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章 相互の理解と交流
●第1編 第 2 章 相互の理解と交流 会参加への意欲並びに国民の障害者問題に 対する理解と認識をより一層高めるための 運動を展開することとされている。 その一環として,内閣府では都道府県・ 指定都市との共催により,「心の輪を広げ る体験作文」(平成元年度∼)及び「障害 者の日のポスター」(平成5年度∼)の募 集を実施しており,平成15年度においては, 8,553編の作文と3,150点のポスター原画の 応募があった。全国の小中学生を対象にし た「障害者の日のポスター」原画の最優秀 作品の中からポスターを作成し,地方公共 団体,関係団体等を通じて,障害者週間に 向けて全国で掲示した。また,障害者週間 における中央行事として,都道府県・指定 都市において選抜された「障害者の日のポ スター」原画の優秀作品約100点について, 東京都と大阪府の2か所で展示するととも に,作文とポスターの入賞作を掲載した作 品集を作成し,都道府県・関係団体に配布 した。 「障害者の日」である12月9日には,毎 年「障害者の日」記念の集いを開催してお り,平成15年度は第1部で「心の輪を広げ る体験作文・障害者の日のポスター」最優 秀者への内閣総理大臣表彰を行い,第2部 で車いすダンスパフォーマンス及び歌唱を 行った。 このほか,テレビ・ラジオ・定期刊行物 等を通じて政府広報を実施し,共生社会の 理念の国民への普及を図った。 第1節 障害のある人に対する理解を 深めるための啓発広報等 1 啓発・広報活動の推進 (1)啓発・広報の基本的な方針 我が国の障害者施策は,障害のある人も ない人も共に生活し活動できる社会の構築 を目指すノーマライゼーションの理念に基 づき,障害のある人の自立と社会参加の推 進に向けて総合的に推進している。 「障害者基本計画」においては,21世紀 に我が国が目指すべき社会を「障害の有無 にかかわらず,国民誰もが相互に人格と個 性を尊重し支え合う共生社会」としている。 こうした共生社会は,行政だけでなく企業, NPO等を含むすべての社会構成員が価値 観を共有し,それぞれの役割と責任を自覚 して主体的に取り組むことによって初めて 実現できるものであり,その意味では,国 民一人ひとりの理解と協力を促進すること が大変重要である。このため,「重点施策 実施5か年計画」においては,共生社会の 用語,考え方の周知度を障害者基本計画の 計画期間中に成人国民の50%以上とするこ とを目標として掲げ,啓発・広報を推進し ていくこととしている。 (2)「障害者の日」, 「障害者週間」 障害者基本法において12月9日は「障害 者の日」と定められ,また,平成7年度か らは障害者施策推進本部決定により,12月 3日から12月9日までの1週間を「障害者 週間」として,障害のある人の自立及び社 7 第 2 章 相 互 の 理 解 と 交 流 心の輪を広げる体験作文等の募集事業 障害のある人に対する「心の壁」を取り除くための啓発広報として,平成元年度から, 「出会い,ふれあい,心の輪」を基本テーマに「心の輪を広げる体験作文等の募集事業」 を実施している。 「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者の日のポスター」 平成15年度入賞者作品集講評より 心の輪を広げる体験作文審査講評:黒井千次委員長 今年の作文からは,障害のある人とない人との間の様々の交流が一層深まり,また障 害者自身の今を生きる力強い姿が以前よりも鮮明に浮かび上ってきつつある,との印象 を受けた。 山形市の小学三年生,後藤大樹さんの「パン屋さんのお姉ちゃん」は,学校の総合学 習で耳の聞えない人に会いに行った体験を描いているが,率直な疑問や自分の想像を通 して相手の気持ちを理解しようとする熱意が初々しく表現されている。このような姿勢 こそが心の交流の出発点であるに違いない,と感じさせる作品である。 宮城県名取市の中学一年生,渡辺菜々さんの「卒業式の思い出」は,耳がほとんど聞 こえない作者の小学校の卒業式のことを振り返っている。一人ずつメッセージを発表す る際に,親切な友達を大切にして助け合いたい,という渡辺さんの言葉を,四人の同級 生が紙に大きく書いて出席者たちに掲げて見せてくれた時の感動が綴られる。そしてこ の友情の中で,友達が何か悩んでいたら相談にのって助けてあげたい,という思いが渡 辺さんの中に自然に湧いてくる。障害者はいつも助けられる側にいるのではなく,助け る側にもいるのだ,との自覚は,心の輪を広げる上での貴重な第一歩である。本当の交 流は対等の立場でのみ成り立つことをあらためて教えられる。 ● 第 1 編 和歌山盲学校二年生,石田由香理さんの点字作文「もう一つの世界」もまた,目の見 える人に教えてもらった広い世界に対して目の見えない自分の中にある想像の世界を伝 えたい,と願う積極的な気持ちがしっかりした文章で記されている。 熊本市の高校一年生,清田恵子さんの「笑顔と出会う」には,医者である両親ととも 8 ●第1編 に患者の人たちを花見に連れて行った体験が登場する。気の進まなかった自分が身体の 不自由な人々に触れているうちに変わっていく様子が感動的である。それは花見の花よ りもっと美しい。 障害者の日のポスター審査講評:杉田 豊委員 小・中学生とも応募点数が減少したと聞き及んでおりましたので,いささか気掛かり でした。しかし,審査会場には明るさと華やかな色彩が見られたのです。