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みやぎの農業・農村復興計画

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みやぎの農業・農村復興計画
みやぎの農業・農村復興計画
平 成 23 年 1 0 月
宮 城 県
目
Ⅰ
計画の 趣旨
Ⅱ
計画の 性格
Ⅲ
計画の 期間
Ⅳ
計画の 基本理 念
Ⅴ
復興に 向け た基本 的な方向 性
Ⅵ
次
1
県内の農業生産力の早期回復
2
新 た な 時 代 の 農 業 ・ 農 村 モ デ ル の 構築
施策展 開
1
県内の農業生産の早期回復
(1)生産基盤の早期復旧
①
農地・生産基盤施設の復旧
②
農業生産施設・農業機械等の復旧
(2)営農再開に向けた支援
①
相談体制の整備
②
代 替 農 地 ・ 施 設 の 活 用 及 び 雇 用 促 進 等 に よる 収 入 の 確 保
③
営農再開に向けた資金的援助
④
農業団体への支援
(3)被災農畜産物の処理
(4)新たな担い手の参入促進
(5)内陸地域の農業生産の拡大
( 6 ) 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 事 故 に よる 影響 へ の 対 応
2
新たな時代の農業・農村モデルの構築
(1)災害に強い農業・農村づくり
( 2 )「 市 町 農 業 ・ 農 村 に 関 す る 復 興 計 画 」 の 策 定 支 援
(3)市町復興計画に基づいた生産基盤の整備及び生産体制の支援
(4)収益性の高い農業経営の実現
①
競争力のある経営体づくり
②
施設園芸への転換
③
畜産の生産拡大
④
大規模な土地利用型農業の実現
⑤
農業の高付加価値化及び販売の強化
(5)活力ある農村の復興
(参考資料)
①
農村ビジネスの振興
②
都市と農村の交流促進
③
集落ぐるみの農村保全活動促進
Ⅰ
計画の趣旨
平成23年 3月11 日に本県 を襲 っ た東日 本大震災 (以下, 「震災」と い う。 )では,
激しい揺れと,それに伴い発生した大津波により,沿岸部を中心として甚大な被害
を受けました。本県の農業においても,中核となり活躍してきた多くの貴重な人材を
失 う と と も に , 農 地 , 用 排 水 機 場 や 用 排 水路 等 (以 下 , 生産 基 盤施 設 と い う ) , 園芸
施設及び畜舎等の生産関連施設(以下,農業生産施設という)をはじめ,流通・加
工等の関連産業施設等が損壊し,食料供給基地としての機能を大きく低下させる
事態と な りま し た 。
生産基盤への大きな被害は,農業者の生活への不安,農業再開への意欲の減
退 に つ な が り , 離 農し 地 域 を 離れ る 人 が 増加 す るこ と で , 本県 の 農業 生 産力 の 維持
や農村集 落の 存続が 危ぶ ま れる状 況と な っ てい ま す 。
このため,一刻も早く営農再開の道を開き,食料の安定供給や国土の保全といっ
たこれまで本県の農業が担ってきた役割を回復できるよう,農業者が主体となる取
組を, 国, 県,市 町村,民 間団体が 総力を あ げて 支援 して い く こ とが 必要 で す 。
本計画は,本県の農業・農村の復興に向け,緊急かつ重点的に取り組む具体的
な 施策を 定め ,取 組の 道筋 を示す も の で す 。
-1-
Ⅱ
計画の性格
本計画は,「宮城県震災復興計画」における農業分野の個別計画と位置づけま
す。
なお,本年3月に策定された「みやぎ食と農の県民条例基本計画」は,今後10
年 間 の 本 県 の 農 業 ・ 農 村 の あ る べ き 姿 を 展 望 し , 目 指 す べ き 方 向 性を 示 し た も の で
あり,震災後にあってもその方向性は変わるものではありません。しかしながら,震
災 に よ る 被 害 が 甚 大 で あ るこ と か ら , 振 興 施 策 の 抜 本 的 な 見 直 し を 含 め た 取 組 に よ
り早期復旧及び復興を目指すこととし,本計画を当面の本県農政の具体的な取組
の 指針と し ま す 。
Ⅲ
計画の期間
「宮城県震災復興計画」において,復興を達成するまでの期間をおおむね10年
間とし てい るこ と から , 本計画に お い ても 平成 32年度を 復興 の 目標と し ま す 。
さらに,10年間の計画期間を3期に区分し,被災者支援を中心に生活基盤や農
業 生 産 基 盤 の 復 旧 を 図 る 「 復 旧 期 」 ( H23~ 25年 度 ) , 効 率 的 な 経 営 主 体 に よる 大
規模な土地利用型農業の展開や稲作から施設園芸への転換,畜産の生産拡大,
付 加 価 値 の 高 い 農 業 の 実 現 等 を 目 指 す 「 再 生 期 」 ( H26~ 29年 度 ) , 経 営 規 模 の
拡大や6次産業化などにより農業経営の強化・発展を図るとともに,都市住民との
交 流を 一 層 推進 す るこ と に より 農 村 の 活 性化 を 図 る 「発 展 期」 (H30~ 32年 度 )を 設
定し ま す 。
ただし,これらの期間区分において取り組む施策は独立したものではなく,相互に
関連するものであるため,復旧や復興の進度・熟度によって施策が同時並行で推
進さ れ ること も あ りま す 。
-2-
Ⅳ
計画の基本理念
10年後には震災の前以上に本県の農業・農村が振興していると実感できるよう
な社会の実現を目指し,「宮城県震災復興計画」に示す5つの基本理念に基づき
本計画の 基 本理念を 以下の とお り とし ま す 。
基本理念1:災害に強く安心して暮らせる農村づくり
市 町 村 ご と の 農 業 振 興 エ リ ア を 明 確化 す る と と も に , 防 潮 堤 や 緩 衝 地帯 の 創 設
を 図 る な ど の 減災 対 策 を 講じ , 「 災 害 に 強 く 安 心 し て 暮 ら せ る 農 村 づ く り 」を 目 指し
ま す。
基本理念2:農業者が主体・すべての県民を含め総力を結集した復興
農業者が主体となる取組を,国,県,市町村,民間団体等が総力を結集して
支 援す る と と も に , す べ て の 県 民 が本 県 の 農 業 ・農 村 を 力 強く 支え て い た だ く 取 組
を推進 し ,県勢の 復興と 更な る発展 を図り ま す 。
基本理念3:効率的な土地利用と営農方式の導入による地域農業の「再構築」
被 災 し た 農 地 や 施設 を 「 原形 復 旧 」す るこ と に と どま らず , 安全 な 居住 空間 の 確
保と効率的な営農を可能とする土地利用のあり方等を「再構築」することによっ
