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Vol.97 - テレコム先端技術研究支援センター|SCAT

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Vol.97 - テレコム先端技術研究支援センター|SCAT
SCATLINE Vol.97
SCATLINE Vol.97
IN ACTIVITY
第94回テレコム技術情報セミナー
● と き:平成 26 年 12 月 19 日(金)
● と こ ろ:SCAT 会議室
講演 1:Internet of Things 総論
日本電信電話(株) ネットワーク基盤技術研究所
主任研究員 後藤 良則 氏
当センターの賛助会員企業などから 40 名が参加されました。
今回は「IoT の最新動向」をテーマにご講演いただきました。
講演 2:oneM2M 標準化;初期リリースの概要と今後
日本電気(株) 第二キャリアサービス事業部
シニアエキスパート 小林 中 氏
本講演の要旨は、本号の SEMINAR REPORT にて掲載してい
ます。
講演 3:e-Health に関する NTT の取り組みについて
日本電信電話(株) セキュアプラットフォーム研究所
研究主任 高橋 元 氏
第62回理事会
● と き:平成 27 年 3 月 9 日(月)
● ところ:SCAT 会議室
SCAT では、第 62 回理事会を開催し、平成 27 年度の事業計画および収支予算を決定しました。
平成 27 年度の事業計画では、平成 26 年度に引き続き、研究助成事業、技術情報の提供および知識の普及事業、調査研究および
その支援事業を三本柱とする事業計画が、また、収支予算では約 2.3 億円の一般会計収支予算計画が承認されました。
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May, 2015
SCATLINE Vol.92
SCATLINE Vol.97
May, 2015
ACTIVITIES REPORT
平成26年度の事業活動報告
研究助成事業
(1) 研究費助成
大学等の研究者、研究グループが行う先端的な情報通信技術
の研究に対して助成を行うものである。平成 26 年度は、平
成 24 年度開始分 12 件、平成 25 年度開始分 15 件及び平成
26年度開始分16件の計43件の研究に対して助成を行った。
また、平成 27 年度から助成を開始する 15 件の採用を決定し
た。
(3) 国際会議助成
先端的な情報通信技術に関する国際会議の開催経費に対して
助成を行うものである。平成 26 年度は、27 件の国際会議に
対して助成を行った。また、平成 27 年度に助成を行う国際
会議 28 件の採用を決定した。
(2) 研究奨励金
先端的な情報通信技術の研究を行う大学院博士後期課程進学
者に対して研究奨励金を支給するものである。平成 26 年度
は、平成 24 年度開始分 4 人、平成 25 年度開始分 2 人及び平
成26年度開始分3人の計9人に対し研究奨励金を支給した。
また、平成 26 年度から支給を開始する 3 人の採用を決定し
た。
月にかけて公募を行い、
研究費助成92 件、
研究奨励金16 件、
国際会議助成 28 件の応募を受けた。SCAT 研究助成審査委
員会(委員長:辻井重男中央大学研究開発機構教授、審査専
門部会長:富永英義早稲田大学名誉教授)による厳正な審査
の結果、研究費助成 15 件(後年度の助成分を含めた助成総
額 3,439 万円)
、研究奨励金 3 件(後年度の助成分を含めた
助成総額1,080 万円)
及び国際会議助成28 件
(助成総額697.5
万円)を採用することとした。採用した助成対象は次のとお
りである。
(4) 平成 27 年度新規助成案件
平成 27 年度からの新規助成案件は、平成 26 年 9 月から 11
■研究費助成
研究テーマ
3次元ポリマー光細線を用いたSi LSI上光伝送システムの構
築
スーパーナイキスト波長多重光ファイバ伝送に関する研究
研究代表者および所属
雨宮 智宏
東京工業大学 量子ナノエレクトロニクス研究センター 助教
五十嵐 浩司
大阪大学大学院 工学研究科 准教授
マルチモーダル情報を利用した多言語意味空間の生成手法
の開発
内海 彰
電気通信大学大学院 情報理工学研究科 教授
「統合物語生成システム」のための各種知識要素の自動獲得
小方 孝
岩手県立大学 ソフトウェア情報学部 教授
大規模ヘテロジニアス無線端末環境での自律分散型協調制
御メカニズム
笠原 正治
奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授
アクティブ光空間通信システムの双方向通信特性の検討
辻村 健
佐賀大学大学院 工学系研究科 教授
複数異種 UAV 間協調動作プロトコルの開発と広域環境観測
への応用
戸辺 義人
青山学院大学 理工学部情報テクノロジー学科 教授
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SCATLINE Vol.97
ライトフィールドカメラを用いた異方性反射物体の形状復
元
長原 一
九州大学大学院 システム情報科学研究院 准教授
マルチメディアビッグデータ解析のための音声中のプライ
バシー情報の秘匿化
中村 哲
奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科 教授
可溶性ペロブスカイトを用いたデバイス作製と評価
長谷川 裕之
北海道大学大学院 理学研究院 化学部門 特任助教
中間周波帯におけるマルチスケール人体ドシメトリ技術の
開発
平田 晃正
名古屋工業大学大学院 情報工学専攻 准教授
量子ドット半導体素子の光周波数シフトを用いた光量子化
技術の研究
松浦 基晴
電気通信大学 情報理工学研究科 准教授
プライベート空間で運用される自営系無線 LAN 保護のため
の仮想専用チャネル構築技術
宮本 伸一
和歌山大学 システム工学部 システム工学科 教授
交通流映像に基づく運転支援システムのためのドライバモ
デリング手法の確立
耐攻撃性/耐災害性を向上する実世界ネットワークシステム
の研究
山崎 啓介
東京工業大学 知能システム科学専攻 助教
山本 寛
立命館大学 情報理工学部 情報コミュニケーション学科 准教授
■研究奨励金
研究テーマ
空間変調・サブキャリアインデックス変調による高レート無
線通信の実現
体内マイクロ医療ロボット無線制御のための電波伝搬モデ
ルに基づく位置推定法の研究
量子ホールエッジチャネルにおける電子の可干渉性とエネ
ルギー緩和の同時測定
研究者(大学院博士後期課程 1 年)および所属
石川 直樹
東京農工大学 工学府 情報工学専攻
伊藤 孝弘
名古屋工業大学大学院 工学研究科 情報工学専攻
太田 智明
東京工業大学大学院 理工学研究科 物性物理学専攻
■国際会議助成
国際会議名
開催時期
開催場所
奈良県新公会堂
(奈良県)
市町村自治会館
(沖縄県)
パシフィコ横浜会議センター
(神奈川県)
東京農工大学小金井キャンパ
ス
(東京都)
北九州国際会議場
(福岡県)
PRAGMA28 ワークショップ
2015 年 4 月 8 日~4 月 10 日
第 11 回 IP と光ネットワークに関する国際会議
2015 年 4 月 20 日~4 月 22 日
光とフォトニクスに関する国際会議 2015
2015 年 4 月 22 日~4 月 24 日
第 4 回情報通信技術に関する学生プロジェクト国際会議
2015 年 5 月 23 日~5 月 24 日
第 7 回レーザ先端材料加工国際会議
2015 年 5 月 26 日~5 月 29 日
第 9 回離散数学とその応用に関する日洪シンポジウム
2015 年 6 月 2 日~6 月 5 日
第 7 回ハイパースペクトル画像・信号処理に関する国際会議
2015 年 6 月 2 日~6 月 5 日
第 22 回アクティブマトリックスフラットパネルディスプレ
イ国際会議
2015 年 7 月 1 日~7 月 3 日
龍谷大学響都ホール校友会館
(京都府)
第 21 回二次元電子系国際会議/第 17 回半導体超構造国際
会議 合同国際会議
2015 年 7 月 26 日~7 月 31 日
仙台国際センター
(宮城県)
3
西新プラザ
(福岡県)
東京大学伊藤国際学術研究セ
ンター
(東京都)
SCATLINE Vol.97
第 25 回帰納論理プログラミング国際会議
2015 年 8 月 20 日~8 月 22 日
2015 IEEE MTT-S 高周波集積技術国際シンポジウム
2015 年 8 月 26 日~8 月 28 日
第 10 回セキュリティ国際ワークショップ
2015 年 8 月 26 日~8 月 28 日
2015 年パーベイシブ・ユビキタスコンピューティング国際
会議
2015 年 9 月 7 日~9 月 11 日
第 6 回 RFID 技術とアプリケーションに関する国際会議
2015 年 9 月 16 日~9 月 18 日
2015 年国際固体素子・材料コンファレンス
2015 年 9 月 27 日~9 月 30 日
光メモリ国際シンポジウム 2015
2015 年 10 月 4 日~10 月 7 日
日韓共催衛星通信研究会 2015
2015 年 10 月 7 日~10 月 8 日
第21 回アジア太平洋通信会議
2015 年 10 月 14 日~10 月 16 日
文化とコンピューティング国際会議 2015
2015 年 10 月 17 日~10 月 19 日
第 36 回 IEEE 国際通信用エネルギー会議
2015 年 10 月 18 日~10 月 22 日
第 20 回微小光学国際会議
2015 年 10 月 25 日~10 月 28 日
第 11 回知識マネジメントに関する国際会議
2015 年 11 月 4 日~11 月 6 日
第9 回証明可能安全性に関する国際会議
2015 年 11 月 24 日~11 月 26 日
2015 年非線形理論とその応用に関する国際シンポジウム
2015 年 12 月 1 日~12 月 4 日
第 26 回アルゴリズムと計算に関する国際シンポジウム
2015 年 12 月 7 日~12 月 9 日
第 9 回プラズマテクノロジーの基礎と応用に関するアジア
太平洋国際会議
2015 年 12 月 12 日~12 月 15 日
第 23 回 IEEE ソフトウェア分析、発展、再構築国際会議
2016 年 3 月 14 日~3 月 18 日
先進プラズマ科学と窒化物及びナノ材料への応用に関する
国際シンポジウム/プラズマナノテクノロジーと科学に関
する国際会議
2016 年 3 月 26 日~3 月 31 日
44
京都大学洛友会館
(京都府)
東北大学片平さくらホール
(宮城県)
東大寺総合文化センター金鐘
ホール
(奈良県)
グランフロント大阪
(大阪府)
東京ビッグサイト
(東京都)
札幌コンベンションセンター
(北海道)
富山国際会議場
(富山県)
大阪大学中之島センター
(大阪府)
京都大学時計台ホール
(京都府)
京都大学百周年時計台記念館
(京都府)
スイスホテル南海大阪
(大阪府)
福岡国際会議場
(福岡県)
I-site なんば(大阪府立大学サ
テライトキャンパス)
(大阪府)
金沢東急ホテル
(石川県)
香港城市大学
(Hong Kong, China)
ミッドランドホール
(愛知県)
長崎大学文教キャンパス
(長崎県)
大阪大学銀杏会館
(大阪府)
名古屋大学
(愛知県)
SCATLINE Vol.97
SCATLINE Vol.97
May, 2015
SEMINAR REPORT
Internet of Things 総論
億~1.3 億人あたりが限界で、この人数が標準的なマーケット
サイズということになります。
現在、携帯電話の普及台数は既にトータルで人口を超えてい
て、マーケットは完全に飽和状態になっています。人によって
はプライベート用に 1 台、他に仕事用にもう 1 台持っているケ
ースもあり、人口の 2 倍程度までは市場ポテンシャルがあると
しても、マーケットはほぼ飽和状態ではないかと思います。
ところが、世の中を見回してみると、他にもまだネットに繋
日本電信電話株式会社
ネットワーク基盤技術研究所
主任研究員
後藤 良則
氏
げられそうなものが多々ありそうです。例えば、車は日本国内
にどのぐらいあるのか? 統計をとってみると、7,700 万~
8,000 万台ぐらいで、人口の 2/3 程度はありそうです。
スマートメータはどのぐらいあるのか? これもとある統計
本日は、IoT(Internet of Things)とは一体何なのか、どのよ
うな事が議論されているのか、といった観点でご紹介します。
本日この会場に来る前に、検索エンジンで色々と調べてみま
した。
「Internet of Things」で検索すると、某有名検索サイトの
によると、概ね 7,800 万台あります。通常電気のあるところに
は、水道もあってガスもあるということなので、電気、水道、
ガスを合わせると、大まかにはこの 3 倍ぐらいはあることにな
ります。
ヒット数は 7.5 億件と、とてつもなく大きな値となります。ち
なみに「M2M(Machine to Machine)
」で検索すると、幾分下
がって 1,600 万件ぐらいです。
他のトピックスと比べてみると、
例えば「ビッグデータ」
、これはたぶん今年の IT 業界の流行語
あとは、興味を引かれそうなところでは家電で、家電をネッ
トに繋ぐという話は 10 年ぐらい前からあちこちで語られてい
た夢です。家の中でネットに繋げられそうな家電はどのぐらい
あるのか調べてみると、
通常にはエアコンが2~4 台はあって、
大賞ナンバーワンだと思いますが、7.6 億件と大層な値です。
「クラウドコンピューティング」も意外や意外 1.8 億件です。
「SDN(Software Defined Network)
