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北海道共同石灰

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北海道共同石灰
平成14年度循環型社会構築促進技術実用化開発事業
廃棄物であるホタテ貝殻を原料とする高品位軽質炭酸カルシウムの
製造方法の工業化
補助事業結果報告書
平成15年3月
北海道共同石灰株式会社
目次
1.
補助事業の名称
1
2. 実 用 化 開 発 の 経 過
2.1 実 用 化 開 発 担 当
2.2 実 施 場 所
2.3 実 用 化 開 発 の 期 間
2.4 実 施 体 制
1
1
1
1
1
3.
2
事業の背景
4. 実 用 化 開 発 の 目 的 及 び 目 標
3
5. 実 用 化 開 発 の 実 績
5.1 パ イ ロ ッ ト プ ラ ン ト の 操 業( 最 適 操 業 条 件 の 把 握 と 操 業 技 術・運 転 方 法 の 確
5.1( 1)反 応 熟 成 工 程( H.13 年 度 設 備 導 入 )
5.1( 1)① 炭 酸 ガ ス 濃 度 の 安 定 化( 安 定 化 操 業 技 術 )( H.14 年 度 設 備 導 入 )
5.1( 1)② 粒 子 設 計 技 術
5.1( 2)脱 水 濾 過 工 程( H.13 年 度 設 備 導 入 )
5.1( 3)乾 燥 粉 砕 工 程
5.1( 3)① 乾 燥 工 程 の 検 討( H.13 年 度 設 備 導 入 )
5.1( 3)② 粉 砕 工 程 の 検 討( H.14 年 設 備 導 入 )
5.2 目 標 と す る 品 質 の 安 定 的 確 保( 品 質 評 価 )
5.2( 1)物 性 評 価
5.2( 2)各 種 炭 酸 カ ル シ ウ ム と の 比 較 評 価
4
4
4
6
7
7
10
10
11
12
12
14
6. 実 用 化 開 発 の 成 果
6.1 パ イ ロ ッ ト プ ラ ン ト で の 検 証( 実 験 室 レ ベ ル の 品 質 を 達 成 す る )
6.2 市 場 で の サ ン プ ル 評 価
17
17
17
7. 実 用 化 開 発 の 成 果 の 企 業 化 及 び 輸 出 の 見 通 し
7.1 成 果 の 実 用 化 可 能 性
7.2 波 及 効 果
18
18
18
7.3
18
事業化のスケジュール
1.補助事業の名称
廃棄物であるホタテ貝殻を原料とする高品位軽質炭酸カルシウムの
製造方法の工業化
2.実用化開発の経過
2.1 実用化開発担当
主任研究者 部長 山下 豊
2.2 実施場所
北海道共同石灰株式会社 製品開発部
苫小牧市勇払145番地14
電 話 0144−56−2567 FAX0144−56−2587
2.3 実用化開発の期間
開
始
終
了
平成14年4月 1日
平成15年3月31日
2.4 実施体制
研究組織
(*:専従度50%以上)
協力機関
北海道大学
小樽商科大学 北海道立工業試験場 北海道立食品加工研究センター 製品開発部
部長 *山下豊
品質管理担当
課長*山内仁
操業管理担当
解析担当
係員(研究員)
部長 *山下豊
*山田淳一
課長*山内仁
*熊谷孝規
-1-
3.事業の背景(廃棄物としてのホタテ貝殻の現状と再利用)
帆立貝養殖事業は、1970年代から特に北海道及び東北地方において盛んになり、
我国の水産業の中で重要な地位を占めるようになった。生産量の増加に伴い、加
工工場から排出されるホタテ貝殻の量も急増し、過去十数年間で国内全貝殻の排
出量の50%以上となり、昨年度(2000年度)では25万トン程度に達している。
この伸び率は他の貝種と比べて増大傾向にあり、このままでは、見過ごすことの
できない廃棄物となりつつある。
