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氷コア中の微量金属元素の定量法の開発と金属元素から見た
Title Author(s) 氷コア中の微量金属元素の定量法の開発と金属元素から 見たスバールバルの環境変動 的場, 澄人 Citation Issue Date 1997 DOI Doc URL http://hdl.handle.net/2115/20110 Right Type theses (doctoral) Additional Information File Information 22.的場澄人.pdf Instructions for use Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP 氷コア中の微量金属元素の定量法の開発と 金属元素から見たスバールバルの環境変動 的場澄人 博士(理学) 総合研究大学院大学 数物科学研究科 極域科学専攻 平成 9年度 ( 1 9 9 7 ) 論文内容の要旨 近年、人間活動に起因する大気汚染は地球規模に拡大し、大気汚染によって引き起こさ れる地球環境の変化は、人類生存にかかわる最重要問題の一つになっている O しかし、地 球の気候・環境システムは複雑なプロセスの結果であり、数十年あるいは高々百年という 短期間に生じた人間活動による急激な変化が、今後の地球の環境変動にどのような景簿を もたらすかということについては、殆ど未解明である。今後の地球環境の変動を予測する ためには、過去に起こった地球環境の変化のメカニズムを解明することが必要である。 雪や氷が長い時間をかけて連続して堆積した極域の7 .k河・氷床には、地球の気候や環境 の状態を示す様々な物質、氷の物性、大気成分などが保存されている。しかも、その記録 は、氷期一間氷期サイクルを明瞭に含む長いタイムスケールと海底堆積物と比べて早い堆 積速度から得られる高い時間分解能を有し、詳細な環境変動の復元が可能であるため非常 に注目されている。 これまでに、南極大陸やグリーンランドの氷床から、氷の円柱状謝斗(氷コア)を掘削 採取し、そこに含まれる酸素の安定同位体比、溶存成分、大気成分などから、過去数千 数万年に相当する気候や大気環境が復元されている。しかし、これまで解析されてきた成 分だけでは、得られる情報も限られており、より多くの情報を得るために、新たな成分や 分析手法が求められている。その中で金属元素は人間活動による大気汚染の程度と輸送経 路、氷期一間氷期サイクルにおける陸域環境の変化の掛票となるため注目されている。し かし、極域雪氷試料中の金属元素は p p tレベルと低濃度であるため、コンタミネーション と分析装置の感度の問題が丈きく、測定が困難であるため報告例は少ない。そこで、本研究 では、氷コア中の微量金属元素を測定するため、第 1章でコンタミネーションの除去方法 について、第 2章で測定方法について検討し、その方法を用いて第 3章で北極圏で掘削さ れた氷コア中の金属元素を測定しその濃度変動から堆手責環境を考察した。 第 1章ではコンタミネーションの除去方法を検討した。氷コアの外側には、掘削そして コア解析時に様々なコンタミネーション州寸着しており、氷コア中に含まれる金属元素を ∞ 測定するときに問題となる。これらの除去方法を、超純水を凍らせた模擬氷 3 gをバン ドソーで削り出した後、 (1)セラミック包丁で氷コアの外側を削り落とす、 (2)来世水で ( 3 ) テフロン容器内で少量溶かして捨てる、 ( 4 ) 別のテフロン容器 に移して(3)の操作を繰り返す、という処理方法でコンタミネーションの除去を試みた。 その結果、融解除去操作を 4回行うことで、コンタミネーションの景簿を除去できること が分かった。 第 2章では、鈴科の少量化と測定の迅速化を図るために、 Iσ-MS (誘導結合フ。ラズ、マ質 氷コアを洗浄する、 量分析法)による氷コア中の金属元素の定量方法を検討した。原子吸光分桁去や Iσ 発光 分光法と比べ Iσ-MSは 、 ( 1)高感度に多元素を同時に分析できる、 ( 2 ) 分析が簡便で 迅速である、ことが倒立な点である。このことは試料量が少なく、謝斗数が多い氷コア試 料の分析に適している。しかし、 Iσ-MSの感度では北極域の雪氷試料中に含まれる金属 元素を直接分析することはできないので前濃縮操作が必、要である。前濃縮は蒸発断結で 行われることが多い。しかし、通常の実験室環境では、蒸発糊散は分柿車競からの汚染 の危険性が高かったので、本研究では試科導入装置による感度の向上を検討した。妻女干重の ネブライザー(噴霧器)システムを比較した結果、脱溶媒膜付マイクロコンセントリック ネブライザー (Mα-6 ∞O :CETAC社製)が最小試料使用量で感度を向上させることが分 かったO 脱溶媒膜付マイクロコンセントリックネブライザーは、噴霧した試料霧を加熱し 溶媒を蒸発除去することで、濃縮効果を得ることができることが実験室レベルで確認され ている。今回これを初めて天然水試料に適応させ、 2rnLの謝斗でAl、 Fe 、V、Cu、Zn 、 A s 、 Ag 、Pb、U を同時に ppt:レベルの定量ができるようになった O 第 3章では、 1 9 9 5年に北極圏スバールパル諸島北東島氷帽(北緯 79度 58分、来怪 2 1 度 2分)で掘削された氷コアに含まれる金属元素を第 1章、第 2章で確立した測定方法で 定量し、その結果から堆積環境変化を考察した。スパールパル諸島は、同緯度の北極カナ ダやグリーンランドと比べ温暖であること、ポーラーフロント上に位置することから、グ リーンランドとは異なる気候条件下にあること、氷河は海洋の景簿を大きく受けているこ とが特徴である。北東島ウエストフォンナ氷帽はその中でも寒冷な気候下にあり、夏季の 融雪量が少なく、堆積成分に対する融雪水の影響が少ないため、過去の環境変動を考察す るために適した環克下にある。 積雪断面観測により、層構造から判断される 1年間に相当する積雪層には O180が数回ピ ークを示すことが分かった。すなわち、 O180の季節変動からは年層を判断することができ ない。そこで示準層である 1 9 6 3年の核実験最盛期のトリチウム濃度ピークと 1 7 8 3年のア イスランド I 北i 火山の Eα: 1 (氷の電気伝導度)ピークから年間堆積量 0 . 3 5 m 'waere q .. y t を求め、これをもとに以下の考察に用いる氷コアの年代を決定した。掘削された 210mコ l アは過去 5∞年にわたるもので、あった。地殻起源の指標となるAl、 Fe濃度は過去 5∞年に わたりほぼ一定していた。また、Al、 Feの濃度比はほぼ一定の値Al . F e1= 1 .5を示した。こ . 8に比べ高い値であり、モンプラン(アルプス)での表面積雪 の値は地殻の平均組成比 0 中の濃度比と近い値を示したことから、スパールパルに供給される地殻起源物質の起源は アルプスと同じであると考えた。人間活動の指標となる Cu、Zn 、Pbの濃度は 1 9 5 0年頃か ら急激に増加し、 1 9 7 0年をピークにその後減少した。また硝酸、非j 毎塩性硫動産度も同様 な変動を示した。この変動は人間活動から大気に放出される重金属、 N伐、 SOx量の変動 の報告とよく一致した。また Cu、Zn 、Pbの濃度比はモンプラン積雪中の濃度比と似た値 を示し、グリーンランド・ダイスリー積雪中とは異なった値を示した。つまり、人間活動 から放出される重金属元素の供給源はスノ'I-)レパルで、はヨーロツノ fで、あり、グリーンラン ドへの供給源とは異なるということを示している。このことは、極前線を挟んだ両地域の 異なった大気循環場を反映するものである。 以上のように、 Iσ-MSによる微量金属元素の分析法が確立し、その手法に基づいて、 北極圏のスパールパル諸島北東島の堆積環境について金属元素の変動から新しい知見を得 ることができた。 氷コア中の微量金属元素の定量法の開発と 金属元素から見たスバールバルの環境変動 的場澄人 博士(理学) 総合研究大学院大学 数物科学研究科 極域科学専攻 平成 9年度 ( 1 9 9 7 ) 目次 1.背景 3 .参考文献 l章:氷コア試料のコンタミネーション除去に関する研究 1.はじめに ︽J f o 2 .目的 $121 はじめに 1 0 1 -1.コンタミネーションの原因 1 2 .目的 2 .実験 1 3 2 -1.容器・試薬 2 2 .分析装置 2 3 .実験環境の条件 2 4 .試料 3 .結果と考察 1 5 3 -1.溶液試料保存中に被るコンタミネーションの除去方法 3 2 .氷コア試料に付着するコンタミネーションの除去方法 4 .まとめ 1 8 5 .参考文献 18 2章:氷コア試料中の金属元素の測定法に関する研究 1.はじめに 2 5 1 -1.研究史 ト2 .測定方法の比較と ICP-MSの優位性 1 3 .目的 2 .実験 28 2 -1.試料 2 2 .器具と試薬 2 3 .実験器具の種類と洗浄法 2 4 .装置実験環境 25 .実験環境の条件 ・ 3 .結果と考察 3 1 3 -1.ネブライザーの比較 3 2 .ブランクの f 食 言 ナ 4 .まとめ 3 3 5 .参考文献 34 3章:スパールパル北東島氷帽の化学物質の堆積 1.はじめに 45 2 .実験 46 2 -1.試料 2 2 .現場解析 2 3 .一般分析用氷コア融解方法 2 4 . p H、電気伝導度の現場測定 2 5 2 6 .トリチウム測定 2 7 .化学主成分測定 2 8 .酸素同位体測定 2 9 .微量金属克素濃度測定 2 1 0 .データ処理 3 .結果 5 1 3 -1.表層の堆積観測 3 2 .氷コア解析 4 .考察 54 4 -1.季節変動 4 2 .氷コアの年代決定 4 3 .経年変動 4 4 .大気輸送 5 .まとめ 59 6 .参考文献 59 4章:結言 84 謝辞 8 7 はじめに 1.背景 近年、人間活動に起因する大気汚染は地球規模まで拡大している O 例えば温 室効果ガスの増加は、地表付近の温度を上昇させ地球の温暖化や砂漠化を促進 させている O フロンガスは成層圏のオゾン層を壊して地表に届く紫外線の量を 増やしガンを発生させるなどの様々な生態系の変化を引き起こしている D 窒素 酸化物や硫黄酸化物は降水を酸性化させ、森林を破壊したり農作物を減収させ ている O このような大気の変化によって引き起こされる地球環境の変化は、人 類生存にかかわる最重要問題である O そして、今後の地球環境の変化を推測し ていくためには、過去に起こった地球環境の変化のメカニズムを解明すること が必要である o 地球環境は、地球誕生以来、物理学的、化学的、生物学的システムによる相 互作用によって絶え間なく変化し続けてきた。その変化過程を支配してきたメ カニズ、ムは多岐多様な因子によってコントロールされてきた。この地球環境の 変動、突発的なイベントは、堆積・層・年輪などに記録されており、雪や氷が 長い時間をかけて連続して堆積した極域の氷河・氷床もその中の一つである o ∞ 南極やグリーンランドの氷床は最大で 3 Omの厚さがあり、 2 0万年以上にも わたり氷期一間氷期サイクルを明瞭に含む長いタイムスケールの地球環境の変 )ーンランド氷床や北極圏の氷河は年間数十 m 以 動の情報を有する D また、グ 1 上の堆積量があり、堆積速度は海底堆積物や地層などと比べてはるかに早いた め、高い時間分解能での解析が可能である。つまり、極域の氷河・氷床は氷期 一間氷期サイクル及び近年の地球環境の変動のメカニズムを解明する上で非常 に有効な堆積物なのである O 地球環境の変動を記録した氷河・氷床を解析するために、氷河・氷床をドリ ルによって掘削し、連続した氷の円柱状試料(氷コア)を得る試みが行われて きた。極域での氷床掘削による氷コアの採取は、 1949~52 年にノルウェー・イ ギリス・スウェーデンの三国共同体によって東南極大陸モードハイム氷棚で行 われ、 99.8mの氷コアが掘削採取された ( S c h y t t,1 9 5 8 ) 0 グリーンランドでは 1 9 6 6年に最初の掘削が行われ 311mの氷コアが掘削採取された ( L a n g ee ta , . l 1 9 5 9 )0 1 9 6 6年にはグリーンランド・キャンプセンチュリーで初めて岩盤底に まで達する 1367mの深層掘削が行われ (HansenandLangway,1 9 6 6 ) 、その後本 格的な氷床コア研究が行われてきた。 その後の掘削技術の向上により、グリーンランドでは Dye3 ( G u n d e s t r u p釦 d 9 8 5 ) や Summit( D a n s g a a r de ta , . l1 9 8 2 ) 、南極では V o s t o k( L o r i u se ta l ., J o h n s e n,1 1985) などでいくつかの非常に興味深い深層掘削が行われた。また、 l∞m~2∞m 級の浅層掘削は、南極やグリーンランドだけでなく極域における様々な氷河・ 氷帽で各国によって多数行われている (Koemer,1 9 6 8 ;P a l o s u o,1 9 8 7 ;Zagorodnov, 1 9 8 8 ;F u j i ie ta , . l1 9 9 0 ;T a k a h a s h i,1 9 9 3 )0 氷コア研究の君主明期には整備されていなかった氷コア解析方法も、氷コア掘 S h 吋i 削技術の発展と呼応するように開発・発展してきた。現在では物性物理学 ( a n dLangway,1 9 8 9 ) 、氷河学 ( D a n s g a a r da n dJ o h n s e n,1 9 6 9 ) 、地球化学 ( C l a u s e n 釦 dLangway,1 9 8 9 ) 、大気科学 ( F r i e d l ee ta , . l1 9 8 6 ;S t a u f f e re ta , . l1 9 8 5 ) 、生物学 など様々な分野の多様なアプローチによって解析が行われている o 地球化学的 手法による研究は、氷コア中の含まれる化学成分や同位体比の変動から、地球 の物質循環機構を明らかにする研究である o 氷コア中の酸素の同位体比からは 氷期一間氷期の気温の変化が明らかにされ ( D a n s g a a r de ta , . l1 9 8 2 ) 、氷コア中の 固体微粒子濃度からは氷期の陸域の面積の変化が推定され ( P e t i te ta , . l1 9 8 5 ) 、化学成分の変動から季節毎の大気輸送経路の変化が推定された ( S t e f f e n s e n, 1 9 8 8 ) など、分析技術の発展に伴い、様々な成分を対象とした研究がなされて いる。 2 その中で、金属元素は人間活動による大気汚染、そして氷期一間氷期サイク ル機構に重要な役割を果たすと考えられている陸域環境の情報を提供する化学 成分として注目されてきた。極域の氷コア及び積雪中の金属元素の研究例を以 下にあげる。 1 )Murozumiらは南極とグリーンランドの積雪中の鉛の濃度を測定し、人間活動 によって放出される鉛の大気汚染の経年変動を明らかにした (Murozumieta l ., 1 9 6 9 ) 0 この研究で極域の雪氷試料中の金属元素濃度が初めて測定された。そ H e r r o ne ta l,1 9 7 7 ; の後、氷コアに関しても金属元素濃度の報告がなされるが ( B o u t r o na n dL o r i u s,1 9 7 9 ) 、後で述べるように、コンタミネーションの問題が困 難であり、コンタミネーションの除去に成功し信頼にできるデータが報告され 9 8 0年代からである ( B o u t r o ne ta l,1 9 9 4 )0 たのは 1 2 )B o u t r o nは、南極・ DomeCで掘削された氷コアから、氷期から問氷期にかけ B o u t r o na n dP a t t e r s o n,1 9 8 6 ) 、カドミウム ( B o u t r o ne ta , . l1 9 9 3 ) 、銅、 ての鉛 ( 亜鉛、アルミニウム ( B a t i f o l,1 9 8 9 ) の濃度変化を示した。 3 ) Hongはグリーンランド・ Summitで掘削採取された氷コア中の鉛と (Honge t a , . l1 9 9 4 ) 銅 (Honge ta , . l1 9 9 6 ) の濃度を測定し、濃度の変化と有史以来の人間 活動からの放出量の変化 ( S e t t l ea n dP a t t e r s o n,1 9 8 0 ) との関係を推定した。 4 )C a n d e l o n ee ta l .( 1 9 9 5 ) は、グリーンランド・ Summitで掘削採取された氷コ ア中の鉛、亜鉛、カドミウム、銅の濃度から、産業革命以降の北半球の人間活 動による大気汚染の変化を推定した。 5 )B o u t r o nは、南極・ DomeCで掘削された氷コアから、氷期から間氷期にかけ ての鉛 ( B o u t r o na n dP a t t e r s o n,1 9 8 6 ) 、カドミウム ( B o u t r o ne ta , . l1 9 9 3 ) 、鋼、 亜鉛、アルミニウム ( B a t i f o l,1 9 8 9 ) の濃度変化を示した。 