」は、弊社のような通信キ
ャリアにとって非常に重要なものですが、意外と少なくて
テレビもあり、冷蔵庫もあって、洗濯機はネットに繋ぐものか
どうかよくわからないが、ドアホンは多分繋がりそうだと考え
てみると、普通の家では概ね 10 台前後はネットに繋がるので
はないかと思われます。ちなみに、日本の総世帯数は約 5,000
8,600 万件です。この結果を照らし合わせてみると、まさに今
年は Internet of Things 元年と言っても過言ではないぐらい、世
間の注目度が高いのだと感じています。
万世帯で、そう考えると、家電のポテンシャルは 5 億台ほどの
規模になります。
本日、この後ご紹介のある健康機器、e-Health の関係はとて
も新しい領域だと思いますが、これも繋がることになると思い
Internet of Things がなぜ突然話題になったのか、というとこ
ろからご紹介したいと思います。
ます。他のインフラ管理では、例えば、トンネル、橋などの物
理インフラが壊れていないかを確認することや、信号機のメン
テナンスというのも考えられます。
このような色々なものがこれからネットに繋がっていくと考
従来、通信会社は何をビジネスにしてきたのか。古くは電話
があり、その前は電信でもありましたが、世の中は電話からイ
ンターネットへと大きくシフトしてきました。スマートフォン
が普及して、ウェブがあって、動画があってというように、イ
えると、おそらく人口の 10 倍ほどがマーケットポテンシャル
になりそうです。スマートフォンのように、これら全てが月額
5,000~6,000 円ほどお支払いいただけるサービスになるとは
思っていませんが、ポテンシャルのあるマーケットなので、通
ンターネットにも色々あっても、
どれも人を対象にしています。
人を対象にしている限り、例えば日本国内だと、人口は概ね 1.2
信業界にとってはニューフロンティアなわけです。何か新しい
ことを手がけることで、関連業界の皆様と手を取りあって、産
はじめに
5
SCATLINE Vol.97
業を大きく成長させていきたいという思いがあります。
図 3 に示すように、大きく 4 つの理由が上げられます。
図 1 がその概要です。
図 1 IoT のマーケットポテンシャル
図 3 なぜ今 IoT/M2M?:過去と現在
ちなみに、世界規模では大体 500 億になるのではないかと予
測している人もいます。IoT のスコープはものすごく大きいで
一つ目は、かつては IoT や M2M に適した IP 系のプロトコル
はありませんでした。例えば、昔の情報家電やネット家電は、
す。およそモノは、ネットに繋がった瞬間に IoT のスコープだ
と言えるのではないかと思います。いま標準化等で議論されて
いる中では、幾つかのユースケースに分けられると考えられて
います。大きくは、自動車関係、電力関係、家電の関係、e-Health、
搭載しているマイコンがそれほど強力ではないので、IP で通信
するには負担が大き過ぎて、IP 系のプロトコルスタックをその
まま載せるとほとんど動かなくなってしまい、動かすにはそれ
に見合うマイコンが必要で、コストアップになってしまうと言
後はバーコードや USN(Ubiquitous Sensor Networks)といっ
たセンサネットワーク系もあると思います(図 2)
。
われていました。それ故に non-IP プロトコルしか載せられない
ので、間にゲートウェイが要ると言われていたわけですが、昨
今はそのようなパワフルな CPU でなくても動くような軽量系
のプロトコルが幾つか開発されています。例えば、インターネ
ット技術の標準化を推進する任意団体の IETF(Internet
Engineering Task Force)で開発されている CoAP(Constrained
Application Protocol)で、これは HTTP の軽量系のプロトコル
です。他には、モバイル系の技術標準化団体の OMA(Open
Mobile Alliance)が策定している LW-M2M(Lightweight M2M)
のような軽量プロトコルも最近はかなり充実してきました。
二つ目は、伝送技術の問題です。これといった伝送技術がな
くて繋げられなかったり、無理やり配線を張り巡らすしかなか
ったりして、以前はあまり現実的な答えはなかったのですが、
最近は近距離系の無線技術がかなり充実してきました。日本で
は 920MHz 帯が使えるようになって、無線で簡単に繋げるよう
になってきて、さほどワイヤリングのことを気にしなくてよく
図 2 IoT のスコープ
実は、車にせよ、家電にせよ、メータにせよ、既に個別には
ネットに繋がっているものはとても多いです。しかし、従来は
個別にシステム開発をしていて、通信はあくまでサブシステム
であり、ツールであるに過ぎませんでした。例えば、家電も繋
なったというのも大きいと思います。
三つ目は、産業のトレンドです。従来はあくまで個別にソリ
ューションを構築していて、どちらかというと、IoT/M2M のた
めの全体システムを構築するのではなく、個別にあるものを組
がる、電力も繋がる、車も繋がるということであっても、これ
らを組み合わせて何ができるのかという観点では、検討はほと
んど行なわれていなかったというのが現状です。そういうわけ
で、IoT/M2M の大きな特徴は、単に個別にモノを繋ぐというの
み合わせて構築するというやり方だったのが、最近は色々なモ
ノが繋がるようになって、
統合技術による IoT/M2M に適した新
しいモノを作っていくということで、技術のトレンドの風向き
が変わってきました。
ではなく、これらを統合することで何か新しいことができるよ
うになるのではないか、ということがポイントです。
実のところ、IoT/M2M のコンセプトはそんなに新しいもので
はなく、古くはユビキタスと呼ばれていた時代もあったり、ネ
四つ目の一番大きなところでは、利用価値の問題があると思
います。従来はとりあえずネットにモノを繋げてみようという
議論は多々あったのですが、繋げてその先どうするのかという
ところが正直なところ分かっていなかったのですが、それでも
ット家電と呼ばれていた時代もあったりと、分野によっては
様々で、長いものでは 20 年ぐらいの歴史があります。
しかし、なにゆえ突然こんなに話題になるようになったの
か? この数年、突然話題になったわけを考えてみると、幾つ
繋げると多分何かよいことがあるのだろうという感じの議論が
成されていました。それが最近は、省電力を実現しなければい
けない、特に 3.11 東日本大地震以降、できることは何でもやら
なければといった風潮で、省電力という具体的なテーマでモノ
かの理由があると思います。
をネットに繋ぐという議論ができるようになって、具体的なニ
6
SCATLINE Vol.97
ーズが出てきました。
す。
交通事故削減もそうです。これも国際的に大問題になってい
て、国連が旗を振って交通事故削減を進めようという動きもあ
ります。また、都市化という問題もあって、中国は特にそうで
すが、次々と都市部に人が集まってきて、都市のインフラをき
図 5 左側は、技術分野的な分け方で、Horizontal に切ってい
く分け方です。IoT/M2M はデバイスがあったり、近距離無線が
あったり、広域ネットワークがあったりして、上にはアプリケ
ーションがあって、どちらかというと、OSI の 7 層モデルのレ
ちんと管理していかないと、多くの人口を都市部で吸収し切れ
ないというところもあります。
このように、日本国内の話があり、国際的な話もあって、今
は世界中のあちこちで社会的ニーズが顕在化してきている段階
イヤイメージでの切り方ができます。
これに対して図 5 右側のように、ユースケース別に家電、電
力、自動車といった観点で切っていく分け方もあります。この
ような切り方の個別セクタのことを Vertical と呼び、oneM2M
にあると思います。
それでは、日本国内を見てみると、幾つか論点があると思い
ます。例えば、一つの切り口としてお見せしたいのは、市場の
追い風として図 4 のようなことが生じているという話です。
がおそらくこの Vertical という言葉を創って流行らせたとのだ
と思っています。
このように色々な見方があることをご理解いただいておくと、
本日の後程の講演を聴いていただいても分かり易いと思います。
図 4 なぜ今 IoT/M2M?:市場の追い風
図 5 Horizontal と Vertical:IoT/M2M の分類法
車をネットに繋ぐと何か良いことがありそうなのは、普通に
考えればわかりそうな話ですが、例えば、普通の車をネットに
表 1 は、ユースケースを具体的に列挙したものです。全体は
これに限ったものではないですが、現在主に議論されているユ
繋ぐと位置情報は取れるにしても、それ以上のおもしろいユー
スケースは思い浮かびません。しかし、例えば電気自動車(EV)
やプラグインハイブリッドカー(PHV)といった次世代型の車
は、ネットとの相性がとても良いです。最近、ソーラーパネル
ースケースは概ねこのようなところです。
まずは、ITS や交通関係です。都市やコミュニティは、いま中
国がとても熱心に取り組んでいます。中国の都市化はものすご
い勢いで進んでいて、次々と農村から都市に人が集まってくる
があまりにも増え過ぎて、電力会社の中にはもはや電力網で吸
収し切れなくて、これ以上の電力は受け入れられなくなったよ
うで、昨今の新聞にはそのような記事が見受けられるようにな
ってきています。当然、蓄電すればよいのですが、蓄電するの
ので、巨大化する都市をいかにして管理していくかに、ICT を
使っていこうという話です。ホームネットワークはかなり歴史
のある話で、かれこれ 20 年来色々な場で議論されています。
健康・医療はこの後の講演で詳しくご講演があるかと思います
に EV が使えるのではないかという話は、割とよく耳にするア
イデアです。
この EV や PHV が今日ますます増えてきています。
すさまじ
い勢いで増えていて、現在は年間 3 万台ほど売れています。一
が、最近、医療機器を繋げていくところがとても注目されてい
ます。メータリングも非常に重要で、日本では特に 3.11 東日本
大震災以降、スマートメータが益々大量に導入されていくので
はないかと考えられています。
頃に比べるとかなりたくさん出回るようになってきました。ま
た、家庭用の太陽電池の出荷量も毎年急激に増えて、急成長産
業になってきています。家庭用太陽電池にしても、EV にして
も、ネットに繋げることで何か新しいことができそうだという
表 1 IoT/M2M のユースケース
話ではなく、これらを組み合わせることで、増え過ぎたソーラ
ーパネルの余剰電力を、EV に一旦蓄えておくという具体的な
話ができるようになってきました。そういった意味では、EV
や PHV が IoT/M2M の推進ドライバになっていく可能性がある
と考えています。
次に、IoT/M2M は分野が多々あって、標準化にせよ何にせよ、
技術を語るのがとても難しいところですが、どのように技術分
類していくのかという切り口でお話したいと思います。
分類の仕方として、Horizontal と Vertical という言い方をしま
7
SCATLINE Vol.97
IoT/M2M 通信の方向性は、従来の通信の技術開発とはかなり
図 7 の右端に M2M サーバがあって、続いて広域ネットワー
異なってくると考えています。従来は移動体網にしても、固定
網にしても、どちらかというと帯域をさらに大きくして、遅延
をなるべく小さくして、パケットロスもなるべく少なくなるよ
うにして、マルチメディア通信をできるだけ高品質なものにす
クがあって、左端にデバイスがあるが、ネットワーク・デバイ
ス間にゲートウェイが置かれるケースが多いです。ゲートウェ
イでは色々な標準化団体等が活動していて、oneM2M の活動は
元々ETSI(European Telecommunications Standards Institute)
る。その代わり少々出費がかさんでも構わないという考え方が
トレンドでした。例えば図 6 に示すように、帯域を増やし、機
能も増やし、その分多少コストがかかってもよいから右上の方
向にさらにシフトさせていくという方向で進めていました。
の TC-M2M(Technical Committee M2M)がベースになってい
るので、そういう意味では ETSI の TC-M2M と oneM2M は非
常に似たような領域で活動しています。
広域ネットワークのところは、やはりモバイルを使用してい
ところが、IoT/M2M は端末の数が非常に多く、人口の概ね
10 倍ぐらいはありそうで、ユースケースは非常に多岐に渡って
いるので、一言では言い表せないほど様々なトラヒックの特性
があって、データ量も全体的には少な目なのではないか。例え
るケースが多く、3GPP の活動はとても重要ではないかと思っ
て い ま す 。 3GPP の 中 で は MTC ( Machine Type
Communications)という活動があり、マシン向けに色々とカス
タマイズというか、新しい機能を追加というか、最近では端末
ば、映像のように大量のデータをやり取りするのはあまりなさ
そうで、技術開発の方向性、特にネットワーク側に関して言え
ば、図 6 の左下の方へシフトしていくような話のようです。
を少しプロファイルしてスマートフォンとは違う端末を作るこ
とも検討されているようです。また GSM Association でも、い
かにしてモバイルで M2M をサポートしていくかの議論が成さ
れています。
また、広域網の上で動作するプロトコルについては、歴史的
には BBF(Broadband Forum)にてデバイス管理プロトコルの
検討は進んでいて、
有名なところでは TR-69 という HTTP ベー
スのプロトコルがあります。
