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獣肉軟化剤の効果について
12-一 食 物 学 会 誌 ・第14号 獣 肉 軟 化 剤 の効 果 に つ い て 浜 野 八 木 太 ま え が き キ 由 ョ 紀 子 田 第1図 馨 ミー トソ フ ナ ー の最 適 温 度 酵 素 作 用 を 加 工 に利 用 した 食 品 は 数 多 く 見 ら れ る が,酵 素 を 直接 調 理 に 応 用 す る こ とは 今 まで ほ とん ど 行 な わ れ て い な か っ た 。 しか し最 近 に な りそ の 応 用 の 一 つ と して獣 肉 軟 化 剤(ミ ー トテ ン ダ ライ ザ ー と も呼 ば れ る)が 市 販 され る よ うに な っ た 。 本 剤 の 主 体 は プ ロテ ア ー ゼで あ り,米 国 で は 主 に パ パ イ ンが 用 い られ て い るが,パ 1) パ イ ン以 外 の プ ロ テ ア ー ゼ も同 じ効 果 が あ り,別 所 らは か び の 酸性 プ ロテ ア ーゼが 適 して い る と述 べ て い る。 現 在 市 販 の 獣 肉 軟化 剤 は 普 通 粉 末 状 で 香 辛 料 が 混 合 され て お り,肉 類 特 に か たい 肉 に ふ りか ミー トソ7ナ ー の 最 適pH け て 軟 か くす る 目的 に 使 い 各 種 の 商 品 名 の も の が あ リ ン酸 緩 衝 液 に て 各 る。 しか し,こ れ らの 軟 化 剤 の 酵 素 的 特 性 お よ び実 用 質 液 お よび1%ソ 的 効 果 に つ い て は 明 らか で な く,し た が っ て一 般 に 知 で40QC,30分 られ て い な い の で,こ れ ら の こ とを 明 らか に し,よ り R.pHの4°oカ フ ナ ー液 を 調 整 し,前 項 同様 の方 法 間 反 応 せ しめ,ホ た 。実 験 結 果 を 図 示 す れ ば 第2図 2,3の pHは5,2附 実 験 の 5∼6の 部 実 験 に 用 い た 獣 肉軟 化 剤 は 市 販 の ミー トソフ ナ ー( 日 本 イ ン ス タ ン ト食 品株 式 会 社 製)で ル モール法 に よりア ミノ態 窒 素 を 定 量 して 活 性 度 を 比 較 し最 適pHを 合 理 的 な 使 用 を 役 立 た せ るた め 本 実 験 を 行 っ た 結 果 知 見 を 得 た の で 報 告 す る。 ゼ イ ン ソ ー ダ基 求め の 通 りで あ り,最 適 近 で あ る。 パ パ イ ン の 最 適pHが 一・ 般に 範 囲 に あ る こ と と よ く一 致 す る。 第2図 ミー ト ソ フ ナ ー の 最 適pH あ り,本 剤 は パ パ イ ンを プ ロテ ア ー ゼ の 主 体 と して お り,他 に8種 類 の 香 辛 料 が 配 合 され た 粉 末 状 で あ る。 ミー トソ フ ナ ー の 最 適 温 度 リ ン酸 塩 緩 衝 液(pH 質 液25拠4に1%ミ 6)の4%カ ー トソ フ ナ ー液(pH ゼ イ ン ソー ダ基 6)5鶴6を 加 え,各 種 温 度 に30分 間 反 応 せ しめ,後5分 間沸騰 湯 浴 中 につ け て 反 応 を 停 止 し,ホ ル モ ール 法 に て ア ミノ 態 窒 素 を 定 量 して 酵 素 活 性 を 比 較 した 。 実 験 結 果 を 図 示 す れ ば,第1図 の ご と くで あ り,ミ ー トソ フ ナ ー の 最 適 温 度 は400C前 温 度400Cよ るが,40。