また、氷期一間氷期サイクルと陸域環境の関係を明らかにするために、氷コ ア中の固体微粒子の金属元素に関しての研究もいくつか報告されている O 3 1 )P e t i tらは南極・ Vostokで掘削採取された氷コア中の固体微粒子濃度が、最新 氷期の中頃までは間氷期以降と同程度の低い濃度を持続したが、最新氷期中頃 から現在の 1 0 2 0倍の濃度を示すことを明らかにし、氷期中頃から氷床の発達 に伴う海面低下によって大陸棚が露出し国体微粒子の供給量が増加したことを P e t i te ta , . l1 9 9 0 )0 推定した ( 2 ) Groudrichらは、南極.Vostokで掘削採取された氷コア中の粘土鉱物の化学組 成とストロンチウム、ネオジウムの同位対比から、最新氷期に大量に増加した 固体微粒子の供給源をパタゴニア (Groudiche ta , . l1 9 8 8 ) やその大西洋側の露出 した大陸棚 ( G r o u s s e te ta l .,1 9 9 0 ) だと推定した。 3 ) Delmas らは、南極・ Vostokで掘削採取された氷コア中のアルミニウム、ナ トリウム、カルシウムの濃度組成から、最新氷期に増加した固体微粒子の供給 源を南アメリカ南部の露出した大陸棚だと推定した(De lm ぉ a ndP e t i t,1 9 9 4 )0 しかし、金属元素の研究は非常に限られており、不十分な点もおおい。 1)氷期一間氷期サイクルと陸域環境の関係に関して、オーストラリア南部やニ ュージーランド周辺で露出した大陸棚についての評価や、氷コア中に見られた 最新氷期中頃までの低い固体微粒子濃度に関しては説明されていない(藤井理 行 、 1995) 0 2 ) 人間活動による重金属元素の放出量の変化に関しては、極域の氷コア中の重 金属元素の濃度はグリーンランド・ Summitの氷コアしか測定されいない。北極 域の複雑な気象条件下の大気輸送過程を考慮に入れた考察を行うためには、北 極域の他の氷河の重金属元素や起源を限定できるような元素や成分のデータが 必要である O 3 ) 最新氷期の陸域の環境の変化が、海洋の生物活動に影響を与え、氷期一間氷 期サイクルに影響を与えた可能性が示唆されている O 最新氷期中頃の氷コア中 に観測された大量のダストは、海洋の外洋域での生物活動の制限因子と考えら 4 れる鉄を ( M a r t i n ee ta , . l1 9 9 0 ) 供給し、海洋植物プランクトンの活動が増大した 結果、大気中の二酸化炭素が海洋に吸収され、温室効果気体である大気中の二 酸化炭素濃度が減少し、地球の寒冷化が促進されたという説も唱えられている o また、南極ボストークでは最新氷期最寒期の氷コアに高い濃度のアルミニウム が観測され、陸起源物質の大気輸送量の増大が示唆されている (Deomas,1 9 9 2 )0 しかし、氷床コア中の鉄を測定した例はなく、また土壌中や陸上エアロゾル中 の鉄は難溶性な 3価で生物が利用するためには不十分であるとの指摘もあり(藤 井理行, 1 9 9 5 ) 、陸域環境と海洋生物活動との結びつきを解明するためには、起 源や組成などの詳細な金属元素の情報が必要である O 2 .本研究の目的 氷コア中に含まれる金属元素の測定は濃度が低いこととコンタミネーション の除去が困難であることから、測定が広くなされていない。また測定できる元 素も限られている。そのため、近年の人間活動による大気汚染や、氷期の陸域 環境の変化などの環境変動を明らかにするためには情報量が不足している。ま た、測定装置の分析感度が不足しているため、測定には前濃縮操作が必要であ り、そのため大量の試料が必要となることから、測定データの時間分解能も低 くなる O 以上の点から、金属濃度の測定には最小限の試料の量で、高感度に分 析できる測定方法が求められている O また、コンタミネーションの問題が大き いが、陸域環境変動のシグナルとして重要な鉄、アルミニウムを測定できる分 析法も求められている o 本研究では、氷コアの掘削時や処理時に付着するコンタミネーションの除去 方法を確立することを目的としその結果と成果を 1章に示し、多元素を同時に 高感度で分析できる ICP-MSを検出器に使った氷コア中の微量金属元素の濃度 の測定方法を検討し、測定に必要な試料の量の少量化と感度の向上を目的とし 5 て ICP-MSに試料を導入するネブライザーシステムを比較検討して決定し、実際 の測定に適応させる分析技術の確立をおこない、その成果を 2章 に 示 し 、 第 3 章ではスパールパル諸島北東島で掘削された氷コア中の金属元素の濃度を測定 し、人間活動による重金属の放出との関係を考察した。 3 .参考文献 B a t i f o l, F . , B o u t r o n,C .a ndA n g e l i s,M ( 19 8 9 ) :Changesi nc o p p e r ,z i n c a n dcadmium c o n c e n t r a t i o ni nAn t a r c t i ci c ed u r i n gt h ep a s t40, 000y e a r s .N a t u r e,339,5 4 4 5 4 6 . 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P .,P a t t e r s o n,c . c .a ndBoutron,C .F .( 19 9 6 ) :H i s t o r yo f a n c i e n tc o p p e rs m e l t i n gp o l l u t i o nd u r i n gRomanandmediev a 1t i m e sr e c o r d e di n G r e e n l a n di c e .S c i e n c e,272,2 4 6 2 4 8 . Koemer,R .M.( 19 6 8 ) :F a b r i ca n a l y s i so fac o r efromt h eMeigheni c ec a p,n o r t h w e s t t e r r i t o r i e s,C a n a d a .J .G l a c i o , . l 7,4 2 1 4 3 0 . Lange,G .R . , Langway,c . c . , J r .andHansen,B .L .( 19 5 9 ) :De e pc o r ed r i l l i n gi n g l a c i e r s, P r o c .U . S .Arm yS c i e n c eC o n f .,1959,WestP o i n t,N.Y.,vo 1 .2,p p . 9 7 1 0 7 . L o r i u s,c . , J o u z e l,J .,R i t z,c . , M e r l i v a t, L . , Barkov,N ., . I K o r o t k e b i c h,Y . S .佃 d K o t l y a k o v,V.M.( 1 9 8 5 ) :A 150000y e a rc l i m a t i cr e c o r dfromAn t a r c t i ci c e .N a t u r e,316, 5 9 1 5 9 6 . M a r t i n, J . 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P .( 1 9 8 8 ) :An a l y s i s io ft h es e a s o n a lv a r i a t i o ni nd u s t,c r ,N03'組 dS04 2• i n t e wC e n t r a lG r e e n l a n df i r nc o r e s .A n n .G l a c i o . l1 0,1 7 1 1 7 7 . Ta k : a h a s h i,S .,K o b a y a s h i,S .a n dWatanabe,O .( 19 9 3 ) :F i e l da c t i v i t i e so ft h eJ a p a n e s e a r c t i cG l a s i o l o g i c a lE x p e d i t i o nt ow e s t e r nS p i t s b e r g e ni n1 9 9 1a n d1992( J AGE1 9 9 1 1 9 9 2 ) .B u l l e t i no fG l a c i e rR e s .,1 1,2 3 31 . Zagorodnov,V . S .( 19 8 8 ) :R e c e n tS o v i e ta c t i v i t i e soni c ec o r ed r i l l i n ga n dc o r e i n v e s t i g a t i o n si nAr c t i cr e g i o n .B u l l e t i no fG l a c i e rR e s .,6,8 1 8 4 . 河村公隆(19 9 5 ) : 海洋の生物活動と気候変動.氷期サイクルにおける地球環境 ダイナミックスに関する研究立案、平成 6年度科学研究費補助金研究成果報告 書,研究代表者渡辺興亜, p p 3 7 4 7 . 藤井理行(19 9 5 ) : 陸域環境の変化と気候変動.氷期サイクルにおける地球環境ダ イナミックスに関する研究立案、平成 6年度科学研究費補助金研究成果報告書, 研究代表者渡辺興亜, p p 2 9 3 6 . 9 1章:氷コア試料のコンタミネーション除去に関する研究 1.はじめに 南極やグリーンランドの内陸域の降雪及び積雪に含まれている金属元素の濃 度はアルミニウム、鉄などの地殻に多く含まれている元素が ppbからサブ ppb レベル、銅、亜鉛、カドミウムなどの主に人間活動から放出される元素が p p t からサブ p p tレベルと報告されいる ( P e e l,1 9 8 9 ) 0 氷コア中に含まれる p p tレベ ルの含有濃度が低い元素や鉄やアルミニウムなどの実験環境に多く存在する元 素の濃度を測定するためにコンタミネーション除去の問題を解決しなければな らない。 氷コア中の金属元素の濃度を測定するときのコンタミネーションの原因は、 (1)氷コア掘削時とその後のコア解析中・サンプリング中に外部からもたらさ れ氷コアに付着するコンタミネーション、 ( 2 ) 濃度測定のために氷コアを融解 した後試料を保存しているときに保存容器や試薬からもたらされるコンタミネ 3 ) 溶液試料中の濃度を測定するための前処理操作に伴う汚染、 ーション ( ( 4 ) 濃度分析に伴う汚染がある。 ト1.コンタミネーションの原因 1 1 -1.氷コアに付着するコンタミネーション 現在氷床コアは、浅層部は機械的に刃(エレクトロメカニカルドリル)で掘 削さる o 深層部は掘削孔が氷の圧力によって収縮するのを防ぐために掘削孔に 灯油やフロンなどの液体(液封液)を入れた状態で掘削される O この過程で、 ドリルの刃や液封液によって氷コア試料の外側は著しく汚染される。また、掘 削後のコアの取り出し、コアの初期解析、コア切断作業などのコア処理過程中 にも氷コア試料の外側は汚染される O 1i ハU 1 1 2 .溶液試料保存時のコンタミネーション 氷コア試料中の微量成分の濃度を分析するためには、氷コアを融解し溶液に しなければならない。それは、分析試料の均一性を得るためと、氷試料を溶液 にしてから分析する方法が、現在の分析装置の感度では最良だからである O 溶液試料中の氷コア試料を融解させるときに問題になるのが、容器から溶け 出してくるコンタミネーションと溶液試料を安定させるために添加する酸に含 まれているコンタミネーションである O 特に鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガ ン、鉛などのコンタミネーションの危険性の高い元素測定するときには、容器 からのコンタミネーションを防ぐために使用する器具の材質やその洗浄法、使 用する試薬の純度や精製法を検討する必要がある O ト1 3 .前処理に伴うコンタミネーション 前述したように、南極やグリーンランドの内陸域の降雪及び積雪に含まれて いる金属元素の濃度はアルミニウム、鉄などの地殻に多く含まれている元素が ppbからサブ ppbレベル、銅、亜鉛、カドミウムなどの主に人間活動から放出さ p tからサブ p p tレベルと報告されいる ( P e e l,1 9 8 9 )0 p p tレベルの れる元素が p 濃度を現在の分析装置で分析するためには、分析装置の感度が不足しているた め前濃縮操作が必要である O 極域の雪氷試料中の金属元素を測定するときには タングステンワイヤー上に濃縮する方法 ( W o l f fandP e e l,1 9 8 8 ) や非沸騰蒸発濃 縮法 ( G o r l a c ha n dB o u t r o n,1 9 9 0 ) で行われている O こうした前濃縮分析中には、 分析に使用する器具類や分析を行う環境からのコンタミネーションの危険性が ある O ト1 4 .濃度分析に伴うコンタミネーション 極域の雪氷試料中の金属元素の濃度は、 1969年に Murozumie ta lによって初め 1 1 て分析されて以来、同位体希釈法 ( I s o t o p eD i l u t i o nMassS p e c t r o m e t r y ;Murozumie t , . l1 9 6 9 ) 、フレームレス原子吸光分析法 ( F l a m e l e s sAtomicA b s o r p t i o n a 9 8 8 ) 、グラファイト炉原子吸光分析法 ( G r a p h i t e S p e c t r o m e t r y ;WolffandP e e l,1 , . l1 9 9 1 ) 、冷原子蛍光分析法 FumaceA t o m i cA b s o r p t i o nS p e c t r o m e t r y ;B o u t r o ne ta ( C o l dVapourAtomicF l u o r e s c e n c eS p e c t r o m e t r y ;V a n d a le ta , . l1 9 9 3 ) 、レーザー励 起原子蛍光分析法 ( L a s e rE x c i t e dAtomicF l u o r e s c e n c eS p e c t r o m e t r y ;A p a t i ne ta , . l 1 9 8 9 ) で金属元素の濃度が測定されてきた。どのような分析機器でも溶液試料 が触れる部品、器具からのコンタミネーションの危険性がある O また、殆どの 分析装置は開放系で分析を行うため、分析環境からのコンタミネーションの危 険性がある O 1 2 .目的 コンタミネーションを除去するということは、分析目的の成分に対してコン タミネーションの濃度が問題にならない程度まで、コンタミネーションを減少 させるということである O 極域の雪氷試料中の銅、亜鉛、鉛の濃度は数 1 0 p p t と低いレベルであるのに対して、これらの元素は、氷コアの掘削機や氷コアの 処理に使われるバンドソーの刃からのコンタミネーションの中に極めて多く含 まれる O そのため氷コア中の含有量に対して、コンタミネーションの影響は強 く、影響がないほどに氷コアの外側に付着したコンタミネーションを減少させ ることは非常に困難である o 初めて氷コア試料外側の汚染の問題を解決したのは NgandP a t t e r s o n( 1981) である O 彼らはグリーンランド (HansenandLangway,1 9 6 6 ) と南極 (Gowe ta , . l 1 9 6 8 ) で深層掘削採取された氷コア中の鉛とカリウムの濃度を測定した。グリ ーンランドの氷コアは掘削孔にデイーゼル燃料 88%とトリクロロエタン 12%の 混合液を液封液として封入した状態でエレクトロメカニカルドリルで掘削され 1 2 たものであり、南極の氷コアは液封液を使わない状態で熱にる融解によって掘 削するサーマルドリルで、掘削されたものである O 彼らは氷コア試料の内部まで コンタミネーションによって汚染されると考え、液封液などで極度に汚れた氷 コアの外側をアセトンと純水で洗浄した後、周りをノミで少しずつ削り落とし ていくという方法を行った。そして、外側から削り落としていった削り屑の中 の鉛、カリウムの濃度を測定し、外側からどれだけ内側まで削り落とせばコン タミネーションがなくなるかを定量的に明らかにした。 しかし、コンタミネーションは、掘削に液封液を使用して掘削したとしても、 氷コア試料の外側にのみ付着しているのであり、通気性のない氷試料の内部に 入り込むことは考えられない。つまり外側から何 cm削ればコンタミネーション が除去できると解釈することは間違っている。