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大江健三郎 の 核時代観 と W・ H ・ オ ー デ ン
― 落ちる」の受容 高橋 由貴 「 支 那 のう へ に夜 が 落 ちる 」 とい う 詩 が 参 与し てい る こ とを 明ら か に し、 大 江 の 核 時 代 観 に 改 め て 考 察 を 加 え て み た い 。 一、 大 江 健 三 郎 の 核 時 代 観 大 江 健 三 郎 は 「 核 の 大 火 と「 人 間 」 の 声 」 と 題 さ れ た 講 演 に お い て 、「 核 時 代 を 生 き 延 び る 」 と い う 言 葉 に つ い て 次 の よ う に 述 べ てい る 。 ョン ・ア ーヴィングの小説でも三箇所使われていました 。 そ の「 生 き 延 び る 」 とい う 言葉、 outgrow と い う 動詞 は、 私 は オ ー デ ン ら しい 特 別 な 言 葉 だ と 考 え て い ま す が 、 さ き の ジ 言 葉 」 を 拠 り所 と し て い る こ と 、 さ ら に この 語 は 「 核時 代 」 の 文 こ こ で は 、「 生 き 延 び る 」 とい う 語 が 「 オ ー デ ン ら しい 特 別 な 22 大 江 健 三 郎の 核 時 代 観と W・H・オー デン ― 深瀬基寬訳のオー デン「支那のうへに夜が はじめに こ ろか ら、 その 苦 し み や 困 難 と い う も の を 引 き 受 け て かつ 乗 るも のを突 き破 って ゆく よう に 成長す る 。自 分が 現に ある と 〔 … 〕 す な わ ち 頭 を ふさ い で い る 状 態 が あ って 、 その 上 に あ 僕た ち が 言 い 続 け て い る の は 、 核 戦 争 を 回 避 して 生 き 延び え て き ま した 。 / とい い ま す の は 、 わ れ わ れ の 文 学 とい う も り越えていく とい うのが、 outgrow と い う こ とだ と思う の で す ね。 この 言葉 に つ い て 私 は、 オ ー デン をつ う じ て ず っ と考 る こ と を 望 む 思 想で す 。 い ま 確 か に 危 機 は大 きく 、 絶 望も 深 で き る こ と を 望 む とい う こ と で す 、 人 間 の 再 生 が あ る と 考 え い 。 し か し 文学 の 仕 事で 核 戦争 の 危 機を 乗 り こえ る、 そ れ が ています 。 代の 学 問 、 芸術 の 目 的 だ ろう と 思 う か ら で す 。 の を 目 ざ す 試 み だ ろ う と 思う か ら です 。 む し ろ そ れ が 広く 現 て 生 き 延 び て い く 、 そ う い う 道 を ひ と り ひ と り 発見 して ゆ く の は 、 現 代 の よ う な 気 違い じみ た 状 態 か ら 人 間 が な ん と か し 討 が な さ れ る こと が 多 い 。確か に、 政 治 性がつ き ま とう 核へ の 右 に 記 さ れ た よ う な 大 江 固 有 の 世 界 観 ・ 時 代 観 を 見直 す こ と は 必 し か し 、 そ の メ ッセ ー ジ 性の 強 い 発 言 の 是 非 を 問 う 前 に 、 ま ず は 言 及 は ど う して も 聴 き 手 に 発 言 に 対す る 賛 否 を 誘 発 し て し ま う 。 要 で あ る だ ろう 。 本 稿 で は 、 大 江健 三 郎 の 核 時 代 観 に、 オ ー デン (3) (2) 大 江 健 三 郎 の 核を め ぐ る 発 言 は、 従 来 政 治 的 な 評 価 軸に よ る 検 (1) 学を方向づけるものであることが示されている。右の文章からは、 情 勢 に 対 応 した も の で あ る 。「 モ ス ク ワ の 核 実 験 再 開 の 波紋 の な 、「 明 日 頁) か で 、 僕 は 結 局 憂 鬱 症 に か か っ て い た の だ 」( 同 書 大 江 の 作 家 と し て の 始 発 に 、 深 瀬 基 寛 訳 『 オ ー デ ン 詩 集 』( 筑 の 認 識 が社 会 に 広く 受け 入 れ ら れ な い 事 実 に 強い 危 惧 と恐 怖 とを 述 に 見 ら れ る よ う に 、 大 江は 核実 験 を「 今日 の 戦 争 」 と捉 え、 そ である、という僕の論理はあいいれない」(同書、 頁)という記 の 人 間 の こ と … 引 用 者 注 )の 論 理 と 、 核 実 験 は す で に 今 日 の 戦 争 の戦争をふせ ぐた めの今日の核実験、 というかれら (*ソビエ ト 摩 書 房 、 一 九 五 五 ・ 六 )の 受 容 が 強 く 関 与 し て い た こ と は 疑 い な の 詩が深 W.H.Auden 一 九 六 〇 年 代 以降 に訪 れた 冷戦 構 造 下 の 核 時 代 観 お よび この 時 代 にお ける 文学的営為の根幹には、オーデン い 。 弛 緩 し た 日 常 と 「 危 険の 感 覚 」 との 境 界 不 分 明 な 戦 後 日 本、 あ ら わ して い た 。 そ し て、 この 「 核 実 験 はす で に 今日 の 戦 争 で あ く 関 与 し てい る こ と が う か が われ る 。 そ こに 生 き る「 戦争 に 遅 れ て き た 世 代 」 の 主 体を 形 象 化 す る 初期 小 説の モ チ ー フ は 、 オ ー デ ン「 見る まえ に 跳 べ ( し て 、 被 爆 地 ・ 広 島 と そ こ に 生 き る 被 爆 者 の 「 声 」 が 、『 ヒ ロ シ ) マ ・ ノ ー ト 』( 岩 波 新 書 、 一 九 六 五 ・ 六 )に お い て 見 定 め ら れ て い Leap Before You る」というヨーロッパに届かない「日本人だけの認識」の根拠と 」の冒頭、《危険の感覚は失せてはならない/道はた しかに Look く 。 この 時 、 一 九 六 〇 年 代の 世 界 情勢 を「 核時 代 」 と 捉 え 、 広 島 の人々を人間疎外の現代における「モラリスト 」と見据える際に、 とい う 一 節 に 依 拠 した も の で あ っ た 。 こ の 戦 後 日 本 の 形 象 化 は 、 そ の 後 も 危 険 と 泰 平 との 危 う い バ ラン スの 上 に 立 つ 冷 静 構 造 下 の 深瀬 基寛 訳 のオ ーデンの 詩 、 「支那のうへに夜が落ちる( 短 か い 、 ま た 険 しい / こ こ か ら み る と だ ら だ ら 坂 み た い だ が 。》 日 本 を 象 る 大 江 小 説 の 中 心 的 な モ チ ー フ と し て、 小 説 の 根 幹に 据 」 の一 節 が ク ロ ー ズ ア ッ プ さ れ る の で ある 。 ) on Chine そ れ は 小 さ な 冗 談 の よ う な イ メ ー ジ か ら 始 ま って グ ロ テ スク Night Falls え ら れ てい く 。 