て ,競争力 の ある 農業生産体 制を 整備し ま す 。
基本理念4:次世代を担う競争力のある農業経営体を育成
震災からの農業・農村の復興とあわせて,農業従事者の減少及び高齢化,農
村の人口減少による集落機能の低下などといった本県農業の従来からの課題に
対応し,収益性の高い農業を実現させ,次世代を担う農業経営体の育成を目指
し ます 。
基本理念5:壊滅的な被害からの復興モデルの構築
復興への新たな制度設計や国の財政支援,民間投資などの活用を図り,次世
代をリードする農業・農村を構築し,壊滅的な被害からの農業・農村の復興モデ
ルと し て ,全県 的な 取組へ の 波及を 図りま す 。
-3-
Ⅴ
復 興 に 向 けた 基 本 的 な 方 向 性
今回の震災では,農業者の生活と営農の基盤を一瞬にして喪失しただけではな
く, 地域農 業の 中核と な り活 躍し て きた多 く の 貴重 な 人材を 失 うこ とと な りま し た 。
特に被害が大きかった沿岸部では,農地は現状をとどめておらず,津波によるが
れきや泥などが堆積しているほか,広範囲に地盤沈下が起こるなど,震災前の状
態 に 戻 す に は , 相 当 な 時 間 が か か る だ け で は な く , 被 害 の 程 度 に よ っ て は 現状 復 旧
が困難であることも予想され被災地における営農再開までの道のりは決して平坦な
もの で はあ りま せん。
また,沿岸部は,水稲はもとより,いちごやトマト,きくなどの県内有数の園芸産地
として発展してきた地域であり,本県農業を代表するブランド農産物を数多く産出
し,農業所得の向上や農業後継者の確保に大きく貢献してきました。こうした重要
な 産 地 が 大 き な 被 害 を 受 け た こ と は, 市 場 に お け る 県産 農 畜産 物 の シ ェ ア の 縮小 と
な り,こ れ ま で築 き上 げて きた ブ ラ ンド と して の 知 名度 を 失う こと にも つな が りま す 。
あわせて,農村は生産活動の営みによって,国土の保全や水源の涵養,自然環
境や 景 観 の 維 持 ,農 村 文 化の 伝承 な ど ,県 民 と 享 受し て き た こ れ ら の 機 能 も 失い つ
つあり ま す 。
これらの直面する課題を乗り越え,みやぎの農業・農村を復興させるため,被災
前の土地利用や営農方式を見直し,「農地の面的な集約・経営の大規模化・高付
加価値化」などを,今後の農業振興のキーワードとし,また,「安全で暮らしやすい」
農村づ くり に向 け, 次の 項目 に重点 的に取 り組み ま す 。
-4-
1
県 内 の農 業 生 産 力 の 早期 回 復
農 地 の が れ き 撤 去 や 除 塩 対 策 , 生 産 基 盤 施 設 や 農 業 生 産 施設 等 の 早 期 復 旧 を
進め ,営農 意欲の 高 い農業 者の 営農再 開を 早期に 実現し ま す 。
また,内陸地域においても,効率や防災を意識した生産体制の再構築を行い,
一層の生産拡大を行うとともに,他産業からの新たな担い手の参入等を含めた新
規 就農 者 の 確 保 ・ 育 成 を 積 極 的 に 推 進 し , こ れ ま で の よ う に 国 民 の 食 を 支 え る 農業
生産力の 維 持・拡大を 推進 し, 食料供給 基地と し て 再生を 図り ま す。
あわせて,農地の復旧には一定の時間を要する地域もあることから,その間の農
業 者の 収 入 を 確 保し , 離 農 を 防 止 す るた め , 被災 農 家 経営 再 開支 援 事業 の 活用 ,
農業法人等での雇用の促進,代替農地・施設のあっせん,他地域に移転しての営
農開始支援などにより,意欲のある農業者の経営の再開支援及び営農の継続を図
りま す 。
2
新 たな 時 代 の 農 業 ・農 村 モデ ル の 構 築
地震や津波等への備えとともに,風水害等の自然災害による被害を最小限にと
どめ,安全な暮らしができ,安心して農業生産を継続できるよう,災害に強い地域
づ く り 計 画 (市 町 が 策 定 す る 復 興 計 画 に お け る ゾ ー ニン グ ) の も と , 海岸 防 潮 堤 や 道
路の嵩上げなどによる多重防御,避難路の確保や高い防災意識の醸成等を図り,
安全・安心 な 農村づ く りを 進め ま す 。
また,水田の大区画化や農地の利用集積による大規模な土地利用型農業経
営,団地化による生産性の高い施設園芸等,収益性の高い農業生産の実現に向
け,農業生産を向上させるための効率的な農地利用を図ります。畜産においても,
黒毛和牛 の 共同利用 施設の 整備等 による 生産性 の 向 上を図 りま す 。
さらに,新たな時代の地域農業を担う,収益性が高く,競争力のある農業経営体
の育成をめざし,認定農業者や集落営農組織リーダーとしての資質向上,ビジネス
プランの高度化等を支援するほか,新規就農者の確保,多様な担い手の参入を進
め ます 。
農業生産においては,品質や食味,安全等,消費者の求める基本的なニーズに
高いレベルで応えていくことに加え,加工による高付加価値商品化,販売の多様化
等を図る6次産業化を進めるほか,食品,流通,観光等,他産業との連携を図って
そのノウハウや販路等の経営資源を活用する等,付加価値の高い農業生産をめざ
し たア グ リビジネ ス への 取り 組み を 積極的 に 推進し ま す 。
あわせて,将来にわたって人々を引きつけることのできる新たな農村づくりにおい
ては,防災と暮らし,自然景観と農業が生み出す景観が調和した魅力ある農村を
形 成 す る と と も に , 地 域 資 源 を 活 用 し た 地域 ビ ジ ネ ス を 振興 し , 農 業 ・ 農 村 を 支 え る
サ ポー ター と な る都市 住民等と の 交流 を 促進 し ,農村 の活 性化を 推進し ま す 。
-5-
Ⅵ
1
施策展開
県 内 の農 業 生 産 の 早 期回 復
①
a
農 地・生産 基盤施設 の復旧
現状と 課題
震災 に より , 本 県 の 農 地 の 約 1 0 %に 当 た る 約1 4 , 30 0 h a が津 波 の 被 害
を受け,現在も海水が浸水している農地があるほか,泥土の堆積,海水とと
もに流入したがれきや自動車などの震災廃棄物が農地に留まったままとな
っ てい ま す 。
また,内陸部においても地震によって,ため池の堤体・取水施設の破損,
水路 の 沈下 や 法 面の 崩 壊に よ る通 水 の 阻 害 , 農地 , 農 道の 損 壊な ど , 生産
に関連 す る施設が 大きな 被害を 受 けま し た 。
こうした農地へのがれきの堆積や生産基盤施設の損壊によって営農が不