氷コアに付着したコンタミネー ションを削り落とす処理によって、コンタミネーションの殆どは除去されるが 一部分は氷の削り粕とともに氷コア試料の表面に残る O さらに削る処理を施す と、残ったコンタミネーションの一部がまた残る O 氷コア中の目的成分に対し てコンタミネーションの影響が無視できるまでコンタミネーションの割合が減 少するまで、削り落とす処理を繰り返して除去するということを Ngは行ったの である O 従って、氷コアを内部まで削り落とす必然、性はなく、表面のみに着目 してコンタミネーション除去を行えば良いのである O そこで本研究では、氷コア試料に付着するコンタミネーションと溶液試料保 存時に被るコンタミネーションを系統的に捉え、スパールパル北東島で掘削採 取された氷コア中(渡辺興亜、 1 9 9 6 ) のアルミニウム、鉄、銅、亜鉛、鉛の濃 度を分析するために適応したコンタミネーションの除去方法を検討した。 2実験 2 -1.容器・試薬 1 3 溶液試料に関するコンタミネーションの問題は分析化学や海洋化学の分野で p tレベルの測定に適した器具の材質やーそれに合わせた 詳しく検討されており、 p a di nS e a w a t e rWorkshop,1 9 7 4 ; 金森、 1 9 8 5 ; 中山、 洗浄方法が確立されている(Le 1 9 9 7 ) 0 最近では酸などの試薬類は、超微量分析が可能な超高純度試薬が市販 されている O しかし、使用する分析機器によっては、洗浄に使う試薬によるマ トリクスが妨害になることも考えられるので、氷コア試料の処理と測定に適応 させた方法を検討しなければならない。 l l i p o r e社製)で精製した超純水(以 実験に使用した純水は M出 -Qシステム(Mi 下 MQW) を使用した。 試料安定のために添加した硝酸は超高純度硝酸(関東化学)を使用した O 含 ・1に示す。テフロン容器とガラス器具、マイクロピペット 有不純成分濃度を表 1 用チップ、低密度ポリエチレン瓶の加熱洗浄には有害金属測定用純度の試薬を 使用した。 u l t i e l e m e n tS t a n d a r dXSTC1 3(Th, 測定に使用した標準溶液は SPEX社 CustomM Ag,Al, As,Ba,Be,Bi,Ca,Cd,Co,Cr,Cs,Cu,Fe,Ga,K,L i,Mg,Mn,Na,Ni,Pb, ppm5%硝酸溶液)を適宜、非沸騰蒸留水で、希釈し、超 Rb,Se,S r,T i,V,Zn,U lO 高純度硝酸を添加し 1%硝酸溶液として調製した。 ICP-MSのキャリアガス、プラズマガスには B 級純度のアルゴンガスを使用 した。 実験で使用した器具の材質の選択と洗浄方法は原則として海洋化学で行われ O b a t ae ta l,1 9 9 3 ) で、行ったが、本研究は ICP-MSを検出器に使用す ている方法 ( るため、干渉による妨害となる共存成分濃度をできる限り減少させる目的で、 硝酸を使用できる範囲で酸洗浄に使用するよう以下の方法で洗浄を行った。 標準試料の保存や氷試料の融解、処理にはテフロン容器を使用した。テフロ ン容器の洗浄は以下の手順で、行った。(1)有機成分を除くためアセトンで表面洗 1 4 浄して MQWで濯く¥(2)4M硝酸に一週間浸し、 MQWで濯く¥(3)濃硝酸を容器 内に少量加え、加熱し気化させながら洗浄した後 MQWで濯く¥(4)MQWを少量 加え加熱し気化させながら洗浄した後 MQWで濯ぐ。 2 2 .分析装置 金属元素の濃度の測定には ICP-MS(HP4500:横河アナリテイカル社製)を使 用した。 HP4500は質量選択部に双曲線形四重極質量分析計を使用しており、イ オン化部のプラズマトーチはファッセル型を、インターフェース部のサンプリ ングコーンとスキマコーンにはニッケル製のものを使用した。ネブライザー(噴 霧器)にはクロスフローネ型を使用した。 ICP-MSの測定条件を表 1 2に示した。濃度の定量は絶対検量線法で、行った。 以上の条件下での検出限界は表 1 3に示した通りである。検出限界はブランク溶 液の信号強度の 3倍に相当する濃度を検出限界として算出した。 2 3 .実験環境の条件 器具の洗浄、試薬の調製はすべてクラス 10000のクリーンルーム内で、行った。 低温室内で行う氷試料に付着したコンタミネーションの切削除去操作は、低温 室に設置したクリーンベンチ内で、行った。その後の洗浄及び融解処理はクラス 1 0 0 0 0のクリーンルーム内に設置したクリーンベンチ内で、行った。 2 4 .試料 氷コアに付着したコンタミネーションの除去テストに使用した模擬氷コア試 料は、テフロン容器内で MQWを凍らせて調製した。 3 .結果と考察 1 5 3 -1.溶液試料保存中に被るコンタミネーションの除去方法 溶液試料の保存にはテフロン容器が最も清浄であり、耐酸性、耐熱性にも優 れており洗浄が容易に行えるので、試料の保存にはテフロン容器が最適である O しかし、テフロン容器には静電気によって微粒子が付着しやすく、コンタミネ ーションの原因になるためフィールドでは使いづらい。そのため、丈夫であり 親水性で静電気がおきづらいポリエチレン製容器の中でも最も不純物が少ない 米国 Nalge社製の低密度ポリエチレン容器を保存容器に使用することを検討し b a t a( O b a t ae ta l、 1 9 9 3 ) によって報 た。金属元素の測定に最適な洗浄方法は、 O 告されているが、本研究では 2部において ICP-MSを検出器に使用することを目 的にしているため、硫酸、硝酸等の測定の時に妨害となる試薬の使用を避け、 試薬の残留が妨害とならないように以下の方法で、洗浄を行った。(1)低密度ポリ E x t r a nMA01:Merck社製)に 24 エチレン瓶の洗浄を 5%アルカリ性界面活性剤 ( 時間以上浸し、 MQWで充分濯く¥(2)4M硝酸に 24時間以上浸し、 MQWで充分 4 )加熱した 濯く¥(3)加熱した 1%硝酸を満たし 24時聞置いた後 MQWで濯ぐ、 ( MQWを満たし MQWで濯ぐ。 以上の方法で洗浄した低密度ポリエチレン瓶に 1%硝酸ブランクを入れた直 後と、 1週間保存したときの各元素の濃度を測定した結果、容器からのコンタミ ネーションはなく、上記の方法でテフロン容器と同等の清浄さに洗浄できるこ とが分かつた。 3 2 .氷コア試料に付着するコンタミネーションの除去方法 9 9 5年 5月から 6月にスバールパル 最終的に測定対象となる氷コア試料は、 1 1度 02分、標 諸島北東島ウエストフォンナ氷帽頂上(北緯 79度 58分、東経 2 9 9 6 ) において行われた観測で採取された 210mの氷コ 高 60um) (渡辺興亜、 1 アである D 氷コアは掘削された後、バンドソーで切断されポリエチレン袋に密 1 6 封された状態で輸送された後、ニーオルスン観測基地内の低温室 ( 2 0C) で解 0 析を行う直前まで保管されている O この氷コア試料は、浅層用エレクトロメカニカルドリルで掘削されたので、 液封液による表面の汚染はないが、掘削機からや掘削作業にともなうコアの取 .C .M.測定の際 り出しなどの操作によって汚染をうけている O また掘削後は、 E に氷表面を削るのに用いられるマイクロトームの刃や、化学主成分用試料採取 の際のバンドソーによって極度に金属の汚染をうけている O しかし、現場での 掘削方法や掘削素材などを変更することは不可能であり、また化学主成分や酸 .C.M.測定の際の試料処理方法や器具を 素の安定同位体比測定用の試料採取や E 金属の汚染のない方法に変更することは、作業効率を著しく悪化させるため避 けたい。そのため、現在行われている作業過程で付着した氷コア試料の汚染を 完全に除去するサンプリング方法を検討した。 模擬氷コア試料を低温室内で、バンドソーを用いて切断して、通常のコア処理 時と同様に試料の外面に汚染を付着させ、コンタミネーション除去のテストを 行った o コンタミネーション除去処理中は、両手に保温手袋とその上からポリエチレ ン製手袋を着用し、人体からコンタミネーションがもたらされることと体温に よって試料が融解しコンタミネーションが広がることを防止した。 まず、セラミック包丁を使い、汚染している氷コア試料の外側の面を削り落 とした。この操作により多くの汚染は除くことができるが、削りかすや、操作 の際に手袋に付着した汚染源物質によって、完全に汚染を取り除くことはでき ない。 外側を削り落とした試料をポリエチレン袋に入れ密封し、以降の作業過程中 S O Cの冷凍室に 1日保管した。以降の操作は常温 に割れないようにするため、約 _ の実験室内に設置されたクリーンベンチ内で行われ、操作の際には防塵服とポ 1 7 リエチレン手袋を着用して行った。試料をピニル袋から硝酸で洗浄済みのポリ プロピレン製の網台の上に取り出だした後、 MQWで試料の周りを洗い流した。 その後、試料を蓋付のテフロン容器に入れ、常温で約 50g融解した。その後、 溶解した試料を分取し、残った氷試料を別の容器に移し変えさらに 50g溶かし た。この周りを少しずつ溶かす操作を繰り返すことで、氷コア試料に付着して いた汚染物質を除去した。 図1 1は、分取した 50gの溶解水中に含まれる汚染物質の濃度が洗浄操作を繰 り返すごとにどれくらい取り除かれたかを示している O 4 .まとめ l部では、氷コア試料に付着したバンドソーなどからのコンタミネーションを、 コンタミネーションをうけた面を削り落とした後、水で、洗い流し、試料を少し 2に ずつ溶かしてコンタミネーションを洗い流して除去する方法を確立し図 1 示した。アルミニウムまでを含めた全てのコンタミネーションを除去するため には 4回融解操作を行えばよいことが分かつた O 実際の試料の測定前には、実 際の試料を使って除去実験を行い、試料中の含有濃度とコンタミネーション濃 度に適した洗浄回数、洗浄量を決める必要がある O また、溶液試料の保存容器に低密度ポリエチレン製容器を使用し、 ICP-MSを 用いた分析に適応させた洗浄方法を確立した。 5 .参考文献 A p a t i n,V.M.,A r k h a n g e l s k i i,B.V.,Bolshov, 恥1 .A . , Ermolov,V.V.,Koloshnikov, V.G.,Kompanetz,O.N.,Kuznetsov,N., . 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O b a t a,H .,Kr a t a n i,H .a n dNakayama,E .( 19 9 3 ) :Automatedd e t e n n i n a t i o no fi r o ni n s e a w a t e rbyc h e l a t i n gr e s i nc o n c e n t r a t i o nandc h e r n i l u r n i n e s c e n c ed e t e c t i o n .A n a l .Chem. 6 5,1 5 2 4 1 5 2 8 . P e e l, D .A .( 19 8 9 ) :T r a c em e t a l sa n do r g a n i ccompoundsi ni c ec o r e .TheE n v i r o n m e n t a l R e c o r di nG l a c i e r sa n dI c eS h e e t s,e d s .H .O e s c h g e randc.c.Langway,J , . rC h i c h e s t e r , J o h nW i l c y& SonsL i r n i t e d, p p 2 0 7 2 2 3 .( P h y s .,Chem.andE a r t hS c i .R e s .R e p o r t,8 ) V a n d e l, G.M.,F i t z g e r a l d, W.F . , B o u t r o n,c . F .a n dC a n d e l o n e,J . P .( 19 9 3 ) :V a r i a t i o n s i nm e r c u r yd e p o s i t i o nt oAnt a r c t i c ao v e rt h ep a s t34, 000y e a r s .N a t u r e,362,6 2 1 6 2 3 . Wolff ,E.W.a n dP e e l,D .A.( 19 8 8 ) :C o n c e n t r a t i o n so fc a d r n i u m ,c o p p e r,l e a da n dz i n ci n snowfromn e a rDye3i ns o u t hG r e e n l a n d .A n n .G l a d i o l .1 0,1 9子 1 9 7 . 金森悟、坪田博行、室住正世、中村精次(19 8 5 ) : 第 4章 4.1海洋における重金 1 9 属の分布と挙動,海洋動態,昭和 59年度文部省科学研究費補助金による特定研 究「海洋の動的構造J研究成果とりまとめ, pp223-263 中山英一郎(19 9 7 ) :第 1 1章、第 3節 、 2金属イオン.最新の分離・精製・検出法 一原理から応用まで一,初版,梅津喜夫、津田嗣郎、中村洋監修,東京, NTS,p p 9 4 6 9 5 5 藤井理行(19 9 5 ) : 陸域環境の変化と気候変動.氷期サイクルにおける地球環境ダ イナミックスに関する研究立案、平成 6年度科学研究費補助金研究成果報告書, 研究代表者渡辺興亜, p p 2 9 3 6 . 渡辺興亜(19 9 6 ) : 南北両極域氷床への各種気候・環境示標物質の堆積フラックス の復元、平成 7年度科学研究費補助金研究成果報告書. 2 0 表1 1)超高純度硝酸(関東化学)含有不純成分濃度 項目 項目 濃度~ 濃度~ L i Na K Rb Cu Ag Au B e Mg C a S r Ba Zn Cd E u T h U A l Ge S n P b T a S b B i C r Mo 0 . 0 8 > 3 . 6 2 . 1 0 . 0 5 > 1 .4 0 . 5 > 3 > 0 . 2 > 0 . 9 4> 0 . 0 8 > 0 . 0 8 > 3 > 1 > 0 . 3 > 0 . 0 0 5 > 0 . 0 0 2 > w Mn F e Co Rh N i P t 2 1 5 . 7 4> 1 > 0 . 5 > 0 . 5 > 0 . 5 > 0 . 3 > 4 . 5 3 > 6> 0 . 5 > 9. 4 0 . 3 > 0 . 3 > 2. 4 3> 表1 ・2 )I C P M S測定条件 プラズマガス流量 プラズマ補助ガス流量 キャリアーガス流量 RF ノてワー 測定ポイント 積分時間 測定繰り返し回数 1 6 . 0 L j m i n . 1 . 0 L j m i n . 1 . 0 2 L j m i n . 1240W 1amuあたり 3点 1ポイントあたり 0 . 5手 少 5回 表1 3 )I C P M Sの検出限界 元素 検出限界濃度 ( p p t ) Al 280 V 1 8 Cu 26 Zn 2 8 As 8 . 5 S r 1 .6 4 Cd 3. Pb 2 8 22 70 60 . . 5 0 101~ 1 1 .40 . 330 10~ 10: 1O~ 1O~ 〉 back 20 ground 10 10よ 10V 2 3 4 2 5 102 2 3 4 5 4 5 2 3 4 5 2 3 4 5 250 nuRM ハU (Haa)CN 103 3 ハU ハu n u O 104 102 100 (一五巳)万一) 100 105 103 211 101 1400 1200 . . 1 0 0 0 E800 X600 c . . . 400 200 104 101 O 106 N υ』 ( 一 三 己 ) コυ Faa)一 ︿ (一 1O~ 1O~ 1O~ . 1O~ 105 50 O 2 3 4 5 洗浄回数 図ト 1.洗浄水中の残留コンタミネーション濃度 低温室簡易クリーンベンチ N 4込 クリーンルーム │氷試料をポリプロピレン製台の上に置き超純水で洗浄する│ 硝酸添加 ( 1%) J 一 ー 惨 馳 , 2,3,4,5 図1 2 .氷試料に付着した汚染の除去方法 2章:氷コア試料中の微量金属元素の測定法に関する研究 1.はじめに 1 -1.研究史 極域の雪氷試料中の金属元素濃度は 1969年に Murozumiらによって初めて測 ta , . l1 9 6 9 ) 0 彼らは鉛の濃度を 19k9の積雪試料を融解し 定された (Murozumie I s o t o p eD i l u s i o nMass 溶媒抽出と蒸発乾固で濃縮した後、同位体希釈法 ( S p e c t r o m e t r y:IDMS) で定量し、カルシウム、マグネシウム、カリウム、チタン の濃度は 20~90g の試料を蒸発濃縮して IDMS 法で測定した。ナトリウムは中性 子放射化分析法と原子吸光検出法で測定した。この研究により極域の雪氷試料 g l gレベルであること、人間の産業活動によって放出 中の重金属元素の濃度は p される鉛の汚染が明らかにされた。その後、ナトリウム、カリウム、カルシウ ム、マグネシウムはイオンクロマトグラフィーで簡便に測定されるようになっ H e r r o ne ta , . l た。