては、講師の先生方に「アイデアはどこから得て いるか?」「研究のスパンは何年ぐらいで設定するべきか?」「錯体化学のい い教科書はどれか?」「意気消沈した学生にやる気を出させる方法は?」といっ た、様々な質問形式のテーマについて回答、議論するセッションを設ける予定 である。 講師の先生方(予定, 敬称略) Jonathan Sessler (The University of Texas at Austin), Kenneth D. Karlin (Johns Hopkins University) James M. Mayer(The University of Washington) (4)海外留学体験記 九州大学 山田鉄兵 私は2009年の10月末から2010年の1月はじめまで、JSTのプログ ラムでフランスのストラスブールに滞在させていただいた。その際、これまで の人生では味わったことのないこともいくつか経験した。その一部を紹介する 機会を頂いたので、年末年始の時間を使って書こうと思う。これから世界に羽 ばたく他の研究者や学生の一助となれば望外の喜びである。 ・ストラスブールという町 ストラスブールはフランスの東南の端にある、アルザス地方の中心都市である。 歩いていける範囲にライン川があり、その向こうはドイツである。アルザスは ドイツとフランスで領土争いが繰り広げられた歴史を持ち、そのためにヨーロ ッパの平和の試金石と捉えられ、EU議会などが設置されている。その文化は ドイツの香りが色濃く反映され、世界遺産にもなっているカテドラルや、中世 の町並みを残しており、クリスマス期間には世界各地から観光客が訪れる町で ある。クリスマスツリーの発祥もストラスブールらしい。リースリングの白ワ インや、酢漬けのキャベツとソーセージからなるシュークルートなどは、ドイ ツのザワークラウトを思わせる。一方でフランスらしいグルメの町でもあり、 フォア・グラはこの地方が発祥とのことである。チーズやワインも普通のスー パーに豊富にあり、味も非常においしい。滞在中はもっぱら3 2 5ユーロの、 5年もののボルドーワインを飲んでいた。パンも安くておいしい。最安で 29 セントのバゲットがあり、野菜とチーズ・ハムを挟んでサンドイッチ四個で 60 セント程度で生活できた。これは極端な例だが、一日の生活費は平均5ユー ロ程度で済む。一方、外で食べようとするとかなり高くつく。マクドナルドで 6.4 ユーロ(850 円)程度、レストランでは一人 15 20 ユーロが相場である。19% にもなる消費税はその一因であろうが、お店側も無駄に安くサービスを提供す るという意識は、全くない。その代わり味はどこでもおいしかった。 ・がっかりしたこと 上ではいいことを書いたが、実はフランスに来た当初はいいことばかりではな く、むしろがっかりしたことが予想以上に多かった。行きはパリで一泊する予 定でいたのだが、パリ市内ではタクシーが捕まらず、タクシー乗り場を聞いて も誰も教えてくれなかった。仕方なく重い荷物を抱えて地下鉄に乗った。泊ま ったホテルは、確かに安かった(それでも一泊 10000 円程度)のだが、それに しても涙が出るほどひどいものであった。バスタブなど当然無く、石鹸すらな い。コップはプラスチックのものしかなく、しかもひび割れていた。パリにつ いてもどちらかというとがっかりが多かった。道は汚く、たばこの煙がひどい。 パリのフレンチレストランははみんな割高で、そのため観光客以外はあまり入 っていない。繁盛しているのはピザ屋か、寿司屋である。その上、寿司屋のか なりの割合は明らかに中国・韓国人の経営である。これではグルメの国の名が 泣く。道は汚く、信号は守らないというのはフランス全体に言えることのよう だ。公道での歩行喫煙は禁止されているにも関わらず、道にはたばこが転がっ ており、他人のたばこの火を避けながら歩かなければならない。