同席された皆 さんも異口同音に『明るい』と言われました。 その証しのような小学生部門・最優秀賞の竹内翔祐さんの作品。障害者と一緒の社交 ダンスはユニークなモチーフです。明るく,力強い大胆な構成と,暖かい色調で仕上げ ている技量は見事でした。見る人を自然に微笑みに引き込む雰囲気があり,彩色から音 律も伝わってくる視覚言語をもつ秀逸な一点です。優秀賞の内山諒哉さんの穏和な色彩 で描いた介助の様子には素直な人間性が感じられ,触れ合う温かい心には素朴な説得力 がありました。佳作の伊藤浩太郎さんの作品は,小学生とは思えない程の高度なデザイ ンです。画面構成と色彩設計は素晴らしく,知的で現代感覚の表現です。中野貴斗さん の絵は自由奔放な筆致が個性的に映ります。堂々とした障害者と可愛い盲導犬が楽しい。 写実描画の佐久間玲子さん。面白く,魅力的な画面構成の木下沙耶さん。松本直士さん の作品も視覚伝達の強さがありました。 中学生部門・最優秀賞の北川睦美さんの計算された構図と色調には,ポスター制作に対す る姿勢がきちんと表出していました。優秀賞・村松琴美さんの幾何学的な構成にも,真面目 な訴えを堅実に表しております。佳作の澤田篤志さんは対照的な軟らかなタッチで酒脱な絵 を描いています。松本亜里さんの丁寧で丹念な絵づくりは,楽しくて明るい情景でした。青 空に浮かぶ白い雲を題材にした谷口綾香さんも優しい。大きな笑顔の人々で,障害者と一緒 に生きる山口麻樹さんの絵。土肥由梨香さんの独特な色調と描画は高い技術です。 ポスターの制作にはアイデアやテクニックも大切ですが,人を思いやる心が原動力に なって『障害者の日』への訴求効果を高めていると思います。 (注)内閣府ホームページ(http://www8.cao.go.jp/shougai/index.html)において,入賞 者の作品の閲覧ができます。 9 第 2 章 相 互 の 理 解 と 交 流 (3)その他の週間・月間等 このほか,各種の週間・月間等の活動の 中でも,障害のある人への理解を深めるた めの啓発広報活動を展開した。「人権週間」 (12月4日∼12月10日)では,「障害のある 人の完全参加と平等を実現しよう」を強調 事項に掲げ,法務局等の人権擁護機関を通 じて啓発広報を進めている。また,精神に 障害のある人に対する早期かつ適切な医療 の提供及び社会復帰の促進等について,国 民の理解を深めることを目的とした「精神 保健福祉普及運動」(10月27日∼11月2日) や精神保健福祉全国大会等の行事が実施さ れている。 障害のある人の雇用の促進と職業の安定 を図ることを目的として,障害のある人か ら募集した絵画や写真を原画とした啓発用 ポスターを作成して,全国に掲示するほか, 障害者雇用優良事業所等表彰,障害者雇用 促進月間ポスター原画表彰及び障害者雇用 職場改善好事例表彰を始め,各都道府県に おいても,障害者雇用促進のための啓発活 動が実施されている。 このほか,関係省庁では,民間団体等が 主体的に実施する障害者関係の各種の啓発 広報事業を後援しており,平成15年度にお ける府省別の後援件数をみると,内閣府28 件,文部科学省81件,厚生労働省131件な どとなっている。民間団体等の啓発広報事 業は,障害者団体の定期的な大会や社会情 勢等を踏まえてその時々に設定したテーマ に沿った催し等,多種多様なものとなって いる。 (4)心の健康問題の正しい理解の促進 精神保健福祉サービスは,原則として, サービスを要する本人の居住する地域で提 供されるべきであるとする考え方に基づ き,これまでの入院医療主体の在り方から 地域における保健・医療・福祉を中心とし た在り方へ転換するための各種施策を進め ていくことが重要であるが,これを実現し ていくためには,精神疾患及び精神に障害 のある人に対する正しい理解の促進を図る ことが,各施策に共通する重要かつ必要不 可欠な視点である。このため,厚生労働省 では平成15年秋から「心の健康問題の正し い理解のための普及啓発検討会」を開催し, 精神疾患等に対する正しい理解の普及・啓 発のための指針の策定及び普及・啓発の具 体的方策について,当事者・実践者からの 意見聴取等も行いつつ検討を進めた結果, 平成16年3月に,国民各層が精神疾患を正 しく理解し,新しい一歩を踏み出すための 指針である「こころのバリアフリー宣言」 をまとめるとともに,社会の各主体が,そ の趣旨をどのように普及・啓発していくの かについて取りまとめ,報告した。 こころのバリアフリー宣言 ∼精神疾患を正しく理解し,新しい一歩を踏み出すための指針∼ ● 第 1 編 【あなたは絶対に自信がありますか,心の健康に?】 第1:精神疾患を自分の問題として考えていますか(関心) ・ 精神疾患は,糖尿病や高血圧と同じで誰でもかかる可能性があります。 10 ●第1編 ・ 2人に1人は過去1ヶ月間にストレスを感じていて,生涯を通じて5人に1 人は精神疾患にかかるといわれています。 第2:無理しないで,心も身体も(予防) ・ ストレスにうまく対処し,ストレスをできるだけ減らす生活を心がけましょう。 ・ 自分のストレスの要因を見極め,自分なりのストレス対処方法を身につけま しょう。 ・ サポートが得られるような人間関係づくりにつとめましょう。 第3:気づいていますか,心の不調(気づき) ・ 早い段階での気づきが重要です。 ・ 早期発見,早期治療が回復への近道です。 ・ 不眠や不安が主な最初のサイン。おかしいと思ったら気軽に相談を。 第4:知っていますか,精神疾患への正しい対応(自己・周囲の認識) ・ 病気を正しく理解し,焦らず時間をかけて克服していきましょう。 ・ 休養が大事,自分のリズムをとりもどそう。急がばまわれも大切です。 ・ 家族や周囲の過干渉,非難は回復を遅らせることも知ってください。 【社会の支援が大事,共生の社会を目指して】 第5:自分で心のバリアを作らない(肯定) ・ 先入観に基づくかたくなな態度をとらないで。 ・ 精神疾患や精神障害者に対する誤解や偏見は,古くからの慣習や風評,不正 確な事件報道や情報等により,正しい知識が伝わっていないことから生じる 単なる先入観です。 ・ 誤解や偏見に基づく拒否的態度は,その人を深く傷つけ病状をも悪化させる ことさえあります。 第6:認め合おう,自分らしく生きている姿を(受容) ・ 誰もが自分の暮らしている地域(街)で幸せに生きることが自然な姿。 ・ 誰もが他者から受け入れられることにより,自らの力をより発揮できます。 第7:出会いは理解の第一歩(出会い) ・ 理解を深める体験の機会を活かそう。 ・ 人との多くの出会いの機会を持つことがお互いの理解の第一歩となるはずです。 ・ 身近な交流の中で自らを語り合えることが大切です。 第8:互いに支えあう社会づくり(参画) ・ 人格と個性を尊重して互いに支え合う共生社会を共につくり上げよう。 ・ 精神障害者も社会の一員として誇りを持って積極的に参画することが大切です。 11 第 2 章 相 互 の 理 解 と 交 流 (5)バリアフリー化推進功労者の表彰 障害のある人や高齢者を含むすべての人 が安心で快適な社会生活を送ることができ るよう,社会全体のバリアフリー化を推進 する観点から,平成13年度に「バリアフリ ー化推進功労者表彰制度」を創設し,バリ アフリー化の推進について顕著な功績又は 功労のあった個人・団体に対し,内閣総理 大臣表彰等を行うことを通じて,バリアフ リー化に関する優れた取組の普及に努めて いる。平成15年度においては12団体等の取 組に対し表彰を行った。 ●図表1-3 平成15年度バリアフリー化推進功労者表彰 【内閣総理大臣表彰】 受 賞 者 名 京成ホテル株式会社(千葉県千葉市) 傘下のホテルのバリアフリー化に際して,障害者団体からの意見を聞きながら,手作りで取組むことによりコスト を抑え,その結果を他のホテルの整備にフィードバックしている。また,障害者別サービスメニューパンフレット の作成等ソフト面でもきめ細かなサービスを行っている。 【内閣官房長官表彰】 受 賞 者 名 伊勢佐木町1・2丁目地区商店街振興組合(神奈川県横浜市) 障害者団体などと連携し,店内に障害者の作品を展示する障害者アート展を開催するなどハード,ソフトにわたる バリアフリーのまちづくりを行っている。 岐阜経済大学まちなか共同研究室 マイスター倶楽部(岐阜県大垣市) 大学の学生を中心に,バリアフリーマップの作成やノンステップバス体験試乗会などバリアフリーに関連する様々 な実践活動を行うとともに,積極的な提言により行政や地元商店街にも影響を与えている。 訓子府町(北海道常呂郡訓子府町) 道路整備,商店街近代化,電線類地中化のほか,役場庁舎・総合福祉センターの整備等バリアフリーをコンセプト としたまちづくりを行政と住民が一体となって行った。 医療法人圭佑会 澤歯科医院(滋賀県長浜市) 「蔵」のような伝統的な様式の建物で,車いすに乗ったまま診療できるなど,誰もが安心して利用できる歯科医院 を開業している。 誰もが住みよい街づくり懇話会(神奈川県伊勢原市) 10年にわたり高齢者,障害者の視点で市内の道路,施設等を点検し,公表する活動を行い,市民の意識を醸成しソ フト面でのバリアフリー化に貢献している。 特定非営利活動法人 日本サスティナブル・コミュニティ・センター(京都府京都市) 介助者なしで,音声のみでキーボードのマスターができるように開発されたキーボード学習ソフトを開発した。 肥後タクシー有限会社(熊本県熊本市) 車両に工夫を重ね,普通タクシーと同一料金で,車いすなど様々なニーズに対応できる小型のユニバーサルデザイ ンタクシーを日本で初めて導入した。 広島電鉄株式会社(広島県広島市) 段差がなく,出入口も広い超低床路面電車を計画的に導入しているほか,幅の拡幅,スロープの傾斜の緩和など, 電停の整備も順次行っている。 福岡県田川郡大任町立大任小学校(福岡県田川郡大任町) 「総合的な学習の時間」に地元の精神障害者通所授産施設との交流を継続的に行っている。 ● 第 1 編 村山輝子(千葉県習志野市) 自らオストメイトであることを公表して街頭に立ち,「オストメイト対応トイレ」の必要性を強く訴え,社会の理 解とその普及に努めている。 有限会社料亭こもだ(大阪府藤井寺市) 和室への車いすの乗り入れ,和室と洋室の仕切の取り外しにより健常者と障害者が自然に同席できるような工夫な ど,障害者,高齢者などすべての人が料理を楽しむための配慮がなされている。 資料:内閣府 12 ●第1編 (6)障害者施策に関する情報提供 政府等が実施している各種施策の状況に ついて積極的に情報提供していくことは, 国民全体の理解を得ながら障害者施策を進 める上で欠くことのできないものである。 このため,国会に報告する「障害者白書」 のほか,「障害者施策関係予算の概要」, 「障害者プランの進捗状況」等についても 毎年調査し,公表している。 「障害者プランの進捗状況」については, 平成14年度末が計画期間の終期に当たった が, この時点での施策の進捗状況をみると, 一部立ち遅れがみられる分野はあるもの の, 全般的にはおおむね順調に進んでおり, 「障害者プラン」が計画期間中の障害者施 策の推進に大きく寄与したものといえる。 