鉛や他の重金属元素は、 IDMSによる測定がいくつか報告された ( 1 9 7 7 ;B o u t r o nandL o r i u s,1 9 7 9 ;LandyandP e e l,1 9 8 1 ) 。しかし、これらの報告で は氷コアが掘削されるときにその外面に付着するはコンタミネーションの除去 B o u t r o ne ta l ., が充分でないため信頼できる濃度を測定することができなかった ( 1 9 9 4 )0 1 9 8 1年に Ngらはコンタミネーションの問題を解決し (NgandP a t t e r s o n, 1 9 81)、グリーンランドと南極の深層掘削で得られた氷コア中の微量金属元素 を定量した。彼らは、掘削孔が氷の圧力で収縮するのを防ぐために孔に入れら れている液封液などで極度に汚れた氷コアの外側を、アセトンと純水で、洗浄し た後、周りをステンレス製のノミで少しずつ削り落としていくという方法でコ ンタミネーションを除去した。また、 Ngは氷コアの中にコンタミネーションが 入り込むと考え、外側から削り落としていった削り屑の中の金属元素(鉛、カ リウム)の濃度を測定し、外側からどれだけ削り落とせばコンタミネーション がなくなるかを定量的に明らかにした。その後、南極で掘削された氷コア中の 25 鉛の濃度プロファイルが Boutronによって初めて報告され ( B o u t r o nandP a t t e r s o n, 1 9 8 6 ;Boutrone ta l .,1 9 8 7 ) 人間活動の影響も含めた過去の地球環境変動が氷コア ta , . l 中の鉛のプロファイルに現れていることが分かった。その後、亜鉛 (Bou仕one 1 9 9 0 ) 、カドミウム ( B o u t r o ne ta , . l1 9 9 3 ) 、水銀 ( V a n d a le ta , . l1 9 9 3 ) などの金 属元素も測定され、グリーンランドで掘削された氷コアについても同様に測定 e e l,1 9 8 8 ;Boutrone ta , . l1 9 9 1 )0 がなされていった (WolffandP 1 2 .測定方法の比較と ICP-MSの優位性 溶液中の金属元素の測定法としては、 1950年代に報告された原子吸光法が、 高感度かっ多くの元素に適応可能な分析法として 1960年代以降に普及し、長年 i n d u c t i v i t yc o u p l e d 元素分析の主流であった。発光分析法は誘導結合プラズマ ( plasma,ICP) を励起源として、 1980年以降、主要な元素分析手法として多くの 分野で活躍している D さらに、 1970年代末からプラズマをイオン源とする質量 分析法が報告され (Gray,1 9 7 5 ) 、1980年代には ICPをイオン源とした質量分析 法で元素分析を行う ICP質量分析法 (ICPMassSpectromety,ICP-MS) が開発さ 9 8 0 ;Houke ta , . l1 9 8 3 ;GrayandD a t e,1 9 8 3 ) 、今日では最も高感度な れ (Houk,1 9 9 6 ) 分析方法として活用されている(中原、 1994;柴田、 1 極域の雪氷試料中の金属元素の濃度は、 1969年の Murozurniらの報告以降同位 体希釈分析法で測定され ( M u r o z u r n ie ta , . l1 9 6 9 ) 、 1990年代からはグラファイ ト炉原子吸光法で測定されてきた ( B o u t r o ne ta , . l1 9 91 ) 0 ICP-MSを使った極域 の雪氷試料中の金属元素の濃度の測定例は、分析手法の検討 (Shimamura,1 9 9 5 ) や積雪試料中の濃度測定(池川、 1 9 9 7 ) はあるが、氷コア試料中の金属元素の 濃度プロファイルを測定した例はほとんどない。グリーンランドと南極の現在 の降雪中に含まれる金属元素の濃度は、地殻に多く含まれるアルミニウムが ppb レベル、重金属はサブ p p tからサブ ppbレベルである ( W o l f fandP e e l,1 9 8 8 ;Wollf 26 a n dP e e l,1 9 8 5 ;C a n d e l o n e,1 9 9 6 ) 0 現在の分析装置は、重金属などの p p tレベルの 低濃度成分を直接測定できる感度を持たず、濃度測定には前濃縮操作が必要と なる o しかし、掘削採取される氷コア試料は、直径約 1 0 c m の円柱状試料であり、 その試料は様々な解析に分割使用されるため、一つの解析に使用で、きる試料の 量は限られている O また、測定に必要な試料の量が多いということは、氷コア を深さ方向に長く採取しなければならないといつことである O つまり、積雪の 連続堆積物である氷コアの時間分解能が低くなるということである O そのため、 分析装置には、少量の試料で他元素を高感度で測定できるものを選ぶ必要があ る 。 1は I C P M S、原子吸光法、 表2 I C P発光分光法 ( I C P 岨 S ) 同位体希釈分析 ( I D M S ) の特色を比較したものである。氷コア解析には、少量の試料量で ppt レベルの多くの元素を、そして大量の試料数を測定することが要求される。そ p tレベルの分析感度の有無、必要な試料の量、多元素同 こで、各分析方法を、 p 時分析の可否、前処理操作の有無に関して比較した結果、 I C P M Sで測定するこ とが最適であると考えた。 I C P M Sを分析装置に使用した場合でも元素によっては前濃縮操作が必要と なる O 溶液中の金属元素の濃縮方法は、共沈法や溶媒抽出法などの化学的濃縮 法、蒸発濃縮法、ネプライザーなどの導入装置によって濃縮効果を得る方法、 2である o 樹脂に濃縮する方法などがある oそれぞれの特徴を比較したものが表 2 濃縮法も分析法と同様に、少量の試料量で大量の試料を測定できるという観点 から、各濃縮法の濃縮率、操作性、汚染の危険性について比較したところ、装 置による濃縮法と樹脂に濃縮する方法が、汚染の危険性がなく、樹脂に濃縮す る方法と蒸発濃縮する方法が濃縮率が高いことが分かる。しかし、樹脂による 濃縮は、濃縮後の溶液の共存成分の濃度が高く妨害となるため、 する場合の前濃縮法としては適さない。 27 I C P M Sで測定 1 2 .目的 本研究では、極域で採取された氷コア中の微量金属元素の濃度の ICP ・ .MSによ る測定法を確立することを目的とし、そのための新しいネブライザーシステム を検討し実用化することを目的とした。 2 .実験方法 2 -1.試料 氷コアに付着したコンタミネーションの除去テストには、 1 9 9 5年 5月から 6 月にスパールパル諸島北東島ウエストフォンナ氷帽頂上(北緯 79度 58分、東 ∞ 経2 1度 02分、標高 6 m) (渡辺、 1 9 9 6 ) において行われた観測で採取された 210mの氷コアを使用した。氷コアは浅層エレクトロメカニカルドリルで掘削さ れた後、バンドソーで切断してポリエチレン袋に密封し凍結した状態で輸送さ れ、ニーオルスン観測基地内の低温室 ( 2 0C) で解析を行う直前まで冷凍保管 0 されていた。 2 2 .器具と試薬 -Qシステム(Mi l l i p o r e社製)で精製した超純水(以 器具の洗浄にはすべてMilli 下 MQW) を使用した。標準試料の調製には MQWを石英製非沸騰型蒸留装置で 精製した超純水(以下、非沸騰蒸留水)を使用した。 試料に添加する硝酸は超高純度硝酸(関東化学)を使用した。テフロン容器 とガラス器具、マイクロピペット用チップ、低密度ポリエチレン瓶の加熱洗浄 には有害金属測定用純度の試薬を使用した。 測定に使用した標準溶液は SPEX社 CustomM u l t i e l e m e n tS t a n d a r dXSTC13(Th, Ag,Al,As,Ba,Be,B i,Ca,Cd,Co,Cr,Cs,Cu,Fe,Ga,K,L i , Mg,Mn,Na ,Ni,Pb, 2 8 Rb,Se,S r,T i,V,Zn,U l O p pm5%硝酸溶液)を適宜、非沸騰水で希釈し、超高純 度硝酸を添加し 1%硝酸溶液として調製した。 ICP-MSに使用したアルゴンガスは B級純度を、窒素ガスは A級純度のもの を使用した。 2 3 .実験器具の種類と洗浄法 微量金属を測定するための器具の材質の選択と洗浄方法を下に記す。 氷試料の融解、処理にはテフロン容器を使用した。テフロン容器の洗浄は以 下の手順で洗浄した。(1)アセトンで洗浄したのち MQWで濯ぎ、 (2)4M硝酸に一 週間浸したのち MQWで濯ぎ、 ( 3 )濃硝酸を容器内に少量入れ 1時間加熱し気化 させながら洗浄した後 MQWで濯ぎ、 (4)MQWを少量入れ加熱し気化させながら 洗浄したのち、非沸騰水で注いだ。 溶液試料の保存には低密度ポリエチレン瓶 ( N a l g e n社製)を使用した。低密 度ポリエチレン瓶の洗浄は以下の手順で、行った。(1)5%アルカリ性界面活性剤 (Ex 1 r a nMA01:Merck社製)に 24時間以上浸し MQWで充分濯ぎ、 (2)4M硝酸 3 )加熱した 1%硝酸を満たし 24時間放置 に 24時間以上浸し MQWで充分濯ぎ、 ( 4 )加熱した MQWを満たし 24時間放置した後 MQWで洗 した後 MQWで濯ぎ、 ( 浄した。 マイクロピペットのチップの洗浄は 5%アルカリ性界面活性剤、 4M塩酸、 MQW 中でそれぞれ 1時間加熱して行った。。 以上の方法で洗浄した器具、容器からのコンタミネーションがないことは、 第 l章で既に述べた。 2 4 .装置 微量金属元素測定の検出器には I C P M S( H P 4 5 0 0 :横河アナリテイカル社製) 2 9 を使用した。 HP4500は質量選択部に双曲線形四重極質量分析計を使用しており、 イオン化部のプラズマトーチはファッセル型を、インターフェース部のサンプ リングコーンとスキマコーンにはニッケル製のものを使用した。 導入部のネブライザー(噴霧器)には同軸ネブライザー、超音波ネプライザ ー (U5000AT+:CETAC社製)、マイクロ・コンセントリック・ネブライザー (MCN-100:CETAC製)、脱溶媒膜付マイクロ・コンセントリック・ネブライ ザー (MCN-6000:CETAC製)の 4種類を使用した。 同軸ネブライザーは標準のネブライザーであり、外部のペリスタルティック ポンプによって導入した試料をキャリアガスで噴霧した後、霧状の試料を冷却 されたスプレーチャンパーで細かい霧のみ選別してプラズマトーチに導入する 仕組みである O 超音波ネブライザーは試料を噴霧する際に l . 4 MHzの超音波振動を試料に与 え、通常のネブライザーよりも細かく一定な粒径の霧を作りだし導入するもの である。噴霧された試料は同軸ネブライザーと同様にスプレーチャンパーを通 してプラズマトーチに導入する。 MCN-6000の構造を図 2 1に示す。 MCN-6000は全てテフロン製の部品で構成 されている。原理は以下の通りである o MCN-100という高い噴霧効果を持つネ ブライザーで噴霧した試料をスプレーチャンバーで 70"Cに加熱し、脱溶媒部に 送られさらに 1 6 0"Cに加熱する O ここで溶媒や試料に含まれる酸などの揮発成分 は気化しテフロン膜を通して、試料と逆向きに流れるスイープガスによって除 去される D 溶媒が除かれてドライエアロゾルになった試料は、窒素ガスと混合 され ICP-MSのプラズマトーチに導入される。この脱溶媒作用によってクローズ 系でのオンライン濃縮効果を得ることができ、また溶媒を除去することで、試 料マトリックスを除去し測定時の妨害を減らすことができることが実験室レベ e c h n o l o g i e sINC . , 1 9 9 7 )0 ルでは確認されている (CETACT 30 2 5 .実験環境の条件 器具の洗浄、試薬の調製はすべてクラス・ 1000のクリーンルーム内で、行った。 氷試料の融解、処理はクラス 10000のクリーンルーム内に設置したクリーンベ ンチ内で行った。 3 .結果と考察 3 -1.測定条件の検討 3 1 -1.ネブライザーの比較 極域で得られる雪氷試料中に含まれる微量金属元素の濃度は極めて低く、ま た、得られる試料の量も限られているため、感度が高く、試料消費量の少ない ネブライザーシステムを比較検討した。 比較したネブライザーは、同軸ネブライザー、超音波ネブライザー、脱溶媒 膜付マイクロ・コンセントリック・ネブライザー (MCN6000) の 4種類である D 四 測定時の ICP-MSの測定条件を表 2 3に示す。図 2 2には各ネブライザーを使 用して計測開始から 40秒から 1 ∞ 秒 ま で 100ppbの標準試料を導入し、 0 . 1秒間 隔で連続的に鉛 208を測定したときの信号強度の時間変化を示した。試料の前 後にはブランク試料 (1%硝酸)を導入し、ブランクと試料の相対イオンカウン 4にまとめた。 ト数の積分値を図中に表した。この結果と試料消費量を表 2 この結果、超音波ネブライザ一、 MCN-6000、MCN-100、同軸ネブライザーの 順で感度が高いことが分かつた。本研究では少ない試料の量で測定を可能にす ることが必要であるので、超音波ネブライザーとほぼ同等の感度を有し、極少 量の試料で測定が可能な MCN-6000を測定に使用することにした。 MCN-6000 の測定条件を表 2 5に示す。 3 1 3 2 .プランクの+食言す 今回使用した ICP-MSの質量分析部には、広い質量範囲が高速で操作でき取り 扱いの容易な四重極型の質量分析装置が用いられている O しかし、四重極型質 z ) を持つ原子や分子イ 量分析装置は分解能が低いため、同じ質量対電荷比 (m1 オンを分離することができず、重なり合って干渉する場合が少なからずある O 干渉の原因はアルゴンプラズ、マ、溶媒、酸、共存元素に起因する元素や分子種 zが 80以下の領域には多数の分子種イオンが存在する のイオンである O 特に m1 ため、ピークの重なり合いによる正の誤差や、パックグラウンドの上昇による 検出限界の悪化がみられ、四重極型の装置の特徴的な欠点となっている o 極域の雪氷試料は共存元素が少ないためマトリクス効果やマススペクトルの 干渉による妨害が少なく、 ICP-MSでの分析には適した試料である。しかし、前 述のように微量金属元素の多くは p p tレベルの濃度であり、かつ人間活動による 大気汚染に関連のある元素の多くは遷移元素であり、その質量数は 80以下のも 5 6, 57, 5 8 ) 、銅 ( 6 3, 6 5 ) 、亜鉛 ( 6 4, 6 6 ) )そのため上 のが多い。(例えば鉄 ( に述べたような分子種イオンのスペクトルによる干渉の妨害の影響が大きく検 出限界が悪化するので、実試料の測定に適応させるのが難しいのである O さらに、 MCN-6000は試料の酸化物の生成を押さえるために脱溶媒した後に、 キャリアガスと試料の混合気体に窒素を加えている O 通常のネブライザーを使 用した場合はキャリアーガスはアルゴンのみであり窒素原子は試料中に添加さ れている硝酸に含まれるのみであり問題にはならないのだが、 MCN-6000を使う ときには多量の窒素ガスがプラズマトーチに導入されるため、通常の測定では 妨害にならないような、窒素原子を含むイオン分子が生成し、それによる干渉 が妨害となる可能性がある。 1%硝酸溶液の測定マススペクトルを図 2 3に示す。アルゴンガスやマトリク スによる強度なスペクトルがある質量数[( a m u )1 4 ( N )、1 6 ( 0 )、17(OH)、18(H20 )、 32 40 19(H20ふ 32(02)、36e6A r ) 、 38e8A r ) 、 40( A r ) 、 41( A r H ) ] は測定質量数から除い . 0 1 てある。 1amuあたり:t0.5amuの範囲で 6ポイントずつ、 1ポイントあたり 0 秒積分時間で測定した。窒素ガスによる干渉は、質量数 28に窒素の重合体が、 質量数 56にアルゴンと窒素の重合体イオンの信号として検出されているが、他 の元素に干渉していないため特に問題とはならなかった。 次にAl、 V、 M n 、 Fe、Cu、z n、Sr、Ag、Cd、Pbに相当する質量数 27、51、 54、57、5 8、6 3、66、6 8、8 8、 1 0 7、 1 1 4、208の 1%硝酸溶液と 50 p p t標準試料 4、2 5に示した。 1amuあたり:t 0.05amuの範囲で 3ポイ のマススペクトルを図 2 ントずつ、 1ポイントあたり 0.10秒積分時間で測定した。亜鉛に相当する質量 数 68に強い信号が検出された。これは窒素の重合体にアルゴン元素が重合した イオン (NNAr) の信号と考えられるが、亜鉛は質量数 66で測定できるので問 題ない。他の元素に関しては干渉による妨害がなく測定可能で、あった。 MCN6000・ICP-MS装置の検出限界は表 2 6のようだ、った。検出限界はブラ ンク試料 (1%硝酸、非沸騰水溶液)で検出される信号強度の 3倍に相当する濃 度を検出限界とした。 4 .まとめ ICP-MSのネブライザーシステムに脱溶媒膜付マイクロコンセントリックネ ブライザーを使用することで、数mLの試料量で 1 0数元素を同時に p p tレベル で測定することが可能となった。