これは oneM2M でも検討していま
す。あとは、OMA(Open Mobile Alliance)でもモバイルベー
スのプロトコルを検討しています。
エリアネットワークには色々な技術がありますが、主に近距
離無線であって、ここは米国の IEEE の影響力がとても強いと
図 6 IoT/M2M 通信に求められる技術検討の方向性
ころです。IEEE では無線技術を検討していますが、上位レイ
ヤのプロトコルまで含めた検討は、例えば ZigBee Alliance など
が行っています。他には有線系になってしまいますが、国内で
は ECHONET(Energy Conservation and Homecare Network)
帯域や品質は多少妥協しても構わないし、機能もそれほど大
きなものは要らないが、その代わり少しでも安く提供する。し
かし、大事なパフォーマンスはしっかりと守っていく。このよ
にて昔から検討していて、10 年来この分野で活動しています。
先ほども述べたように、家電などのマイコンの能力は脆弱なの
で、重い IP 系のプロトコルは難しいということで non-IP のプ
ロトコルを使っていましたが、最近はどうも IP でも動作するよ
うに経済性を追求していくのが大きなトレンドではないかと思
っています。
うだということで、IP でも使える ECHONET Lite という規格
も策定しています。また、oneM2M でもよく話題に上がります
が、Qualcomm のデバイス接続技術 AllJoyn という別の仕掛け
も検討しています。
標準化・コミュニティの動向
当然ながら、民間のフォーラムはとても活発に活動していま
すが、デジュール系の標準化機関も別に手をこまねいているわ
けではなく、ITU、ISO、IEC などの伝統的な標準化機関も、そ
れぞれの立場でこの問題に取り組んでいます。
標準化やコミュニティの動向で、世の中がどのように動いて
いるのかというお話をしたいと思います。
IoT/M2M を図 7 のようなモデルで描いてみました。
業界の中のコンソーシアム等の動きで、ここ最近目につくも
のを挙げてみました。
今とても注目されているのは、表 2 最上段の IIC(Industrial
Internet Consortium)で、これは米国の団体です。色々なマシ
ンをネットに繋げていくという、
まさに IoT/M2M のところです。
見た感じでは、これはコンシューマや家庭向けというよりは、
どちらかというと、産業界、特に重電・重機械系などをターゲ
ットとしているような気がします。それというのも、この団体
をリードしているのは米国の GE で、同社は日本でいえば日立
のようなまさに総合電機メーカで、どちらかというと、AT&T
や Cisco は同社に引っ張られている側だという話もあって、同
社の産業界を狙った動きには注目しないといけないと思ってい
図7
IoT/M2M モデルと関連する標準化団体
ます。
8
SCATLINE Vol.97
AllSeen Alliance というのは、どちらかというと、家電を繋い
ナビは長時間見続けると交通事故を起こす恐れがあるので、そ
でいくような話だと考えています。
また、表 2 最下段にある iOS というのは Apple のことで、標
準化というよりはどちらかというと、Apple 社自身がデファク
トで色々なモノをネットに繋ぎ込もうと目論んでいるという意
のようなことがないカーナビのユーザインタフェースを検討す
る)という話もあります。
M2M と名のついたフォーカスグループもあって、FG-M2M
(Machine to Machine Service Layer)でサービスレイヤについ
味で、この動きもやはり見過ごせないものだと考えています。
て検討していた時期もあります。
都市やインフラの関係では、Smart Sustainable Cities は中国
が中心になって行っています。Smart Water Management は水
管理のことで、途上国ではかなり深刻な問題のようです。日本
表 2 業界アライアンスの動向
では浄水場から水道管に水を注入すると、ほぼ 100%蛇口から
出てくるが、途上国ではかなりの量が管から滲み出てしまうそ
うで、これをネットで監視して、効率的に水管理したり、水質
改善したりするという活動もあります。
面白いところでは、FG-AC(Aviation Applications of Cloud
Computing for Flight Data Monitoring)はクラウドを利用した飛
行データ追跡システムです。
2014 年の春にマレーシア航空機が
行方不明になって未だに見つかっていませんが、その関係もあ
ここでは ITU-T のフォーカスグループとの関係をご紹介しま
って、衛星を使ってクラウドでデータを逐次バックアップして
おけば、フライトレコーダが見つからなくても飛行ルートや墜
落の原因が分かるのではないかということで、このようなフォ
ーカスグループもできています。このグループは現在も活動中
す。
ITU-T というのは、ご存じのとおり国連の専門機関で、元々
は電気通信の伝統的なテーマを取り扱うとてもお堅い組織です。
ここが 10 年ぐらい前にフォーカスグループという仕組みを作
です。
ITU-T も IoT/M2M 分野にとても注目しており、世の中のトレ
ンドとしても、この分野はこれからも益々盛り上がっていくの
ではないかと思っています。
りました。どちらかというとフォーラムのようにフレキシブル
な仕組みで、特に従来型の電気通信ではないテーマを色々取り
扱っていこうということで、とても柔らかい組織です。
最近のテーマのトレンドを見てみると、表 3 に示すように、
IoT はそれ程までに重要なので、しっかり取り組んでいかな
ければいけないと世の中に示す必要もあって、今年の ITU-T で
は、全権委任会議という最もハイレベルな会議を韓国で開催し
ましたが、その際に IoT に関する決議を行っています。
IoT/M2M に関連したものがとても多いです。
特に途上国は、インフラなどの色々なものをネットできちん
と管理していきたいということで、IoT 技術にとても注目して
います。先進国には多くのソリューションがあって、民間企業
中心の取り組みで十分回していけるが、途上国にはそのような
表 3 ITU-T の FG に見る IoT/M2M のトレンド
ノウハウの蓄積はないし技術者も不足しているので、ぜひとも
ITU-T が中心になってしっかり取り組んでほしいということで、
決議を行いました。
ここから先は oneM2M のご紹介です。
この後の講演でもっと
詳しいご紹介があると思いますので、ここでは簡単にご紹介し
ます。
M2M の標準化が重要だということは数年前から認識されて
いて、日米欧、中国、韓国の 7 つの標準化団体が集まって、共
幾つかピックアップしてみると、表 3 の最下段にあるスマー
通の M2M の仕様書を作るための標準化活動を行う場として立
ち上げたのが oneM2M です。
パートナーシッププロジェクトという形態を取っていて、日
本ではTTCとARIBがパートナーとなってここに集まろうとい
トグリッドというのは、まさにフォーカスグループの仕組みを
最大限に活用するために設立されたグループです。スマートグ
リッドで元々想定していたのは、電力業界の人達を呼んできち
んと議論したいということであって、ホワイトペーパー的な文
うことで、個別会員である各社は TTC、ARIB を経由して
oneM2M に参加できるようになっています。
図 8 はアーキテクチャの概要です。サーバとゲートウェイが
あり、サーバとゲートウェイの中にはそれぞれ CSE(Common
書を数々と作成しました。
車の関係については、ITU-T でもかなり昔から注目していて、
From/In/To Cars Communication(車をネットに繋ぐときの様々
なポイントを検討する)という話や、Driver Distraction(カー
Service Entity)というプラットフォームのような機能があり、
それがデータをあれこれハンドリングして機械を制御するとい
うことです。
9
SCATLINE Vol.97
乗り入れできる仕組みとなっています。
図 8 oneM2M の論理アーキテクチャ概要
色々なノードが定義されています(図 9)。Infrastructure
Domain というところに Infrastructure Node というクラウドの
サーバがあって、その下にゲートウェイやデバイスなどの色々
な種類のノードが繋がるという構造になっています。
図 11
IoT/M2M の基本動作
oneM2M ではテクニカルな活動を 2 年ほど行いましたが、ほ
ぼ一段落ついて、年明けには最初の仕様書を承認することにな
oneM2M は主にプラットフォームの CSE を中心に仕様を作
成していますが、全体のアーキテクチャも規定していて、セキ
ュリティの仕組みやプロトコルの仕組みについても規定してい
ます(図 10)
。
っていて、その前祝いということで、実際にモノを作った人達
が集まって Launch Event を開催しました。
仕様の完成度も上がってきたので、相互接続試験や製品認定
などを検討しています。従来の標準化活動というのは、大概は
仕様書を作って終わりでしたが、いま仕様書作りの先まで見据
えた検討を色々と進めているところです。
今後の進め方はどうかというと、oneM2M では仕様書を策定
しましたが、
この仕様書を単に作るだけでなく具現化した方が、
実際にビジネスで使用する人達にとって取りつき易いだろうと
いうことで、オープンソースのコミュニティに、有名なところ
ではOpen DaylightやEclipseなどに、
働きかけを行う予定です。
さらに、普及促進活動を行なうということで、色々なイベント
を開いたり、展示会に出展したりするというのもあります。ま
た、アプリケーション開発を促進するために、デベロッパ向け
のガイドライン文書を作る、SDK(Software Development Kit)
を作るというアイデアも出ています。そして、試験仕様を作ろ
うといった検討も話が進んでいます。
図9
oneM2M の物理アーキテクチャ
定義と特徴
ここから先は、IoT の定義、定義から見える IoT とは何かに
ついて話をしたいと思います。
IoT には ITU-T で定めた定義があります。
2~3 年ほど前に IoT
という言葉が今日ほど話題になっていなかった時期に、勧告
Y.2060 に Internet of Things の定義があり、
「IoT は、物理的な
モノやバーチャルなものを色々と繋ぎ合わせることで、新しい
先進的なサービスを可能とする。また、それをサポートするた
めのグローバルなインフラである。
」
といった内容が書かれてい
図 10
ます。ITU-T で定義される前には、FP7 という欧州の研究プロ
ジェクトがあって、その中の CASAGRAS(Coordination and
Support Action for Global RFID-related Activities and
oneM2M の初期リリースの概要
Standardization)が IoT の定義を検討していて、ITU-T の定義
図11はIoT/M2Mの基本動作です。
車や家電のデータをHTTP
や CoAP などのプロトコルを使って、遠隔であれこれと操作す
る仕組みです。このような仕組みのことを Resource Oriented
Architecture と呼んでいますが、構造からして、IP 系のプロト
はこれをベースにして作られたものです。
Y.2060 の定義の中から幾つかポイントをピックアップして、
そこから一体何が言えるのかを列記してみました。表 4 に示し
ます。
コルと相性が良いということで、今のインターネットに簡単に
10
SCATLINE Vol.97
表 4 IoT の定義から読み解く特徴
まず一つ、文頭にあるように、global infrastructure だという
ことです。家電を遠隔監視するシステム、例えば、スマートメ
図 12
Global Infrastructure の可能性
ータシステム構築などの個別ソリューションは従来からありま
した。
通信路として部分的に公衆網やモバイル網を使うことや、
インターネットを使うことはありましたが、個別システムとし
て閉じているので、global infrastructure ではありませんでした。
Enabling Advanced Services というのは、データを単に読み
出してどこか他の人に渡して終わりというのではなく、渡った
先できちんとサービスが提供されたり、サービスに貢献したり
と、IoT も含めて他にもサービスがあるという話であって、こ
使用しているネットワークがたまたまインターネットであった
としても、
インターネット自身はグローバルなインフラですが、
あくまで個別最適化ソリューションを追求するという観点から
くる選択でした。それに対して IoT というのは、グローバルを
れは重要なことだと思います。
例えば、日本人が中心になって策定した ITU-T 勧告に H.621
があり、ID を読み出してマルチメディアサービスを提供するも
のです。このようなサービスは 7~8 年ぐらい前から検討され
指向しています。色々なユースケースが同時に存在していて、
当然地理的にもグローバルなカバレッジを有するものを狙って
います。
enabling advanced services というのは、高度なサービスに
ていて、例えば図 13 では、ただ単に ID を読み出すだけではな
く、アドレスを解決して ID を解決することで、この ID に関連
したコンテンツが取り出せるというものです。全体が一つのシ
ステムであり、IoT の部分は、例えばバーコードや RFID など
応用することが重要だということです。故にサービスの発展性