また、大学以 外ではなかなか英語は通じず、通じても非常に愛想が悪い。筆者はフランス語 は全く分からないものの、片言のフランス語で頑張って話しかけても睨み付け られたり、嘲笑されたりした。困っている人を助けるどころかむしろ睨み付け ていく(年寄りや生活弱者に対しては優しいのだが)。 ストラスブールについてからも苦難は続いた。特にフラットの管理人は天敵の ようであった。例えば部屋の電気が切れており、それを伝えてもいつになって も修理は来ない。1ヶ月後にもう一度伝えると、 「特殊な蛍光灯だから交換でき ない」と言われる。ちなみに全く同じ蛍光灯は階段など10カ所ほどあった。 またシャワーのお湯もなかなか出ない。11月で気温は0 に近づいていた。そ れも管理人に伝えると、驚いた表情で、それは「大変だから伝えておく」と言 われた。もちろんその後なんの変化もない。水のシャワーのみというのは、夏 のタイの山奥で経験して以来であった。同じことをもう一度管理人に伝えると、 「出ない時間は出ないものだ!」と怒られてしまった。ちなみに水でシャワー を浴びると、その後しばらくからだが冷えない。新陳代謝は良くなるのかも知 れない。最初は共用の洗濯機が壊れており、最後は乾燥機が壊れた。これも管 理人さんにお願いしたが、まず睨みつけ、 「私はちゃんと注文はしている。いつ か来るだろう。いつかは私は知らない。」これが対応の基本形だった。率直に言 って、最初はフランスの全てが嫌いになりかけた。 ・Strasbourg 大学について Strasbourg 大学は、フランス国内でも有数の規模と歴史を誇る大学である。昨年 末まで、理系キャンパスは Louis Pasteur 大学と呼ばれていた(理・文・芸で別 の大学名を名乗っていた)が、文系・芸術系を統合して、2009年1月から、 再び古い Strasbourg 大学という名称に戻したらしい。私の滞在したフラットのす ぐそばに古い天文台があり、かのガリレオも訪れたことがあるという噂があっ た。Luis Pastuer や Weiss など、そうそうたる研究者がかつて在籍し、現在でも Jean-Marie Lehn や Souvarge といった有名な教授を抱えている。お世話になった 研究室のボスである Mir Weiss Hosseini 教授は、"Molecular Tectonics"というコン セプトを掲げている。これは分子構造学とでも訳すべきか、基礎骨格の構造と 組み合わせから巨大構造を作り上げるというものである。ここの研究室は Le Bel 研究所という研究所に所属し、CNRS に在籍するスタッフも多かった。上の 階には Souvarge 教授がいた。研究室の研究はポルフィリン誘導体の合成が必須 であり、有機合成の比重が高いようだ。一方で結晶構造解析や NMR 測定は専門 のテクニカルスタッフがおり、出来た化合物を渡すだけである。他の測定につ いても詳細な測定を学生らが各自で行っているわけではなかった。また研究室 内のゼミや研究報告会が少なく、博士論文の審査会の直前にかなり準備をして いた。 また直接お世話になった Mohamedally Kurmoo は、ライン川の向こう、ドイツに 住んでおり、毎日国境を越えて自転車で通勤していた(さすがに道路が凍って からは車だったが)。Mohamed は固体化学、特に磁性において膨大な研究を為し ており、分子性導体の研究の質・量ともにには目を見張る物があった。常に世 界中の化学者とのコミュニケーションや査読を抱え、忙しそうにしていたが、 縁のある、信頼する研究者からの依頼を断ることは決してしない人であった。 Mohamed はまた非常な日本愛好者であった。お宅にお邪魔したときには伊万里 と九谷についてのお話しを伺ったが、あまりに高度で、僕の理解の範疇をはる かに超えていた。 ・研究室の一日 Hosseini 教授の元には独立した7人程度のスタッフがおり、教授や準教授に相当 する人間が複数いるので、ここの研究室は大講座と呼ぶのが日本のイメージに 近いように思う。