また、このネブライザーの使用によりプラズ マ成分の酸化が抑制でき、それによってアルゴン酸化物による鉄マススペクト ルの妨害が減少して、鉄の分析感度が数十倍向上し、他の元素と同時に測定が できるようになった。このことは氷コアを ICP-MSで測定するときの欠点であっ た、試料の量が大量に必要な点、鉄の分析感度が低い点を解消した O これによ り氷コア試料中の測定方法が確立された。 3 3 5 .参考文献 Boutron,c . F .a ndL o r i u s,C .( 19 7 9 ) :T r a c em e t a l si nAn t a r c t i csnowss i n c e1 9 1 4 . N a t u r e,323,222-225. Boutron,c . F .a ndP a t t e r s o n,C . C . ( 19 8 6 ) :Le a dc o n c e n t r a t i o nc h a n g e si nAn t a r c t i ci c e d u r i n gt h eW i s c o n s i nIH o l o c e n et r a n s i t i o n .N a t u r e,323,2 2 2 2 2 5 . Boutron,c . F . , P a t t e r s o n,C .C .,P e t r o v,V.N.佃 dBarkov,N.I .( 19 8 7 ) :P r e l i m i n a r yda 泊 onc h a n g e so fl e a dc o n c e n t r a t i o n si nAn t a r c t i ci c efrom1 5 5, 000t o26, 000y e a r sBP. A t m o s .E n v i r o n .,2 1,1 1 9 7 1 2 0 2 . .F .,P a t t e r s o n,c.c.andBarkov,N.I .( 19 9 0 ) :Theo c c u r r e n c eo fz i n ci n Boutron,C An t a r c t i ca n c i e n ti c eandr e c e n tsnow.Ea r t hP l a n e t .Sc. iL e t t .,1 0 1,2 4 8 2 5 9 . Boutron,C . F .,G o r l a c h,U.,Candelone,J . 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I .a ndBoutron,C .F .( 19 9 6 ) : Candelone,J S e a s o n a lv a r i a t i o n si nh e a v ym e t a l sc o n c e n t r a t i o n si np r e s e n tdayG r e e n l a n dsnow.The 9 3,1 0ト 1 1 0 . S c i .o ft h eT o t a lE v i r o n .,1 Gray,A.L.( 19 7 5 ) :M a n n s p e c t r o m e t r i ca n a l y s i so fs o l u t i o n su s i n ga na t m o s p h e r i c 34 p r e s s u r ei o ns o u r c e .A n a l y s t,1 0 0,2 8 9 2 9 9 . Gray,A.L.andD a t e,A.R.( 19 8 3 ) :I n d u c t i v e l yc o u p e l dp l a s m as o u r c emasss p e c t r o m e t r y u s i n gcomtinuumf l o wi o ne x t r a c t i o n .A n a l y s t ,1 8 0,1 0 3 3 1 0 5 0 . . c . , W eiss,H.V.a n dC r a g i n,J . H .( 19 7 7 ) :A t m o s p h e r i c H e r r o n,M.M.,Langway,c t r a c em e t a l sa n ds u l f a t ei nt h eG r e e n l a n ds h e e t .Geochim.Cosmochim.A c t a41,9 1 5 9 2 0 . Houk,R.S .,F a s s e l,V .A . , F l e s c h,G.D.,Svec,H . J .,Gray,A.L.a n dT a y l o r ,C . E . ( 19 8 0 ) :I n d u c t i v e l yc o u p l e da r g o np l a s m aa sa ni o ns o u r c ef o rmasss p e c t r o m e t r i c d e t e r m i n a t i o no f t r a c ee l e m e n t s .Anal .C hem.,52,2283-2289. Houk,R.S .,Montaser ,A.a n dF a s s e l,V .A.( 19 8 3 ) :Masss p e c t r aandi o n i z a t i o n t e m p e r a 加r e si na na r g o n n i t r o g e ni n d u c t i v e l yc o u p l e dp l a s m a .A p p l .S p e c t r o s c .,37,425 ・ 4 2 8 . LandyM.P.a n dP e e l, D .A.( 19 8 1 ) :S h o r tt e r mf l u c t u a t i o n si nh e a v ym e t a lc o n c e n t r a t i o n s i nAn t a r c t i cs n o w .N a t u r e,291,1 4 4 1 4 6 . M u r o z u r n i,M.,Chow,T . J .a n dP a t t e r s o n,C .C .( 19 6 9 ) :C h e r n i c a lc o n c e n t r a t i o n so f po l 1 u t a n tl e a da e r o s o l s,t e r r e s t r i a ld u s t sa n ds e a s a l t si nG r e e n l a n da n dAn t a r c t i csnow s t r a t a .G e o c h i m .C o s m o s h i m .A c t a .33,1 2 4 7 1 2 9 4 . Ng,A.a n dP a t t e r s o nC .c.( 19 8 1 ) :N a t u r a lc o n c e n t r a t i o n so fl e a di na c i e n tAr c t i cand An t a r c t i ci c e .G e o c h i m .Cosmochim.A c t a .45,2 1 0 9 2 1 2 1 . O b a t a,H .,K a r a t a n i,H .a n dNakayama,E .( 19 9 3 ) :Automatedd e t e r m i n a t i o no fi r o ni n s e a w a t e rbyc h e l a t i n gr e s i nc o n c e n t r a t i o nandc h e r n i l u r n i n e s c e n c ed e t e c t i o n .Anal .C hem. 65,1 5 2 4 1 5 2 8 . Shimamura,T .,I w a s h i t a,M.,Takaku,Y .,Aka b a n e,, . 1 Tsumura ,A.a n dYamasaki,S . ( 1 9 9 5 ) :D e t e r m i n a t i o no ft h et r a c ee l e m e n t si naMi z u h oi c ec o r es a m p l ebyac o m b i n a t i o n o fc o n v e n t i o n a la n dh i g hr e s o l u t i o ni n d u c t i v e l yc o u p l e dp l a s m amasss p e c t r o m e t r y .P r o c . . lG l a c i o l,9,3 3 3 4 5 . NIPRS y m p .P o l a rM e t e o r o V a n d e l,G.M.,F i t z g e r a l d,W.F . , B o u t r o n,c.F.加 dC a n d e l o n e,J . P .( 19 9 3 ) :V a r i a t i o n s 35 i nm e r c u r yd e p o s i t i o nt oAnt a r c t i c ao v e rt h ep a s t34, 000y e a r s .N a t u r e,362,6 2 1 6 2 3 . Wolff ,E .W.a n dP e e l,D.A.( 19 8 5 ) :Th er e c o r do fg l a b a lp o l l u t i o ni np o l a rsnowa n di c e . N a t u r e,313,5 3 5 5 4 0 . Wolff , E.W.a n dP e e l,D.A.( 19 8 8 ) :C o n c e n t r a t i o n so fcadmium, c o p p e r,l e a da n dz i n ci n snowfromn e a rDye3i ns o u t hG r e e n l a n d .A n n .G l a d i o l .1 0,1 9 3 1 9 7 . 池川雅哉、木村美恵子、本多和人、巻田和男、本山秀明、藤井理行、糸川嘉則(19 9 7 ) : 南極雪中の微量元素 • B i o m e d .R e s .T r a c eE l e m e n t s .8,2 9 3 5 . 柴田康行(19 9 6 ) : 衛生化学領域における分析技術の最近のシンポシリーズ I I I、 I C P ) 発光分光分析法、 ICP質量分析法とその応用,衛生化 誘導結合プラズ、マ ( 8 5 4 01 . 学 , 42,3 1 9 9 4 ) :1章序論、1.4プラズ、マイオン源質量分析の歴史.プラズマイオ 中原武利 ( ン源質量分析,河口広司・中原武利編,東京,学会出版センター, p p 9 1 0 . (日本 8 ) 分光学会測定法シリーズ 2 渡辺興亜(19 9 6 ) : 南北両極域氷床への各種気候・環境示標物質の堆積フラックス の復元、平成 7年度科学研究費補助金研究成果報告書. 36 表2 -1)分析方法の比較 試料量多冗素同時 感度 ICP-MS p p t 可能 少 ICP-AES p p b やや多 可能 不可能 GFAAS s u b p p b 少 ~ア IDMS 不可能 p p t ' 前処理の簡便さ 簡便 簡便 やや複雑 複雑 表2 2 ) 濃縮方法の比較 濃縮率 操 作 性 汚 染 の 危 険 性 濃 縮 後 の マ ト リ ク ス ネブライザーやや高い 簡便 低い 低い 化学的 低い 複雑 高い 低い 蒸発濃縮 高い 複雑 高い 高い 樹脂カラム 高い 簡便 低い 高い 37 表 2・3 ) ICP-MS 測定条件 プラズマガス流量 プラズマ補助ガス流量 キャリアーガス流量 RFノてワー 1 6 . 0 L / m i n . 1 . 0 L / m i n . 1 . 0 L / m i n . 1210W f h U 汀H 0 0 3 8 IA 表2 5 ) MCN-6000測 定 条 件 スプレーチャンパー濃度 70C 脱溶媒濃度 1 6 0C スウィープガス流量 2 . 0 0 2 . 2 0 L / m i n 窒素ガス流量 11-12mL/min )OO α 寅 一 泊泊 ー と ハげは 恥29 使 7 ン ォ イ 類一一 一種=ザ め一ザイ 二一イラ 一ザ一ラブ0 一イ一ブネ∞ 一ラ一ネ波凶 2 0 3 0 0 . 0 1 O一 一 n 一 u や 一 何時一応 表2 4 ) ネフライザーの種類による信号強度と試料消費量 試料消費量 ( m L / m i n . ) 表2 6 ) MCN-6000・ICP-MS装置の検出限界 Al V Fe Cu Zn 濃度 ( p g / g ) 260 1 5 . 8 290 6 . 1 2 4 . 7 元素 39 S r Ag Cd Pb 1 0 27. 4 3 0 . 9 1 5 . 7 ﹂ υ ( octZ02.Fd図 階 特Soo Oωsuaoogω コ 日 ,EE------------------------ -EEa----------------------------------------E ﹀﹀ 志 ト OCEDEOECO一 cooo一 bZ C 一ω60aoo ω 。OCF) O芯 gco工 ﹀ 一oωφOOCEDEO2 ℃ ω 。 句 、 1¥ (ρoh)h V。 工 出比ト仏 刀 mw旬 ω回 。 ﹂ω N =コDOZI--申 v 。一己ε c ω 40 姻 •••••••••••••••••• 。 。 。 巳 D4 F 同軸ネブライザー脱溶媒膜付 コンセントリックネプライザ 超音波ネブライザー 95000 N 。 同 . . , e 、 . , . . . ; ∞ . t . . . . ー ロ + 4 . ぷ a ロ 9600 c s ・ 4 。 ロ ο ・ . . 4 r : / ) O 5 0 1 0 0 T i m e( s e c o n d ) 図2 2 .ネブライザーによる信号強度の比較 1 5 0 。 ∞ 戸 o Cコ 「 、 (0 e .の N図 戸 戸 。 N OFF ︿lN¥E ︿lN¥E ︿lN¥E UOU 門的 N ,.- FUOF 42 1 φ l 6 o 0 Cコ ONN ON 戸 。 門N 。門戸 C い制回毎 'h F O κ緩酬価制) コ 。寸N 。寸 c 、 』 (入ふ・・・什 Cコ N C LO OUN 。 山 戸 コ f l 山 。 OUF c") い入小 ムヘム れて代代ルドハb h ohF ﹂︿Z ヱ﹂︿ z コ tコ omF αコ ﹂︿﹂︿ Cコ 寸 。 。 z コ = z E z z OON OOF Cコ c 1 l OON OOF 。 白 Cコ F 0) ∞ 。 o ohF 『 、 、 hvh (tNG 眼側蹴川刊) ぃ鐙涯SH.寸fN図 ハもか入 a . . Mパルγ OFF L!) て才 σ3 。』 , ー ー ︿lN¥E OOF FooN ︿lN¥E Foω FOOF ︿lN¥E 。山N oou 43 OFN ONF o ONN 。門戸 o 。 門N 。寸戸 o 。寸N 。山戸 Cコ ouN OUF Cコ OCN コ iコ れて代 ﹂︿Z Z 〈 (0 C ム﹁ム F o αコ OON OOF omF ∞ 。 F ト 。 Cコ F r ﹂︿Z Z o Cコ αコ c . o コ O r O iコ 国晶画垣語ー- ー 寸 lN¥E ︿ コ o ζ コ 、 ︿lN¥E r ︿lN¥ε ω ouN よr-r-r 。 。 44 τ[ Cコ C O LD a . . . 亘亘垂主=呈語=呈亘忌=ーー 〈 . m d図 コ て OFN u Cコ ONN ONF o 。 門N 。門戸 ト』 ( 母Q 眼側剛川刊) F σコ 。寸N 。寸 て N F 〈 山剣勝。黙五円四c ムヘム れ ぞ 代 Mパル γ(燦 c b駒 o 山 。 。凶 L!) 。ωN OUF C 〉 (j) ! o . . . c . f , ) 3部:スパールパル・ウエストフォンナ氷帽中の環境変動に関する研究 1.はじめに 極域は熱源との間の大気大循環の収束域にあたり、地球上で発生した諸物質 が輸送・沈積するため、地球環境の変動観測にとって最適な場である O 近年に はグリーンランドや南極の氷床を掘削し採取した雪氷コアから過去の地球環境 を復元しそのメカニズムを解明しようとする研究が行われている O しかし、北 極雪氷圏はその大陸・海洋分布を反映して気候システムが複雑であるため、過 去の環境の復元、北半球雪氷圏の形成機構を解明するためには広域での観測デ ータを系統的に集め、解析することが必要であり、グリーンランド以外にも北 極カナダやロシアなどでいくつかの観測が行われている O スパールパル諸島は グリーンランドの近くに位置しながら、その上に極前線がありグリーンランド とは異なる気象条件下にあると考えられ、これまでもいくつかの研究が行われ てきた。 