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柿ちゃんの写真レシピ 「紅葉(復習編)」 Vol. 20
柿ちゃんの写真レシピ 「紅葉(復習編)」 Vol. 20 今年の夏は記録的な猛暑・酷暑の日が続きました。この様な年は秋口になると急激に気温が下がり、 昼と夜の気温差が大きくなり、木々たちの彩りがいっそう艶やかになります。桜前線は北上します が、紅葉は山頂から麓へと下ってきます。標高の高いところでは 9 月下旬から 10 月中旬までが 木々たちの紅葉のピークで、この時期は寒い冬を目前にして最後の彩りを競い合います。紅葉は風 景として捉えることで錦秋が表現されますし、澄みきった青空との対比からは艶を感じます。赤く 色付いたカエデの葉をアップで捉えることで赤ちゃんの手のような可愛さも表現されます。紅葉の 撮影も既成概念を持たずに自分のイメージを大切にしましょう。 □撮り比べ 標高 2,000m近い、長野県・小谷村にある栂池 自然園の紅葉風景です。秋は黄金色に輝く草紅葉。 ダケカンバの赤い実、そして木々たちが山々を美 しい色で染め上げて行きます。9 月下旬。紅葉が 真っ盛りでした。雲もたなびいています。同じ浮 島湿原の秋風景を焦点距離、撮影時期、撮影時間 帯を変えて撮り比べてみました。 【D700+35-70 ㎜(44 ㎜)】 □錦 秋 望遠レンズで彩りのもっとも華やかな所を切り 取っています。手前のダケカンバまでは約 30m。 背景の白馬まではほぼ無限になります。望遠レン ズの圧縮効果も出て距離感は無くなっています が、木々たちの彩りがボリューム感を持って表現 されています。 おしながき 産 地 実りの頃 写 道 ニコンD700 調 美 量 露出モード A(絞り優先) ホワイトバランス 晴天 70-300 ㎜ ピクチャーコントロール 風 (90 ㎜) ISO感度 400 絞り f/16 シャッタースピード 1/60 秒 露出補正 -1.0 ピント合わせ AF 長野県 栂池自然園 具 景 □特長ある部分を切り取る 10月初旬の浮島湿原。朝 6 時過ぎです。登った太 陽が背景の山肌(錦秋の中央部分)に当たり赤く染 まっています。その姿が風もなく鏡面になった水面 にダケカンバなどを赤く染めて写り込んでいます。 同じ場面でも切り取り方で内容の違った作品になり ます。雰囲気とともに神秘的です。全体を撮るもの も必要ですが、特長ある部分を切り取ることで違っ た印象の作品になります。10 月 29 日の撮影です。 おしながき 産 地 初秋の森 写 道 具 ニコンD7000 美 量 露出モード A(絞り優先) ホワイトバランス 晴天 18-200 ㎜ ピクチャーコントロール 風 (55 ㎜) ISO感度 400 絞り f/16 シャッタースピード 1/60 秒 露出補正 -1.3 ピント合わせ AF 長野県 栂池自然園 調 景 □時間を変えて撮り比べる 上の作品と同じ浮島湿原での撮影です。撮影時間は 午前 9 時 30 分。太陽が昇りきって全体に光が周 っています、順光状態です。水面やダケカンバ、そ して背景の色付いた木々たちの質感は表現されて いますが、順光で陰影が無く立体感も醸し出されず に平凡な印象の作品になっています。 おしながき 産 地 森の中で輝く 写 道 ニコンD700 調 美 量 露出モード A(絞り優先) ホワイトバランス 晴天 35-70 ㎜ ピクチャーコントロール スタンダード (70 ㎜) ISO感度 400 絞り f16 シャッタースピード 1/90 秒 露出補正 -1.0 ピント合わせ AF 長野県 栂池自然園 具 □明暗差の大きい紅葉撮影 ●D ライティング 渓谷から上を見上げると秋の光りに色付いた木々た ちが寒い冬が来る前のひと時、一年で最も艶やかな D ライテフィングなし 姿を見せます。しかし、カメラが写しだせる明暗差 は±5.0EVまでです。それを超すと日影の部分は 真っ黒(黒つぶれ)、明るい部分は真っ白(白飛び) になり、画像処理をしても救えません。そのような 場面では、撮影メニューの中にある、Dライティン グを使用することで明暗差の整った画像が得られま す。調整は「弱く」 「標準」 「強く」 「より強く」から 選べます。迷った時には、全てを撮り比べ、最も自 分のイメージに近いカットを選ぶようにします。」こ うすることで画像処理は必要なくなります。 *Dライティングなし:紅葉は鮮やかですが、滝の 周辺の岩肌部分は真っ黒になっています。 *Dライティングあり(強め) :紅葉の鮮やかさはそ れ程変わりませんが、滝も岩肌も見た目に近い明る D ライテフィングあり(強め) さで写されています。画質モード JPEG でもRAW でも可能です。 ●HDR(ハイダイナミックレンジ) HDRなし 風景や花など静止している被写体向きです。 明暗差のある時に有効な機能で、左の作例の場合、 空に露出を合せたカットと画面下の紅葉部分に露出 を合せたカットを撮った後、カメラ内部で二つの画像 を合成してダイナミックレンジが広がったように写 します。HDRの設定は「オート」 「弱め」 「標準」 「強 め」「強め」から選べます。明暗差によって異なりま すが、「強め」が最もいいようです。 Dライティングはスナップなど動いている被写体に も有効ですが、HDRは画像を合成するために動きの ある被写体には不向きです。 画質モードは[JPEG]で働きます。 HDR強め □思い切った露出補正 カメラの露出計は被写体からの反射してくる光を測 って露出を決めています。従って、白や眩しい被写体 では暗い写真になります。逆光も同じで暗い写真にな 露出補正なし +1.0 ります。左の作品は紅葉は影で背景が日向の逆光です。 露出補正なしでは主役の紅葉が暗くなっています。カ メラは±5.0 の調整が出来ます。+1.0⇒+1.5⇒+2.0 と撮り比べました。+1.0 ではまだ暗い写真になって います。+2.0 が透明感も出て秋の光を感じますし形 の面白さも表現されています。 +2.0 ●曇り空 雨天や曇天の空は肉眼で感じる以上にカメラにと っては強い逆光になります。左の作例は、曇天の空 を背景に緑、黄、赤と木々たちの彩りが最も華やか です。そんな木々たちの彩りを 10.5 ㎜の魚眼レン ズを使って背景には尖塔を配置して京都・常寂光寺 の秋の姿を写しています。+2.5 の露出補正です。 ●暗めの背景 晩秋のハス池です。池の周りには紅葉の木があります。風に乗って落ちた葉が蓮池の水面に彩り を添えていますが、水深は浅く底の黒い泥が目立っています。反射が鈍くそのまま撮れば明る過ぎ る写真になっています。-1.0 の露出補正が適性でした。 補正なし -1.0