C以 80。Cで 後 で あ る こ とを 知 った 。 ま た 最 適 り低 い 温 度 で は 急 激 に 酵 素 活 性 は 低 下 す 上 で は あ ま り酵 素 作 用 は 低 下 せ ず, もか な りの 活 性 を 有 す る こ とを 知 った 。 した 肉 類 のpHは 一 般 に7前 後 で あ る た め,ミ ー トソ フ ナ ー 使 用 に あ た っ て は 酢 な どを 用 い てpH-5,2附 近 に す る 事 が 望 ま しい 。 活 性化 実験 ミ ー トソフ ナ ー の プ ロ テ ア ー ゼ の主 体 は パ パ イ ンで が っ て ミー ト ソフ ナ ー処 理 後 加 熱 調 理 中 に もか な りの あ る か ら,ミ ii度 ま で 酵 素 作 用 は 行 な わ れ る。 ン,青 酸 塩 な どに よ って 活 性 化 され るは ず で あ る。 こ ス テ ィ ン,硫 化 水 素,還 元 型 グル タ チ オ (2 一13一 昭 禾038年8ノ 弓 (1963) の 点 を 明 らか に す るた め 硫 化 水 素,シ ス テ ィンに よる け るべ きで あ り,ミ 活 性 化 試,〉を 行 っ た 。 硫 化 水 素 賦 活 の場 合 は1°oミ ー トソ フナ ー液50〃曜 に精 製 硫 化 水 素 ガ ス を30分 間 通 じ これ よ り5彿4を っ て酵 素 液 と し,シ ス テ ィンの 場 合 は1%ミ と 肉 蛋 白 質 に対 す る 軟 化 効 果 実 際 に 肉 片 を ミー トソフ ナ ー処 理 し,肉 の 軟 化 度 合 5.2)25〃34に で30分 ル モ ール 法 に よ りア ミノ態 加 え て40)し り対 照 と比 較 した 。 肉 眼 的 に 見 て 均 一 な市 販 の 赤 味 の 牛 肉片 を シ ャー レ に と り,1°oミ け,40。C定 窒 素 を 定 量 して 活 性 度 を 対 照 区 と比 較 した 。 ス テ ィン う方 が よい 。 を 可 溶 性 全 窒 素 お よび可 溶 性 ア ミノ態 窒 素 の 定 量 に よ ゼ イ ン ソ ー ダ基 質 液(pH 実 験 結 牙 を 表 示 す れ ば第1表 ー トソフ ナ ー処 理 後 味 付 け を行 な な るよ うに 調 製 した もの5〃 曜 を 酵 素 液 と し,こ れ を4°oカ 間 反 応 せ しめ,ホ ょ うゆ に よ る 味 付 け は さ ー トソフ ナ ー液 中 の シ ス テ ィンの 最 終 濃度 が0.0ユMに に 硫 化 水 素,シ ソフ ナ ー処 理 時 に は 食 塩,し の 通 りで あ り,明 らか ス テ ィ ンに よ り活 性 化 され た 。 ま た シ 硫 化 素 よ りも約J倍 活性 化 の 強 い こ とを み ノ ー トソ フ ナ ー 処 理 区 と無 処 理 区 と に 分 温 器 中 に 保 ち,一 定 時 間 後2gを し,乳 鉢 に て10ηz4のpH-5.2リ 分 磨 砕 後 一 定 量100〃24と 第3図 とめ た。 ン酸 緩 衝 液 と共 に充 して 炉 過,炉 液IOni.e中 の ミー トソフ ナ ー処 理 に よ る 肉 の可 溶 性 全 窒 素 の 増 加 活 性 化 の 機 構 に つ い て は,パ パ イ ン分 子 中 の 一SH 基 が 酸 化 剤 に よ り脱 水 素 され て 一S-S基 活 性 化 し,こ れ が 賦 活 剤 に 一S-S-:が とな り,不 再 び還 元 され て 活 性 パ パ イ ン と な る と思 わ れ る。 ミー トソ フ ナ ー の 使 用時 に おい て も 賦 活 剤 の併 用が 望 まれ る。 