今後は,障害者プランに代わる新たな「重 点施策実施5か年計画」の進捗状況につい て,障害者白書等を通じて公表していくこ とになる。 ろう 機会である。このため,現行の盲学校,聾 学校及び養護学校の教育要領・学習指導要 領においても,その意義を一層明確に示す とともに,総合的な学習の時間の学習活動 の例の一つとして交流活動を示している。 また,幼稚園から高等学校までの学習指導 要領等においても,障害のある子どもとの 交流について明確に示したほか,小・中学 校の教員等を対象とする講習会を実施する など交流教育の充実に努めている。 運動会での交流 2 福祉教育等の推進 (1)学校教育における取組 学校教育において,福祉についての正し い理解を深めることは重要なことであり, 現行の学習指導要領においても,引き続き 福祉に関する指導を進めることとしてい る。具体的には,児童生徒の発達段階に応 じて,社会科,家庭科,道徳等において, 社会福祉についての理解を深める指導を行 うとともに,思いやりの心,社会奉仕の精 神などの育成を図っている。 障害のある子どもと障害のない子どもや 地域の人々が活動を共にする交流教育は, すべての子どもの社会性や豊かな人間性を 育成する上で大きな意義があるばかりでな く,地域の人々が障害のある子どもに対す る正しい理解と認識を深める上でも重要な 13 (2)地域住民への啓発・広報 すべての人々が利用しやすいバリアフリ ーのまちづくりの整備を進めるには,障害 のある人や高齢者等の声を直接反映させる ことが肝要であることから,平成13年度に 創設した「バリアフリーのまちづくり活動 事業」(障害者や高齢者にやさしいまちづ くり推進事業の組替え)において,バリア フリーのまちづくりの計画,整備に関する 協議会等を設置し,まちづくりの目的,計 画,基本方針,生活環境,基盤整備計画, 将来構想を定めた基本計画の策定,地域住 民,民間事業者に対する啓発・広報等を行 っている。 精神保健福祉センターや保健所では,精 神に障害のある人に対する正しい理解を促 第 2 章 相 互 の 理 解 と 交 流 すため,住民に対する精神保健福祉知識の 普及・啓発を行っている。 青少年の学校外活動や成人一般,高齢者 の学習活動において,障害のある人に関す る問題を重要な学習課題の1つとして位置 づけ,社会教育施設における学級・講座や 大学公開講座等においては,障害のある人 に関する学習機会を提供し,理解の促進を 図っている。 このほか,福祉やボランティア等に関す る内容を扱った教育映画及びビデオテープ 等について,教育上価値が高く,学校教育 又は社会教育に広く利用されることが適当 と認められるものを「文部科学省選定」と するとともに,テレビ生涯学習番組「いき いき!夢キラリ」の制作・放送及び調査研 究の事業を通じて,福祉やボランティアへ の理解を図っている。 解を促進するとともに,適切な対応の仕方 について講義している。平成15年度には, 人権に配慮した処遇を推進する立場から, 福祉施設体験実習の新設,精神医学の講義 時間の拡大など充実を図った。 新任保護観察官を対象にした研修におい ては,障害者理解を含む人権全般に関する 講義及び精神に障害のある人に関する知識 を深める講義を実施し,また,中堅の保護 観察官を対象にした研修においては,精神 障害に関する講義を実施し,さらに,指導的 立場にある保護観察官を対象にした研修にお いては,精神に障害のある人等が入所する 施設の見学を実施する等,職員に対し,そ の立場に応じた研修により,障害のある人に 対する理解の促進とその徹底を図っている。 3 公共サービス従事者に対する障害 (1)学校におけるボランティア教育 学校教育においては,豊かな心をもち, たくましく生きる人間の育成を図ることが 重要であり,そのためには,他人を思いや る心や感謝の心,公共のために尽くす心を 育てることなどに配慮する必要がある。ま た,生活体験の希薄化している児童生徒が 体験を通して勤労の尊さや社会に奉仕する 精神を養うことは極めて重要である。この ような観点から,現行の学習指導要領にお いては,総則等に「ボランティア活動」の 文言を盛り込むとともに,特別活動等の中 でボランティア活動などの体験活動を行う こととするなど,学校教育におけるボラン ティア活動を一層進める内容としている。 高等学校については,平成10年3月に, ボランティア活動等を含む学校外での多様 な活動を,校長の判断により単位として認 定することができる道をひらくため,関係 ろう 省令を改正した(盲・聾・養護学校高等部 者理解の促進 ● 第 1 編 障害のある人が地域において安全に安心 して生活していく上では,公務員を始めと する公共サービス従事者が障害について理 解していることが大切である。 警察では,障害のある人からの困りごと 相談等に適切に対応するための手話講習会 や障害のある人に対する応接,介護に関す る講習会の開催,有志による手話クラブの 結成や職員のボランティア活動への参加の 支援などを行っている。また,平成16年2 月には,「障害をもつ方への接遇要領」を 作成し配布している。 刑務所等矯正施設に勤務する職員に対し ては,矯正研修所及び全国8か所の矯正研 修支所において,各種研修を行っているが, その中では,人権擁護,手話,精神医学な どの科目を設け,障害のある人に対する理 4 ボランティア活動の推進 14 ●第1編 さらに,推進体制を計画的に整備充実す るとともに,地域の実情に即した子どもの 多様な活動促進を図るためのモデル事業を 実施した。 