こう して 、 第 Ⅰ 期 と 呼 ば れ る 一 九 五 八 ~ 六 四 年 ま を 同 列 に 語 る 「 政 治 と 性 」 とい う 独 自 の 方 法 を 作 り だ し 、 冷 戦 構 な 、 あ る い は エ ロ ティ ック な エ ピソ ード が 続く け れ ど も 、 し で の 大 江 は 、 オ ー デ ン の 詩 を 摂 取す る こ と で 、 政 治 と 内 面心 理 と 造 下 の 日 本 に 生 き る 読 者 の 情緒 を 攪 拌す る 小 説 を 次 々 に 発表 して 実 に つ た わ っ てく る の で あ り ます 。 そ して こう い う 傾 向は 、 態、 狂気 の 状 態 と い う もの が 表 現 さ れ てゆ く 。 その 主題 は 確 だいにアメリカの社会全体をとらえている大きい病気の状 は、 決 し て 核 兵器 に よる 世 界 終末 戦争 の危 機を 含 意 す るも ので は れ がな ん と か 生 き 延 び て い か な け れ ばな らな い と い う こ と を も っ と も、 ア メ リ カ 文 学 の 世 界で も 、 地 球全 体 に つ い て、 そ 考 え る 人た ち は 、 最 近 の ゲ イ リ ー ・ ス ナ イ ダ ー に い た る ま で ア メ リ カ の 作 家 た ち を 広 く 覆 っ て い る よ う に 思い ます 。 〔 …〕 日新 聞社、一九六二・一〇)からである。これは、ベルリン危機と な か った 。 大 江 が 核 戦 争 の 危 機 に つ い て 明 確 な 発 言 を 行 う の は 、 そ れ に 続く キ ュ ー バ 危 機 を 経 て 核戦 争 が 現実 味 を 帯 び て く る 世 界 23 125 176 ソビエト・ヨーロッパ旅行記『ヨーロッパの声・僕自身の声』 (毎 ただし、この時期のエッセイ等で示される戦後の「危険の感覚」 い った。 (4) 、れ 、ら 、の 、狂 、気 、を 、生 、き 、延 、び 、る 、道 、を 、教 、 と り わ け 《「 人間 」 の 声 「わ 、よ 、」 、 へ 》 とい う 一 節 を 、 一 九 六 〇 年 代 以 降 の 自 ら の 文 学 の 支え に で は 、 な ぜ大 江は 、 オ ーデ ン「 支 那の うへ に夜 が 落 ちる 」を 、 ら せる もの で ある た め だ と 考え られ る 。 て し ま っ た ア メリ カ 人 です が、 オ ー デ ン と い う 大 詩 人が い ま して い く の だ ろ う か 。 こ の よ う な 疑 問 を、 ま ずは オー デン の詩 を と く に 詩 人 に 多か った と 思 う の で す 。 こ れ は イ ギ リ ス に 行 っ り 中 国 へ の 日 本 軍 の 侵 略 が は じ ま っ て い た こ ろ に 、『 支 那 の す 。 オ ー デン が、 一 九 三 〇 年 代に 、 つ ま り ス ペ イン 戦 争 が あ 深 瀬 基 寛 訳 で 確 認す る こ とか ら 考 え てい きた い 。 ― う へ に 夜 が 落 ち る 』 とい う 詩 を 書 き ま した 。 い ま 世 界 中 に 呻 が 聞 こ え る 。 中 国 か ら も 聞 こ え る 、 とい う よ う な 詩 で す 。 そ き声 が 聞 こ え て く る 、 ス ペイ ン か ら 、 人 間の 苦 し んで いる 声 Moves / And more insistent than the murmur of the woods and rivers, / Of hum of printing presses lulling answer of the waltzes, / And never stops cry that streams out into the indifferent spaces, / / Above the everlasting or slackens, may be heard more cleary / On lovers ruined in a brief embrace, on heaped like treasure, // Where exiles watch the sea: and in the silence / The ships / / Vague in the anxious sentry's; and in the owl's developed ear, / On battlefields and dead men lying, the moon look down / / The lucky are at work, and most still know they suffer The / Will echo vivid dark will touch them soon: night's tiny noises / The vegetation still grows fiercely like the though in Africa / And in the cities that receive the slanting radiations. / young, / Thibet already silent, the over land and ocean, altering life: / / Inert in the paralysis of caste. And packed Indias cooling, Night Falls on Chine / Night falls on China; the great arc of travelling shadow MAN 二、深瀬基寛訳のオーデン「支那のうへに夜が落ちる」 の 声 と い う ふ う に 書 き ます が、 す な わち 人 類 の 声 が 聞 こ え て の なか で 、 「人間」の声が次のようにいう、彼は大文字で ― 、れ 、ら 、の 、狂 、気 、を 、生 、き 、延 、び 、る 、道 、を 、教 、 くる。《「人間」の声 「わ 、よ 、』》 とい う 詩 で す 。 こ れ は エ リ オ ッ ト や オ ー デ ン の 秀 れ へ た 研 究者 で あ る、 京都 大 学の 深 瀬 基寛 先生 の 翻 訳 で す 。 大 江 は、 ア ー ヴ ィ ン グ、 ヴォ ネ ガ ット 、 スナ イ ダ ー と い っ た ア メ リカ の 文 学者 た ち が「 ア メ リ カ の 社 会 全 体 を と らえ てい る 大 き い 病 気 の 状 態、 狂 気 の 状 態 」 を 表 現 す る とい う 同 じ 主 題 を 共 有 し 「 わ れ ら の 狂 気 を 生 き 延 び る 道 を 教 へ よ 」》 て い る と指 摘 し た 上で 、 こ こで 深 瀬 基寛 訳 で オ ー デ ン の 詩 の 一 節 ― 《「 人 間 」 の 声 を 引 用 す る 。 こ の 一 節 は 、「 狂気 を 生 き 延 び る 道 を 教 え よ 」 とい う 形 で 中 篇 小 説 お よ び そ れ を 表 題 作 に した 小 説 集 の タ イ ト ル と し て も 採 ら れ て お り 、 大 江 にお い て この 一 節 は、 評 論 と 小 説 の い ず れとも強く結びつく形で意識されている 。