が重要なのであって、サービスにどのように貢献するのかとい
う観点がとても重要になります。
もう一つ面白いところは、physical and virtual です。よくモ
で単に ID を呼び出すということに議論が留まるのではなく、
最
初からコンテンツなどとの連携がスコープに入っているところ
が重要なのです。
ノをネットに繋ぐ、
モノのインターネットと言われていますが、
モノというのは本当に物理的なモノの指しているのかというと、
実はそうではなく、バーチャルなモノも対象になります。IoT
というのは、モノを情報空間上に何らかの形で転写します。要
するに、情報空間の中でデータとなるわけです。そのような仕
掛けであるから、バーチャルなもの、例えばコンテンツなども
扱えます。また、物理的には二つ以上のモノでも、あたかもそ
れを一つのモノであるかのごとく扱えるという意味では、なか
なか示唆に富んだおもしろい話だと思います。また、データを
利活用できるというのもとても重要な特徴です。
あとは、technological and societal implications ということで
す。単にテクノロジーの側面だけではなく、社会的な側面から
図 13
Enabling Advanced Services
も色々と考えていかなければいけないです。この解釈は人によ
ってまちまちですが、プライバシーのような技術だけでは解決
できないような問題もきちんと考えていかなければいけないし、
社会的な貢献にも応えていかなければいけないと思っています。
共通プラットフォームを作っていくと、更におもしろいサー
ビスも作れます。従来のシステムでは、例えば車の場合、自動
車会社が独自のシステムやアプリケーションサーバを立てて、
表 4 の中から三つほど、ポイントを挙げて解説したいと思い
ます。
Global Infrastructure というのは、グローバルなインフラを指
向していくことです。プロバイダは大概国ごとに分かれて存在
単にそれと連携していればよかったのが、共通プラットフォー
ムを作ることで色々なデータを吸い上げたり外部のシステムと
連携したりして、サービスの発展性も向上させられます。そう
いったことが重要で、
特に oneM2M で検討しているサービスプ
しているので、相互接続できることが重要だということです。
例えば oneM2M には、
図 12 に示すように他プロバイダの CSE
との間に Mcc’というインタフェース参照点があり、プロバイダ
間を相互接続する仕掛けもあります。このような機能を強化し
ラットフォームではとても重要になると思います。
physical and virtual things というのは、IoT/M2M では、物理
空間のモノは、例えば車や家電などは、全てデータの構造に置
き換わることで仮想空間の方に移行します。仮想空間の表現の
ていくことは、重要なことの一つだと思います。
仕方は色々ありますが、例えば oneM2M では、図 14 のような
11
SCATLINE Vol.97
ツリー型のデータ構造に置き換えられます。物理空間から仮想
ユビキタスが提唱されてきた頃から、互いにオーバーラップす
空間に置き換わるので、本来仮想空間にしか存在し得ないよう
なコンテンツなどは、自然とその仕組みに適合します。また、
若干 SF じみたところもありますが、実際には存在していない
が仮想化されたモノを新たに編み出していくという発展も可能
るような状況が増えてきました。
表 5 は関連業界との連携についてまとめたものです。
表 5 関連業界との連携
になると思います。
仮想的なデバイスの例としては、現在のエアコンは冷暖房が
できるが、仮に冷房しかできないエアコンがあって、それとは
別に暖房しかできないヒータがあって、この二つを組み合わせ
ることで、冷房も暖房もできる仮想エアコンという使い方がで
きます。
これこそまさに IoT/M2M ならではの仮想デバイスと言
えます。
一つは、ITU-T には ISO や IEC との間でコラボレーションす
る仕組みがあって、相互の連携作業を規定した勧告 A.23 によ
り共通文書が作成できます。実際 IoT/M2M の分野では、既に多
くの文書がこの仕組みで作られていますが、これだけでは不十
分だろうとも言われています。
もう一つは、ITU-T 自身が主体的になって、色々な産業界の
人にICT を使ってもらうためのフォーカスグループです。
ITU-T
はメンバーシップ制を採っており、高い会費を払わないと会員
にはなれませんが、会員以外の方にも気軽に参加してもらい、
図 14 物理空間と仮想空間のモノ
IoT/M2M を考える上で幾つか重要なポイントがあると思っ
従来の電気通信のテーマに捉われない新しいテーマをフォーカ
スグループという仕組みの中で議論しようということです。
IoT/M2M 関係では、M2M サービスレイヤ、スマートグリッド、
スマートシティなどで実績があります。
ています。
一つは関連産業の規模です。日本の通信業界の規模は、年間
売り上げベースで約 25 兆円です。その中で NTT グループは中
核を占めていますが、
無論 NTT グループ以外にも多くの会社が
これでもまだ不十分だということで、IT の営みの一つに ITS
活動があります。これに関しては Collaboration on ITS という
ジョイントグループがあり、そこで検討されています。どちら
かというと試験的な活動であって、これがうまくいくようだっ
あります。
他の IoT/M2M 関連業界の規模はどれくらいか? よ
く引き合いに出される自動車は、業界全体の産業規模で 50 兆
円ほどです。トヨタ自動車だけでも結構な規模で、他には大き
いところでも日産、ホンダなどがあって、物すごく巨大な産業
たら、他のテーマにも次々と広げていこうと今議論されていま
す。ITS 自体は ISO でもかなり議論されているようで、そこに
は ITS を議論する仕組みもあります。ITS でなくても車載機を
検討しているグループもあるようで、そのグループとは個別に
です。家電業界はどれくらいかというと、統計にもよりますが
60 兆円規模です。電力業界も結構大きくて 20 兆円規模です。
通信業界に生きている者として、考え方を変えていかなけれ
ばいけないです。これらの業界の人達と組むためには、つき合
テーマを決めて議論する仕組みがあります。
oneM2M も、関連業界の参加がとても重要だと考えています。
oneM2M の中には、外部団体との連携やマーケティング的なこ
とを行う専門のグループもあり、またその活動の結果、現在は
い方や自らの立ち位置をしっかり考えていかなければいけない
し、そのためには、自らがいかにしてこれらの業界に貢献して
いけるのか、という感覚を持つことが重要になってくると思い
ます。また、彼の業界は彼の業界なりに、これまでの技術的資
Continua(医療機器メーカや IT 企業からなる業界団体)や HGI
(Home Gateway Initiative)
、あるいはヨーロッパでスマートグ
リッドを検討している ESMIG(European Smart Metering
Industry Group)といった団体が参加しています。役所関係で
産があったり、規制や商慣習があったりと色々なものがあるの
で、それはそれとして尊重していくことがとても重要なことだ
と思います。
これらの関連業界との連携は、実のところ、通信業界のどこ
は、米国の運輸省も時々顔を出しています。標準化のための連
携は重要であって、このように部分的にはうまくいっていると
ころもあります。
次は規制も含めたテクニカルな課題です。IoT は関連産業が
の会社も手探りで進めているのではないかと思います。標準化
を進める上でこれはとても重要なところで、色々な活動が行わ
れています。これらの関連業界にとっては、ISO や IEC などが
国際的な標準化団体です。ITU-T は通信業界であって、重電関
とても大きいです。
各業界は確立された商慣習や規制など、
様々
な歴史的なものを抱えています。検討すべきことは多々あり、
IoT/M2M ならではの切り口でも幾つか課題があって、
OECD が
これをうまくまとめていて、大きく分けて四つあると提言して
係、家電関係、自動車関係の業界とは住み分けてきましたが、
います。
方向性と課題
12
SCATLINE Vol.97
表 6 が課題のまとめです。詳しく知りたければ、OECD のホ
は買ってスクラップにするまでに、通常 10 年ぐらいは要しま
ワイトペーパーを参照してください。
す。途上国ではもっと長くて、20 年も乗っているというのはよ
くある話です。他にも、世の中には 20 年近く使う機械は多々
あります。
一般的に、モバイル網の技術寿命より機械の寿命の方が長い
表 6 M2M に関する課題
です。また、網と機械の更新タイミングが一致していないとい
う問題もあります。例えば、機械にモバイルの通信モジュール
を挿入して使っていると、ネットワーク側が 3G をやめて LTE
に移行してしまって使えなくなるという事態が、もしかしたら
ある日突然起きるかもしれない。あるいは、そのような機械が
まだ使われているから、少数の通信モジュールのために従来型
のネットワークをいつまでも維持しなければいけない。このよ
うな難しい問題が出てくるので、解決策は考えておいた方がよ
いだろうという課題です。
最後に、ID の問題も意外と重要だと言われています。もっと
も、IPv6 を使えば少なくともアドレス数は十分確保できるので、
自ずとこれで解決されると思います。電話番号についても、
一つは、IoT/M2M を発展させるためには、公共データを活用
することが重要です。これの言わんとするところは、本質的に
は IoT/M2M はデータをどのように扱うか、
特に機械に関するデ
ータをどのように扱うかというビジネスであり、
そのためには、
まず公共のデータを開放する必要があるということです。
次は、プライバシーとセキュリティの問題です。これも最近
M2M 用の電話番号が色々と検討されているようなので、これ
も比較的容易に解決されるものと思っています。
IoT/M2M の発展段階を考えてみました(図 15)
。
は色々なところで認識されていますが、機械に関するデータ、
例えば車にせよ、電力によせ、家電にせよ、通信技術の中でも
プライバシー問題は重要です。例えば、通信の秘密は守るとい
うことは、当然日本の法律でも決まっていることですが、おそ
らく、従来の通信の秘密とは色々な意味で次元の異なる難しさ
が出てくる話だろうと言われています。
色々なところで言われていることですが、例えば、車の位置
情報を追跡すると、その人の日常の行動がことごとく分かって
しまい、それは問題だということになります。メータについて
も、オランダでは 15 分に 1 回の割合で計測しているようです
が、そのデータを調べると、その人が何時に起きて、何時に寝
て、この日は家にいて、この日は家にいなくてというように、
図 15
IoT/M2M の発展段階
色々なことがかなり詳しく分かってしまいます。これは OECD
のレポートにあることです。日本では 30 分に 1 回という話の
ようですが、15 分や 30 分といった精度でさえ、人の行動を監
視しているというか、色々と行動を見られてしまうというか、
従来、IoT/M2M は既存のネットワークを使って繋げていくビ
ジネスでした。レガシー系の IoT/M2M を見てみると、GSM や
3G を使って SMS で機械を制御するのが結構多いです。SMS
やはりとても危険なデータであって、よくよく考えていかなけ
ればいけない問題です。
セキュリティに関しても、例えば、自分のパソコン内のファ
イルが他人に見られてしまったという従来型のセキュリティと
はこの用途に作られたものではなく、元々人と人が携帯電話を
使って簡単なメッセージをやり取りするためのシステムでした。
GSM が広く普及して、SMS がデータをやり取りする仕組みで
あることに目を向けると、
これは IoT/M2M 用として便利に使え
は違う、全く別の難しさがあるかもしれないということが言え
ます。
その次は、通信ならではの話題として、無線周波数の世代管
理はあまり検討されていないようですが、意外と重要なテーマ
るものだという話になりました。
多分、
初期の IoT/M2M はあくまでモノを繋げることだけが目
的であって、洗練されたソリューションを使うのではなく、既
存のものを組み合わせてまずは繋げてみるという議論がその頃
だと思っています。
IoT/M2M の中では、今は特にモバイル網を使用しているのが
多いです。3G や LTE の移動体通信モジュールを機器に挿入し
て、ネットワークに繋げるという使い方が多いのですが、モジ
にはあったのだろうと思います。
現在は利用の裾野が拡大しつつあると同時に、IoT/M2M 向け
により効率的なソリューションが徐々に整備されてきているフ
ェーズだと思います。具体的に言うと、oneM2M がプラットフ
ュールの技術的寿命は意外と短く、例えば 3G が始まったのは
10 年ほど前のことですが、徐々に LTE に移行してきており、
この先あと何年使えるのかという感じになってきています。モ
バイル網の世代寿命は、一声 10 年ほどあると思われます。
ォームの検討をしたり、軽量プロトコルである CoAP
(Constrained Application Protocol)や LW-M2M(Lightweight
M2M)などが出てきたりする段階だと思います。
恐らく今年に入ってから、
メディアがにぎやかに IoT/M2M を
それに対して機械の寿命はもっと長いです。例えば、自動車
取り上げるようになるのだろうと思います。世の中の人々が期
13
SCATLINE Vol.97
待しているのは、この段階のことではないかと思います。こう
まとめ
やって利用の裾野が広がってきて、新しいツールが次々と揃っ
てくると、ビジネスモデルそのものが大きく変わっていく。例