平成16年度においても,引き続き奉仕活 動・体験活動に対する社会的気運の醸成に 向けた取組を展開するとともに,市町村を 中心とした推進体制の整備充実を図ること としている。 については,平成11年3月に関係省令を改 正) 。 平成13年7月には,小学校,中学校,高 ろう 等学校,中等教育学校,盲学校,聾学校及 び養護学校におけるボランティア活動など 社会奉仕体験活動,自然体験活動その他の 体験活動の促進についての規定を盛り込む 「学校教育法」の改正が行われた。同年9 月には学校教育における体験活動の実施上 の留意点について通知するとともに,平成 14年3月には,文部科学省と厚生労働省の 協議の上,社会福祉施設等における体験活 動の実施上の留意点等について通知した。 平成15年度は,「豊かな体験活動推進事 業」において,平成14年度に引き続き「体 験活動推進地域・推進校」等を指定し,他 校のモデルとなる体験活動に取り組んでい る。本事業で得られた実践成果は,ブロッ クごとに開催する交流会等を通じて広く全 国に普及を図っている。 (3)地域福祉等ボランティア活動の促進 (2)生涯学習とボランティア活動 生涯学習振興の観点から,従来より青少 年から高齢者に至るあらゆる人々のボラン ティア活動の支援・推進を図っているとこ ろである。特に,青少年に社会性や思いや りの心など豊かな人間性をはぐくむため, 平成13年7月には学校教育法と社会教育法 が改正され,青少年に対するボランティア活 動など社会奉仕体験活動,自然体験活動そ の他の体験活動の機会の充実等が図られた。 平成15年度は,「奉仕活動・体験活動推 進全国フォーラム」の開催,奉仕活動・体 験活動に関する調査研究とともに,国民の 関心を引きつける広報啓発・普及活動の全 国展開を実施するなど,奉仕活動・体験活 動が身近なものとして,継続的に取り組ま れるようにするため,活動に対する社会的 気運の醸成に向けた取組を展開した。 15 ア ボランティア活動の振興 近年,高齢化の進展,家族形態・扶養意 識の変化,自由時間の増大,生活の質や豊 かさの重視等を背景として,ボランティア 活動等への関心が高まってきており,社会 福祉協議会で把握しているボランティア活 動者数も,全国で約740万人(平成14年4 月)と昭和55年度の160万人に比べて約4.6 倍の伸びを示すなど着実に増加を続けてい る。 ボランティア活動のうち,個人,グルー プ共に障害のある人や高齢者等を対象とし た活動の占める割合が大きい(全国ボラン ティア活動者実態調査 平成13年12月31日 現在)。障害のある人を対象とした活動の 主なものは,交流・遊び,手話・朗読・点 訳サービス,話し相手,配食・会食サービ ス,趣味,レクリエーション活動への支 援・指導,外出の手伝い,移送サービスへ の協力などである。また,障害のある人自 らが社会的な活動に参加したり,ボランテ ィア活動に取り組むことも近年一般的にな ってきている。 ボランティア活動の振興基盤を整備する ため,ボランティア養成等事業として,市 町村社会福祉協議会においてボランティア 情報誌の発行,ボランティア活動入門講座 第 2 章 相 互 の 理 解 と 交 流 ランティア活動普及事業,社会人福祉活動 体験事業,福祉教育研究大会の開催,企業 やボランティアグループ等でボランティア 活動を推進するリーダーやコーディネータ ーの養成,企業退職者等を対象としたシニ アボランティア団体等の育成,福祉活動参 の開催,相談,登録,あっせん,福祉救援 ボランティア活動促進等の事業が行われて いるが,平成13年度からはボランティア活 動拠点作り支援事業を行っている。ボラン ティア振興事業として,都道府県・指定都 市社会福祉協議会において学童・生徒のボ 商店街におけるバリアフリー化の取組 横浜の中心的商店街の1つ伊勢佐木町 講師として参加する「バリアフリー接客術 は,昭和53年の商店街のモール化から「人 勉強会」や伊勢佐木町,馬車道,地下街 に優しいまち」をコンセプトとして,24時 「マリナード」の各店舗のショーウィンド 間歩行者天国,歩車道及び道路・店舗の段 や店内に障害のある人の作品(総計約300∼ 差解消,ベンチの設置などに取り組んでき 600点)を展示する「福祉のアート展」,障 ました。平成11年には,伊勢佐木町1・2丁 害のある人を中心に障害のない人も共に協 目地区を含む関内駅を中心とする半径500c 力して神社の例大祭でみこしを担ぐ「車い 以内の地域が,横浜市の「関内駅周辺福祉 す神輿」などの活動に取り組んできました。 のまちづくり重点推進地区」に指定されま 人に優しいまちづくりを目指す同地域 した。伊勢佐木町1・2丁目地区商店街振興 は,今後,ツーリストインフォメーション 組合は,推進地区の協議会活動を通じて行 機能や交番機能を備えた障害のある人など 政やNPO,障害者団体などとの連携を深め, のための拠点をつくろうとしています。 ハード面が主であったバリアフリー化をソ この取組は,「平成15年度第2回バリア フト面の取組にも発展させることとなりま フリー化推進功労者表彰」(内閣府)にお した。このような中で同振興組合が中心と いて,内閣官房長官表彰を受賞しました。 なって,平成13年ごろより障害のある人が ● 第 1 編 16 ●第1編 進する観点から,特定非営利活動の種類の 加促進事業の一環としての高校生介護等体 追加等を盛り込んだ改正NPO法が施行さ 験特別事業が行われているが,平成12年度 れた。