スパールパル諸島での氷河の研究は、過去 80年間の氷河質量収支と降水量、 H a r g e ne ta 、 . l 1 9 9 3 ) に代表されるよう 気温の関係を詳細に研究した Hargenら ( に氷河の質量収支に絡めた研究が多く成されてきた。氷コア中の含有成分を取 u j i i( F u j i ie ta 、 . l 1 9 9 0 ) 、Azu ma (Az umae ta 、 . l 1 9 9 3 ) 、五十嵐 り扱った研究は F 9 9 5 ) などがある o F u j i iはスピッツベルゲン島ヘークヘッタ氷帽に (五十嵐、 1 おいて 85m深の氷コアを採取し、その融解させた溶液試料の電気伝導度、 pHの 測定から過去におきた火山噴火の歴史や、近年の大気の酸性化を復元した。 umaはスピッツベルゲン島北西部のブレッガー氷河の j 函養域、消耗域で夏季 Az と冬季の積雪表層の採取をし、その融解サンプルの化学成分分析を行い、夏季 の融雪期の化学成分の流出を明らかにした。五十嵐はスピッツベルゲン島オス ゴルド氷河で採取された氷コア中の化学成分プロファイルから、融雪水による 化学成分の移動モデルを提唱した。 45 3部ではスバールバル諸島の中でも比較的寒冷であり融雪水による成分移動 が少ないと考えられる北東島ウエストフォンナ氷帽で掘削を行い、採取された ・ 2部で確立した測定法で金属成分を測定し、 氷コアに含まれる化学成分や l部 そのプロファイルから北東島氷帽の環境変動を考察した。 2 .実験 2 -1.試料 1 9 9 5年 5月から 6月にスパールパル諸島北東島ウエストフォンナ氷帽頂上(北 ∞ 緯 79度 5 8分、東経 2 1度 02分、標高 6 m) (渡辺、 1 9 9 6 ) おいて氷河掘削を 主とした観測を行った o ( 図3 1, 3 2 ) この観測で浅層エレクトロメカニカルド リルで氷帽掘削を行い表層から 210m深までの連続した氷コア試料を得た。採取 した氷コア試科は次項に示す項目について解析を行った後、スピッツベルゲン 島北部ニーオルスンにある観測基地内の低温室で保管し、その後適宜解析を行 った。また、ドリル孔近傍において 2.2m深の積雪断面観測を行い試料採取を行 った。 2 2 .現場観測 2 2 -1.氷コアの現場解析 氷コアは掘削採取された後、掘削点近傍に設置された解析室でコア長測定、 バルク密度測定、目視層位記載、雪の粒径測定、気泡径測定、気泡形状観察を 行った O 解析の後、氷コアはポリエチレン袋に密閉し、輸送時まで雪中で冷凍 保存した。 2 2 2 .積雪断面観測 積雪断面観測では目視層位記載、密度測定、粒度測定と 5cm間隔での試料採 4 6 取を行った。試料はポリエチレン袋に採取し、袋を二重にして湯煎によって融 解したのち、洗浄済みのポリプロビレン瓶にいれて冷凍保存した。 2 3 .一般分析用氷コア融解方法 氷コア試料をバンドソーで鉛直方向に二等分し、そのうちの一つを鉛直方向 の長さが1O ~15cm になるように水平方向に切断した後、ポリプロピレン製の融 解用容器にいれ、電子レンジで少量融解させてから捨てることで、掘削時やバ ンドソ一切断時にコアの外面に付着した汚染を除去した後、電子レンジで完全 に融解させて溶液試料を調製した。溶液試料はポリプロピレン瓶にいれて保存 、 した。この溶液試料は化学主成分濃度、酸素同位対比、 トリチウム濃度、 pH 電気伝導度の測定に使用した。氷コアの融解及び溶液試料の保存に使用した器 具、容器はすべて MQW( M i l l i p o r e、18MQ) 中で超音波洗浄したもの使用した。 鉛直方向に切断した氷コア試料の残りは観測終了時までポリエチレン袋に入れ 雪中で保存し、観測終了後ニーオルスン観測基地低温室にて冷凍保存した。 2 4 . p H、電気伝導度の現場測定 現場で調製した溶液試料の一部を使い、電気伝導度と pHを測定した。電気伝 導度の測定には電気伝導度計(カスタニー E S 1 2:堀場社製)を使用した。電気 . 5 % F . S .で、ある o pHの測定には pHメータ(カスタニ 伝導度計の計器再現性は:tO 13:堀場社製)を使用した o pHメータの精度は:tO . O l p Hである O 一D 2 5 .氷の固体電気伝導度測定 氷の固体電気伝導度 ( ECM;E l e c t o r i c a lC n d u c t i v i t yM e t h o d ) はニーオルスン観測 0 基地内に設置された低温室内 ( 2 0C) で測定した。化学主成分分析用の試料を 採取した際に鉛直方向に切断して残った氷コア試料の表面をマイクロトームで 47 ∞o vの電圧をかけたときの電流 削って現れた新鮮な面に lcm幅で電極をあて 1 値を ECM強度ととして測定した。検出した電流値は XYプロッターで記録紙に 記したのち、デジタイザーで lmm間隔で取り込み直して数値化した。 2 6 .トリチウム測定 溶液試料中のトリチウム濃度の測定は新潟大学において、液体シンチレーシ k a社製)で測定した O ヨンカウンター (LSC-LB1:Alo 2 7 .化学主成分測定 溶液試料中の化学主成分(陽イオンはナトリウム、カリウム、カルシウム、 マグネシウムイオン、陰イオンは塩化物、硝酸、硫酸の各イオン)はイオンク i o n e x社製)で測定した O ロマトグラフィーシステム (DX500:D 陽イオンの測定条件を表 3・1に示す。 o n P a cCS-14とガードカラム I o n P a cCG1 4は D i o n e x社製のカラム 分離カラム I 同 でピニルベンゼン系ポリマーにカルボン酸を修飾した粒径 8μmの樹脂を 4X 250mmのカラムに充填したもので交換容量は 1 . 3 m e q / co lumnである。電気伝導度 D i o n e x社製)を使用し、セル長は 6mm、セル容量は 7.5μLであ 検出器は CD20( るO 陰イオンの測定条件を表 3 2に示す。 o n P a cAS-llとガードカラム I o n P a cAG-12は D i o n e x社製のカラム 分離カラム I でピニルベンゼン系ポリマーに 4級アルカノールアミン基を修飾した粒径 13μm の樹脂を 4X250mmのカラムに充填したもので交換容量は 45μq/columnである。 D i o n e x社製)を使用し、セル長は 6mm、セル容量は 電気伝導度検出器は CD20( 7.5μLである O 測定に使用した溶離液、サプレッサ一再生液、標準試料の調製に使用した純 48 水はすべて MQWを使った。測定に使用した容器、器具類は陽イオン用は lN塩 酸で洗浄してから、陰イオン用は MQWで洗浄した後、さらに MQW中で超音波 洗浄したものを使用した。 2 8 .酸素同位体組成測定 溶液試料の酸素同位体組成は質量分析計(De l t aE :F i n n i g a nmat製)で、行った。 2 9 .微量金属元素濃度測定 2 9 1 .器具と容器の種類と洗浄法 N a l g e n社製)を使用した。瓶は 溶液試料の保存には低密度ポリエチレン瓶 ( デ 7 o E x t r anMA (Merck社製)、 4M硝酸にそれぞれ 24時間浸した後、加熱した 1% 硝酸、加熱した MQWでそれぞれ洗浄してから使用した。 氷試料の融解にはテフロン製の容器使用した D テフロン容器は表面をアセト ンで洗浄した後、 4M硝酸中に 1週間浸し MQWで洗浄した後、少量の濃硝酸加 え 1時間加熱した後、 MQWで注ぎ、 MQWを少量入れ 1時間加熱した後、 MQW で洗浄してから使用した。 溶液試料中の金属元素の安定のための酸を添加する際に使用するマイクロピ ペットのチップは市販のポリプロピレン製のものを 5%Extran、4%塩酸、 MQW でそれぞれ 1時間ずつ加熱洗浄じたものを使用した。 2 9 2 .融解方法 微量金属元素測定用の試料は ECMを測定した後の氷コア試料から採取した。 低温室内で、任意の氷コアを約 50gなるように水平方向にバンドソーで切断し た後、低温室内に設置した簡易クリーンベンチ内でセラミック包丁を使い、汚 染されている試料の外側を削り落としポリプロビレン製容器に入れた。容器に 49 入れられた氷試料を約 -5tに暖めた後、ポリプロビレン製の網の上で MQWで洗 浄した。洗浄した試料をテフロン容器移して室温で約 20g融解させ、融解した 部分を捨て、国体試料部分を別のテフロン容器に移した。テフロン容器内で溶 解させて別のテフロン容器に移す操作を 2度繰り返した後、テフロン容器内で 完全に融解させ、低密度ポリエチレン瓶に移し、超高純度硝酸(関東化学)を 1%添加して溶液試料とした。融解に関する全ての操作は通常実験室内のクリー ンベンチ内で行い、試料を別の容器に移すときは、直接試料には触れず、傾潟 して移した。 2 9 3 .測定方法 検出器には ICP-MS (HP4500:横河アナリテイカル社製)を使用した。ネブラ イザーシステムは脱溶媒膜付マイクロコンセントリックネブライザー (MCN-6000:CETAC社製)を使用した。それぞれの測定条件を表 3 3、3 4に 示す O プラズ、マガス及びキャリアーガスには B級純度のアルゴンガス、 MCN-6000 の窒素ガスは A級純度のガスを使用した。 測定対象元素と測定質量数は、アルミニウム 2 7、鉄 5 7、銅 6 3、亜鉛 64、鉛 2 0 8とし f こO 定量方法は絶対検量線法で、行った。標準試料は C u s t o mM u l t i e l e m e n tS t a n d a r d XSTC13 (SPEX社製)を非沸騰水で、希釈し、超高純度硝酸を添加して 1%硝酸溶 液として調製した O 試料測定時は信号強度の変化をモニターするため 1試料測 0 0 p p tの標準試料を測定して補正した。測定は l試料あたり 5回行い、 定毎に 5 信号強度の RSD値が 10%以上のものは無効とした。 2 1 0 .データ処理 50 非海塩性 ( n s s:nons e as a 1t )物質の濃度は海水の平均濃度組成 (Wilson、1975) から以下の換算式によって求めた。 n s s [ S 0 4 2 -]=[S042-] 0 . 1 2X[ N a + ] N a + ] nss[Ca2+] = [ C a 2 + ]ー0.022X[ 非地殻起源 ( e x: e x c e s sM)の金属元素の濃度は地殻の平均組成 ( T a y l o r、1 9 6 4 ) から以下の換算式で求めた。 [ e x P b ] = [ P b ] [ A l ]XO.00015 A l ]X0 .00067 [ e x C u ] = [ C u ] [ [ e x Z n ] = [ Z n ] [ A l ]X0.00085 3 .結果 3 -1.表層の堆積環境 積雪断面観測で観測された層位構造を図 3 3 aに示す。観測時期は 6月上旬で、 夏季の融雪が始まる前であり、 o""'90cmがしまり雪層で 20cmと 75cm付近にし 0 c m 以深はザラメ雪層が続き、 まり雪層の境界部にザラメ雪の薄層があった。 9 0 c m付近から約 lcmの薄い氷板がいくつかあり、 2.2m以深は厚い氷板が観測 1 6 された。 次に 5cm毎の密度と総水当量を図 3 3 b、C に示す。密度はざらめ層では 300kg/m3台の値を示すが、ほとんどは 4 0 0 " " '500kg/m3の範囲内の値を示した。 5cm毎に採取した溶液試料の O180、電気伝導度、 pHの深さ分布を図 3・4に示 、 75cm : i 菜 、 120cmi 菜 、 165cm深に 4つのピ す 。 O180は 2.2mピット中に 25cm深 ークを示した。電気伝導度は 165cm深のピークを除いて O180のピークと同じ層 にピークを示した。その時の pHは極小値を取った。 165cm深付近は 2μS/cm以 下の低い電気伝導度を取り、その時の pHは 5 . 5以上と高かった。 6に 各陰イオン濃度の深さ分布を図 35に、各陽イオン濃度の深さ分布を図 3 ・ 5 1 示した。海塩性成分であるナトリウムイオン、塩化物イオンはほぼ同じ変動を 2 0 c m 深と 3 0 4 O c m 深にピークを示した。マグネシウムイオン、カリウ 示し、 1 ムイオンもほぼ海塩性成分と同様の変動を示した。硫酸イオンは海塩性分と同 c m 深にピークを示した。硝酸イオンは他の成分がピーク 様のピークに加え、 20 2 0 c m にはピークを示さず 75cm深にピークを示し、 0 2 O c m 深は 2μM を示す 1 と一定して高い値を示した。陸性物質の指標とされるカルシウムイオンは 40cm 深と 1 0 0 c m 深にピークを示した D 塩化物イオンとナトリウムイオンのモル濃度比を図 3 7 aに示した。 濃度比は [ C l -] / [ N a + ] =1 . 1 7を示した。ナトリウムから算出した非海塩 海水とほぼ同じ値 ( cに示した O 非 性硫酸と、非海塩性カルシウムの濃度のプロファイルを図 3-7b, 0 8O c m 深にピークを示し、非海塩性カルシウムは 40 c m、 海塩性硫酸は 20cm、6 1m深にピークを示した。 3 . 2氷コア解析 3 2 -1.密度 8に示した。 100m以深は測定がなされていないが 氷コアのバルク密度を図 3 100m以深は全て氷の層であり密度は一定であるとして 5 0 1 o o m深の変動から 算出して堆積水当量を求めて、以下の考察に使用した。 3 2 2 .トリチウム 9に示す。トリチウム濃 氷コア中のトリチウム濃度の深さプロファイルを図 3 度は 15.3m深にピークを示した。 3 2 3 .電気伝導度と pH 氷コア溶液試料の電気伝導度と pHの深さプロファイルを図子 1 0に示す。電 52 気伝導度、 pHとも掘削現場で測定したため、 pHは 130mまでしか測定されなか った。電気伝導度は 6m深に 40μS/cmを越えるピークを示した。また、 88m、100m、 164m深付近にも 20μS/cmを越えるピークを示した。全体の傾向としては 1 白n以 深では前にあげた 3つのピークを除いて 0 1 5 μ S / c mの範囲内の変動に収まって いるが、 2m深から表層にかけて増加する傾向が読みとれる。 pHは 88m深付近の電気伝導度のピークと対応する深度に pH4.5の極度に低い 値を示した。他の電気伝導度と対応する深度は欠測していて比較することがで きないが、これらのピークは火山性の酸性分によるピークであることが考えら れる o 30mから 10mにかけ、浅くなるにつれて pHが低くなり、 10mからは浅 くなるにつれ pHが高くなる傾向が見られる O 通常、現代になるにつれ降水が酸 性化していることが指摘されているが、逆に pHが高くなるという興味深い結果 となった。 32-4.ECM測定 ・ ECMの測定結果を 3 1 1図に示す。電気伝導度でもピークを示していた 86m深 付近と 100m深付近にピークを示した。 ECMの強度はプロトン濃度を強く反映 しているので (Hammer,1 9 8 3 ) 、火山から放出された硫酸や塩酸によって 86m と 100m深にピークが生じたと考えられる o 15m1 0 m深にかけて浅くなるにつ れ強度が増加し、 10m以深では浅くなるにつれ強度が減少しており、 pHが高く なる傾向と対応している O 3 2 5 .化学主成分濃度 1 2に、陰イオン濃 氷コア溶液試料の陽イオン濃度の深さプロファイルを図 3 1 3に示す。化学主成分濃度の測定は氷コア 5 0 cm 度の深さプロファイルを図 3 につき1O1 5 c mの割合で試料を部分的に採取して測定した。図 3 1 4には塩化 53 物イオンとナトリウムイオンのモル濃度比、非海塩性硫酸、非海塩性カルシウ ムの深さプロファイルを示した。 硝酸イオン濃度が 30m深から 10m深にかけ増加し、 10m深から 2m深にかけ て減少している O また、非海塩性硫酸イオン濃度も 20m深から 12m深まで増加 し 、 2m深にかけて減少している O 硝酸と硫酸は酸性分の主成分であるので、こ の 2成分のフラックスの変動が 30mから表層までの pHの増減の要因となって いることがわかる O また、非海塩性カルシウム濃度が 10mから浅くなるにつれ 増加しており、陸域からの陸起源物質のフラックスが増えその中和作用によっ て pHの増加を引き起こしたと考えられる。 塩化物イオンとナトリウムイオンの濃度比は海水の比に近い値を示し、全層 に渡って大きく変動していない。この地域は不凍海域に近く、そこからの水蒸 気の供給が多く、過去数百年にわたって輸送環境が変わっていないことが分か るO 非海塩性硫酸のプロファイル中に 88m深付近と 95m深付近に 10μMを上回る ピークがあり、 pHや電気伝導度のプロファイルの結果をふまえると火山活動か ら噴出し供給された硫酸によるピークであると考えられる口 3 2 6溶存微量金属元素 1 5に示す。 30m深付近に アルミニウム、鉄の濃度の深さプロファイルを図 3 アルミニウム濃度で 40ppb、鉄で 60ppbを越えるピークが表れているが、それ以 外は表層から 200m深までほぼ一定の値を取っている o 0 図3 1 6に銅と亜鉛と 鉛の濃度の深さプロファイルを示す。 