えば、通信会社にしてみれば、単に通信トラヒックを右から左
へ流して利益を上げるのではなく、データを利活用していく、
従来、通信の対象はヒトでした。モノに拡大できる IoT/M2M
というのは、通信業界にとってとても大きな成長のチャンスで
す。しかし、さまざまな課題や問題があります。
色々な人達にアプリケーションを作ってもらうというような、
サービスの基盤となる新しいビジネスモデルを創造するところ
までもっていかないと、IoT/M2M は成功しないのではないかと
考えています。
現状は、プラットフォームやプロトコルなどの要素技術が出
揃ってきて、本格普及の土台は整いつつあります。ただし、ど
の分野へと向かうべきか、関連業界と如何なる関係を築くべき
かという課題がまだ残されたままです。しっかりと答えを出せ
最後にハイプサイクルも絡めてご紹介します。現在の
IoT/M2M は流行期から、もしかしたら、これから幻滅期に入る
ところで、いささか厳しい局面に来ているのではないかと思い
ます。現場の研究者が感じている感覚としては、世の中の期待
る人はいないと思います。通信業界では、業界を横断した取り
組みは従来からあまり行われていなかったことなので、これは
最大のチャレンジなのです。
IoT/M2M というのは、まだまだコンセプトの段階にあります。
と実際の技術の成熟度にまだ若干差があるように思います。こ
のまま一本調子に右肩上がりで伸びていくのではなく、失速す
るかもしれない難しい局面に来ているのではないかという見方
もあります。そうは言っても、社会的ニーズは現実にあるわけ
リアルなビジネスに持っていくには、この 1~2 年の努力が重
要だと思っていますので、なんとか頑張って推し進めていきた
いと考えています。
で、今後は実際にビジネスになるようなユースケースを見つけ
ていくことや、そのための技術開発をしっかりと積み上げてい
くことがとても重要になるだろうと考えています。
図 16 ではハッピーシナリオと書いていますが、
ICT 業界とい
うのはあまたのバズワードが出てくるところで、その後ほとん
どのものは沈んでいくわけですが、うまくいけば本格的な成長
路線に乗ってビジネスになっていくものもあるということです。
そういう意味では、この 1~2 年が IoT/M2M にとって正念場だ
と思っています。oneM2M にとっては、今年から来年にかけて
色々なところでイベントやセミナーを開催して、リアルなユー
スケースを見つけ出していくことがとても重要なことだと思っ
ています。
図 16 ハイプサイクルと IoT
本講演録は、平成 26 年 12 月 19 日に開催されたSCAT主催「第 94 回テレコム技術情報セミナー」のテーマ、
「IoT の最新動向」の
講演要旨です。
*掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。
14
SCATLINE Vol.97
SCATLINE Vol.97
May, 2015
SEMINAR REPORT
oneM2M 標準化;初期リリースの概要と今後
(Telecommunications Industry Association)や ATIS(Alliance
for Telecommunications Industry Solutions)などの成果を持ち
寄ることで始まりましたが、実際はその時点で最も先行してい
た欧州の ETSI(European Telecommunications Standards
Institute)の仕様書がベースとなりました。
oneM2M の周辺には、例えば携帯電話の 3GPP/3GPP2 とい
う標準化団体があり、他には OMA(Open Mobile Alliance)
、固
定網の BBF(Broadband Form)などの標準化団体もあって、
日本電気株式会社
第二キャリアサービス事業部
シニアエキスパート
小林 中
氏
これらと協調して進めて、もしその団体に使える標準仕様があ
るなら、それも再利用していく、というスタンスで取り組んで
います。
また oneM2M は各業種・業界セグメントからの参加を歓迎し、
IoT(Internet of Things)というのは、色々な方が様々な解釈
をしています。本日は M2M の標準化について、事業部サイト
の観点からご説明します。日本の標準化では、IoT と M2M
(Machine to Machine)をあまり区別せず、M2M をできるだけ
e-Health 系の団体である Continua、HGI(Home Gateway
Initiative :ホームゲートウェイの標準化団体)、ESMIG
(European Smart Metering Industry Group:スマートメータ関
連の標準化団体)などと連携しています。
広範囲に、幅広く標準化しようと取り組んでいます。本日の話
は、
第1 部と第2 部の構成になっています。
第1 部ではoneM2M
の初版のリリースについて、第 2 部では次期以降についてお話
します。
次に oneM2M の実際の標準化作業はまず、
ユースケースに関
する TR(Technical Report)を完成させ、要求条件(リクワイ
アメント)
を集めて、
その仕様書を完成させます。
これは Stage1
と呼ばれています。その次に、要求条件を実現するためのアー
第 1 部の資料の一部については、ARIB と TTC が共催で行っ
たセミナー「M2M 標準化最新動向」の内容を見直して、最新
化したものとなっています。第 2 部でご紹介する Underlying
Network との連携、セマンティックスサポートについては、弊
キテクチャを検討して、その仕様書を完成させます。これが
Stage2 です。
2014 年 8 月に、プロトコルの仕様書、デバイス管理仕様書、
セキュリティ関連仕様書を含めて、初版の仕様書をリリースし
社が取り組んでいる、あるいは取り組みたいという観点で取り
上げさせていただきます。
ました。その後、外部からのパブリックコメントを募集し、コ
メントを反映し、2015 年 1 月に改訂版をリリースするという
段取りになっています。
2014 年 12 月 9 日に、欧州 ETSI の協力を得て、oneM2M 初
oneM2M 技術仕様
版リリースのためのイベントとして、色々なデモ機を複数のベ
ンダが持ち寄って、
フランスでプロモーションを行ないました。
12 月の現時点では、色々なコメントが反映された正式な初版リ
リースに向けて取り組んでいるところです。
最初に「oneM2M の意義と初版技術仕様書の公開」について
ご説明します。
2012 年 7 月に、M2M の統合したサービス層の標準化を行う
組織として、oneM2M と呼ばれる団体が設立されました。そこ
では M2M のサービス層に注目して、要求条件、機能アーキテ
クチャ、プロトコル、セキュリティを中心に検討が行われまし
た 。 当 初 は 、 各 国 の SDO ( Standards Development
主要な Verticals(業界団体)においても、この oneM2M の仕
様への関心が高まっており、今後積極的に Verticals にも
oneM2M を広めていきたいと考えています。
Organization:標準化団体)からの成果物をベースとして検討
が 始 ま り ま し た 。 日 本 の TTC や ARIB 、 米 国 の TIA
(1) oneM2M の概要
ETSI では、2009 年 1 月から M2M サービスの標準化が進め
15
SCATLINE Vol.97
られていました。そのような状況下で、米国の TIA、中国の
ウェイなどであり、M2M エリアネットワークは、具体的には
CCSA(China Communications Standards Association)など、
各国の標準化団体も自国の M2M の標準化を行うということで、
作業があちこちで始まってきました。かたや OMA、BBF など
の関連する標準化団体でも、自ら M2M の標準化を手がけると
小電力無線、ZigBee、Bluetooth などです。ただし、M2M ゲー
トウェイと M2M エリアネットワークは、必ずしも実装される
必要はなく、中には最下層のデバイスからネットワークに対し
て直接アクセスするパターンもあります。
いうことで、標準化活動が乱立してくるという状況となり、作
業が重複したり、市場が分断したりするという懸念が生じまし
た。そのような背景がトリガーとなって、M2M 共通の標準化
ソリューションに向けて M2M サービス層の標準化活動を統合
図 2 の右側が M2M 各階層に対応する標準化団体です。M2M
アプリケーションは各種サービスのことで、各業界それぞれの
スタンダードなり、ノウハウなりで規定されています。M2M プ
ラットフォームの標準化は、欧州の ETSI で先行して標準が作
し、グローバルなイニシアティブの設立を検討するということ
で、ETSI が提唱して始まったのが oneM2M です。2011 年 12
月に各国の 7 つのテレコム通信標準化団体が集まって、設立に
基本合意して、2012 年 1 月に oneM2M という名称で発足しま
成され、その後世界の 7 つの団体が集まって、oneM2M の標準
化作業が始まりました。ネットワークアクセスは、3GPP、
3GPP2 などが活発に標準化を行っています。M2M ゲートウェ
イは、OMA、BBF などが活動していて、oneM2M でも標準化
した。図 1 右下に示すのが 7 団体です。正式な発足は 2012 年
7 月です。
を行っています。M2M エリアネットワークは、ZigBee や
Bluetooth にて標準化を行っています。最下層の M2M デバイス
にも oneM2M の規定が絡んでいますが、
デバイス製造の詳細な
インプリではなく、oneM2M サービスのために機能配備すべき
ロジカルな仕様に関して規定します。
図 1 oneM2M:M2M 標準化のための統合組織
組織の特徴としては、一つは 3GPP と類似の形態をとり、こ
れら各国の標準化 7 団体が共同で運営する仮想的な組織である
ことです。もう一つは、oneM2M では複数の M2M アプリケー
ションにまたがる共通のユースケースとアーキテクチャに基づ
いて検討します。その第一歩としてフォーカスするのは M2M
のサービスレイヤです。別の言い方をすると、M2M サービス
図 2 M2M のレイヤ構造と標準化対応
続いて、oneM2M が規定する M2M サービス層についてご説
明します。
プラットフォームまたはミドルウェアにフォーカスします。三
つ目の特徴として、oneM2M は電気通信関係の標準化団体が結
集して始めた活動ですが、各業種・業界セグメントに対しても
積極的に協調・連携していくということです。
M2M アプリケーションと M2M デバイスに対して、
Common
Service Function と呼ばれている共通のサービス機能を提供し
ます。これは共通プラットフォーム、もしくはミドルウェアに
相当すると考えていただいてよろしいかと思います。
M2M の機能を標準化することのベネフィットは大きく二つ
あります。多数のプロバイダによる相互接続、相互運用可能な
コンポーネントを使えることと、スケールメリット(規模の経
済性)を利用できることです。要するに、M2M 市場からの期
具体的な機能の例としては、
リモートデバイス管理機能です。
これはデバイス管理機能もしくはデバイスマネジメントと呼ば
れていて、皆さんもよくお使いの携帯電話やスマートフォンな
どで、リモートから端末を診断したり、ファームウェアをアッ
待感が高まっているということです。
M2M と構造とその標準化の対応について簡単にご説明しま
す(図 2)
。
図 2 の左側が M2M 階層(レイヤ)です。上から順に M2M
プデートしたりといった仕組みです。このような携帯電話で使
われているデバイス管理機能は、M2M のセンサや M2M デバイ
スでも使えるということで、
重要な機能の一つとなっています。
次には、通信管理・接続処理機能です。これは基盤ネットワー
アプリケーション、M2M プラットフォーム、ネットワーク(ア
クセス+コア)となっています。M2M アプリケーションは、
通常言われているところのサービスやアプリケーションです。
M2M プラットフォームが今回 oneM2M で対象とするサービス
クを信頼性・拡張性を維持しつつ、効率的に使うためのもので
す。あとは、データ管理、アプリケーション管理、セキュリテ
ィ、課金、加入管理等の機能が共通的に提供されます。
各業界団体が重複して開発するのではなく、共通的な機能が
プラットフォームです。ネットワークは、携帯電話、光電話な
どのコアネットワーク及びそのアクセスネットワーク部分です。
その下に M2M ゲートウェイがあり、さらにその下に M2M エ
リアネットワークとあります。最下層は M2M デバイスです。
あるからそれを使ってもらう。そうすることで、サービスの導
入が安価で容易にできるというのがここの狙いです。
oneM2M の組織構成について簡単にご紹介します。図 3 は、
2014 年 12 月現在の組織構成です。
M2M ゲートウェイは、ホームゲートウェイやビジネスゲート
16
SCATLINE Vol.97
AE と CSE とのやり取り、CSE と NSE とのやり取りなど、エ
ンティティ間を相互接続するところが参照点となります。デバ
イス内の通信も、サーバ内の通信も、デバイスとサーバを跨い
だ通信も、全てエンティティ間の通信によって実現されます。
oneM2M では 4 つの参照点を定義しています。
Mca は AE-CSE
間、Mcn は CSE-NSE 間、Mcc は CSE 同士の参照点です。Mcc’
は異なるサービスプロバイダとの相互接続のための CSE-CSE
間の参照点です。