右の文章に即すならば、 この 一 節が 、 ア メリ カ文 学 が 共 有 し てい た「 社 会 全 体 」の 「 大 き い 病気 」や 「 狂 気 」 を 描 き、 さ ら に この 現 代 の「 狂気 の 状 態 」 と そ れ に 抗 す る 「「 人 間 」 の 声 」 と の 対 比 を く っ き り と浮 か び あ が 24 (5) / / As now I hear it, rising round me turning forests into lies; / And mingling with the distant mutter of from Shanghai, / The voice of Man : O teach us to outgrow guerrilla fighting, / Ruffle the perfect manners of the frozen heart, / our madness. / And once again compel it to be awkward and alive, To all it / / Clear from the head the suffered once a weeping witness. masses of impressive rubbish;/ Rally the lost and trembling / forces of the will, Gather them up and let them loose upon the / / Till, as the contribution of our star, we follow / The earth, / of Whose clear instructions of that Justice, in the shadow / All human reasons do uplifting, loving, and constraining power rejoice and operate. 支 那 のう へ に夜 が落 ちる 支 那の う へ に夜 が 落 ち る 、 渡 り ゆく 蔭の 大 き な 弧 光が /い の て しま つ た 、 缶 詰 さ れ 印 度 は 冷 め て ゆ く / / 世 襲 の 麻酔 に萎 ち を 変 じつ つ 、 陸 に も 海 に も 移 りゆ く / チ ベ ッ ト は も う 黙 つ / 冷淡 な 空 間 に 流 れ て い つ て 絶 え も しな い 、 ゆ る み も し ない 泣 声 は / 沈 黙 の な か で はい ち ば ん はつ き り 聴 き 取ら れ る 、 / ル ツ の 眠 た い 答 へ よ りも も つ とも つ と 執つ こく / 森 林 を 嘘 に / 森 と 川 との い つ ま で も 絶 え な い つ ぶ や き 声 の う へ に、 / ワ 一変す る 印 刷 機 のう な り のう へに // ああ 聞 えて くる 、 わた ― しの ま は り に上 海か ら 涌 き 上 る/ ゲ リ ラ 戦の 遙か 彼方 のつ ぶ 、れ 、ら 、の 、狂 、気 、を 、生 、 や き声 と入 り 交 つ て /「 人間 」 の 声 「わ 、延 、つ 、び 、る 、道 、を 、教 、え 、よ 、」。 // 凍 、た 、心 、臓 、の 、完 、全 、な 、礼 、節 、を 、掻 、き 、 き 、し 、い 、 、れ 、、 、/も 、ち 、ど 、心 、臓 、に 、無 、作 、法 、と 、血 、の 、気 、を 、強 、制 、せ 、よ 、、 、/心 む 、 、、 、 、、 、、 、、 、、 、、 、、 、、 、 、、 、、 、 、 臓 が 患 つ た す べ て の 悩 み の た め 泣 き な が ら 証 言 せ よ 。 / / 案 、子 、気 、み 、た 、い 、な 、が 、ら 、く 、た 、を 、頭 、の 、な 、か 、か 、ら 、掃 、除 、せ 、よ 、、 、/慓 、を 、顫 、 山 、意 、志 、の 、失 、踪 、兵 、を 、集 、結 、せ 、よ 、/ 、あ 、い 、つ 、ら 、を 、掻 、き 、寄 、せ 、て 、地 、球 、の 、上 、 ふ 、解 、あ 、き 、放 、て 、、 、 、。 、 、の 、日 、の 、き 、た 、る 、ま 、で 、、 、 、れ 、ら 、か 、の 、 、大 、 に // あ あ わ 「 、」 、れ 、の 、透 、明 、な 、る 、教 、へ 、を 、踏 、み 、、 、/わ 、ら 、を 、高 、め 、、 、慈 、し 、み 、、 、曳 、き 、 義 、き 、間 、た 、ま 、ふ 、大 、い 、な 、る 、か 、の 、力 、の 、影 、に 、立 、ち 、て 、/人 、わ 、れ 、ら 、の 、正 、し 、 ゆ 殖 し、 / 斜 め にさ す 発 光を 浴び る 都 市 で は // 運の いい 奴は オーデンが中国を訪れた翌年一九三九年に出版された詩集 、、、、歓 、れ 、喜 、し 、発 、效 、し 、/わ 、ら 、の 、星 、か 、ら 、の 、贈 、物 、と 、な 、る 、日 、の 、き 、 さ が 悉 く 、る 、ま 、で 、。 た 仕 事 に あ りつ き 、 た い て い は ま だ 苦 痛 を 感 じ て は ゐ る ん だ が とい った 社 会 情 勢 の 中で 書 か れた 。 ま さ に こ の 時 代の 暗 さ が「 夜 (『戦場への旅 』)に収められたこの詩は、スペイ Journey to a War ン 内 乱 、 ヨ ー ロ ッ パ にお け る フ ァ シ ズ ムの 擡頭 、 日 本 の 中 国 侵 略 え てゆ く 。ア フリ カで はま だ / 植 物 は少 年 の や う に 猛烈 に生 / ま つ 黒 い 夕 闇 が や が て 膚 を 刺す だ ら う 。 夜 の 細 か い 物音 は が落ちる ( / み み づ く の 尖 つ た 耳 に は尖 鋭に こだ ま し 、 / / 心 配 さ う な 番兵 の 耳 に は 鈍 感 に こだ ま し 、 / 戦 場 と 、 宝 みた い に 累 積 し そ こ に 住 ま う 人 々 の 皮 膚 を 刺 戟 す る よ う に 降 り 注 ぎ 浸 透 し、 夜 の ーロッパを覆う影は、中国、アジア、そしてアフリカへと拡がり、 」という 表現 として呈 示される。ヨ ) Night falls on China 月 が さ す 、 / / 月 は 船 か ら 海 を 眺 め て ゐ る 流 し者 に も 照 り、 た 死 ん だ兵 隊 と 、 / 抱 擁 の ま ん なか で 崩 れて しま つ た 恋人 に 25 言 葉な ら ぬ 物 音 は 地上 に 響 き わ た る 。影 が もた らす 闇 は 、 そ の 地 を 受 け 、「 直感 と 理 性 と を 分 離 せ し め 、 人 間 を 消 極 的 に倒 錯 せ し い る 。 こ の こ とは 、 D ・H ・ロ レ ン ス とW ・ブ レイ ク か ら の 影 響 わ れ ら 」 を 導 く 「 大 い な る 力 」「 教え 」 で あ る こ と が 強 調 さ れ て )と 冷 却 ( silence )を 引き 起 こ し 、人 々 は階 級 とい う cool に沈黙 ( )。 