これまで、貝殻を含めた加工残渣はほとんど埋立て処理されているが、近年で
は埋立地の不足と共に処理費の高騰も加担して、ホタテ関連産業の発展を圧迫し
つつある。
ホタテ貝殻は、従来、そのままウニの養殖用保着器として用いたり(低次処理利
用)、粉砕などの物理的処理の後「重質炭酸カルシウム」として、土壌改良材や
石炭の脱硫剤に利用する(中次処理利用)などの、いくつかの再利用がなされて
きた。
ここに提案する軽質炭酸カルシウムの製造方法は、上述したホタテ貝殻の特性を
生かして、より付加価値の高い利用方法(高次処理利用)を目指すもので、廃棄
物の高度利用となるものである。
ホタテ貝殻の組織
内部組織
断面組織
2μm
30μm
ホタテ貝殻の特徴
1.天然・生物由来
2.高純度,成分が一定
3.白色度が高い
4.緻密な組織
5.粉砕物の形状が棒状
5μm
6.粉砕物表面を蛋白質被覆
- 2 -
3μm
4.実用化開発の目的及び目標
4.1 実用化開発の目的
廃棄物であるホタテ貝殻を未利用資源原料として、食品添加物に必要な、高純度、
高白色度の軽質炭酸カルシウムの工業化製造技術を確立することを目的とする。
4.2 実用化開発の目標
(1)700kg/dパイロットプラントを建設し、設備構成とその機能を確証する。
現状の運転水準は、実験室レベルでのバッチ操業 5kg/回・d 程度である。
パイロットプラントでは 700kg/d規模の連続(一部断続運転)設備とし、設備
基本構成、機器仕様(選定機種・選定容量・機能)、操業管理に必要な計装点の
適正化等を確認する。
(2) 700kg/dパイロットプラントを運転し、最適操業条件を確立する。目標製品品
位に対する、各部操業管理点(反応熟成温度・脱水濾過時間・乾燥解砕時間・炭
酸ガス供給流量・ユーティリティ設定量等)の最適条件を調整・確認する。
(3)設備構成及び運転条件による製品品位を比較し、実験室レベルで達成している
品位の 工業化レベルでの確立を計る。
本開発品の軽質炭酸カルシウムは、その高品質・高分散性・高白色度を生かして、
付加価値の高い用途である食品添加物をターゲットとする。
(4)安定化操業技術の開発
- 3 -
5.実用化開発の実績
5.1 パイロットプラントの操業(最適操業条件の把握と操業技術・運転方法の確立)
5.1(1) 反応熟成工程
貝殻由来軽質炭酸カルシウムの製造技術の開発は,図.1に示したプロセスに準じて行なった。
消石灰
生石 灰
ホタテ貝殻
当社新規技術
高純度、高白色度
粒子設計技術
粉砕工 程
乾燥工 程
濾過工 程
反応工 程
水和工 程
焼成工 程
粗粉砕 工程
軽質炭 酸カルシウム
本事業の製造プロセス概要
当社既存技術
微粒化技術
高純度CO 2導入
図1 軽質炭酸カルシウムの製造プロセス
粉砕した貝殻を焼成して有機物を除去すると共に脱炭酸化を行ない、CaOを主成分とした焼成
物とした後、H2Oと反応させ消石灰としたものを出発原料とした。
所定の液量が満たされた反応槽を一定温度に制御しておき、これにホタテ貝殻由来消石灰を
入れ、反応槽下部のノズルより高純度CO2および回収した未反応炭酸ガスを吹き込みながら、そ
の直上に設置した2本の羽により撹拌し、反応槽上部に設置したpHセンサーおよび圧力センサ
ーによりモニタリングし炭酸化反応を進めた。
水酸化カルシウムは水溶液中で水酸化イオンを放出し、初期にpHを上昇させる。
アルカリ領域でCO2を吹き込むと、CO32−はCa2+ イオンを(2)式のように
炭酸塩化し、OHイオンを消費してpHを低下させる(図.2)。
- 4 -
CaO+H2O = Ca2++2OH-
Ca(OH) 2 = Ca2++2OH- (1)
(1)’
Ca2+ +2OH- +CO2 = CaCO3+ H2O (2)
図.2 軽質炭酸カルシウムの反応式
反応終了後、沈澱生成物をドラムフイルターにて濾過し、ディスクドライヤーにて乾燥後,試料を