大講座に15人程度の学生がおり、それぞれスタッフについ て研究を行っている。学生は中国及びアフリカからの留学生が一人ずつ、あと はドイツ人とフランス人であった。女性も三人ほどいた。スタッフはフランス 人が多いものの、モロッコやモーリシャスといったアフリカの出身者が目立っ た。彼らはフランス語がネイティブのようだ。Hosseini 教授はアフガニスタン出 身であった。朝は平均9時くらいに集まり、夜は6時くらいには多くの人が帰 る。休憩はそれぞれしっかり取っているようだが、無駄に遅くまでいるという ことは決してない。研究室のゼミは少なく、学生はスタッフに直接聞き、自分 で考えて解決するし、それが出来ない人はいなかった。イギリスでは10時と 3時のティータイムがあると聞いていたが、こちらの研究室では10時に秘書 の他は数人の固定メンバーが集まる小さなものがある程度で、昼ご飯にせよ、 あまりみんなで集まって交流すると言うことがなく、これがフランス流なのだ ろうと感じた。ただ月に2回程度、レストランでの昼食会があった。ここでの 会話は、98%フランス語で、コミュニケーションを取るのに非常に苦労した。 ・博士論文公聴会について 私が Strasbourg にいる間に、2人の博士論文審査会があった。1人はドイツ人の 女性、もう1人はフランス人の男性であった。審査は Hosseini 教授およびそれ ぞれの直接の指導教官の他に、4人の審査官が審査を担当していた。審査員の 6人の教授は、正装して一番前の席を一列陣取る。そして最初に6人が立ち上 がり、厳かに「ただいまより***さんの審査を執り行う」と、フランス語で よく分からないがそんなようなことを宣言してから発表が始まった。なかなか に厳粛なものを感じた。 発表時間や内容は、日本との大きな違いは感じなかったが、スライドの絵が、 洗練されていたようにも感じる。ティータイムに絵画の話題が良く出ていたが、 関連があるかは分からない。ドイツ人の女性は英語で博士論文審査を行ってい た。彼女はポルフィリン誘導体を4段階程度で合成し、亜鉛ポルフィリンの軸 位への配位を利用した配位高分子の合成を行っていた。得られた配位高分子の 構造については、熱重量分析、単結晶X線構造解析及び二次元 NMR により同定 した。しかし実際に自分で測定したのはTGだけである。この配位高分子はガ ス吸着は示さず、細孔が溶媒分子脱離下で安定かは不明である。発表後の質疑 は Defence という名にふさわしいものであった。審査官はランダムではなく、一 人ずつ順番に20分程度、質問を立て続けに投げかける。発表内容についての 質疑が済めば、博士論文の**ページの##の記述について、質問が飛んでくる。 審査官のD論に挟まれた付箋の数を見て、僕も思わずつばを飲み込んだ。但し、 2人とも完璧に答えたとは言い難いものの、博士を取得することには問題はな いようであった。ドイツ人の女性は英語での発表及び質疑応答であったが、フ ランス人は全てフランス語で行っていた。また、過去のD論もフランス語で書 かれている物が多いようであった。質疑が終わると、直後に別室で審査があり、 10 20分後に審査通過が言い渡された。審査が通過しないとき、どうなる かは分からない。Defence 終了後は合格パーティーが行われ、大学の一室や、学 内にあるバーで立食形式のパーティーが催された。これは発表者が主催し、友 人達で準備しているようである。 ・僕の問題かも知れない Mohamed は、家庭では英語とドイツ語、学校ではフランス語と英語で生活して おり、子供は中3と高3にして、英語、ドイツ語、フランス語の会話には困っ ていないようだった。ヨーロッパに来て感じたのは、彼らに限らず語学のレベ ルが非常に高いことである。フランス人は英語に苦手意識がある人の割合がド イツ人に比べて多いようだが、それでも教養あるフランス人の英語は、僕では とうてい及びもつかない。