図 3 oneM2M の組織構成
Steering Committee
(運営委員会)
があって、
その下にFinance,
Legal, MARCOM(Marketing & Communication), MP(Methods
& Process)という 4 つのサブコミッティがあります。
Steering Committee の下には Technical Plenary(技術総会)
があり、この中で実際に標準化が行われています。Technical
Plenary には 5 つのワーキンググループがあって、そこでそれ
ぞれリクワイアメント、アーキテクチャ、プロトコル、セキュ
リティ、MAS(Management Abstraction & Semantics)のグル
ープに分かれて検討を行っています。11 月に 6 つ目のワーキン
図 4 oneM2M が目指す M2M 市場構造の変革
ググループのテストができました。
仕様を制定するだけでなく、
テストして認定するところまで行なおうという動きがあり、そ
れを専門に行うワーキンググループが定義されました。
Technical Plenary の Chairman は米国 TIA の人ですが、Vice
Chair に KDDI の山崎氏が就任されました。山崎氏は、前回一
期二年間 Vice Chair を務められて、11 月の改選があって、引き
続き二期目も担当していただくことになりました。
(2) oneM2M 標準化の特徴と狙い
oneM2M が目指しているのは、これまで個別に取り扱ってき
たモノの情報を、縦割りのサービスの境界を越えて組み合わせ
たり再利用したりすることで、新しい価値、新しいサービスを
図5
oneM2M 機能アーキテクチャ
創造しようという取り組みです。
図 4 にあるように、自動販売機、交通など様々な業種に閉じ
たサービスが乱立しています。Vertical Player(業種)が乱立し
ていると、そこではデータの定義も独立で、ソリューションも
oneM2M の標準化というのは、
3 つのエンティティ
(AE, CSE,
NSE)の中の振る舞いを決めることと、エンティティ間の参照
点を規定することを行っています。
図 5 は論理的な構成でしたが、図 6 は物理的な実装に近いイ
独立しています。これでは将来の発展、IoT に向けた発展がで
きないということで、水平展開して業種を越えて収容し、新サ
ービス、総合的なソリューションを実現しようというのが狙い
です。
メージです。
oneM2Mの機能アーキテクチャは図5のようになっています。
左の Field Domain がデバイス側で、右の Infrastructure
Domain がサーバ側(インフラ側)となります。中央に示す階
層構造は、上からアプリケーション層、次に共通プラットフォ
ーム層(ミドルウェア)
、下にネットワークサービス層という 3
つの階層となっています。それぞれのレイヤに対応する機能エ
ンティティとしては、アプリケーションは AE(Application
Entity)、共通プラットフォームは CSE(Common Service
Entity)
、ネットワークサービスは NSE(Underlying Network
Service Entity)であり、この 3 つのエンティティをデバイス側
に配備し、同じようにサーバ側にも配備する。これによりデバ
イスやサーバの機能を実現します。
図 6 oneM2M アーテクチャ(実装イメージ)
点線から上側が Infrastructure Domain で、下側が Field
Domain となっています。インフラストラクチャドメインは IN
デバイスの内部でも色々とデータのやり取りが行われます。
(Infrastructure Node)を想定していて、サーバと考えていただ
17
SCATLINE Vol.97
ければよいです。フィールドドメインは、上の方がゲートウェ
を再利用することになっています。
イの階層で、MN(Middle Node)を想定していて、M2M ゲー
トウェイや中継ノードがあります。下の方に M2M デバイスが
あります。IN、MN、M2M デバイスには、機能エンティティの
AE と CSE を論理的に配備します。これにより物理的なノード
ネットワークサービス連携CSFもM2Mに特徴的なものです。
M2M デバイスは電力に対してとてもセンシティブで、省電力
がたいへん重要な課題となります。例えば、1 日に 1 回データ
を上げればよいような使い方の場合、データを測定しないとき
を実現します。
M2M デバイスは 3 種類あります。ASN(Application Service
Node)は AE と CSE の両方を実装したノードで、フルスペッ
クとまでは言わないですが、oneM2M 標準にかなり準拠したデ
や通信しないときには、デバイスにはできるだけ電力を消費し
ないで眠っていてほしいです。しかし、通信のコネクション確
立のためには、眠っているデバイスに対して網からトリガーを
かけるデバイストリガと呼ばれる仕組みが必要です。トリガー
バイスです。多分、今後開発されるデバイスはこれになると思
います。ただし、色々と機能が盛り込まれているので、かなり
高機能・高価な端末になるかと思います。そうではなく、もう
少し軽量な端末ということで、ADN(Application Dedicated
をかけられて起こされたデバイスが網とのコネクションを確立
し、そのパスに乗せて 1 日 1 回、温度や気圧のデータをさっと
送り終わったら、再びスリープ状態に戻るという使い方です。
サブスクリプション通知 CSF は、変化が或る閾値を超えた
Node)はアプリケーションしか実装していないです。これには
CSE を実装しないで、軽く安くというデバイスです。もう一つ
は、Non-oneM2M Device で、oneM2M 標準に準拠していない
既存のデバイスです。
これは昔からある既存の oneM2M 非標準
ら通知する機能です。例えば、気温、気圧、河川の水位などの
対象となるリソースを監視するのに、登録して変化が生じたら
知らせることで、定期的に見に行かなくても済む機能が共通的
に提供されます。
のデバイスも、oneM2M の環境に取り込んでいくということで
す。
CSE は共通機能の集合体です。図 7 では CSE の中に 12 個
の CSF(Common Service Function)があることを示していま
要するに、CSF を用いることで色々な共通的機能が提供され、
アプリケーションの追加が容易になります。M2M を導入した
いサービスに対して、容易にアプリケーションが追加でき、更
にオペレーションコストを下げることを狙った仕組みが CSE
す。全部を説明することは難しいので、特徴的なものを選んで
ご説明します。
の CSF で提供されます。
ここで oneM2M の特徴であるリソースについて簡単に触れ
ておきます。
M2M で扱われるシステムの利用やデバイス制御のために扱
われる情報は、全てリソースであって、そのリソースは全てユ
ニークなアドレスを持っているという特徴があります。
このような特徴を持つことでウェブとの親和性がよいと言う
ことができます。URI を指定することで簡単にリソースにアク
セスでき、更にサーバ側で状態を保有する必要がなく、内部状
態を管理する必要がありません。これにより、スケーラビリテ
ィが上がり、規模の拡張が容易になり、負荷分散への対応が容
易になり、故障に強いシステムの構築が可能になるという特徴
があります。また、メッセージの構造がシンプルであり、ウェ
ブ系のアプリケーション、プロトコルとの親和性が非常に高い
です。
オペレーションは、CRUD(Create, Retrieve, Update, Delete)
図 7 共通プラットフォームの各種機能
登録 CSF は、エンティティを登録する機能です。AE-CSE
間の通信では、
データ通信が始まる前に AE が CSE にレジスト
レーションし、CSE-CSE 間の通信では、CSE が CSE にレジ
ストレーションします。登録することによって、被レジスト側
の CSE のサービスを享受できるようになります。
と notify の 5 つのオペランドで実現されるとてもシンプルな処
理になっています。
このようなアーキテクチャ設計指針を ROA
(Resource Oriented Architecture)と呼んでいます。
図 8 は、ROA とそれに対応する SOA(Service Oriented
通信管理/配布機能 CSF は、主として他ノードとの通信を管
理する機能です。例えば、伝送網には LAN や WAN など色々あ
りますが、どれを選択するのが一番効率的なのかを判断する。
他には、通信データの中には小さいものもあって、この小さい
Architecture)の対比です。ROA にはリクエストとレスポンス
がありますが、主にサーバ側である Receiver 側には内部状態を
管理する必要がなく、状態の不一致という事故が起きないとい
う特徴があります。SOA には Receiver 側できちんと内部状態
データを網が輻輳していないときにまとめて送るようにスケジ
ューリングすることで、網を効率的に利用する。このような機
能を実現しています。
セキュリティ CSF は、アクセス制限のための認証、ノード・
を保存するする必要があります。SOA を導入したアーキテクチ
ャについても oneM2M で検討されていますが、これを SCA
(Service Component Architecture)と呼んでいます。
SCA では、Service Component 1,・・・, Service Component N
ノード間通信の安全を確立するという機能のことです。
デバイス管理 CSF は、携帯網で広く使われているデバイス
管理機能を M2M でも使えるようにすることです。例えば、デ
バイスファームウェアの更新です。oneM2M では OMA のデバ
と明示的にサービスコンポーネントを配備し、その機能を露出
させて、これによってフレキシブルなサービスの導入を可能と
しているので、既存ベンダのソリューションとの相性がよいと
いう特徴があります。
提案元は、
欧米の ALU、Ericsson、
Verizon、
イスマネジメントと、BBF の TR-069 の 2 種類のデバイス管理
AT&T、Orange の他、ZTE、LGE などで、これらの企業が SCA
18
SCATLINE Vol.97
活動を進めています。SCA は oneM2M の初期リリースには入
ケーションに共通的に必要となる機能を提供することです。プ
っておらず、恐らく次期リリースに向けて検討が継続されると
思います。
ラットフォーム事業者が CSE を提供すれば、M2M サービス事
業者はアプリとデバイスを準備すればビジネスを始めることが
でき、ビジネス参入の障壁が低くなるということを狙っていま
す。
二つ目は、アクセスの非依存性です。3GPP、Wi-Fi などの色々
な Underlying Network が考えられますが、これらの網に依存し
ないサービス層の仕様を規定しています。
三つ目は、既存の M2M プロトコルに対応することです。プ
ロトコルを全て oneM2M で規定するのではなく、
コア部分だけ
を TS-0004 で規定する。異なるプロトコルを利用したり、相互
接続も実現したりして、スモールスタートも可能とする。その
ための手段として、HTTP、CoAP、MQTT との Protocol Binding
図8
ROA と SOA の対比
参照点 Mca/Mcc 上の通信メッセージを図 9 に示します。
左側の Originator から右側の Receiver に向けてプリミティ
を規定しています。
四つ目は、サービス層のセキュリティや課金等を考慮してい
ます。
五つ目は、既存ベンダのソリューションとのインターワーク
ブ・リクエストが送られます。リクエストで Receiver 側のリソ
ースを参照したり、update したり、delete したりします。オペ
レーションの結果はレスポンスとして返されます。
Mcn 上の CSE-NSE 間通信は、アプリや通信事業者による既
を想定しています。
次期リリースでは、
ROA だけではなく SOA
の要素を取り入れた SCA の検討も行っていきます。
六つ目は、M2M データの再利用や流通を可能とするセマン
ティックスの仕様についても検討することです。
存のメッセージングサービスやOMA、
GSMA等の既存のAPI、
3GPP MTC(Machine Type Communication)でのインターワ
ーキングやセキュリティのスペックを参照することになってい
ます。要するに、oneM2M では詳細に規定しないで、他の規定
を使うということです。
図 10
Mca/Mcc 上のメッセージ通信
(3) oneM2M 初版技術仕様書、及び次期リリースの展望
初版技術仕様書を公開しました。
時系列的作業の流れとしては、最初にどんな使い方があるか
図9
Mca/Mcc 上の通信メッセージ
図 10 は、図 9 の Mca/Mcc 上のメッセージ通信の詳細を示し
たものです。Application Server Layer は、テクニカルスペック
をユースケースとテクニカルレポートにまとめて、次にそこか
ら求められる要求条件を集めました(Stage1:2013 年 10 月)
。
更に、その要求条件を実現するためのアーキテクチャを決めて
発行しました(Stage2:2014 年 8 月)
。続いて、プロトコルの
TS-0004 Core Protocol Specification にて詳細に規定されてい
ます。Transport Layer については、既存のプロトコルをそのま
ま使うということで、HTTP、CoAP(Constrained Application
Protocol)