得た。
炭酸化反応の反応条件は、生成する軽質炭酸カルシウムの一次粒子の性状に大きな影響を与
えることが知られている。また、反応生成物である炭酸カルシウムの結晶形態、粒子形状、密度、
白色度などの性状は、本製造プロセスの後工程や製品品質に大きな影響を与える要因であること
から、本反応実験では消石灰濃度、供給CO2の濃度および流量、反応温度などをパラメータ
とした詳細な試験を実施した。
(1) 生成物の評価(キャラクタリゼーション)
各種条件にて得られた試料は、X線回折装置、走査型電子顕微鏡,真密度測定装置,熱分析
装置,蛍光X線分析装置および測色計などにより、結晶形態、粒子サイズおよび形状観察、密度、
熱分析、組成分析およびハンター白色度の測定・解析を行なった。
- 5 -
5.1(1)①
炭酸ガス濃度の安定化(安定化操業技術)
メークア ップ水
Ca(OH )2
回収水
原料ローディング設備
反応設備
混合器
炭酸 カル シウムスラリー
脱水設備
空気供給設備
CO2ガス供給設備
乾燥設備
CaCO3,
プロセス図(概念)
上記プロセス図に示すように空気供給制御設備、CO2ガス供給制御設備は、その流量を
炭酸ガス濃度,(%)
各流量計で制御し、混合器で混合後、所定量・所定濃度の混合ガスを反応設備に供給する。
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
Run28
導入部
炭酸ガス濃度の安定性
0
2
4
6
8
10
炭酸ガス濃度,(%)
反応時間,(h)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
排出部
反応の進行に伴い
排出ガス濃度は増加
0
2
4
6
8
10
反応時間,(h)
図.3 導入炭酸ガス濃度と排出炭酸ガス濃度の関係(分圧制御)
- 6 -
5.2(1)② 粒子設計技術(形状制御)
粒子製造に関するモデル(図.4)に示すように炭酸カルシウム製造時に発生する一次
粒子は炭酸ガス濃度、反応温度、原料消石灰濃度、等に影響を受ける。即ち、一次粒子は
炭酸ガス濃度が低いほど、温度が高いほど、消石灰濃度が高いほど大きくなる。
低い 温度 高い
CO2濃度低下
一次粒子径小,多結晶化
一次粒子径大
凝集速度低下
凝集速度増大
懸濁液濃度増加
図.4 粒子製造に関するモデル
5.1(2) 脱水濾過工程
(1)脱水濾過機の構造
脱水濾過は連続式真空回転濾過機であり、構造は濾過ドラム、濾過槽、攪拌機、
自動切換え弁、ケーキはく離装置、駆動装置より成り立っている。(下 図 )
濾過ドラムは12室に仕切られ、ドラムの回転に伴い、自動切換え弁により各室は順次
真空、常圧、となり、濾過、脱液、ケーキ洗浄、ケーキ剥離の操作を繰り返す。
ドラムは通常 約1/3は濾過槽内のスラリー中にあり、
供給されたスラリー中の固形物が沈
降するのを防止するため、攪拌機が取り付けられている。
- 7 -
図.濾過機概要
(2)プラントによる検討
1)運転結果
濾過運転を行った結果は基礎試験の長時間能力確認試験と同様に処理能力は1200
∼
750 Kg/m2・H となり、濾過時間は5 ∼ 8時間となった。一例として、ケーキ厚み10∼
14mmで濾過時間6.5Hr、処理能力は930 Kg/m2・Hであった。
2)濾過への影響する因子
①一次粒子とケーキ厚みには相関があり、一次粒子の増大に伴いケーキ厚みは増加する。
(図.5)
②従って、適正な濾過運転のためには粒子サイズにより適正なろ布の選定が必要である。
- 8 -
ケーキ厚,(mm)
20
18
16
14
12
10
8
6
4
2
0
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
粒子径,(μm)
図.5 粒子径とケーキ厚の関係
- 9 -