可能 と な っ た ほ か , 塩 分や 油 分 等が 土 壌に 残 留し た こ と に より 地力 の 低下 や
強酸性化の可能性もあるなど,浸水した農地における営農再開が大幅に遅
れるこ と が懸 念さ れ て いま す 。
農業生産の回復に向けて,作物の生産基盤となる農地,生産基盤施設
の 早期の 復旧 が求め られ て い ます 。
b
取組内 容
早期の営農再開のため,農地に堆積しているがれきや泥土を早急に撤去
し,除塩対策を進めるとともに,被災の度合いに応じて用排水機場等の生
産基盤施 設の 復旧を 行い ,生 産基盤の 速 やか な 回復を 図りま す 。
土壌の塩分等の除去については,試験研究機関における実態調査,代
替 作 物等 の 導 入 試 験 , 塩 害 の 克 服 に 向 け た 技 術 開 発 ・普 及 に 取り 組 み , 津
波の被害を受けた農地において早期の生産が可能となるよう技術的な対策
を図り ま す 。
また,土壌の回復に向け,きめ細かな土壌分析に基づいた土づくり等によ
る地力の 回復 ,強酸 性化土壌 への 酸度矯 正を 推進し ま す 。
-6-
②
a
農業生 産施設・ 農業機械 等の復旧
現状と 課題
震災による影響は農地にとどまらず,農業者や経営体が所有する農業生
産施設農 業機械等 など に も及び ま し た 。
津波により,東北随一のいちご産地である亘理・山元地域をはじめ,沿岸
地域に形成された施設園芸地帯では,園芸施設倒壊・流出などの壊滅的
な 被害を 受け ま し た。
津波被害を受けなかった地域においても,強い揺れで園芸施設が損壊し
たほ か ,停 電・断水に よっ て 生産 に 影響 が生じ ま し た 。
ま た , 畜 産 農家 に お い て も , 地 震 ・ 津 波に よる 畜 舎 の 倒 壊な ど の 直 接 的 な
要因のほか,飼料や水の供給停止に伴い,飼養不能となるという2次的な
被害も 加わ り ,多く の 家畜 が犠牲に な りま し た 。
さらに,JA等が所有する農業倉庫,カントリーエレベーターといった広域
的な共同利用施設についても,地震・津波による損壊,海水の流入等の被
害に見 舞わ れ ,復旧 が必要 な状 況にな りま し た。
県内の農畜産物の生産力を早期に回復させるためには,これらの農業生
産施設農 業機械等 の 復旧が 必要と な っ て いま す 。
b
取組内 容
営農再開に向けて意欲の高い農業者を支えるため,種苗の取得や家畜
の再導入を支援するとともに,被災した土地利用型作物・園芸・畜産関連
施設・農業機械等の復旧のため,共同利用による施設の復旧・整備や,効
率的な営農体制による農業機械等のリース,営農再開へ向けた資機材の
確保等を 支援 し ます 。
また,農業倉庫,カントリーエレベーター等の広域的な共同利用施設につ
いて も ,復 旧を支 援し ま す 。
-7-
①
a
相 談体制の 整備
現状と 課題
震災により,沿岸部を中心に多くの農業者が営農する農地や農業生産施
設等の生産基盤はもとより,住宅等の生活基盤も損壊や流出,浸水などの
大きな 被害を 受け ま し た 。
農業者は既に施設・機械等の設備投資による負債を抱えていることが多
く,これらの負債の返済に加え,生産基盤・生活基盤を立て直すためには,
さ らに 負債 を 重ね るこ と とな り ま す。
こうしたことから,多くの農業者は営農の継続・再開に不安を抱えており,
営農の 継続 ・再開に か か る相談機能 の 充実が 求め られ て い ま す 。
b
取組内 容
被災した農業者の経営と生活の速やかな再建を支援するため,関係機
関と連携して「早期営農再開支援センター」を設置し,営農再開や生活再
建に関 す る相談に ワン ス トップで 対応 し ま す 。
ま た , 個 々 の 経 営 実 態 に 応 じ た 相 談 や 再 建計 画 づく り を 支 援す るた め , 関
係機関と の 連携 や中小 企業診断士 等の 専門家 の 活用を 図り ます 。
-8-
②
a
代 替農地・ 施設の活 用及び雇用 促進等に よる収入 の確保
現状と 課題
今回の震災では,地震と津波,地盤沈下等が発生し,農地の形状そのも
の が 変 わ っ て し ま っ た り , 塩 水地 下 水 位の 上 昇に よ る生 育 不良 と な っ た 地 域
も あ り , 除 塩 対策 等 に よる 土 壌 の 改良 , 農 地や 農 業 生産 施 設 の 復 旧等 が 必
要とされ,被災した農業者が震災まで営農していた土地で生産を再開する
ま でに は相当 な 時間 を要す る地域も あ ると見 込ま れて い ま す 。
営農再開に長い時間を要するという見通しは,農業者の営農意欲の喪失
につながり,本県の農業生産力の低下に直結します。営農の継続を望む農
業者に と って も ,再 開 ま での 間の 収入 の 確保 が課題 とな り ます 。
そのため,生産基盤を失った農業者が,営農を継続していけるための仕
組み が求 め られ て い ます 。
b
取組内 容
被災した農業者の生産基盤が整うまでの間の収入を確保し,営農意欲の
維持を図るため,被災農家経営再開支援事業の活用及び農業法人等にお
ける雇 用を 促進し ま す 。
ま た , 生 産が 可 能 な 遊 休 農地 ・施 設 等を 貸借 す る こ とに より 営農 が 継続 で
きるよう,貸し出し可能な農地・施設に関する情報を取りまとめ,希望者を
紹介す るな ど の マ ッ チン グを 図りま す 。
-9-
③
a
営 農再開に 向けた資 金的援助
現状と 課題
農地や施設,機械等の生産基盤に被害を受けた農業者の中には,住宅
等の生活基盤にも被害を受けた農業者が少なくないことから,震災前に借り
入れていた事業資金の償還計画の変更を余儀なくされる場合が見られま
す。また,これまでの負債に加えて,営農再開のための新たな負債を抱え,
返済負担が大きくなることが,営農再開の障害になっています。このため,
意欲 あ る 農業 者 が 営 農再 開 で きる よう , 返 済負 担 の 軽減 や営 農再開 の た め
の 円滑な 資金 融通な ど ,金融支 援が求 め られ て い ま す 。
b
取組内 容
被災農業者が営農を再開するために必要となる資金については,天災融
資法の発動,制度資金の無利子・無担保化,償還期間や据置期間の延長
などが行われており,さらに,市町村と連携して災害対策資金を創設するな
ど,資金融通の円滑化を図ります。また,既存の天災資金の活用を促進し
ま す。
また,返済負担の軽減のために,償還猶予などの負担軽減について関係