、MQTT(MQ Telemetry Transport)などが想定され
TS(Technical Specification)を決めて、2014 年 8 月に第 1 版
を固めて、コメントを募集して、2015 年 1 月に改訂版として
正式にリリースする予定となっています。
初版リリースの仕様書では、表 1 の 9 件の TS がリリースさ
ています。これらの実装は選択できます。TS-0004 プロトコル
と HTTP などのプロトコルとのマッピングは、TS-0008/9/10
Protocol Binding Specification にて規定されています。つまり、
TS-0004、TS-0008/9/10 規定により、Originator-Receiver 間の
れます。TS-0001 が Functional Architecture、TS-0002 が
Requirements、TS-0003 が Security Solutions、TS-0004 が
Service Layer Protocol Core Specification、TS-0005 と TS-0006
がデバイス管理に関するスペックです。OMA と BBF の既存の
プロトコル通信が実現されます。ただし、Underlying Network
プロトコルは、今のところ HTTP、CoAP、MQTT の 3 種類だ
けが想定されています。
以下は oneM2M の技術仕様のまとめです。
デバイス管理を使うために必要な対応関係、マッピングが
TS-0005 とTS-0006 で規定されています。
TS-0008 と TS-0009
は、CoAP や HTTP とのプロトコル・バインディングについて
規定したものです。TS-0011 が全スペック共通的な Common
一つ目は、共通プラットフォーム(CSE)が各業界のアプリ
Terminology で、用語の説明や定義が記載されています。
19
SCATLINE Vol.97
表 1 oneM2M 初版リリース仕様書パッケージ
スマートメータ、画像、セキュリティなどの M2M デバイスが
増えてくると、ネットワークの負荷も増えます。そのことで繋
がらない、途切れる、通信料を安価にしてほしいなどのモバイ
ルネットワーク上の問題が色々と発生することが予想されます。
(注)2015 年1 月に正式リリースされた仕様書では、MQTT とのプロトコル・
バインディングについての規定 TS0010 MQTT Protocol Binding が追加
されて10 件となっています。
2014 年 12 月 9 日にフランスの ETSI にて、oneM2M の
Launch Event、Showcase が行われました。そこでは 7 つのグ
ループがデモを行い、弊社もその中のグループの一つに参加し
て、アプリケーションのデモを行いました。
図 11 ネットワーク層とサービス層のさらなる連携
次期リリースの展望としては、外部団体との連携が深まって
きています。国内では、新世代 M2M コンソーシアムが 2014
年後半に oneM2M に加盟しました。海外では、米国の IEEE や
欧州の CEN(仏:Comité Européen de Normalisation)などが
- 3GPP による連携機能の標準化要求条件 この解決には、M2M の特性を把握してネットワーク層に伝
えることで、ネットワーク制御を最適化することが必要で、そ
oneM2M への正式参加を検討しています。
次期リリースは 2015 年 1 月から検討が本格化します。想定
される内容は、一つ目が SCA、二つ目が下位伝送網との連携、
三つ目がセマンティックスのサポートです。他には、デバイス
れを実現するためには、oneM2M のサービス層だけでなく、コ
アネットワークである3GPPにも標準が必要になるということ
です。
連携の具体例として、図 12 にて車の移動管理についてご説
の関連の標準化、新たな業界のユースケースの収集を行い、更
には標準を策定するだけではなく、その後のコンフォーマンス
テスト仕様を作成することも行っていきます。最後に、Home
Domain Enablement というのが注目されています。ここには中
明します。
国のハイアールなどの白物家電メーカも参加しており、色々と
仕様検討を進めている状況です。
oneM2M 次期リリースへの期待
下位伝送網との連携とセマンティックスのサポートについて
ご説明します。
(1) 下位伝送網との連携
下位伝送網との連携としては、例えば図 11 に示すように、
M2M サービス層と 3GPP が連携することでシナジー効果への
期待が高まっています。具体的に言うと、サービスの広がりや
図 12 ネットワーク層とサービス層のさらなる連携
- 車の移動管理 着信時には3GPPコアネットワークセルに対してページング
ネットワークの最適な運用が期待されるということです。
スマートフォンやセンサなどの物理デバイスは、ネットワー
ク層の下に位置していますが、現状のデバイス・サービス層間
の通信では、ネットワーク層をパイプ的に使っています。要す
制御をかけますが、そのページング制御を抑えて、コアネット
ワーク制御の効率化を狙います。
図 12 の左側が現在のやり方で、コアネットワークと M2M の
連携が何もないと、例えば、車のエンジンが止まっていて車が
るに、単にネットワーク層を通しているだけの使い方です。そ
こで、サービス層とネットワーク層が新たに連携することによ
って、M2M らしく、もっと最適に運用できるようになること
を狙っています。現在、oneM2M と 3GPP とで標準化が議論さ
動いていない場合でも、その車に着信があると近隣のセルに対
してもページングが行われます。これはあまり効率的ではあり
ません。そこで図 12 の右側のやり方では、車のエンジンが止
まったことを M2M デバイスからサーバのアプリケーションに
れており、3GPP では MTC(Machine Type Communication)
リリース 11 から色々と検討が始まっています。
3GPP で挙げられる連携機能の標準化要求条件が図 11 の右
下に列記されていますが、一例として「予想通信パターンに応
知らせることで、車は動いていないことを 3GPP のネットワー
クに通知する。
これにより、
車のエンジンが止まっている間は、
着信があっても近隣のセルにはページングを行なわず、一つの
セルに狙い撃ちでページングを行える。つまり、コアネットワ
じたネットワーク処理最適化」
について具体的にご説明します。
ークの制御の効率化、最適化ができるということです。これが
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SCATLINE Vol.97
3GPP ネットワークとの連携の効果、ユースケースの一つとい
1 が繋がっていて、更にデータ Y が繋がっている。デバイス 1
うことです。
のリソースには、owner が user10 であるというメタデータの
注釈記述がされている。業界ごとに色々あると思いますが、図
14 の右側に示すように、人とモノとの関係を示したオントロジ
ーがあって、それを見ることでマシンがデータの意味を翻訳し
(2) セマンティックスのサポート
セマンティックスは、IT の世界では語り尽くされていること
ですが、その考え方を M2M の世界に持ち込もうという考えで
す。
図 13 の左側は、oneM2M 初版リリースそのものです。
oneM2M プラットフォームには色々なアプリケーションが繋
て、サービスに繋げるというのを狙ったものです。
がり、また色々なデバイスも繋がっています。しかし、アプリ
ケーションとデバイス間で扱うデータは個別のデータであって、
アプリケーション 1 はデバイス 1 のデータ内容は分かるが、ア
プリケーション 2 はデバイス 1 のデータを理解できない。いわ
ゆる縦方向の繋がりだけであって、色々とプラットフォームに
サービスやデバイスを収容したが、横方向への広がりは見えて
こない。
そこで、今検討を進めているのが図 13 の右側の方で、扱う
データを標準的なデータにして、データの意味が互いに分かる
ようにする。標準データを oneM2M で定義して、M2M プラッ
トフォームは意味あるデータをデータベース化することによっ
て、デバイス 1 の標準データをアプリケーション 2 でも使える
図 14 セマンティック記述
セマンティック M2M データでできることの一例として、セ
マンティック的な M2M データ検索があります(図 15)
。これ
ようにすることを狙っています。
要するに、注釈を記述したメタデータをデータに付加するこ
とで、マシンがデータの意味を翻訳できるようにする。人が介
在しなくても効率的にデータの意味を展開して、アプリケーシ
はクラウドを使えば今でもできることかもしれませんが、クラ
ウドなど使わずに、M2M プラットフォームを使ってできるよ
うになります。要するに、データの意味を指定して、データを
検索し、複数の情報ソースから情報モデルやモデル言語が異な
ョンでの利用が可能となります。
るが、意味が同じであることを理解して、それを抽出して統計
的に処理できるということです。
例えば、
「ある指定地域のセンシング情報の平均値を 1 時間
ごとに出しなさい」というリクエストや、
「センシング情報の平
均値 yy(または合計値)が zz 以上になるような地域と時間帯
を示しなさい」というリクエストが、M2M プラットフォーム
に対してできるようになることを狙っています。
図 13 セマンティック M2M データサポートの狙い
セマンティック M2M データをサポートするための要求条件
は幾つもあり、
今まさに標準化にて議論され始めたところです。
図 14 の記述「ある情報モデルにおいて、各情報要素に対し
てマシンがその意味を翻訳可能とするメタデータや注釈を付与
すること」というのは、セマンティックス記述とはいかなるも
図 15 セマンティック的な M2M データ検索
のかを表しています。階層情報モデルにおいて、M2M プラッ
トフォームサーバ A があり、そこにはリソースとしてデバイス
以上、oneM2M 初版のリリースの内容と、先々に向けた
oneM2M の取り組みについてご紹介させていただきました。
本講演録は、平成 26 年 12 月 19 日に開催されたSCAT主催「第 94 回テレコム技術情報セミナー」のテーマ、
「IoT の最新動向」の
講演要旨です。
*掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。
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SCATLINE Vol.97
SCATLINE Vol.97
May, 2015
SEMINAR REPORT
e-Health に関する NTT の取り組みについて
ます。つまり、昔は最終的な看取りは自宅でしたが、今は病院
でということです。
そこで、医療費がたいそう掛かってしまうという問題があっ
て、厚生労働省は地域包括ケアシステムというものを推進して
います。これは簡単に言うと、今までは病院が全ての面倒をみ
るということでしたが、医療費の高騰によってこれが難しくな
ってくるので、実際に高齢者の方が住まわれている地域社会で
できることは、その地域内で行なうという仕組みになっていま
日本電信電話株式会社
セキュアプラットフォーム研究所
研究主任
高橋 元
氏
す。
図 1 の左側は、
例えば脳梗塞で倒れて、
救急病院に入院して、
少し良くなったところでリハビリを始めて、更に回復したので
自宅に戻って通院するというように推移したとき、急性期の病
本日は、ネットワークに接続されたヘルスケアデバイスを使
ったアプリケーションについてご紹介します。
最初に、厚生労働省で推進している地域包括ケアシステムに
ついてお話して、その次に、弊社が開発している医療健康共通
院、リハビリの病院、かかりつけの医院がそれぞれ役割分担し
て取り組むことを示唆しています。かかりつけの医院はあまり
お金が掛かりませんが、大きな病院に行くと高額の治療費を取
られるので、医療機関の役割分担を進めていこうという動きで
基盤をご紹介します。その後、実証実験になりますが、これを
使ったアプリケーションをご紹介します。最後に、デジュール
系の ITU-T とデファクト系の Continua の e-Health 関連の標準
化動向についてお話します。
す。
少子高齢化と地域包括ケアシステム
色々な場面で言われていることですが、いま日本では高齢化
がとても進んでいて、今年度の 65 歳以上の高齢者数は人口の
25%を超えています。医療費に関しても、現在 38.4 兆円、平
成 47 年には 60 兆円にまで上ると言われています。医師の数も
足りない、特に外科医のなり手が少ない、不足していると言わ
れています。また、健康保険組合に関しても、赤字のところが
多いと言われていて、現状の国民健康保険制度はとても厳しい
状況に置かれています。ICT を使って何とか対処できないのか、
図 1 地域包括ケアシステムの実現イメージ
図 1 の右側は、退院した後には在宅で通院したり、ケアセン
というのが e-Health に関する研究のモチベーションの一つと
なっています。
世界的にみて日本の高齢化はとても先進的で、将来、日本の
高齢化率はたいそう高くなるという予想が出ています。また、
ターに通所したりということがあると思いますが、これからは
それだけではなく、図下にあるような地域のコミュニティによ
り、高齢者の見守りをしたり、生活の支援をしたりして、介護
予防に繋がるような活動を進めていくということです。
どこで死ぬかという話は、昔の日本では自宅で亡くなる方が一
般的だったのですが、近年は病院で亡くなる方が増えてきてい
この地域包括ケアシステムの実現に向けてICT で何ができる
か?