Inert in the paralysis of caste この よう な 近 代文 明 人の 麻痺 状 態 が、 ア フ リ カ で 猛 烈 に 繁 殖す る 解 に 基 づ い て お り、 深 瀬 は 人 間 の 意 志 に よ っ て 形 作 ら れ る 「 か の め る 意 志 を 悪 と し て 捉 へ る 」 こ と を 特 徴 とす る オ ー デ ン 詩 の 理 軛 に よ っ て 自 力 で 抵 抗 で き ず にい る ( 植 物 の 健 康 的 で 野生 的な 生長 の イ メー ジと の 対 比 で 呈 示 さ れ て い 力の 影 」を抑制する もの としての「大 義 ( していることが判る。さらに《 the contribution of our star 》 に「 わ れ ら の 星 か ら の 贈 物 」 とい う 訳 語 が 与え ら れ た こ と に よ っ て 、 そ 」を意識して訳 ) Justice る 。 そ の 沈 黙 の 中 を 流 れ る 呻 き 声 と と も に 聞 こ え る 「「 人間 」 の の 差 し 出し手 であ る「 地球 」に 住ま う「 人間 わ れら 」の 能 動 的な 」が、末尾にイタリック体で置かれている 。 ) The voice of Man 前半に示された萎縮した個人に対し、末尾の十一行では、 「 人間 」 声( の 覚醒 を希 求 す る 力 強 い 呼 び か け と 、 そ れ が 宇 宙を 調和 に導 く と 行 為 が よ り際 立た せら れ て い る 。 ら 始 ま 」 り「 社 会 全 体 を と ら え て い る 大 き い 病 気 の 状 態、 狂 気 の る。 この 詩 の 最 後 の 四 行 に つ い て 、 大 江 は 次 の よう な 発 言 を 行 っ てい 訳 業 に 負 っ て い る の は 間 違 い ない 。 そ の証 左 と して 、 オ ー デ ン の 大 江 は 、 オ ー デ ン の 詩 を 解 釈 す る 際 に、 か な りの 部 分 を 深 瀬 の い う ヴ ィ ジ ョ ン と が 描 か れ てい く 。 こ の よ う に この オー デン の 詩 状態 」を 表現す る という 主題 に連なる もの だ と言 える 。この詩 に は、 先の 大 江 の 発 言 に 見ら れた 「 小 さ な 冗 談の よ う な イ メ ー ジ か は オ ー デ ン 特 有 の 文 明諷 刺 と 本 来 あ る べ き 人 間 性 の 回 復 と 正 し さ を 切願 す る 内容 とが 備わ って い るの で あ る 。 そのスター、われわれの星に Justice 、 大 文 字 で オー デン が書 く ジャ ス テ ィ ス 、「 大 義 」 と い う も の が あ る 。 そ れ は 様 々 な 深 瀬 基 寬 の 訳 詩 の 特 徴は 様 々 あ る が 、 特 にイ タリ ック で 書か れ た部分に傍点を施した、「「人間」の声」の内容が語られる箇所に 正 義を ふ くみ こんだも ので しょ うが、や は り地 球に「大 義」 こ の 地 球 とい う 星 か ら の 、 ほ か の 星 の 生 物 へ の 贈 物 とな る 日 と い う も の が ある 。 そ の「 人間 」 の「 大 義 」が 、 わ れ わ れ の 工 夫 が 見 ら れ る 。 命 令 形 の 部 分 は、 読 み 手 へ の 強い 呼 び か け を喚 Till, as the contribution of our が こ な け れ ば な ら な い 。 それ に 対 して 、 と こ ろ が 、 い ま は そ 起する「~よ」を採用している。また《 》 の 部 分 につい て は 、 ま ず「 ああ 」 とい う 詠嘆 と「 あの 日 」 star とい う 語 を 先 に 呈 示 し 、「 あの 」 の 内 容 で あ る 「 わ れら の 星 か ら れ ど こ ろ か 、 地 球の な か で わ れ わ れ は 争い 合 って 、 ス ペイ ン こ え る 。 わ れ わ れ の 狂気 を生 き 延び る 道 を 教 え よ 、 と い う 詩 で も 上 海 で も 呻 き 声 が 涌 き お こ っ て い る 。「 人 間 」 の 声 が 聞 の贈 物とな る日 のきたる まで 」という 語を こ の詩 の締 めく くりに な ので す 。 26 (6) 配 した。また 《 》 を鉤括弧 付き の「 人間 」と し、 また 大文 MAN 字で始まる正義の女神としての《 Justice 》を鉤括弧付きの「大義」 と 表 し 、「 ~ た ま ふ 」 と い う 敬 語 を 添 え な が ら 「 大 義 」 が 「 人 間 (7) ここで大江は、深瀬が強調する、 「人間」の高みに位置する「様 時 間 的 な イ メ ー ジ は 、「 ほか の 星 の 生 物 へ の 贈 物 と な る 日 」 の 到 来 と い う 深 瀬 訳 を 媒介 と し て導 き 出さ れ て い る の で ある 。 オ ー デン が、 個 人 の 心 理 的 な 内 部 疾 患 と社 会的 な 疾 患 と を 複合 して 詩 を 書 い て い る こ と は 周 知 の 通 り で あ る 。 工 藤 昭 雄 は その 著 の か げ に暗 黒 を 同時 に 発 見 し て しま う 二 重 の 視覚 」で 以て 現 代 と 々 な 地 域 や 人 々 の 様 を 同 時 に 見 る 宇 宙 か ら の 視 座 を 取 り、 い つ か 「 人 間 」 が 「 ほ か の 星 の 生 物 」 とい う 他 者 と の 間 に 関 係 を 真 に 形 る 点 が オー デン の 詩 の 特徴で ある と述べてい た が 、 この 詩も ま い う 状 況 を 捉 え 、「 人 間 の 精 神 内 部 の 変 革 に よ る 救 済 」 を 希 求 す を 描 き 出 し て お り 、「 建 設 的 要 素 の か げ に 破 滅 的 要 素 を 〔 … 〕 光 成 しう る も の と な る 。 この よ う な 大 江の 詩 の 解 釈 は、 深 瀬の 訳 業 書 に お い て 、「 視 覚 に 映 ず る 目 前 の 荒 廃 で な く 現 代 の精 神 地 図 」 に 準 拠 した も の で あ る だ ろ う 。 と り わ け 「 大 義 」 が 核 時 代 に 生 き さにそのような「「真に人間的なもの」を成就する」「人間と宇宙 来る べ き 日 に、 その 様々 な「 正 義 」を 含 み こ んだ 「 大 義 」 が 樹 立 る われ わ れ「 人間 」に とっ て倫 理的 な 意 味 を 帯びた もの と して立 説』 でも 、 ホ ガ ート は オ ー デ ン を 「 モ ラリ スト 」 と呼 び、 機械 化 して い る 詩で ある 。 