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既存ガス田の生産減退と国内需要 増で厳しさを増すエジプトのLNG供給
既存ガス田の生産減退と国内需要 増で厳しさを増すエジプトのLNG供給 2014年3月20日 調査部 濱田 秀明 1 本日の概要 日本のLNG輸入について エジプトのLNGプロジェクト 国内天然ガス開発状況 エジプト国内の需給ひっ迫状況 考えられる天然ガスの供給源に関して 新規ガス田の発見 実施中のガス田ライセンス・ラウンド 2 日本のLNG輸入 2012年 各国別LNG輸出量 日本のLNG輸入実績(2013年1月から12月) 国 名 オーストラリア カタール マレーシア ロシア インドネシア UAE ブルネイ オマーン ナイジェリア 赤道ギニア エジプト その他 国 数量 シェア 金額 単価 (百万T) (億円) (円/t) 20.5% 13,517 75,435 17.9 18.4% 13,595 84,644 16.1 17.1% 12,931 86,540 14.9 9.8% 6,132 71,584 8.6 7.2% 5,496 87,773 6.3 6.2% 4,603 85,120 5.4 5.8% 4,275 83,874 5.1 4.6% 2,313 57,255 4.0 4.4% 3,131 81,366 3.8 2.6% 1,963 87,733 2.2 0.7% 479 83,195 0.6 2.9% 2,132 84,169 2.5 名 トリニダードトバコ ペルー 他米大陸 ロシア 他欧州 オマーン カタール UAE イエメン アルジェリア エジプト 赤道ギニア ナイジェリア オーストラリア ブルネイ 合 87.5 計 100.0% 70,567 80,657 インドネシア マレーシア 出典:貿易統計 合 計 輸出量(百万トン) 14.2 4.0 0.9 11.0 5.9 8.3 78.2 5.6 5.3 11.3 5.0 3.6 20.2 20.8 6.7 18.5 23.6 243.1 出典:BP統計 2013年に初めて7兆円台を突破(2010年時は3.5兆円)。対前年比で、数量は0.2%増加、単価 は17.3%増加。エジプトからのLNGは低い割合にあるが、同国がLNG供給を大きく落としている。 これによるLNG価格上昇は、日本にとっても影響は小さくない。 3 エジプトのLNG生産 プロジェ クト Egyptian LNG 第1系列 (Train 1) Egyptian LNG 第2系列 (Train2) SEGAS LNG 株 主 供 給 可 供 給 開 積地 能量 始年 360 万 2005年 イドク トン 既存契約 (買主/期間) GDF SUEZ 360 万トン 2005~ 2025年 360 万 2005年 トン イドク BG 350 万 ト ン 2006~2026年 Union Fenosa Gas80%、BP、 500 万 2005年 Egas10%、EGPC10% Union トン Fenosa Gas ダミ エッタ BP 110 万 ト ン 2005~2025年 Union Fenosa Gas 110 万 ト ン 2005~2025年 主な引 取先 BG35.5%、ペトロナス GDF 35.5%、EGAS12%、 SUEZ EGPC12%、GDF SUEZ5% BG38% 、 ペ ト ロ ナ ス BG 38 % 、 EGAS12 % 、 EGPC12% エジプトのLNG生産可能量としては、合計で12.2百万トンあるが、フィード・ガス不足により、輸 出力を低下させている。 4 エジプト地中海ガス田とLNGプラント(鉱区図) 出典:各種資料を基にJOGMEC作成 5 エジプト東側(パイプライン図) 出典:各種資料を基にJOGMEC作成 6 Egyptian LNG(ELNG) プラントおよびその付帯設備、出荷ターミナルなどを保有、操業。 • プラント場所:イドク(アレキサンドリア東方40km) • LNG生産能力:年間720万トン (360万トン× 2系列) • 生産開始:2005年 Train1: 株主:BG:35.5%、ペトロナス35.5%、EGAS12.0%、EGPC12.0%、GDF Suez 5.0% LNG製造系列はEl Behera Natural Gas Liquefaction Company SAE が保有 EGAS (Egyptian Natural Gas Holding Company) EGPC (Egyptian General Petroleum Corporation) Train2: 株主:BG:38%、ペトロナス38%、EGAS12%、EGPC12% LNG製造系列はIdku Natural Gas Liquefaction Company SAE が保有 供給元ガス田:西デルタ深海鉱区(WDDM)のガス田群から。 