機関と連携して対応するとともに,今後とも既往債務の整理及び被災農業
者の信用力を補完する農業信用基金協会への支援を国に要請し,営農再
開を支 援し ま す 。
- 10 -
④
a
農 業団体へ の支援
現状と 課題
震災により,JAや土地改良区等の農業団体及びその組合員が被災し,
農業団体の運営が極めて困難な状態となっています。これらの農業団体
は,農業者の営農を支える重要な役割を担っているため,迅速な機能の回
復と 事業運営 の 継続に 向け た支 援 が求 め られ ま す 。
b
取組内 容
JA 事務 所 の 再 建 を 支 援 す る と と も に ,農 業 団体 が 所 有 す る 施設 ・ 設備 共
同利用施 設等の 再建 を支援 し ま す 。
また,土地改良区が今後,徴収不納となる運営費や農家負担金に対し
て ,利子 補給等の 措 置を図 りま す 。
a
現状と 課題
沿岸部の農業用倉庫では,津波によって保管されていた米,大豆の約2
万 ト ン が 水 に 浸か る な ど の 被 害 を 受 け 災 害 廃 棄 物 と し て 処 理す る こ と が 必 要
とな り ま し た。
ま た , 地 震 の 揺 れ や 津 波 に よ る畜 舎 の 倒 壊 ・ 流 失 や 飼 料 の 供 給 停止 等 に
より約15 0万頭 ・羽 の 家畜・家きん が死 亡し ま し た。
営農の早期再開を図るためには,これらの震災により生じた被災農畜産
物や死亡 し た家 畜の 迅速な 処分 が必要 とな り ま し た。
b
取組内 容
被災した米・大豆については,廃棄物処理を行う市町村の委託を受け,
県が処 理を行 い ます 。
また,死亡家畜については,畜産経営者にかかる負担を軽減し,早期の
経営再開 を促 進す るため ,処理 にか か る費用 等につい て 支援し ま す 。
- 11 -
a
現状と 課題
震災に より ,沿 岸部 を 中心に 農業者 の多 く が営農 基盤 を 喪失し ま し た。
農業者は既に施設・農業機械等の設備投資による負債を抱えていること
が多く,また,営農再開にあたっては,新規投資が必要とされ,いわゆる二
重ロ ー ン 問題が課 題と な り,離 農や営農 意欲の 減 退が懸 念さ れて い ま す 。
今後,震災被害の大きかった地域における農業の復興のためには,民間
の資金力の活用が必要であると考えられることから,企業の農業への参入
を促進し,民間活力を活かした地域のブランド農産物の創出や農業者等の
雇用の確保・拡大につなげ,地域農業の再生と活性化を図ることが求めら
れま す 。
b
取組内 容
地域農業の新たな担い手として,新規就農者の確保・育成を図るととも
に,企業の参入を促進するため,企業を対象とした研修会等を開催し,参
入の 啓発を 行い ま す 。
また,市町村からは企業へ紹介できる土地情報を収集し,県内外の企業
訪問等を通じて得た農業参入を希望する企業情報とのマッチングを図りま
す。
さらに,民間の融資機関や企業の資金力を活用し,農業者との共同出資
等による 農業経営 を推進 し ,ひい て は地域農業 者の 雇用 確保を 図りま す 。
- 12 -
a
現状と 課題
津波により多くの農地,園芸施設や畜舎が損壊・流出したため,沿岸部を
中 心 に 生 産 さ れ て き た 園 芸 作物 や 畜産 の 生 産 の 減 少 は避 け ら れ ま せ ん 。ま
た,津波 による直接的な被災を受けなかった内陸部においても,施設の損
壊や流通施設の被害による出荷停止や出荷延期による経営的な被害が広
範囲に わ たっ て い ま す 。
内陸 部 で の 農 業 生産 の 維 持 ・ 拡大に より , 県内 全域 の 農業 生産 額の 拡大
を図る 必要が あり ます 。
b
取組内容
水稲については,作付けができない津波の被災市町と他の市町村や他県
との地域間調整を実施し,被災農家への支援と本県の米の生産数量の確
保を図 りま す 。
また,園芸については,従来どおり地域の重点振興品目を定めて生産を
振興するほか,畜産については,被害の少ない内陸部において,畜産物流
通施設や堆肥センター等の畜産関連施設の整備,再構築による生産振興
を 図 り , 「 仙 台 牛 」や 「 ミヤ ギ ノ ポ ー ク 」 等 の 県 産 畜産 物 の ブ ラ ン ド 化 を 維持 す
るとと も に ,畜産物 全体 の 生産力 の 維持・向 上を 図りま す 。
- 13 -
a
現状と 課題
津 波 被 災 を 受 け 発 生 し た 福 島 第 一原 子 力 発 電 所 の 放 射 能 漏 れ 事 故 に よ
り,農作物等の汚染被害が福島県のみならず広い範囲で発生しています。
ま た, 風評被害に よっ て 農畜産 物 の 消費の 低迷が 問題と な っ てい ま す 。
本県においては本年5月,牧草から基準値を超える放射性物質が確認さ
れ, 乳用牛や 肥育牛 への 牧草の 給 与及び 放牧の 自粛 要請を 実施し ま し た 。
また,7月に入り,原発事故後に収集された稲わらを給与した肉牛から,
暫 定 基制 値 を 上 回 る 放 射性 物 質 が 検 出 さ れ , 福島 県 に 続 い て , 本 県 に は7
月 28日 に 全 県の 出 荷 停 止 が 指 示 さ れ る な ど , 食 の 安 全 ・ 安心 を 揺 る がす 大
きな 社会問題 とな っ て い ま す 。
放射 性 物 質 が 日 常 の 生活 及 び 生 産 活動 に 与 え る影 響 や 食の 安 全性 に 対
する不安の解消などに向けた対応が求められるとともに,肉牛の出荷自粛
に伴う経費増加や風評被害による価格の下落などにより,畜産農家や流通
・販 売 業者 の 経営 が 一 層厳 し く な る と 予 想 さ れ る こ と か ら ,そ れ ら に 対す る対
応が求 め られ て い ま す 。
b
取組内 容
県産農林水産物の安全・安心の確保のため,検査機関の確保とともに,
新たに検査機器を整備するなど,検査体制を強化するとともに,県民及び
農業者等への迅速な情報提供体制の整備を行ない,安全な県産品の出
荷,流 通を確 保し ,食材 王国み やぎ の 維持・発 展を 目指し ま す 。
ま た , 生 産 農家 や 流通 ・ 販 売 業 者 の 経 営 的 損失 が 補 償 さ れ , 今後 も 安 心
して経営に取り組めるよう,国の支援を求めるとともに,東京電力の損害賠
償等への 支 援を 行い ます 。
さらに,土壌や水などの生活環境や生産技術の改善等により汚染を回避
ま た は抑 制 す るた め の 知 見 や 手法 が 少 な い 現 状 に あ る こ と か ら , 今 後 ,国 の