3元素とも 100m以深では大きな変動がな いが、亜鉛と鉛が 20m以浅から増加している傾向が読みとれる O 4 .考察 54 4 -1.季節変動 18 0 0のピークは 2 0 c m、70 c m 深の薄いざらめ雪層、 1 2 0 c m 深のこしもざらめ雪 18 層としもざらめ雪層の境界に対応した。通常 0 0のピークは夏季にピークを取 0 cm 深までしまり雪層が続いており、この雪 る季節変動を示すのだが、雪層は 9 c m と7 0 c m 深のピーク 層は去年の冬季の積雪の可能性が高い。そうすると、 20 は、冬季に何らかの理由で暖かい降水があった可能性が考えられる。スパール パル諸島は冬季で、もグリーンランドの東側を海沿いに低気圧が入ることがあり、 c m、7 0 c m 深のざらめ層に含まれる塩化物イオン、ナトリウムイオンも また、 20 高い値をしめしていることから、低気圧の流入によってイベント的に暖かい降 18 0 のプロファイルはイベント的な天候に支配されてい 雪があったといえる。 0 18 0 による季節及び年層の同定はできないということである O るということは、 0 18 165cm以深の 0 0 のピークは形が崩れており、電気伝導度や化学主成分濃度 も低い値をしめしているが、これは夏季の融雪による含有成分が移動した可能 2 0 cm までが l 性を示している O ということは、成分が比較的保存されている 1 シーズンだと考えられる O 1 20 c m 深までの各化学主成分のプロファイルを比較すると、塩化物イオン、ナ 18 0 のピークとほぼ同じ トリウムイオン、硝酸イオン、非海塩性硫酸イオンが 0 18 0 と同じ深度に下向きのピ か少し深いところにピークを示している o pHも 0 ークを示した。これは、冬季に低気圧が流入するときに海塩性分が運ばれてく るのに加えて、人間活動から放出される硫酸、硝酸も運ばれてきているという ことである O つまりこの地域は極域に位置しながらも人間活動域から大気が輸 送され、直接的な影響下にあると示唆される O また、非海塩性のカルシウムイ 18 0の低いときにピークを示したことから、高気圧が発達したときにド オンは 0 ライフォールアウトによってもたらされていると考えられる O 55 4 2 .氷コアの年代決定 氷コアの年代は特定の年代を示す示準層を使って決定することができる O 今 回掘削された氷コアは 400~500 年前までを含んでいると予想されるため示準層 としてトリチウムと火山を利用することができる O トリチウムは核実験から放出されたのであるが、 トリチウムは水蒸気として 挙動するため北極では大気中に放出されてから約1.5年遅れた 3月ころに極大 値を示す ( K o i d ee ta , . l1 9 8 2 ) 0 スピッツベルゲン島で掘削されたコアには 1 9 6 1 ~1962 年の大気圏核実験に対応したピークが 1963 、 1964 年に現れている。 (F吋 11 a ta , . l1 9 91)今回のウエストフォンナの氷コアからはこの深度では時間分解能の よい溶液試料を得ることができなかったため 1 5 . 3: t0 . 7m深のピークを 1 9 6 3年と 5. 3 : t0 . 7m 深の積算水当量は 1 1 . 3: t0 . 6 (mw a t e re q ) なので年平均堆積 同定し、 1 . 3 5 3: t0 . 0 1 9 (mw a t e re q . y e a r -1) と算出された。 量は 0 規模の大きな火山活動や規模は大きくなくても高緯度にある火山活動は氷コ ア中に火山シグナルとして記録される O 今回の観測では ECM、電気伝導度、非 海塩性硫酸イオン、 pHに火山性と思われるシグナルが検出された。 ECMプロファイルには 9.969m、86.68m、1 01 .093m、1 6 4. 45mにピークカ対食出 され、細かいピークも数多く検出された。電気伝導度も同様に細かいピークが 01 .093m、1 6 4. 45m深のピークに相当す 多く検出され、さらに ECMの 86.68m、1 る大きなピークが検出された。 pHは 86.68m深に pH4.5の低いピークを示し、 61 .21m、76.04m深にも小さいピークを示した。 Eα4でピークを示したところ測 定がなされておらず、比較することができない。非海塩性硫酸イオン濃度は 12.169m、8 6. 429m、95.16m、 1 79.133mに大きなピークを示したが、電気伝導度、 ECMがピークを示した 102m付近にはピークを示さなかった。過去の GRIPでの 1 8 6 1 ) 、L a k i( 17 8 3 ) 、Unknown 観測では過去 600年間に年代決定に Tambora ( ( 1 6 0 1) 、 Unknown ( 1 4 7 7: t2 ) の火山シグナルを利用した ( J o h n s e ne ta , . l1 9 9 2 )0 56 また、藤井(藤井, 1 9 9 3 ) はグリーンランド S i t e Jコアの溶液試料の電気伝導度 プロファイルから詳細な 200年間の火山性シグナルの同定を行った。これらの データと比較してみると、ウエストフォンナ氷コアに明瞭に読みとることがで 3m であるので、年平 きるのは 86.68mに見られる L北 iである O 水当量深度は 73. . 3 4 7と算出された。 均堆積量は 0 本来、氷コアの年代決定をするときには、明瞭でない火山ピークも含めて慎 重に行うべきであるが、本研究ではデータが不十分であるためトリチウムピー . 3 5 (mw a t e re q . y e 訂ー 1 ) を年 クと L北 i火山性ピークのみを指標として得られる 0 平均堆積量として、氷コアの作業年代を決め、以下の考察を行う O 4 3 .経年変動 1 7に硝酸と硫酸の濃度の移動平均分布を示す。移動平均値は 1 1測定点を 図3 平均した。年代軸は前項で決めたコア年代である O 硝酸は石油の燃焼から、硫 9 5 0年から 1 9 7 5 酸は石炭の燃焼から放出される物質である O 硝酸、硫酸とも 1 年にかけて濃度が上昇し、その後減少していることが分かる O この傾向は戦後 の産業の発達にともなう大気汚染の増加と公害対策による減少とよく一致した 結果となった。 1 8に銅、亜鉛、鉛の濃度の移動平均分布を示す。移動平均値は 5測定点 図3 の平均である O この 3元素も非鉄金属の精錬などの人間の産業活動から放出さ れるものである O また鉛は有鉛燃料の燃焼によっても放出される o 亜鉛、鉛の 9 5 0年から 1 9 7 5年にかけて増加し、その後減少す 濃度は硝酸、硫酸と同様に 1 9 7 0年代半ばをピークに減少して る傾向を示した。鉛は有鉛燃料が規制される 1 いるのがよく分かる O また、亜鉛の濃度変化はグリーンランド・サミット積雪 C a n d e l o n ee ta , . l1 9 9 5 ) 0 銅の濃度は亜 中の濃度分布と非常に似た挙動を示した ( 9 7 5年にピークを示しているが、異なった濃度分布を示してい 鉛や鉛と同様に 1 5 7 るO この原因としては銅を放出する産業、もしくは地域が異なること、地殻起 源物質の影響が大きいことなどが考えられ、大気輸送過程や放出源などを含め た詳細な調査を行う必要がある O 4 4 .大気輸送 図3 1 9にアルミニウムと鉄の濃度の移動平均深さ分布を示す。現在から 1 5 0 0 年にかけて大きな変化は見られない。図 3 2 0にアルミニウムと鉄の濃度の相関 を示す。非常によい相関を示した。またアルミニウムと鉄の濃度比は1.7であり、 地殻の平均組成比 0 . 7 5と比べて鉄が多く含まれている D このことは約 500年間 限定された地域からの地殻成分の供給を受けていたことを示唆している O 図子2 1にアルプス・モンプランの積雪中のアルミニウムと鉄の濃度比 ( B o t i f o l a n dB o u t r o n,1 9 8 4 ) とグリーンランド・サミットのエアロゾル中のアルミニウム と鉄の濃度比を示す ( B o u t r o ne ta , . l1 9 9 3 ) 。グリーンランドは積雪中の鉄のデ ータは測定されておらず単純に比較はできないのだが、エアロゾル中の濃度比 は地殻の平均組成に近い。それに対し、モンプランの積雪中の濃度比はウエス トフォンナの濃度比とほぼ同じである o つまり、スパールパルに輸送される大 気はグリーンランドからではなくヨーロッパからであると考えられる O そして、 モンプランに供給される地殻成分の起源はサハラ砂漠であるとされていること から ( B o r i f o la n dB o u t r o n,1 9 8 4 ) 、サハラ砂漠のダストがスパールパルまで輸送 されている可能性も示唆される O 図3 2 2にウエストフォンナ氷コアとグリーンランド・ダイスリー降雪とモン プラン表面積雪に含まれる鉛、亜鉛、銅の濃度比を示す。ウエストフォンナ、 モンプランは低い銅の含有比を示すが、ダイスリーの銅の含有比は一定でない。 このことから、人間活動から放出される物質もウエストフォンナはヨーロッパ から供給されていることが分かる D 58 スパールパルがグリーンランドではなくヨーロッパからの大気輸送の影響を a h nらが気象条件から示した、汚染エアロゾ 大きく受けているということは、 R ルの輸送経路のうち、ヨーロッパからの影響が北米からの影響よりも大きいと いうことを示している O 本研究では地殻成分として鉄とアルミニウム、大気汚染成分として鉛、銅、 亜鉛しか調査しておらず、しかも溶存態しか測定対象としていないため、大気 輸送経路及ぴ汚染源を特定するためにはデータが不十分である O 今後は測定対 象元素を増やし、また固体微粒子に含まれる成分も測定することが課題である O 5 .まとめ 3部では、複雑な大陸・海洋分布を反映した北極雪氷圏の気候システムを解明 するために必要な広域観測データのーっとして、スパールパル諸島北東島ウエ ストフォンナ氷帽を選ぴ、そこで 210mの氷コアの掘削を行い、コアに含まれた 化学成分や、第一部で確立した方法によって測定した金属元素分布から環境変 動を試みた結果以下のことが明らかになった。(1)氷コア中に検出された、火山 . 3 5 (m 性シグナルとトリチウムシグナルから算出した結果、年平均堆積量を 0 w a t e re q . y e 訂ー 1 ) である o ( 2 )スパールパル諸島には冬季に低気圧が流入し、それ によって人間活動によって放出される酸成分や金属元素が供給される o ( 3 )1 9 5 0 年以降、産業活動による大気汚染が増加し 1 9 7 5年をピークに公害対策によって 大気汚染が減少した。 ( 4 )スパールパルには主にヨーロッパから大気が輸送され、 北米から大気が輸送されるグリーンランドとは異なる気象条件下にスパールパ ルはある O 6 .参考文献 Azuma,G .K . , E n o m o t o,H . , T a k : a h a s h i,S .,K o b a y a s h i,S .,Kameda,T .a n dW a t a n a b e, 5 9 O .( 19 9 3 ) :Lea c h i n go fi o n sfromt h es u r f a c eo fg l a c i e r si nw e s t e r nS v a l b a r d .B u l l e t i no f G l a c i e rR e s .,1 1,3 9 5 0 . 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F吋i,Y .,Kamiyama ,K . , Kawamura ,T .,Kameda,T .,I z u m i,K .,Satow,K .,Enomoto, H .,Nakamura, T .,Hagen,J . O .,G j e s s i n g,Y.andWatanebe,o .( 19 9 0 ) :6 0 0 0 y e紅 c l i m a t er e c o r d si na ni c ec o r efromt h eH o g e t t ai c edomei nn o r h t e r nS p i t s b e r g e n .Annof , . l1 4,8 5 8 9 . G l a c i o Hagen,J . O .,L i e s t o l,0 .,Roland,E .andJ o r g e n s e n,T .( 19 9 3 ) :G l a c i e ra t l a so fS v a l b a r d a n dJ a nMayen,NorskP o l a r i n s t i t u t t,Brekke,A.( e d ),141pp J o h n s e n,S . J .,C l a u s e n,H . B .,D a n s g a a r d,W.,F u h r e r,K . , G u n d s t r u p,N .,Hammer, C . U .,I v e r s e n,P .,J u z e l,J .,S t a u f f e r,B .加 dS t e f f e n s e nJ . P .( 19 9 2 ) :I r r e g u l a rg l a c ia 1 i n t e r s t a d i a l sr e c o v e r e di nanewG r e e n l a n di c ec o r e .N a t u r e,359,3 1 1 3 1 3 . T a y l o r,S . R .( 19 6 4 ) :Abundanceo fc h e m i c a 1e l e m e n t si nt h ec o n t i n e n t a 1c r u st :anewt a b l e . G e o c h i m .Cosmochim.A c t a,2 8,1 2 7 3 1 2 8 5 . W i l s o n,T .R .S .( υ 1 切 97 5 幻 ) :Sa 1i n i t ya n dt h em a j o re l e m e n t so fs e aw a t e r加 i n O c e a n o g r a p h y "e d i t e dbyJ . P . R i l e ya n dG .S k i t t o w,Vol 1 ,p p365-413,AcademicP r e s s, London 五十嵐誠 ( 1 9 9 5 ) : スパールバル亜極地型氷河における堆積環境指標シグナルの 特性に関する研究、総合研究大学院大学学位論文 60 藤井理行(19 9 3 ) : 氷河・氷床化の年代決定.第四紀研究, 3 4 ( 3 ),1 5ト 1 5 6 . 6 1 表 3・1)陽イオン測定条件 分離カラム I o n P a cCS-14 ガードカラム I o nP a cCG-14 溶離液 7 m MMSA 流量 1 . 0 m L f m i n . サプレッサー CSRS-I (リサイクルモード) 検出器 電気伝導度検出器 サンプルループ 笠且L 表3 2 ) 陰イオン測定条件 I o n P a cAS-ll 分離カラム ガードカラム I o nPa cAG-ll 溶離液 EI:H20, E2:5mMNaOH, E 3 :100mMNaOH グラジエント 時間 ( m i n . ) El(%) E2(%) E3(%) o 90 1 0 0 1 .6 90 1 0 0 4 0 1 0 0 0 6 0 1 0 0 0 1 3 0 6 5 3 5 2 . 0 m L f m i n . 流量 サプレッサー ASRS-I (エクスターナルモード) 検出器 電気伝導度検出器 サンプルループ 笠血L 6 2 表 3・3 ) ICP-MS測定条件 プラズマガス流量 プラズマ補助ガス流量 キャリアーガス流量 RFノ〈ワー 測定ポイント 積分時間 測定繰り返し回数 1 6 . 0 L j m i n . 1 . 0 L j m i n . 1 . 0 2 L j m i n . 1240W lamuあたり 3点 1ポイントあたり 0 . 5手 少 5回 表3 4 ) MCN-6000測定条件 スプレーチャンパー温度 70C 脱溶媒温度 1 6 0C スウイープガス流量 2 . 0 8 L j m i n 窒素ガス流量 llmLjmin 0 0 6 3 180。 。 ωO M吋0. 。 。 図3 -1.スバルパール諸島 6 4 ウエストフォンナ観測地点 F 〆ロ 8 ノノ -n , 団 /a 吋 / V, l- ,1i 、 I1 L I l i 、 19S ・ N'ill L 、良川 、t ・ ﹂山崎 4FV 轟 a v J RIB-tlI'11 MVM SUA 但 〆 〆 JOG . , 93 . 0 a ・ 1 1 1 1 / /4 ・ 11111111111111111lili--- m Id陥 ぃ“ K- --d. 一 1十l L 」 。 JMAV 8白 ・ ト b S 咽帥円、 76 タ 76 ・ 1 ‘ 一一 一 JANMAYEN ・ SVALBARD 8. 軒 酬b f ' ! 9・イ 2271 7 1 。 'OO~.m B 。