1.4
1.6
5.1 (3) 乾燥粉砕工程
5.1(3)①
乾燥工程の検討
(1)乾燥機の特徴
ディスクドライヤーは間接加熱式の乾燥機でディスクを回転させることによ
りシャフト及びケーシングへ付着した乾燥原料を自動的にかき取るセルフクリー
ニング効果を利用し、蒸発性能の向上を図ることを特徴としている。
今回これを採用した理由は乾燥と解砕が同時に行われ、食品添加物としての
分散安定性が優れていることである。
(2)乾燥機の運転
1)乾燥水分
①炭酸カルシウム乾燥水分は目標より低い0.2 ∼ 0.3%となった。
食品添加物の規定である水分は200℃、4時間で2%以下であるため、
十分満足している。
②しかし、脱水濾過のケーキ厚みが大きく、ケーキ水分が高い場合、
乾燥機の温度が低下する。これは、乾燥機の処理能力よりも多い水分が投入
されるためである。従って、脱水濾過機の運転方法(ドラム回転数、その他)
と関連づけて今後検討が必要である。
水分(%)
乾燥品温曲線
80
70
60
50
40
30
20
10
0
3時間(計算値)
4時間(計算値)
供給後3時間
供給後4時間
1
入り口
2
3
4
5
6
伝熱面積
7
8
9
10
出口
図 6 乾燥機の伝熱面積と滞留時間・水分の変化
- 10 -
2)乾燥粒度
乾燥後の炭酸カルシウムの平均粒度は、約5μmであるが、一部乾燥凝集体
が認められ、高分散の粉体供給を満足するという課題を解決するために、粉
砕工程の導入を図った。
5.1(3)②粉砕工程の検討
(1)粉砕機の選定
固体を粉砕するためには外力として引張り、圧縮、曲げ、せん断、衝撃、摩擦を用いる
ことができるが粉砕を効率的に行う必要のある実際の粉砕機では圧縮、衝撃、摩擦、せん
断の4種の力が一般に用いられており、圧縮は粗粉砕、中間粉砕に、衝撃は中間粉砕、微
粉砕、超微粉砕に、摩擦は微粉砕、超微粉砕に、せん断は微粉砕、じん性材料の微細化に
それぞれ適用されることが多い。下図に示すように石灰石のような軟らかい硬度のものを
粉砕するには高速回転ミルが好ましいことが判る。
今回採用したピン型ミル(高速回転ミル)とは衝撃粉砕機の一種で固定板と高速回転板
上に数列の円形に植え込まれた多数のピンの間で粉砕するものである。ピンを高速回転さ
せ、衝撃およびせん断力によって微粉砕を行う。これは、細かい粒子の凝集体に衝撃力を
加えて再分散するにも有効である。また、コンタミを防ぐためにもサニタリー仕様とし分
解しやすいものとした。
図 硬度・製品粒度と機種選定(概念図)
- 11 -
その結果、一部の乾燥凝集体は解砕され、乾燥凝集体は50μm以下に調整可能となった。
また、分散性は図に示されるように実験室レベルと同様に良好な分散性が得られた。
当社高分散貝殻カル
シウム
HPC(開発品)
分散性試験(1日目)
図 本プラント開発品例
5.2
目標とする品質の安定的確保(品質評価)
5.2(1) 物性評価
(1)食品への適用
本開発炭酸カルシウムは食品添加物の成分規格試験に適合し、微量分析結
果においても非常に純度の高いことが確認された。
分 析 試 験 項 目
シェルライムHTC-5
シェルライムHT
シェルライムHPC
検 出 限 界
分 析 方 法
カルシウム
38.9g/100g
53.3g/100g
40.2g/100g
ICP発光分析法
ナトリウム
223mg/100g
270mg/100g
47.7mg/100g
原子吸光光度法
リン
41.2mg/100g
55.6mg/100g
39.0mg/100g
バナドモリブデン酸吸光光度法
鉄
1.46mg/100g
3.40mg/100g
2.31mg/100g
o-フェナントロリン吸光光度法
0.8mg/100g
8.6mg/100g
0.5mg/100g
原子吸光光度法
マグネシウム
63.1mg/100g
95.2mg/100g