ましてや若いドイツ人と話をすると、ほぼ 100%僕よ り英語が堪能である。あるドイツ人が言うには、英語はフランス語やドイツ語 よりも特別難しいと言うことはないが、丁寧な表現をするのに苦労するらしい。 天敵の管理人も、非常に流ちょうな正しい英語を話す人で、一方、僕の英語は 中学レベルの直接的な表現であった。試しに丁寧な、回りくどい英語を使って 話しかけてみると、相変わらず無愛想なものの、あのしかめっ面は無くなって いた。その後も何度か話しかけてみて、彼女が不機嫌になるポイントを3つ見 つけた。すなわち 1,挨拶をしない、順番を守らないなどのマナーに反する行為 2,ぶっきらぼうな会話やお願いをすること 3,同じことを2度お願いする これまで僕が個人的に旅をしてきた国では、これくらいのことは笑って許して くれていたが、実は相手に失礼なことをしてきたのかも知れない。特に学会関 連では正しく丁寧な英語の会話が必要であると痛感した。本当はホテルや飛行 機などでも必要なのかも知れない。また、フランス人はドイツ人と比べても非 常におしゃれであるようだ。特に日本で言う中高年の女性の身なりが整ってい た。フランス語の Madam は、日本語の「おばさん」では決して無く、敬意を表 したほめ言葉らしい。研究室の男性もみんなきちんとした格好をしていた。そ もそもストラスブールは道は汚いといえど、町並みは非常に美しく、中世から の景観をうまく残していて、外で座ってご飯を食べているだけで気持ちがいい ものだった。ドイツに行くとそれが更に美しくなる。見た目を大切にすること も大事 ・ストラスブールの年末年始 11月末からはクリスマスシーズンの始まりである。実はストラスブールはク リスマスツリーの発祥の地を歌っており、クリスマスマーケットが非常に有名 である。ドイツのものも非常に大きく、楽しく、有名だが、ドイツで最大のシ ュトゥットガルトのものと比べてもストラスブールは引けを取らない。売り文 句は"Capital de Noel"である。クリスマスマーケットとは、要は出店なのだが、 クリスマスを飾るためのあらゆるものが売られている。もみの木から始まり、 スズ、人形、ケーキ、キャンドルライト、小物など、見ているだけで楽しい。 この季節は非常に寒く、夜に出歩くと30分も持たないのだが、ドイツではグ ルーバイン、フランス語でバンショーと呼ばれるホットワインを飲むと、もう 少し粘れる。というかホットワイン目当てで歩き回っていた。クリスマスイブ からはミサが始まる。そして25,26日は、ほぼ全ての店が閉まってしまう。 25日は電車も走っておらず、日本の感覚とはだいぶ違った。25日が昔の日 本の正月と考えれば似ているかも知れない。逆に大晦日の夜はみんなで花火を 打ち上げる。年末は風邪で寝ていたが、建物からも打ち上げ花火を打っている 人がいて、音も光も楽しめた。ちなみに後で聞いたら、フランスは打ち上げ花 火が禁止されているらしい。しかしここはストラス、みんな川一本渡ってドイ ツで花火を買ってくるようだ。そして年始はやっぱり、道いっぱいに花火のカ スが散らばっていた。年末年始にもう一つ不思議な経験をしたのは、スーパー や街角でおばあさんに話しかけられたり、助けてもらったりしたことである。 これは僕がフランスの雰囲気になじんできたのか、今まで見えていなかったも のが見えてきたのか、それともただの偶然なのかは、また行ってみないとわか らないかも知れない。 (5)錯体化学若手の会 入会案内 錯体化学若手の会事務 東北大学 高石慎也 錯体化学若手の会事務局より、来年度の若手の会入会案内をさせていただきま す。 「錯体化学若手の会」とは? 本会は、錯体化学会の支部として錯体化学に関連した分野で研究を行ってい る若手の研究者(大学・企業・研究所の研究者)及び大学生・大学院生の交流・ 情報交換を通して、自らの研究に対する情熱と知識を高め、エンカレッジする 会です(今年度若手の会会員数 349 名。