断的問 ・ 15 " u s rGREEHWICH ・ 苫0 2~・ NOF lSI ( POLA l ' I l N$TITUTT 図3 2 .ウェス トフォンナ観測地点 6 5 W a t e re q u i v a l e n t( m ) ハU ハU f o 今‘d , ' ‘ 、o m J J u v Jハu 4 b‘ EA &EL c d n u ハU 日開 •• . •• •• nU 0 . 0- v d 、 ‘ , , . nα , ﹁ 民2 、 、 ‘ , , , hu a ) o 。 0 . 2 5 0 . 5 0 . 7 5 O . ・ ・ 0・・・・・-0・・・・・ 0・ ・ ・ E三 ヨ . / i 氷板 0 . 5 ヨ 豆 コ 0 . 5 0 . 5 0 -吋3・・・・・ 0・・・ しまり雪 ハU (呂)召己ω凸 1 . 5 0 一︿⋮︿⋮ 0 ⋮ こしもざらめ雪 ︿ ⋮︿⋮︿一 0 ⋮ 巨 ヨ コ 口 ( E )音色ω凸 口 1 .0 1i ••• • • •• •• • •• • • •• •• • ••• • 一 4EE n u O一 め 一 ]雪 • 1 .5 1 .5 2 . 0 2 . 0 ロ , ^ ] 霜ざらめ雪 O 卒。 o 豆0 立 O 八玄︿一︿ 2 . 0 /¥ O 図3 3 .ウエストフォンナ氷帽スノーピット観測結果 a )層構造、 b )密度、 c )積算水等量 6 6 ,f 、1. hu H ハ U 1 .0 1 80( % 0 ) 2 1 2 t u 0 . 0 1 0 1 5 1 6 1 1 0 . 5 ハU 1 .0 5 c ) Ei 0 . 5 E .c .(μS/cm) 唱 0 . 5 ハU 5 . 5 ハU 4 . 5 0 . 04 Pコ J ム a ) ( E ) FQ 阿古門 ( E ) Z E ω凸 ( 日 ) £ 仏 ω凸 1 .5 1 .5 1 .5 2 . 0 2 . 0 2 . 0 2 . 5 2 . 5 2 . 5 図3 4 .ウェス トフォンナ氷帽スノーピット観測結果 a )pH、b )電気伝導度、 c )酸素同位対比 67 C l ( 凶1 ) 0 0 . 0 50 1 0 0 1 5 0 。 N 03・μ (M) 234 5 。 S042恥1 ) (ド 2 4 6 8 0 . 5 1 .0 ( E ) Z E ω凸 1 .5 2 . 0 2 . 5 、 陰イオン濃度分布 図3 5 .ウエストフォンナ氷帽スノーピッ ト 6 8 Na+(μM) 0 50 1 0 0 1 5 0 。 凶1 ) K+( 1 2 3 。 Mg2+ ( 凶1 ) 5 10 1 5 2+ Ca ( 凶1 ) o0.5 1 1 .5 2 2 . 5 0 . 0 0 . 5 1 .0 ( E )召仏ω凸 1 .5 2 . 0 、 陽イオン濃度分布 図3 6 .ウエストフォンナ氷帽スノーピッ 卜 69 [ C I ] / [ N a ] 0 0 . 5 1 1 . 5 2 。 nssS042 ・(酬) 1 2 3 4 5 6 。 nssCa2 + ( 凶1 ) 0 . 5 1 1 .5 0 . 0 0 . 5 ハU -Ei ( E ) Z E ω凸 1 .5 2 . 0 図3 7 .ウェ支トフォンナ氷帽スノーピット a )[ C I ] / [ N a、 ] b )非海塩性硫酸濃度、 70 c )非海塩性カルシウム濃度 WaterEquiva 1e n t( m ) o 20 40 60 80 100 O 11 ハU 今,ム司 ハU 3A ハU 斗寸 ハU 55O ~ E60 70 8 0 90 1 0 0 1 1 0 o 250 500 750 1 0 0 0 D e n s i t y(kg/m3) 図3 8 .ウエストフォンナ氷帽氷コア a ) .バルク密度、 b )水当量深度 T .u . o 1 0 0 200 3 0 0 0 5 1 0 ~15 520 52 5 f r 3 0 Q3 5 40 4 5 5 0 図3 9 .ウエストフォンナ氷帽氷コア 卜リチウム濃度 7 1 ハU ハU 1 0 20 30 40 5 0 1i 250 . 5 7 5 5 . 5 6 6 三 量 ( E )苦仏ω凸 ( E ) Z E ω凸 1 5 0 2 0 0 pH ハ U ハU Ei ハ U 5 0 ハU 唱 5 0 J 、 戸AH. ハU E . C . ( μ S / c m ) 1 5 0 三 二 200 250 図3 1 0 .ウエス卜フォンナ氷帽氷コア a )電気伝導度、 b)pH 72 pH7.74 E.C.MI n t e n s i t y( μ A ) o1 2 3 4 5 6 7 8 0 50 1i ハ U ハU ( E )召仏ω凸 1 5 0 200 250 図. 3 1 1 .ウエストフォンナ氷帽氷コア ECMフ口ファイ jレ 7 3 1 0 0 1 5 0 2 4 6 8 4 z a A 50 。 K+(凶 t 1 ) nU 。 。 Na+( 凶 t 1 ) 。 2 Mg + ( 凶 t 1 ) 2 4 6 81 01 2 2 Ca + ( 凶 t 1 ) o12 34 5 678 50 1 0 0 ( E ) 4 E ω凸 1 5 0 200 2 5 0 図. 3 1 2 .ウエス卜フォンナ氷帽氷コア 陰イオン濃度の深さプロファイル 74 。 。 N 0凶1 ) ( cr(μM) 50 1 0 0 1 5 0 。 3 2 345 6 7 S042・(μM) 。 5 5 0 1 0 0 ( E ) 4 E ω凸 1 5 0 200 250 図. 3 1 3 .ウエストフォンナ氷帽氷コア 陽イオン濃度の深さプロファイル 7 5 1 0 1 5 20 a ) b ) CI lNa(M 品1 ) 1 2 n s s S O / (凶1 ) 2 n s sCa + ( 凶1 ) 5 2 4 6 8 3 1 0 1 5 20 50 1 0 0 戸{︼仏 ( E ) ω凸 1 5 0 200 250 図. 3 1 4ウエストフォンナ氷帽氷コア a )[ C I ] / [ N a+ ] 、 b )非海塩性硫酸、 c )非海塩性カルシウム 76 ハU Fe( p p b ) Al( p p b ) ハ U 1 0 2 0 3 0 02 0 -3 0 40 5 06 0 O 1 O 40 5 0 50 11 ハ U ハU ハ U ハU aA 唱 (日)召念凸 (日)音色ω凸 1 5 0 1 5 0 200 200 250 図1 3 1 5 .ウエストフォンナ氷帽氷コア アルミニウム、鉄の濃度の深さプロファイル 7 7 ハU Cu( p p t ) ハU 1 0 0 200 300400 。 Zn( p p t ) 2000 4000 。 Pb( p p t ) 1 0 0 0 2000 3000 5 0 ハ U ハU 'Bi ( E )苦仏ω凸 1 5 0 200 250 図1 3 1 6 .ウエス卜フォンナ氷帽氷コア 銅、亜鉛、鉛濃度の深さプロファイル 78 2 3 n u nU nssSO/-CμM) 1 2 3 4 一-1995 ハU E-A 唱E 20 1 n u ハU 1 0 N03C μ M ) 一 一1 9 7 5 20 ( E )音色。口 ( E ) Z E ω凸 30 30 40 40 50 50 斗J A 士 ト h 一 一1 9 0 0 図3 1 7 .ウエストフォンナ氷帽氷コア 硝酸、非海塩性硫酸イオン濃度の移動平均プロファイル 79 。 。 1 0 0 200 300 0 0 Zn( p p t ) 1 0 0 0 2000 3000 0 0 tazA ハu ハU E-咽E 20 Cu( p p t ) 1 0 20 Pb( p p t ) 200 400 600 800 一 一 1995 一 一 1975 20 ( E )召仏ω凸 斗J A 士 ト 30 30 30 40 40 40 5 0 50 5 0 h 一 一 1900 図3 1 8 .ウエストフォンナ氷帽氷コア 銅、亜鉛、鉛濃度の移動平均プロファイル 80 20 30 40 nU 1 0 n u n u ハU AI( p p b ) Fe( p p b ) 1 0 20 30 40 50 60 一 一1 9 9 5 。 一 一1 9 0 0 50 50 -1800 一 一1 7 0 0 。 O 1 5 0 。 O 。 250 一 一1 6 0 0 O 。 200 記、川布ト h O ( E )﹄ 亘ω凸 1 5 0 O 1 0 0 1 0 0 。 O 200 O 一 一1 5 0 0 250 図3 1 9 .ウエストフォンナ氷帽氷コア アルミニウム、鉄濃度の移動平均プロファイル 81 6 0 50 40 〆 ' 胸 、 、 .D 盆30 、 (u 江 吋 2 0 r u s tr a t lO 咽EEA ハU 1 0 30 40 A l ( p p b ) 図3 2 0 .ウエストフォンナ氷帽氷コア アルミニウムと鉄の濃度の相関 、、,ノ 。 官 24 1 2 0 20- 1 0 0 ロ , . . . . . . .1 6- 、 80 F E Ob1 2 z (u L L . .D 註 60 ω 江4 8- 40 〆 4- c o n t i n e n t a lc r u s tr a t i o . . . . ロ, 。 〆 。 4 8 1 2 1 6 2 0 40 6 0 80 A l ( p p b ) 3 ) A l ( n g / m 図3 2 1 .アルミニウムと鉄の濃度の相関 a )グリーンランド・サミットエアロゾル b )アルフス・モンフラン表面積雪 8 2 。 。 ov o P n p oz : - o v J O 唱 hU hノ 、 。 。 8 3 o v 図3 2 2 .鉛、銅、車鉛の濃度比 a )ウエストフォンナ氷帽氷コア b )クリーンランド・ダイスリー積雪 c )アルフス・モンプラン表面積雪 o P 30h : - o v O / 。 ov o P 0h 0・ o v / O 。 4章:結言 本研究では、人間活動による大気汚染、そして氷期一間氷期サイクル機構に 重要な役割を果たすと考えれている陸域環境について研究する上で非常に注目 されてるにもかかわらず、その測定の難しさから報告例が少ない氷コア中の微 量金属元素に着目し以下の成果を得た。 第 l章ではコンタミネーションの除去方法を検討した。氷コアの外側には、 掘削そしてコア解析時に様々なコンタミネーションが付着しており、氷コア中 に含まれる金属元素を測定するときに問題となる O これらの除去方法を、超純 水を凍らせた模擬氷 300gをバンドソーで削り出した後、 (1)セラミック包丁 で氷コアの外側を削り落とす、 ( 2 ) 純水で、氷コアを洗浄する、 ( 3 ) テフロン 容器内で少量溶かして捨てる、 ( 4 ) 別のテフロン容器に移して ( 3 ) の操作を 繰り返す、という処理方法でコンタミネーションの除去を試みた。その結果、 融解除去操作を 4回行うことで、コンタミネーションの影響を除去できること が分かった。 第 2章では、試料の少量化と測定の迅速化を図るために、 I C P M S (誘導結合 プラズマ質量分析法)による氷コア中の金属元素の定量方法を検討した。原子 吸光分析法や I C P発光分光法と比べ I C P M Sは 、 分析できる、 (1)高感度に多元素を同時に ( 2 ) 分析が簡便で迅速である、ことが優位な点である O このこと は試料量が少なく、試料数が多い氷コア試料の分析に適している O しかし、 I C P M Sの感度では北極域の雪氷試料中に含まれる金属元素を直接分析するこ とはできないので前濃縮操作が必要である o 前濃縮は蒸発濃縮法で行われるこ 84 とが多い。しかし、通常の実験室環境では、蒸発濃縮法は分析環境からの汚染 の危険性が高かったので、本研究では試料導入装置による感度の向上を検討し た。数種のネブライザー(噴霧器)システムを比較した結果、脱溶媒膜付マイ クロコンセントリックネブライザー (MCN-6000:CETAC社製)が最小試料使用 量で感度を向上させることが分かった。脱溶媒膜付マイクロコンセントリック ネブライザーは、噴霧した試料霧を加熱し溶媒を蒸発除去することで、濃縮効 果を得ることができることが実験室レベルで確認されている o 今回これを初め て天然水試料に適応させ、 2mLの試料でAl、 Fe、v 、Cu、Zn、As、Ag、Pb、U を同時に p p tレベルの定量ができるようになった。 第 3章では、 1995年に北極圏スパールパル諸島北東島氷帽(北緯 79度 58分 、 1度 2分)で掘削された氷コアに含まれる金属元素を第 1章、第 2章で確 東経 2 立した測定方法で定量し、その結果から堆積環境変化を考察した。スパールパ ル諸島は、同緯度の北極カナダやグリーンランドと比べ温暖であること、ポー ラーフロント上に位置することから、グリーンランドとは異なる気候条件下に あること、氷河は海洋の影響を大きく受けていることが特徴である O 北東島ウ エストフォンナ氷帽はその中でも寒冷な気候下にあり、夏季の融雪量が少なく、 堆積成分に対する融雪水の影響が少ないため、過去の環境変動を考察するため に適した環境下にある O 積雪断面観測により、層構造から判断される 1年間に相当する積雪層には 0180 が数回ピークを示すことが分かった。すなわち、 0180の季節変動からは年層を 85 判断することができない。そこで示準層である 1 9 6 3年の核実験最盛期のトリチ 7 8 3年のアイスランド L北 i火山の ECM (氷の電気伝導度) ウム濃度ピークと 1 ピークから年間堆積量 0 . 3 5 m . w a t e re q .. y r 'lを求め、これをもとに以下の考察に用 いる氷コアの年代を決定した O 掘削された 210mコアは過去 500年にわたるもの であった。地殻起源の指標となるAl、 Fe濃度は過去 500年にわたりほぼ一定し ていた。また、Al、 Feの濃度比はほぼ一定の値Al・ h・ 1=1 .5を示した。この値は 地殻の平均組成比 0 . 8に比べ高い値であり、モンプラン(アルプス)での表面積 雪中の濃度比と近い値を示したことから、スパールパルに供給される地殻起源 物質の起源はアルプスと同じであると考えた。人間活動の指標となる Cu、Zn、 Pbの濃度は 1 9 5 0年頃から急激に増加し、 1 9 7 0年をピークにその後減少した。 また硝酸、非海塩性硫酸濃度も同様な変動を示した。この変動は人間活動から 大気に放出される重金属、 NOx,SOx量の変動の報告とよく一致した。また Cu、 Zn、 Pbの濃度比はモンプラン積雪中の濃度比と似た値を示し、グリーンランド・ ダイスリー積雪中とは異なった値を示した。つまり、人間活動から放出される 重金属元素の供給源はスパールパルで、はヨーロッパで、あり、グリーンランドへ の供給源とは異なるということを示している D このことは、極前線を挟んだ両 地域の異なった大気循環場を反映するものである o 以上のように、 ICP-MSによる微量金属元素の分析法が確立し、その手法に基 づいて、北極圏のスパールバル諸島北東島の堆積環境について金属元素の変動 から新しい知見を得ることができた。 8 6 謝辞 本研究は総合研究大学院大学数物科学研究科極域科学専攻の課程博士論文と して国立極地研究所にて行われた。 本研究を通し、終始熱意あるご指導をしていただいた渡遺興亜教授に深く感 謝いたします。 本研究を行うにあたり、適切なご指導、ご助言を頂いた藤井理行教授に深く 感謝いたします。 また、研究に対するご指導、ご助言を頂いた神山孝吉助教授、本山秀明助教 授、古川晶雄博士、島田亙博士、五十嵐誠博士に深く感謝いたします。 本研究で、行った金属や化学成分の分析及び氷コアの化学解析に関して、金森 悟名古屋大学名誉教授、金森暢子名古屋大学名誉教授に懇切丁寧にご指導、ご 助言を頂きました。深く感謝いたします。 本研究では 1995年日本北極圏氷河学術調査隊によって掘削採取された氷コア 試料を使用した。試料採取及び処理・解析に際して、ご指導、ご協力を頂いた e r g e iArk h i p o v博士、地 成田英器北海道大学助教授、ロシア科学アカデミーの S 球工学の宮原盛厚氏、山崎哲秀氏、北海道大学地球環境学研究科の松岡健一修 士に深く感謝いたします。 また、成田英器助教授には氷コアの解析について、適切なご指導、ご助言を 頂きました。重ねて感謝し、たします。 本研究で行った ICP-MSによる金属元素の測定方法の研究は、環境庁国立環境 研究所地域環境研究グループで行われました。研究の機会を与えて下さいまし 8 7 た森田昌敏統括官に深く感謝いたします。また、研究を行うにあたり適切なご 指導、ご助言、ご協力を頂いた西川雅高主任研究官、森育子特別研究員、シェ e tE .E r o g l u博士に深く感謝し Eたします。また、実験を行 フィールド大学のAhm うにあたり広くご指導、ご援助していただいた鈴木千枝子さん、高田恭子さん ならびに実験補佐員の方々に深く感謝いたします。 化学分析は国立極地研究所・大気雪氷成分分析室で行いました。実験のご指 導、ご協力をいただいた、小林智子氏、若有祐子氏をはじめ、実験補佐員の方々 ならびに事務補佐員の方々に深く感謝し Eたします。 また、研究ならびに研究生活を行う上で貴重なご助言、ご協力を頂いた岡田 格博士、一谷修也修士、高田守昌修士に深く感謝いたします。 最後に、研究生活を送る上で多大な援助をしてくれた家族に感謝します。 8 8