69.9mg/100g
原子吸光光度法
銅
0.09mg/100g
0.22mg/100g
0.07mg/100g
原子吸光光度法
亜鉛
0.20mg/100g
0.37mg/100g
0.74mg/100g
原子吸光光度法
マンガン
0.72mg/100g
1.02mg/100g
0.64mg/100g
原子吸光光度法
カリウム
セレン
ND
ND
ND
ヒ素(AS2O3として)
ND
ND
ND
0.5ppm
原子吸光光度法
鉛
ND
ND
ND
0.5ppm
原子吸光光度法
カドミウム
ND
ND
ND
0.1ppm
原子吸光光度法
総水銀
ND
ND
ND
0.01ppm
還元気化原子吸光光度法
※日本食品分析センタ‐
- 12 -
5μg/100g 蛍光光度法
(注)HTC-5はホタテ貝殻炭酸カルシウム、HTは本開発に使用したホタテ貝殻
焼成カルシウムの水酸化物で使用原料、
HPCは本開発で製造した貝殻由来軽質
炭酸カルシウム
(2)品質の安定性
1)ホタテ貝殻由来軽質炭酸カルシウムの粒子密度(真比重)は平均2.66であり、
バラツキも少なく、結晶構造はカルサイトと思われる。(図.9 )
2)白色度は平均98.5 で変動も小さく、95以上となっている。(図.9 )
3)熱分析の結果より熱分解開始温度は平均679℃で熱分解終了温度は747℃で
ある。(図.10
)
2.90
2.85
2.80
密度:平均値 2.66
2.75
密度
2.70
2.65
2.60
2.55
2.50
0
2
4
6
8
10
12
14
110
白色度
105
白色度:平均値 98.5
100
95
90
0
2
4
6
8
10
12
14
サンプルNo
図.9 各種テストサンプルの密度および白色度
- 13 -
900
熱分解開始温度
温度,(℃)
850
熱分解開始温度
800
750
平均 :679℃
700
650
600
0
A1
B2
C3
4
D
E
5
6
F
7
平均値
8
温度,(℃)
900
熱分解終了温度
850
熱分解終了温度
800
平均 :747℃
750
700
650
600
0
A1
B2
C3
D4
E5
F6
7
平均値
8
図.10 各種テストサンプルの分解開始温度および分解終了温度
5.2(2)各種炭酸カルシウムとの比較評価
(1)白色度の比較
白色度をホタテ貝殻の粉砕品HTC-5(食品添加物)、製紙用他社品、他社軽質
炭酸カルシウムと比較した。(図.11 )
その結果は、本開発の軽質炭酸カルシウム(HPC)の白色度が一番優れている。
- 14 -
100
99
98
97
96
95
HTC-5
他社製紙用
HPC
他社軽質炭酸カルシウム
図.11 各種炭酸カルシウムの白色度
(2)熱分析の比較
分析は熱分析装置のTG/DTA(thermogravimetry/Differential thermal analysis
示差熱熱重量同時測定)を用いて測定し、その比較を行った。
TG/DTA測定条件
サンプル重量
約10mg
昇 温 条 件
昇 温 範 囲
測定雰囲気
装
置
10℃/min
室温∼900℃
窒素ガス 100 /min
セイコーインスツルメンツ㈱製TG/DTA EXSTAR6300
製紙用他社品軽質炭酸カルシウムとの比較を行った。
その結果、熱分解開始温度、熱分解終了温度ともにホタテ由来の軽質炭酸カル
シウムが低いことが明らかとなった。(図 12)
- 15 -
20
100
工業用途炭酸カルシウム
10
80
0
70
示差熱(μV)
熱重量変化(%)
90
–10
60
50
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
–20
1000
温 度(℃)
20
100
10
0
80
–10
70
60
50
0
貝殻由来炭酸カルシウム
100
200