Train1:Simianガス田(1999年8月発見)、Siennaガス田(2000年10月発見)など Train2:Sapphireガス田(2000年9月発見)など 7 SEGAS(Spanish Egyptian Gas Company) 株主:Union FenosaGas80%(同社株式はENIとGas Natural Fenosaが折半で 保有)、EGAS10%、EGPC10% プラント場所:地中海側ダミエッタ LNG製造能力:年間500万トン 生産開始:2005年 現況:2012年末に稼働停止。動態保存(Mothball)中。 液化系列数:1(液化技術はAPCI) 保有設備:LNG貯蔵容量:300千㎥(150千㎥のタンク2基)、コンデンセート貯蔵用1,150 ㎥の貯蔵施設など。 主たる天然ガス供給源 1.国内ガス・グリッドからのガス供給:政府系ガス会社であるGPC/EGASによる供給。 2. 西デルタ深海ガス田(WDDM)鉱区からのガス供給 3. Tautガス田からのガス供給:BPとEniは、両社が50%づつ権益を持つRas Al Bar鉱区にあるTautガス田からの生産ガスの内、 155mmcfdの日契約数量(DCQ)のガスを供給していた。EGPC/EGASが買い上げて、ダミエッタLNGプラントに回すことにしていたが、2013年初 めより、すべての生産ガスを国内市場に充てている。 4. Deniseガス田からのガス供給:BPとEniは、両社が50%づつ権益を持っているTemsah鉱区にあるDeniseガス 田からの生産ガスの内、155mmcfdの日契約数量(DCQ)のガスを供給していた。これはEGPC/EGASが買い上げて、ダミ エッタLNGプラントに送るようにしていたが、2013年初期には、生産ガス全量を国内市場に充てている。 8 The Egyptian Natural Gas Holding Company (EGAS) 設立:2001年8月26日。エジプト石油大臣による設置令 目的:地域および世界的な天然ガス・プレイヤーとして天然ガスビジネスを発展させること。 事業領域:探鉱、掘削、生産の上流部門および、天然ガスの処理、国内市場へのガス供 給、液化、LNG販売などダウンストリームの、幅広い分野をカバー。現在、探鉱・生産・開発事 業において、合計で33の生産物分与契約(PSA)を締結。2012年のライセンス・ラウンドでは、7 鉱区にライセンスを付与。その内の4件で21の協定を結び、残り3件での交渉が検討。2013年 のライセンス・ラウンドでは8鉱区を対象。 事業パートナー(世界17か国の30社):BG、BP、Eni、Total、Enel、Gaz De France、RWE、DANA Gas、 Melrose、Kufpec、ペトロナス、Tharwa、シェル、OMV、Alkor、GSPC、Statoil、DANA Petroleum、Perenco、PTTEP、 Sipetrol、Edison、Centrica、Sonatrach、E.ON、Petzed、Geo Global、El Paso、Novatek、OVL。 探鉱・生産子会社 Rashid Petroleum Company (RASHPETCO) Burullus Gas Company (BURULLUS) El‐Qantara Petroleum Company (QANTARA) El‐Mansoura Petroleum Company (MANSOURA) Al‐Rawda Petroleum Company (AL‐RAWDA) El‐Wastani Petroleum Company (WASCO) El‐Manzalah Petroleum Company (El‐MANZALA) West Qantara Petroleum Company (PETRO QANTARA) North Sinai Petroleum Company (NOSPCO) Pharos Petroleum