深 瀬 が「 評 解 」で 参 照 して い る 『 オー デン 序 さ れ た 社 会 に生 きる 「 人 間の 意 識 」に 関 心 を 寄 せ 、 そ れ に よ っ て 境 によ って 歪め ら れた 人間 性を 描き 、さ らに 人間 性 の回 復 を 目指 す る よ う に 、 現 代の 荒 廃 そ のも ので はな く、 その よう な 歪ん だ 環 ハート さ ら に 、 原 詩 が 持つ 、 人 間 を 抑 制 し停 滞 さ せる 「 狂 気 」 が 地 表 と の 対 比 を 受 け て 、 論 文 の 冒 頭 で 挙 げ た オ ー デ ン の 《 outgrow 》 に つ い て の 大 江 の 解 釈 が 成 立 し て い る 。「 頭 を ふ さ い でい る 状 態 社会変革への願望を綴るのだと指摘した 。これらの評論が指摘 が あ っ て、 その 上 に あ る も の を 突 き 破 っ てゆ く よ う に 成 長す る 」 を 覆 う 様 と、 野 生 の 獰猛 さ と健 康 さ が 生 長 ( )す る イ メ ー ジ grow ある 。 との調和を作り出す 」(工藤 )様を描くオーデンの特性をよく表 さ れ な け れ ば な ら な い 。「 大 義 」 の 樹 立 こ そ が 「 贈 物 」と な り、 々 な 正 義 を ふ く み こ ん だ 」「 大 義 」 を 正 し く 読 み 取 っ て い る 。 様 (8) ち 現 れ る の は 、 深 瀬 が 施 し た 訳 詩 の 特 徴か ら 読 み 取 ら れ た も の で (9) き 受 け て かつ 乗り 越え てい く 」 と い う 大 江 の解 釈は 、 低 く立 ち こ る 「 人 類 」 の イ メ ー ジ と 重 ね 合 わ さ れ て い る 。「 生 き 延 び る 」 と す オー デ ンの 詩の 主題 が、 大江の黙 示録的 終末 観 の 中で 捉え られ める 「狂 気」 を垂 直に 超え る 上昇のニ ュア ンス を受けた も ので あ る 。加 え て 、《 outgrow 》 が 「 生 き 延 びる 」と訳 さ れる こと で、 未 来 へ 向 か う 時 間 的 な イ メ ー ジ が 付 与 さ れ 、 他 の 星 と 取 り 結 ぶべ き 未 来 へ 投射 さ れ る 倫 理 的 な 「 正 し さ 」の 発 露 が こ こで 大 江 に強 く 》 の 持つ 垂 直 性とい う 空 間 的イ メ ー ジ と未来を指 した outgrow 意 識 さ れ る 。 こ の よ う に 、「 生 き 延 び る 」 と 訳 さ れ る オー デ ン の 《 以 上、 オ ー デン 詩 の 持 つ 主 題 と 方 法 と が 深 瀬 の 訳 詩 に よ って 一 基 づ く の で ある 。 で なければならないのは、この状態を「乗り越え 」、 outgrow 人 類 の 回 復 や 人 間 の モ ラ ル を 強 く イ メ ー ジす る こ の よ う な 論 理 に いる いう 語が、災 厄や 核戦争を 切り抜けて 生きる で は なく、 survive 旧 来 の 状 態 か ら 脱 し た り 成 長 した りす る と い う 原 義 か ら 派 生 し て 「 自 分 が 現に ある と こ ろか ら、 その 苦 し み や困 難 と い う も の を 引 (11) 27 (10) に 至 る こ とを 確 認 して きた 。で は 、 さ ら に この 詩 の 「 狂 気 」 が大 層 強 調 さ れ る こ と で、 大 江 にお い て この 詩 が重 要な 位置 を 占 め る まとまって、むくむく頭をもたげていたものが力を失い、 「狂 から、 「狂気 」もそう永続はしません。興奮から平静に戻り、 の エ ネ ルギ ー に は 限度 は あ りま す し 、 様 々 な 制 約も あ り ます 気 」 が 弱 ま る につ れ て、 ま と ま っ てい た も の は 、 ば ら ばら に 江の フ ラ ン ス 文学 の師 で あ る 渡 辺 一夫 の「 ユマ ニ ス ム」 とい う 概 念 と 結 び つ く こ と で 、 こ の 時 期 の 大 江 文 学 を方 向づ け て い く こ と な り 、 ま た も と の よ う な 、 う よ う よ し た 様 々 な 傾 向 を 持つ も し た 様 々 な も の が 静 か に して い る 状 態 を 、 平 和 と か 安 静 と か の の 集 合 体 に戻 るの です 。/ そ し て 、 人 間 は 、 こ の う よ う よ を見てい きたい 。 三、オーデンと大江健三郎の「 ユマニスム」 っ た り 倦 怠 を 催 し た り し ま す 。 そ し て 、 再 び 次 の「 狂気 」を 好 ま し い も の が少 し長 く 続 き ま す と 、 こ れ に あ き て 憂鬱 にな 正 気 と か 呼 ん で 、 一 応 好 ま しい も の と し て い ま す の に 、 こ の の ど こ か が 工 合 が 悪い 、 ど こ か が 痛 む 」 と い う 「 己 の 有 限 性 」 の 求 め る よ う に な る も の ら し い の で す 。 この 勝手 な 営 み が 、 恐 渡 辺 一 夫 は 「 狂 気 に つ い て 」 に お い て 、「 狂 気 」 と は 「 自 分 自 覚 を 持 た な い ・ 自 覚 を 忘 れ た 人 間 の 精 神 状 態 とい う 独 自 の 定 義 、動 、激 、とか感 、」や「興奮状態」には、「荒廃と犠牲と を提出し、「感 のエラスムスという大学者は、『痴愚神礼讃』 Encomium Moriae と い う 諷 刺 書 を 綴 り ま し た 。 こ れ は 、「 狂 気 」 を ほ ん と う に らく 人間 の生 活の 実態か も しれま せん 。/ 〔 …〕/ 十 六世 紀 を 伴 う 」「 狂気 」 が 萌 し て お り、 こ の 「 誰 し も が 持 っ て い る 「 狂 間 が 、「 狂 気 」 の 女 神 を 礼 讃 せ ざ る を 得 な い とい う 趣 旨 で 書 ず 、 自 他の 「 狂 気 」 の お か げで 甘い 汁 を 吸 っ て い る 様 々 な 人 讃 美 し た も の で な く 、「 狂気 」 に と りつ か れ て そ れ を 自 覚 せ し か し 、 人 間 と い う も の は 、「 狂 気 」 な し に は 居 ら れ ぬ も 気 」 を 常 に 監 視 して 生 き る 」 こ と を 説 い てい た 。 の で も ある ら し い の で す 。 我々 の 心 の な か 、 体の な か に ある か れた 皮 肉な 人間 諷 刺 書 で す 。 /エ ラス ム スの 書 物 は、 十 五 あります 。十 五・ 六世紀の昔から、今日にいた るま で、洋の 様 々 な 傾 向 の も の が、 常 に う よ う よ 動 い て い て 、 我 々 が 何 か 東 西 を 問 わ ず 、「 狂 気 」 の 帝 国 は 健 在 で あ る か ら で し ょ う 。 