平成15年4月には,認定NPO法人 からはボランティアグループ・団体を対象 制度について,認定要件の緩和やみなし寄 に社会福祉法人・特定非営利活動法人とし 付金制度の導入等の拡充がなされた。さら ての法人格取得等を支援するボランティア に,NPO法の立法趣旨・理念に則した運 グループ組織化等支援事業を実施してい 用を明らかにした「NPO法の運用方針」 る。こうした広範な取組により,地域にお いて活動したい人が,いつでも,どこでも, (平成15年3月策定,同年12月改定)を策 定・公表するとともに,NPO法人制度の申 だれでも,気軽に,楽しくボランティア活 請・届出手続の電子化や,インターネット 動に参加できるような枠組みづくりに努め による縦覧・閲覧書類の公開に取り組んだ。 ている。なお,少子・高齢化対策事業によ り,NPO等の活動支援のための施設整備 についても支援している。 国民のボランティア活動に対する理解と 第2節 参加を促進し,全国的な広報啓発を行うた 我が国の国際的地位にふさわしい め,全国からボランティア活動に関心のあ 国際協力 る人々やボランティア活動に取り組んでい る人々が集まり,情報交換や交流を図る 1 国際協力等の推進 「全国ボランティアフェスティバル」を平 成4年度から実施しており,平成15年度は 石川県で開催した。この中で,ボランティ (1)国際協力の基本的な方針 ア功労者に対する厚生労働大臣表彰及び厚 我が国は,国際社会の一員として,障害 生労働大臣感謝状の交付を行い,ボランテ のある人に対する各施策分野において,我 ィア活動の社会的評価の向上を図っている。 が国の国際的地位にふさわしい国際協力に 努める必要がある。障害者施策は,福祉, イ NPOによる活動の促進 保健・医療,教育,雇用等の広範な分野に 福祉の分野に限らず,国際協力,環境, わたっているが,我が国がこれらの分野で まちづくりといった様々な分野において, 蓄積してきた技術・経験などを政府開発援 ボランティア活動やこれを支える市民活動 助(ODA)や民間援助団体(NGO)の活 団体の活動が活発化してきている。平成7 動などを通じて開発途上国の障害者施策に 年の阪神・淡路大震災や平成9年のナホト 役立たせることは,極めて有効であり,か カ号重油流出事故の発生に際し,多くのボ つ,重要である。 ランティアの精力的な活動が高く評価され 平成4年6月に閣議決定された「政府開 るなど,ボランティア活動を始めとする市 発援助大綱」においては,政府開発援助を 民活動の役割が注目されている。こうした 効果的に実施するための方策として,「子 中で,法人格の付与等を通じた活動の促進 供,障害者,高齢者等社会的弱者に十分配 を目的とした特定非営利活動促進法 慮する。」ことを明確に掲げており,また, (NPO法)が平成10年12月から施行され, 平成11年8月に公表された「政府開発援助 平成15年5月には特定非営利活動を一層促 に関する中期政策」において,その方向性 17 第 2 章 相 互 の 理 解 と 交 流 が示されている。 障害者施策の各分野においては,援助を 行うに当たり,援助対象国の実態や要請内 容を十分把握し,その国の文化を尊重しな がら要請に柔軟に対応することが大切であ る。このため,我が国は,密接な政策対話 を通じ,援助対象国と我が国の双方が納得 いく援助を行うよう努めている。また, NGOとの連携強化や草の根・人間の安全 保障無償資金協力,日本NGO支援無償資 金協力等の活用,青年海外協力隊の派遣な ど開発途上国の草の根レベルに直接届く協 力も行っており,様々な援助の要望にきめ 細かく対応している。 (2)無償資金協力 無償資金協力では,障害のある人のため のリハビリテーション施設や職業訓練施設 整備,車いす,移動用ミニバスの供与等, 毎年多くの協力を行っている。平成15年度 においては,草の根・人間の安全保障無償 資金協力により,タイにおける障害を持つ 孤児のための施設の建設計画,フィジーに おける身体障害者用通学バス供与計画,パ ラグアイにおける障害者学校建設計画など 79件の障害者関連援助を,NGO・教育・ 地方公共団体等に対し実施した。 ● 第 1 編 (3)技術協力 技術協力の分野では,開発途上国の障害 リハビリテーション関係者の資質の向上に 寄与することを目的として,国際協力事業 団(JICA,平成15年10月1日より「独立 行政法人国際協力機構」)を通じて研修員 の受入れや専門家及び青年海外協力隊の派 遣など幅広い協力を行っている。平成15年 度には障害者リハビリテーション指導者コ ース等として10の集団研修コースを本邦に おいて実施し,研修員82人を受け入れた他, 専門家44人,養護教員・作業療法士等の青 年海外協力隊員67人及びシニア海外ボラン ティア5人の派遣などを行った。平成12年 度からは,チリにおいて技術協力プロジェ クト「チリ国身体障害者リハビリテーショ ンプロジェクト」を開始し,平成15年度に は専門家9人の派遣,研修員3人の受入れ を行った。さらに,平成13年11月から5年 間の予定で,中国においてリハビリテーシ ョン専門職養成プロジェクトを行ってお り,平成15年度には専門家16人の派遣,研 修員3人の受入れを行った。 JICAでは,アジア太平洋地域に住む障 害者のエンパワーメントを通して障害のあ る人の「社会参加と平等化の実現」を促進 することを目的とした広域プロジェクト 「アジア太平洋障害者センター」を平成14 年8月から5年間の予定でタイ・バンコク において開始した。