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第8号トマト黄化葉巻病(PDF:182KB)
防除所情報第8号 平成23年9月20日 山梨県病害虫防除所 【トマト黄化葉巻病 トマト黄化葉巻病の 黄化葉巻病の防除対策について 防除対策について】 について】 [発生の 発生の状況] 状況] (1)8月17日に、総合農業技術センター農業技術普及部より持ち込まれた黄化葉巻病類 似症状について、トマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)の遺伝子診断を実施した結 果、トマト黄化葉巻病であることを確認した。 (2)抑制栽培のトマト及びミニトマトにおいて、定植後から様々な生育ステージで、広範 囲に発生が確認されている(図1)。 図1 トマト黄化葉巻病の症状 発病初期は、先端部の葉縁から徐々に黄色くなり、健全な株に比べて伸び方が悪くなる。 やがて葉脈付近以外は黄化し、葉巻症状となる。わき芽も同様の症状になる。 症状がひどくなると生長点が止まるため、果実の収穫ができなくなる。 [今後の 今後の予想] 予想] (1)気象庁8月25日発表、向こう3か月予報によると、9月から10月の平均気温は平 年並か高い見込みであり、本病を媒介するタバココナジラミの増殖が活発化すること が懸念される。 (2)発病株が残存しているほ場も認められるため、発病株でウイルスを獲得した保毒虫が 施設内に広がり感染を助長するとともに、施設外への逃亡による発生量の増加や次作 への影響が懸念される。 [防除対策] 防除対策] (1)本病は難防除のウイルス病であり、発病株に対する効果的な防除薬剤はないため、多 様な防除手段を組み合わせた総合防除を実施する。 (2)発病株は伝染源となるため、見つけ次第抜き取り、透明のビニール袋に入れ、日光に 当てて高温にして虫を死滅させてから、施設外に持ち出し土中に埋める。 (3)タバココナジラミの侵入を防ぐため、施設開口部はすべて0.4mm目以下の防虫ネット で被覆する。特に、出入り口のカーテンは二重にして、侵入を防止する。 施設内の昇温防止対策として、循環扇、遮光カーテン等を組み合わせて温度が上がら ないように注意する。 (4)黄色粘着板、黄色粘着テープを施設内や施設周辺部に設置してタバココナジラミ成虫 の侵入を防止する。 (5)施設内外の雑草は、タバココナジラミの増殖源となるため、除草を徹底する。 芽かきした茎葉や野生化しているトマトは、コナジラミおよびトマト黄化葉巻ウイル スの増殖源となるため適切に除去する。 同じく、家庭菜園や露地栽培の発病トマトも増殖源となるため注意する。 (6)本県では、薬剤抵抗性の発達したタバココナジラミ(バイオタイプQ)が広く存在す るため、薬剤選択に注意する(表1)。なお、同一系統薬剤の連用は、薬剤感受性の 低下につながるため、異なる系統の薬剤によるローテーション散布を実施する。 また、タバココナジラミ幼虫のほとんどが葉裏に寄生しているため、薬剤散布に当た っては葉裏にも十分かかるように丁寧に散布する。 表1 系統 タバココナジラミの主な防除薬剤(トマト) 薬剤 倍率 防除効果※1 マルハナバチ 影響日数 使用基準 (収穫前日数- 総使用回数) 成虫 幼虫 ※2 平成23年9月15日現在 薬剤の特性と注意点 ・全てのステージに効果がある。 ・使用回数は最小限とし、重点防除時期に使用する。 ベストガード水溶剤 2000倍 前-3 ◎ ◎ 10日以上 アルバリン顆粒水溶剤 スタークル顆粒水溶剤 3000倍 前-2 ○ ◎ ・全てのステージに効果があるが、成虫に対する効果 14日以上 がやや低い事例がある。 ・使用回数は最小限とし、重点防除時期に使用する。 ・全てのステージに効果があるが、成虫に対する効果 がやや低い事例がある。 ・殺卵効果がある。 ・高温時に薬害が発生しやすいので注意する。 ネオニコチノイド サンマイトフロアブル 1500倍 前-2 ○ ◎ 1~4日 ハチハチ乳剤 2000倍 前-2 × ◎ 5日以上 ・殺卵効果がある。 ピラゾール アプロードエースフロアブル +IGR 2000倍 前-3 × ◎ 1日 ・ダニトロンとアプロードの混合剤。 ・殺卵効果がある。 マクロライド コロマイト乳剤 1500倍 前-2 × ◎ 1日 ・殺卵効果がある。 コルト顆粒水和剤 4000倍 前-3 ◎ △ ― ・1齢幼虫に対する効果が低い事例がある。 ・殺卵効果はなく、摂食阻害作用を示す。 クリアザールフロアブル 4000倍 前-2 × ○ 1日 ・殺成虫効果はないが産卵数の減少や産下卵の未孵 化が認められる。 ボタニガードES 500倍 発生初期-- ― ― 1日 マイコタール 1000倍 発生初期-- ― ― 1日 粘着くん液剤 100倍 前-- ― ― 1日 サンクリスタル乳剤 300倍 前-- ― ― 0日 オレート液剤 100倍 発生初期~収穫 前日-- ― ― 1日 ピラゾール その他 化合物 生物農薬 天然物 その他 ※1 ・微生物農薬。 ・使用回数制限なし。 ・1回の使用では防除効果が得られないため、複数回 連続使用する。 ・保管や散布後の温湿度管理等に注意が必要である。 ・気門封鎖による窒息死作用。 ・使用回数制限なし。 ・1回の使用では防除効果が得られないため、複数回 連続使用する。 ・散布ムラがないよう丁寧に散布する。 ・高温時に薬害が発生しやすいので注意する。 総合農業技術センター成果情報「タバココナジラミバイオタイプQに対する有効薬剤」(2008)、 関東東山病害虫研究会報第57集「山梨県におけるタバココナジラミの薬剤感受性」(総合農業技 術センター、2010)より作成。 ◎:死虫率90%以上、○:70%~90%、△:50%~70%、×:50%未満、―:未調査。 ※2 日本バイオロジカルコントロール協議会(第19版改・2010年11月)等の知見より作成。