第1表 ミー トソフ ナ ー活 性 化 試 験 結 果 (カ ゼ イ ン ソ1ダ19よ 賦 活 剤 りの ア ミノ態 窒 素 量mg) i対 ア ミノ態 窒 家 重 照 H・Slシ ス テ ・ン 5.6516.Q6 6.86 7.1 活 性 化 率(%) 21.4 阻害試験 家 庭 に お い て ミー ト ソフ ナ ーを使 用 す る場 合 各 種 の 調 味 料 と併 用 す る こ とが 多 い が,調 い か に 影 響 す るか,ま 味料が酵素 作用に た どの 程 度 に 影 響 す るか を 知 る こ とは必 要 で あ る 。 食 塩 が 調 味 料 中 最 も普 通 の もの で 第4図 あ るか ら,食 塩 の阻 害 作 用 に つ い て試 験 した 。 食塩 濃 度0.5°o,1°o,5°o;カ 4%液 をpH 5.2の 25翅6に1%ミ ゼ イ ン ソー ダ 濃 度 リン酸 塩 緩 衝 液 に て調 製 し,そ ー トソ フナ ー液5伽4を 30分 間 反 応 せ しめ,ア の 加 え,40。Cで ミノ態 窒 素 を ホ ル モ ール 法 で 定 量 しそ の活 性 度 を 対 照 区 と比 較 した 。 実 験 結 果 を 表 示 す れ ば第2表 の ご と くで あ り,食 塩 は 阻 害 作 用 を 示 し,高 濃 度 ほ ど阻 害 度 は 大 で あ る。 した が って ミー ト 第2表 ミー トソ フ ナ ー に 対す る食 塩 の阻 害 度 (カ ゼ イ ン ソー ダ19よ 食塩濃劇 対 照 ア ミノ態 窒 素 量 5.65 阻 害 度(%)1 りの ア ミノ態 窒 素 量mg) 0,5°oJ1°05°o 5.47 5.3415.26 3.3 5.5[7.・ とり出 w一 ソ フ ナ ー処 理 に よ る 肉 の 可 溶 性 ア ミノ態 窒 素 の 増 加 一14一 食 物 学 会 誌 ・第14号 全 窒 素 を ケ ル ダ ール 法 に て,ア ミノ態 窒 素 を ホ ル モ ー ル法 に て 定 量 した。 実 験 結 果 を 図 示 す る と第3図 第4図 及び の ご と くで あ る 。 ミー トソ フ ナ ー処 理 に よ り可 軟 化 が 認 め られ,最 適 温 度,最 適pH処 大 で あ る のは 当 然 で あ るが,酵 素 濃 度 の差 に よ って は あ ま り関 係 が な か った 。 溶 性 全 窒 素,可 溶 性 ア ミノ態 窒 素 は か な り増 加 し,肉 の 軟 化 を 示 して い る。 肉 片 を つ ぶ して ミー ト ソフ ナ ー 処 理 を した も の を 比 較 の た め 行 な っ た が,肉 第5図 す るめ の軟 化度 第6図 大豆 の軟化 度 片 のま ま ふ りか け た もの よ り可 溶性 窒 素 は 多 く軟 化 度 が 大 で あ っ たr,故 に 厚 い 肉 に ミー トソ フ ナ ーを 使 用 す る場 合 は 切 目を入 れ た り,フ ォ ー ク で つ き さ した りして か らふ りか け る方 が 一 層 効 果 的 で あ る。 結 締 組 織 に 対 す る軟 化 効 果 食 生 活 に お け る 肉 の 軟 化 の問 題 点 は 結 締 組 織 を 形 成 して い る 蛋 白 質 に 対 す る作 用 で あ る。 よっ て 結 締 組 織 に 対 す る軟 化 効 果 を 検 討 した 。 