試験研究機関や専門機関と連携し,国際的な知見や研究事例の収集に努
め な がら ,適 切 な 技術対策 を確 立し ま す 。
- 14 -
2
新 たな 時 代 の 農 業 ・農 村 モデ ル の 構 築
a
現状と 課題
沿岸地帯の農村を守ってきた海岸堤防が破壊されたことにより,背後地
では常に津波や高潮の危険にさらされているほか,排水施設等の被害によ
り,集中豪雨時等において流域が浸水の恐れを抱えるなど,農村における
営農・生 活の 安全性 が大きく 損な わ れ るこ と とな り ま し た。
一方,津波による直接的な被災を受けなかった内陸部を含め,施設の破
損や停電,断水,燃料の供給停止等による生産不能や物流機能の低下に
よる飼料供給の停止等による家畜死亡など,生産面での課題が浮き彫りに
なりました。また,集出荷場や卸売市場等の流通施設が損壊し,出荷停止
や出荷休止による農業経営への影響が生じたとともに,需要側である小売
業や食品製造業への原料供給が停滞・減少するなど,多方面に影響が及
びま し た 。
大規模災害時においても安心して営農し,生活できるよう,農村における
防災対策 の 強化が 求め ら れて い ま す 。
b
取組内 容
沿岸部における背後地の安全を守るため,海岸堤防の早期復旧を図ると
とも に 流域 の 浸水 等を 防ぐた め , 排水施設 等 の 迅速な 復 旧を 図りま す 。
暮らしの安全性と快適性を確保するためには,地域コミュニティに配慮し
た高台移転や道路等の交通インフラへの堤防機能の付与,緩衝地帯の設
置,防災機能を備えた情報ネットワークの構築などが必要であり,市町の復
興計画と整合性をとりながら,災害に強く,景観にも配慮した農村づくりを進
め ま す 。 ま た , 集 落 排 水 施設 の 復 旧 を 図り , 快 適な 暮 ら し が で きる 生 活 環 境
の 整備を 進め ま す 。
一方,今回の災害を教訓に,災害への備えとして,農業団体や企業レベ
ルではBCP(事業継続計画)の考え方に基づき,事業拠点の立地場所の
検討や資機材の供給機能を持たせた全国ネットワークの活用,備蓄等によ
り,また,個人レベルでは,農業生産施設や農業機械の浸水しにくい場所へ
の配置の検討,損壊の抑制対策,電源や熱源,水源の確保を図るなど,災
害時に も円 滑 に 対応でき る仕組 み づく り を推 進し ま す 。
- 15 -
a
現状と 課題
津波により大きな被害を受けた地域では,まちづくりそのものを新たな視
点でデ ザ イン し て お り 土地利用計 画 の 見直 しを 含む も の とな っ て い ま す 。
農業においては,土地利用の見直しを契機として震災前からの課題でも
あ る 「 収 益 性 の 高 い 農業 」 を 実現 す る た め に , より 効 率 的 な 農 業 経 営 を 可 能
とする土地利用(作目ごとのゾーニング)方法,農業経営の形態,生産品目
などについて,具体的に検討し,実現に向けた方策を定めることが必要とな
りま す 。
b
取組内 容
収益性の高い農業を目指し,農地の面的な集約や経営の大規模化を図
るため ,市町 ごと の 「農業 ・農村に 関す る復 興計画」の 策 定を 支援し ま す 。
策定支援にあたっては,市町を主体にしながら,国や農業団体等と連携
し,効率的かつ安全性を重視した土地利用(ゾーニング)や農業経営の形
態や地域農業のあり方など,農業者の意向や実情を反映した計画となるよ
う配慮する一方,大規模経営を展開する仕組みづくりや施設園芸の団地化
など,当該地域にはなかった新しい営農方式の導入や6次産業化,都市と
の交流を推進する取組などに向けた提案を行い,単なる復旧ではなく,地
域農業の 再 構築に 向け た計 画 と な るように 働きか けま す 。
- 16 -
a
現状と 課題
市 町 が 策 定 し た 「 農 業 ・農 村に 関 す る 復 興 計 画 」 を 実 現 し , 農 地 の 面的 な
集 約 経営 の 大 規 模 化 , 稲 作 か ら 施 設 園 芸 へ の 転 換 な ど を 進め るた め に , 作
目別のゾーニングに基づき,土地の利用調整を図りながら,効果的に生産
基盤を 整備し て い く こと が 求め ら れま す 。
b
取組内 容
収益性の高い農業を目指すため,「市町農業・農村に関する復興計画」
に盛り込まれた水田,畑地などのゾーニング計画に基づき,生産基盤の整
備を実 施し ま す 。
なお,生産基盤の整備にあたっては,防災対策も意識しながら,大区画
化・汎用化した水田を整備するとともに,畑地,園芸施設用地等の生産基
盤を整 備し ,効 率的な 農業 経営に 向け た土地 利用 を 推進し ま す 。
また,農産物直売所や農産物加工場等の農業関連施設用地のほか,農
村 の 活 性 化 に 活 用す る 用 地 な ど , 目 的 に 応 じ て 土 地 を 効 率的 に 利 用 す る た
め の 整備 を 行い ま す 。
- 17 -
①
a
競 争力のあ る経営体 づくり
現状と 課題
本 県 の 農 業 就 業 人 口 は , 平 成 22年 で 約 7 万 人 で , そ の う ち 65才 以 上 の
割 合 は 60% と , 15年 前 の 28% か ら 大 幅 に 増 加 し , 高 齢 化 が 著 し く 進 ん で い
ま す。
農業の担い手を確保してしていくためには,収益性を高めることが必要で
ありこれまで,農地の集約化や経営規模の拡大,共同化や省力技術の導
入等による低コスト化,6次産業化などに取り組む農業者を育成してきまし
たが,震災により中核となって活躍してきた人材や農業生産施設等が失わ
れたことから,生産基盤の再整備と併せ,地域農業を支える担い手の確保
・育成は, これ ま で以 上に 重要と な っ て いま す 。
b
取組内 容
被災地域において中核となる担い手の確保・育成が急務となっていること
から,地域の合意形成に基づく認定農業者や集落営農組織の育成,法人
化を 進 め , 効率 的 な 営 農 体制 の も と で ,低 コス ト化 や生 産性 の 向上 を 図る た
め の 生産施設 や農業 機械等の 整 備につい て 支援 しま す 。
とりわけ,土地利用型農業における経営体の育成にあたっては,地域の
中で規模と能力に応じて相互の営農を支え合うことによって持続的な農業
生産の展開を可能にする「地域営農システム」の構築を図り,意欲的な農
業者, 兼業農家 ,高齢農 業者な ど の 多様 な 人材の 共存を 図りま す 。
また,高付加価値化や販売強化に向けた支援を実施し,収益性の高い
活力あ る経営体 の 育成を 図りま す 。