300
400
500
示差熱(μV)
熱重量変化(%)
90
–20
600
700
800
900
–30
1000
温 度(℃)
図.12 炭酸カルシウムの熱分析結果
- 16 -
6.実用化開発の成果
パイロットプラントの操業を行い、最適操業条件の把握と操業技術・運転方法の確立
を行い以下のことが明らかとなった。
6.1
パイロットプラントでの検証(実験室レベルの品質を達成する)
(1)反応熟成工程
1)炭酸ガス濃度の安定化を種々検討することで、再現性のある均一な一次粒子の炭
酸化反応の制御が可能となった。
2)粒度が約 0.3 μm で白色度 95%以上という目標を満足する再現性の良い粒子制御
の方法を把握できた。
3)反応温度の制御によりアスペクト比の大きな粒子形状の調整が可能となった。
4)反応時間は目標とする8時間を達成できた。
(2)脱水濾過工程
適切な濾布を選定することで、濾過時間は目標とする8時間以内となった。
(3)乾燥粉砕工程
乾燥処理時間は脱水濾過工程の処理時間に関係している。従って8時間で処理可
能であるがケーキ厚みは反応した炭酸カルシウムの一時粒子が大きいほど厚くなる
ことが判った。脱水濾過機の運転によるケーキ厚みの制御等の運転方法の検討が必
要である。
6.2
市場でのサンプル評価
(1)食品添加物
1)本開発で得られた高分散性の微粒カルシウムはカマボコ、麺等の練り製品
などの食感、成形性改善やカルシウム強化という分野にサンプル供給を
行っている。練り製品の市場規模は 1 社1工場で 50t/y 程度である。
2)現在市場が成長している健康食品用カルシウム(サプリメント用途)で
ユーザー評価を行っている。
(2)工業用途
1)機能繊維への評価のため、サンプル提供中。
2)アスペクト比の大きい粒子の形状技術を更に進展させ、工業用途でも付加価値の
高い特殊な用途開発を図る。
--17--
7.実用化開発の成果の企業化及び輸出の見直し
7.1
成果の実用化可能性
(1)当社では、十数年前からホタテ貝殻の有効利用を実施しており、ホタテの貝肥や食
品添加物としての販売を通して高付加価値化に注力してきた。
(2)ホタテ貝殻焼成物の水酸化体(消石灰)は、白色度及び純度が高いことから蒟蒻用
として使用されている。
(3)これまで当社では、食品添加物としてホタテ貝殻未焼成粉末を牛乳用に販売してい
るが、これとは別に、製麺用としてのホタテ貝殻の軽質炭酸カルシウムの需要が顕在
化しつつある。
(4)石灰石のように産地による変動もなく、不純物が極めて少ない高品質であるため、
食品用としては理想的な製品である。
(5)この技術を向上させることにより、更に高純度の試薬等への技術拡大が期待できる。
7.2 波及効果
(1)廃棄物であるホタテ貝殻を原料として、高付加価値の工業製品を製造することによ
り、廃棄物の量を減らし、資源利用効率の高い社会の実現に貢献できる。
(2)石灰石から高白色度の軽質炭酸カルシウムを製造するには、原料の産地、品質が限
定され、要件を満たす石灰石は貴重となっている。ホタテ貝殻をこれに代替すること
で、この貴重資源を保護し、高品質の製品を安価で安定的に市場に提供できる。
(3)本技術開発により食品用途への対応を図るとともに、工業用途でもその形状制御技
術を更に進展させることで、より付加価値の高い特殊な炭酸カルシウムの新たな用
途・市場を創出できる。例えば、アスペクト比の大きい炭酸カルシウムは従来の充填
剤とは異なる新しい機能性無機材料である。
7.3
事業化のスケジュール
食品用を中心に15年度は市場開拓を行い、その市場の評価や動向を含めて検討後事
業化を図る。また、工業用についてもより付加価値の高い特殊な炭酸カルシウム(アス
ペクト比の大きい炭酸カルシウム)の、製造技術の確立とサンプル評価により事業化可
能性を検討する。
--18--
Fly UP