です が、 現 代 社 会 に も 我々 一 人 一 人 に も あ て は ま る と こ ろ が し て 、 そ の 方 向 へ 進 む の に 一 番 適 した 傾 向 を 持 った も の が 、 健 全 で 正 気 な 生 活 を 送 っ て い る つ も り の 我々 が 、 感 動 と か 感 世 紀 末 か ら 十 六世 紀 前 半 に か け て の ヨ ーロ ッパ 社 会 へ の 諷 刺 む く む く と 頭 を も た げ て 、 ま とま った 大 き な 力 の も の に な る 激 とか 呼 ん でい る も の の な か に は、 常 に 「 狂 気 」 の 翳 が さ し 行 動 を 起 す 場 合 に は、 その う よ う よ 動 い て い る も の が、 あた のです 。そのま ま進み続けます と、 段々 と人 間は 興奮 して ゆ て い る こ と が 多 い の で す し 、 わ れ わ れ は 「 狂 気 」 に 捕ら え ら か も 磁気 にか か っ た 鉄 粉 の よ う に 一定 の 方 向を 向き ます 。 そ そ の 時 「 狂 気 」 が 現 れ て く る の です 。 幸 い に も、 普 通 の 人間 き、遂には、精神や肉体もある歪み方を示すようになります。 28 (12) 生 を 謳 歌 す る こ と は、 古 今 東 西 を 通 じ て 見 ら れ る こ とか も し れ ても それ を 知 ら ず、 且つ また それ か ら 甘 い 汁 を 吸 って 、 人 よ っ て そ な え た 以 上、 死 滅 す る か 、 あ る い は 自 分自 身 を 救 助す る や 自 分自 身 で 死 滅 しつ く す か も し れ ぬ 可能 性 を 、 核 兵 器 の 出 現 に 渡 辺 一 夫 の 訳 し た サ ル ト ル 「 大 戦 の 終 末 」 の 一 節 、「 人 類 がい ま ここで渡辺は、「狂気」を「病患」と重ねた上で、「まとまった 「 核時 代」を論 じる。 例え ば「 核時代のエ ラスムス」 とい うエ 日 本 に 移 入 し よ う と した 人 間 と し て 渡 辺 一 夫 を 引 き 合 い に 出 し て し て い る 。 同 じ 時 期 か ら 、 大 江 は 、 フ ラン ス ・ ユ マ ニ ス ム を 現 代 か は 、 人 類の 日 々 の 選 択 の 問 題だ 」 と い う 言 葉 を 幾 度 とな く 引 用 れま せぬ。 や「まひ」をもたらす状態こそを「狂気」の状態と規定していた。 大きな力」になろうとする「興奮 」が人間の精神と肉体に「歪み 」 み 」 が 十 五 世 紀 末 か ら 現 代 に 至 る 社 会 的 な 問 題 とな って い る こ と 渡 辺は また 、 「狂気」を身体や精神の「歪み」ととらえ、この「歪 う な 発 言 が な され てい る 。 ッ セ イ で は 、「 核 時 代 」 に お け る 「 人 類 」 の 営 為 に つ い て次 の よ 絶す る 渡 辺一 夫 の 考 え は 、 社 会的 疾 患 と個 人の 心 理 的 な 内 部疾 患 「 病 患 」 を 「 己 の 自 然 」 と 捉 え て この 「 病 患 」 や「 狂気 」を 拒 の は 、 中 世 の 暗 黒 か ら宗 教戦 争 に つ づ く 数 しれ ぬ 戦 争 が、 つ しな 次 の 世 代 に文 明を ひ きつ ぎう る こ とを 信 じ る 勇 気 をも つ 、き 、ぶ 、り 、よりはま ぼく が 結 局 は 人 類 が 核 時 代 を 生 き の び 、 ご を 述べ て い る 。 を「 狂気 」と し て呈 示し、 そ の「 狂気 」が 人間 に 麻痺 や歪 みを も ラ ッ プ ( * ア メ リ カ の 核 物 理 学 者 の こ と … 引 用 者 注 )に 到 る よ 時 に、 お な じく ひ と つ の 確実 な 歴 史 と し て、 エ ラ ス ム スか ら うな、 「人間自身の狂おしさや愚かさ 」をよく知った人間の、 い に 核兵 器 に よ る 戦 争 へ と至 る 歴 史を つ く り あ げ てい る と 同 を 「 わ れ ら の 狂 気 」 と し て 描き 、 文 明社 会に 生 き る「 人 間 」 の 歪 ユ マニ ス ト 的 営 為 が 決 して とだ え は せ ぬ こ とを 知 っ てい る か 那のうへに夜が落ちる 」は、地上を広く覆う文明の「暗闇」や「影」 み と 不 幸 と を 鮮 烈 な イ メ ー ジ で 描 き 出 し て お り、 渡 辺 一 夫 の 定 義 ら で ある 。 たらすといったオーデンの詩に呼応するものである 。とりわけ「支 あ る と 言 え る 。 一 九 六 〇 年 代 、「 核 時 代 」 下 で 人 間 の 恢復 と 再 生 大 江 が 早く か ら サ ル ト ル を は じめ と す る フ ラ ン ス を 中 心 と す る ル ネ ッ サ ン ス と 核時 代 とを 「 暗 黒 」 の 時 代 と して 重 ね合 わ せ 、 ま の訳者でもある渡辺一夫を媒介として、大江はこのように、中世・ 夜 が 落 ち る 」 の 詩 句 が 確 か に 響 い て い る だ ろ う 。『 痴 愚 神礼 讃 』 を 信 じ る 勇 気 」 とい う 大 江 の 発 言 に は 、 オ ー デ ン 「 支 那 の う へ に 「 核 時代 を生 きの び 」て 「 次 の世 代に 文 明 を ひきつ ぎ うる こと す る 機 械 化さ れた 文明 に生 きる 人間 の「 狂 気 」 と近 似 したも ので を希求するといった発言は 、これら大江が依拠する渡辺一夫の「狂 気 」 の 定 義 と 、 そ こ か ら 探求 さ れ る 人 間回 復 を 希 求 す る「 ユ マ ニ 二 十 世 紀の ヒ ュ ー マ ニズ ムに 傾 倒 し てい た こ とは 自 他 によ っ て度 スム 」との 文脈 の中で捉 えていくべき である だろう。 々言及されてきた事実である。大江は核時代について発言する際、 29 (13) よ っ て 結 びつ け て い る 。大 江は 、 この よう に オ ー デ ン を 、 渡 辺一 た エ ラ ス ム ス と同 時 代 のモ ラリ スト とを 「 ユマ ニ ス ト 的 営 為 」に そ し て、 この 「 人 間 」 の「 声 」 に 合 致 す る もの と し て 見 定 め ら れ ら 導 き 得た 核 時 代 観 と は、 こ の よ う な ヴ ィ ジ ョ ン に 他な ら な い 。 広 島 的 な る 人 」 と は 、「 最 悪 の 絶 望 、 い や し が た い 狂 気 の 種 子 が おいて中心化されてきた、「真に広島的なる人間」である 。「真に 胚胎するところに生きつづけている、決して屈服しない人々」 、 た の が 、『 ヒロ シ マ ・ ノ ー ト 』 を は じ め とす る 大 江 の テク ス ト に 求 し た の で ある 。 「「人間」の声 」に重きを置くオーデンの詩句は、 「 決 し て 絶 望 せ ず、 しか も 決 し て 過 度 の 希 望 を も た ず 、 い か な る は 独 自 の 解 釈 で も っ て 大 江的 な 核 時 代 の ユ マニ ス ム の あ り 方 を 探 人 間 を 疎外 す る 核時 代に お い て、 人 間 性 を 回 復 し な け れ ば な ら な 夫の 説く ユマニス ムへ と結びつけ なが らよ り深く理 解 し、 ある い い とい う サ ル ト ル を は じ め と す る 二 十 世 紀 の ヒ ュ ー マ ニ ズ ム へ と 状況においても屈服しないで、日々の仕事をつづけている」 「モ ラ リ ス ト 」 で あ っ た 。 