同センターでは,人材 育成事業(障害者自立生活分野,当事者団 体の運営・強化,CBR(地域に根ざした リハビリテーション,ユニバーサルデザイ ン等),情報支援事業(情報集積,ホーム ページ(www.apcdproject.org)等の発信 事業),センターが中心となり地域内にお ける関係機関の連携促進を柱とする活動が 行われている。 社団法人国際厚生事業団(JICWELS) では,政府の委託を受けて,昭和58年度か らアジア地域の社会福祉関係の行政官を研 修生として受け入れ,これらの国の福祉水 準を高め,その社会開発に貢献することを 主目的に,障害福祉行政に関する実務的な 研修を実施している。平成15年度には研修 生8人を受け入れ,これまでの参加者は 249人を数える。 我が国は,アジア・太平洋地域のユネス コ加盟国間の教育協力を強化し,各国の教 育の内生的発展を促進することを目的とす 18 ●第1編 るアジア・太平洋地域教育開発計画 (APEID) ESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員 会)に対し,JECF(日・ESCAP協力基金) に積極的に協力している。ユネスコは を通じた活動支援を実施しており,平成15 APEID参加国における特殊教育のセミナ 年度には約17.5万ドルの支援を行った。 ー,ワークショップの開催,特殊教育関係 者の地域内諸国への研修訪問等を実施して おり,我が国は,セミナー,ワークショッ プへの専門家の派遣や国内関係機関への研 修訪問団の受入れ等の支援・協力を行って いる。また,独立行政法人国立特殊教育総 合研究所は,APEIDへの協力の一環とし て,アジア・太平洋地域諸国の特殊教育専 門家を対象とした「APEID特殊教育セミ ナー」を昭和56年度から継続的に行ってき ており,平成15年度は「障害のある子ども の教育的支援と情報手段の活用」を主題に 技術協力の様子 開催した。 地方公共団体においても,スポーツ大会 2 障害者問題に関する国際的な取組 を通じた障害者間の交流や障害者福祉関係 者への招へい等について自主的な取組がみ への参加 られる。 開発途上国における我が国のNGOの活 (1)障害者権利条約を巡る動向 動も近年活発化しており,NGOによる草 国際連合では,昭和40年代から障害のあ の根の援助はきめ細かい迅速な援助が可能 る人の権利に関して,「精神遅滞者の権利 であることから,大きな効果を得ている。 に関する宣言」(昭和46年第26回国連総会 政府は,NGOとの連携強化の重要性を認 にて採択),「障害者の権利に関する宣言」 識し,NGO支援として,NGO事業補助金 (昭和50年第30回国連総会にて採択)を始 を交付しており,平成14年度には5か国に めとする幾つもの宣言・決議を採択してき おいて,5団体,6事業の障害者関連事業 たが,これらの宣言・決議は法的拘束力を に対し補助金を交付している。また,日本 持つものではなかった。 平成13年12月,第56回国連総会において, NGO支援無償資金協力により,マケドニア メキシコが「障害者の人権及び尊厳を保 における聴覚・言語障害児リハビリテーシ 護・促進するための包括的・総合的な国際 ョン施設への診断・治療機材の供与など3 条約(障害者権利条約)」に関する決議案 件の障害者関連事業に対し支援を実施した。 を提案し,国連総会決議で採択された。こ 援助対象国に対する直接的援助のほか, の決議に基づき,平成14年7月29日から8 我が国では国連等国際機関を通じた協力も 月9日まで国連本部で障害者権利条約に関 行っている。昭和63年度から国連障害者基 する国連総会臨時委員会の第1回会合が開 金に対して継続的な拠出を行っており,平 催されることになった。同会期に先立ち, 成15年度には5万4,000ドルを拠出した。さ 同委員会へのNGOの参加を可能にするた らに,アジア太平洋地域への協力としては, 19 第 2 章 相 互 の 理 解 と 交 流 めの国連総会決議が採択されたが,政府と しては,NGOが同委員会において意見を 表明する機会を得ることは意義あることと 考え,共同提案国として同決議の採択に向 けて積極的に関与した。第1回会合には我 が国からは,政府関係者に加えて,障害者 当事者団体関係者多数が参加した。 障害者権利条約起草に関する作業部会 平成16年1月5日∼16日,ニューヨーク いては,例えば,情報へのアクセスの権利 の国際連合本部において,「障害者の人権 については,IT技術の整備・支援等は社会 及び尊厳を保護・促進するための包括的・ 的な側面になりますが,表現の自由や政治 総合的な国際条約(障害者権利条約)」を起 参加への保障といった自由権的な側面もあ 草するための作業部会が開催されました。 るため,今後一層議論を深める必要があり 我が国は,アジア・グループ代表の一員 ます。 として,外務省の角茂樹国際社会協力部参 平成16年には,5月下旬と8月下旬に, 事官を代表として,政府関係者(内閣府, 障害者権利条約に関する国連総会臨時委員 外務省,文部科学省,厚生労働省)と 会の開催が予定されており,障害者権利条 NGO関係者が出席しました。この作業部 約起草の動きが今後,ますます活発化する 会の目的は,平成16年5月末に開催される ことが予想されます。我が国としても,障 障害者権利条約に関する国連総会臨時委員 害者権利条約が望ましい姿で早期に実現で 会の第3回会合に対し,これまで各国,地 きるよう,積極的に貢献していく考えです。 