さらに,販売,流通,加工をはじめとした関連産業の付加価値を取り込ん
で 経 営 の 発 展 を 図る ア グ リ ビ ジ ネ ス を 推 進 し , 復 興 の 牽 引 役と な る 競 争 力 の
ある経 営体を 育成し ま す 。
- 18 -
②
a
施 設園芸へ の転換
現状と課題
これまで本県農業の競争力を高め,農業産出額の向上を図るため,園芸
の 振 興 を 図 っ て き ま し た が , 震 災 に より 園 芸 の 主 産 地 と な っ て い た 沿 岸 地 域
は壊滅的な 被 害を受 け ,多く の 園芸 施設 が 失わ れ まし た 。
こうした被災市町における園芸を復活させ,地域農業の牽引役として,そ
の振興を図っていくために,効率的な土地利用に基づく大規模な園芸団地
の 育成が 必要と な っ て いま す 。
また,原子力発電所の事故を契機として,災害時への対応強化を含め,
エネ ル ギ ー の 削 減に 向け た 動き が 活発 化 し て お り , 園 芸振 興 に あ た っ て も 省
エネ タイ プの 技術 導入が 求め ら れて い ま す 。
b
取組内容
水田農業から施設園芸への転換を図るため,効率的な土地利用計画に
即した新たな園芸団地用の土地の確保を行い,地域の担い手の実状に沿
っ た施設 園芸の 産地 化を 推進し ま す
園芸産地のさらなる発展に向け担い手となる生産組織の法人化・共同化
を進めるとともに,地域雇用の確保,効率的な生産体制を可能とする大規
模生産施設の導入を支援します。施設導入に当たっては,費用対効果の
検証を行いながら,太陽光パネルやヒートポンプなど,省エネルギー技術の
導入を 推進し ま す 。
また,生産から加工・販売までを視野に入れた取組を行うモデル経営体
を育成 し ま す 。
- 19 -
③
a
畜 産の生産 拡大
現状と 課題
震災により大きな被害を受けた本県農業を復興させ,収益性の高い競争
力のある農業を実現するためには,畜産による所得拡大,地域雇用の確保
を図る こと が 求め ら れま す 。
畜産経営の早期再開を図るとともに,より効率的な経営体を育成するた
め ,生産 基盤の 整備 と地 域内に お ける 経営体 の 組 織化が 重要と な りま す 。
b
取組内 容
効率的な土地利用計画の中に畜産施設用のエリアを確保し,より効率的
な生産体制の構築を図ります。また,自然環境や地形など,地域の特性を
活かした経営体を育成するため,担い手の確保を図るとともに組織的な活
動の 推進や 畜産関係 施設の 整 備,優良 種畜の 導入 等を 支援し ま す 。
また,法人化や6次産業化に取り組む企業的畜産経営体を育成するとと
もに,家族経営を中心とする経営体の経営強化を図り,様々な形態の畜産
経営体に よる力強 い本県 の 畜産を 推進し ま す 。
- 20 -
④
a
大 規模な土 地利用型 農業の実現
現状と 課題
震災により被災した水田は約1万haで,農業機械等も大きな被害を受
け, 生産が 困難な 状況 にあ りま す 。
特に,津波の被害を受けた地域では,住居などの生活基盤も失い,経営
再開の先行きが不透明であることから営農意欲を失う農業者も現れていま
す。
一方で,地域の中核となる担い手として活躍してきた認定農業者等につ
いては営農再開の意欲も高く,経営規模の拡大への希望もあることから,今
後,復興を図る水田地域では,こうした意欲ある認定農業者等が,稲作と
畑作をうまく組み合わせ,収益性を高めた大規模な土地利用型農業を展
開できる よう農地 の集 約化を 促進す る こと が求 め られ て い ま す 。
b
取組内 容
津波による被災を受けた地域においても,比較的被害が少なく,東日本
大震災災害復旧事業等により農地の原形復旧が可能である地域において
は,被災した農業者が営農を再開するにあたり,農地保有合理化事業や農
地利用集積円滑化事業等を活用して新たな農地の購入・賃貸を支援し,
効率的な 農地 利用に よる収益性 の 高い 農業の 早 期実現を 図りま す 。
また,津波による被災が甚大な地域においては,復興特区などを活用し
土地利用計画を進め,一括利用権設定等の手法により,モデル的に規模
拡大に 取り組 め るよう支援 し ます 。
また,大規模な土地利用型農業を展開できるよう,JA等が機械・施設の
リース事業を積極的に進めるよう促進するとともに,地域の実情を考慮しな
がら,認定農業者や集落営農組織等に対し,規模に見合った効率的な機
械・施設 の導 入を 支援し ま す 。
これらの地域では,「水田農業ビジョン」の見直しを支援するとともに,試
験研究機関や普及センターによる,担い手への栽培技術改善や先進技術
の 導入, 経営管理の 支援を 行い ,生産 性の 向上と 低コ スト化を 推進し ま す 。
- 21 -
⑤
a
農 業の高付 加価値化 及び販売の 強化
現状と 課題
こ れ ま で も 農 畜 産 物の 付 加価 値向 上 に 向 け , ブ ラ ン ド 化の 促 進 , 6 次 産業
化や農商 工連携 によるア グ リビジネ スの 振興 な ど を 図っ て きま した 。
震災 と 併 せ て 福 島第 一 原子 力 発 電所 の 事故 の 発生 し た こ と に よる 本 県農
林水産物に対する消費者のイメージの低下,食品製造業をはじめとした食
関連産業の被災による県産農畜産物の消費・利用の減少などが懸念され
て いま す 。
こうした中,収益性の高い農業の実現に向けて,生産される農畜産物の
付加価値 を高 め る取り組 み が求め ら れ て いま す 。
b
取組内 容
消費者の本県農林水産物に対する安全・安心を確保するため,放射性
物質の検査体制を強化し,県民等への迅速な情報提供を図るとともに,安
全な 県産品の 出荷, 流通を 確保し ま す 。
農畜産物の付加価値を向上させ,収益性の高い農業を実現するため,
生産から加工,販売までの6次産業化を推進するとともに,食品・流通・観
光など他産業と連携するなど,競争力のあるアグリビジネスを積極的に推進
し ます 。
また,食品製造業に対して県産農畜産物の情報を提供するとともに,食
品製造業の振興を目指した見本市,展示会を開催するとともに,商品開発
や出展に対する支援を行い,農業者と実需者のマッチング等を推進し,県
産農畜産 物の 利用拡 大を図 りま す 。
さらに,県産農畜産物のイメージの回復・向上を図り,消費拡大につなげ
るため,TV,フリーペーパー等のメディアを活用した情報発信,海外バイヤ
ーへのセールス等による販路の回復及び拡大,ブランド化に向けた人材の
育成や地域特産品の認証・普及等によるイメージアップ戦略の展開など,