22
SCATLINE Vol.97
まず、医療に関しては、例えば脳梗塞で倒れて、急性期の病
ルスデータを見ることで、高齢者の健康相談を行えるシステム
院に行って、少し良くなってリハビリ病院に行って、退院した
後はかかりつけの医院に行ってと、複数の病院を渡り歩くこと
になると思いますが、この時、かかりつけの医院とそれぞれの
症状に応じた病院との間で、医療情報を共有するための基盤が
となっています。
必要になってくると思います。医療情報を共有することで、医
療の安全性の向上や医療の質の向上が期待できるのではないか
と考えています。
次に、
在宅での介護に関しては、
高齢者の方がご自身の血圧、
体重、あるいは活動量計としての歩数計の運動データなどのバ
イタルデータを管理することにより、健康増進に繋がることが
期待されます。また、このような在宅の介護分野で管理される
バイタルデータを医療機関のシステムと連携させることにより、
更なる医療の質の向上も期待できるのではないかと考えていま
す。
これらを実現するために、今後は情報流通基盤の構築が求め
られるのではないかと考えて、弊社では図 2 のような医療健康
図 3 PHR 基盤を用いた遠隔医療・介護システムの開発
システムは、ショートメールが使える通常の携帯電話で個人
共通基盤を開発しました。
認証を行って、
スマートフォンをゲートウェイとして使用して、
ヘルスケアデバイスのデータをサーバに登録する構成になって
います。
認証にレガシー技術のショートメールを使った理由は、
発展途上国向けにヘルスケア・アプリケーションを開発するに
あたり、通常の携帯電話であれば発展途上国でも普通に使われ
ているということで、システムに取り入れています。
NTT 医療健康共通基盤実証実験
弊社内でヘルスケアデバイスを使ったトライアルを実施して、
ある程度健康に関する意識の改善が見られました。
トライアルシステムは、図 4 に示すように、Continua 標準規
格に対応したヘルスケアデバイスがあって、スマートフォンを
ゲートウェイとして使用して、サーバにデータを上げて、サー
バ内で健康データを管理するとともに、歩数ランキングや疾病
図 2 医療健康共通基盤の概要
これには大きく二つの機能があります。
EHR 基盤(Electronic Health Record)は、ハイセキュリティ
な医療情報を管理するものです。医療情報というのは、電子カ
ルテ、MRI 画像診断システム、服薬情報などで、この医療情報
を先ほどのかかりつけの医院から大きい病院までの間で流通さ
のリスク、アドバイスの表示が行えるものとなっています。
せるための基盤となっています。流通にあたっては、
SAML/ID-WSF(Security Assertion Markup Language/Identity
Web Services Framework)という ID 連携の仕組みを取り入れ
て、医療情報のアクセス制御を実現しています。
もう一つが PHR 基盤(Personal Health Record)です。体重
計、血圧計などのデバイスからバイタルデータを収集して、ク
ラウドのサーバ上で一元的に管理するために、個人の日々の健
康情報を扱う基盤となっています。デファクト標準として
Continua というのがあって、医療機器や健康機器に対応した通
信インタフェースを提供しています。
この基盤を使って実際にアプリケーションの開発をしていま
す。高齢者が日々の健康管理を行って、その結果を基に医師が
図 4 トライアルシステム
トライアルの流れを図 5 に示します。まずはアンケートを実
遠隔テレビ電話を用いて健康相談を行なえるシステムとなって
います。現在、自治体などにご利用いただいております。
図 3 に示すように、
自宅などにヘルスケアデバイスがあって、
ゲートウェイ経由でバイタルデータを収集して、サーバにアッ
施して、そのアンケートに基づいて疾病リスクの確認を行い、
トライアル期間中にウォーキング、各種バイタルデータのラン
キング、チャレンジプログラムを行ったり、希望者のみになり
ますが、血液検査の受診などを行ったり、というような健康に
プロードして、病院などに設置してある指導者操作 PC からヘ
プラスになる活動をしてもらいます。
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SCATLINE Vol.97
図 7 はグループや個人対抗の歩数競争の例です。
施策効果としては、65%の参加者に健康意識の向上・改善が
見られました。具体的に言うと、もっと歩いてみよう、食事に
気をつけてみよう、というような健康に気を使う行動をするよ
うになりました。
もう一つ、図 8 は岩手県の遠野市での実証実験の例です。
図 5 参加者の取り組みの流れ
武蔵野、品川、筑波、横須賀、大手町、厚木の 6 拠点にヘル
スケアデバイスを置いて、いつでも測れるようにしました。
図 6 は参加者のデータ登録の様子、データ閲覧の例です。
図 7 グループや個人対抗の歩数競争の例
図 8 遠隔医療(健康相談)の事例
高齢者の方に歩数計を持って歩いてもらって、週一回は公民
館を訪問してもらって、そこで少し健康に良さそうな運動をし
てもらって、歩数計を個人認証機器として使用して体重と血圧
を測って、データをサーバに登録してもらいました。そして、
このデータを基に、定期的に医師がテレビ電話を使って健康相
談、保健指導を行い、食事のアドバイス、歩行のアドバイス、
運動のアドバイスをする健康相談・指導トライアルを実施しま
した。
図 9 に示すように、
効果は全ての項目で改善が見られました。
それだけではなく波及効果として、高齢者が公民館に積極的
に出てかけて行って、皆さんとコミュニケーションを取るとい
図 6 参加者のデータ登録の様子、データ閲覧の例
うコミュニティの活性化にも繋がったことがわかりました。案
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SCATLINE Vol.97
外、コミュニティが活性化したのでストレスが減って、血圧が
Continua 設計ガイドラインでは、パーソナルデバイスの血圧、
下がってきたというのが原因なのかもしれません。
体重、血糖値計、フィットネス機器、心拍などの色々なセンサ・
ゲートウェイ間の接続に関して規定されています。先ほどの実
証実験では、NFC(Near Field Communication)を使ったり、
Bluetooth を使ったりして、ゲートウェイ経由でサーバにデータ
をアップロードしていましたが、ゲートウェイ・サーバ間イン
タフェース、WAN インタフェース、HRN(Health Record
Network)インタフェースも、このガイドラインで規定されて
います。
FG-M2M(Focus Group on Machine-to-Machine Service
Layer)では、e-Health を対象として、標準化に向けた課題の
整理を行うことになっています。ヘルスケアの API、アーキテ
クチャ、ギャップ調査、テクニカルレポートの作成が活動範囲
で、M2M に関する要求条件、ユースケースの技術仕様を策定
することを目的としています。
2012 年 4 月から2013 年 12 月の間に12 回の会合を持って、
成果文書にまとめられています(表 1)
。検討内容は、M2M の
図 9 遠隔医療(健康相談)の効果
e-Health に関するユースケース、サービスモデル、サービスレ
イヤの要求条件、アーキテクチャの条件、API、プロトコルな
どです。
ITU-T と Continua における e-Health
e-Health に関する標準化動向についてお話します。
ITU は 3 部門があって、一つが無線の ITU-R、もう一つが電
気通信の ITU-T、
更にもう一つが途上国向け開発の ITU-D です。
e-Health は、
ITU-T の SG16, SG13 にて検討が行われています。
M2M に関しては、すでに終了しましたが、FG-M2M で検討さ
れています。
表 1 FG-M2M 成果文書一覧
デファクト標準としては、IEEE の医療機器デバイスや、
Continua Health Alliance の相互接続ガイドライン(デバイス・
サーバ、ゲートウェイ・サーバ、サーバ・サーバ間のインタフ
ェース)が規定されています。これは ITU-T の H.810 にて、相
互運用性に関する設計ガイドラインとして採用されています。
更に、ヘルスデータを扱う仕様として HL7 があり、血圧や体重
などのバイタルデータを扱うデータフォーマットとして規定さ
れています。
各標準化組織における検討領域の例を図 10 に示します。
成果文書のまとめには日本のメンバーも積極的に関わってい
ます。M2M の e-Health 標準を取りまとめるに当たっては、ギ
ャップ分析したり、e-Health に関するユースケースをまとめた
り、API に関して調査したりしています。具体的なユースケー
スとしては、
遠隔相談システム、
パーソナル健康データの管理、
遠隔患者のモニタリングなどです(表 2)
。
表 2 M2M ユースケース一覧:e-health
図 10 各標準化組織における検討領域の一例
SG16 は、e-Health アプリケーションのための標準化にフォ
ーカスして、コスト削減とシステムの総合接続の実現を目標に
しています。ここでは e-Health に関する全ての標準を規定する
のではなく、デファクト標準が使えるものはそれを採用すると
いう考えの下、2013 年 12 月に Continua 設計ガイドラインを
弊社の NFC デバイスを使って、スマートフォン・ゲートウ
ェイ経由でデータをアップロードする遠隔健康管理システムも、
ITU-T H.810 として勧告しています。
ユースケースの一つとして取り入れられています。
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SCATLINE Vol.97
まとめ
本日は、
地域包括ケアについてお話をさせていただきました。
その地域包括ケア実現に向けて、弊社が構築した医療健康共通
基盤についてご紹介し、更にそれを使った実証実験についてお
話をさせていただきました。また、e-Health に関する標準化動
向についてもお話をさせていただきました。
本日の話しでは、
トライアルに使ったヘルスケアデバイスは、
昔からある血圧・体重計でしたが、これ以外に着用するだけで
心拍数などの生体情報が取得できる「hitoe」と名づけたデバイ
スも開発しています。このようなデバイスを使ってより高度な
健康管理をしたり、高齢者医療で特に問題になっている転倒防
止のために靴底に付けた圧力センサからのデータを吸い上げて、
高齢者が転倒しそうな歩き方をしていないかを分析するシステ
ムを構築したりといった研究が勧められています。
様々なヘルスケアデバイスがネットワークに繋がることで、
今後より一層、健康管理に関のアプリケーションが広まってい
くのではないかと考えています。
本講演録は、平成 26 年 12 月 19 日に開催されたSCAT主催「第 94 回テレコム技術情報セミナー」のテーマ、
「IoT の最新動向」の
講演要旨です。
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