域組織,NGO等から国連に対して提出さ れた障害者権利条約作成に関するすべての 文書を考慮しつつ,政府間交渉のベースと なる条約草案を作成し,提出することです。 この作業部会の全般的な争点として,障 害のある人の権利の保護・促進を差別禁止 の観点からとらえるのか,あるいは障害者 の権利保護の奨励措置の観点からとらえる のかとの2つの立場から議論が行われまし た。また,障害のある人の個々の権利を経 済的・社会的権利(社会権)としてとらえ るのか,また市民的・政治的権利(自由権) ● 第 1 編 としてとらえるのか,どちらに重きを置く べきかとの争点についても,異なる立場に 障害者権利条約起草に関する作業部会に出席した角 国際社会協力部参事官と障害者当事者団体関係者 基づき議論が行われました。この問題につ 20 ●第1編 (ESCAP)第48回総会において決議された。 その最終年となる平成14年のESCAP第58 回総会において,我が国の主唱により「ア ジア太平洋障害者の十年」を更に10年延長 するとともに,平成14年10月25日から28日 の4日間,滋賀県大津市で最終年の政府間 ハイレベル会合を開催することが決定され た。 政府間会合においては,会期の前半で 「アジア太平洋障害者の十年」を総括した 後,アジア太平洋地域におけるこれからの 「十年」の行動計画である「アジア太平洋 障害者のための,インクルーシブで,バリ アフリーな,かつ権利に基づく社会に向け た行動のためのびわこミレニアム・フレー ムワーク」について討議し,最終日に採択 された。 「びわこミレニアム・フレームワーク」 では,優先的行動のための七つの分野とし て,「障害者の自助団体及び家族,親の団 体」 , 「女性障害者」, 「早期発見,早期対処 と教育」,「自営を含む職業訓練と雇用」, 「各種施設・公共交通機関へのアクセス」, 「情報通信技術及び支援技術を含む情報と 通信へのアクセス」, 「能力構築,社会保障 と持続的生計プログラムによる貧困の緩 和」が挙げられており,それぞれの項目ご とに,重要課題,目標及び求められる行動 が示されている。 平成15年9月1日から4日までバンコク において開催されたESCAP第59回総会 (2)アジア太平洋障害者の十年(2003− で,「アジア太平洋障害者の十年(2003― 2012)」の行動計画である「アジア太平洋 2012) 障害者のための,インクルーシブで,バリ 「アジア太平洋障害者の十年」は,アジ アフリーな,かつ権利に基づく社会に向け ア太平洋地域において障害のある人への認 た行動のためのびわこミレニアム・フレー 識を高め,域内障害者施策の水準向上を目 ムワーク」が全会一致で承認された。 指すために, 「国連障害者の十年」に続くも なお,ESCAPにおいては,びわこミレ のとして,平成4年に我が国と中国が主唱 ニアム・フレームワークの達成状況の確認 し,国連アジア太平洋経済社会委員会 平成15年6月16日から同27日にかけて, 障害者権利条約に関する国連総会臨時委員 会の第2回会合が開催された。我が国から は,関係省庁関係者(外務省・厚生労働省) 及びNGO関係者から構成される政府代表 団のほかに,多数の障害者関係者が出席し た。最終日の6月27日に,「障害者権利条 約に関する国連総会臨時委員会の今後の取 り進め方に関する決議案」が採択され,① 条約案の交渉の基礎となる草案を準備し提 出する目的で作業部会を設立する,②作業 部会は,地域グループにより指名される27 名の政府代表(アジア7名,アフリカ7名, 中南米5名,西欧5名,東欧3名),NGO 代表12名及び国内人権機構代表1名の合計 40名で構成される,④作業部会は,平成16 年1月5日から同16日に会合を開催し,作 業結果は障害者権利条約に関する国連総会 臨時委員会の第3回会合に提出すること等 を決定した。 その後,我が国は同作業部会のアジア・ グループ代表の一員に正式に決定し,また, 障害者権利条約に対する国連総会臨時委員 会の第3回会合が平成16年5月下旬,第4 回会合が8月下旬にそれぞれ2週間の会期 で開催されることが決定した。 作業部会は,平成16年1月5日から16日 にかけて,国連本部において開催され,今 後の政府間交渉のたたき台となる条約草案 が作成された。 21 第 2 章 相 互 の 理 解 と 交 流 4 障害者等の国際交流の支援 と同フレームワークの実施に必要と思われ る行動の確認を行うため,2年ごとにフォ ローアップ会合を開催することとしてお り,平成16年後期に第1回目の会合の開催 を予定している。 草の根交流等においては,障害のある人 による国際交流を支援するため,障害者関 係の国際会議や国際スポーツ大会を開催 し,各国障害者間の交流や情報交換を行っ ている。 3 情報の提供・収集 内閣府では,毎年「障害者白書の概要」 の英訳版を作成し,各国の在外公館に対し て配布しているが,平成15年度から内閣府 ホームページ(英語版)にもこれを掲載し, 広く周知を図っている。「障害者基本計画」 及び「重点施策実施5か年計画」について も,英訳版を作成し,内閣府ホームーペー ジに掲載している。 ●図表1-4 びわこミレニアム・フレームにおける優先領域 自営を含む職業訓練と雇用 早期発見、早期 対処と教育 障害者の自助団体 及び家族・親の団体 各種施設及び 公共交通機関への アクセス 女性障害者 情報通信及び 支援技術を含む、 情報通信への アクセス 能力構築、社会保障及び 持続的生計プログラムに よる貧困の緩和 ● 第 1 編 資料:外務省 22