大 江 の 言 う 「 真 に 広 島 的 な る 人 」 とい う オ ー デン の 視 点 と が、 大 江の 考 え る 核 時 代 の ヴ ィ ジ ョ ン と して 一 の オー デ ン「 支 那 の う へ に 夜 が 落ち る 」の 詩、 と り わけ 後半 の 詩 れた もの であ った ので あ る。 「 屈 服 」 しな い 人 間 と い う 、 オ ー デン の 詩 を 受 容 す る 中 で 定 義 さ 「 モ ラ リ ス ト 」 の 内 実 は 、 ま さ に 核 の 脅 威 とい う 「 狂 気 」 の 中 で に 基づ い た 深 瀬 の 訳 業、 そ れ ら に触 発さ れ る よう に大 江 が 現 代に き 延 び る 」 とい う 語 に は 、 深 瀬 基 寛 訳 の オ ー デ ン の 持つ ヴ ィ ジ ョ こ こま で、 大 江 の 核 時 代 を め ぐ る 発 言、 そ こ で 頻 出さ れ る「 生 お わ りに お い て ユ マ ニ ス ム の あ り方 を模 索 し てい く と い う 姿 勢 が 存 し てい では survive ンが密接に関わっていることを明らかにしてきた。 に 由 来 す る 「 生 き 延 び る 」 とい う 発 語 は 、 社 会 的 疾 outgrow 患 た る 「 狂 気 」 や 「 困 難 」 を 「 引 き 受 け 」「 乗 り 越 え 」 て 正 し い なく 次 の 段 階 へ 移 行す る とい う 、 現 代 に お け る ユ マ ニ ス ム 探 求 とい う 大 江健 三郎 が 深 瀬訳 の オー デン の 詩 か 重 ね合 わ せ る 発 想を 有 して い た 。 戦 後 の 状況 と、 原 爆 や 水 爆 を 抱 え た 第 二 次 世 界 大 戦 後 の 現 代 と を そも そ も 深 瀬こ そが 、 オ ーデ ン が こ の詩 を書 いた 第 一 次世 界大 に 頭 ま で 漬 か っ て い る、 しか し そ の 核 の 脅 威が もた ら す 「 苦 し み ふ さ い で い る 」「 狂 気 」 の よ う な 核 の 脅 威 を 「 突 き 破 」 り、 未 来 大 江 独自 の 主 題 を 基 底 と して い る の で ある 。 て局地的な争いが継続する中で、我々「人類」は、文明の「狂気 」 社 会 的 な 疾 患 と し て 核 の 脅 威 が 世 界 を 覆い 、 冷 戦 構 造 下 に お い た の だ と 言 え る だ ろう 。 現 代に おい ても 古び ない オー デ ンの 詩 と、 そ れへ の理 解 と 称揚 と 句 を 下 敷 き に 核 時 代 観 を 形 成 して い く 根 幹 に は、 詩 を 社 会 化 し 、 致 す る こ と と を 確 認 して きた 。換 言す れ ば 、 大 江 が オ ー デ ン の 詩 句 が 結 び つ く こ と と、 社 会 的 な 感 覚 と 心 理 的 な 感 覚 と を 複 合 し た 以 上、 渡 辺 一 夫 に 依 拠 す る 大 江 の ユ マ ニ ス ム の 探求 に、 深 瀬 訳 接 続さ れ、 大 江 独自 の ユ マ ニ ス ム 探 求 と い う 主 題 を導 い てい く 。 (15) や 困 難 」 を 「 引 き 受 け て 」「 乗り 越 え 」 よう と す る 「 声 」、「頭 を そ が 切 実 に 求 め られ る ― に 向け て「 正 し 」き 道 を 歩む こ とを 希求 す る 「 人 間 」 の「 声 」こ 30 (14) (16) つ の 短 編 」 と 「 オ ー デ ン と ブ レ イ ク の 詩 を 核 に す る 二つ の 中 篇 」 コア と こ ろで 訳 者 がか ねが ね考 へ て ゐ る こ とは 、 極 東 の われ わ 潮社 )を 刊 行す る 。 前者 は、 こ の 時 期 に 集中 し て 読 ん だ 多 様 なア を ま と め た 小 説 集 『 わ れ ら の 狂 気 を 生 き 延 び る 道 を 教 え よ 』( 新 コア 、の 、ご 、と 、き 、も 、の 、を 核 とす る三 一 九 六 九 年、 大 江 は 、「 僕自 身 の 詩 オーデン を中心とし 、ルー イス を含 むこ の時 代の詩人グ ループ の とい っ た 英 詩 を 小 説 の 方 法 レ ベ ル で 受容 した 中 篇 で あ る 。 例え ば メリ カ文 学 を受容した小 説で あり、後者は、 ブ レイク とオ ーデン れに とつ ては 第二次世 界大 戦後の われ われ の体 験が 彼等 (* こ と … 引 用 者 注 )の 第 一 次 世 界 大 戦 後 の 体 験 に は る か に 密 接 こ の 著 書 の プロ ロ ー グ で 披 瀝 さ れる 大 江 の「 詩の ご と きも の 」の に 対 応 す る とい ふ 点 で あ る 。 原 爆 や 水 爆 や そ の 他 の 国 際 政 治 の 問 題 は 西 洋 も 東 洋 も 問 題 と し て が 同 時 的 で あ る 。〔 … 〕 と と がで きる だ ろう 。 一 つ 「 核避 難 所 の モ ー ゼ 」 に、 オ ー デン の 詩 の 響 き を 聞 き 取 る こ あ り と ある 村の / 人 間 家畜 栽 あり とある 培物が浸 蝕さ れ る時 /森にお こってい るの は驚くべき /生 命 の 毒 とに / あ り と ある 市 核 爆 弾 と 人 工 衛 星 と が 撒 き ち ら す / 放 射 能 の 灰 と ラ ジ オ 光線 シ ェ ル タ ー テ イ ウ ス的 転 身 変 貌 の 原 理 だ か ら で あ る 。 ル ー イ ス の こ の 本 い ふの は 詩 そ の も の が つ ね に 年 代 記 を 無 視す る と こ ろ の プ ロ が 極 東 の われ われ の 現 在の 体験 に とつ て 無 数の 適 応 点を もつ の は この 観 点 か ら 眺め て の こ と で ある 。 この よう に 深 瀬 は、 第 一 次 世 界 大 戦 を 経 て な お 詩 を書 き継 い だ 村 の / 衰弱 は の 更 新 で あ る 。 森の 力 は 強 ま り/ あ り と ある 市 さ れて 「力 」とな るか らだ 。/ 樹木 と草 の葉 が炭 酸ガス に殺 オ 光線 の 毒 こ そ は / 樹木 の 葉 と 地 面 の 草 と湿 地の 苔 に / 吸 収 森の回復である。/放射能の灰 とラジ オ ー デ ン の 詩 に 、「 年 代 記 を 無 視 」 し、 第 二 次 世 界 大 戦 後 の 核 時 あ る「 英 文 学 の 教師 かつ 翻 訳 家 」か ら 深 瀬訳 は 取 る に 足 ら な い と 逆に 代 の 現 在に おい て も 有 効 な「 無 数 の 適 応 点 」 を 見 い だ して い た 。 