Company (PHPC) North Bardawil Petroleum Company (PETROBARDAWIL) Thekah Petroleum Company (THEKAH) North Idku Petroleum Company (NIPETCO) ガス輸送および配ガス企業 (LDC’s): Egyptian Natural Gas 、 Company (GASCO) 、Egypt Gas 、Egyptian Town Gas (ETG) ミッド・ストリーム:Egyptian Natural Gas Company (GASCO) 、United Gas Derivatives Company (UGDC) 、Egyptian LNG (ELNG) 、Spanish Egyptian Gas Company (SEGAS) 圧縮天然ガス(CNG)会社:Natural Gas Vehicles Company (NGVC) 、 Egyptian International Gas Technology (GAS TEC) 、Shell Compressed Natural Gas Egypt 9 エジプト石油大臣に関して 2011年の政変以来、内閣の総辞職や改造が行われ、石油大臣も短期間で交代 1999年10月~2011年2月:サーミハファハミー大臣(在職11年) 2011年2月22日~3月: マハムード ラティーフ アーミル大臣(半月) 2011年3月7日~2012年8月:アブドッラー ゴラーブ大臣(1年5ヶ月) 2012年8月~2013年5月: オサーマ ムハンマド カマール大臣(9ヶ月) 2013年5月7日~7月15日: シェリフ ハサン ハダーラ大臣(2ヶ月) 2013年7月~ : シャリフ イスマーイール大臣(現職:8ヵ月超) 2014年2月後半の内閣総辞職で留任 生年:1955年7月6日。既婚、1男1女 学歴:1978年、エジプト国立アイン・シャムス大学機械工学部卒業 職歴: • 1978‐1979 :モービル社、技術者として調査探鉱部門に勤務 • 1979‐2000: Enppi Co. till 勤務、技術部門のGM、取締役に昇進 • 2000 ‐2005 : 石油省石油操業およびガス部門担当次官 • 2005 ‐2007 : Egyptian Natural Gas Holding Company (EGAS)取締役会長. • 2007 ‐ 2013 : Ganoub el Wadi Petroleum Holding Company(GANOPE)取締役会長. • 2013年7月16日:石油鉱物資源大臣に就任。2014年2月末内閣改造で留任。 10 Sequoiaプロジェクト アレキサンドリア北東130㎞ に広がる、深さ70mから570 mまでの西デルタ深海 (WDDM)鉱区と、ロゼッタ 鉱区に点在する洋上油ガス田 群の開発 ロゼッタ(鉱区)株主: BG : 80.00% Edison : 20.00% 油田:Rahid North、South Sequoia 出典:各種資料を基にJOGMEC作成 WDDM(鉱区)株主: BG :50% ペトロナス :50% 油 田 : Scarab 、 Saffon 、 Serpent 、 Simian 、 Sapphire、Siennaなど 探鉱・開発・操業:Burullus社 株主: EGPC:50% BG :25% ペトロナス:25% 11 エジプト国内のガス生産量と消費量 • 天然ガス埋蔵量:72.0tcf(BP at end 2012) • ガス生産量:自然減退。新規 ガス田発見や鉱区開放も 行っているが開発・生産進ま ず。(政変に伴う影響) 70,000 60,000 50,000 40,000 生産量 30,000 消費量 20,000 • エジプトは、産ガス国である が、国内需要の増加と生産 量の停滞により、既に純輸 入国になっている。 • 消費抑制のための政策を打 ち出すことが、政権安定のた めには困難。 10,000 0 2008 1 生産量(Mcm) 国内消費量(Mcm) 2009 2 2008 62,266 44,568 2010 3 2009 62,078 43,753 2011 4 2010 61,598 46,768 2012 5 2011 61,093 51,822 2013 6 2012 60,421 54,672 出典:NATURAL GAS INFORMATION @ OECD/IEA,2013 • ガス供給の方策について。 