鯨 肉 中 の 白 い 筋 を 取 り,附 着 す る赤 味 の 肉 を 完 全 に 除 き,水 分 を 源 紙 に 吸 収 させ た 後,1%量 け,400C定 の ミー トソ フナ ーを 均 一 に ふ りか 温 器 中 に1時 間 県 ち,前 項 同様 に 処 理 し て ホル モ ール 法 に よ り可 溶 性 ア ミノ態 窒 素 を 定 量 し対 照 と比 較 した 。 実 験 結 果 は 第3表 の通 りで あ り,結 締 組 織 蛋 白 質 に 対 して も 作 用 し軟 化 が 認 め られ る。 第3表 ミー トソフ ナ ー処 理 に よ る結 締 組 織 か ら の可 溶 性 ア ミノ態 窒 素 分1無 区 可 溶 性 ア ミノ態 窒 素 増 加 率 魍 巨%ソ 0.1176 (mg) フナー姻 0.1289 7 (0) 硬 度 計 に よ る軟 化 度 の 測 定 前 項 ま で は 肉 蛋 白 質 の 軟 化 を 化 学 的 に 検 討 して 効 果 の あ る こ とを 見 た が,さ らに 物 理 的 に硬 度 計 に よる軟 化 効 果 を 測 定 した 。 硬 度 計 に は 木 屋 式 硬 度 計 を 用 い た が,種 々 の材 料 で 実 験 した 結 果,こ 材 料 は,す るめ,大 の 硬 度 計 に 適 した 豆 で あ った 。 す るめ は1.5×3clnの 長 方 形 に 切 り,1°o,5°oミ ー トソ フナ ー液 お よび 水 に400C ,70Cで 浸 漬 し,時 間 の 経 過 に よ る軟 化 度 を 測 定 した 。 処 理 試 料 を 内 径8m m高 さ1cmの ガ ラ ス管 に 糸 で 固 く しば りつ け,硬 計 の試 料 台 上 に 乗 せ,加 度 圧 ハ ン ドル を 一 定 速 度 で 廻 し て 加 圧 し,試 料 の破 壊 す る時 の加 重 を 測 定 した 。 大 豆 も 同 じ.ように ミー トソ フ ナ ー 液 と水 に40°C, 7。Cで 浸 漬 し,時 間 の 経 過 に よ る軟 化 度 を 破 壊 加 重 に よ り測 定 した 。 実 験 結 果 を 図 示 す れ ば第5図 お よび 第6図 のごとく で あ り,い ず れ も ミー ト ソフ ナ ー処 理 に よ りか な りの 理 の方 が 軟 化 一15一 昭 和38年8月(1963) 魚 皮,魚 骨 に つ い て も同 様 に処 理 し硬 度 を 測 定 した が,本 3.ミo一 硬 度 計 に よっ て は 一 定 の 関 係 を 示 す 結 果 が 得 ら トソ フナ ー処 理 に よ り肉 蛋 白 質 お よび結 締 組 織 中 の 可 溶 性 全 窒 素 お よび 可 溶性 ア ミノ態 窒 れ なか った。 素 は 増 加,蛋 総 4.す 括 白 質 は 分 解 され 軟 化 す る。 るめ,大 豆 ば ミー ト ソフ ナ ー 処 理 に よ りか な り軟 化 す る。 獣 肉 軟 化 剤 の一 つ で あ る市 販 の ミー トソ フナ ー の 酵 5.以 素 的 特 性 お よび実 用 的効 果 に つ い て 実 験 を 行 な い 次 の 上 総 括 す れ ば 獣 肉軟 化 剤 は 実 用 的 価 値 を 示 し,広 く使 用 され る こ とが 望 まれ る。 諸 点 を 明 らか に した 。 1.ミ ー トソフ ナ ーの 最 適 温 度 は400C前 pHは5.2附 2.ミ 後,最 1)下 近 で あ る。 ー トソ フナ ーは シ ス テ ァン,硫 化 水 素 な ど 一 SH基 る。 に よ り活 性 化 され,食 参 適 塩 に よ り阻 害 され 考 文 献 田吉 人;基 礎 調 理 学1,200朝 倉書 店 2)満 田久 輝;実 3)赤 堀 四 郎;酵 素 研 究 法2.295朝 倉 書 店 験 栄 養 化 学 皿,410い ずみ書 店