い う 「 ア カ デ ミ ッ ク な 教 示 」 を 与 え ら れ た 際 、 大 江 は 「 僕 に とつ さ れ ず / 酸 素 を 生 む こ と を 見 よ / 核 時 代 に 生 き 延 び よ う とす 覆い動植物が「衰弱」する様が、森における「生命の更新 」や「回 「 毒 」 と い う 禍 々 し さ を 含 む 「 光 線 」 と「 灰 」 と が 地 上 を 広く あり とある市/あ りと て 問 題 の 局 面 は そ う し た 段 階 を こえ て い る 」の で あ って 、 自 分が ある 村を 逃れ て る 者 は / 森の 力 に 自 己 同 一 化す べ く 中に 位置づ け、 さら に渡 辺一 夫の 「 ユマ ニス ム」 と接 続さ せる こ の「 精神 と感 受 性」 を 受容 し、 主 題を 二〇世 紀の ア メ リカ 文学 の ま た 末 尾 で は、 この 「 森の 力 」 へ の 「 同 一 化 」を 目 指 し て 人 々 に 復」と対比され、 「生命の更新」が「力 」と結びつけられていく。 森に 隠遁 せよ! 精 神 と感 受 性 を か け た 苦 闘 」 を 読 み 取 って い る の だ と強 く 反 発 し 「 深 瀬 基 寛 博 士 に よ る オ ー デン 訳 の 一 行、 一 行 に、 博 士 の 生 涯 の た エ ピソ ード を語 っ て い る 。大江はまさに深 瀬訳からオーデン とによって、一九六〇年代の日本に生きる自らの「核時代観」を、 31 (17) 深 瀬同 様に 「 苦 闘 」 し な が ら形 成さ せて い っ た の で ある 。 (18) 「 ~ せ よ ! 」 と い う 呼 び か け が な さ れ る 。 こ こ に 、「 い の ち を 変 注 じ つ つ 」 地上 に「 夜 が 落ち て 」 至 る と こ ろ を 覆 う 暗 闇 と 「 発 光を 生かそ う 」(『毎日新聞』夕刊、一九八三・六・二三 )。 代 下 の 日 本 へ と 移 し て小 説 化す る 大 江健 三 郎 の 小 説 家 と して の 面 の ご と きも の 」 を起 点 と して 、 オー デン の 詩 の イ メー ジを 、 核 時 生 き 延 び る 道 を 教え よ』 で は 、 こ の よ う な 「 詩 」 を ず ら し た 「 詩 詩 を 散 文 的 に 脱 臼 さ せ た 試 み を 明 か し て い る 。『 わ れ ら の狂 気 を 詩 を 受容 しつ つ も 、 響 き に お い て も 表 現 に お い て も 、 オ ー デ ン の 付 与 さ れ て い た 。 大 江 の こ の 方 法 論的 な自 己言 及は 、 オ ーデ ン の 身 の 規 定 で あ り、 十 分 に 詩 た り え な い も の で あ る こ と が 意 図 的 に 決 して 「 詩 」 で は な く 「 詩 の ご と き も の 」 で あ る と い う 、 大 江自 ー デン の 詩 とは 異な る 事 態 で あ る 。 忘れ て な ら な い の は 、 こ れ は い呼びかけで語られるのは、「逃れて 」「森に隠遁」するというオ ち る 」 の 特 徴 が う か が え る 。 そ の 一 方 で 、「 ~ せ よ ! 」 とい う 強 せ よ 」 と 呼 び か け る 箇 所 等、 確 認 して きた 「 支 那 の う へ に 夜 が 落 ( 一 九 五 五・ 六 ) の 一 節 を 受 けた も の で あ る 。 お 、この言葉の定義は 、深瀬が訳したC・D・ルーイス『現代詩論 』 較文 学 』 第 五 三 巻 、 二〇 一 一 ・ 三 ) 参 照 。 ン詩集 』の受容 4 間」の声 』(岩波書店、一九八二・五) ナ ー ル 大 会 講 演 、 一 九 八 一 ・ 一 二 ・ 五 )。 引 用 は 『 核 の 大 火 と 「 人 3 代と大江健三郎の問題」(『昭和文学研究』一九九九・一二)等。 頁。 大江 健三郎「核 の大火と「 人間」の声 」(京都大学法学政治学ゼミ 目 躍如 とした創 作 活動 が展 開さ れる 。 5 ― 前掲書。 「政治と性」の淵源としてのオーデン 大 江 健 三郎 「 核 の 大 火 と 「 人 間 」 の 声 」 注 深 瀬 基 寬 『 オ ー デ ン 詩 集 』( 筑 摩 書 房 、一 九 五 五 ・ 六 )、 前掲書。 」 (『比 頁。な 153 1 ― こ の 点については拙稿「大江健三郎における深瀬基寛 訳『オーデ 17 酔 の あ い だ の 刃 渡 り 」( 深 瀬 )と い う オ ー デ ン の 詩 の 手 法 の 受 容 を積み重ね、しかしそこから覚醒する語りを織り込んでいく「醒・ て賞賛していることからも確認できる。 隆 一 と 垂 直 的 人 間 」(『 新 潮 』、 一 九 六 六 ・ 一 一 ) と い う 文 章 を 著 し という一節を受容して詩 を書いた田村隆一に対して、大江が「田村 ゃ な い か 。 / わ れ わ れ は 、 水 平 的 人 間 し か / 重 ん じ な い け れ ど 。》 は、 この 『 われ らの 狂気 を生 き 延 びる 道 を 教 え よ 』 に おい て先 鋭 ン 「 短 詩 」 の 冒 頭 の一 節 「 で きた ら 、 垂 直 的 人 間 を/ 尊 敬 し よ うじ 的 に 方 法 化 さ れ 、 第 Ⅱ期 の 文 学 的 営 為 と して 結実 して い く の で あ 二・五) 同書 頁。 工 藤 昭 雄 『 破 滅 の 証 言 ( 現 代 イ ギ リ ス 詩 人 論 )』( 南 雲 堂 、 一 九 六 る。 」 とい う 語 を 中 心 と し た 幅 ) outgrow 大 江がオーデ ン の詩の 持つ垂直性 を理解して いること は、オーデ 「 核の大 火と「人間」 の声」注 1 広 い ア メ リカ 文学 の 受 容 や 、 酔 い な が ら 被 害 妄 想や 夢の イ メ ー ジ このように、「 生き延びる ( 6 例えば 團野光晴「『ヒロシマ・ノート』とナショナリズム―六〇年 大江健三郎「 増大した核戦争の危機回避へ〈人間再生〉の思想を 物 と の 対 比 で 示 さ れ る 動 植 物 の 萎 縮 す る 姿 、「 力 」 を 背 景に 「 ~ 浴 び る 都 市 」 の 様 、 あ る い は 「 少 年の やう に 猛 烈 に 生 殖 」 す る 植 1 7 頁。 12 70 32 2 8 9 10 頁。 頁。 頁。 オーデン序説』 』、 筑摩書 房、 一 同書 頁。 頁。 頁。 同書 大江健三郎「異様な穏やかさ」(『新潮 』、一九七〇・四 )。 六 )。 C・D・ルーイス、深瀬基寬訳『現代詩論 』(創元社、一九五五・ 70 186 リチャード・ホガート 、岡崎康一訳『晶文選書 ( 晶 文 社 、 一 九 七四 ・ 一 ) ― 渡 辺 一 夫 「 狂 気 に つ い て 」(『渡辺 一 夫 著 作 集 九 七 〇 ・七 ) 51 10 大 江 健 三 郎 「 核 時 代 の エ ラ ス ム ス 」(『 図書 』、 一 九 六 八 ・ 八 )。 引 392 用 は『 ヒ ロ シ マ の 光 』 33 390 大 江 健 三 郎 『 ヒ ロ シ マ ・ ノ ー ト 』( 岩 波 新 書 、 一 九 六 五 ・ 六 ) 275 17 16 15 18 153 11 12 13 14 183