...

解説1

by user

on
Category: Documents
18

views

Report

Comments

Description

Transcript

解説1
解説1
「仕組みを変える」とは何を変えるのか
アステックコンサルティング
横川 知之
「仕組み」とは何か
一口に“仕組み”と言っても経営の各プロセス
や人によって捉え方やイメージは異なり、単純で
わかりやすい言葉ではあるが、伝えるイメージや
「仕組み」という用語から抱くイメージはさ
1.
まざま
“仕組みが悪い”“仕組みをつくろう”と普段か
ら何気なく使っている“仕組み”という用語であ
ポイントの共有化がなかなか難しい厄介な用語な
のである。
「仕組みを変える改善」で考えるべき“仕組
2.
み”とは
るが、非常に便利で重宝する言葉である。しかし、 それでは改善・改革視点で考えるべき“仕組み”
とりあえず“仕組み”に関わることという程度で
とはどのようなものなのか。誰がやっても同じよ
あいまいに使われていることが多い。
“仕組み”と
うに効率的に仕事ができる標準化、PDCA サイク
いう用語を辞書で調べてみると、①物事の組みた
ルが回る日常管理など大切な仕組みは数あるわけ
て、構造、機構、②事をうまく運ぶために工夫さ
だが、今回特に触れたいのが短リードタイムで仕
れた計画、くわだて、とある。この時点ですでに
事を流す仕組みの重要性である。なぜなら、有限
定義が広いと感じられるが、さらに英語に置き換
の資源の中で受注∼出荷までの期間(リードタイ
えると、ストラクチャー、コンストラクション、
ム)
をいかに早くスムーズに流していくかは、多く
メカニズム、デバイス、システム、プランなど、
の企業が課題としている収益性の改善に大きく寄
いかようにも翻訳でき、改めて“仕組み”の意味
与するものだからである。
するところの広さを感じる。
それでは仕組みを変える改善、つまりここでは
このように広い意味を持つ“仕組み”であるが、 短リードタイムで仕事を流す仕組みづくりにはど
ここで製造業における生産活動を対象にして考え
のようなことが求められるのか。たとえば、ある
てみる。製造業は、生産要素である5M + (Man、
I
工程で最新鋭の設備や画期的な工法が編み出され、
M a c h i n e、M a t e r i a l、M o n e y、M e t h o d +
それが企業全体としての根本的なモノの作り方や
Information)
をインプットとしてさまざまなプロ
売り方、ビジネスモデル、短納期対応力の向上、
セ ス を 経 な が ら、 ア ウ ト プ ッ ト で あ る PQCD
収益性の改善に波及するような革新が起こるとす
(Products、Quality、Cost、Delivery)
の創出を通
れば、それも立派な仕組みの改善と言うことがで
じて利益の確保を図ることを経営目的としている。 きる。
この一連の利益創出過程はある種の“仕組み”で
一方で、そのようなことは易々とできるもので
構成されている。組織体制に始まり、規則・規程、 はなく、過剰に期待できる方策ではなさそうであ
標準、工法や設備、工程管理や品質管理などの各
る。昨今のわれわれを取り巻く多品種少量生産や
種管理、これらは経営レベルの上位レベルから実
変化が激しく早い環境下では、そのような改善は
務レベルの下位レベルまで大小や範囲の違いがあ
なおさら困難であり、広範で持続性のある効果も
るにしてもすべて“仕組み”に該当する。
あまり望むことはできない。本稿で触れる短リー
工場管理 2016/03
13
図1 生産管理の範囲は広い
広義の生産管理
営業管理
← 販売 ←
物流管理
物流管理
→ 受注 →
→→ 設計 →→
↓
調達
↓
←← 製造 ←←
計画&統制
計画&統制
受注管理
販売管理
設計管理
外注管理
出荷管理
在庫管理
購買管理
原価管理
狭義の
生産管理
労務管理
在庫管理
品質管理
設備管理
ドタイムで仕事を流す仕組みづくりにおいては、
どの取組みもあるのだが、最も重要視されるべき
以下の要件を満たしておく必要がある。
は変化をいかにコントロールしていくかという点
①受注∼出荷までを対象として、企業あるいは
である。また、短リードタイムで仕事を流すとい
工場全体としての収益改善に寄与する
(いわゆ
うことは、まさに変化対応力を向上させることに
る全社横断的な全体最適視点の改善)
他ならない。それにも関わらず多くの企業や工場
②多品種少量生産の中で、状況に応じて適宜最
は、変化に着眼して洞察し、ポイントを押さえて
適生産体制を整えることが可能となる
(ある前
仕組み化するという取組みが不足している。
提条件範囲の中で起こる変動に対して、最大
以上のことを簡潔にまとめると、ここで対象と
限のパフォーマンスを臨機応変に発揮できる
する仕組みとは、極めて生産管理と同義であり、
管理改善)
仕組みを変える改善とは、短リードタイム生産を
③激しく早い環境変化の中で、大きく生産体制
を変更することが可能となる
(これまでの対応
範囲を大きく超える変化を予測し、中長期視
点で生産体制を変更できる管理改善)
標榜し、変化対応力の向上を伴う生産管理力を身
に付けることなのである。
生産管理力の向上を図る
④上記①∼③を実行可能とする人材が育成され、
状況に応じて組織体制を整えることができる
1.モノと情報の流れをコントロールする
上記の要件を見てみると、これらの根幹にある
図1にも示しているように生産管理の範囲は非
のは“管理(力)”である。製造業、さらに工場レ
常に広い。生産管理と聞けば、生産計画と統制が
ベルを対象にすれば、
“生産管理
(力)
”ということ
すぐに思い浮かぶであろう。確かに生産計画と統
になる。すなわち「仕組みを変える改善」が対象
制は生産管理の中心的位置付けではあるが、決し
とする“仕組み”とは、極めて“生産管理”その
てそれだけではない。生産計画はさまざまな方法
ものズバリなのである
(図1)
。
やルール、管理機能や仕組みを結びつける全体の
そして、上記の要件に共通するもう1つの重要
コントロールセンター機能を司ったものである。
ポイントとなるキーワードが、
“変化対応力”であ
生産計画機能を改善するということは、受注∼出
る。変化対応力であるから、もちろん対応スピー
荷までの生産の流れに関与するすべての管理機能
ドも力として求められる。生産管理の改善の中に
を対象として捉えておかなければならず、単に計
は、管理そのものの効率化、あるいは精度向上な
画作業を改善するだけでは決してないのである。
14
Vol.62 No.3 工場管理
Fly UP