12 国内ガス消費について 国内送ガス容量: 175百万㎥/日 発電用需要の増加: 全体の約8割 政府補助金により ユーティリティ価格を 低く抑えている。 電気料金(平均): 約3.5米セント/Kwh 産業用ガス: 3米ドル/Mmbtu (消費抑制は内政上 の問題から困難) 出典:EGAS ウェブサイト 13 エジプト国内の人口、経済成長 (単位:千人) 100000 (単位:十億ドル) 国民人口の推移 300,000 90000 GDP 250,000 80000 200,000 70000 150,000 60000 100,000 50000 50,000 40000 0 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 30000 20000 10000 (単位:%) 14.00 12.00 0 失業率 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 10.00 政変に伴って失業率もさらに上昇したが、エジ プト国内では人口は着実に伸び、経済も成長を 続けている。これらは天然ガス国内需要の伸び を下支えしている基本的な要因。 8.00 6.00 4.00 2.00 出典はいずれもIMF(World Economic Outlook, Oct. 2013) 0.00 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 14 エジプトのガス供給源 新規ガス田の発見(カッコ内は埋蔵量):2011年初頭と、2013年7月の政変、それに続く、社会的混乱によ り、探鉱、開発、生産の新規投資が順調に進まない。 DANAガス: 2009年1月、Haggag鉱区(0.02tcf) 同月、ナイル・デルタの西El Manzala鉱区(0.15tcf) 3月、El Panseiya鉱区(埋蔵量0.08~0.13tcf) 2010年、西El Manzala鉱区(0.05~0.09tcf) 2011年、El Wastani構造(0.06tcf) クウェート・エナジー: 2011年8月、 西方沙漠のAbu Sennan鉱区の上下Bahhariya構造 2012年4月、スエズ湾のA鉱区 Apache社: 2013年3月、西方沙漠のKhalda Riidge鉱区 BP: 2013年9月9日、東部ナイル・デルタの洋上Salamat構造(10tcfの可能性有) ●新規ライセンスラウンドも実施中:EGASによる地中海側8鉱区(5月19日期限) ●FSRU(浮体式貯蔵再ガス化ユニット) によるLNG輸入(サウディ、UAE、オマーンなどの支援): 設備業者入札が進まず。 ●イスラエルからのパイプラインによる天然ガス輸入:2012年4月22日、EGASはEast Mediterranean Gasとイスラエルへのガス輸出契約を契約解消。今後の契約への政治的障害。度重なるテロ攻撃があり、防御困難。 ●イラクからヨルダン経由によるパイプラインによる天然ガス輸入:構想段階 15 EGAS鉱区図 ●地中海側 赤(8鉱区):ライセ ンス・ラウンド実施 中 黄色・黄緑・茶色: 探鉱・生産中 青・紫・茶色: 未公開 部分: 16 2013 EGASのライセンス・ラウンド <陸上鉱区> 第 1:El Salhiya 1527㎢ 第 2:El Mahala 1028㎢ 第 3:El Matariya 960㎢ <洋上鉱区> 第 5:El Fayrouz 2280㎢ 第 7:Port Fouad 3397㎢ 第 8:Karawan 4565㎢ 第 9:Leil 5105㎢ 第10:Dikheila 7150㎢ • 特徴:既に探鉱作業を行った鉱区もあり、サインボーナスが低めに設定されており、 参入を容易にしている。 17 まとめ ・ 日本のLNG輸入について エジプトのLNGプロジェクト:稼働率を大きく低下 国内天然ガス開発状況 エジプト国内の需給ひっ迫状況:内政上の事情から需要抑制困難 考えられる天然ガスの供給源:国外からの輸入案 新規ガス田の発見:近年に複数の新規ガス田発見 実施中のガス田ライセンス・ラウンド エジプトの影響力:今般のウクライナ問題で、もしもロシアが欧州へのガス供給量 を減らせば、さらにMENAからのガスの需要が高まる。 18 ご清聴ありがとうございました。 19