農業の 復興 状況に 合わ せた 各種 の 取 組を 実施し ま す 。
- 22 -
①
a
農 村ビジネ スの振興
現状と 課題
被災した農産物直売所等の農村ビジネスの拠点も大きな被害を受けまし
た。
施設 等 が 地 震 ・ 津 波 の 被 害 に よ り 損 壊 し た と い う 直 接 的な 被害 に 加 え , 出
荷する農業者が被災したことによる商品の不足,消費者心理の冷え込みに
伴う売 上げの 減 少等 ,間 接的な 被 害もあ っ て 厳し い 経営に 直面し て い ま す 。
活力 あ る 農 村 を 実 現 す る た め , 農 村 ビジ ネ ス を さ ら に 振 興 し て い く こ と が 求
め られ て い ま す 。
b
取組内 容
被災し た農 産 物直売 所等 に 対し , 中小 企業 診断 士等 の 専門 家を活 用し ,
個々の 経営 実態に 即し た 経営再建 ・経営安定 を支援 し ます 。
農村の活性化に向け,地域住民が地域の課題を自ら発見し,自然環境,
景観,食材,伝統文化などの地域資源を活用して,地域の活性化に結びつ
ける農産物直売所,農林漁家レストラン等の交流の推進,6次産業化や農
商工連携 など に よる農村 ビジ ネ スの 推進 を図り ま す 。
- 23 -
②
a
都 市と農村 の交流促 進
現状と 課題
都市 住 民の 農 業へ の 関心 の 高ま りや 緑 豊か な 自 然, 食材 , 伝統文 化 ,人
々との交流を楽しむ意識の高まりから,都市と農村地域との交流が積極的
に進め られ て きま し た。
これまでも,農業者と消費者の信頼関係の構築に向け,地産地消や食育
の取組などを通し,交流機会の拡充が図られてきました。しかしながら,震
災の影響により農畜産物の生産の減少や農村地域の受入体制の脆弱化を
招き,消費者が農村地域へ訪れる機会が停滞傾向にあります。このため,
農村の復興の速度と歩調を同じくし,農業者と消費者の交流を一層進め,
絆を深 め て い く取 組 が求 め られ て い ま す 。
b
取組内 容
震災による県産農畜産物の需要の落ち込みに対応し地産地消の取組や
地場食材の学校給食への提供を全県的に進めるとともに,食育やみやぎ食
料自 給 率 向上 県 民運 動 の 取 組 に お い て 地 域 の 特 産物に 関 す る知 識の 普及
や伝統的な食文化の伝承などを図り,県産農畜産物の一層の理解と消費・
活用を 促進し ま す 。
ま た , 都 市 部と 農 村 部 の 交 流 に お い て 有 効 な 手 法 と し て 取 り組 ま れ て き た
グ リ ー ン ・ ツ ー リ ズ ム は, 震 災 に よ り沿 岸 部 を 中 心 に 活 動 が で きな い 状況 と な
っ てお り,活動 を して い る地域 にお い て も 震災後 は客足 が減少 し て いま す 。
当面は内陸部を中心に活動実践者を支援することでグリーン・ツーリズム
の 振 興 を 図 り , 沿 岸 部 に つ い て は , 農 業 ・農 村 の 復 興 と あ わ せ て 振 興 に 向 け
た支援 を 行いま す 。
これらの取組を通し,農業・農村を力強く支えるサポーターとなる都市住
民と の 交流 を 推進し ま す 。
- 24 -
③
a
集 落ぐるみ の農村保 全活動促進
現状と 課題
津波被害を受けた沿岸部では,農業者の多くが生産基盤とともに住宅な
どの生活基盤を失い,転出者が増加することによって地域コミュニティが崩
壊す るお そ れ が生じ て い ま す 。
特に,中山間地域等の条件不利地域においては,もともと農業生産活動
の維持が困難になっていることもあり,震災を契機とした離農者の増加が懸
念されるため,集団的なサポート体制の確立等により農村の機能維持を図
っ てい く こ とが 求め ら れ て いま す 。
b
取組内容
津波による被災地域においては,再び営農が可能となる状態に農地等が
整備されるまでの間,漂着ゴミ等の除去,除草,江払いなど農地の荒廃防
止の た め の 共同活動 を支 援し ま す 。
また,農業生産活動の開始後においては,用排水路等の管理,景観保
全の取組などの共同活動に加え,地域特産品の開発や6次産業化等の農
村振興に 向け た 集落単位 の 取組を 支援し ま す 。
注 意 : こ の 計 画 は , 国 へ の 要 望 内 容 等 を踏 ま え て 作 成 し て お り , 今 後 の 国 の 補 正 予 算
及び法制度の改正,農業を取り巻く国内外の情勢,県土,県民生活,農業の復
旧・復興 の状 況に よっ て,施 策を変更す る こ ともあ り ます。
- 25 -
みやぎ農業・農村復興計画の取組項目スケジュール(H24.3.30一部改訂)
復興計画 (H23年度~H32年度)
取組項目
復旧期(3年)
平成23年度
平成24年度
平成25年度
再生期
(4年)
1 県内 の 農業生産力の
農業生産力の 早期回復
①
① 生産基盤 の早期復旧
○農地・生産基盤施設の復旧
・除塩・堆積物・がれき除去等
東日本大震災災害復旧事業の実施
・用排水施設・用排水路の復旧
・土壌改良を行う団体への補助
土壌改良を行う団体への補助
○生産施設・農業機械等の復旧
・JA等所有共同利用施設等の復旧
JA所有の施設等の復旧への補助
・共同生産施設,機械等の整備補助
共同組織の施設・機械等の整備補助等
②
② 営農再開 に向 けた 支援
○相談体制の整備
・早期営農再開支援センターの設置
生活・営農に関する相談活動
専門家の活用による経営再建支援
・経営再建計画作成支援
○代替農地・施設の活用促進・雇用促進
・農地・施設等のマッチング支援
県内外からの情報の収集と提供
・農業法人等での雇用促進
・農地・施設等の復旧共同作業の実施
復興組合による共同作業への支援金を交付
○営農再開へ向けた資金的援助
国・市町村と連携した利子補給の実施
・利子補給の実施
・利子補給の実施(畜産特別資金)
既往借入者への上乗せ利子補給の実施
○農業団体への支援
土地改良区の借入金の利子補給
・土地改良区の運営の支援
・農業協同組合の再建支援
農業協同組合事務所の再建補助
③ 被災農畜産物 の 処理
処理経費の補助,処理の実施
・被災家畜・米穀の処理への支援
④ 新 たな 担 い手 の 参入促進
就農相談,就農計画策定支援,就農支援資金貸付支援等
・新規就農者の確保・育成
・企業の農業参入支援
企業向け研修会,農地情報の収集と提供等
⑤ 内陸地域 の 農業生産の
農業生産の 拡大
地域とも補償の実施
・米の地域間生産調整の実施
各種補助事業の活用支援
・園芸・畜産の生産拡大
⑥ 福島第一原子力発電所事故によ