錯体化学に関心のある方なら、学生・ スタッフ・企業人・大学関係者等、資格は問いません。会の活動と会員特典を 以下に示します。 ・ 錯体化学討論会への学生参加登録資格 ・ 錯体化学討論会におけるポスター賞の応募資格 ・ 錯体化学夏の学校の開催(会員割引有り) ・ 支部単位の勉強会の開催 ・ 錯体化学若手の会ニュース(年4回)の配布 ・ 錯体化学会誌(BJSCC)の配布 ・ 若手の会会員名簿の閲覧(web) ・ 錯体化学会のメーリングリストによる全国の錯体化学会員への情報発信 錯体化学若手の会 入会手続き(新規・更新とも)のご案内 学生の方(新規・更新とも) ① http://sakutai.jp/yccaj/join.htm から「会員登録フォーム」をクリック ② フォームにて必要事項を記入する。 ③ 年会費 1000 円を以下の口座に払い込む(郵便局振替口座) 口座名義:錯体化学若手の会 口座番号:02200-6-107172 【郵便局以外からの振込みの場合】 店名:二二九 口座番号:当座 0107172 ※研究室でまとめて払い込みを行う場合、払込書に入会者全員の氏名を記入して ください。 ④ 事務局で入金を確認次第、ID・パスワードが発行され、会員登録の完了とな ります。 注:学生会員の場合、自動更新ではないため、更新の場合も年次ごとに登 録が必要となります。 学生以外(大学教員・研究者など)の方(新規) ① 錯体化学若手の会事務局([email protected])にご連絡ください。 学生以外(大学教員・研究者など)の方(更新) 特に手続きは必要ありません。退会しない限り、自動更新となります。 登録に際して集めた情報のうち、本人の同意がある情報に関しては錯体化学若 手の会及び錯体化学会の会員名簿冊子に記載されます。平成17年4月より「個 人情報保護法」が施行になりましたので、以上をご理解いただき会員登録の際 に名簿への記載に関して同意いただけるかどうかを必ず明記いただけるようお 願い申し上げます。詳細は HP を参照するか下記事務局までお問い合わせくださ い。 錯体化学若手の会事務局 〒113‐0033 東京都文京区本郷 7-3-1 東京大学大学院理学研究科化学専攻 西原研究室 久米 晶子(広報・渉外担当) TEL:03-5841-4348 E-mail: [email protected] 〒980-8578 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉 6-3 東北大学大学院理学研究科化学専攻 山下研究室 高石 慎也(会員情報管理・会計担当) TEL:03-5841-4348 E-mail: [email protected] 錯体化学若手の会ホームページ http://www.sakutai.jp/yccaj/ (6)事務局より 2009 年度事務局 東京大学 久米晶子 2009 年度もあっという間に終わろうとしていますが、今年度担当させていただ きました事務局(渉外/広報)は責任感と同時に発信型の面白い仕事だというこ とをとようやく実感しております。若手の会は若手でなければ持ち得ない問題 意識(破壊と建設に対して柔軟な)を共有し、さらに企画の形にまでできる得難 い場所だと思います。ここ数年来、夏の学校や勉強会、シンポジウムなど若手 の会発の企画が充実してきており、特に若い学生の方々が力を入れて会を引っ 張っているところなど、逆に勉強させていただくこと頻りにありました。また 裏方の会員登録の web 化等、大変な改革を高石先生にご尽力いただきました。 本年度若手の会の活動を御支援頂きました関係者の方々、また何より実際に会 を盛り上げた若手の会員の皆様に感謝すると同時に、ますます若手からの発信 型の会になりますよう、今後も積極的なご参加をお願い申し上げます。