福島第一原子力発電所事故によ る
影響 への 対応
・放射性物質の検査体制の強化
・原乳,粗飼料,農産物,土壌等の測定
検査機器の導入,農産物の安全確保とデータ蓄積
放射性濃度測定の経費負担
・市町村等が実施する検査への支援
検査の経費補助
・給与不能な稲わら等の処理支援
保管経費の補助
検査の実施
・食肉処理場での検査の実施
・出荷停止の肥育牛経営の緊急支援
経営経費の補助
反転耕経費の補助
・草地土壌の放射能提言対策
- 26 -
発展期
(3年)
復興計画 (H23年度~H32年度)
取組項目
復旧期(3年)
平成23年度
平成24年度
平成25年度
再生期
(4年)
2 新 たな 時代 の 農業 ・ 農村 モ デ ル の 構築
①
① 災害 に 強 い 農業・
農業・ 農村 づ くり
・海岸堤防の早期復旧と排水対策
・集落排水施設の復旧
・高台移転や多重防御の実施支援
・災害対応機能の充実強化の啓発
農業農村整備事業の実施等
復興交付金事業の活用及び支援
② 「 市町農業 ・ 農村 に 関 す る 復興計画 」
の 策定支援
営農意向調査,地域営農・整備方針策定支援等
・農業関連エリアの土地利用及び地域
合意形成支援
・地域ごとの実施計画の策定支援
地域ごとの営農・整備方針策定支援,合意形成支援
③ 市町復興計画 に基 づ いた 生産基盤
の 整備及 び 生産体制の
生産体制の 支援
・農地の面的集約,大規模化,団地化
農地の一括管理及び区画整理の実施
④ 収益性 の 高 い農業経営 の 実現
○競争力のある経営体づくり
・共同化及び法人化の推進
普及センター及び専門家等活用による経営改善
土地利用調整の実施
・低コスト化,省力化の推進
・アグリビジネスの推進
6次産業化,他業種とのマッチング支援,施設整備の補助等
○施設園芸への転換
・園芸振興エリアの土地利用計画
・大規模生産施設の導入支援
・省エネルギー技術の導入
営農・基盤整備計画等の策定支援
共同化・法人化による施設・機械の導入補助
省エネルギー技術を用いた施設の導入補助
○畜産の生産拡大
・畜産振興エリアの土地利用
・共同施設の整備,法人化支援
営農・基盤整備計画等の策定支援
共同化・法人化による施設・機械の導入補助
6次産業化に関する事業の実施
・6次産業化の推進
○大規模な土地利用型農業の実現
・大区画ほ場整備及び担い手への
合意形成に基づく土地利用調整の実施・地域営農システムの構築助成
農地集積の推進
・効率的な施設・機械の導入支援
・栽培技術の改善及び先進技術の
共同組織等への施設・機械の導入補助
試験研究機関及び普及センター による技術・経営管理支援
導入
○農業の高付加価値化及び販売の強化
・食関連産業の振興支援
・販路・販売先の維持・拡大
商品開発支援,見本市,展示会等による農業者と実需者とのマッチングの実施
メディアを活用した情報発信,ブランド化に向けた人材育成等
海外バイヤーへのセールス等の実施
・輸出促進
⑤ 活力 ある農村
ある 農村 の 復興
○農村ビジネスの振興
・直売所,農家レストラン等起業化支援
普及センター及び専門家等活用による起業家支援
○都市と農村の交流促進
・グリーン・ツーリズムの振興
宮城県GT協議会との連携による実施
・地産地消・食育の推進
意識醸成啓発,取組への補助等,食育ボランティアの活用等
・農林漁業体験の推進
中高生対象の復興に向けた体験旅行の実施
○集落ぐるみの農村保全活動促進
・農村の集落活動に対する支援
中山間地域等の集落活動への直接支払
- 27 -
発展期
(3年)
(参 考 資 料 )
震災による本県農業に関連する直接的な被害は以下のとおりです。(平成24年
2月24日 現在)
なお,地震による被害は県内のすべての市町村に,津波による被害は仙台市,
塩竃市,名取市,多賀城市,岩沼市,亘理町,山元町,松島町,七ヶ浜町,利府
町,石 巻市,東 松島市, 女川町, 気仙沼市 ,南三 陸町の 8市 7町に及 びま す 。
被
害
種
別
箇所数等
農地 ・農 業 用 施設 被 害
5,134 箇 所
(1,215 箇 所 )
被
害
内
訳
用 排 水 路 ・農 道等 の 損 壊
(用 排水 機 場 等 の損 壊 ,農 地 浸 水
被
害
額
397,333,229千円
(381,090,116千 円)
14,341haなど )
農業関係施設被害
22,431 箇 所
(22,050 箇 所 )
農業倉庫,カントリーエレベーター
等の損壊
31,727,366千 円
(28,524,751千 円)
(園 芸施 設 等 の 損壊 )
農業用資機材被害
14,165 台
(14,160 台)
農作物被害(面積)
895 ha
農作 物 被 害 (重量 )
農地 海 岸 保 全施 設 被 害
畜産施設等被害
家畜 等 被 害
( トラクター,コンバイン, 田 植機 , 乾燥 機 )
43,461,000千 円
(43,460,000千 円)
い ちご , 野菜 類 ,麦 類 ,花 き 等
(891 ha)
(いち ご, 野 菜 類, 麦 類 等)
20,620 t
米 , 大豆 の 浸 水 ,流 失 等
(20,620 t)
生活 環 境 施 設被 害
トラクター,コンバイン, 田 植機 , 乾 燥機
(米 ,大 豆 の浸 水 , 流失 等 )
2,669,281千 円
( 2,612,850千 円)
3,929,000千 円
( 3,929,000千 円)
107 箇 所
集 落 排 水 施設 等 の 損壊
26,851,239千 円
(21 箇 所 )
(集 落排 水 施 設 の損 壊 )
(15,085,000千 円)
103 箇 所
海 岸 防 潮 堤の 損 壊 (26.5 ㎞ )
(103 箇 所 )
(海 外防 潮 堤 の 損壊 (26.5 ㎞ ))
108 箇 所
畜 舎 ・た い肥 セン タ ー 等の 崩 壊
(37 箇 所 )
(畜 舎の 崩 壊 )
1,496,395 頭 羽
(142,290 頭 羽 )
43,480,000千 円
(43,480,000千 円)
3,394,408千 円
( 1,243,446千 円)
乳牛,肉用牛,豚,採卵鶏,ブロイ
ラ ー (乳 牛 , 肉 用 牛 , 豚 , 採 卵 鶏 , ブ
725,519 千 円
(
334,430千 円)
ロ イラ ー, みつ ば ち)
畜産 品 等 被 害
(
合
8,273
t
牛 乳 ,孵 卵 用 た まご
-
)
(
-
)
計
889,533千円
(
-
)
554,460,575千円
(519,759,593千 円)
※下段の(
)下 記 は津 波被 害に よる もの で 内 数 。
- 28 -
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